IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.の特許一覧

特許7522911未処理血漿または脱クリオ血漿からプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)および第IX因子を精製するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】未処理血漿または脱クリオ血漿からプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)および第IX因子を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20240718BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20240718BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C07K1/18
C07K14/745
C12N7/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023503244
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021071181
(87)【国際公開番号】W WO2022023431
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】20188209.9
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521262714
【氏名又は名称】ザルトリウス ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシク、ジューロ
(72)【発明者】
【氏名】ベージック、マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】アンドイェルコヴィチュ、ウロシュ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】JOSIC, D et al.,Preparation of vitamin K-dependent proteins, such as clotting factors II, VII, IX and X and clotting inhibitor Protein C,Journal of Chromatography B,2003年,Vol. 790,pp. 183-197
【文献】BRGLES, M et al.,Selectivity of monolithic supports under overloading conditions and their use for separation of human plasma and isolation of low abundance proteins,Journal of Chromatography A,2011年,Vol. 1218,pp. 2389-2395
【文献】BRANOVIC, K et al.,Application of monoliths for downstream processing of clotting factor IX,Journal of Chromatography A,2000年,Vol. 903,pp. 21-32
【文献】BRANOVIC, K et al.,Application of semi-industrial monolithic columns for downstream processing of clotting factor IX,Journal of Chromatography B,2003年,Vol. 790,pp. 175-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理血漿(complete plasma)または脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)からモノリス型固定相を使用するクロマトグラフィーによってプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を精製するための方法であって、
a)陰イオン交換体で未処理血漿または脱クリオ血漿に対する第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程を実施して、PCCに富む第1の分画を得ることを含む、
方法。
【請求項2】
前記脱クリオ血漿は希釈されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程は弱陰イオン交換体または強陰イオン交換体を用いて実施される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
b)前記第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程から前記PCCに富む第1の分画を溶出させた後、前記PCCに富む第1の分画に対する第2のクロマトグラフィー工程を陰イオン交換体を用いて実施して、PCCに富む第2の分画を得ることをさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のクロマトグラフィー工程の前記陰イオン交換体は、バルク材料またはモノリス型材料である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
c)前記PCCに富む第2の分画に対する第3のクロマトグラフィー工程を陽イオン交換体を用いて実施して、第IX因子に富み、前記PCCの他の成分は枯渇しているまたは除去されている第3の分画を得ることをさらに含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PCCの他の成分は第II因子、第VII因子、および第X因子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記陽イオン交換体は-SO基、-SO基、または-PO基を有する、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第3のクロマトグラフィー工程の前記陽イオン交換体は、バルク材料またはモノリス型材料である、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つに安定化剤が加えられる、請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定化剤は正に荷電したアミノ酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つに対してウイルスろ過工程が行われる、請求項6~請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つにヘパリンが加えられる、請求項6~請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程をさらに含む、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程をさらに含み、前記溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程が前記第3のクロマトグラフィー工程の前に実施される、請求項6~請求項13のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未処理血漿(complete plasma)または脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)からクロマトグラフィーを使用してプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)および第IX因子を精製するための方法、ならびに、本発明の方法によりそれぞれ得ることが可能なPCCを含む分画および第IX因子を含む分画に関する。
【背景技術】
【0002】
第IX因子複合体としても知られるプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)は、血液凝固第II因子、第IX因子、および第X因子で構成される製剤である[1]。一部の製剤(version)には第VII因子も含まれている[2]。これは、血友病Bの出血を治療および予防するために純粋な第IX因子が利用できない場合に使用される[1][3]。また、ワルファリン療法などの他の理由により、タンパク質K(protein K)依存性凝固因子およびインヒビターが十分でない患者に使用される場合もある[3]。これは、ゆっくりとした静脈注射によって、静脈中にゆっくりと注入することによって与えられる[1]。プロトロンビン複合体濃縮物は1960年代に医療用途に使用されるようになった[5]。プロトロンビン複合体濃縮物は世界保健機関の必須医薬品リストに載っており、医療システムで必要とされる最も安全で最も効果的な医薬品である[6][7]。プロトロンビン複合体濃縮物はヒトの血漿から作製される[4]。組み換え法によって作製され、第IX因子だけを含む製剤(version)も入手可能である[8]。
【0003】
PCCは、ワルファリンおよび他のビタミンK拮抗薬の抗凝固薬の効果を中和して(reverse)、凝固障害がある患者が著しく出血した場合に使用される。そのような人が緊急手術治療を受けなければならない場合にも使用される[9]。他の用途には、先天性または肝疾患による凝固因子の1つの欠乏、および、血友病Bが含まれる。American College of Chest Physiciansからのガイドラインを含むいくつかのガイドラインでは、重度の出血を伴う患者のワルファリンの中和(reversal)にPCCが推奨されている[10][11][12][13]。
【0004】
EP0549964A2には、ビタミンK依存性凝固因子プロトロンビン(第II因子)、プロコンバーチン(第VII因子)、スチュアート・プロワー因子(第X因子)および血友病B因子(第IX因子)、ならびにビタミンK依存性凝固インヒビターであるタンパク質C、タンパク質Sおよびタンパク質Zを含むウイルス不活性化されたプロトロンビン複合体濃縮物(PCC調製物)の製造方法であって、安定化された脱クリオ血漿に対するクロマトグラフィーをイオン交換材料で実施する製造方法が開示されている。クリオプレシピテーションおよびクリオグロブリン除去の後、クエン酸塩で安定化された血漿はQAE修飾デキストランを用いた陰イオン交換材料で処理される。溶出後、得られた分画に対する第1の限外ろ過が適切な緩衝液を用いて行われ、そうして得られた粗PPSB抽出物に対するクロマトグラフィーがDEAE修飾デキストランまたはアガロース(セファロース)で行われ、続いて適切な緩衝液で溶出される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の根底にある目的は、サンプル置換クロマトグラフィーの原理を利用する方法によって解決される。そのようなクロマトグラフィーは、精製プロセスの第1の(initial)段階でモノリス型陰イオン交換分離媒体とともに使用される。
【0006】
本発明の主題は、未処理血漿または脱クリオ血漿(特に、希釈されていない脱クリオ血漿)からモノリス型固定相を使用するクロマトグラフィーによってプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を精製するための方法であって、
a)陰イオン交換体で未処理血漿または脱クリオ血漿に対する第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程を実施して、PCCに富む第1の分画を得ることを含む、
方法である。
【0007】
いくつかの実施形態では、さらなるクロマトグラフィー工程が用いられる。
【0008】
本発明の実施形態では、第1のクロマトグラフィー工程は弱陰イオン交換体または強陰イオン交換体を用いて実施されてもよい。
【0009】
本発明の別の実施形態では、方法は、
b)第1のサンプル置換クロマトグラフィーからPCCに富む第1の分画を溶出させた後、PCCに富む第1の分画に対する第2のクロマトグラフィー工程を陰イオン交換体を用いて実施して、PCCに富む第2の分画を得ることをさらに含み得る。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態では、方法は、
c)PCCに富む第2の分画に対する第3のクロマトグラフィー工程を陽イオン交換体を用いて実施して、第IX因子に富み、PCCの他の成分(すなわち、第II因子、第VII因子、および第X因子)は枯渇していてもよいまたは除去されていてもよい分画を得ることをさらに含んでいてもよい。
【0011】
本発明の方法を実施することによって希釈されていない脱クリオ血漿を使用できるという予想外の知見により、本方法は、血漿を2倍以上、多くの場合5倍も希釈する必要がある[15]で言及されている従来技術に対して有利である。これにより、生理活性タンパク質の活性が失われるのを防ぐ。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態では、陽イオン交換体は-SO基、-SO基、または-PO基を備えていてもよい。SO(硫酸塩)モノリスからの溶出は、塩勾配またはpH勾配のどちらかによって実施され得る。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、第2のクロマトグラフィー工程および/または第3のクロマトグラフィー工程の陰イオン交換体および/または陽イオン交換体は、それぞれバルク材料またはモノリス型材料であり得る。
【0014】
本発明の実施形態は、溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程を含んでいてもよい。溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程は第3のクロマトグラフィー工程の前に実施され得る。
【0015】
本発明の別の実施形態は、第1の分画、第2の分画および第3の分画の少なくとも1つに安定化剤を加えることを提供することができ、安定化剤は、特に、正に荷電したアミノ酸(リシンなど)であり得る。本発明の方法のこの段階では、第1の分画、第2の分画および第3の分画の少なくとも1つにヘパリンが加えられてもよい。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、第1の分画、第2の分画および第3の分画の少なくとも1つに対して行われ得るウイルスろ過工程を提供することができる。
【0017】
本発明の主題はまた、以下の工程を含む方法により得ることが可能な第IX因子を含む分画である:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料など)を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて弱陰イオン交換モノリス型材料または強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約1M~約2.5M(特に、約2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料を用いたクロマトグラフィーを実施し、任意に(optionally)、工程(4)の後に得られた分画の一部をPCC製造のために使用すること、
(5)約0.1%のL-リシンモノクロリドを用いた安定化、
(6)約0.3%(w/w)TnBP、約1%(w/w)Tween80を用いた26~28℃での6~8時間のウイルス不活化、
(7)陽イオン交換クロマトグラフィー、
(8)CIMモノリスでのウイルスろ過、
(9)第IX因子1IUあたり約0.1IUのヘパリンを加えること、
(10)任意に、陽イオン交換材料から溶出物を分離すること。
【0018】
本発明の第IX因子を含む分画は、120IU/mgタンパク質よりも高い第IX因子比活性という特徴を有していてもよい。他のタンパク質K依存性凝固因子およびインヒビターは微量存在するとしても検出限界を下回る。
【0019】
本発明の別の主題は、以下の工程を含む方法により得ることが可能なPCCを含む分画である:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料など)を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて弱陰イオン交換モノリス型材料または強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約600mM~約2.5M(特に、約1 2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(CIM DEAEクロマトグラフィー材料など)を用いてクロマトグラフィーを実施すること、
(5)任意に、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料から溶出物を分離すること。
【0020】
本発明のPCCを含む分画は、2~10IU/mgタンパク質の凝固第IX因子比活性とそれに対応してバランスのとれたビタミンK依存性凝固因子およびインヒビター両方の濃度という特徴を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
イオン交換クロマトグラフィーでは、溶質イオンおよび固定相の電荷に基づく溶質イオンと固定相の相互作用によって、どのイオンがどの程度結合するかが決まる。固定相が陰イオンを引き付ける陽性の基を有する場合、固定相は陰イオン交換体と呼ばれる。固定相に陰性の基があると、陽イオンが引き寄せられ、固定相は陽イオン交換体である。イオンと固定相の間の引力は、イオン交換体として使用される有機粒子である樹脂にも依存する。
【0022】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、正に荷電した基(ジエチル-アミノエチル基(DEAE)など)を含有するイオン交換樹脂を用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび物質の電荷に基づいて物質を分離する方法である。溶液中では、樹脂は正に荷電した対イオン(陽イオン)で覆われている。陰イオン交換樹脂は負に荷電した分子に結合し、対イオンを置換する。陰イオン交換クロマトグラフィーは、一般に、タンパク質、アミノ酸、糖類/炭水化物、およびより高いpHレベルで負電荷を有する他の酸性物質を精製するために使用される。物質と樹脂の間の結合の強さは、物質の負電荷の強さによって決まる。
【0023】
当業者は、強陰イオン交換体と弱陰イオン交換体という2種の異なる陰イオン交換体を区別している。「強」イオン交換体は、カラムが平衡化されてもマトリックスが電荷を失わないため、多様なpH緩衝液を使用することができる。「弱」イオン交換体には、電荷が維持されるpH値の範囲が存在する。弱イオン交換カラムに用いられる緩衝液のpHがマトリックスの許容範囲を超えると、カラムの電荷分布が損なわれ、目的とする分子を見失う場合がある。弱イオン交換体はpH範囲が狭いが、特異性がより高いため、強イオン交換体よりも使用されることが多い。一部の実験では、弱イオン交換体の保持時間は、高い特異性で目的のデータを取得するのに十分な長さである。
【0024】
陰イオン交換カラムの樹脂(「ビーズ」と呼ばれることが多い)は官能基(弱塩基/強塩基など)を有していてもよい。強イオン交換樹脂の官能基の例としては、陰イオン交換体である第4級アンモニウムカチオン(Q)、および、陽イオン交換体であるスルホン酸(S、-SOOH)がある。これらのタイプの交換体は、0~14のpH範囲において電荷密度を維持することができる。弱イオン交換樹脂の官能基としては、陰イオン交換体であるジエチルアミノエチル(DEAE、-CN(CH)、および、陽イオン交換体であるカルボキシメチル(CM、-CH-COOH)が挙げられる。これら2タイプの交換体は、5~9のpH範囲においてカラムの電荷密度を維持することができる。
【0025】
本発明によれば、未処理血漿または脱クリオ血漿からのプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)は、モノリス型陰イオン交換体で未処理血漿または脱クリオ血漿(特に、希釈されていない脱クリオ血漿)に対する第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程を実施して、PCCに富む第1の分画を得ることによって精製される。
【0026】
本発明によれば、第1のクロマトグラフィー工程は、モノリス型の弱陰イオン交換体または強陰イオン交換体を用いて実施される。
【0027】
US5,453,185Aには、モノリス型分離材料が開示されている。モノリスは、クロマトグラフィーにおける粒子系の固定相の選択肢として見なすことができる。シリカモノリスとポリマーモノリスは両方とも、分離効率を大幅に損なうことなく高速分離することを可能にする。特に有用なのは、6μmの細孔を有するDEAEまたはQイオン交換モノリスである。
【0028】
本発明によれば、サンプル置換クロマトグラフィーを可能とするローディング条件を調節することが重要である。逆相モードおよびイオン交換モードのサンプル置換クロマトグラフィー(SDC)は約20年前に導入された。この方法は、サンプル混合物中の成分の相対的な結合親和性を利用している。クロマトグラフィー分離の開始時では、分離される溶質の混合物(本発明の場合は未処理血漿または脱クリオ血漿)が、高い保持性を促進するように選択された条件下でモノリス型分離材料を備えたカラムに付与される。親和性の高い溶質はカラムのヘッド付近で優先的に保持され、親和性の低い溶質は下流へと移動する。最速で移動する成分は、下流で純粋な帯域を形成し始める。その他の成分の帯域も形成し始めるが、カラムのヘッドで混合フィードを継続的に供給すると十分な分離が妨げられる。ローディング中、各サンプル成分間の固定相の表面への収着が競合する。
【0029】
SDCは、タンパク質の分取精製に最初に使用された。後に、この種のクロマトグラフィーは、イオン交換モード、アフィニティーモード、および疎水性相互作用モードでも実施できることが立証された。SDCは、分析スケールと分取スケール両方において、モノリス型支持体およびメンブレン系支持体を用いて実施できることも示されている。最近では、イオン交換モードおよび疎水性相互作用モードのSDCを用いたモノクローナル抗体調製物からの微量タンパク質の除去、および、ヒト血漿からの存在量が少ないタンパク質の濃縮にも成功した。このレビューでは、SDCの原理が紹介され、微量分析スケール、分析スケール、および分取スケールでのタンパク質とペプチドの分離の可能性について検討されている[14]。
【0030】
ローディング後、弱陰イオン交換体または強陰イオン交換体(特に、モノリス型材料)は、約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて洗浄され得る。続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄され得る。
【0031】
第1の分画の溶出は、約1M~約2.5M(特に、約2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いて行われる。
【0032】
第1のサンプル置換クロマトグラフィーからPCCに富む第1の分画を溶出させた後、PCCに富む第1の分画に対する第2のクロマトグラフィー工程をバルクまたはモノリス型分離材料(特に、モノリス型のCIM DEAE材料またはQ材料)を用いた陰イオン交換体を用いて実施して、溶出後、PCCに富む第2の分画を得てもよい。溶出物はPCC製造に使用され得る。
【0033】
PCCに富む第2の分画に対して第3のクロマトグラフィー工程を実施して、第IX因子を得てもよい。第3のクロマトグラフィー工程は陽イオン交換体を用いて実施され、第IX因子に富み、PCCの他の成分(すなわち、第II因子、第VII因子、および第X因子)は枯渇しているまたは除去されている第3の分画が得られる。
【0034】
陽イオン交換体は-SO基、-SO基、または-PO基を有していてもよい。陽イオン交換体も陰イオン交換体と同様に粒状材料またはモノリス型材料であり得る。
【0035】
溶媒/界面活性剤によるウイルス不活性化工程は、規制当局による要求事項(regulatory requirements)により、治療用途に必須である。溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程は、第3のクロマトグラフィー工程の前に実施され得る。ウイルス不活化の適切な方法はEP0131740A2に記載されている。
【0036】
第1の分画、第2の分画および第3の分画の少なくとも1つに安定化剤を加えることが有利である。安定化剤は、特に、正に荷電したアミノ酸(リシンなど)である。また、本発明の方法のこの段階で、第1の分画、第2の分画および第3の分画の少なくとも1つにヘパリンが加えられてもよい。
【0037】
規制当局による命令(regulatory orders)によって要求される場合、第1の分画、第2の分画、および第3の分画の少なくとも1つに対してウイルスろ過[16]工程が行われてもよい。
【0038】
本発明の方法は、第IX因子を含む分画を提供する。各第IX因子含有分画は、以下の工程を含む方法により得ることが可能である:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料など)を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて弱陰イオン交換モノリス型材料または強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約1M~約2.5M(特に、約2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料を用いたクロマトグラフィーを実施し、任意に、工程(4)の後に得られた分画の一部をPCC製造のために使用すること、
(5)約0.1%のL-リシンモノクロリドを用いた安定化、
(6)約0.3%(w/w)TnBP、約1%(w/w)Tween80を用いた26~28℃での6~8時間のウイルス不活化、
(7)陽イオン交換クロマトグラフィー、
(8)CIMモノリスでのウイルスろ過、
(9)第IX因子1IUあたり約0.1IUのヘパリンを加えること、
(10)任意に、陽イオン交換材料から溶出物を分離すること。
【0039】
本発明の第IX因子を含む分画は、120IU/mgタンパク質よりも高い第IX因子比活性という特徴を有していてもよく、他のタンパク質K依存性凝固因子およびインヒビターは存在するとしても検出限界を下回る[16]。
【0040】
本発明の方法は、PCCを含む分画を提供する。各PCC含有分画は、以下の工程を含む方法によって得ることが可能である:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料など)を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて弱陰イオン交換モノリス型材料または強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約600mM~約2.5M(特に、約1 2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(CIM DEAEクロマトグラフィー材料など)を用いてクロマトグラフィーを実施すること、
(5)任意に、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料から溶出物を分離すること。
【0041】
本発明のPCCを含む分画は、2~10IU/mgタンパク質の凝固第IX因子比活性とそれに対応してバランスのとれたビタミンK依存性凝固因子およびインヒビター両方の濃度という特徴を有し得る。
【0042】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0043】
実施例1
分析方法:
[16]に公開されているように実施される第IX因子活性を決定するための分析、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いた免疫ブロット、およびLC-MS/MSによるタンパク質同定-凝固第IX因子。第IX因子および他のタンパク質については[17]を参照。
【0044】
実施例2
脱クリオ血漿をクロアチアのザグレブにあるInstitute of Transfusiologyから入手した。提供検体(donations)を、非営利のドナーの同意と上記研究所の倫理委員会の承認の後、ウイルス安全性(血液媒介性のエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルス)について試験した。遠心分離とろ過の後、血漿を22℃に調節し、モノリス型クロマトグラフィーカラムに直接付与した。
【0045】
サンプル:希釈されていない新鮮凍結血漿、導電率;σ~12mS/cm
サンプル準備:
1)4℃で10000rpm、20分間の血漿遠心分離。
2)5μmメンブレン(Milipore、マサチューセッツ州、米国)を用いたろ過。
【0046】
実施例3
PCCの製造
265mLの希釈されていない脱クリオ血漿に対するサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料(DEAE CIMカラム、8mL)など)(BIA Separations d.o.o.、アイドフシュチナ、スロベニア)を用いて実施した。脱クリオ血漿を付与した後、まず、陰イオン交換モノリス型材料を200mMのNaCl緩衝液を用いて5カラム容量洗浄し、続いて、280mMのNaClを含むより高い濃度の第2の緩衝液を用いて5カラム容量洗浄した。PCCを2MのNaClを用いて溶出させた。回収したPCCに対してCIM DEAEを用いたクロマトグラフィーを実施し、PCCを溶出させた。得られたPCCは、5IU/mgタンパク質の凝固第IX因子比活性とそれに対応してバランスのとれたビタミンK依存性凝固因子およびインヒビター両方の濃度を示した。
【0047】
実施例4
第IX因子の製造
265mlの希釈されていない脱クリオ血漿に対するサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するDEAEモノリス型材料(DEAE CIMカラム、8mL)(BIA Separations d.o.o.、アイドフシュチナ、スロベニア)を用いて実施した。脱クリオ血漿を付与した後、まず、陰イオン交換モノリス型材料を200mMのNaCl緩衝液を用いて洗浄し[5カラム容量(5CV)]、続いて、280mMのNaClを含むより高い濃度の第2の緩衝液を用いて洗浄した[5カラム容量(5CV)]。2MのNaCl緩衝液を用いて溶出したPCC分画に対してDEAEモノリス型材料を用いたクロマトグラフィーを実施した。得られた分画を0.1%L-リシンを用いて安定化させた。続いて、溶媒/界面活性剤法によるウイルス不活化を、例えば1%(v/w)Tween80および0.3%(v/w)TnBPを用いて実施した[18]。
【0048】
陽イオン交換クロマトグラフィー:
サンプル:CIMカラムを用いた2回のDEAEクロマトグラフィー工程後のヒトプロトロンビン複合体(実施例3を参照)。20IUの凝固第IX因子(4mgタンパク質)を含有する溶出物を、CIMmic硫酸塩SO4 0.2ml モノリス型カラム、Akta Explorer chromatographic system、2mlサンプルループにロードした。
BCAタンパク質分析キット、Thermo Scientific Pierce(商標)、Cat.#23225/23227。
マウスで産生されたモノクローナル抗第IX因子抗体、Sigma-Aldrich、ダルムシュタット、ドイツ、Cat.#F2645。
ヤギ抗マウスIgG、HRP conjugate、Milipore、マサチューセッツ州、米国、Cat.#12-349。
ウサギで産生された第X因子ポリクローナル抗体、ThermoFisher、イリノイ州、米国、Cat.#PA5-29118。
ヤギ抗ウサギIgG、HRP conjugate、Milipore、マサチューセッツ州、米国、Cat.#12-348。
抗第VII因子抗体、マウスモノクローナル、Sigma-Aldrich、#F8146。
プロトロンビンモノクローナル抗体、Invitrogen、#LF-MA0171。
【0049】
検出方法:
第IX因子活性を測定するための分析は[16]を参照のこと。
モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いた免疫ブロット、およびLC-MS/MSによるタンパク質同定-凝固第IX因子-上記参考文献(血友病)、第IX因子および他のタンパク質については参考文献[19]を参照のこと。
【0050】
クロマトグラフィー:
緩衝液と溶出順序:
平衡化:緩衝液A、400mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH5、39mS/cm、
洗浄:緩衝液A、10カラム容量
溶出:分画1、緩衝液1:300mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH5、30.4mS/cm、5カラム容量、
分画2、緩衝液2:250mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH5.03、26mS/cm、5カラム容量、
分画3、緩衝液3:250mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH6、25.9mS/cm、5カラム容量、
分画4、緩衝液4:250mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH7.2、25.9mS/cm、5カラム容量、
分画5、緩衝液5:50mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH7.225、7.76mS/cm、5カラム容量、
分画6、緩衝液6:20mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH7.2、4.7mS/cm、5カラム容量、
分画7、緩衝液7:10mMのリン酸緩衝液、pH8、1.63mS/cm、10カラム容量。
【0051】
第IX因子の精製を目的とする場合、400mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH5を用いたカラム平衡化が最良の結果を示すことが判明した。
【0052】
第IX因子の大部分は、250mMのNaCl、20mMのリン酸緩衝液、pH7.2を用いて分画4に溶出される。免疫ブロットによって、同じ分画4中に第X因子がごく少量存在するものの、この分画において第X因子凝固活性は検出できなかったことが示される。第IX因子の収率は70~80%であった。凝固第IX因子の比活性は約190IU/mgタンパク質であった。理論上の比活性は約250IU/mgタンパク質である[16]。
【0053】
第II因子および第VII因子は所与の条件ではカラムに結合しない。他の不純物については分析しなかった。主な不純物は通常、ビトロネクチンである[16]。
【0054】
CIMモノリスでのウイルスろ過については[16]に記載されている。
【0055】
得られた第IX因子は150IU/mgタンパク質よりも高い比活性を有する。他のタンパク質K依存性凝固因子およびインヒビターは存在するとしても検出限界を下回る。
【0056】
「本明細書において引用されているすべての参考文献は、それらの取り込みが本明細書における明示的な教示と矛盾しない限り、参照により完全に取り込まれる。」
〔付記〕
本開示には下記の態様<1>~<14>も含まれる。
<1>
未処理血漿(complete plasma)または脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)(特に、希
釈されていない脱クリオ血漿)からモノリス型固定相を使用するクロマトグラフィーによってプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を精製するための方法であって、
a)陰イオン交換体で未処理血漿または脱クリオ血漿に対する第1のサンプル置換クロマトグラフィー工程を実施して、PCCに富む第1の分画を得ることを含む、
方法。
<2>
前記第1のクロマトグラフィー工程は弱陰イオン交換体または強陰イオン交換体を用いて実施される、<1>に記載の方法。
<3>
b)前記第1のサンプル置換クロマトグラフィーから前記PCCに富む第1の分画を溶出させた後、前記PCCに富む第1の分画に対する第2のクロマトグラフィー工程を陰イオン交換体を用いて実施して、PCCに富む第2の分画を得ることをさらに含む、<1>または<2>に記載の方法。
<4>
c)前記PCCに富む第2の分画に対する第3のクロマトグラフィー工程を陽イオン交換体を用いて実施して、第IX因子に富み、前記PCCの他の成分(すなわち、第II因子、第VII因子、および第X因子)は枯渇しているまたは除去されている分画を得ることをさらに含む、<3>に記載の方法。
<5>
前記陽イオン交換体は-SO 基、-SO 基、または-PO 基を有する、<4>に記載の方法。
<6>
前記第2のクロマトグラフィー工程および/または前記第3のクロマトグラフィー工程の前記陰イオン交換体および/または前記陽イオン交換体は、それぞれバルク材料またはモノリス型材料である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の方法。
<7>
溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程をさらに含む(好ましくは、溶媒/界面活性剤によるウイルス不活化工程が前記第3のクロマトグラフィー工程の前に実施される)、<1>または<5>のいずれか1つに記載の方法。
<8>
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つに安定化剤が加えられる、<1>~<7>のいずれか1つに記載の方法。
<9>
前記安定化剤は正に荷電したアミノ酸(リシンなど)である、<8>に記載の方法。
<10>
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つに対してウイルスろ過工程が行われる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の方法。
<11>
前記第1の分画、前記第2の分画および前記第3の分画の少なくとも1つにヘパリンが加えられる、<8>に記載の方法。
<12>
以下の工程を含む方法により得ることが可能な第IX因子を含む分画:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)前記希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のN
aCl緩衝液を用いて前記弱陰イオン交換モノリス型材料または前記強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約1M~約2.5M(特に、約2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料を用いたクロマトグラフィーを実施し、任意に(optionally)、工程(4)の後に得られた分画の一部をPCC製造のために使用すること、
(5)約0.1%のL-リシンを用いた安定化、
(6)ウイルス不活化、
(7)陽イオン交換クロマトグラフィー、
(8)CIMモノリスでのウイルスろ過、
(9)第IX因子1IUあたり約0.1IUのヘパリンを加えること、
(10)任意に(optionally)、前記陽イオン交換材料から溶出物を分離すること。
<13>
以下の工程を含む方法により得ることが可能なPCCを含む分画:
(1)希釈されていない脱クリオ血漿を提供すること、
(2)前記希釈されていない脱クリオ血漿を用いたサンプル置換クロマトグラフィーを、約6μmの細孔を有するモノリス型の弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(DEAEまたはQモノリス型材料など)を用いて実施すること、
(3a)約100mM~約300mM(特に、約200mM)のNaClを含む第1のNaCl緩衝液を用いて前記弱陰イオン交換モノリス型材料または前記強陰イオン交換モノリス型材料を洗浄すること、
(3b)続いて、約200mM~約350mM(特に、約280mM)のNaClを含むより高い濃度の第2のNaCl緩衝液を用いて洗浄すること、
(3c)約600mM~約2.5M(特に、約1.2M)のNaClを含むNaCl緩衝液を用いた溶出、
(4)続いて、弱陰イオン交換材料または強陰イオン交換材料(CIM DEAEクロマトグラフィー材料など)を用いてクロマトグラフィーを実施すること、
(5)任意に(optionally)、前記弱陰イオン交換材料または前記強陰イオン交換材料から溶出物を分離すること。
<14>
120IU/mgタンパク質よりも高い比活性を特徴とする第IX因子を含む(好ましくは、2~10IU/mgタンパク質の凝固第IX因子比活性とそれに対応してバランスのとれたビタミンK依存性凝固因子およびインヒビター両方の濃度を特徴とするPCCを含む)、<12>に記載の分画。
【0057】
参考文献
[1] World Health Organization (2009). Stuart MC, Kouimtzi M, Hill SR (eds.). WHO Model Formulary 2008. World Health Organization. pp. 259-60. hdl:10665/44053. ISBN 9789241547659.
[2] Perkins JC (2014). Hematology/Oncology Emergencies, An Issue of Emergency Medicine Clinics of North America. Elsevier Health Sciences. p. 720. ISBN 9780323320290.
[3] British national formulary: BNF 69 (69 ed.). British Medical Association. 2015. p. 171. ISBN 9780857111562.
[4] ”Factor IX (Human), Factor IX Complex (Human)”. The American Society of Health-System Pharmacists.
[5] Besa EC (1992). Hematology. Lippincott Williams & Wilkins. p. 276. ISBN 9780683062229.
[6] World Health Organization (2019). World Health Organization model list of essential medicines: 21st list 2019. Geneva: World Health Organization. hdl:10665/325771.
[7] The selection and use of essential medicines: Twentieth report of the WHO Expert Committee 2015 (including 19th WHO Model List of Essential Medicines and 5th WHO Model List of Essential Medicines for Children). WHO. 2015. p. 510. ISBN 9789240694941.
[8] ”Factor IX (Recombinant)”. The American Society of Health-System Pharmacists.
[9] Haberfeld, H, ed. (2015). Austria-Codex (in German). Vienna: Osterreichischer Apothekerverlag.
[10] ”ACCP 2012 guidelines: ’Evidence-Based Management of Anticoagulant Therapy, Section 9.3 Treatment of Anticoagulant-Related Bleeding’”. Chest Journal.
[11] Haemostasis and Thrombosis Task Force for the British Committee for Standards in Haematology. Guidelines on oral anticoagulation: 3rd edition. Br J Haematol. 1998;101:374-387.
[12] Baker RI, Coughlin PB, Gallus AS, Harper PL, Salem HH, Wood EM (November 2004). ”Warfarin reversal: consensus guidelines, on behalf of the Australasian Society of Thrombosis and Haemostasis”. The Medical Journal of Australia. 181 (9): 492-7. PMID 1551619.
[13] Palareti G (1998). ”A guide to oral anticoagulant therapy. Italian Federation of Anticoagulation Clinics”. Haemostasis. 28 Suppl 1: 1-46. doi:10.1159/000054103. PMID 9820837.
[14] Sample displacement chromatography as a method for purification of proteins and peptides from complex mixtures; Martina Srajer Gajdosik,1 James Clifton,2 and Djuro Josic.
[15] Josic, D. Hoffer, L. et al. Manufacturing of a prothrombin complex concentrate aiming at low thrombogenicity, Thromb. Res. 100(5), (2000) 433-441.
[16] Josic D., Kannicht C., Loster K., Pock K., Iberer G., Buchacher A., ”Vitronectin in clotting factor IX concentrates, Haemophilia 7 (3) (2001) 250-257, https://doi.org/10.1046/j.10365-2516.2001.00503.x.
[17] Clifton J., Huang F., Gaso-Sokac D., Brilliant K., Hixson D., Josic D.: Use of proteomics for validation of the isolation process of clotting factor IX from human plasma, Journal of Proteomics 73 (3) (2010) 678. doi:10.1016/j.jprot.2009.09.020.
[18] Josic D., Bal F., Schwinn, H.: Isolation of plasma proteins from clotting cascade by heparin affinity chromatography, Journal of Chromatography 632 (1993) 1-10. DOI:10.1016/0021-9673(93)80019-5.
[19] Clifton J., Huang F., Gaso-Sokac D., Brilliant K., Hixson D., Josic D.: Use of proteomics for validation of the isolation process of clotting factor IX from human plasma, Journal of Proteomics 73 (3) (2010) 678. doi:10.1016/j.jprot.2009.09.020