(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20240718BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240718BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240718BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240718BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M10/052
H01M10/0566
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2023513674
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2021143846
(87)【国際公開番号】W WO2023123423
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】202111635856.2
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523066196
【氏名又は名称】中材▲リ▼膜有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼平川
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼杲▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】白耀宗
(72)【発明者】
【氏名】高▲飛▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】杜敬然
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲緒▼杰
(72)【発明者】
【氏名】周▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ザイ▼萌萌
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼超
(72)【発明者】
【氏名】魏明
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼森
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼源
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146155(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0319300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-497
H01M 10/05-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータであって、
前記多孔質PVDF系樹脂コーティングは基膜又はセラミック塗膜の少なくとも1つの面上に位置し、多孔質PVDF系樹脂の片面のコーティング
は、厚さが0.5~3.5μmであり、
粘着強度が10.51N/m以上であり、コーティングの透気度向上値が58.25秒/100cc以下であり、粘着強度(N/m)/コーティングの透気度向上値(
秒/100cc)≧0.25、且つ、粘着強度(N/m)/単位コーティングあたりの面密度(g/m
2/μm)≧10であ
り、
前記多孔質PVDF系樹脂コーティング中のPVDF系樹脂は、重量平均分子量80~120万の高分子量PVDFと、重量平均分子量20~50万の低分子量PVDFとを含み、高分子量PVDFと低分子量PVDFとの重量比が7:1~1:7である、ことを特徴とするリチウム電池用セパレータ。
【請求項2】
前記多孔質PVDF系樹脂コーティングには無機粒子がさらに含まれており、多孔質PVDF系樹脂コーティングの全重量に基づいて、無機粒子の含有量が40~80wt%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用セパレータ。
【請求項3】
重量平均分子量80~120万の高分子量PVDFと、重量平均分子量20~50万の低分子量PVDFとを含み、高分子量PVDFと低分子量PVDFとの重量比が7:1~1:7であるPVDF系樹脂を、良溶媒を含む溶媒に分散させ、全体の含水率が5wt%未満の塗布可能なスラリーを調製する工程1と、
塗布可能なスラリーを基膜の少なくとも1つの面に塗布し、次に、室温の凝固浴に浸漬してコーティングを凝固し、多孔質PVDF系樹脂コーティングを形成して、洗浄して乾燥し、リチウム電池用セパレータを得る工程2と、
を含み、
凝固浴中の含水率が30wt%~70wt%であり、乾燥温度が60~100℃であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
PVDF系樹脂を溶媒に分散させて塗布可能なスラリーを調製する前記工程1では、無機粒子が更に含まれると共に、多孔質PVDF系樹脂コーティングの全重量に基づいて、前記無機粒子の含有量が40~80wt%であることを特徴とする
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
正極と、負極と、非水電解液と、
請求項1又は2に記載のリチウム電池用セパレータとを含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本開示は、2021年12月30日に中国特許庁に提出された、出願番号がCN 2021116358562、名称が「多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータ及びその製造方法」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本開示に組み込まれている。
[技術分野]
本開示はリチウム電池用セパレータ及びリチウム電池に関する。特に多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータ及びそのリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池では、セパレータの主な役割は電池の正極と負極を隔て、両極が接触して短絡するのを防ぐことであるほか、電解質イオンを通過させる機能も持っている。熱安定性、多孔質化接着コーティングの形成容易性や電解液濡れ性の観点から、従来技術では、通常、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂を粘着層として採用している。リチウム電池のエネルギー密度を高めるために、通常、セパレータの厚さはできるだけ薄くすることが望まれるが、セパレータと正負極活物質との間の粘着性を高めるためには、粘着層の種類と厚さにもより高い要件があり、また、イオン伝導性、熱収縮性、及び機械的強度に対するセパレータの要件もあり、このため、どのようにポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粘着層をさらに設計するかは重要になってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今まで、従来技術では、多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータが、どのようにコーティング厚さ、粘着強度、熱収縮性及びイオン伝導性という4つの特性をバランス良く兼ね備えて、リチウム電池の使用特性を向上させるかについて検討していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題に対して、本発明者らは系統的な研究を行った結果、粘着強度とコーティングの透気度向上値(通気性向上値)との比、及び、粘着強度と単位厚さあたりの面密度との比を特定の範囲にすることによって、厚さ、コーティングの透気度向上値(通気性向上値)、粘着強度及び熱収縮性のいずれも優れた多孔質PVDF系樹脂コーティングが得られ、作製されたリチウム電池用セパレータはサイクル特性及び耐熱特性の点でも優れていることを見出した。本開示の具体的な形態(技術的形態)は以下のとおりである。
【0006】
1.多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータであって、前記多孔質PVDF系樹脂コーティングは基膜の少なくとも1つの面上に位置し、多孔質PVDF系樹脂片面コーティングは厚さが0.5~3.5μmであり、粘着強度(N/m)/コーティングの透気度向上値(s/100cc)≧0.25、且つ、粘着強度(N/m)/単位コーティングあたりの面密度(g/m2/μm)≧10である。
【0007】
2.多孔質PVDF系樹脂コーティング中の前記PVDF系樹脂は、重量平均分子量80~120万の高分子量PVDFと、重量平均分子量20~50万の低分子量PVDFと、を含み、高分子量PVDFと低分子量PVDFとの重量比が7:1~1:7である技術的形態1に記載のリチウム電池用セパレータ。
【0008】
3.多孔質PVDF系樹脂コーティングには無機粒子がさらに含まれてもよく、多孔質PVDF系樹脂コーティングの全重量に基づいて、無機粒子の含有量が40~80wt%である技術的形態1及び2のいずれか1項に記載のリチウム電池用セパレータ。
【0009】
4.前記多孔質PVDF系樹脂コーティングの製造過程において、そのスラリーの含水率が5wt%未満である技術的形態1~3のいずれかに記載のリチウム電池用セパレータ。
【0010】
5.前記多孔質PVDF系樹脂コーティングの製造過程において、凝固浴の含水率が30wt%~70wt%である技術的形態1~4のいずれかに記載のリチウム電池用セパレータ。
【0011】
6.前記多孔質PVDF系樹脂コーティングの製造過程において、乾燥温度が60~100℃である技術的形態1~5のいずれか1項に記載のリチウム電池用セパレータ。
【0012】
7.多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータの製造方法であって、具体的には、
PVDF系樹脂及び任意の無機粒子を、良溶媒を含む溶媒に分散させ、全体の含水率が5wt%未満の塗布可能なスラリーを調製する工程1と、
塗布可能なスラリーを基膜の少なくとも1つの面に塗布し、次に、室温の凝固浴に浸漬してコーティングを凝固し、多孔質PVDF系樹脂コーティングを形成して、洗浄して乾燥し、リチウム電池用セパレータを得る工程2と、
を含み、凝固浴中の含水率が30wt%~70wt%であり、乾燥温度が60~100℃である。
【0013】
8.前記PVDF系樹脂は、重量平均分子量80~120万の高分子量PVDFと、重量平均分子量20~50万の低分子量PVDFと、を含み、高分子量PVDFと低分子量PVDFとの重量比が7:1~1:7である技術的形態7に記載の製造方法。
【0014】
9.多孔質PVDF系樹脂コーティングの全重量に基づいて、前記無機粒子の含有量が40~80wt%である技術的形態7に記載の製造方法。
【0015】
10.正極と、負極と、非水電解液と、技術的形態1~6のいずれかに記載のリチウム電池用セパレータ又は技術的形態7~9のいずれかに記載の方法で得られたリチウム電池用セパレータと、を含むリチウム電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本開示で得られた多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータは、優れた正極粘着特性、高温寸法安定性及び良好な透気性を有し、最終的に作製されたリチウム電池はエネルギー密度が高く、サイクル特性に優れ、さらにセパレータの粘着強度とイオン伝導性を両立できないという従来技術の技術的課題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例2における多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータの外観形態のSEM像を示す。
【
図2】実施例2における多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータの外観断面のSEM像を示す。
【
図3】実施例12における多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータの外観形態のSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示をよりよく解釈するために、本開示の実施形態を参照して詳細に説明し、特定実施例と組み合わせて本開示の主要な内容をさらに説明するが、本開示の内容を以下の実施例に限定するものではない。実施例では、具体的な技術や条件が明記されていない場合、本分野における文献に記載の技術や条件又は製品の取扱書に従って行う。使用される試薬又は器具は、マーカーが明記されていない場合、全て市販の一般的な製品として入手される。
【0019】
[基膜(ベースフィルム)]
基膜(ベースフィルム)は、通常、ポリオレフィン多孔質基膜であり、リチウム電池用セパレータに好適な従来のポリオレフィン多孔質基膜から選択されてもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4-メチルペンテンから選択される1種若しくは複数種の共重合体又は複数種のブレンドを含む。
【0020】
シャットダウン機能を示す観点から、ポリオレフィン微多孔質膜はポリエチレンを含むことが好ましく、好ましいポリエチレンの含有量は基膜の全含有量の95質量%以上である。
【0021】
一実施形態では、ポリオレフィン多孔質基膜は単層ポリオレフィン微多孔質膜であり、別の実施形態では、ポリオレフィン多孔質基膜は2層以上の積層構造を有するポリオレフィン微多孔質膜である。
【0022】
ポリオレフィン多孔質基膜に含まれるポリオレフィンは、好ましくは重量平均分子量(Mw)が10万~500万である。重量平均分子量が10万以上である場合、十分な力学物性が確保される。一方、重量平均分子量が500万以下である場合、シャットダウン特性が良好であり、成膜が容易である。
【0023】
ポリオレフィン多孔質基膜の厚さは特に限定がなく、好ましくは5~30μmである。ポリオレフィン多孔質基膜は主として引張により形成される多孔質重合体膜である。
【0024】
本開示の例示的な実施形態に係るポリオレフィン多孔質基膜の製造方法は製限されず、ポリオレフィン多孔質基膜が当業者によって製造されればよく、例示的な実施形態では、ポリオレフィン多孔質基膜は乾式法又は湿式法により製造することができる。乾式法とは、ポリオレフィン膜を形成した後、低温でこの膜を引張することで微多孔質を形成する方法であり、前記引張はポリオレフィンの結晶部分であるシート間にマイクロクラックをもたらす。湿式法とは、ポリオレフィン系樹脂を溶融して単相にする高温でポリオレフィン系樹脂と希釈剤を混練し、ポリオレフィンと希釈剤を冷却中に相分離した後、希釈剤を抽出して孔隙を形成する方法である。湿式法は、相分離後に引張/抽出プロセスによって機械的強度及び透明性を付与する方法である。乾式法と比べて、湿式法による膜は、厚さが小さく、孔径が均一であり、物理的特性に優れることから、湿式法はより好ましい。
【0025】
適切な膜抵抗やシャットダウン機能を得る観点から、多孔質基材は、孔隙率が20%~60%、平均孔径が15~100nmであることが好ましい。
【0026】
製造の歩留まりを向上させる観点から、ポリオレフィン多孔質基膜は穿刺強度が200g以上であることが好ましい。
【0027】
[多孔質PVDF系樹脂コーティング]
本開示では、多孔質PVDF系樹脂コーティングは接着剤層として使用され、前記PVDF系樹脂は全ての接着剤樹脂に基づいて、90wt%以上、95wt%以上、又は99wt%以上の含有量で存在する。前記PVDF系樹脂は、具体的には、フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデンと他の共重合性単量体との共重合体、又はこれらの混合物を含む。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、ジフルオロ(1,3-ジオキソシクロペンテン)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソシクロペンテン)、トリクロロエチレン及びフルオロエチレンから選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0028】
PVDF系樹脂分子量を制御することは、PVDF樹脂の粘着性、孔形成性及び寸法安定性に影響を与える。よって、前記PVDF系樹脂は重量平均分子量80~120万の高分子量の第1のPVDF樹脂と、重量平均分子量20~50万の低分子量の第2のPVDF樹脂と、を含み、高分子量PVDFと低分子量PVDFとの重量比が7:1~1:7である。最終的な効果から、高分子量の第1のPVDF樹脂は無機粒子の粘着や離脱防止、寸法安定性に大きく寄与し、低分子量の第2のPVDF樹脂は成膜性、孔形成性及び界面粘着性に影響を与える可能性がある。
【0029】
多孔質PVDF系樹脂コーティングは好ましくは無機粒子をさらに含有し、この無機粒子は、電解液に対して安定で電気化学的に安定な任意の無機フィラーを使用してもよく、具体的には、
酸化物セラミックとしてのアルミナ、シリカ、二酸化チタン、ジルコニア、マグネシア、セリア、酸化亜鉛、酸化第二鉄;
窒化物材料としての窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素;
金属水酸化物としての水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル;
及びベーマイト、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ワラストナイト、炭化ケイ素などの材料から選ばれる1種又は複数種を含んでもよく、その中でも、アルミナ又はベーマイトが好ましい。
【0030】
多孔質PVDF系樹脂コーティングの全重量に基づいて、無機粒子の含有量は40~80wt%、好ましくは50~75wt%、より好ましくは60~70wt%である。
【0031】
[スラリー]
多孔質PVDF系樹脂コーティングを得るために、まず、塗布可能なスラリーを調製する必要があり、PVDF系樹脂、任意の無機粒子、良溶媒を塗布可能なスラリーに調製する。良溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、例えばジメチルアセトアミド、ジエチルカルボキサミド、ジエチルアセトアミドのような極性アミド溶媒などが挙げられる。スラリーにおいては、水は相分離不良溶媒として機能し、必須なものではなく、実際には、スラリー全体においては、水の含有量は好ましくは5wt%以下である。
【0032】
良好な多孔質構造を形成する観点から、PVDF系樹脂及び無機粒子のスラリー中の含有量は6wt%~20wt%、好ましくは8wt%~15wt%であり、残量は良溶媒である。
【0033】
[塗布方式]
塗布可能なスラリーを基膜の少なくとも1つの面に塗布する際には、浸漬塗布法、エアナイフ塗布法、カーテン塗布法、ロール塗布法、ワイヤバー塗布法、グラビア塗布法、ダイ塗布法などの方式によって、塗布可能なスラリーを上記多孔質基材上に塗布し、塗膜を形成する方法が好ましい。これらの塗布方式のうち、グラビア塗布法又はダイ塗布法は上記塗布液の塗布方法として好ましい。
【0034】
上記PVDF樹脂を凝固させ得る凝固液でスラリーが塗布された基膜を処理する。これによって、PVDF多孔質樹脂を凝固させ、多孔質PVDF樹脂層を形成する。凝固液で処理する方法としては、塗布用スラリーが塗布された基材に凝固液を噴霧により吹き付ける方法や、凝固液を容れた浴(凝固浴)にこの基材を浸漬する方法などが挙げられる。凝固液としては、特に限定はなく、このPVDF樹脂を凝固させ得る液体であればよく、水やスラリーに使用される溶媒に適当な当量の水を混合した溶液が好ましい。凝固浴中、水の含有量は30wt%~70wt%、好ましくは35wt%~65wt%、さらに好ましくは40wt%~60wt%である。凝固浴の温度は常温である。
【0035】
次に、凝固浴を通過した多孔質PVDF系樹脂コーティングを含むリチウム電池用セパレータを乾燥する。乾燥条件としては、基膜が軟化して収縮することはなく、PVDF樹脂と無機粒子は十分に粘着できる限り、風速及び乾燥温度に特に限定はない。乾燥方法としては、伝熱乾燥(高温度物体への接着)、対流伝熱(熱風)、放射伝熱(赤外線)、及びその他の(マイクロ波、誘導加熱など)の方式が挙げられる。上記製造方法では、幅方向に精密で均一な乾燥速度が求められるため、対流伝熱又は放射伝熱の方式が好ましく使用される。また、定率乾燥中、幅方向において乾燥速度を均一にするために、対流伝熱乾燥方式が使用される場合、好ましくは、風速を制御可能に維持しつつ、乾燥するときの総物質移動係数を低下できる方法が使用される。具体的には、支持基材に平行で、基材の搬送方向に平行で、又は垂直である方向に沿って熱風を輸送する方式が使用されればよい。乾燥温度は60~100℃に制御されることが好ましく、好ましくは70~90℃、より好ましくは75~85℃とされる。
【0036】
各実施例によれば、凝固浴の水含有量や乾燥温度が異なると、コーティングの透気度向上値及び粘着強度に影響を与える。
【0037】
[リチウム電池]
本開示のリチウム電池は、正極と、負極と、電解液と、正極と負極との間に配置された本開示の前記セパレータと、を含み、具体的には、負極と正極とをセパレータを介して対向配置させた電池素子と、電解液とを外装材内に一括して封入した構造とされる。
【0038】
正極は、例えば、正極活物質とバインダ樹脂とを含有する活物質層が集電体上に成形された構造である。
【0039】
正極活物質としては、リチウムを含む遷移金属酸化物などの当該分野によく用いられる正極活物質が挙げられ、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn1/2Ni1/2O2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCO1/2Ni1/2O2、LiAl1/4Ni3/4O2などが挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体などが挙げられる。導電助剤を含有してもよく、例えばアセチレンブラック、コチェンブラック、黒鉛粉末などの炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば、厚さ5μm~20μmのアルミニウム箔、チタン箔、ステンレス箔などが挙げられる。
【0040】
負極の実施形態としては、負極活物質とバインダ樹脂とを含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層はさらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムを電気化学的に吸蔵可能な材料が挙げられ、具体的には、例えば、炭素材料;シリコン、スズ、アルミニウムなどとリチウムとの合金;ウッド合金(Wood’s alloy)などが挙げられる。バインダ樹脂、導電助剤及び集電体は、正極部分とほぼ同一である。また、上記負極の代わりに、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
【0041】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。電解液の実施形態としては、当該分野でよく見られる電解液系であってもよい。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4などが挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ビニルカーボネート及びそれらのフッ素置換物などの鎖状炭酸エステル;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステルなどが挙げられ、これらは単独でも混合しても使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本開示の前記セパレータ及びセパレータを含むリチウム二次電池をさらに説明する。しかし、本開示の実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。最初に評価方法を記す。
<評価方法>
(1)膜厚
まず、マイクロメータを用いてセパレータ基膜の厚さを測定し、次に、塗布後の厚さを測定し、塗布後の厚さからセパレータ基膜の厚さを取り除くと、多孔質コーティングの厚さを得た。
(2)平均粒径
粒径測定装置(日機装株式会社製、MicrotracUPA150)を用いて測定した。測定条件としては、負荷指標=0.15~0.3、測定時間300秒とし、得たデータのうちの50%粒径の値を粒径とした。
(3)基膜平均孔径
Porous Materials Inc.社製のAAQ-3K-A-1型水加圧計を用いて多孔質膜について孔径分布を試験した。水を試験液として、水は圧力作用で膜の細孔に押し込まれ、異なる孔径の孔に押し込まれた水に対応する圧力はWashburn方程式に従い、これによって、膜の一連の孔構造パラメータを算出した。
(4)PVDF樹脂の重量平均分子量の測定
PVDF樹脂を1.0mg/mlの濃度でDMFに溶解し、試料液を得て、この試料液50mlについて、以下の条件でGPC測定を行い、PVDF樹脂の重量平均分子量(PMMA換算)を求めた。
装置:HLC-8220GPC(東曹株式会社)
カラム:Shodex KF-606M、KF-601
流動相:0.6ml/min DMF
検出器:示差屈折率検出器
(5)Gurley透気度値
多孔質膜が設けられたセパレータフィルムサンプルを100mm×100mmで裁断し、米国のGurley 4110N透気度テスターを用いて、100ccの試験ガスモードで試験を行い、試験ガスが全て、多孔質膜が設けられたセパレータフィルムサンプルを通過した時間をGurley値として記録した。多孔質膜のGurley値は、多孔質膜が設けられたセパレータフィルムのGurley値から多孔質膜が設けられていないセパレータフィルム(即ち単なる多孔質基材)のGurley値を減算したものである。
(6)多孔質基材と多孔質層との間の剥離強度
セパレータの一方の多孔質層の表面に幅12mm、長さ15cmの接着テープ(Scotch製、型番550R-12)を貼り付けて、その幅と長さが接着テープの幅と長さと一致するようにセパレータを切断し、測定サンプルを作製した。接着テープをセパレータに貼り付けるときに、長さ方向とセパレータのMD方向とを一致させる。なお、接着テープは一方の多孔質層を剥離するための支持体として使用される。
測定サンプルを温度23±1℃、相対湿度50±5%の雰囲気で24時間以上放置し、同じ雰囲気で以下のように測定した。
接着テープとその直ぐ下にある多孔質層とを同時に約10cm剥離し、接着テープと多孔質層との積層体(1)を、多孔質基材と他方の多孔質層との積層体(2)から約10cm分離した。積層体(1)の端部をTENSILON(Orientec社製RTC~1210A)の上部チャックに固定し、積層体(2)の端部をTENSILONの下部のチャックに固定した。測定サンプルを重力方向に吊り下げ、引張角度(積層体(1)の測定サンプルに対する角度)を180°とした。20mm/minの引張速度で積層体(1)を引張し、積層体(1)が多孔質基材から剥離したときの負荷を測定した。0.4mmの間隔で測定開始から10mm~40mmまでの負荷を取得し、その平均値を剥離強度とした。
(7)粘着強度
GB/T 2792の要求を参照して試験を行った。
1)A4紙とセパレータをA4紙/セパレータ/セパレータ/A4紙の順に従って積層し、ここでは、セパレータコーティングとセパレータコーティングとを対向させた。
2)積層されたA4紙とセパレータについて、温度100℃で熱可塑処理を行った。
3)熱可塑処理後のセパレータを長さ200mm、幅25mmの短冊形に裁断し、チャックの間隔を(100±5)mm、試験速度を(50±10)mm/minとした。
【0043】
(8)熱収縮率
GB/T12027-2004の要求を参照して試験を行った。
1)セパレータをサイズ15
*15cmで裁断し、セパレータの表面に縦方向と横方向をマークした。
2)直定規を用いて試料の縦方向及び横方向の長さをそれぞれ測定した。
3)試料を展開してチャックに置き、次にオーブンに入れて、130℃の温度で60min保持した。
4)加熱終了後、サンプルを取り出して、室温に回復させた後、縦方向及び横方向のマークの長さを再度測定し、下記の式に従って収縮率をそれぞれ計算し、最後に、複数のサンプルの平均値を収縮率とした。
【数1】
ここで、式中、
ΔL-試料の縦方向の熱収縮率(%)
L
0-試料加熱前の縦方向の長さ(単位はミリメートル(mm))
L-試料加熱後の縦方向の長さ(単位はミリメートル(mm))
ΔT-試料の横方向の熱収縮率(%)
T
0-試料加熱前の横方向の長さ(単位はミリメートル(mm))
T-試料加熱の後横方向の長さ(単位はミリメートル(mm))
(9)セパレータの穿刺強度
シート状サンプルを製造して、試験チャックに固定し、高速鉄道用引張機及びニードルパンチ治具を用いて、穿刺テスターで直径1mmのニードルを用いて、50mm/minの速度で穿刺し、データ安定化後の予備穿刺力Fを測定して計算したところ、穿刺強度(単位gf)はF/9.8
*1000であった。
【0044】
[以下、実施例1~10,12,13]
実施例1
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂3重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂2重量部及びAl2O3粒子7.5重量部を、水含有量が2wt%のジメチルアセトアミド(DMAC)/水分散系に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは5.36μmであり、両面コーティングの全面密度は7.24g/m2である。
【0045】
実施例2
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂3重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂1.5重量部及びAl
2O
3粒子7.5重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは3.4μmであり、両面コーティングの全面密度は4.92g/m
2であり、セパレータの外観形態は
図1、断面形態は
図2に示される。
【0046】
実施例3
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂2重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂3重量部及びAl2O3粒子7.5重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ7μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度370gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.44μmであり、両面コーティングの全面密度は5.14g/m2である。
【0047】
実施例4
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂2重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂3重量部及びAl2O3粒子7.5重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ7μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度370gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。実施例3と比べて、最終的に得られた両面コーティングの全厚さを6.6μmに、両面コーティングの全面密度を7.2g/m2に制御した。
【0048】
実施例5
実施例1と比べて、凝固浴中DMAC/水=6:4である。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.44μmであり、両面コーティングの全面密度は5.14g/m2である。
【0049】
実施例6
実施例1と比べて、凝固浴中DMAC/水=4:6である。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは5.48μmであり、両面コーティングの全面密度は5.08g/m2である。
【0050】
実施例7
実施例1と比べて、凝固浴中DMAC/水=3:7である。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.92μmであり、両面コーティングの全面密度は5.16g/m2である。
【0051】
実施例8
実施例2と比べて、乾燥温度を70℃に制御した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さ3.4μmであり、両面コーティングの全面密度は5.32g/m2である。
【0052】
実施例9
実施例2と比べて、乾燥温度を85℃に制御した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは3.72μmであり、両面コーティングの全面密度は5.06g/m2である。
【0053】
実施例10
実施例2と比べて、乾燥温度を100℃に制御した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.16μmであり、両面コーティングの全面密度は5.68g/m2である。
【0055】
実施例12
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂0.6重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂4.2重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するスラリーを、片面にセラミックが塗布されたポリエチレン多孔質基板の両面(塗膜の全厚さ9μm、セラミック層の厚さ2μm、穿刺強度470gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。実施例3と比べて、最終的に得られた両面コーティングの全厚さを1.6μmに、両面コーティングの全面密度を1.12g/m
2に制御し、セパレータの外観形態は
図3に示される。
【0056】
実施例13
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂1.2重量部、重量平均分子量40~50万のPVDF樹脂3.6重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するスラリーを、片面にセラミックが塗布されたポリエチレン多孔質基板の両面(塗膜の全厚さ9μm、セラミック層の厚さ2μm、穿刺強度470gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。実施例3と比べて、最終的に得られた両面コーティングの全厚さを1.2μmに、両面コーティングの全面密度を0.936g/m2に制御した。
【0057】
[以下、対比例1~7]
対比例1
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂3重量部、重量平均分子量20~50万のPVDF樹脂1重量部及びAl2O3粒子7.5重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは2.88μmであり、両面コーティングの全面密度は4.2g/m2である。
【0058】
対比例2
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂3重量部、重量平均分子量20~50万のPVDF樹脂1重量部及びAl2O3粒子10重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.44μmであり、両面コーティングの全面密度は5.64g/m2である。
【0059】
対比例3
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂1.6重量部、重量平均分子量20~50万のPVDF樹脂2.4重量部及びAl2O3粒子7.5重量部をジメチルアセトアミド(DMAC)に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.48μmであり、両面コーティングの全面密度は5.06g/m2である。
【0060】
対比例4
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂1.6重量部、重量平均分子量20~50万のPVDF樹脂2.4重量部及びAl2O3粒子7.5重量部を、水含有量が6wt%のジメチルアセトアミド(DMAC)/水分散系に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.0μmであり、両面コーティングの全面密度は4.6g/m2である。
【0061】
対比例5
塗布可能なスラリー100重量部に基づいて、重量平均分子量90~110万のPVDF樹脂2重量部、重量平均分子量20~50万のPVDF樹脂3重量部及びAl2O3粒子7.5重量部を、水含有量が6wt%のジメチルアセトアミド(DMAC)/水分散系に添加し、50℃で約3時間溶解し、接着剤を得た。23℃及び20%相対湿度の条件下で、グラビアロールによって多孔質コーティングを形成するためのスラリーをポリエチレン多孔質基板の両面(厚さ9μm、孔隙率35%、平均孔径70nm、穿刺強度450gf)に塗布し、ジメチルアセトアミド/水凝固液で凝固させ(凝固浴中DMAC/水=5:5)、純水で洗浄して、80℃で乾燥し、多孔質コーティングを有するセパレータを製造した。実施例4と比べて、最終的に得られた両面コーティングの全厚さを4.96μmに、両面コーティングの全面密度を5.74g/m2に制御した。
【0062】
対比例6
実施例1と比べて、凝固浴中DMAC/水=8:2である。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは4.48μmであり、両面コーティングの全面密度は5.32g/m2である。
【0063】
対比例7
実施例2と比べて、乾燥温度を55℃に制御した。最終的に得られた両面コーティングの全厚さは3.4μmであり、両面コーティングの全面密度は4.62g/m2である。
【0064】
[総括]
表1は実施例1~10,12,13及び対比例1~7のセパレータの関連する特性指標であり、これより、影響要素が多いに関わらず、コーティング厚さが所定の範囲内にある場合、粘着強度(N/m)/コーティングの透気度向上値(s/100cc)≧0.25かつ粘着強度(N/m)/単位コーティングあたりの面密度(g/m2/μm)≧10という2つの条件が満たされると、コーティングはより優れた正極粘着特性、高温寸法安定性及び良好な透気性を有し、さらに、対応するリチウム電池は電気特性が良好になることが明らかになっている。
【0065】
明示的に除外されないか又は他の形式で製限されない限り、任意の相互参照又は関連する特許又は特許出願、及び本出願が優先権又はその有益な効果を主張している任意の特許出願又は特許を含む、本明細書で引用されるすべての文献は、本明細書に全文引用として組み込まれるものとする。如何なる文献への引用は、これらが本開示の任意の開示又は本明細書が特許請求の範囲で保護されている先行技術であることを承認するものではなく、又はそれ自体又は任意の1つ又は複数の参照文献との組み合わせに対してこのような開示を承認することを提出、提案又は開示するものではない。さらに、本開示における用語の意味又は定義が、引用として組み込まれた文献における同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本開示において用語に付与された意味又は定義を優先する。
【0066】
表1:実施例1~
10,12,13及び対比例1~7のセパレータの関連する特性指標
(表中、番号D1~D7は対比例1~7。)
【表1】
【符号の説明】
【0067】
(なし)