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特許7522910硬化性樹脂組成物、硬化膜、積層体、撮像装置、半導体装置、積層体の製造方法及び接合電極を有する素子の製造方法
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  • 特許-硬化性樹脂組成物、硬化膜、積層体、撮像装置、半導体装置、積層体の製造方法及び接合電極を有する素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化膜、積層体、撮像装置、半導体装置、積層体の製造方法及び接合電極を有する素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20240718BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240718BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20240718BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240718BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L79/08
C08G77/44
B32B7/025
H01L21/312 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023503033
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2022047302
(87)【国際公開番号】W WO2023120625
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021209413
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021209414
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】塩島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】野元 颯
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲一朗
(72)【発明者】
【氏名】出口 英寛
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-116462(JP,A)
【文献】特開2013-038112(JP,A)
【文献】特開2010-116464(JP,A)
【文献】国際公開第2021/261403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08G 77/00-77/62
C08K 3/00-13/08
B32B 15/00-15/20
B32B 27/00-27/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素化合物、耐熱性樹脂及び溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が300cP以上2000cP以下であり、
前記硬化性樹脂組成物における前記溶剤の含有量が50重量%以下であり、
前記有機ケイ素化合物の含有量は、前記硬化性樹脂組成物中の固形分量100重量部中80重量部以上10000/100.2重量部以下であり、
前記有機ケイ素化合物が下記一般式(1)で表される構造を有し、
前記耐熱性樹脂がポリイミド、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記耐熱性樹脂の含有量は、前記有機ケイ素化合物100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下である、硬化性樹脂組成物。
【化1】
ここで、R、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物の、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物は23℃における引張弾性率が100MPa以上10GPa以下であり、
300℃における引張弾性率が10000Pa以上1GPa以下である、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物の、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物は400℃4時間窒素雰囲気下で加熱した後の重量減少率が6%以下である、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶剤の含有量が45重量%以下であり、前記25℃における粘度が1500cP以下である、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶剤の沸点が150℃以上250℃以下である、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成される、硬化膜。
【請求項7】
400℃4時間窒素雰囲気下で加熱した後の重量減少率が6%以下である、請求項6記載の硬化膜。
【請求項8】
電極を有する第1の素子と、電極を有する第2の素子との間に請求項6記載の硬化膜を有する積層体であって、
前記第1の素子の電極と前記第2の素子の電極とが、前記硬化膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている、積層体。
【請求項9】
前記第1の素子と、前記第2の素子との間に無機層を有する、請求項8記載の積層体。
【請求項10】
前記貫通孔の表面にバリアメタル層を有する、請求項8記載の積層体。
【請求項11】
請求項8記載の積層体を有する、撮像装置。
【請求項12】
請求項8記載の積層体を有する、半導体装置。
【請求項13】
電極を有する第1の素子と電極を有する第2の素子の電極が形成された面上に請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、
各前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、
各前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記第1の素子及び前記第2の素子の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程と、
前記接合電極が形成された前記第1の素子及び前記接合電極が形成された第2の素子を、前記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程とを有する、積層体の製造方法。
【請求項14】
電極を有する素子の電極が形成された面上に請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記素子の表面を研磨して接合電極を形成する工程とを有する、接合電極を有する素子の製造方法。
【請求項15】
支持基板と第3の素子との間に請求項6記載の硬化膜を有する積層体であり、
前記第3の素子は第1面と第2面を有し、前記第1面は前記第3の素子と電気的に接続された複数のチップが積層されており、
前記第1面と前記支持基板との間に前記硬化膜を有する、積層体。
【請求項16】
前記支持基板と前記硬化膜との間に無機層を有する、請求項15記載の積層体。
【請求項17】
前記第3の素子の前記第2面上にさらに第4の素子を有し、前記第3の素子と前記第4の素子が電気的に接続されている、請求項15記載の積層体。
【請求項18】
請求項15記載の積層体を有する、撮像装置。
【請求項19】
請求項15記載の積層体を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜、該硬化膜を有する積層体、該積層体を有する撮像装置及び半導体装置、該積層体の製造方法及び該積層体の製造に用いる接合電極を有する素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高性能化に伴い、複数の半導体チップを積層させる三次元化が進行している。このような複数の半導体チップが積層した積層体の製造では、まず、2枚の電極が形成された素子の電極面にダマシン法により、銅からなる接合電極が絶縁膜で囲まれた接合面を形成する。その後、接合面の接合電極同士が対向するように2枚の素子を重ね、熱処理を施すことにより積層体が製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-191081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記積層体の製造では、電極の接合の際に400℃、4時間という高温処理が行われるため、上記接合面の形成に用いられる絶縁層には高い耐熱性が要求される。そのため、従来の積層体では、絶縁層としてSiやSiOといった絶縁性の無機材料が用いられている。しかしながら、無機材料からなる絶縁層は素子に反りが発生しやすく、素子に反りが発生すると積層体としたときに電極の接続位置がズレたり、電極が割れたりしてしまうことから、積層体の接続信頼性が低くなることがある。また、近年は半導体装置の高性能化が進み、素子が大型化、薄化してきていることから、素子の反りがより発生しやすくなってきている。
また、近年素子の多機能化に伴い、絶縁層を形成する素子表面には、数μmから十数μmの凹凸が形成されることがある。凹凸を有する素子を直接接合する場合、電極同士の接続信頼性の観点から、素子が形成されたウエハの表面を絶縁層で埋めて接続面を平坦にしてから接続する必要がある。そのため、柔軟性及び素子の平坦化性に優れた絶縁層を形成できる材料が求められている。
【0005】
本発明は、素子表面に凹凸を有する場合であっても接続面を平坦化し表面の空隙なく素子を接続し、素子間に高い接合信頼性を付与することができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜、該硬化膜を有する積層体、該積層体を有する撮像装置及び半導体装置、該積層体の製造方法及び該積層体の製造に用いる接合電極を有する素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の開示を含む。以下、本発明を詳述する。
[開示1]
有機ケイ素化合物及び溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が2000cP以下であり、
前記硬化性樹脂組成物における前記溶剤の含有量が50重量%以下であり、
シリコンウエハ上にスピンコートし前記溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で熱硬化させ成膜した測定サンプルにおいてJIS K5600-5―6に準拠して測定したクロスカット法による密着性が0~2点である、硬化性樹脂組成物。
[開示2]
前記硬化性樹脂組成物の、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物は23℃における引張弾性率が100MPa以上10GPa以下であり、
300℃における引張弾性率が10000Pa以上1GPa以下である、開示1記載の硬化性樹脂組成物。
[開示3]
前記硬化性樹脂組成物の、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物は400℃4時間窒素雰囲気下で加熱した後の重量減少率が6%以下である、開示1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
[開示4]
前記溶剤の含有量が45重量%以下であり、前記25℃における粘度が1500cP以下である、開示1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[開示5]
前記溶剤の沸点が150℃以上250℃以下である、開示1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[開示6]
前記有機ケイ素化合物が下記一般式(1)で表される構造を有する、開示1~5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
ここで、R、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
[開示7]
有機ケイ素化合物及び溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が2000cP以下であり、
前記硬化性樹脂組成物における前記溶剤の含有量が50重量%以下であり、
前記有機ケイ素化合物が下記一般式(1)で表される構造を有する、硬化性樹脂組成物。
【化2】
ここで、R、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
[開示8]
開示1~6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成される、硬化膜。
[開示9]
400℃4時間窒素雰囲気下で加熱した後の重量減少率が6%以下である、開示8記載の硬化膜。
[開示10]
電極を有する第1の素子と、電極を有する第2の素子との間に開示8又は9記載の硬化膜を有する積層体であって、
前記第1の素子の電極と前記第2の素子の電極とが、前記硬化膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている、積層体。
[開示11]
前記第1の素子と、前記第2の素子との間に無機層を有する、開示10に記載の積層体。
[開示12]
前記貫通孔の表面にバリアメタル層を有する、開示10又は11記載の積層体。
[開示13]
開示10~12のいずれかに記載の積層体を有する、撮像装置。
[開示14]
開示10~12のいずれかに記載の積層体を有する、半導体装置。
[開示15]
電極を有する第1の素子と電極を有する第2の素子の電極が形成された面上に開示1~6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、
各前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、
各前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記第1の素子及び第2の素子の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程と、
前記接合電極が形成された前記第1の素子及び前記接合電極が形成された第2の素子を、前記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程とを有する、積層体の製造方法。
[開示16]
電極を有する素子の電極が形成された面上に開示1~6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記素子の表面を研磨して接合電極を形成する工程とを有する、接合電極を有する素子の製造方法。
[開示17]
支持基板と第3の素子との間に開示8又は9記載の硬化膜を有する積層体であり、
前記第3の素子は第1面と第2面を有し、前記第1面は前記第3の素子と電気的に接続された複数のチップが積層されており、
前記第1面と前記支持基板との間に前記硬化膜を有する、積層体。
[開示18]
前記支持基板と硬化膜との間に無機層を有する、開示17に記載の積層体。
[開示19]
前記第3の素子の第2面上にさらに第4の素子を有し、前記第3の素子と第4の素子が電気的に接続されている、開示17又は18記載の積層体。
[開示20]
開示17~19のいずれかに記載の積層体を有する、撮像装置。
[開示21]
開示17~19のいずれかに記載の積層体を有する、半導体装置。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機ケイ素化合物を含有する。
絶縁層を有機物の硬化性樹脂組成物の硬化膜とすることで、絶縁層の柔軟性が高まり、素子の反りを抑えて電気的接続信頼性を高めることができる。また、硬化性樹脂組成物に有機ケイ素化合物を用いることで、素子の平坦化性に優れた絶縁層とすることができる。
【0008】
上記有機ケイ素化合物は、シルセスキオキサン骨格をケイ素系ポリマーの主鎖に含むことが好ましく、下記一般式(1)で表される構造を有することがより好ましい。有機ケイ素化合物が一般式(1)の構造を有することで、耐熱性と素子の平坦化性がより高まるとともに、電極のズレや割れをより抑えて電気的接続信頼性を高めることができる。また、後述する粘度と密着性を満たしやすくすることができる。
【0009】
【化3】
ここで、R、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【0010】
上記一般式(1)中Rはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記Rはフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。Rがフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0011】
上記一般式(1)中R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記R及びRはフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基又はメチル基であることがより好ましい。R及びRがフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0012】
上記一般式(1)中、m、nはそれぞれ1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。上記mは好ましくは30以上、より好ましくは50以上であり、好ましくは100以下である。上記nは好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0013】
上記有機ケイ素化合物は、反応性部位を有することが好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化性樹脂として反応性部位を有する有機ケイ素化合物を用いることで、電極のズレや割れをより抑えることができる。また、電子部品の製造時に行われる高温処理による硬化膜の分解をより抑えることができる。上記反応性部位としては例えば、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。なお、構造式には示していないが、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物は、両末端に原料に由来する反応性官能基を有している。
【0014】
上記有機ケイ素化合物の含有量は、上記硬化性樹脂組成物中の固形分量(溶剤以外の成分量)100重量部中に、好ましくは80重量部以上、より好ましくは90重量部以上、更に好ましくは95重量部以上である。上記有機ケイ素化合物の含有量は、上記硬化性樹脂組成物中の固形分量100重量部中に、好ましくは100重量部未満、より好ましくは98重量部以下である。
【0015】
上記有機ケイ素化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、5000以上150000以下であることが好ましい。有機ケイ素化合物の分子量が上記範囲であることで、塗布時の成膜性が上がってより平坦化性能が高まるとともに電極のズレや割れをより抑えることができる。上記有機ケイ素化合物の分子量は10000以上であることがより好ましく、30000以上であることが更に好ましく、100000以下であることがより好ましく、70000以下であることが更に好ましい。
なお、上記有機ケイ素化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。溶出溶剤をTHFとして、カラムとしては、時間-MB-M6.0×150mm(ウォーターズ社製)又はその同等品を用い、ポリスチレン標準によって算出することができる。
【0016】
上記一般式(1)の構造を有する有機ケイ素化合物は、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(2)と、下記一般式(3)で表される化合物(3)とを反応させることにより得ることができる。
【0017】
【化4】
上記一般式(2)中、R及びRは上記一般式(1)におけるR及びRと同様の官能基を表す。
【0018】
【化5】
上記一般式(3)中、Rは上記一般式(1)におけるRと同様の官能基を表す。上記一般式(3)中、hは自然数を表し、好ましくは3~6、より好ましくは3又は4である。
【0019】
上記一般式(1)の構造を有する化合物は、上記化合物(3)に代えて、Rを有するハロゲン化シロキサン(例えば末端が塩素化されたジメチルシロキサン等)と、上記化合物(2)とを反応させることでも得ることができる。
【0020】
上記化合物(2)は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物(4)のような塩と下記一般式(5)で表される化合物(5)とを反応させることにより得ることができる。なお、上記化合物(2)は、Xが水素である化合物(5)を用いて化合物(4)と反応させた後に加水分解することによっても得ることができる。
【0021】
【化6】
上記一般式(4)中、Rは上記一般式(1)におけるRと同様の官能基を表す。
【0022】
【化7】
上記一般式(5)中、Rは、上記一般式(1)におけるRと同様の官能基を意味し、Xは水素、塩素又は水酸基を意味する。
【0023】
上記化合物(4)は、例えば、下記一般式(6)で表される化合物(6)を1価のアルカリ金属水酸化物及び水の存在下、有機溶剤の存在下もしくは不存在下で加水分解、重縮合することにより製造することができる。1価のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等を用いることができる。
【0024】
【化8】
上記一般式(6)中、Rは上記一般式(1)におけるRと同様の官能基を意味する。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有する。
硬化性樹脂組成物に溶剤を含有させることで、上記有機ケイ素化合物を素子上に塗布することができる程度の粘度とすることができるとともに、素子表面の凹凸を埋めて平坦にすることができる。その結果、素子の接合信頼性が高まり、積層体の電気的接続信頼性も向上させることができる。上記溶剤は、単一の成分からなっていてもよく、複数の成分の混合物であってもよい。
【0026】
上記硬化性樹脂組成物における上記溶剤は、沸点が150℃以上250℃以下であることが好ましい。
上記溶剤の沸点が上記範囲であることで、平坦化性能をより高めることができる。上記溶剤の沸点は、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましく、230℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。上記範囲の沸点を有する溶剤としては、芳香族系有機溶剤、ラクタム系有機溶剤、ラクトン系有機溶剤が挙げられる。ラクタム系有機溶剤とは環内に-C(=O)NR-をもつ複素環式化合物の有機溶剤であり、ラクトン系有機溶剤とは環内に-C(=O)-をもつ複素環式化合物の有機溶剤である。なお、Rは炭化水素を表す。具体的な化合物としては、例えばシクロペンタノン(沸点:131℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)アニソール(沸点:154℃)、安息香酸エチル(沸点:211~213℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃)、2-ピペリドン(沸点:256℃)、2-ピロリドン(沸点:245℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)、γ―バレロラクトン(沸点:207℃)等が挙げられる。
【0027】
上記溶剤は、上記硬化性樹脂組成物における含有量が50重量%以下である。
硬化性樹脂組成物中における上記溶剤の含有量が上記範囲であることで、硬化時に溶剤の揮発に起因する収縮が小さくなるため、得られる硬化膜に凹凸が生じにくくなり、接続面を平坦にできる。その結果、素子の接合信頼性が高まり、電気的接続信頼性も高めることができる。上記溶剤の含有量は45重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることが更に好ましい。上記溶剤の含有量の下限は特に限定されないが、後述する粘度を満たしやすくし、平坦化性能をより高める観点から30重量%以上であることが好ましい。
【0028】
上記溶剤の含有量は、上記有機ケイ素化合物100重量部に対して50重量部以上100重量部以下であることが好ましい。
上記溶剤の上記有機ケイ素化合物に対する含有量が上記範囲であることで、後述する粘度を満たしやすくできるとともに、素子表面の平坦化性能をより高めることができる。上記溶剤の上記有機ケイ素化合物に対する含有量は、55重量部以上であることがより好ましく、60重量部以上であることが更に好ましく、80重量部以下であることがより好ましく、70重量部以下であることが更に好ましい。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物は硬化反応を促進する触媒を含有することが好ましい。
硬化性樹脂組成物が触媒を有することで、硬化性樹脂組成物をより完全に硬化させることができ、高温処理による硬化膜の分解をより抑えることができる。
上記触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、酢酸第一スズ等の有機スズ化合物、ナフテン酸亜鉛等の金属カルボキシレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニア化合物、チタン化合物等が挙げられる。なかでもより硬化性樹脂組成物の硬化を促進できることからジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
上記触媒は、硬化性樹脂組成物が硬化した後も存在する。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることで形成される硬化膜は硬化反応を促進する触媒を含有することが好ましい。
【0030】
上記触媒の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂組成物中の有機ケイ素化合物100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であることが好ましい。触媒の含有量を上記範囲とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化をより促進することができる。上記触媒の含有量は、0.1重量部以上であることがより好ましく、0.2重量部以上であることが更に好ましく、7重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
【0031】
上記硬化性樹脂組成物は、上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の反応性部位と反応可能な多官能架橋剤を含有することが好ましい。
上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の重合体間を有機ケイ素化合物の反応性部位と反応可能な多官能架橋剤が架橋することで、硬化物の架橋密度が上昇し、高温中の分解がより抑制される。その結果、高温処理中の分解ガスの発生による空隙の発生や、それによる接続時の電極のズレや電気的接続信頼性の低下をより抑制することができる。上記多官能架橋剤としては、例えば、上記反応性部位がシラノール基である場合は、ジメトキシシラン化合物、トリメトキシシラン化合物、ジエトキシシラン化合物、トリエトキシシラン化合物等のアルコキシシラン化合物等又はテトラメトキシシラン化合物及びテトラエトキシシラン化合物の縮合より得られるシリケートオリゴマー等が挙げられる。なかでも架橋密度の向上と耐熱性向上の観点から、シリケートオリゴマーが好ましい。アルコキシシラン化合物の例としては、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等があり、シリケートオリゴマーの例としては、シリケートMS51、MS56、MS57、MS56S(いずれも三菱ケミカル社製)、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS485(いずれもコルコート社製)等が挙げられる。
【0032】
上記多官能架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。多官能架橋剤の含有量を上記範囲とすることで、硬化膜の架橋密度を好適な範囲にし、かつ熱処理時の硬化膜の硬度を上記の範囲とすることができる。上記多官能架橋剤の含有量は、3重量部以上であることがより好ましく、3.2重量部以上であることが更に好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることが更に好ましい。
【0033】
上記硬化性樹脂組成物は、密着付与剤を含有することが好ましい。
上記密着付与剤を含有することで、シリコンウエハへの密着性を上げることができる。上記密着付与剤としては、例えば、シランカップリング剤、タッキファイヤー等が挙げられる。なかでもSi元素への反応性とそれに伴うシリコンウエハへの密着性向上効果の観点から、シランカップリング剤が好ましい。密着付与剤の例としては、KBM-573(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0034】
上記硬化性樹脂組成物は、耐熱性樹脂を含有することが好ましい。
硬化性樹脂組成物に耐熱性樹脂を用いることで、厚みのある硬化膜とした場合であっても高温処理で膜割れが発生し難い硬化膜とすることができる。
【0035】
上記耐熱性樹脂はポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、特に耐熱性の観点からポリイミドが好ましい。
【0036】
上記耐熱性樹脂の分子量は、重量平均分子量は特に限定されないが、5000以上150000以下であることが好ましい。耐熱性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であることで、硬化性樹脂組成物の粘度及び固形分濃度を本発明の範囲に調節しやすくすることができる。上記耐熱性樹脂の分子量は10000以上であることがより好ましく、30000以上であることが更に好ましく、100000以下であることがより好ましく、70000以下であることが更に好ましい。
【0037】
上記耐熱性樹脂の含有量は、上記有機ケイ素化合物100重量部に対して0.5重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
耐熱性樹脂の含有量を上記範囲とすることで、厚みのある硬化膜とした場合であっても高温処理でより膜割れが発生し難い硬化膜とすることができる。上記耐熱性樹脂の含有量は、有機ケイ素化合物100重量部に対して0.7重量部以上であることがより好ましく、0.75重量部以上であることが更に好ましく、1重量部以上であることが特に好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることが更に好ましく、5重量部以下であることが特に好ましい。
【0038】
上記耐熱性樹脂がポリイミドである場合、上記ポリイミドはシロキサン結合を有することが好ましい。
上記ポリイミドがシロキサン結合を有することで、硬化性樹脂組成物に含まれる有機ケイ素化合物との相溶性が高まるため、塗布の際にポリイミドが析出することによる凹凸(面荒れ)をより抑えることができる。
【0039】
上記ポリイミドがシロキサン結合を有する場合、上記ポリイミドは、主鎖構造中の炭素原子とケイ素原子の比C/Siが17以下であることが好ましい。
ポリイミドの主鎖構造中の炭素原子とケイ素原子の比が上記範囲となることで、硬化性樹脂組成物に含まれる有機ケイ素化合物との相溶性がより高まるため、塗布の際に面荒れをより抑えることができる。上記C/Siは、16.5以下であることがより好ましく、16以下であることが更に好ましい。上記C/Siの下限は特に限定されないが、実用上及び400℃耐熱性をより高める観点から4以上であることが好ましい。なお、上記ポリイミドの主鎖構造中の炭素原子とケイ素原子の比C/Siは繰り返し単位内のC、Siの比であり、両末端のC、Siは含まない。また上記C/Siは、H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRによって上記ポリイミドの構造を得て、主鎖の繰り返し単位からC原子とSi原子の数を計測することで求めることができる。
【0040】
上記ポリイミドは末端の少なくとも一方にオキサジン環又はイミド環構造を有することが好ましく、両末端にオキサジン環又はイミド環構造を有することがより好ましい。
上記ポリイミドが末端にオキサジン環又はイミド環構造を有することで、厚膜とした際の面荒れをより抑えることができる。なお上記オキサジン環及びイミド環構造は置換基を有していてもよい。
なかでも、上記ポリイミドは少なくとも一方の末端に下記式(7)~(12)のうちいずれかの構造を有することが更に好ましく、両末端が下記式(7)~(12)のうちいずれかの構造を有することが特に好ましい。なお、下記式中の「*」は上記ポリイミドの末端以外の部分との結合箇所を表す。
【0041】
【化9】
【0042】
上記ポリイミドは重量平均分子量が1000以上50000以下であることが好ましい。
上記ポリイミドの重量平均分子量が上記範囲であることで、有機ケイ素化合物との相溶性が向上し、取り扱い性をより高めることができる。上記重量平均分子量は2000以上であることがより好ましく、3000以上であることが更に好ましく、35000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。
なお、上記ポリイミドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。溶出溶剤をTHFとして、カラムとしては、時間-MB-M6.0×150mm(ウォーターズ社製)又はその同等品を用い、ポリスチレン標準によって算出することができる。
【0043】
上記ポリイミドの含有量は、上記有機ケイ素化合物100重量部に対して0.5重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
ポリイミドの含有量を上記範囲とすることで、厚みのある硬化膜とした場合であっても高温処理でより膜割れが発生し難い硬化膜とすることができる。上記ポリイミドの含有量は、有機ケイ素化合物100重量部に対して0.7重量部以上であることが好ましく、0.75重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることが更に好ましく、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
【0044】
上記硬化性樹脂組成物は必要に応じて粘度調整剤、充填剤等の他の添加剤を含有していてもよい。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物は、25℃における粘度が2000cP(2.0kg/m・s)以下である。
硬化性樹脂組成物の粘度が上記範囲であることで、表面に凹凸を有する素子であっても凹凸を埋めて素子の接続面を平坦化することができ、素子の接合信頼性が高まることから、電気的接続信頼性を向上させることができる。上記25℃における粘度は1500cP(1.5kg/m・s)以下であることが好ましく、1300cP(1.3kg/m・s)以下であることがより好ましく、1000cP(1.0kg/m・s)以下であることが更に好ましい。上記25℃における粘度の下限は特に限定されないが、塗布性の観点から10cP(10kg/m・s)以上であることが好ましい。上記25℃における粘度は、硬化性樹脂組成物中の固形成分量、溶剤量によって調節することができる。
なお、上記25℃における粘度は、E型粘度計(TVE25H、東機産業社製、又はその同等品)を用いて、25℃、10.0rpmせん断時における動粘度を測定することで測定することができる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、シリコンウエハ上にスピンコートし、上記溶剤を乾燥させた後に熱硬化させ成膜した測定サンプルにおいてJISK 5600-5-6に準拠して測定したクロスカット法による密着性が0~2点である。
硬化性樹脂組成物の硬化物が上記範囲の密着性であることで、素子の接合信頼性が高まり、素子の反りや電極の割れを抑えて電気的接続信頼性を高めることができる。上記クロスカット法による密着性は0~1点であることが好ましく、0点であることがより好ましい。上記クロスカット法による密着性は、有機ケイ素化合物の化学構造、置換する官能基の構造、分子量、密着付与剤の有無等によって調節することができるが、特に上記有機ケイ素化合物が一般式(1)の構造を有すると好適に密着性を上げることができる。より具体的には、上記一般式(1)のm、nを上記好適な範囲とすることにより、硬化膜の密着性を上げることができる。
【0047】
上記密着性は、具体的には以下の方法で測定することができる。
室温条件下、8インチのシリコンウエハ中央部に硬化性樹脂組成物を12g滴下し、スピンコーター(ACT-400II、ACTIVE社製、又は同等品)を用い、シリコンウエハ(表面粗さ<0.1μm)上に塗布する。硬化性樹脂を塗布したウエハを室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させる。なおスピンコートの回転時間は、乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みが25μmとなるように調整する。更にその後300℃で1時間加熱することで、硬化性樹脂組成物が塗布・硬化したシリコンウエハ積層体を得る。
得られたシリコンウエハ積層体の樹脂面からスーパーカッターガイド(大佑機材社製、又はその同等品)を用いて1mm幅となるように、新品の単一刃カッターで10本切り込みを入れる。刃を交換したのち90°方向を変えて再度10本切込みを入れ、1mm四方の格子状の切り込みを入れる。セロテープ(登録商標)(CT1835、ニチバン社製、又はその同等品)を格子状の切り込み箇所全体を覆うように貼付し、気泡が抜け塗布面が透けるように強くこすったのち5分間常温で静置する。その後、テープを剥離角度が60°となるように0.3m/minの速度で剥離し、剥離面を観察する。観察した剥離面の様子から、JIS K5600-5-6に基づき試験結果を分類し、密着性を0~5点に分類する。
なお、本発明において0~5点には以下のように分類する。
0点:どの格子の目にもはがれがない。
1点:格子状の測定サンプルの、「全面的に剥離は発生していないが、格子線に沿って部分的に剥離が発生した格子」の個数が1か所以上4か所以下である。
2点:格子状の測定サンプルの、「全面的に剥離は発生していないが、格子線に沿って部分的に剥離が発生した格子」の個数が5か所以上11か所以下である。
3点:格子状の測定サンプルの、「全面的に剥離は発生していないが、格子線に沿って部分的に剥離が発生した格子」の個数が12か所以上28か所以下である、または全面的にはがれている格子が存在する。
4点:格子状の測定サンプルの、「全面的に剥離は発生していないが、格子線に沿って部分的に剥離が発生した格子」の個数が12か所以上28箇所以下である、かつ全面的にはがれている格子が存在する。
5点:格子状の測定サンプルのはがれ割合が35%以上である。
剥離が発生した格子の個数は、光学顕微鏡(オリンパス社製等)ではがれ部分を観察し、剥離が発生した格子の個数を算出することで求められる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物の23℃における引張弾性率が100MPa以上10GPa以下であり、300℃における引張弾性率が10000Pa以上1GPa以下であることが好ましい。上記硬化物の23℃及び300℃における引張弾性率が上記範囲であることで、密着性をより高めることができ、素子の接合信頼性が向上する結果、電極の割れを抑えて電気的接続信頼性を高めることができる。上記23℃における引張弾性率は300MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることが更に好ましく、5GPa以下であることがより好ましく、2GPa以下であることが更に好ましい。また、上記300℃における引張弾性率は、50000Pa以上であることがより好ましく、0.1MPa以上であることが更に好ましく、500MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることが更に好ましい。
【0049】
上記引張弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA-200等)によって測定することができる。より具体的には、アプリ―ケーター(ベーカー式アプリケーターSA-201、テスター産業株式会社製、又はその同等品)を用いてシート状に塗布した硬化性樹脂組成物を、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱し、厚み500μmの硬化性樹脂組成物の硬化物のフィルムを得る。得られたフィルムサンプルを5mm×35mmのサイズに打ち抜き、測定サンプルを作製する。測定サンプルを、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で測定する。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤を乾燥させた後に300℃1時間で硬化させた硬化物を400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率が6%以下であることが好ましい。
硬化物の窒素加熱後の重量減少率が上記範囲であることで、素子をより確実に接合できるとともに、電極接合の際に分解した硬化物に起因する界面での気泡、クラックの発生や界面での剥離をより抑えることができる。上記重量減少率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。上記重量減少率の下限は特に限定されず、0%に近いほど良いものであるが、製造技術上0.5%程度が限度である。なお、硬化性樹脂組成物の硬化条件は、上記引張弾性率の測定と同様の条件を用いる。
【0051】
上記400℃4時間の熱処理後の重量減少率は、硬化性樹脂組成物の組成、硬化性樹脂組成物を構成する樹脂素材の種類、硬化性樹脂組成物の硬化条件等により調整することができる。
具体的には例えば、硬化性樹脂組成物に耐熱性の高い樹脂素材や無機成分を用いること、架橋剤の含有量を増やすこと等により、上記400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率を減少させることができる。
また、硬化膜を構成する樹脂素材の種類を、耐熱性の高い樹脂(例えば分子量の大きい樹脂や、耐熱性の高い主鎖や置換基を有する樹脂)にすることで、上記400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率を減少させることができる。
【0052】
上記硬化性樹脂組成物は、硬化物を400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率は、具体的には以下の方法で測定することができる。
アプリ―ケーター等を用いてシート状に塗布した硬化性樹脂組成物を、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱し、厚み100μmの硬化性樹脂組成物の硬化物のフィルムを得る。得られたフィルムを3-10mg程度秤量し、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて、窒素フロー(50mL/min)下、10℃/minの昇温速度で25℃から400℃まで加熱し、昇温後400℃で4時間保持したときの重量減少率を測定する。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記有機ケイ素化合物及び必要に応じて上記触媒や上記多官能架橋剤等の添加剤を上記溶剤と混合することで製造することができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機ケイ素化合物と溶剤を含有し、上記25℃における粘度、上記溶剤の含有量及び上記クロスカット法による密着性を満たすことで、素子表面に凹凸を有する場合であっても接続面を平坦化し表面の空隙なく素子を接続し、素子間に高い接合信頼性を付与することができる。一方で、上記有機ケイ素化合物が上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物である場合は、上記25℃における粘度、上記溶剤の含有量を満たすだけで本発明の効果を発揮することができる。
このような、有機ケイ素化合物及び溶剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、25℃における粘度が2000cP以下であり、前記硬化性樹脂組成物における前記溶剤の含有量が50重量%以下であり、前記有機ケイ素化合物が下記一般式(1)で表される構造を有する、硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。なお、上記有機ケイ素化合物、溶剤、25℃における粘度及び溶剤の含有量については、前述のものと同様である。
【0055】
【化10】
ここで、R、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、凹凸を埋めて平坦化する性能に優れており、硬化膜は柔軟性を有していることから、電極を有する2つの素子の電極間を電気的に接続して積層体を製造する際の絶縁層として好適に用いることができる。
このような本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成される、硬化膜もまた本発明の1つである。
【0057】
本発明の硬化膜は、400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率が6%以下であることが好ましい。
硬化物の窒素加熱後の重量減少率が上記範囲であることで、素子をより確実に接合できるとともに、電極接合の際に分解した硬化物に起因する界面での気泡、クラックの発生や界面での剥離をより抑えることができる。上記重量減少率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。上記重量減少率の下限は特に限定されず、0%に近いほど良いものであるが、製造技術上0.5%程度が限度である。
【0058】
上記400℃4時間の熱処理後の重量減少率は、硬化性樹脂組成物の組成、硬化性樹脂組成物を構成する樹脂素材の種類、硬化性樹脂組成物の硬化条件等により調整することができる。
具体的には例えば、硬化性樹脂組成物に耐熱性の高い樹脂素材や無機成分を用いること、架橋剤の含有量を増やすこと等により、上記400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率を減少させることができる。
また、硬化膜を構成する樹脂素材の種類を、耐熱性の高い樹脂(例えば分子量の大きい樹脂や、耐熱性の高い主鎖や置換基を有する樹脂)にすることや、硬化膜を構成する硬化性樹脂組成物の硬化条件を、硬化が十分に進行するような高温としたり、硬化時間を長時間としたりすることで、上記400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率を減少させることができる。
【0059】
上記硬化膜の400℃4時間窒素加熱した後の重量減少率は、具体的には以下の方法で測定することができる。
硬化膜を3-10mg程度秤量し、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて、窒素フロー(50mL/min)下、10℃/minの昇温速度で25℃から400℃まで加熱し、昇温後400℃で4時間保持したときの重量減少率を測定する。
【0060】
また、電極を有する第1の素子と、電極を有する第2の素子との間に本発明の硬化膜を有する積層体であって、前記第1の素子の電極と前記第2の素子の電極とが、前記硬化膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている、積層体もまた、本発明の1つである(以下、単に積層体又は積層体Aともいう)。以下、本発明の積層体について説明する。
【0061】
本発明の積層体は、電極を有する第1の素子と、電極を有する第2の素子との間に本発明の硬化膜を有し、上記第1の素子の電極と上記第2の素子の電極とが、上記硬化膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている。
第1の素子の電極(以下、第1の電極ともいう)と第2の素子の電極(以下、第2の電極ともいう)との間に設けられた硬化膜が絶縁層として働くことによって、電流の短絡を抑えることができる。従来の絶縁層はSiやSiOといった固い無機材料を用いていたため、絶縁層の形成時や積層体の形成時に反りが発生した場合、これを応力緩和で解消することができず、その結果、素子の反れ及びこれに起因する電極のズレや割れが起こりやすくなっていた。本発明では、無機材料よりも柔軟性の高い硬化膜を絶縁層として用いることで、高い電気的接続信頼性を発揮することができる。特に、上記硬化膜の元になる本発明の樹脂組成物は、素子に凹凸を有する場合であっても、凹凸を埋めて接合面を平坦とすることができることから、素子の接合信頼性が高まり、高い電気的接続信頼性を有する積層体とすることができる。また、従来の絶縁層は、蒸着によって形成していたため、形成に時間がかかっていたが、本発明の積層体の硬化膜は、例えば硬化性樹脂組成物の塗布、硬化によって形成できるため、生産効率を高めることができる。
なおここで、電気的に接続されているとは、上記貫通孔に充填された導電性材料等によって第1の電極及び第2の電極が接続されている状態のことを指す。
【0062】
上記第1の素子及び第2の素子は、特に限定されず、素子、配線及び電極が形成された回路素子を用いることができる。例えば、画素部(画素領域)が設けられたセンサ回路素子、固体撮像装置の動作に係る各種信号処理を実行するロジック回路等の周辺回路部が搭載された回路素子などを用いることができる。
【0063】
上記第1の素子及び第2の素子が有する電極の材料及び上記導電性材料は特に限定されず、金、銅、アルミニウム等の従来公知の電極材料を用いることができる。
【0064】
上記硬化膜の厚みは特に限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
硬化膜の厚みが上記範囲であることで、絶縁層としての機能をより発揮することができるとともに、電極のズレや割れをより抑えることができる。上記硬化膜の厚みは20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0065】
本発明の積層体は、上記第1の素子と、上記第2の素子との間に無機層を有することが好ましい。
第1の素子と、第2の素子との間に無機層を設けることで、絶縁性が高まりより接続信頼性に優れる積層体とすることができる。なお、従来の積層体は、10~20μm程度の厚みを有する無機材料からなる絶縁層を用いているため、素子及び積層体の反りが解消できず接続信頼性低下の原因となるが、本発明では絶縁層は上記硬化膜であるため、上記無機層の厚みを薄くすれば無機層の効果を発揮しつつ素子及び積層体に発生した反りも解消することができる。
【0066】
上記無機層の材料は特に限定されず、例えば、Si、SiO、Al等が挙げられる。なかでも、絶縁性と耐熱性に優れることからSi、SiOが好ましい。
【0067】
上記無機層の厚みは、より積層体の接続信頼性を高める観点から1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。
【0068】
本発明の積層体は、上記貫通孔の表面にバリアメタル層を有することが好ましい。
バリアメタル層は貫通孔に充填された導電性材料(例えばCu電極の場合Cu原子)の硬化膜中への拡散を防ぐ役割を有する。貫通孔の表面にバリアメタル層を設けることで、貫通孔を埋める導電性材料は電極と接する面以外がバリアメタル層で覆われることになるため、導電性材料の硬化膜への拡散による短絡、導通不良をより抑制することができる。上記バリアメタル層の材料は、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの公知の材料を用いることができる。
【0069】
上記バリアメタル層の厚みは特に限定されないが、より積層体の接続信頼性を高める観点から1nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0070】
ここで、本発明の積層体の一態様を模式的に表した図を図1に示す。図1に示すように、本発明の積層体は、電極3を有する第1の素子1と第2の素子2が硬化膜4を介して接合されており、第1の素子1及び第2の素子2上の電極3は、硬化膜4に設けられた貫通孔5に充填された導電性材料を通して電気的に接続された構造となっている。従来の積層体は、絶縁層に当たる硬化膜4の部分が固い無機材料であったため、素子や積層体に反りが発生した場合にこれを応力緩和によって解消できず、電極のズレや割れが起きやすくなっていた。本発明は絶縁層に柔軟性を有する有機化合物を用いることで、素子や積層体の反りを解消できるため、電極のズレや割れを抑えることができる。
【0071】
図2に本発明の積層体の一態様を模式的に表した図を示した。図2の態様では、硬化膜4の間に無機層6が設けられており、より絶縁性が高められている。なお、本発明の無機層6の厚みは、従来の積層体の絶縁層よりも格段に薄くてよいため、素子や積層体の反りを解消する際の妨げとならない。また、図2では無機層6が硬化膜4の間に設けられているが、第1の素子1及び第2の素子2上に設けられていてもよい。また、図2では無機層6が、第1の素子1側及び第2の素子2側の硬化膜4上にそれぞれ設けられているが、どちらか一方のみに設けられていてもよい。更に、図2の態様では貫通孔5の表面にバリアメタル層7が設けられている。貫通孔5の表面にバリアメタル層7を形成することで、貫通孔5内に充填される導電性材料が硬化膜4に拡散し難くなるため、短絡や導通不良をより抑えることができる。
【0072】
本発明の積層体を製造する方法としては例えば、電極を有する第1の素子の電極が形成された面上に本発明の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、前記第1の素子の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程と、前記接合電極が形成された前記第1の素子及び前記接合電極が形成された第2の素子を、前記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程とを有する積層体の製造方法が挙げられる。このような、積層体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0073】
本発明の積層体の製造方法は、まず、電極を有する第1の素子と電極を有する第2の素子の電極が形成された面上に本発明の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程を行う。
上記電極を有する第1及び第2の素子、及び、硬化性樹脂組成物は、本発明の積層体の電極を有する第1及び第2の素子、及び、本発明の硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
【0074】
上記成膜の方法は特に限定されず、スピンコート法等従来公知の方法を用いることができる。
溶剤乾燥条件は特に限定されないが、残存溶剤を減らし硬化膜の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下の温度で、例えば30分、より好ましくは1時間程度加熱することが好ましい。
硬化条件は特に限定されないが、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下の温度で、例えば1時間以上、より好ましくは2時間以上程度加熱することが好ましい。加熱時間の上限は特に限定されないが、硬化膜の熱分解を抑制する観点から3時間以下であることが好ましい。例えば具体的には、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱する等が挙げられる。
【0075】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、各上記硬化膜に貫通孔を形成する工程を行う。
上記貫通孔はパターニングされていてもよい。上記貫通孔を形成する方法は特に限定されず、COレーザー等のレーザー照射やエッチング等によって形成することができる。なお上記貫通孔は素子の電極面上に他の層が形成されている場合、上記他の層も貫通して素子の電極面が露出するように形成される。
【0076】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、必要に応じて無機層及び/又はバリアメタル層を形成する工程を行う。
上記無機層及びバリアメタル層は本発明の積層体と同様のものを用いることができる。上記無機層及びバリアメタル層はスパッタリングや蒸着等によって形成することができる。
上記無機層を形成する工程は、上記硬化膜を形成する工程の前及び/又は後に行うことが好ましい。上記バリアメタル層の形成は上記貫通孔を形成する工程の後に行うことが好ましい。
【0077】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、各上記貫通孔を導電性材料で充填する工程を行う。上記導電性材料を充填する方法としてはメッキなどを用いることができる。
上記導電性材料は、本発明の積層体の導電性材料と同様のものを用いることができる。
【0078】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、上記第1の素子及び第2の素子の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程を行う。
研削によって不要な部分に形成された上記導電性材料を除去することで2枚の素子に形成された電極間をつなぐ接合電極が形成される。上記研磨は、硬化膜が露出する、又は、上記無機層がある場合は無機層が露出するまで、導電性材料で形成された層を平坦化除去することが好ましい。
上記研磨方法は特に限定されず、例えば化学的機械研磨法などを用いることができる。
【0079】
このような、電極を有する素子の電極が形成された面上に本発明の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、前記硬化膜に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、前記素子の表面を研磨して接合電極を形成する工程とを有する、接合電極を有する素子の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記接合電極を有する素子は、素子間の接合電極同士が接合するように貼り合わせることで、積層体を形成するための部材である。上記素子、硬化膜、硬化性樹脂組成物及びその他の構成及び各工程については、本発明の硬化性樹脂組成物、積層体及び積層体の製造方法に関する説明と同様である。
【0080】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、上記接合電極が形成された前記第1の素子及び上記接合電極が形成された第2の素子を、上記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程を行う。
本発明の硬化性樹脂組成物は、素子表面に凹凸を有する場合であっても凹凸を埋めることができるため、得られる硬化膜の接合面が平坦となり、貼り合わせを確実に行えることから電気的接続信頼性を高めることができる。
第1の素子と第2の素子を貼り合わせる方法としては、熱処理によって電極及び接続電極を溶融させて接続する方法等が挙げられる。上記熱処理は通常400℃4時間程度である。
【0081】
本発明の積層体の用途は特に限定されないが、素子の接合面を平坦とできることによる高い接合信頼性と電気的接続信頼性を有し、特に薄い素子同士を接合させる場合であっても素子や積層体の反り、割れが抑えられることから、半導体装置、撮像装置を構成する積層体に好適に用いることができる。
このような本発明の積層体を有する半導体装置及び撮像装置もまた、本発明の1つである。
【0082】
本発明の硬化膜を用いた積層体としては、上記積層体Aのほかに、素子上に電気的に接続された複数のチップが積層され、素子のチップが積層された面と支持基板とが本発明の硬化膜を介して接合された構造の積層体も挙げられる。このような構造の積層体では、支持基板と素子及び各チップとは電気的に接続されないため、本発明の硬化膜が電気的接続の経路を直接保護することはない。しかし、本発明の硬化膜が素子及びチップの凹凸を充分に埋めて支持基板との接合信頼性を高めることで、素子及びチップの反りや割れを抑えられるため、素子と各チップとの間の電気的接続信頼性を高めることができる。
このような、支持基板と第3の素子との間に本発明の硬化膜を有する積層体であり、前記第3の素子は第1面と第2面を有し、前記第1面は前記第3の素子と電気的に接続された複数のチップが積層されており、前記第1面と前記支持基板との間に前記硬化膜を有する、積層体もまた、本発明の1つである(以下、積層体Bという)。
【0083】
本発明の積層体Bは、支持基板を有する。上記支持基板としては、例えば、ガラス、単結晶シリコン等が挙げられる。
【0084】
本発明の積層体Bは、第1面と第2面を有する第3の素子を有し、上記第1面は上記第3の素子と電気的に接続された複数のチップが積層されている。
上記第3の素子は、上記第1の素子及び第2の素子と同様のものを用いることができる。上記チップとしては例えば、記憶回路素子、ロジック回路素子等が挙げられる。これら複数のチップは単一種であっても、異なる種類の組み合わせでも構わない。また、上記「電気的に接続している」とは、上記積層体Aのものと同様の意味である。
【0085】
本発明の積層体Bは、上記支持基板と上記硬化膜の間に無機層を有することが好ましい。
支持基板と硬化膜の間にさらに無機層を設けることで、絶縁性をより高めることができる。上記無機層については、上記積層体Aの無機層と同様のものを用いることができる。
【0086】
本発明の積層体Bは、上記第3の素子の上記第2面上にさらに第4の素子を有し、上記第3の素子と上記第4の素子が電気的に接続されていることが好ましい。
上記第4の素子は、上記第1~3の素子と同様のものを用いることができる。
【0087】
ここで、本発明の積層体Bの一態様を模式的に表した図を図3に示す。図3に示すように、本発明の積層体Bは、第3の素子8の第1面上に第3の素子8と電気的に接続された複数のチップ9が積層され、第1面の反対面である第2面上に第3の素子8と電気的に接続された第4の素子10が積層されており、更に、第3の素子8の第1面と支持基板11とが硬化膜4を介して積層された構造となっている。従来の積層体は、絶縁層に当たる硬化膜4の部分が固い無機材料であったため、素子や積層体に反りが発生した場合にこれを応力緩和によって解消できず、反りや空隙の発生による支持基板への接合不良が起きやすくなっていた。本発明の積層体Bでは硬化膜に本発明の硬化性樹脂組成物の硬化膜を用いることでチップ9と支持基板11の間の凹凸を充分に充填して接続面を平坦化でき、素子やチップの反り及び接合不良を解消できるため、素子に高い電気的接続信頼性を付与することができる。
【0088】
図4に本発明の積層体の一態様を模式的に表した図を示した。図4の態様では、図3の態様に加えて硬化膜4と支持基板の間に無機層6が設けられており、より絶縁性が高められている。なお、本発明の無機層6の厚みは、従来の積層体の絶縁層よりも格段に薄くてよいため、素子や積層体の反りを解消する際の妨げとならない。
【0089】
本発明の積層体Bを製造する方法としては例えば、上記第3の素子の第1面上に本発明の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程と、上記硬化膜が形成された上記第3の素子の第1面と上記支持基板を貼り合わせる工程とを有する積層体の製造方法が挙げられる。
【0090】
上記積層体Bの製造方法は、まず上記第3の素子の第1面上に本発明の硬化性樹脂組成物を成膜し、溶剤乾燥後に硬化させて硬化膜を形成する工程を行う。
本発明の硬化性樹脂組成物は、素子表面に凹凸を有する場合であっても凹凸を埋めることができるため、得られる硬化膜の接合面が平坦となる。その結果、後の工程で貼り合わせを確実に行えることから素子や積層体の接合不良を解消できるため、素子間に高い電気的接続信頼性を付与することができる。上記成膜の方法及び条件は、上記積層体Aの製造方法と同様である。
【0091】
上記積層体Bの製造方法は、次いで、必要に応じて無機層を形成する工程を行う。
上記無機層の形成方法は、上記積層体Aの製造方法と同様である。
【0092】
上記積層体Bの製造方法は、次いで、上記硬化膜が形成された上記第3の素子の第1面と上記支持基板を貼り合わせる工程を行う。
上記第3の素子と上記支持基板とを貼り合わせる方法としては、熱処理によって表面を化学的に結合させて接合する方法等が挙げられる。上記熱処理は通常400℃4時間程度である。
【0093】
本発明の積層体Bの用途は特に限定されないが、素子及びチップの凹凸を充分に埋めて接続面を平坦とできることによる高い接合信頼性を有し、特に薄い素子同士を接合させる場合であっても素子や積層体の反り、割れが抑えられることから、半導体装置、撮像装置を構成する積層体に好適に用いることができる。
このような本発明の積層体Bを有する半導体装置及び撮像装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0094】
本発明によれば、素子表面に凹凸を有する場合であっても接続面を平坦化し表面の空隙なく素子を接続し、素子間に高い接合信頼性を付与することができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜、該硬化膜を有する積層体、該積層体を有する撮像装置及び半導体装置、該積層体の製造方法及び該積層体の製造に用いる接合電極を有する素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
図2】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
図3】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
図4】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0097】
(1)樹脂Aの製造
還流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製、分子量198.29)65.4g、水酸化ナトリウム8.8g、水6.6g、及び2-プロパノール263mLを加えた。窒素気流下、撹拌しながら加熱を開始した。還流開始から6時間撹拌を継続したのち室温で1晩静置した。そして反応混合物を濾過器に移し、窒素ガスで加圧して濾過した。得られた固体を2-プロピルアルコールで1回洗浄、濾過したのち80℃で減圧乾燥を行うことにより、無色固体(DD-ONa)33.0gを得た。
【0098】
滴下漏斗、還流冷却器、温度計を取り付けた内容積300mlの3つ口フラスコに、化合物(DD-ONs)11.6g、テトラヒドロフラン100g、およびトリエチルアミン3.0gを仕込み、乾燥窒素にてシールした。マグネチックスターラーで撹拌しながら、室温でメチルトリクロロシラン4.5g:30mmolを滴下した。その後、室温で3時間撹拌した。反応液に水50gを投入して、生成した塩化ナトリウムを溶解するとともに、未反応のメチルトリクロロシランを加水分解した。このようにして得られた反応混合物を分液し、有機層を1Nの塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回洗浄し、更にイオン交換水で3回水洗を繰り返した。洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレターで減圧濃縮して、7.1gの白色粉末状固体(DD(Me)-OH)を得た。
【0099】
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)-OH5.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)18.1g、硫酸5.1g、トルエン59g、4-メチルテトラヒドロピラン14.5gをフラスコに入れた。100℃で5時間攪拌したのち、反応混合物へ水を注ぎ、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残留物を2-プロパノール:酢酸エチル=50:7(重量比)の比率で混合した溶液に再沈殿させて精製し、乾燥させることで下記式(13)の構造を有し、m2が30、n2(DMS鎖数)が平均4である有機ケイ素化合物(樹脂A、重量平均分子量36000)を得た。
【0100】
【化11】
【0101】
(2)樹脂Bの製造
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)-OH5.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)11.2g、硫酸3.9g、トルエン52.0g、4-メチルテトラヒドロピラン13.0g.をフラスコに入れた。100℃で5時間攪拌したのち、反応混合物へ水を注ぎ、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残留物を2-プロパノール:酢酸エチル=50:7(重量比)の比率で混合した溶液に再沈殿させて精製し、乾燥させることで上記式(13)の構造を有し、m2が36、n2(DMS鎖数)が平均3である有機ケイ素化合物(樹脂B、重量平均分子量46000)を得た。
【0102】
(3)樹脂Cの製造
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)-OH5.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)22.9g、硫酸2.8g、トルエン60.0g、4-メチルテトラヒドロピラン15.0gをフラスコに入れた。100℃で6時間攪拌したのち、反応混合物へ水を注ぎ、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残留物を2-プロパノール:酢酸エチル=29:2(重量比)の比率で混合した溶液に再沈殿させて精製し、乾燥させることで上記式(13)の構造を有し、m2が44、n2(DMS鎖数)が平均5である有機ケイ素化合物(樹脂C、重量平均分子量52000)を得た。
【0103】
(4)樹脂Dの製造
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入基を備えた反応容器にテトラカルボン酸二無水物4,4′-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride (東京化成工業社製、分子量444.24)11.41gとアニソール92.72gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に芳香族ジアミンPAM-E(信越化学工業社製、分子量280.51)7.573gを添加した。ディーンスタークトラップとコンデンサーとをフラスコに取り付け、混合物を100℃で1時間加熱還流し、更に170℃で4時間還流させることによって、両末端がアミンであるイミド化合物を得た。冷却したのち、シトラコン酸無水物(東京化成工業社製、分子量112.08)を加え、120℃で10分間加熱しながら攪拌し、更に170℃で20分間加熱することによって、下記式(14)の構造を有するイミド構造を有する化合物(樹脂D、重量平均分子量25000)を得た。また、テトラカルボン酸二無水物4,4′-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydrideの投入量を11.76gとし、それ以外は同様の投入量、手順で処理することで、重量平均分子量69000の樹脂Dを得た。加えて、テトラカルボン酸二無水物4,4′-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydrideの投入量を10.00gとし、それ以外は同様の投入量、手順で処理することで、重量平均分子量9000の樹脂Dを得た。
【0104】
【化12】
ここでlは1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。
【0105】
(5)樹脂Eの製造
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入基を備えた反応容器にテトラカルボン酸二無水物4,4′-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride(東京化成工業社製、分子量444.24)120.0gとトルエン400gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に芳香族ジアミン2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropane(東京化成工業社製、分子量518.46)147.11gを添加した。ディーンスタークトラップとコンデンサーとをフラスコに取り付け、合物を100℃で1時間加熱還流し、更に170℃で4時間還流させることによって、両末端がアミンであるイミド化合物を得た。次いで反応液中に過剰量のフェノール及びパラホルムアルデヒドを添加し、得られた混合物を更に170℃で1時間還流して、末端のベンゾオキサジン化を行った。反応終了後、イソプロパノールを添加し再沈殿させた後、沈殿物を回収し乾燥させた。このようにして、イミド骨格を有しかつ末端にベンゾオキサジン構造を有する下記式(15)の構造を有するベンゾオキサジン構造を有する化合物(樹脂E、重量平均分子量35000)を得た。また、テトラカルボン酸二無水物4,4′-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydrideの投入量を142.76gとし、それ以外は同様の投入量、手順で処理することで、重量平均分子量4000の樹脂Eを得た。
【0106】
【化13】
ここでkは1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。
【0107】
(6)樹脂F
小西化学工業社製SR-3321を用いた。なお、SR-3321は、上記一般式(1)の構造を有さない有機ケイ素化合物である。
【0108】
(7)樹脂Gの製造
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)-OH5.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)11.2g、硫酸2.1g、トルエン52.0g、4-メチルテトラヒドロピラン13.0gをフラスコに入れた。100℃で5時間攪拌したのち、反応混合物へ水を注ぎ、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残留物を2-プロパノール:酢酸エチル=50:7(重量比)の比率で混合した溶液に再沈殿させて精製し、乾燥させることで上記式(13)の構造を有し、m2が110、n2(DMS鎖数)が平均3である有機ケイ素化合物(樹脂G、重量平均分子量130000)を得た。
【0109】
(8)樹脂H
Gelest社製 SST-3PM4を用いた。なおSST-3PM4は上記一般式(1)の構造を有さない有機ケイ素化合物である。
【0110】
(9)樹脂I
(製造方法、構造)
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付けた。ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン(PAM-E、信越シリコーン社製)3.9g、アニソール36.3g、マレイン酸無水物(東京化成工業社製)3.53gをフラスコに投入し、攪拌した。170℃のオイルバスで2時間還流し、得られた合成液を室温に覚ましたのち、メンブレンフィルター(品番:ADVANTEC T080A075C 東洋濾紙社製)を用いてろ過し、析出物として下記式(16)の構造を有する添加剤Bを得た。
【0111】
【化14】
【0112】
(10)樹脂Jの製造
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入基を備えた反応容器にテトラカルボン酸二無水物4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA,東京化成工業社製 分子量520.49)13.532gとアニソール103.05gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に芳香族ジアミンPAM-E(信越化学工業社製、分子量280.51)7.573gを添加した。ディーンスタークトラップとコンデンサーとをフラスコに取り付け、混合物を100℃で1時間加熱還流し、更に170℃で4時間還流させることによって、両末端がアミンであるイミド化合物を得た。冷却したのち、シトラコン酸無水物(東京化成工業社製、分子量112.08)を加え、120℃で10分間加熱しながら攪拌し、更に170℃で20分間加熱することによって、下記式(17)の構造を有するイミド構造を有する化合物(樹脂J、重量平均分子量35000)を得た。
【0113】
【化15】
ここでkは1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。
【0114】
(11)樹脂K
ベンゾオキサジンP-d(四国化成社製)を用いた。
【0115】
(12)樹脂L
CYTESTER P-201(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0116】
(実施例1)
樹脂A100重量部、架橋剤(シリケートMS-51、三菱ケミカル社製)3.2重量部、触媒(ZC-162、マツモトファインケミカル社製)0.2重量部に溶剤としてアニソールを含有量が40重量%となるように加え、硬化性樹脂組成物を得た。
【0117】
(実施例2~32、比較例1~6)
組成を表1~3の通りとした以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を得た。なお、表中に記載の化合物のうち本文中に記載のない材料については下記のものを用いた。
BYK-307(BYK社製)
KBM-573(信越化学工業社製)
ジブチルスズジラウレート(東京化成工業社製)
【0118】
<物性>
得られた硬化性樹脂組成物について以下の測定を行った。結果を表1~3に示した。
【0119】
(粘度の測定)
E型粘度計(TVE25H、東機産業社製)を用いて、25℃における、10.0rpmせん断時における粘度を測定した。
【0120】
(密着性の測定)
硬化性樹脂組成物を、室温条件下、8インチのシリコンウエハ中央部に12g滴下し、スピンコーター(ACT-400II、ACTIVE社製)を用い、500rpmの回転数で硬化性樹脂組成物をシリコンウエハ上に塗布した。硬化性樹脂組成物を塗布したウエハを室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させた。このときスピンコートの回転時間は、乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みが25μmとなるように調整した。更にその後300℃で1時間加熱することで、硬化性樹脂組成物の硬化物が積層したシリコンウエハ積層体を得た。得られたシリコンウエハ積層体の樹脂面からスーパーカッターガイド(大佑機材社製)を用いて1mm幅となるように、新品の単一刃カッターで10本切り込みを入れた。刃を交換したのち90°方向を変えて再度10本切込みを入れ、1mm四方の格子状の切り込みを入れた。セロテープ(登録商標)(ニチバン社製、CT1835)を格子状の切り込み箇所全体を覆うように貼付し、気泡が抜け塗布面が透けるように強くこすったのち5分間常温で静置した。静置後、セロテープ(登録商標)を剥離角度が60°となるように0.3m/minの速度で剥離し、剥離面を観察した。観察した剥離面の様子から、JIS K5600-5-6に基づき試験結果を分類し、0-5点に分類することで、クロスカット法による密着性を測定した。なお、点数の分類は上記評価基準を基に行った。
【0121】
(引張弾性率の測定)
アプリ―ケーター等を用いてシート状に塗布した硬化性樹脂組成物を、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱し、厚み500μmの硬化性樹脂組成物の硬化物のフィルムを得た。得られたフィルムサンプルを5mm×35mmのサイズに打ち抜き、測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)によって、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で23℃及び300℃における引張弾性率を測定した。なお、実施例9、10、比較例1、2、6については、フィルムサンプルの脆性が高く、上記所定のサイズのフィルムサンプルを得ることができなかったため測定できなかった。
【0122】
(重量減少率の測定)
アプリ―ケーター等を用いてシート状に塗布した硬化性樹脂組成物を、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱し、厚み500μmの硬化性樹脂組成物の硬化物のフィルムを得た。得られたフィルムサンプルについて示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、窒素フロー(50mL/min)下、10℃/minの昇温速度で25℃から400℃まで加熱し、400℃で4時間窒素雰囲気下で加熱した後の重量減少率を測定した。
【0123】
(5%重量減少温度の測定)
アプリ―ケーターを用いてシート状に塗布した硬化性樹脂組成物を、室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させ、更にその後300℃で1時間加熱し、厚み500μmの硬化性樹脂組成物の硬化物のフィルムを得た。得られたフィルムサンプルについて示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、窒素フロー(50mL/min)下、10℃/minの昇温速度で25℃から550℃まで加熱し、フィルムサンプルの重量が5%減少した時の温度を測定した。
【0124】
<評価>
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0125】
(成膜性の評価)
得られた硬化性樹脂組成物を、室温条件下、8インチのシリコンウエハ中央部に12g滴下し、スピンコーター(ACT-400II、ACTIVE社製、又は同等品)を用い、シリコンウエハ(表面粗さ<0.1μm)上に塗布した。塗布したウエハを室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させた。このときスピンコートの回転時間を調整し、乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みが25μmとなるように調整した。更にその後300℃で1時間加熱し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。室温まで冷却後、硬化性樹脂組成物の硬化物の塗布面(表面)を観察し、下記基準で成膜性を評価した。
○:割れ無し
×:上記所定の回転条件でシリコンウエハ全面に樹脂がいきわたらなかった、又は溶剤乾燥後割れが発生した
【0126】
(平坦性の評価)
深さ10μm、幅300μmの溝が40mm間隔で掘られた8インチのシリコンウエハ中央部に得られた硬化性樹脂組成物を12g滴下し、スピンコーター(ACT-400II、ACTIVE社製)を用い、シリコンウエハ(溝部分以外の表面粗さ<0.1μm)上に製膜した。塗布したウエハを室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させた。このときスピンコートの回転時間を調整し、乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みが25μmとなるように調整した。更にその後300℃で1時間加熱し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。加熱硬化後の硬化性樹脂の硬化物表面におけるシリコンウエハの溝部分をレーザー顕微鏡(OLS4100;Olympus社製)を用いて観察し、溝部分の深さを測定した。レーザー顕微鏡で測定した溝の深さを、ウエハの元の溝の深さ10μmで除した割合(下記式であらわされる値)を凹み量(%)として、下記基準で平坦性を評価した。なお、比較例4~6については成膜性が低くウエハ全面に樹脂が広がらなかったため評価できなかった。なお表中の()内の数値は硬化性樹脂組成物を塗布及び硬化後の溝深さ(μm)である。
凹み量(%)=(硬化性樹脂組成物を塗布及び硬化後の溝深さ(μm))/10(μm)×100
◎:凹みが20%未満
○:凹みが20%以上35%未満
×:凹みが35%以上
【0127】
(耐熱性の評価)
上記重量減少率の測定結果を基に下記基準で耐熱性を評価した。
◎:重量減少率が1.5%未満
○:重量減少率が1.5%以上6%未満
×:重量減少率が6%以上
【0128】
(膜割れの評価)
8インチのシリコンウエハ(表面粗さ<0.1μm)中央に12gの硬化性樹脂組成物を吐出し、スピンコーター(ACT-400II、ACTIVE社製)を用い、シリコンウエハ(溝部分以外の表面粗さ<0.1μm)上に製膜した。室温から200℃まで30分かけて昇温させたのち90分間200℃で乾燥させた。このときスピンコートの回転時間を調整し、乾燥後の硬化性樹脂組成物の厚みが25μmとなるように調整した。更にその後300℃で1時間加熱し、硬化性樹脂組成物の硬化膜を得た。得られた硬化膜について、真空プロセス高速加熱炉(VPO-650、ユニテンプ社製)を用いて窒素雰囲気下で3時間熱処理し、下記基準で膜割れを評価した。
◎:400℃3時間の加熱処理後も膜割れが発生しなかった。
〇:380℃3時間の加熱処理で膜割れが発生しなかったが、400℃3時間の加熱処理で膜割れが発生した。
×:380℃3時間の加熱処理で膜割れが発生した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明によれば、素子表面に凹凸を有する場合であっても接続面を平坦化し表面の空隙なく素子を接続し、素子間に高い接合信頼性を付与することができる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜、該硬化膜を有する積層体、該積層体を有する撮像装置及び半導体装置、該積層体の製造方法及び該積層体の製造に用いる接合電極を有する素子の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 第1の素子
2 第2の素子
3 電極
4 硬化膜
5 貫通孔
6 無機層
7 バリアメタル層
8 第3の素子
9 チップ
10 第4の素子
11 支持基板

図1
図2
図3
図4