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特許7522916押出機および押出機において診断検査を実行する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】押出機および押出機において診断検査を実行する方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/72 20060101AFI20240718BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20240718BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240718BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240718BHJP
【FI】
B29B7/72
B29B7/38
B29C48/92
B29C48/395
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023507858
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2021057196
(87)【国際公開番号】W WO2022029676
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】102020000019633
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507015435
【氏名又は名称】サクミ コオペラティヴァ メッカニチ イモラ ソシエタ コオペラティヴァ
【住所又は居所原語表記】Via Selice Provinciale,17/A,I-40026 IMOLA(Bologna),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥーリ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】バルディッセリ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ベルガミ,ステファノ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149481(JP,A)
【文献】特表2018-521878(JP,A)
【文献】特開2003-191231(JP,A)
【文献】特表2003-530478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料用の押出機であって、
長手方向に沿って延びる中空の押出シリンダであって、ポリマー材料のペレットを受け取るための入口と、溶融ポリマー材料を排出するための出口とを有する中空の押出シリンダと、
モータに接続された押出スクリューであって、前記押出シリンダ内で回転し且つ前記ポリマー材料を前記入口から前記出口に移動させる押出スクリューと、
前記押出シリンダに結合されたヒータと、
レシピパラメータおよび監視パラメータの値を測定するように構成されたセンサシステムと、
前記レシピパラメータの目標値を記憶し且つ前記レシピパラメータを前記目標値にもっていき、そこに維持するように、前記ヒータに対してフィードバック制御を実行するようにプログラムされた処理ユニットと、を備え、
前記処理ユニットは、第1の時点で測定された前記監視パラメータの第1の値と、前記第1の時点の後の第2の時点で測定された監視パラメータの第2の値とを処理するようにプログラムされており、前記監視パラメータの前記第1の値と前記第2の値との比較に応じて警報データを生成するようにプログラムされており、
前記処理ユニットは、順々に連続してキャプチャされ且つ第1の予め定められた時間間隔だけ隔てられた前記監視パラメータの第1の一連の値を記憶するようにプログラムされており、前記監視パラメータの前記第1の値および前記監視パラメータの前記第2の値は、前記第1の一連の値から選択され、
前記処理ユニットは、第2の予め定められた時間間隔だけ隔てられた第2の一連の値を、前記第1の一連の値から導出するようにプログラムされており、前記第2の一連の値は、前記第1の一連の値のサブセットであり、前記第2の予め定められた時間間隔は、前記第1の予め定められた時間間隔よりも大きい、押出機。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記監視パラメータの変動の強度を表す参照データを含むメモリへのアクセスを有し、前記処理ユニットは、前記監視パラメータの前記第1の値と前記第2の値との間の変動と前記参照データとの比較に応じて前記警報データを生成するようにプログラムされている、請求項1に記載の押出機。
【請求項3】
前記処理ユニットは、前記レシピパラメータの前記目標値の変動の有無を調査して、前記第1の時点と前記第2の時点との間の前記レシピパラメータの前記目標値の変動の不在を識別することにも応じて、前記警報データを生成するようにプログラムされている、請求項2に記載の押出機。
【請求項4】
前記処理ユニットは、前記第1の時点と前記第2の時点との間の時間間隔の持続時間にも応じて前記警報データを生成するようにプログラムされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の押出機。
【請求項5】
前記処理ユニットは、複数の異なる監視パラメータを処理し、前記複数の監視パラメータの個々の監視パラメータに対して実行される対応する複数の比較に応じて前記警報データを生成するようにプログラムされている、請求項1からのいずれか一項に記載の押出機。
【請求項6】
前記処理ユニットは、データベースにレコードを保存するようにプログラムされており、各レコードは、以下の情報項目を含む、すなわち、
キャプチャの時点、
前記キャプチャの時点での前記レシピパラメータの値、
前記キャプチャの時点での前記監視パラメータの値、
前記キャプチャの時点での前記押出機によって処理されたポリマー材料の種類を表すデータ、を含む請求項1からのいずれか一項に記載の押出機。
【請求項7】
前記処理ユニットは、
ユーザが設定を望むレシピであって、処理されるポリマー材料の種類を表すデータと、前記レシピパラメータの目標値とを含むレシピを受信し、
設定される前記レシピに対応するレコードを特定するために前記データベースに問い合わせ、
前記レシピを設定した後に前記第2の時点で測定された前記監視パラメータの値を、前記レシピに対応する前記レコードに含まれる前記監視パラメータの値と比較するようにプログラムされており、前記レコードのキャプチャの時点は前記第1の時点を構成する、請求項に記載の押出機。
【請求項8】
前記監視パラメータは、以下の量のうちの1つまたは複数に基づく、すなわち、
前記押出スクリューの下流で測定される前記溶融ポリマー材料の圧力、
前記溶融ポリマー材料の温度、
前記押出スクリューを回転させる前記モータの吸収電力、
前記ヒータの吸収電力、
前記押出シリンダの温度、
前記押出スクリューの速度、のうちの1つまたは複数に基づく、請求項1からのいずれか一項に記載の押出機。
【請求項9】
前記レシピパラメータは、以下の量のうちの1つまたは複数に基づく、すなわち、
前記押出シリンダの温度、
前記ポリマー材料が前記押出スクリューから出る速度、
前記押出シリンダの前記出口で測定される圧力、のうちの1つまたは複数に基づく、請求項1からのいずれか一項に記載の押出機。
【請求項10】
前記押出スクリューによって供給された前記溶融ポリマー材料を移動させて、ポリマー物体を製造するための成形機で利用できるようにするように構成された押し装置を備え、次の条件の1つまたは複数が成立する、すなわち、
i)前記監視パラメータは、前記押し装置の下流で測定される前記溶融ポリマー材料の圧力に基づく、
ii)前記レシピパラメータは、次の量の1つまたは複数に基づく、すなわち、
-前記押し装置が前記溶融ポリマー材料を移動させる速度、
-前記押し装置の入口領域で測定される圧力、の1つまたは複数に基づく、
の1つまたは複数が成立する、請求項1からのいずれか一項に記載の押出機。
【請求項11】
ポリマー材料用の押出機において診断検査を実行する方法であって、前記押出機は、
モータに接続された押出スクリューであって、ヒータを備えた押出シリンダの内部で回転し且つ前記ポリマー材料を入口から出口に移動させて前記ポリマー材料を溶融させる押出スクリューと、
レシピパラメータを測定するためのセンサシステムと、
前記レシピパラメータの目標値を記憶し且つ前記レシピパラメータを前記目標値にもっていき、そこに維持するように、前記ヒータに対してフィードバック制御を実行するようにプログラムされた処理ユニットと、を備え、
前記方法は、
監視パラメータを測定するステップと、
第1の時点で測定された前記監視パラメータの第1の値と、前記第1の時点の後の第2の時点で測定された前記監視パラメータの第2の値とを処理するステップと、
前記監視パラメータの前記第1の値と前記第2の値との比較に応じて警報データを生成するステップと、
順々に連続してキャプチャされ且つ第1の予め定められた時間間隔だけ隔てられた前記監視パラメータの第1の一連の値を記憶するステップであって、前記監視パラメータの前記第1の値および前記監視パラメータの前記第2の値が前記第1の一連の値から選択される、ステップと、
第2の予め定められた時間間隔だけ隔てられた第2の一連の値を、前記第1の一連の値から導出するステップであって、前記第2の一連の値が前記第1の一連の値のサブセットであり、前記第2の予め定められた時間間隔が前記第1の予め定められた時間間隔よりも大きい、ステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記処理するステップは、前記第1の値から前記第2の値への前記監視パラメータの変動の強度と参照データとの間の比較を行うことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記警報データを生成するステップはまた、前記レシピパラメータの前記目標値が前記第1の時点と前記第2の時点との間で変更されていないという事実の検証にも応じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数の監視パラメータが測定され、前記警報データを生成するステップは、予め定められた論理に従って、前記複数の監視パラメータの値の経時的な対応する変動を処理するステップに応じる、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
レコードをデータベースに保存するステップを含み、各レコードは、以下の情報項目の1つまたは複数を含む、すなわち、
キャプチャの時点、
前記キャプチャの時点での前記レシピパラメータの値、
前記キャプチャの時点での前記監視パラメータの値、
前記キャプチャの時点での前記押出機によって処理されたポリマー材料の種類を表すデータ、の1つまたは複数を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ユーザが設定を望むレシピであって、処理されるポリマー材料の種類を表すデータと、前記レシピパラメータの前記目標値とを含むレシピを受信するステップを含み、前記受信するステップは、設定される前記レシピに対応するレコードを前記データベースに問い合わせるステップを引き起こし、
そのようなレコードが見つかった場合、前記方法は、前記レシピの設定後に前記第2の時点で測定された前記監視パラメータの値を、前記データベースから選択されたレシピに対応する前記レコードに含まれる前記監視パラメータの値と比較するステップを含み、前記レコードの前記キャプチャの時点は前記第1の時点を構成し、
そのようなレコードが見つからない場合、前記方法は、自己学習のステップを引き起こし、前記自己学習のステップでは、新しいレコードで前記データベースを更新できるようにする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリマー材料用の押出機であって、
長手方向に沿って延びる中空の押出シリンダであって、ポリマー材料のペレットを受け取るための入口と、溶融ポリマー材料を排出するための出口とを有する中空の押出シリンダと、
モータに接続された押出スクリューであって、前記押出シリンダ内で回転し且つ前記ポリマー材料を前記入口から前記出口に移動させる押出スクリューと、
前記押出シリンダに結合されたヒータと、
レシピパラメータおよび監視パラメータの値を測定するように構成されたセンサシステムと、
前記レシピパラメータの目標値を記憶し且つ前記レシピパラメータを前記目標値にもっていき、そこに維持するように、前記ヒータに対してフィードバック制御を実行するようにプログラムされた処理ユニットと、を備え、
前記処理ユニットは、第1の時点で測定された前記監視パラメータの第1の値と、前記第1の時点の後の第2の時点で測定された監視パラメータの第2の値とを処理するようにプログラムされており、前記監視パラメータの前記第1の値と前記第2の値との比較に応じて警報データを生成するようにプログラムされており、
前記処理ユニットは、順々に連続してキャプチャされ且つ第1の予め定められた時間間隔だけ隔てられた前記監視パラメータの第1の一連の値を記憶するようにプログラムされており、前記監視パラメータの前記第1の値および前記監視パラメータの前記第2の値は、前記第1の一連の値から選択され、
前記処理ユニットは、前記監視パラメータとは異なるさらなるパラメータを表す第2の一連の値を、前記第1の一連の値から導出するようにプログラムされている、押出機。
【請求項18】
前記監視パラメータは、押し出された材料の温度を表す制御温度であり、前記処理ユニットは、前記制御温度を予め定められた温度値と比較し、実行された比較に基づいて前記ヒータにコマンド信号を送信するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の押出機。
【請求項19】
前記コマンド信号は、前記押し出された材料に前記ヒータから伝達される熱量を表す、請求項18に記載の押出機。
【請求項20】
前記処理ユニットは、前記制御温度が前記予め定められた温度値よりも低い場合、前記材料に伝達される熱量を増加させるように前記ヒータに命令し、前記制御温度が前記予め定められた温度値よりも高い場合、伝達される熱を減少させるように前記ヒータに命令するように構成される、請求項19に記載の押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料用の押出機に関する。本開示はまた、ポリマー材料用の押出機において診断検査を実行する方法に関する。本開示はまた、ポリマー材料を押し出す方法に関する。本開示はまた、押出機用の診断システムに関する。
【0002】
したがって、本開示は、ポリマー材料用の押出機の分野に係る。より具体的には、本開示は、射出または圧縮成形機に供給するように構成された押出機の技術分野に係る。
【背景技術】
【0003】
この種の押出機は、例えば、本出願人名義の特許文献WO2018025150に記載されている。ポリマー材料用の別の押出機は、本出願人名義の特許文献WO2016181361A1に記載されている。その文献に記載されている押出機は、その内部のポリマー材料の特性を監視するように構成された1つまたは複数のセンサを備える。
【0004】
一般に、押出機には(例えばサイロまたは袋から)プラスチック材料の装填物(charges)が供給される。これに関連して、材料投入時の不具合を迅速に把握する必要がある。例えば、第1の材料の第1の装填が終了したとき、第1の材料とは異なる第2の材料の第2の装填物が誤って投入されることがある。したがって、材料の予期せぬ変化を把握する必要がある。さらに、第1の装填が終了したときに投入される第2の装填物の材料が第1の材料であっても、その特性は第1の装填物の第1の材料とは異なり得る。異なる特性は、例えば、第2の装填物が第1の装填物の製造者および/または製造工場とは異なる製造者および/または製造工場からのものであり得るという事実に起因し得る。異なる特性はまた、第2の装填物の汚染物質あるいは欠陥、または不適切な保管条件(例えば、第2の装填物が過度に湿った場所に保管された可能性がある)に起因し得る。したがって、材料の特性の予期せぬ変化を把握する必要がある。
【0005】
したがって、押出機の分野で感じられる必要性は、材料または材料特性の予期せぬ変化を迅速に検出することである。さらに、押出機内の材料の挙動はまた押出機の摩耗状態に影響されるので、別の必要性は、材料による挙動の変化と押出機の摩耗による挙動の変化とを区別でき、したがって、摩耗による問題を検出して、摩耗した部品の保守および交換を計画できることである。さらに別の必要性は、特定の保守を実行できるように、例えば壊れたミキサーなどの他の押出機の問題を検出できることである。
【0006】
押出機に関するいくつかの例は、次の特許文献、すなわち、WO2016181361A1、DE102008019445A1、US5122315A、WO01/77206A1、WO2020/074743A1、EP3210748A1に記載されている。さらに、押出機に関するいくつかの情報は、次の記事、すなわち、Hobson Wet ET AL: “What is Your Extruder try to tell you?”, PTONLINE, XP055798505で見つけることができる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、従来技術の上述の欠点の1つまたは複数を克服するために、押出機およびポリマー材料用の押出機において診断検査を実行する方法を提供することである。
【0008】
この目的は、添付の特許請求の範囲で特徴付けられる本開示による押出機およびポリマー材料用の押出機において診断検査を実行する方法によって完全に達成される。
【0009】
したがって、本開示は、ポリマー材料またはプラスチックを押し出すための押出機に関する。ポリマー材料の例は、ポリプロピレンおよびポリエチレンである。
【0010】
押出機は、中空の押出シリンダを備える。中空の押出シリンダは、ポリマー材料のペレットを受け取るための入口と、溶融ポリマー材料を排出するための出口とを有する。押出シリンダは長手方向に細長く延びる。より具体的には、押出シリンダは、入口から出口まで細長く延びる。
【0011】
押出機は押出スクリューを備える。押出スクリューはモータに接続されており、モータは押出シリンダ内で押出スクリューを回転駆動して、ポリマー材料を入口から出口に向けて移動させる。したがって、押出スクリューの回転により、ポリマー材料が入口から出口に向けて移動する。
【0012】
押出機は、押出シリンダに結合されたヒータを備える。より具体的には、ヒータは電気加熱要素を備える。ヒータは、押出シリンダ内のポリマー材料を加熱するように構成されている。
【0013】
1つまたは複数の実施形態では、押出機は押し装置を備える。押し装置は、スクリューによって供給された溶融ポリマー材料を動かして、ポリマー物体を製造するための成形機で利用できるようにするように構成されている。
【0014】
一実施形態では、押し装置はポンプを含む。この場合、溶融ポリマー材料は、好ましくは圧縮成形機である成形機に連続的に供給される。
【0015】
ポンプの機能は、材料が押出機から排出され且つ一定速度で成形機に供給されることを保証することである。実際、ポンプがなければ、材料の流量は押出機の固有の特徴によって変動するだろう。一部の用途では、そのような変動は許容できないので、ポンプの使用が好ましいとされる。
【0016】
別の実施形態では、押し装置は、後退位置と前進位置との間でチャンバ内を並進することによって移動可能な注入ピストンを含む。この場合、溶融ポリマー材料は、好ましくは射出成形機である成形機に断続的に供給される。いずれにせよ、押し装置は、設けられている場合、ポンプまたは注入ピストンを駆動するように構成されたモータ(好ましくは電動)を含む。
【0017】
しかしながら、1つまたは複数の実施形態では、押し装置は設けられておらず、溶融材料は、押出機の出口から、材料を処理して物体または他の製品を製造する機械に直接供給される。押出機の下流の機械が圧縮成形機である場合、押し装置の不在は、製造される物体の寸法精度の低下をもたらす。とはいえ、この低下した精度は、一部の用途では許容され得る。これに関連して、押出機の下流の機械が射出成形機である場合、押出スクリューの軸方向の動きは、(押し装置の代わりに)押出シリンダから材料を押し出す機能を果たし得る。この場合、シリンダから材料の用量を押し出した後、金型が完全に充填されるまでスクリューを前進位置に留めておく必要がある。これは機械の速度を制限するが、状況によっては許容され得る。
【0018】
さらに、押出機がポリマー材料をライニング機に供給するように構成されている場合でも、押し装置は必要ない。ライニング機は、ポリマー材料の用量を生成する機械であり、当該用量は、クロージャ(例えば、王冠またはジャーの蓋)の内側に適用されてクロージャの密閉性を高める。これらの機械では、押出機によって供給される材料の流量の変動は許容される。そのようなライニング機は、例えば、特許文献WO2004080684、EP0838326、およびWO2015092644に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
これに関連して、本開示はまた、押出機と、押出機から溶融材料を受け取るように構成された機械とを備えるシステムを提供し得る。押出機から溶融材料を受け取るように構成された機械は、圧縮成形機、射出成形機、射出圧縮成形機、またはライニング機であってもよい。
【0020】
押出機はセンサシステムを備える。センサシステムは、(少なくとも1つの)レシピパラメータおよび(少なくとも1つの)監視パラメータの値を測定するように構成されている。センサシステムは、複数のレシピパラメータの値を測定するように構成され得ることに留意されたい。センサシステムは、複数の監視パラメータの値を測定するように構成され得る。
【0021】
押出機は処理ユニットを備える。処理ユニットは、レシピパラメータの目標値を記憶し且つレシピパラメータを目標値にもっていき、それを目標値に維持するためにフィードバック制御を実行するようにプログラムされている。したがって、レシピパラメータとは、目標値を設定でき且つ目標値付近または目標値に留まらなければならないパラメータを意味する。一方、監視パラメータとは、一般的に、センサシステムによって測定されるパラメータを意味する。
【0022】
処理ユニットは、レシピパラメータを目標値に維持するために、(少なくとも)制御パラメータに対してフィードバック制御を実行するようにプログラムされている。一実施形態では、制御パラメータは監視パラメータと一致する。別の実施形態では、制御パラメータは監視パラメータに追加される。センサシステムは、好ましくは、制御パラメータも測定するように構成される。
【0023】
ヒータは、処理ユニットに接続され且つ処理ユニットによって制御される。ヒータは、処理ユニットからコマンド信号を受信するように構成される。制御信号は、押し出された材料にヒータから伝達される熱量を表す。
【0024】
より具体的には、一実施形態では、処理ユニットは、レシピパラメータを目標値にもっていき、それを目標値に維持するように、フィードバックによってヒータを制御するように構成される。したがって、この実施形態では、制御パラメータは、ヒータの動作に関連するパラメータである。以下に説明するように、(ヒータの制御に加えて、またはヒータの制御の代わりに)他のフィードバック制御があってもよく、これは、例えば、押し装置のモータの電力および/またはスクリューの回転速度などの他の制御パラメータに作用する。
【0025】
特に、一例では、処理ユニットは、押し出された材料の温度を表す制御温度である制御パラメータを受信するように構成される。処理ユニットは、制御温度を予め定められた温度値と比較するように構成される。処理ユニットは、実行された比較に基づいてヒータにコマンド信号を送信するように構成される。前記コマンド信号は、制御温度が予め定められた値よりも低い場合、材料に伝達される熱量を増加させるようにヒータに命令し、制御温度が予め定められた値よりも高い場合、伝達される熱を減少させるようにヒータに命令する。
【0026】
好ましくは、処理ユニットは、第1の時点で測定(またはキャプチャまたは導出)された監視パラメータの第1の値と、第1の時点の後の第2の時点で測定(またはキャプチャまたは導出)された監視パラメータの第2の値とを処理するようにプログラムされており、第1および第2の監視パラメータの値の比較に応じて警報データを生成するようにプログラムされている。一実施形態では、押出機は警報システムを含む。処理ユニットは、警報データの関数として警報システムを起動するように構成される。警報システムは、サイレン、警告灯、および/またはオペレータへのメッセージが表示されるビデオインタフェースを含み得る。
【0027】
一実施形態では、監視パラメータの第1の値および監視パラメータの第2の値は、移動平均を計算することによって処理ユニットによって導き出される。移動平均は、予め定められたサイズの時間ウィンドウ(例えば、60秒)内で時間とともに移動可能な値の平均である。したがって、第1の値は、第1の時点の直前の時間ウィンドウにおいて監視パラメータによって採用された値の、第1の時点で計算された平均によって与えられる。第2の値は、第2の時点の直前の時間ウィンドウにおいて監視パラメータによって採用された値の、第2の時点で計算された平均によって与えられる。
【0028】
移動平均の計算には、ノイズを減らすという利点がある、すなわち、材料の異常や摩耗などの原因によるものではない、監視パラメータ値のランダムな変動を最小限に抑えるという利点がある。そうすることで、材料の異常や摩耗などの原因による変動がより明確になる。
【0029】
一実施形態では、処理ユニットは、監視パラメータの変動の強度(または範囲)を表す参照データを含むメモリへのアクセスを有し、処理ユニットは、監視パラメータの第1の値と第2の値との間の変動と参照データとの比較に応じて警報データを生成するようにプログラムされている。例えば、参照データは、第1の時点と第2の時点での監視パラメータ間の最大許容差を含んでもよい。監視パラメータの変動が最大許容差よりも大きい場合、処理ユニットは警報データを生成するように構成されている。
【0030】
一実施形態では、処理ユニットは、レシピパラメータの目標値の変動を検出するようにプログラムされている。例えば、レシピパラメータは、オペレータによって設定可能である。レシピパラメータの変動は、新しい材料が投入されたときにオペレータが新しいレシピパラメータを入力することが原因であり得る。処理ユニットは、第1の時点と第2の時点との間でのレシピパラメータの目標値の変動の不在に応じても警報データを生成するようにプログラムされている。したがって、処理ユニットは、第1の時点と第2の時点との間で監視パラメータに変動があったが、レシピパラメータには変動がなかった場合に警報データを生成する。実際には、レシピパラメータの変動によって説明されない監視パラメータの変動は、材料の異常、すなわち、材料またはその特性の予期しない変化によるものであり得る。
【0031】
一実施形態では、処理ユニットは、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔の持続時間に応じても警報データを生成するようにプログラムされている。より具体的には、処理ユニットは、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔の持続時間と予め定められた値(例えば、1週間または1ヶ月)との比較に応じて警報データを生成するようにプログラムされている。実際、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔の持続時間が予め定められた値よりも短い場合、処理ユニットは、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の変動があれば、それをポリマー材料の異常に帰するようにプログラムされており、他方、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔の持続時間が予め定められた値よりも大きい場合、処理ユニットは、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の変動があれば、それを押出機の摩耗に帰するようにプログラムされている。
【0032】
好ましくは、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔は1時間未満である。さらにより好ましくは、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔は、30分未満、または20分未満、または15分未満である。実際には、長い時間間隔(例えば数週間または数ヶ月)における監視パラメータの変動は、材料の異常以外の原因、例えば押出機の摩耗、特にスクリューの摩耗に起因する可能性があることに留意すべきである。したがって、処理ユニットは、監視パラメータの(有意な)変動が、そのような変動が摩耗によるものであることを排除するのに十分短い時間間隔で検出された場合にのみ、警報信号を生成する。
【0033】
一実施形態では、処理ユニットは、連続して順々にキャプチャされ且つ第1の予め定められた時間間隔だけ隔てられた監視パラメータの第1の一連の値を記憶するようにプログラムされている。第1の予め定められた時間間隔は、好ましくは1秒以下である。監視パラメータの第1の値および監視パラメータの第2の値は、第1の一連の値の中から(処理ユニットによって)選択される。このようにして、(数分のオーダーで)短い過渡事象(transients)で発生し且つより長い時間(例えば10~15分)続く監視パラメータの変動を特定することが可能である。例えば、ポリマー材料の装填物(またはバッグ)が前のものと異なる場合、監視パラメータは、数分間の過渡事象で第1の値から第2の値に変化し、ポリマー材料の装填物(またはバッグ)が終了するまで(例えば、10~15分)、第2の値でほぼ一定のままである。
【0034】
処理ユニットは、第1の一連の値から、第2の予め定められた時間間隔だけ隔てられた第2の一連の値を導き出すようにプログラムされている。第2の一連の値は、第1の一連の値のサブセットであり、第2の予め定められた時間間隔は、第1の予め定められた時間間隔よりも大きい。好ましくは、第2の予め定められた時間間隔は、5分または10分よりも大きい。例えば、第2の予め定められた時間間隔は、10分または15分であってもよい。したがって、処理ユニットは、第1の(短い)時間間隔で測定された値をキャプチャし、有意な変動が検出されない場合、キャプチャされたデータの一部を削除し、監視パラメータの傾向に関する情報を取得するために、これらの値の一部(正確には第2の予め定められた時間間隔だけ隔てられた値)のみをメモリに保存してもよい。実際、一実施形態では、処理ユニットは、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の第2の一連の値をデータベースに保存するように構成される。
【0035】
一実施形態では、処理ユニットは、複数の異なる監視パラメータを処理するようにプログラムされている。この実施形態では、処理ユニットは、複数の監視パラメータの個々の監視パラメータに対して実行される複数の比較に応じて警報データを生成するように構成される。これらの監視パラメータは、センサシステムによって測定される。この場合、センサシステムは複数のセンサを含み、各々が複数の監視パラメータの対応するそれぞれの監視パラメータを測定するように構成されている。
【0036】
より具体的には、処理ユニットは、第1の時点における各々の値を第2の時点における値と比較することによって、複数の監視パラメータを処理する。これに関連して、第1の時点と第2の時点との間で(一定の許容範囲を超えて)大幅に変化する監視パラメータが多いほど、材料に実際に異常がある可能性が高くなることに留意すべきである。したがって、処理ユニットは、監視パラメータであって、第1の時点と第2の時点との間のその変動が有意である、すなわち、それぞれの許容閾値よりも大きい監視パラメータの数に依存する警報信頼度(有意な変動を有する監視パラメータの数が多いほど、警報の信頼度は高い)を含む警報データを生成できる。より複雑な処理ロジックも考えられる。この場合、警報の信頼性が第1の時点と第2の時点との間の監視パラメータの変動の加重平均の関数であるように、各監視パラメータは、それぞれの(予め定められた)重みを与えられる。
【0037】
より具体的には、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)は、以下の量のうちの1つまたは複数を含んでもよい、および/またはそれらに基づいてもよい(例えば、予め定められたやり方に従って、以下の量のうちの1つまたは複数の組み合わせを含んでもよい)。すなわち、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)は、
p1)押し装置の下流で測定される溶融ポリマー材料の圧力、
p2)押出スクリューを回転させるモータの吸収電力、
p3)押出スクリューの速度、
p4)ヒータの吸収電力、
p5)溶融ポリマー材料の温度、
p6)押し装置のモータが吸収する電力、のうちの1つまたは複数を含んでもよい、および/またはそれらに基づいてもよい。
【0038】
これに関連して、上記の「p1」、「p2」、「p4」、「p5」で示された量は、組み合わせて、熱可塑性材料の投入エラーを検出するために特に有用であることに留意されたい。一方、量「p3」、「p5」は、押出スクリューの摩耗状態を検出するのに特に有用である。したがって、例えば、処理ユニットが「p5」、「p3」の予期しない変動を検出する場合、警報データには、押出スクリューがおそらく摩耗していることを示す診断情報項目が含まれる。一方、処理ユニットがパラメータ「p1」、「p2」、「p4」、「p5」の1つまたは複数の予期しない変動を検出する場合、警報データには、材料に異常がある可能性があることを示す診断情報項目が含まれる。
【0039】
また、処理ユニットは、「p1」、「p6」の予期せぬ変動が生じたが、他のパラメータ(例えば、パラメータ「p2-p5」のうちの1つまたは複数)の有意な変動がない場合、溶融材料を混合するように構成されたミキサーの故障を検出するように構成されてもよい。
【0040】
レシピパラメータ(または複数のレシピパラメータ)は、以下の量のうちの1つまたは複数を含んでもよい、および/またはそれらに基づいてもよいことに留意されたい(例えば、予め定められたやり方に従って、以下の量のうちの1つまたは複数の組み合わせを含んでもよい)。すなわち、レシピパラメータ(または複数のレシピパラメータ)は、
p7)押出シリンダ温度、
p8)押し装置が溶融ポリマー材料を移動させる速度、
p9)押し装置の入口ゾーンで測定される圧力、のうちの1つまたは複数を含んでもよい、および/またはそれらに基づいてもよい。
【0041】
より具体的には、押し装置がポンプを含む場合、押し装置が溶融ポリマー材料を移動させる速度は、ポンプの速度を表す。
【0042】
1つまたは複数の監視パラメータは、1つまたは複数の制御パラメータと一致する可能性があり、処理ユニットは、レシピパラメータ(または複数のレシピパラメータ)を目標値にもっていき、それを目標値に維持するために、1つまたは複数の制御パラメータに対してフィードバック制御で作用することに留意すべきである。より具体的には、処理ユニットは、フィードバックによって押出スクリューの速度(量「p3」)を制御して、押し装置の入口ゾーンで測定される圧力(量「p9」)をその目標値に維持する。加えて、または代替的に、処理ユニットは、ヒータによって吸収される電力(量「p4」)をフィードバックによって制御して、押出シリンダ温度(量「p7」)をその目標値に維持してもよい。加えて、または代替的に、処理ユニットは、押し装置によって吸収される電力(量「p6」)をフィードバックによって制御して、押し装置が溶融ポリマー材料を移動させる速度(p8)をその目標値に維持してもよい。
【0043】
方法に関して以下で説明されるように(ただし、この側面は装置にも同じように適用される)、パラメータ「p7」-「p9」は監視パラメータとして使用されてもよく、代わりにパラメータ「p1」-「p6」は、レシピパラメータとして使用されてもよいことに留意すべきである。
【0044】
一実施形態では、処理ユニットは、レコードをデータベースに保存するようにプログラムされており、各レコードは、以下の情報項目のうちの1つまたは複数を含む。すなわち、キャプチャの時点、キャプチャの時点でのレシピパラメータ(またはレシピパラメータの組み合わせ)の値、キャプチャの時点での監視パラメータ(または監視パラメータの組み合わせ)の値、キャプチャの時点での押出機によって処理されたポリマー材料の種類を表すデータ、の1つまたは複数を含む。このようにして、各種類のポリマー材料および各レシピパラメータ(またはレシピパラメータの組み合わせ)が対応する監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)に関連付けられたデータベースを構築することが可能である。
【0045】
より具体的には、処理ユニットは、ユーザが設定を望むレシピであって、処理されるポリマー材料の種類を表すデータおよびレシピパラメータの目標値を含むレシピを受信し、設定されるレシピに対応するレコードをデータベースに問い合わせて、(そのようなレコードが見つかった場合)レシピを設定した後、第2の時点で測定された監視パラメータの値を、レシピに対応するレコードに含まれる監視パラメータの値と比較するようにプログラムされていてもよく、ここで、レコードのキャプチャの時点は第1の時点を構成する。これに関連して、押出機は一般的に、複数の異なる材料を処理するために使用されることに留意されたい。したがって、押出機が(例えば、第1週目に)第1の材料を処理し、次に(例えば、第2週目に)第2の材料を処理し、次に(例えば、第3週目に)第1の材料を再び処理することが可能である。第1の材料の処理が第3週目の初めに再開される場合、第3週目の初めに測定された監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)を、同じく第1の材料に関する第1週目のものと比較することは有用である。そのために、ポリマー材料の種類を表すデータに関連付けられた、第1週目の監視パラメータの値をデータベースに保存しておくことは有用である。また、監視パラメータのキャプチャの時点をデータベースに保存しておくことは有用である。これは、キャプチャの時点から経過した時間が長いほど、押出機の摩耗が大きくなるためである(実際、熱可塑性材料に異常がなくても、摩耗により監視パラメータの変動が生じる可能性がある)。これに関連して、処理ユニットはまた、各レシピセットの新しいレコードを定期的に保存してもよい。
【0046】
したがって、一実施形態では、監視パラメータの値(または複数の監視パラメータのベクトル値)が測定され、予め定められた時点で(例えば毎秒)処理ユニットに接続されたバックアップメモリに格納される。したがって、各時点で、処理ユニットは、その時点に先行する時間ウィンドウにおいて監視パラメータによって採用された値の(移動)平均を計算できる。また、処理ユニットは、各時点または時点のサブセットで計算された監視パラメータの移動平均または監視パラメータの値を格納してもよい。
【0047】
不適切なプラスチックの袋またはサイロが投入された場合、監視パラメータの変動または複数の監視パラメータのベクトルは、数分間(例えば5または10分またはそれよりも大きい)の持続時間の過渡事象で発生し、その後、監視パラメータまたは複数の監視パラメータのベクトルは、不適切な袋またはサイロを使い切るのに十分な持続時間変更されないままであり、その最後に、(再び数分間の持続時間の過渡事象で)その初期値に戻ることが観察されている。
【0048】
したがって、一実施形態では、処理ユニットは、第1の時点で計算された監視パラメータの移動平均と、第2の時点で計算された監視パラメータの移動平均とを定期的に(各測定で、毎分または5分毎に)比較してもよく、ここで、第2の時点は現在の時点であり、第1の時点は第2の時点よりも予め定められた時間長(例えば、5分または10分)だけ先行する。この比較は、同じレシピが作成されている間、定期的に実行されてもよい。
【0049】
レシピの作成が停止するとき、処理ユニットは、レシピが現在のレシピ設定であった間に監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)により採用された値を表すデータをデータベースに格納する。より具体的には、監視パラメータの有意な変動がなかった場合、処理ユニットは、レシピの作成中の監視パラメータ(またはその移動平均)の測定値または計算値のサブセットを、キャプチャの時点を示す情報項目に関連付けてデータベースに保存し、その他の値を(有意な変動がなかったので)削除する。例えば、処理ユニットは、レシピごとに1つの値を保存してもよいし、1日に1つの値を保存してもよいし、1週間に1つの値を保存してもよい。一方で、監視パラメータの有意な変動があった場合(例えば、監視パラメータに2つの著しく異なる値があった場合)、処理ユニットはまた、これらの有意な変動を表す情報をデータベースに保存してもよい(例えば、2つの著しく異なる値を保存してもよい)。したがって、データベースは、監視パラメータによって(または複数の監視パラメータのベクトルによって)採用された値の履歴を含む。これらのデータは、次に同じレシピを設定する際に計算されることになる新しい監視パラメータと比較するために使用され得る(その間に押出機が他のレシピに使用されたとしても)、および/またはレシピが最後に設定された後に発生した摩耗問題を検出するために有用であり得る。さらに、値が予め定められた時間間隔(例えば、1日に1つの値または1週間に1つの値)で保存される場合、当該値は、摩耗によるパラメータのゆっくりとした傾向を監視することを可能にする。
【0050】
一実施形態では、処理ユニットはまた、順々に連続して(例えば、1秒ごとに)測定または算出された監視パラメータの値(または複数の監視パラメータのベクトル)の傾向を導出し、その傾向の関数解析に基づいて警報データを導出してもよい。この場合も、レシピの作成が停止したときに、有意な変動がなければ、処理ユニットは、レシピ作成中の監視パラメータ(またはその移動平均)の測定値または計算値のサブセットを、キャプチャの時点を示す情報項目と関連付けてデータベースに保存し、その他の値を削除できる。
【0051】
一実施形態では、レシピが存在しない場合があり、量p7-p9に基づくパラメータでさえ、センサシステムによって測定される監視パラメータであり得る。この場合、処理ユニットは、データベースにレコードを保存するように構成されてもよく、各レコードは、キャプチャの時点において処理されているポリマー材料の種類を表すデータに関連付けられた、センサシステムによって測定された監視パラメータの1つまたは複数の値(すなわち、上記の列挙された量「p1-p6」および/または「p7-p9」を表すパラメータのベクトル)を含む。したがって、データベースは、ポリマー材料の各種類のフィンガプリントを含んでもよく、(異なる時点間で監視パラメータの変動がない場合でも)押出機によって処理されているポリマー材料の種類を認識するために使用されてもよい。実際、処理ユニットは、センサシステムによって測定される量「p1-p6」および/または「p7-p9」を表す監視パラメータの1つまたは複数の値を知っている場合、処理ユニットは、データベースに格納されたデータからポリマー材料の種類を特定できる。これに関連して、本開示はまた、押出機によって処理されているポリマー材料の種類に関する診断情報を導出する方法を提供できる。
【0052】
より具体的には、処理ユニットは、自己学習モードで動作するように構成されてもよく、自己学習モードでは、複数の連続する時点で、処理ユニットは、センサシステムによって測定された監視パラメータのベクトルと、ユーザによって伝達された材料の種類に関する情報とを受信する。したがって、処理ユニットは、監視パラメータのベクトルと材料の種類との間の関連(または相関)を生成できる。この関連は、処理ユニットに統合され且つ例えばニューラルネットワークを含む人工知能システムによって導出され得る。あるいは、関連は、人間の知識に基づいて、ユーザによって伝達された規則から取得されてもよい。材料の種類に関連付けられた監視パラメータのベクトルによって一定期間にわたって採用された値を含む自己学習データベースを構築した後、処理ユニットは特定モードで動作でき、特定モードでは、処理ユニットは、センサシステムによって測定された監視パラメータのベクトルを受信し、処理中の材料の種類を特定できる。特定は、測定された監視パラメータのベクトル値と自己学習データベースに格納された監視パラメータのベクトル値との間の近似計算に基づいてもよい。
【0053】
一実施形態では、処理ユニットは、センサシステムによって測定された監視パラメータの1つまたは複数のペアに基づいて、すなわち、1つのペアの一のパラメータの値を、同ペアの他方のパラメータの値と比較することによって、診断情報を導き出してもよい。より具体的には、監視パラメータの1つまたは複数のペアは、次の量のペアを表すパラメータを含んでもよい。すなわち、
押出スクリューを回転させるモータの吸収電力(「p2」)および押出スクリューの速度(「p3」)、
ヒータの吸収電力(「p4」)および押出シリンダの温度(「p7」)、
押し装置のモータによって吸収される電力(「p6」)および押し装置の速度(「p8」)を表すパラメータを含んでもよい。
【0054】
監視パラメータによって採用される値は通常、押出機の起動時の過渡事象で変動することに留意すべきである。この起動時の過渡事象は、電源投入の瞬間から約10-15分間続く。一実施形態では、処理ユニットは、起動時の監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の変動の傾向に基づいて、処理中のポリマー材料の種類を認識するように構成され得る。より具体的には、データベースは、材料の種類ごとに、起動時の監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の変動の傾向を表す複数のデータを含んでもよい。測定された監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)とデータベース内のデータとの比較に基づいて、制御ユニットは、処理中の材料の種類を特定できる。
【0055】
本開示はまた、押出機用の診断システムを提供することに留意されたい。本診断システムは、本開示の1つまたは複数の態様による処理ユニットを備える。本診断システムはまた、本開示の1つまたは複数の態様による押出機に接続可能な、本開示の1つまたは複数の態様によるセンサシステムを備えてもよい。
【0056】
本開示はまた、ポリマー材料用の押出機において診断検査を実行する方法に関する。押出機は、本開示の1つまたは複数の態様に従って作られる。診断検査を実行する方法は、監視パラメータをキャプチャするステップを含む。
【0057】
監視パラメータはレシピパラメータと異なってもよいが、レシピパラメータと一致してもよい。例示的な実施形態では、複数の監視パラメータが使用される。また、複数のレシピパラメータが使用される。監視パラメータの少なくとも1つは、好ましくは、レシピパラメータとして使用されるパラメータとは異なる。一実施形態では、監視パラメータはすべて、レシピパラメータとして使用されるパラメータとは異なる。
【0058】
一実施形態では、レシピパラメータとしても使用される1つまたは複数の監視パラメータの傾向を分析することによって、診断情報を導き出すことができる。実際には、処理ユニットはレシピパラメータの値をキャプチャし、それらを対応するそれぞれの目標値と比較し、有意差が見つかった場合、レシピパラメータを対応するそれぞれの目標値の近く(プラスまたはマイナスの予め定められた公差)に戻すために少なくとも1つの制御パラメータに作用し、処理ユニットが制御パラメータに作用する瞬間から、レシピパラメータが対応するそれぞれの目標値に近づく過渡事象が開始される。この過渡事象におけるレシピパラメータ値の傾向を分析することにより、例えば、警報データを生成するのに役立つ診断情報を導き出すことが可能であり、この場合、したがって、単一のパラメータを監視パラメータとレシピパラメータの両方として使用できる。
【0059】
監視パラメータとして使用されるパラメータ(または複数のパラメータ)およびレシピパラメータとして使用されるパラメータ(または複数のパラメータ)は原則として、用途に応じて(例えば、押出機に接続される機械の種類に応じて、すなわち、押出機によって供給されるプラスチックに適用される処理の種類に応じて)、またはレシピに応じても変化し得るいくつかの方法に従って選択できる。したがって、上記パラメータ「p1」-「p9」の各々は、用途に応じて、監視パラメータとして、レシピパラメータとして、または監視パラメータおよびレシピパラメータの両方として使用され得る。
【0060】
例えば、押出機が押し装置を備えた機械、例えば(射出または圧縮)成形機に溶融材料を供給するために使用される場合、上記の「p1」、「p2」、「p3」、「p4」、「p5」、「p6」で示されるパラメータは、監視パラメータとして使用でき、「p7」、「p8」、「p9」で示されるパラメータはレシピパラメータとして使用できる。フィードバック制御は、パラメータ「p4」、「p3」、「p6」に対して実行されてもよく、したがって、これらは制御パラメータとしても機能する。
【0061】
別の実施形態では、押出機が押し装置を備えない機械、例えば押し装置もライニング機も備えない(射出または圧縮)成形機に溶融材料を供給するために使用される場合、(押出機の下流で測定される溶融ポリマー材料の圧力を示す)パラメータ「p1」およびパラメータ「p2」、「p4」、「p5」を監視パラメータとして使用でき、パラメータ「p3」、「p7」をレシピパラメータとして使用できる。この場合、パラメータ「p2」、「p4」は制御パラメータとして使用できるので、したがって、監視パラメータおよび制御パラメータの両方として機能する。この場合、パラメータ「p6」、「p8」は存在せず、パラメータ「p1」、「p9」は一致する(すなわち、これらは単一のパラメータ「p1」である)。
【0062】
本方法は、連続する時点で監視パラメータをキャプチャすることを含む。診断検査を実行するために、本方法は、第1の時点で測定された監視パラメータの第1の値、および第1の時点の後の第2の時点で測定された監視パラメータの第2の値を処理するステップを含む。診断検査を実行するために、本方法は、監視パラメータの第1の値と第2の値との間の比較に応じて警報データを生成するステップを含む。
【0063】
より具体的には、処理は、第1の値から第2の値への監視パラメータの変動の強度と参照データとの間の比較を行うことを含み得る。
【0064】
好ましくは、警報データを生成するステップは、レシピパラメータの目標値が第1の時点と第2の時点との間で変更されていないという事実の検証にも応じる。一方、レシピパラメータの目標値が変動する場合、監視パラメータが変動するのは正常である。
【0065】
1つまたは複数の実施形態では、複数の監視パラメータが測定される。警報データを生成するステップは、予め定められた論理に従って、複数の監視パラメータの値の対応する経時変動を処理するステップに応じる。
【0066】
診断検査を実行するために、本方法は、その実施形態において、レコードをデータベースに保存するステップを含み、各レコードは、以下の情報項目の1つまたは複数を含む。すなわち、キャプチャの時点、キャプチャの時点でのレシピパラメータの値、キャプチャの時点での監視パラメータの値、キャプチャの時点での押出機によって処理されたポリマー材料の種類を表すデータ、の1つまたは複数を含む。
【0067】
一実施形態では、ユーザが設定を望むレシピを受信することは、設定されるレシピに対応するレコードをデータベースに問い合わせるステップを引き起こす。より具体的には、レシピは、処理されるポリマー材料の種類を表すデータと、レシピパラメータの目標値を含む。そのようなレコードが見つかった場合、本方法は、レシピが設定された後、第2の時点で測定された監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の値を、データベースから選択されたレシピに対応するレコードに含まれる監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)の値と比較するステップを含む。これに関連して、レコードをキャプチャする時点は第1の時点を構成する。したがって、本方法は、測定された監視パラメータが監視パラメータの保存された値と著しく異なる場合に警報データを生成することを含む。一方で、そのようなレコードが見つからない場合、本方法は自己学習のステップを引き起こし、当該ステップでは、新しいレコードでデータベースを更新できるようにする。
【0068】
本開示はまた、本開示によるポリマー材料用の押出機において診断検査を実施する方法のステップを実施するためにプロセッサによって実行可能な命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【0069】
本開示は、ポリマー材料を押し出す方法を提供する。ポリマー材料を押し出す方法は、押出シリンダの入口でポリマー材料のペレットを受け取るステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法は、押出シリンダ内で押出スクリューを回転させて、ポリマー材料を入口から出口に向けて移動させるステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法は、ポリマー材料が入口から出口に移動している間、中空のシリンダ内でポリマー材料を加熱するステップを含む。加熱は、シリンダに関連付けられたヒータによって実行される。ポリマー材料を押し出す方法は、シリンダの出口を通して溶融ポリマー材料を排出するステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法は、シリンダの出口から排出された、すなわち、押出スクリューによって供給された溶融ポリマー材料を移動させて、ポリマー物体を製造するための成形機で利用できるようにするステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法は、レシピパラメータおよび監視パラメータをキャプチャするステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法はまた、レシピパラメータを以前に格納された目標値にもっていき、それを当該目標値に維持するために、ヒータに対して(または、より一般的に言えば、押出機の制御パラメータに対して)フィードバック制御を実行するステップを含む。ポリマー材料を押し出す方法は、本開示の1つまたは複数の態様による押出機において診断検査を実行する方法の1つまたは複数のステップを含む。
【0070】
本開示は、押出シリンダ、押出スクリューおよび押し装置を通してポリマー材料を押し出す方法であって、ヒータを備えた押出シリンダがその入口を通してポリマー材料のペレットを受け取り、押出スクリューが押出シリンダ内で回転してポリマー材料を押出シリンダの入口から出口に向けて移動させ、押し装置が押出シリンダの出口から排出された溶融ポリマー材料を移動させてポリマー物体を製造するための成形機で利用できるようにする方法を提供し、方法は、
レシピパラメータの目標値を設定するステップと、
(リアルタイムで)レシピパラメータの値をキャプチャするステップと、
レシピパラメータを以前に格納された目標値にもっていき、それを当該目標値に維持するために、ヒータ(または、より一般的に言えば、押出機の制御パラメータ)に対してフィードバック制御を実行するステップと、
(好ましくは、レシピパラメータとは異なる)監視パラメータをキャプチャするステップと、
監視パラメータを処理するステップと、
監視パラメータの第1の値と第2の値との比較に応じて警報データを生成するステップと、を含む。
【0071】
一実施形態では、監視パラメータを処理することは、第1の時点で測定された監視パラメータの第1の値と、第1の時点の後の第2の時点で測定された監視パラメータの第2の値とを処理することを含む。別の実施形態では、(好ましくはリアルタイムで測定された)監視パラメータの(第1の)値は、例えば知識ベースに含まれる参照データと比較することによって処理される。この場合、好ましくは、複数の監視パラメータが処理される。さらに、例示的な実施形態では、監視パラメータ(または複数の監視パラメータ)は、レシピパラメータと一緒に処理される。
【0072】
レシピパラメータを設定するステップ、レシピパラメータをキャプチャするステップ、フィードバック制御を実行するステップは、処理ユニット内のプロセッサによって実行されることに留意されたい。処理および生成のステップは、同じ処理ユニットのプロセッサによって、またはさらなる処理ユニットのさらなるプロセッサによって実行され得る。
【0073】
その一態様によれば、本開示は、前述のプロセッサ(またはプロセッサおよびさらなるプロセッサ)で実行される場合に、方法の上記のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
これらおよび他の特徴は、添付の図面に非限定的な例として示される好ましい実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
図1】溶融熱可塑性材料を圧縮成形機に供給するように構成された本開示の押出機の実施形態を示す。
図2】溶融熱可塑性材料を射出成形機に供給するように構成された本開示の押出機のさらなる実施形態を、押出スクリューが後退位置にある動作構成で示す。
図3図2の押出機を押出スクリューが前進位置にある動作構成で示す。
図4図1または図2の押出機の処理ユニットを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
添付の図面を参照すると、符号1は押出機を示す。押出機1は、中空の押出シリンダ2を備える。押出シリンダ2は、入口2Aと出口2Bとの間で長手方向に延びる。押出シリンダ2は、入口2Aを通してポリマー材料のペレットを受け取り、出口2Bを通して溶融ポリマー材料を排出するように構成されている。
【0076】
押出機1は、ポリマー材料のペレットを押出シリンダ2の入口2Aに供給するように構成された投入ホッパ11を備える。
【0077】
押出機1はまた、押出スクリュー3を備える。押出スクリュー3は、押出シリンダ2の内側に配置され且つそれに対して回転可能である。押出スクリュー3も長手方向Lに延びる。押出機1は、押出スクリュー31を自転させるように構成されたモータ31(好ましくは電動)を備える。
【0078】
押出機1は、1つまたは複数のヒータ4を備える。1つまたは複数のヒータ4は、押出シリンダ2に結合されている。押出シリンダ2は、熱伝導率の高い材料、例えば金属、具体的には鋼で作られている。したがって、ヒータ4は、押出シリンダ2を構成する材料を加熱するように構成され、これにより、押出シリンダ2に含まれる熱可塑性材料が加熱される。
【0079】
押出機1はまた、押し装置5を備える。押し装置5は、押出シリンダ2の下流に接続されており、押出シリンダ2の出口2Bを出る材料を動かして押出機1から排出する。一実施形態では、押し装置5は、押出シリンダ2の出口2Bの下流に接続されたポンプを含む。この実施形態では、押し装置5は、押出シリンダ2を出る熱可塑性材料またはポリマー材料を連続的に移動させるように構成される。したがって、押出スクリュー3は、押出シリンダ2がその出口2Bから材料を連続的に排出するように、長手方向軸L周りに連続的に回転する。この実施形態は、圧縮成形機に供給するように構成された押出機で使用される。
【0080】
一実施形態では、押し装置5は、後退位置から前進位置まで、シリンダ内を往復運動で移動するピストンを含む。シリンダ2の内部で、ピストンは、押出シリンダ2の出口2Bと流体接続している射出チャンバを画定する。より具体的には、押出機は、押出シリンダ2の出口2Bから延びる第1のダクトと、射出チャンバから延びる第2のダクトとを含む。第1のダクトおよび第2のダクトは、溶融ポリマー材料を排出するように構成された出口ダクトに合流する。押出スクリュー3は、押出シリンダ2内で長手方向軸L周りに回転可能であり、後退位置と前進位置との間で長手方向軸Lに沿った並進によって移動可能である。最初、押出スクリュー3は後退位置にあり、押し装置5のピストンは前進位置にある。押出スクリュー3が回転するとき、押出スクリュー3も長手方向Lに沿って後退位置から前進位置に移動し、同時に、押し装置5のピストンが前進位置から後退位置に移動し、したがって、押出シリンダ2の出口2Bを出る材料は、射出チャンバに侵入する。この段階で、材料は出口ダクトへの流入を阻止され、当該流入は、その通路を遮断するバルブによって阻止される。押出スクリュー3が回転を開始してから予め定められた時間経過後、押出スクリュー3は停止され、ピストンは、専用のモータにより後退位置から前進位置に移動される。したがって、ピストンが前進位置に移動するとき、その間に注入チャンバを満たした溶融材料を出口ダクトに押す。この段階で、バルブが開かれて、材料が出口ダクトに流入することを可能にする。ピストンが後退位置から前進位置に移動している間、押出スクリュー3は長手方向軸に沿って前進位置から後退位置に移動する。すべての溶融材料が排出されるとき、別のサイクルが開始される。この実施形態は、射出成形機に供給するように構成された押出機で使用される。
【0081】
押出機1はまた、センサシステムを備える。センサシステムは、次のセンサの1つまたは複数を備える、すなわち、
押し装置5の出口における熱可塑性材料の圧力を測定するように構成された出口圧力センサ61、
押出スクリュー3を駆動する電動モータ31によって吸収される電力を測定するように構成されたスクリュー電力センサ62、
押出スクリュー3の回転速度を測定するように構成されたスクリュー速度センサ63、
ヒータ4によって吸収される電力を測定するように構成されたヒータ電力センサ64、
押出機を出る溶融ポリマー材料の温度を測定するように構成された溶融材料温度センサ65、
押し装置5によって吸収される電力を測定するように構成された押し装置電力センサ66、
押出シリンダ2の温度を測定するように構成されたシリンダ温度センサ67、
押し装置5の速度を測定するように構成された押し装置速度センサ68、
押し装置5の入口における溶融熱可塑性材料の圧力を測定するように構成された入口圧力センサ69、の1つまたは複数を備える。
【0082】
出口圧力センサ61は、押し装置5の下流で、押出シリンダ2を出る溶融材料を受け取る出口ダクトに接続されている。スクリュー電力センサ62は、押出スクリュー3を駆動するモータ31に接続されている。スクリュー速度センサ63は、押出スクリュー3に接続されている。ヒータ電力センサ64は、ヒータ4に接続されている。溶融材料温度センサ65は、押出シリンダ2を出る溶融材料を受け取る出口ダクトに接続されている。押し装置電力センサ66は、押し装置5がポンプを備える場合、ポンプを駆動するモータに接続されており、押し装置5がシリンダ内を移動可能なピストンを備える場合、ピストンを駆動するモータに接続されている。シリンダ温度センサ67はシリンダ2に接続されている。押し装置速度センサ68は、押し装置5がポンプを備える場合、ポンプに接続されており、押し装置5がシリンダ内を移動可能なピストンを備える場合、ピストンに接続されている。入口圧力センサ69は、押し装置5の上流で(すなわち、ポンプが設けられている場合にはポンプの上流で、シリンダ内をスライドするピストンが設けられている場合には出口2Bに接続された第1のダクトと射出チャンバに接続された第2のダクトとの接続点の上流で)、シリンダ2の出口2Bからの溶融材料を受け取るダクトに接続されている。
【0083】
センサ61、62、63、64、65、66は各々、対応する監視パラメータ72を測定するように構成されている。より具体的には、出口圧力センサ61は、量「p1」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。スクリュー電力センサ62は、量「p2」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。スクリュー速度センサ63は、量「p3」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。ヒータ電力センサ64は、量「p4」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。溶融材料温度センサ65は、量「p5」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。押し装置電力センサ66は、量「p6」を表す監視パラメータ72を測定するように構成されている。好ましくは、センサ61、62、63、64、65、66のうちの少なくとも2つが提供され、したがって、少なくとも2つの監視パラメータ72が測定される。
【0084】
センサ67、68、69は各々、対応するレシピパラメータ71を測定するように構成されている。より具体的には、シリンダ温度センサ67は、量「p7」を表すレシピパラメータ71を測定するように構成されている。押し装置速度センサ68は、量「p8」を表すレシピパラメータ71を測定するように構成されている。入口圧力センサ69は、量「p9」を表すレシピパラメータ71を測定するように構成されている。
【0085】
押出機1は、処理ユニット7を備える。処理ユニット7は、センサ67、68、69から1つまたは複数のレシピパラメータ71を受信するようにプログラムされている。押出機1はまた、ユーザがレシピパラメータ71ごとに目標値70を選択することを可能にするように構成されたユーザインタフェース9を備える。処理ユニット7は、ユーザインタフェース9に接続されており、レシピパラメータ71ごとに、ユーザによって選択された対応する目標値70を受信する。
【0086】
処理ユニット7は、センサ67、68、69(またはそれらのうちの1つまたは複数)によって測定された1つまたは複数のレシピパラメータ71を、対応する目標値70と比較し、測定された1つまたは複数のレシピパラメータ71と対応する目標値70との差に応じて、1つまたは複数のフィードバック制御信号75を生成するように構成される。処理ユニット7は、1つまたは複数のフィードバック制御信号75を、押出機の以下の構成要素のうちの1つまたは複数に送信するように構成されている。すなわち、押出スクリュー3、ヒータ4、押し装置5のうちの1つまたは複数に送信するように構成されている。より具体的には、処理ユニット7は、フィードバック制御信号75をヒータ4に送信して、ヒータ4によって吸収される電力(量「p4」)を変化させることができる。処理ユニット7は、フィードバック制御信号75を押出スクリュー3、具体的には電動モータ31に送信して、押出スクリュー3の回転速度(量「p3」)を変化させることができる。処理ユニット7は、フィードバック制御信号75を押し装置5、具体的には押し装置5のモータに送信して、押し装置5のモータによって吸収される電力(量「p6」)を変化させることができる。したがって、量「p4」、「p3」および「p5」は、センサ64、63および65によってそれぞれ読み取られ、したがって、それらは監視パラメータを構成する。同時に、それらは、1つまたは複数のレシピパラメータ71が対応する目標値70に等しい、またはそれに近い状態を維持するように、フィードバックによって制御され得る。
【0087】
処理ユニット7は、連続する時点でキャプチャされた各監視パラメータ72の値を処理するようにプログラムされている。より具体的には、処理ユニット7は、第1の時点で測定された各監視パラメータ72の第1の値と、第1の時点の後の第2の時点で測定された同じ監視パラメータ72の第2の値とを処理するように構成される。処理ユニット7は、各監視パラメータ72の第1の値と第2の値との間の比較に応じて警報データ73を生成するようにプログラムされている。一実施形態では、処理ユニット7は、少なくとも1つの監視パラメータ72(または、好ましくは、少なくとも2つの監視パラメータ72)について、第1の値と第2の値との間に(予め定められた許容閾値よりも大きい)有意差がある場合、警報データ73を生成するように構成される。警報データ73は、押出機1の動作における異常を示し得る。一実施形態では、押出機1は警報システム(または出力インタフェース)10を備え、処理ユニット7は警報データ73を警報システム10に送信するように構成される。
【0088】
一実施形態では、処理ユニット7は、メモリ8(押出機1自体の一部を形成してもよく、または遠隔のメモリであってもよい)へのアクセスを有する。メモリ8は、各監視パラメータ72の変動の強度を表す参照データ(すなわち、変動の強度の許容閾値)74を含んでもよい。処理ユニット7は、参照データ74を受信し、第1の値から第2の値までの各監視パラメータ72の変動と対応する参照データ74との間の比較に応じて、警報データを生成するように構成される。
【0089】
押し装置5がシリンダ内を往復運動するピストンを備える場合、例えば、押し装置の下流で測定される溶融ポリマー材料の圧力などのいくつかの監視パラメータ72は、周期的な傾向を有することに留意されたい。したがって、第1および第2の値は、異なるサイクルの対応する時点で測定される。参照データ74はまた、監視パラメータ72の値が測定されるサイクル時点に参照される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【文献】WO2018025150
【文献】WO2016181361A1
【文献】DE102008019445A1
【文献】US5122315A
【文献】WO01/77206A1
【文献】WO2020/074743A1
【文献】EP3210748A1
【文献】WO2004080684
【文献】EP0838326
【文献】WO2015092644
【非特許文献】
【0091】
【文献】Hobson Wet ET AL: “What is Your Extruder try to tell you?”, PTONLINE, XP055798505
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図2
図3
図4