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特許7522904腰部補助装置及び腰部補助装置用付勢装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】腰部補助装置及び腰部補助装置用付勢装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20240718BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240718BHJP
   A61F 2/50 20060101ALI20240718BHJP
   B65G 7/12 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61H3/00 B
B25J11/00 Z
A61F2/50
B65G7/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023198576
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2019099414の分割
【原出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2024025789
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515087972
【氏名又は名称】株式会社イノフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 雄士朗
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130268(JP,A)
【文献】特表2018-535762(JP,A)
【文献】特開2016-209443(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108969310(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
A61F 2/50
B25J 11/00
B65G 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腰部の側方に配置される左右一対の第1部材と、
人体の腰部の側方かつ前記第1部材の下方側に、人体の腰部の前後方向の回転運動に従動して、前記第1部材に対して前記第1部材よりも前方側に回動可能に取付けられる左右一対の第2部材と、
前記第1部材に対して前記第1部材よりも後方側に回動可能に一端を取付けられた左右一対の第3部材と、
一端を前記第2部材に取付けられ、他端を前記第3部材の他端側に回動可能に取付けられ、人体の腰部の前方への回転に対して反発する左右一対の第1付勢手段と、
前記左右一対の第1部材の上端側に取付けられ、人体の上体を前方から支える上体支持部と、
前記第2部材の下端側にそれぞれ取付けられ、人体の下肢を前方から支える左右一対の下肢支持部と、
を有し、
前記第1部材において、前記第3部材の一端は、前記第2部材が取付けられる位置よりも上方側に取付けられ、
前記第1付勢手段は、前記第1付勢手段の一端を他端に対して直線的に連結して離間させるように付勢する、腰部補助装置。
【請求項2】
前記第3部材は、前記第1部材に対して、前記上体支持部の前記第1部材に対する回動とは独立して回動するように構成されている、請求項1記載の腰部補助装置。
【請求項3】
前記第3部材における他端側は、それぞれ前記第1部材と前記第3部材との取付け位置よりも後方側に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の腰部補助装置。
【請求項4】
前記上体支持部の下端側は、前記第1部材の上端側に、人体の腰部の前後方向の回転運動に従動して回動可能に取付けられ、
人体の腰部の前方への回転に従動する方向の回動に対して反発するように、前記第1部材と前記上体支持部とに取付けられた、左右一対の第2付勢手段を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項5】
前記第2付勢手段は、一端を前記第1部材に固定され他端を前記上体支持部に当接された重ね板バネである、請求項4に記載の腰部補助装置。
【請求項6】
前記第2付勢手段における付勢力は、前記第1付勢手段における付勢力よりも小さい、請求項4又は請求項5に記載の腰部補助装置。
【請求項7】
前記第2部材の下端側と前記下肢支持部の上端側とが、それぞれ人体の下腿の幅方向外側への開脚運動に従動して回動可能に取付けられている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項8】
前記第1付勢手段は、ガススプリングである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項9】
前記下肢支持部は、上側に設けられた上側部と、人体の下肢の前方への移動に従動して、前記上側部に対して人体前方向に回動可能に取付けられた下側部と、前記下側部の回動をロックするロック機構と、を有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部補助装置及び腰部補助装置用付勢装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、装着者の腰部を補助することで当該装着者の中腰姿勢での作業を補助する腰部補助装置が開示されている。この腰部補助装置は、装着者の腰部の後方側に配置されるケーシングを備えており、このケーシング内には、圧縮コイルスプリングが配置されている。そして、装着者が中腰の姿勢となった際に、ケーシング内に配置された圧縮コイルスプリングが圧縮されて、この圧縮された圧縮コイルスプリングの付勢力によって、装着者の中腰姿勢での作業が補助されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-23828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装着者の身体に装着される腰部補助装置には、より小型の装置によって、使用者の姿勢に応じた適切な補助効果を得ることが望まれる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、より小型の装置によって使用者の姿勢に応じた適切な補助効果を図ることができる腰部補助装置及び腰部補助装置用付勢装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の腰部補助装置は、人体の腰部の側方に配置される左右一対の第1部材と、人体の腰部の側方かつ前記第1部材の下方側に、人体の腰部の前後方向の回転運動に従動して、前記第1部材に対して回動可能に取付けられる左右一対の第2部材と、前記第1部材に一端を回動可能に取付けられた左右一対の第3部材と、一端を前記第2部材に取付けられ、他端を前記第3部材の他端側に回動可能に取付けられ、人体の腰部の前方への回転に対して反発する左右一対の第1付勢手段と、前記左右一対の第1部材の上端側に取付けられ、人体の上体を前方から支える上体支持部と、前記第2部材の下端側にそれぞれ取付けられ、人体の下肢を前方から支える左右一対の下肢支持部と、を有する。
【0007】
このような構成によれば、装着者の上体が前傾すると、第2部材が、第2部材に対して第1取付け手段を軸に回転する。このとき、第2部材における付勢手段の取付け箇所と第1部材における第3部材の取付け箇所との距離が短くなる。これに伴い、第2部材における第1付勢手段の取付け箇所と第3部材における第1付勢手段の取付け箇所との距離が短くなる。これにより、第1付勢手段に圧縮荷重が加えられる。荷重を加えられた付勢手段は、第1部材を装着者の上体を引き起こす方向へと回転させる反発力を生じる。
【0008】
第2の態様の腰部補助装置は、前記第3部材が、前記第1部材に対して、前記上体支持部の前記第1部材に対する回動とは独立して回動するように構成されている。
【0009】
このような構成によれば、第1部材に対して上体支持部材と第3部材とが、それぞれ独立して回動する。そのため、装着者の上体が前傾した際の、上体支持部と付勢手段との傾斜角度が、それぞれ独立した角度となる。
【0010】
第3の態様の腰部補助装置は、前記第3部材における他端側が、それぞれ前記第1部材と前記第3部材との取付け位置よりも後方側に配置されている。
【0011】
このような構成によれば、第3部材における他端側が第1部材と第3部材との取付け位置よりも前方側に配置された構成と比較して、第3部材の他端側と第1部材との距離が長くなる。
【0012】
第4の態様の腰部補助装置は、前記上体支持部の下端側が、前記第1部材の上端側に、人体の腰部の前後方向の回転運動に従動して回動可能に取付けられ、人体の腰部の前方への回転に従動する方向の回動に対して反発するように、前記第1部材と前記上体支持部とに取付けられた、左右一対の第2付勢手段を有する。
【0013】
このような構成によれば、人体の腰部の前方への回転に対して、第2付勢手段が反発する。
【0014】
第5の態様の腰部補助装置は、前記第2付勢手段が、一端を前記第1部材に固定され他端を前記上体支持部に当接された重ね板バネである。
【0015】
このような構成によれば、第1部材に固定された重ね板バネによって、上体支持部に対して付勢力が加えられる。
【0016】
第6の態様の腰部補助装置は、前記第2付勢手段における付勢力が、前記第1付勢手段における付勢力よりも小さい。
【0017】
このような構成によれば、第1付勢手段と第2付勢手段とに、同時に荷重が加えられた時に、第1付勢手段よりも先に第2付勢手段が変形する。
【0018】
第7の態様の腰部補助装置は、前記第2部材の下端側と前記下肢支持部の上端側とが、それぞれ人体の下腿の幅方向外側への開脚運動に従動して回動可能に取付けられている。
【0019】
このような構成によれば、人体の下肢の開脚運動が、下肢支持部によって邪魔されない。
【0020】
第8の態様の腰部補助装置は、前記第1付勢手段が、ガススプリングである。
【0021】
このような構成によれば、コイルバネを用いた構成と比較して、小さな構成でより大きな反発力が得られる。
【0022】
第9の態様の腰部補助装置は、前記下肢支持部が、上側に設けられた上側部と、人体の下肢の前方への移動に従動して、前記上側部に対して人体前方向に回動可能に取付けられた下側部と、前記下側部の回動をロックするロック機構と、を有する。
【0023】
このような構成によれば、下肢支持部の上側部と下側部との回転を、ロックすることができる。
【0024】
第10の態様の腰部補助装置用付勢装置は、人体の腰部の側方に配置される第1部材と、人体の腰部の側方かつ前記第1部材の下方側に、人体の腰部の前後方向の回転運動に従動して、前記第1部材に対して回動可能に取付けられる第2部材と、前記第1部材に一端を回動可能に取付けられた第3部材と、一端を前記第2部材に取付けられ、他端を前記第
3部材の他端側に回動可能に取付けられ、人体の腰部の前方への回転に対して反発する第1付勢手段と、を有する。
【0025】
このような構成によれば、装着者の上体が前傾すると、第2部材が、第2部材に対して第1取付け手段を軸に回転する。このとき、第2部材における付勢手段の取付け箇所と第1部材における第3部材の取付け箇所との距離が短くなる。これに伴い、第2部材における第1付勢手段の取付け箇所と第3部材における第1付勢手段の取付け箇所との距離が短くなる。これにより、第1付勢手段に圧縮荷重が加えられる。荷重を加えられた付勢手段は、第1部材を装着者の上体を引き起こす方向へと回転させる反発力を生じる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る腰部補助装置及び腰部補助装置用付勢装置は、装置の小型化を図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る腰部補助装置が直立状態の装着者に装着された状態を示す側面図である。
図2】実施形態に係る腰部補助装置の幅方向の伸縮前後の状態を示す正面図である。
図3】実施形態に係る腰部補助装置の高さ方向の伸縮前後の状態を示す側面図である。
図4】実施形態に係る腰部補助装置のロック機構を示す側面図である。
図5】装着者が屈んだ状態における、実施形態に係る腰部補助装置を示す側面図である。
図6】実施形態に係る腰部補助装置の、第2部材が第1部材に対して回動した様子を拡大して示す側面図である。
図7】実施形態に係る腰部補助装置の、第2部材が第1部材に対して固定された場合と回動可能に取り付けられた場合とのガススプリングの反発力の比較を示すグラフである。
図8】実施形態に係る腰部補助装置の、重ね板バネを含んで構成される場合と含まないで構成される場合との、反発力の比較を示すグラフである。
図9】実施形態に係る腰部補助装置の、第1部材と第3部材との取付け箇所の距離を変化させた場合における反発力の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の各実施形態に係る腰部補助装置について説明する。なお、以下の説明においては、腰部補助装置を装着している状態でかつ直立した状態の装着者から見た前後方向における前方側を矢印FRで示し、右側を矢印RHで示し、上下方向上側を矢印UPで示す。また、以下の説明で、単に前後、左右、上下の方向を示す場合は、腰部補助装置を装着している状態でかつ直立した状態の装着者から見た前後、左右、上下を示すものとする。また、本実施形態においては、構造上、左右一対の部品があるため、左側の部品番号の末尾にLを付し、右側の部品番号の末尾にRを付す。以下の説明においては、適宜左側の部品(L)について説明し、重複する右側の部品(R)の説明を省略する。
【0029】
実施形態に係る腰部補助装置10について図1図9を用いて説明する。
【0030】
[腰部補助装置10]
図1に示されるように、腰部補助装置10は、装着者Pの体に装着される。腰部補助装置10は、装着者Pの上体に対応する上体支持部12と、腰部に対応する腰部支持部14と、下肢に対応する下肢支持部16と、を含んで構成される。以下、詳細な構成について説明する。
【0031】
[上体支持部12]
図1に示されるように、上体支持部12の上部は、装着者の胸部から腹部にかけて、上体に沿うように配置される。また、図2に示されるように、この上体支持部12は、T字状に形成された大胸筋支持部18と、上下方向に延びる柱状の上体支持柱20と、装着者Pの下腹部から腰部の側方までに配置される左右一対のフレーム28L、28Rと、を含んで構成される。
【0032】
大胸筋支持部18は、左右の大胸筋の上部を前方から支える上側支持部22と、左右の大胸筋の中央部分を上下方向に亘って前方から支える下側支持部24と、を含んで構成される。なお、上側支持部22は、装着者Pの上体の左右方向のひねりに合わせて左右方向に回転可能となっている。また、上側支持部22及び下側支持部24は、それぞれ緩衝用のクッション26によって周囲が覆われている。大胸筋支持部18の下端は上体支持柱20の上端に設けられた、高さ調節部21に接続されている。
【0033】
図3に示されるように、大胸筋支持部18は、上下方向に移動可能な構造となっている。詳細には、上体支持柱20における大胸筋支持部18側の端部には、大胸筋支持部18の下端側の外形に合わせた空洞を有した高さ調節部21が設けられている。大胸筋支持部18の下端側の高さ調節部21に対する挿入量が調節されることで、大胸筋支持部18の位置が高さ方向に調節可能な構造となっている。なお、図3(A)には、上体支持柱20の高さが低く設定された状態が、図3(B)には上体支持柱20の高さが高く設定された状態が示されている。
【0034】
図1及び図2に示されるように、フレーム28Lは、装着者Pの下腹部から腰部の側方に対応する箇所まで腰部の外周に沿って湾曲し、さらに、腰部側方において人体後方側に凸部を有して湾曲した構造となっている。
【0035】
図2に示されるように、フレーム28L及びフレーム28Rは、上体支持柱20の下端寄りに設けられた幅調節部27に取付けられている。より詳細には、幅調節部27は、幅方向に長手方向をもつ中空状となっており、幅方向の両端からフレーム28L及びフレーム28Rが挿入されている。幅調節部27に対する挿入量が調節されることで、フレーム28L及びフレーム28Rが、幅方向に移動可能な構造となっている。なお、図2(A)には、フレーム28L及びフレーム28Rの幅が短く設定された状態が、図2(B)には、フレーム28L及びフレーム28Rの幅が長く設定された状態が、それぞれ示されている。
【0036】
[腰部支持部14]
図1に示されるように、上体支持部12の下側には、左右一対の腰部支持部14L及び腰部支持部14Rが配置されている。腰部支持部14L、14R(腰部補助装置用付勢装置に相当)は、上体支持部12におけるフレーム28L、28Rの下側に配置される。以下、装着者Pにおける左側の腰部支持部14Lの詳細について説明する。
【0037】
図1に示されるように、腰部支持部14Lは、第1部材36L、第2部材38L、第3部材40L、ガススプリング42L(第1付勢手段に相当)、第4部材46L、及び重ね板バネ44L(第2付勢手段に相当)を含んで構成されている。
【0038】
フレーム28Lの下側には、上下方向に延びる第4部材46Lが配置されている。詳細には、フレーム28Lの下端側が、固定具30Lによって、第4部材46Lの上端側に固定されている。また、第4部材46Lの前方側上端には、後述する重ね板バネ44Lに当接する箇所に、ロール32Lが取り付けられている。このロール32Lは、前後方向に回動可能に取り付けられている。なお、ここでいう「前後方向」とは、装着者Pの上体の前傾に伴う腰部の回転方向に沿った方向をいう。また、以下「前後方向」と称した場合には
、同様の方向を意味する。
【0039】
第4部材46Lの下端側には、第1部材38Lが、前後方向に回動可能に取り付けられている。この第1部材36Lは、側方視において略楕円形状に形成されている。また、図2に示されるように、外側に設けられたプレート37Lと、内側に設けられた同形状のプレート39Lとを含んで構成される。なお、第2部材38L、第3部材40L、ガススプリング42L、及び重ね板バネ44Lは、正面視においてプレート37L及びプレート39Lの間にそれぞれ配置される。
【0040】
図1に示されるように、第1部材36Lの上端側は、第4部材46Lの下端側に、前後方向に回動可能に取付けられている。この第1部材は、長手方向が装着者の側方における臀部の上側から股関節の前方側に向かって、斜めに傾斜するように配置されている。
【0041】
第1部材36Lの下端側に設けられた取り付け箇所54Lには、第2部材38Lにおける一端側が、前後方向に回動可能に取り付けられている。第2部材38Lにおける他端側に設けられた取り付け箇所56Lには、ガススプリング42Lの一端が、回動可能に取り付けられている。また、この第2部材38Lにおける一端側と他端側との間の下方側には、下肢支持部16Lの上端側に設けられた取り付け部49Lが取り付けられている。
【0042】
第1部材における上端側と下端側との間に設けられた取り付け箇所59Lには、第3部材40Lの一端側が、前後方向に回動可能に取り付けられている。この取付け箇所59Lは、第1部材36Lにおける長手方向の略中央に配置されている。また、第3部材40Lは、外側及び内側に設けられた一対の略楕円形状のプレートを含んで構成されている。この一対のプレートの間には、ガススプリング42Lが配置される。
【0043】
第3部材における他端側は、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所よりも後方側へと配置される。なお、第3部材40Lとフレーム28Lとは、第1部材に対して、それぞれ独立して回動するように構成されている。これにより、腰部支持部14Lに対する、上体支持部12及び下肢支持部16Lの傾斜角度に応じて、第3部材40Lが各部材と独立した角度に回動することが可能となる。そのため、例えば、常に上体支持部12と第3部材40Lとが同一又は同一の角度に保たれる構成と比較して、ガススプリング42Lにより好ましい荷重を与えることができる。すなわち、ガススプリング42Lによる、より好ましい反発力を得ることができる。
【0044】
第1部材36Lにおける前方側の上端側寄りには、固定具43Lによって、重ね板バネ44Lが取り付けられている。この重ね板バネ44Lは、後方側(すなわち第1部材側)から前方側にかけて、段階的に短い板バネが重ねられることで、構成されている。なお、重ね板バネ44Lにおける最後端側の板バネは、ロール32の外周に当接するように構成されている。
【0045】
ガススプリング42Lは、一端を第3部材における他端側に設けられた取り付け箇所56Lに、もう一端を、第2部材38Lにおける他端側に設けられた取り付け箇所60Lに、それぞれ前後方向に回動可能に取り付けられている。なお、ガススプリング42Lの反発力は、重ね板バネ44Lの反発力と比較して、大きくなるように構成されている。
【0046】
図3に示されるように、腰部支持部14Lには、腰ベルト54、尻ベルト57、及び腹ベルト58が取り付けられている。これらのベルトによって、装着者Pに対して、腰部補助装置10が最適な位置に位置決めされる。
【0047】
腰ベルト54は、装着者の後方側に配設される。詳細には、腰ベルト54の一端側が、
装着者Pの左方側の第1部材36Lに取付けられ、他端側が、装着者Pの右側に設けられた第1部材36Rの対応する箇所に取り付けられている。なお、腰ベルト54は、装着者Pの腰部の後方側に配設される。また、腰ベルト54の両端側、又はいずれか一端側における取付け箇所が、着脱可能とされている。これにより、装着者Pが腰部補助装置10を装着する際に装着動作が邪魔されない構造とされている。
【0048】
尻ベルト57は、腰ベルト54の下側に設けられている。尻ベルト57は、取付け位置以外の基本的な構造は、腰ベルト54と同様の構成とされている。なお、尻ベルト57は、装着者Pの臀部の下側に配設される。また、尻ベルト57の両端側、又はいずれか一端側における取付け箇所が、着脱可能とされている。これにより、装着者Pが腰部補助装置10を装着する際に装着動作が邪魔されない構造とされている。
【0049】
腹ベルト58は、一端が、装着者の左方側の第1部材36Lに取付けられ、他端が、装着者の右側に設けられた第1部材36Rの対応する箇所に取り付けられている。なお、腹ベルト58は、装着者Pの下腹部又は腰部前方に配設される。
【0050】
腰ベルト54、尻ベルト57、及び腹ベルト58は、それぞれ長さの調節が可能な構造とされており、装着者Pの体形や使用態様に応じて、適宜、長さが調整される。
【0051】
また、図1において、破線で示されるように、腰部補助装置10は、装着前の状態において、上体支持部12が後方に傾斜するように構成されている。そして、装着時の状態においては、実線で示されるように、上体支持部12が前方へと傾斜される。このとき、重ね板バネ44Lによって上体支持部12を装着者Pの体へと押し付ける方向に、付勢力が加えられる。そのため、装着者Pの体に、腰部補助装置10が密着される。なお、ガススプリング42Lは、重ね板バネ44Lと比較して付勢力が大きいため、装着者Pが直立した状態においては、主に重ね板バネ44Lの付勢力が作用し、ガススプリング42Lによる付勢力は作用しない状態となる。
【0052】
[下肢支持部16]
図1図3に示されるように、左右一対の腰部支持部14L、14Rの下側には、それぞれ左右一対の下肢支持部16L、16Rが配置されている。以下、装着者Pにおける左側の下肢支持部16Lの詳細について説明する。
【0053】
図1に示されるように、下肢支持部16は、第2部材38Lに取付けられる取り付け部49Lと、取り付け部49Lの下側に回転可能に接続された接続部48Lと、その下側に備えられた下肢フレーム50Lと、下肢フレーム50Lの下端側に備えられた大腿支持部52Lとを含んで構成されている。
【0054】
ここで、接続部48Lは、装着者Pの下肢が股関節から外側に開脚された際に、開脚を許容する方向に、取り付け部49Lに対して回動される構造を含んで構成されている。また、この取り付け部49Lと接続部48Lとは、側面視において、装着者Pの股関節に対応する高さに配置される。
【0055】
図1及び図3に示されるように、下肢フレーム50Lは、腰部支持部14Lの下側である装着者Pの大腿の付け根の側方から、前方下側へと延びるように構成されている。さらに、この下肢フレーム50Lは、下端側が装着者Pの大腿の前方へと湾曲して形成されている。下肢フレーム50Lの下端には、装着者Pの大腿前側を、前方から支える大腿支持部52が備えられている。
【0056】
また、図4に示されるように、下肢支持部16Lには、下肢フレーム50Lの前方への
回転をロックするストッパー66Lが備えられている。図4(A)に示されるように、ストッパー66Lによれば、下肢支持部16Lのロック時には、このストッパー66Lによって、下肢フレーム50Lの前方への回転がロックされる。一方、図4(C)に示されるように、ロック解除時には、ストッパー66Lによる下肢フレーム50Lの前方への回転のロックが解除され、下肢フレーム50Lの前方への回転が許容される。以下、ストッパー66Lの詳細な構造について説明する。
【0057】
図4(A)~図4(C)に示されるように、ストッパー66Lは、接続部48Lに回転可能に取付けられている。図4(A)に示されるように、ロック時には、このストッパー66Lの矩形状に形成された外周面68Lが、下肢フレーム50Lに設けられたロック部62Lにおける突起部64Lに干渉する位置に配置される。これにより、外周面68Lとロック部62Lとが干渉して下肢フレーム50Lの前方への回転がロックされる。一方、図4(A)に示されるように、ストッパー66Lにおける突起70が、P1の方向に押されることで、図4(B)に示されるように、ストッパー66Lが回転し、ロック部62Lに干渉しない位置に移動される。これにより、図4(C)に示されるように、ロック状態が解除され、下肢フレーム50Lの前方への回転が許容される構造とされている。
【0058】
このような構造によれば、例えば腰部補助装置10を装着したまま、椅子などに着座したい場合に、ロック状態を解除することによって、装着者Pへと作用する反発力を解除することができる。
【0059】
[装着方法]
腰部補助装置10は、直立した状態の装着者Pの前方から装着者Pの前面へと装着される。装着時には、フレーム28L、28Rの幅が適宜調整され、装着者Pの体の幅に適した幅とされる。これにより、大腿支持部52L、52Rが、それぞれ装着者Pの大腿の前部に配置される。また、同様に大胸筋支持部18も上下方向の位置が適宜調節され、装着者Pの大胸筋の上部に配置される。
【0060】
腰ベルト54及び尻ベルト57は、装着前の状態においては、一端が第1部材36Rから離脱された状態とされる。そして、装着時には、腰部支持部14が装着者の腰部の側方の所望の位置に配置された状態で、腰ベルト54が他端側へと配設される。さらに、腰ベルト54が装着者の腰部の後方から、他端側へと配設される。ここで、腰ベルト54の長さが調節されることで、腰部補助装置10が装着者Pにしっかりと密着される。
【0061】
なお、腰部補助装置10の着脱時には、ロック部62によるロック状態を解除することによって、ガススプリング42Lによる反発力が、一時的に下肢支持部16Lへと伝達されない状態とすることができる。これにより、腰部補助装置10の着脱を容易にすることができる。
【0062】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0063】
図1に示される、装着者Pが直立した状態から、上体を前傾させ、又は、下肢を前方にある程度屈曲させると、上体支持部12及び下肢支持部16Lが前方へと押し出される。このとき、まず第1部材36に対して、上体支持部12が前方へと回動する。これにより、重ね板バネ44Lが前方へと変形されるため、重ね板バネ44Lによる反発力が生じる。この反発力が、上体支持部12及び下肢支持部16Lを介して、人体を引き起こす方向の力として装着者Pへと伝えられる。
【0064】
装着者Pが上体の前傾、又は、下肢の前方への屈曲を継続すると、図示しないストッパ
ーによって、上体支持部12による腰部支持部14Lに対する回動が制限される。さらに、装着者Pが上体の前傾、又は、下肢の前方への屈曲を継続すると、第2部材38Lが、第1部材36Lに対して前方へと回動される。これにより、第2部材における一端側と、第3部材における他端側との距離が近くなる。この結果、ガススプリング42Lに、軸方向に圧縮させる力が両端から加えられ、ガススプリング42Lによる反発力が生じる。この反発力が、上体支持部12及び下肢支持部16Lを介して、人体を引き起こす方向の力として装着者Pへと伝えられる。
【0065】
なお、大胸筋支持部18における上側支持部22は、装着者Pの上体の左右方向へのひねりに応じて回転可能となっている。そのため、前傾した装着者Pの上体が左右方向へひねられていた場合においても、上側支持部22によって、左右いずれかの上体(大胸筋)に均等に力が加えられる。したがって、例えば、装着者Pが片手で地面から物を拾うような動作をした場合でも、左右方向にひねられた装着者Pの上体に、適切に力が加えられる。
【0066】
図5には、装着者Pが、上体の前傾及び下肢を屈曲させて屈んだ状態が示されている。図5に示されるように、装着者Pが下肢を側方へ開脚しつつ開脚した状態においても、各部材同士の回動によって、装着者Pの動作が阻害されないようになっている。詳細には、下肢支持部16Lが、第1部材36Lに対して幅方向外側へ回動することによって、下肢支持部16Lとフレーム28Lとの干渉が避けられる構造とされている。
【0067】
図6には、構造の説明のために、第4部材46Lと第1部材36Lとの取付け箇所を固定した状態で下肢支持部16Lを前方へ回動させた際の各部の挙動を示している。図6に示されるように、下肢支持部16Lが前方へと回動されると、第2部材38Lが前方へと回動される。これに伴い、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が、適宜回動される。そのため、ガススプリング42Lの軸方向は、第3部材40Lの軸方向と、異なった方向へと適宜移動(回動)される。このような構造によれば、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が固定された構造と比較して、第1部材36Lに対して第2部材38Lがより大きく回動した場合においても、ガススプリング42Lの付勢力を伝えることができる。
【0068】
図7には、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が、回動可能な構成である場合(A)と固定された構成である場合(B)との、第2部材38Lの回動角度θに対する付勢力の関係が示されている。図7のAに示されるように、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が、回動可能な構成では、第1部材36Lに対して第2部材38Lがより大きく回動した場合においても、ガススプリング42Lによってより大きな反発力を得ることができる。
【0069】
これに対し、図7のBに示されるように、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が固定された構成では、第1部材36Lに対して第2部材38Lがより大きく回動した場合に、付勢力がより早く低下してしまう。そのため、使用者Pがより深く状態を前傾した場合、又は、使用者Pがより深く屈んだ場合では、付勢力が弱くなってしまい、使用者Pは適切な反発力を得ることができない。
【0070】
換言すると、図7のAは、図7のBに対して、ガススプリング42Lの反発力のピークが、より大きい回動角度θで生じている。すなわち、同様の反発力を有するガススプリングを用いた場合に、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所を回動可能な構成とすることで、ガススプリング42Lの反発力のピークを、回転角度θの大きな値で生じるようにシフトさせることができる。
【0071】
一方で、第1部材36Lと第3部材40Lとの取付け箇所が固定された構成である場合では、例えば、回動角度θ=140°において、図7のAと同じ値を得ようとすると、付勢力がより大きなガススプリングを使用する必要がある。ただし、この場合は、回転角度θのより小さい値においても、所望の値よりも大きな付勢力を得る構成となってしまう虞がある。また、より大きな付勢力を得るためには、ガススプリング自体の大型化や、腰部補助装置10の大型化が必要となる虞がある。
【0072】
図8には、第1部材と第4部材との取付け箇所が回動可能な構造である場合と固定された構造である場合との、ガススプリング42L及び重ね板バネ44Lによる、装着者Pの前傾角度に対する反発力の関係の比較例が示されている。図8におけるDは、第1部材と第4部材との取付け箇所が固定された構造の場合の、ガススプリング42Lによる反発力を示している。また、C2は、第1部材と第4部材との取付け箇所が回動可能な構造である場合の重ね板バネ44Lによる反発力を示している。さらに、C1は、第1部材と第4部材との取付け箇所が回動可能な構造である場合のガススプリング42Lによる反発力を示している。このように、本実施形態に係る構造によれば、第1部材と第4部材との取付け箇所が固定された構造と比較して、装着者Pの前傾角度が大きい場合においても、比較的大きな付勢力によって、装着者Pを引き起こすことができる。
【0073】
図9には、取付け箇所60Lと取付け箇所58Lとの距離が変更された場合における、第1部材36Lと第2部材38Lとの角度とガススプリング42Lによる反発力の関係とが示されている。このように、取付け箇所60Lと取付け箇所58Lとの距離が短くなるにつれて、第1部材36Lと第2部材38Lとの傾斜角度が大きい状態において、高い反発力を得ることができる。
【0074】
<その他の態様>
以上、各実施形態に係る腰部補助装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上体支持部12は、装着者Pの後方側に配置されていてもよい。この場合、別途設けたベルト等によって、装着者Pの上体の前側を支える構造とすることができる。また、下肢支持部16も、装着者Pの後方側に配置されていてもよい。この場合、別途設けたベルト等によって、装着者Pの大腿の前側を支える構造とすることができる。
【0075】
また、腰部支持部14及び下肢支持部16は、左右一対であるとして説明したが、用途に応じて左右何れかに設けるものであってもよい。さらに上体支持部12も、装着者Pの体の左右方向における中央部に設ける構造として説明したが、例えば、左右の大胸筋の位置に合わせて左右一対に設けてもよい。
【0076】
下肢支持部16については、大腿支持部52の位置が、上下方向へと調節される調節機構が設けられたものであってもよい。これにより、装着者Pの体形に合わせて、大腿へ力が加えられる位置である大腿支持部52の位置を変更することができる。
【0077】
各実施形態における付勢手段として、ガススプリング42を用いた構造を説明したが、その他の付勢手段を設けることができる。所望のバネ定数を得るために、例えば、コイルバネ、樹脂、又はゴムなどの付勢手段を利用することができる。
【0078】
下肢支持部16の上端側に、回転機構及びロック機構を設ける構造を説明したが、同様の機構を上体支持部12の下端側に設ける構成であってもよい。これにより、下肢支持部16の上端側にこれらの機構を設けた場合と類似した効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 腰部補助装置
12 上体支持部
14、14L、14R 腰部支持部
16、16L 下肢支持部
36L、36R 第1部材
38L 第2部材
40L 第3部材
42、42L ガススプリング(第1付勢手段の一例に相当)
44L 重ね板バネ(第2付勢手段の一例に相当)
62、62L ロック部(ロック機構の一例に相当)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9