(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】能力評価装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20240718BHJP
【FI】
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2023516353
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012730
(87)【国際公開番号】W WO2022224661
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021072814
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝間田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】久保田 匡亮
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026550(JP,A)
【文献】特開2020-057067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチームによって構成される組織に利用されるチャットシステムの会話データに基づいて、第1期間における前記複数のチームのうち一のチームの評価対象構成員から各チームへの発言回数を取得する第1データ取得部と、
前記評価対象構成員から前記各チームへの発言回数に基づいて、前記評価対象構成員から前記各チームへの発言回数の割合である第1割合を算出する第1算出部と、
前記第1期間以前の第2期間における前記組織に属する複数の構成員のうち一の構成員から前記各チームへの発言回数の割合である第2割合と、前記一の構成員の業務に係る精神状態を表すワーク・エンゲージメントを示す第2指標値と、の関係に基づいて、前記第1割合に対応する前記評価対象構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する推定部と、
を備える能力評価装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記関係を機械学習によって学習済みである学習済みモデルを用いて、前記評価対象構成員の前記第1指標値を推定する、
請求項1に記載の能力評価装置。
【請求項3】
前記構成員ごとに、当該構成員から前記各チームへの発言回数の割合である第3割合と、当該構成員のワーク・エンゲージメントを示す第3指標値と、の組を表す学習用データを、機械学習によってモデルに学習させることによって、前記学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部を更に備える請求項2に記載の能力評価装置。
【請求項4】
前記チャットシステムの会話データに基づいて、前記評価対象構成員から当該評価対象構成員が属するチームの1又は複数の構成員への発言回数であるチーム内発言回数と、当該評価対象構成員から当該評価対象構成員が属さない1又は複数のチームの1又は複数の構成員への発言回数であるチーム外発言回数とを取得する第2データ取得部と、
前記チーム内発言回数及び前記チーム外発言回数を用いて、前記評価対象構成員の発想力を示す指標値を算出する第2算出部と、
を更に備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の能力評価装置。
【請求項5】
前記チャットシステムの会話データに基づいて、前記評価対象構成員の発言が引用された回数である引用回数、及び当該評価対象構成員と前記発言を引用した1又は複数の構成員との関係を示す引用関係を、前記発言ごとに取得する第3データ取得部と、
前記引用回数及び前記引用関係を用いて、前記評価対象構成員の影響力を示す指標値として、前記評価対象構成員のページランクを算出する第3算出部と、
を更に備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の能力評価装置。
【請求項6】
前記チャットシステムの会話データに基づいて、前記チームごとに、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの構成員の数である外部範囲の第1の数値と、前記1又は複数の他チームの数である次数中心性の第1の数値と、を取得する第4データ取得部と、
前記外部範囲の第1の数値及び前記次数中心性の第1の数値を用いて、当該チームの効率性を示す指標値と当該チームのイノベーションの度合いを示す指標値とのうち少なくとも一方を算出する第4算出部と、
を更に備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の能力評価装置。
【請求項7】
前記組織は、複数の第1組織の中の一であり、
前記チャットシステムの会話データに基づいて、前記第1組織ごとに、当該第1組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他の第1組織の構成員の数である外部範囲の第2の数値と、前記1又は複数の他の第1組織の数である次数中心性の第2の数値とを取得する第5データ取得部と、
前記外部範囲の第2の数値及び前記次数中心性の第2の数値を用いて、当該第1組織の孤立度としてサイロの度合いを示す指標値を算出する第5算出部と、
を更に備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の能力評価装置。
【請求項8】
前記組織は、複数の第2組織の中の一であり、
前記チャットシステムの会話データに基づいて、前記第2組織ごとに、一の他の第2組織の1又は複数の構成員と会話した当該第2組織の構成員の人数を、前記一の他の第2組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する第6データ取得部を更に備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の能力評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能力評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、企業は組織を管理している。例えば、企業は、新たな社員を採用する際、求職者の雇用適性を、例えばSPI(Synthetic Personality Inventory)の結果のようなスコアを用いて算出する。また、企業は、管理者と被管理者との組織的距離に基づいて、プロジェクトを管理するシステムを用いることがある。
【0003】
例えば、特許文献1は、新しい従業員へのリクルートプロセスを支援するために使用可能な才能識別システムを開示している。この才能識別システムは、神経科学ベースのテストを利用して、ユーザのキャリアの傾向を評価する。また、特許文献2は、プロジェクトリーダーとプロジェクトメンバーとの組織的な距離情報から求めた通知タイミングにおいて、メッセージを通知するプロジェクト管理システムを開示している。なお、ここで「組織的な距離情報」とは、組織の構成を示すツリー構造におけるプロジェクトリーダーとプロジェクトメンバーとの距離に係る組織的距離を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-508776号公報
【文献】特開2020-154739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば求職者の雇用適性等のスコアが算出される際、スコア化の対象者に、例えば上記のテストに対する入力を求める必要がある。このため、対象者には、入力の負荷がかかっていた。また、管理者と被管理者との組織的距離に基づいてプロジェクトが管理される際、組織的距離といった、日単位又は月単位では変化する可能性の低い情報を用いてマネジメントが支援される。このため、被管理者の機微の変化を捉えられないといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様に係る能力評価装置は、複数のチームによって構成される組織に利用されるチャットシステムの会話データに基づいて、第1期間における前記複数のチームのうち一のチームの評価対象構成員から各チームへの発言回数を取得する第1データ取得部と、前記評価対象構成員から前記各チームへの発言回数に基づいて、前記評価対象構成員から前記各チームへの発言回数の割合である第1割合を算出する第1算出部と、前記第1期間以前の第2期間における前記組織に属する複数の構成員のうち一の構成員から前記各チームへの発言回数の割合である第2割合と、前記一の構成員の業務に係る精神状態を表すワーク・エンゲージメントを示す第2指標値と、の関係に基づいて、前記第1割合に対応する前記評価対象構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象者の業務能力を評価する際、対象者にかかる負荷を従来よりも低減すると共に、対象者の機微の変化を捉えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る能力評価システム1の全体構成を示す図。
【
図2】一実施形態に係る能力評価装置10の構成例を示すブロック図。
【
図3】一実施形態における新規構成員から各チームへの発言回数の説明図。
【
図4A】一実施形態に係るチャットシステムを利用するユーザ端末30-1~30-nでの会話例を示す説明図。
【
図4B】一実施形態に係るチャットシステムを利用するユーザ端末30-1~30-nでの会話例を示す説明図。
【
図5】一実施形態に係るサーバ20の構成例を示すブロック図。
【
図6】一実施形態に係る発言履歴データベースDB1の構成例を示す説明図。
【
図7】一実施形態に係る発言内容データベースDB2の構成例を示す説明図。
【
図8】一実施形態に係るユーザ情報データベースDB3の構成例を示す説明図。
【
図9】一実施形態に係るユーザ端末30の構成例を示すブロック図。
【
図10】機械学習時における一実施形態に係る能力評価装置10の動作を示すフローチャート。
【
図11A】運用時における一実施形態に係る能力評価装置10の動作を示すフローチャート。
【
図11B】運用時における一実施形態に係る能力評価装置10の動作を示すフローチャート。
【
図11C】運用時における一実施形態に係る能力評価装置10の動作を示すフローチャート。
【
図12】一実施形態における各チームのワーク・エンゲージメント・レベルのボックスプロット。
【
図13】一実施形態における特徴ごとの相互情報量の値を示すグラフ。
【
図14】一実施形態に係る学習済モデルから出力される予測値と、真値と、の対応関係を示すグラフ。
【
図15】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図16】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図17】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図18】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図19】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図20】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図21】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図22】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図23】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図24】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図25】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【
図26】表示装置140又は表示装置330に表示される、一実施形態に係る能力評価装置10によって処理された処理データの表示例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔1.実施形態の構成〕
以下、
図1~
図9を参照することによって、本発明の実施形態に係る能力評価装置及び能力評価システムの構成について説明する。
【0010】
〔1.1 全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る能力評価システム1の全体構成を示す図である。能力評価システム1は、複数のチームによって構成される組織に利用されるチャットシステムの会話データに基づいて、当該組織の構成員の業務に係る能力を評価するシステムである。
【0011】
能力評価システム1は、能力評価装置10と、サーバ20と、複数台のユーザ端末30の一例として、n台のユーザ端末30-1~30-nを備える。但し、nは2以上の整数である。
【0012】
能力評価装置10は、サーバ20から取得したチャットシステムの会話データに基づいて、構成員の業務に係る能力を評価する装置である。具体的には、能力評価装置10は、会話データから、上記の構成員の発言回数、及び発言者と被発言者との関係などを特定し、特定結果に基づいて構成員の業務に係る能力を評価する。
【0013】
サーバ20は、n人の構成員によって利用されるチャットシステムを提供する。n人の構成員は、ユーザ端末30-1~30-nをそれぞれ利用する、また、サーバ20は、当該チャットシステムの会話データを用いて処理したデータを、能力評価装置10に出力する。
【0014】
ユーザ端末30-1~30-nの各々は、ユーザである構成員によって利用される端末装置である。n人の構成員は、ユーザ端末30-1~30-nをそれぞれ端末装置として用いることによって、サーバ20によって提供されるチャットシステムを利用する。各々の構成員は、チャットシステムを利用することによって、チャット、すなわちユーザ端末30-1~30-nから入力される発言をやり取りする。また、ユーザ端末30-1~30-nのうち、能力評価装置10へのアクセスが許可された一部のユーザ端末30は、当該ユーザ端末30-1~30-nを利用する各々の構成員の業務に係る能力の指標値を、能力評価装置10から取得する。能力評価装置10へのアクセスが許可されたユーザ端末30は、例えば、役職者が使用する端末である。更に、能力評価装置10へのアクセスが許可されたユーザ端末30は、取得した業務に係る能力の指標値を、表示装置に表示する。
【0015】
〔1.2 能力評価装置の構成〕
図2は、能力評価装置10の構成例を示すブロック図である。能力評価装置10は、PC(Personal Computer)を典型例とする。しかしながら、能力評価装置10は、PCには限定されず、例えばタブレット端末又はスマートフォンであってもよい。能力評価装置10は、処理装置110、記憶装置130、表示装置140、入力装置150、及び通信装置160を備える。能力評価装置10の各要素は、情報を通信するための単体又は複数のバスによって相互に接続される。
【0016】
処理装置110は、能力評価装置10の全体を制御するプロセッサである。処理装置110は、例えば、単数又は複数のチップによって構成される。処理装置110は、例えば、周辺装置とのインタフェース、演算装置及びレジスタ等を含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成される。なお、処理装置110の機能の一部又は全部が、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよい。処理装置110は、各種の処理を並列的又は逐次的に実行する。
【0017】
記憶装置130は、処理装置110によって読取可能及び書込可能な記録媒体である。記憶装置130は、複数のプログラムを記憶する。複数のプログラムは、処理装置110が実行する制御プログラムPR1を含む。記憶装置130は、さらに、学習済みモデルLM1を定めるプログラム等を記憶する。学習済みモデルLM1を定めるプログラムは、機械学習によって調整された複数の係数を含む。
図2では、学習済みモデルLM1を定めるプログラム等が、学習済みモデルLM1として示されている。学習済みモデルLM1は、後述の学習済みモデル生成部114によって生成される。記憶装置130は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つによって構成されてもよい。記憶装置130は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ又は主記憶装置等と呼ばれてもよい。
【0018】
表示装置140は、画像及び文字情報を表示するデバイスである。表示装置140は、処理装置110によって実行される制御のもと各種の画像を表示する。例えば、液晶表示パネル及び有機EL(Electro Luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルが表示装置140として好適に利用される。
【0019】
入力装置150は、ユーザからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置150は、キーボード、タッチパッド、タッチパネル又はマウス等のポインティングデバイスを含む。ここで、入力装置150は、タッチパネルを含む場合、表示装置140を兼ねてもよい。
【0020】
通信装置160は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスである。送受信デバイスは、ハードウェアである。通信装置160は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、又は通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置160は、有線接続用のコネクターと、有線接続用のコネクターに対応するインタフェース回路と、を備えていてもよい。また、通信装置160は、無線通信インタフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインタフェース回路としては有線LAN、IEEE1394、USBに準拠した構成が挙げられる。また、無線通信インタフェースとしては無線LAN又はBluetooth(登録商標)等に準拠した構成が挙げられる。
【0021】
処理装置110は、記憶装置130から制御プログラムPR1を読み出す。処理装置110は、制御プログラムPR1を実行することによって、解析部111、第1データ取得部112、第1算出部113、学習済みモデル生成部114、推定部115、第2データ取得部116、第2算出部117、第3データ取得部118、第3算出部119、第4データ取得部120、第4算出部121、第5データ取得部122、第5算出部123、第6データ取得部124、及び表示制御部125として機能する。なお、制御プログラムPR1は、通信網NETを介して、能力評価装置10を管理するサーバなどの他の装置から処理装置110に送信されてもよい。また、処理装置110は、記憶装置130から学習済みモデルLM1を定めるプログラム等を読み出す。処理装置110は、学習済みモデルLM1を定めるプログラム等を実行することによって、学習済みモデルLM1として機能する。
【0022】
解析部111は、構成員の業務能力に関する各種の指標値を算出するために必要なデータをサーバ20へ要求する。解析部111は、サーバ20から要求に対する応答を得る。また、解析部111は、応答に含まれるデータを解析し、解析結果を出力する。
【0023】
例えば、能力評価装置10のユーザは、入力装置150から、新規構成員のIDと、会話データの期間D1とを入力する。新規構成員は、複数のチームのうち1つのチームに新たに参加する構成員である。新規構成員は、評価対象構成員の一例である。評価対象構成員は、新規構成員に限らない。評価対象構成員は、新規構成員とは異なる構成員でもよい。会話データの期間D1は、当該新規構成員のワーク・エンゲージメントを推定するために必要となる会話データが収集される期間である。解析部111は、入力装置150から新規構成員のIDと会話データの期間D1とを取得する。会話データの期間D1の一例は、新規構成員が1つのチームに参加した時点から、新規構成員のワーク・エンゲージメントの算出を開始する前の時点までの期間である。
【0024】
また、解析部111は、新規構成員のIDと会話データの期間D1とを指定するデータ要求Rq1を、サーバ20へ送信する。
【0025】
また、解析部111は、データ要求Rq1に応じてサーバ20から送信されるデータ応答Rs1を取得する。解析部111は、データ応答Rs1に含まれるレコードを解析することによって、会話データの期間D1における新規構成員の発言回数を算出する。
【0026】
また、解析部111は、データ応答Rs1に含まれるレコードを解析することによって、チーム内発言回数と、チーム外発言回数とを算出する。チーム内発言回数は、新規構成員から、当該新規構成員が属するチームの1又は複数の構成員への発言回数である。チーム外発言回数は、当該新規構成員から、当該新規構成員が属さない1又は複数のチームの1又は複数の構成員への発言回数である。
【0027】
また、解析部111は、データ応答Rs1に含まれるレコードを解析することによって、引用回数と、引用関係とを、発言ごとに算出する。引用回数は、新規構成員の発言が引用された回数である。引用関係は、当該新規構成員と、当該新規構成員の発言を引用した1又は複数の構成員と、の関係を示す。
【0028】
また、能力評価装置10のユーザは、入力装置150から、会話データの期間D2を入力する。会話データの期間D2は、各チームの効率性を示す指標値と、各チームのイノベーションの度合いを示す指標値と、を算出するために必要となる会話データが収集される期間である。解析部111は、入力装置150から会話データの期間D2を取得する。
【0029】
また、解析部111は、会話データの期間D2を指定するデータ要求Rq2を、サーバ20へ送信する。
【0030】
また、解析部111は、データ要求Rq2に応じてサーバ20から送信されるデータ応答Rs2を取得する。解析部111は、データ応答Rs2に含まれるレコードを解析することによって、チームごとに、外部範囲の数値A1と、次数中心性の数値A2とを算出する。外部範囲の数値A1は、チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの構成員の数である。外部範囲の数値A1は、外部範囲の第1の数値の一例である。次数中心性の数値A2は、チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの数である。次数中心性の数値A2は、次数中心性の第1の数値の一例である。
【0031】
また、能力評価装置10のユーザは、入力装置150から、会話データの期間D3を入力する。会話データの期間D3は、複数の組織に含まれる各々の組織の孤立度としてサイロの度合いを示す指標値と、一の他組織に対する各組織の脆弱性を示す指標値と、を算出するために必要となる会話データが取得される期間である。複数の組織は、複数の第1組織の一例である。複数の組織は、複数の第2組織の一例でもある。解析部111は、入力装置150から会話データの期間D3を取得する。
【0032】
また、解析部111は、会話データの期間D3を指定するデータ要求Rq3を、サーバ20へ送信する。
【0033】
また、解析部111は、データ要求Rq3に応じてサーバ20から送信されるデータ応答Rs3を取得する。解析部111は、データ応答Rs3に含まれるレコードを解析することによって、複数の組織における組織ごとに、外部範囲の数値B1と、次数中心性の数値B2とを算出する。外部範囲の数値B1は、組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の構成員の数である。外部範囲の数値B1は、外部範囲の第2の数値の一例である。次数中心性の数値B2は、組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の数である。次数中心性の数値B2は、次数中心性の第2の数値の一例である。
【0034】
また、解析部111は、データ応答Rs3に含まれるレコードを解析することによって、組織ごとに、1つの他組織の1又は複数の構成員と会話した自組織の構成員の人数を、当該1の他組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する。
【0035】
第1データ取得部112は、解析部111から、新規構成員が1つのチームに参加した後の期間における、新規構成員から各チームへの発言回数を取得する。新規構成員が1つのチームに参加した後の期間は、第1期間の一例である。
【0036】
図3は、新規構成員から各チームへの発言回数の説明図である。
図3において、組織Aには、チームt
1~t
5の5つのチームが含まれる。新規構成員である個人iが、例えば新たにチームt
3に参加することを想定する。
図3では、個人iからチームt
1に所属する1又は複数の構成員への発言回数の合計が、個人iからチームt
1への発言回数M
i1として示されている。同様に、個人iからチームt
2に所属する1又は複数の構成員への発言回数の合計が、個人iからチームt
2への発言回数M
i2として示されている。個人iからチームt
3に所属する1又は複数の構成員への発言回数の合計が、個人iからチームt
3への発言回数M
i3として示されている。個人iからチームt
4に所属する1又は複数の構成員への発言回数の合計が、個人iからチームt
4への発言回数M
i4として示されている。個人iからチームt
5に所属する1又は複数の構成員への発言回数の合計が、個人iからチームt
5への発言回数M
i5として示されている。但し、組織Aに属する構成員の総数はkであり、kは2以上の整数である。また、iは1≦i≦kを充足する整数である。
【0037】
なお、チームt1~t5の5つのチームは、複数のチームの一例である。複数のチームは、チームt1~t5の5つのチームに限定されない。組織Aにm個のチームt1~tmが含まれるとすると、個人iからチームtjへの発言回数は、Mijとして示される。但し、mは2以上の整数である。jは1≦j≦mを充足する整数である。
【0038】
図4A及び
図4Bは、ユーザ端末30-1~30-nがサーバ20によって提供されるチャットシステムを利用する状況における会話例を示す。これら
図4A及び
図4Bは、上記の「発言回数」の例を説明するための説明図である。
【0039】
図4Aは、チャットシステムが提供する「05_企画general」というチャンネル内での会話を示す。例えば「05_企画general」というチャンネル内で、「T.Bさん」から「C.Iさん」に対して、@マーク以下の宛先として、「C.Iさん」が指定された発言があった場合には、第1データ取得部112は、この発言を「T.Bさん」の1回分の発言としてカウントする。また、「T.Bさん」の発言に対する返信として、「C.Iさん」から「T.Bさん」に対して、@マーク以下の宛先として、「T.Bさん」が指定された発言があった場合には、第1データ取得部112は、この発言を「C.Iさん」の1回分の発言としてカウントする。
【0040】
一方、
図4Bは、チャットシステムが提供する「雑談チャンネル」というチャンネル内での会話を示す。例えば「雑談チャンネル」というチャンネル内で、「T.Bさん」から「雑談チャンネル」に参加している全員に対して、@マーク以下の宛先として、「雑談チャンネル」に参加している全員が指定された発言があった場合には、第1データ取得部112は、この発言を「T.Bさん」の全員の人数分の発言としてカウントする。例えば、「雑談チャンネル」に参加している人数が18人であった場合には、第1データ取得部112は、この発言を「T.Bさん」の18回分の発言としてカウントする。
【0041】
この「T.Bさん」の発言に対し、
図4Bに示すように、「K.Sさん」から返信として、@マークを用いた宛先の指定がない発言があった場合には、第1データ取得部112は、この発言をカウントしない。
【0042】
ただし、上記の発言回数のカウントの仕方は一例である。発言回数のカウントの仕方は、上記の発言回数のカウントの仕方には限定されない。例えば、第1データ取得部112は、自然言語処理を用いることによって、@マークを用いた宛先の明示の有無を問わず、発言内容から発言の相手を分析する。第1データ取得部112は、当該分析結果に基づいて、発言回数をカウントしてもよい。
【0043】
また、個人iからチームt1への発言回数Mi1は、任意の期間における個人iからチームt1への発言回数でもよい。例えば、当該発言回数は、個人iが組織Aに参加した時点以降の期間における個人iからチームt1への発言回数であってよい。個人iが組織Aに参加した時点以降の期間は、第1期間の他の例である。あるいは、当該発言回数は、個人iが組織Aに参加した時点以降の期間のうち一部の期間における個人iからチームt1への発言回数であってもよい。個人iが組織Aに参加した時点以降の期間のうち一部の期間は、第1期間のさらに他の例である。
【0044】
第1算出部113は、新規構成員から各チームへの発言回数に基づいて、新規構成員から各チームへの発言回数の割合(比率)を算出する。新規構成員から各チームへの発言回数の割合は、第1割合の一例である。上記のように、新規構成員である個人iからチームt
jへの発言回数をM
ijとすると、個人iからチームt
jへの発言回数の割合f
ijは、以下の数式[1]によって算出される。
【数1】
【0045】
学習済みモデル生成部114は、機械学習によって学習用データをモデルに学習させることによって学習済みモデルLM1を生成する。モデルは、機械学習によって調整可能な複数の係数を含む。学習用データは、組織に属する構成員ごとに、第3割合と第3指標値との組を表す。第3割合は、構成員から各チームへの発言回数の割合(比率)である。第3指標値は、当該構成員についての業務に係る精神状態であるワーク・エンゲージメントを示す指標値である。
【0046】
推定部115は、新規構成員が1つのチームに参加する前の期間における第2割合と第2指標値との関係に基づいて、新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する。新規構成員が1つのチームに参加する前の期間は、第2期間の一例である。第2割合は、第2期間における組織に属する複数の構成員のうち1人の構成員から各チームへの発言回数の割合(比率)である。第2指標値は、当該1人の構成員の業務に係る精神状態であるワーク・エンゲージメントを示す指標値である。この推定された第1指標値は、第1算出部113によって算出された発言回数の第1割合に対応する。なお、第2割合と第2指標値との関係は、構成員ごとの、第2割合と第2指標値との関係でもよい。
【0047】
とりわけ、推定部115は、学習済みモデル生成部114によって生成された学習済みモデルLM1を用いて、新規構成員から各チームへの発言回数の割合に対応する第1指標値を算出すると好適である。学習済みモデルLM1は、第2割合と第2指標値との関係を学習済みである。
【0048】
第2データ取得部116は、解析部111から、チーム内発言回数と、チーム外発言回数とを取得する。チーム内発言回数は、新規構成員から、当該新規構成員が属するチームの1又は複数の構成員への発言回数である。チーム外発言回数は、当該新規構成員から、当該新規構成員が属さない1又は複数のチームの1又は複数の構成員への発言回数である。
【0049】
図3に示す例を参照すると、第2データ取得部116は、新規構成員である個人iのチーム内発言回数としてM
i3を取得する。第2データ取得部116は、新規構成員である個人iのチーム外発言回数として、M
i1,M
i2,M
i4,M
i5の合計値を取得する。
【0050】
第2算出部117は、第2データ取得部116によって取得されたチーム内発言回数及びチーム外発言回数を用いて、新規構成員の発想力を示す指標値を算出する。具体的には、第2算出部117は、以下の数式[2]によって、発想力を示す指標値を算出する。
【数2】
【0051】
第3データ取得部118は、解析部111から、引用回数と、引用関係とを、発言ごとに取得する。引用回数は、新規構成員の発言が引用された回数である。引用関係は、当該新規構成員と、当該新規構成員の発言を引用した1又は複数の構成員と、の関係を示す。
【0052】
第3算出部119は、第3データ取得部118によって取得された引用回数及び引用関係を用いて、新規構成員の影響力を示す指標値として、新規構成員のページランク(PageRank)を算出する。
【0053】
なおここで、「ページランク」とは、以下の数式[3]によって算出される数値である。数式[3]において、PR(A)は、新規構成員のページランクを意味する。T
i(i=1,2,…,n)は、新規構成員の発言を引用している他の1又は複数の構成員を意味する。PR(T
i)は、新規構成員の発言を引用している1又は複数の他の構成員T
i(i=1,2,…,n)のページランクを意味する。C(T
n)は、新規構成員の発言を引用している1又は複数の他の構成員T
iが、新規構成員でも新規構成員の発言を引用している1又は複数の他の構成員T
iでもない1又は複数の構成員の発言を引用した回数の総数を意味する。dは、ダンピングファクターを意味する。
【数3】
【0054】
第4データ取得部120は、解析部111から、チームごとに、外部範囲の数値A1と、次数中心性の数値A2と、を取得する。外部範囲の数値A1は、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの構成員の数である。次数中心性の数値A2は、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの数である。
【0055】
第4算出部121は、第4データ取得部120によって取得された外部範囲の数値A1及び次数中心性の数値A2を用いて、チームの効率性を示す指標値と、チームのイノベーションの度合いを示す指標値と、のうち少なくとも一方を算出する。具体的には、第4算出部121は、以下の数式[4]によって、チームの効率性を示す指標値を算出する。また、第4算出部121は、以下の数式[5]によって、チームのイノベーションの度合いを示す指標値を算出する。
【数4】
【0056】
第5データ取得部122は、解析部111から、組織ごとに、外部範囲の数値B1と、次数中心性の数値B2と、を取得する。外部範囲の数値B1は、当該組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の構成員の数である。次数中心性の数値B2は、当該組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の数である。
【0057】
第5算出部123は、第5データ取得部122によって取得された外部範囲の数値B1及び次数中心性の数値B2を用いて、組織の孤立度としてサイロの度合いを示す指標値を算出する。具体的には、第5算出部123は、以下の数式[6]によって、組織の孤立度としてサイロを示す指標値を算出する。
【数5】
【0058】
第6データ取得部124は、解析部111から、サーバ20に格納される会話データに基づいて、組織ごとに、1つの他組織の1又は複数の構成員と会話した当該組織の構成員の人数を、当該1つの他組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する。
【0059】
表示制御部125は、表示装置140を制御する。例えば、表示制御部125は、推定部115によって推定された、新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を、表示装置140に表示させる。また、例えば、表示制御部125は、第2算出部117によって算出された、新規構成員の発想力を示す指標値を、表示装置140に表示させる。また、例えば、表示制御部125は、第3算出部119によって算出された、新規構成員の影響力を示す指標値を、表示装置140に表示させる。また、例えば、表示制御部125は、第4算出部121によって算出された、チームの効率性を示す指標値とイノベーションの度合いを示す指標値とのうち少なくとも一方を、表示装置140に表示させる。また、例えば、表示制御部125は、第5算出部123によって算出された、組織の孤立度としてのサイロの度合いを示す指標値を、表示装置140に表示させる。また、例えば、表示制御部125は、第6データ取得部124によって取得された、他組織に対する脆弱性を示す指標値を、表示装置140に表示させる。
【0060】
なお、後述のように、これらの値は、ユーザ端末30-1~30-nのうち少なくとも一つによって表示されてもよい。この場合、能力評価装置10は、必ずしも、表示制御部125及び表示装置140を含まなくてもよい。また、表示制御部125によって表示装置140に表示される画面の例は、
図15~
図26を参照することによって、後述される。
【0061】
〔1.3 サーバの構成〕
図5は、サーバ20の構成例を示すブロック図である。サーバ20は、処理装置210、記憶装置220、及び通信装置230を備える。サーバ20の各要素は、情報を通信するための単体又は複数のバスによって相互に接続される。
【0062】
処理装置210は、サーバ20の全体を制御するプロセッサである。処理装置210は、例えば、単数又は複数のチップによって構成される。処理装置210は、例えば、周辺装置とのインタフェース、演算装置及びレジスタ等を含む中央処理装置によって構成される。なお、処理装置210の機能の一部又は全部が、DSP、ASIC、PLD、又はFPGA等のハードウェアによって実現されてもよい。処理装置210は、各種の処理を並列的又は逐次的に実行する。
【0063】
記憶装置220は、処理装置210によって読取可能及び書込可能な記録媒体である。当該記憶装置220は、処理装置110が実行する制御プログラムPR2を含む複数のプログラム、サーバ20が提供するチャットシステムで用いられる会話データ、発言履歴データベースDB1、発言内容データベースDB2、及びユーザ情報データベースDB3を記憶する。ここで、発言履歴データベースDB1は、上記の会話データに基づいて、後述の発言履歴データベース生成部211によって生成される。また、発言内容データベースDB2は、上記の会話データに基づいて、後述の発言内容データベース生成部212によって生成される。また、ユーザ情報データベースDB3は、上記のチャットシステムの利用者情報のデータベースである。記憶装置220は、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、及びRAM等の少なくとも1つによって構成されてもよい。記憶装置220は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ又は主記憶装置等と呼ばれてもよい。
【0064】
図6は、発言履歴データベースDB1の構成例を示す。発言履歴データベースDB1は、発言ごとに、当該発言が行われた発言チャンネル、当該発言の発言者のid、当該発言を受け取った被発言者のid、及び当該発言の発言日時に係るデータを、当該発言のidと共に格納するデータベースである。
【0065】
図7は、発言内容データベースDB2の構成例を示す。発言内容データベースDB2は、発言ごとに、当該発言の内容を、当該発言のidと共に格納するデータベースである。
【0066】
なお、
図6及び
図7に示されるデータ例は、
図4A及び
図4Bに示される、チャットシステムにおける会話例に対応する。すなわち、
図6及び
図7のデータのうち、発言id=1の発言は、
図4Aにおける「T.Bさん」から「C.Iさん」への発言に対応する。発言id=2の発言は、
図4Aにおける「C.Iさん」から「T.Bさん」への発言に対応する。発言id=3~5の発言は、
図4Bにおける「T.Bさん」から「皆さん」への発言に対応する。発言id=21の発言は、
図4Bにおける「K.Sさん」からの宛先のない発言に対応する。
【0067】
図8は、ユーザ情報データベースDB3の構成例を示す。ユーザ情報データベースDB3は、発言者のidと、当該発言者の所属との対応関係を格納するデータベースである。
【0068】
通信装置230は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスである。送受信デバイスは、ハードウェアである。通信装置230は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、又は通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置230は、有線接続用のコネクターと、有線接続用のコネクターに対応するインタフェース回路と、を備えていてもよい。また、通信装置230は、無線通信インタフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインタフェース回路としては有線LAN、IEEE1394、USBに準拠した構成が挙げられる。また、無線通信インタフェースとしては無線LAN又はBluetooth(登録商標)等に準拠した構成が挙げられる。
【0069】
処理装置210は、記憶装置220から制御プログラムPR2を読み出す。処理装置210は、制御プログラムPR2を実行することによって、発言履歴データベース生成部211、発言内容データベース生成部212、及び会話データ処理部213として機能する。なお、制御プログラムPR2は、通信網NETを介して、能力評価装置10を管理するサーバなどの他の装置からサーバ20に送信されてもよい。
【0070】
発言履歴データベース生成部211は、ユーザ端末30-1~30-nから、通信装置230を介して入力された発言データに基づいて、発言履歴データベースDB1を生成する。
【0071】
発言内容データベース生成部212は、ユーザ端末30-1~30-nから、通信装置230を介して入力された発言データに基づいて、発言内容データベースDB2を生成する。
【0072】
会話データ処理部213は、発言履歴データベースDB1、発言内容データベースDB2、及びユーザ情報データベースDB3に基づいて、会話データを生成する。会話データ処理部213は、通信装置230を介して、会話データをユーザ端末30-1~30-nに出力する。
【0073】
とりわけ、会話データ処理部213は、能力評価装置10からのデータ要求Rq1に応じて、データ要求Rq1に指定された新規構成員のID及び会話データの期間D1に基づいて、新規構成員の会話データの期間D1における会話データを生成する。その上で、会話データ処理部213は、生成された新規構成員の会話データの期間D1における会話データを、通信装置230を介して、能力評価装置10に出力する。
【0074】
また、会話データ処理部213は、能力評価装置10からのデータ要求Rq2に応じて、データ要求Rq2に指定された会話データの期間D2に基づいて、会話データの期間D2における会話データを生成する。その上で、会話データ処理部213は、生成された会話データの期間D2における会話データを、通信装置230を介して、能力評価装置10に出力する。
【0075】
ここで、「発言データ」とは、組織に属する1人の構成員から1人又は複数人の構成員に対する発言のデータである。発言データは、一方向の単一の発言のデータである。一方、「会話データ」とは、「発言データ」の集積である。会話データは、一方向の単一の発言のデータであってもよく、複数の構成員間での双方向の複数の発言のデータであってもよい。
【0076】
なお、
図5において、サーバ20は、表示装置及び入力装置を備えない。しかしながら、サーバ20は、表示装置及び入力装置を備えてもよい。
【0077】
〔1.4 ユーザ端末の構成〕
図9は、ユーザ端末30の構成例を示すブロック図である。ユーザ端末30は、PCを典型例とする。しかしながら、ユーザ端末30は、PCには限定されず、例えばタブレット端末又はスマートフォンであってもよい。ユーザ端末30は、処理装置310、記憶装置320、表示装置330、入力装置340、及び通信装置350を備える。ユーザ端末30の各要素は、情報を通信するための単体又は複数のバスによって相互に接続される。
【0078】
処理装置310は、ユーザ端末30の全体を制御するプロセッサである。処理装置310は、例えば、単数又は複数のチップによって構成される。処理装置310は、例えば、周辺装置とのインタフェース、演算装置及びレジスタ等を含む中央処理装置によって構成される。なお、処理装置310の機能の一部又は全部が、DSP、ASIC、PLD、又はFPGA等のハードウェアによって実現されてもよい。処理装置310は、各種の処理を並列的又は逐次的に実行する。
【0079】
記憶装置320は、処理装置310によって読取可能及び書込可能な記録媒体である。記憶装置320は、処理装置310が実行する制御プログラムPR3を含む複数のプログラム、発言データ、会話データ、及び業務指標値に係るデータを記憶する。ここで、上記の発言データは、後述の発言データ生成部311によって生成されるデータである。また、上記の会話データは、後述の会話データ取得部312によって取得されるデータである。更に、上記の業務指標値に係るデータは、後述の処理データ取得部313によって取得されるデータである。記憶装置320は、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、及びRAM等の少なくとも1つによって構成されてもよい。記憶装置320は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ又は主記憶装置等と呼ばれてもよい。
【0080】
表示装置330は、画像及び文字情報を表示するデバイスである。表示装置330は、処理装置310によって実行される制御のもと各種の画像を表示する。例えば、液晶表示パネル及び有機EL(Electro Luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルが表示装置330として好適に利用される。
【0081】
入力装置340は、ユーザからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置340は、キーボード、タッチパッド、タッチパネル又はマウス等のポインティングデバイスを含む。ここで、入力装置340、タッチパネルを含む、表示装置330を兼ねてもよい。
【0082】
通信装置350は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスである。送受信デバイスは、ハードウェアである。通信装置350は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、又は通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置350は、有線接続用のコネクターと、有線接続用のコネクターに対応するインタフェース回路と、を備えていてもよい。また、通信装置350は、無線通信インタフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインタフェース回路としては有線LAN、IEEE1394、USBに準拠した構成が挙げられる。また、無線通信インタフェースとしては無線LANやBluetooth(登録商標)等に準拠した構成が挙げられる。
【0083】
処理装置310は、記憶装置320から制御プログラムPR3を読み出す。処理装置310は、制御プログラムPR3を実行することによって、発言データ生成部311、会話データ取得部312、処理データ取得部313、及び表示制御部314として機能する。なお、制御プログラムPR3は、通信網NETを介して、能力評価装置10を管理するサーバなどの他の装置からユーザ端末30に送信されてもよい。
【0084】
発言データ生成部311は、ユーザ端末30を利用する組織の構成員によって入力装置340を用いて行われる入力の内容に基づいて、発言データを生成する。また、発言データ生成部311は、生成した発言データを、通信装置350を介して、サーバ20に出力する。更に、発言データ生成部311は、生成した発言データを、記憶装置320に格納する。
【0085】
会話データ取得部312は、通信装置350を介して、サーバ20から会話データを取得する。また、会話データ取得部312は、取得した会話データを、記憶装置320に格納する。
【0086】
処理データ取得部313は、通信装置350を介して、能力評価装置10から、当該能力評価装置10によって処理されたデータを取得する。より具体的には、処理データ取得部313は、能力評価装置10によって処理されたデータとして、上記のワーク・エンゲージメントを示す指標値、発想力を示す指標値、影響力を示す指標値、チームの効率性を示す指標値、チームのイノベーションの度合いを示す指標値、組織の孤立度としてのサイロの度合いを示す指標値、及び組織ごとの他組織に対する脆弱性を示す指標値を取得する。なお、能力評価装置10によって処理されたデータは、これらのデータには限定されない。
【0087】
表示制御部314は、表示装置330を制御する。例えば、表示制御部314は、発言データ生成部311によって生成された発言データを、表示装置330に表示させる。また、例えば、表示制御部314は、会話データ取得部312によって取得された会話データを、表示装置330に表示させる。更に、例えば、表示制御部314は、処理データ取得部313によって取得された、能力評価装置10によって処理された処理データを、表示装置330に表示させる。
【0088】
なお、上記のように、能力評価装置10が、表示制御部125及び表示装置140を備える場合には、当該表示制御部125は、能力評価装置10によって処理された処理データを、表示装置140に表示させてもよい。
【0089】
〔2.実施形態の動作〕
続いて、
図10~
図11Cを参照することによって、本実施形態に係る能力評価装置10の動作について説明する。
図10は、機械学習時における能力評価装置10の動作を示すフローチャートである。
図11A~
図11Cは、運用時における能力評価装置10の動作を示すフローチャートである。より詳細には、
図11Aは、能力評価装置10が、組織の構成員単位での業務に係る指標値を出力する際の動作を示すフローチャートである。
図11Bは、能力評価装置10が、チーム単位での業務に係る指標値を出力する際の動作を示すフローチャートである。
図11Cは、能力評価装置10が、組織単位での業務に係る指標値を出力する際の動作を示すフローチャートである。
【0090】
〔2.1 機械学習時の動作〕
図10のステップS1において、学習済みモデル生成部114は、学習用データを取得する。学習用データは、組織に属する構成員ごとに、当該構成員から各チームへの発言回数の割合と当該構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値との組を表す。
【0091】
ステップS2において、学習済みモデル生成部114は、取得した学習用データを機械学習によって学習用のモデルに学習させる。
【0092】
ステップS3において、機械学習が終了した場合(S3:YES)には、
図10に示される処理が終了する。機械学習の終了に応じて、学習済みモデル生成部114は、学習済みモデルLM1の生成を完了する。学習済みモデルLM1は、組織に属する複数の構成員のうち一の構成員から各チームへの発言回数の割合と、当該一の構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値と、の関係を、学習済みである。機械学習がまだ終了していない場合(S3:NO)には、処理はステップS2に戻る。
【0093】
〔2.2 運用時の動作〕
〔2.2.1 組織の構成員単位での指標値を出力する動作〕
図11AのステップS11において、第1データ取得部112は、新規構成員としての個人が1つのチームに参加した後の期間における新規構成員から各チームへの発言回数を取得する。
【0094】
ステップS12において、第1算出部113は、第1データ取得部112によって取得された新規構成員から各チームへの発言回数に基づいて、新規構成員から各チームへの発言回数同士の割合(比率)を算出する。
【0095】
ステップS13において、推定部115は、学習モデル生成部114によって生成された学習済みモデルLM1に対して、第1算出部113によって算出された新規構成員から各チームへの発言回数の割合を入力する。推定部115は、新規構成員から各チームへの発言回数の割合の入力に応じて学習済みモデルLM1から出力される指標値を、新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値として推定する。
【0096】
ステップS14において、第2データ取得部116は、チーム内発言回数と、チーム外発言回数とを取得する。チーム内発言回数は、新規構成員から当該新規構成員が属するチームの1又は複数の構成員への発言回数である。チーム外発言回数は、新規構成員から当該新規構成員が属さない1又はチームの1又は複数の構成員への発言回数である。
【0097】
ステップS15において、第2算出部117は、第2データ取得部116によって取得されたチーム内発言回数及びチーム外発言回数を用いて、新規構成員としての個人の発想力を示す指標値を算出する。
【0098】
ステップS16において、第3データ取得部118は、引用回数と、引用関係を、発言ごとに取得する。引用回数は、新規構成員としての個人の発言が引用された回数である。引用関係は、新規構成員としての個人と新規構成員の発言を引用した1又は複数の構成員との関係を示す。
【0099】
ステップS17において、第3算出部119は、第3データ取得部118によって取得された引用回数及び引用関係を用いて、新規構成員としての個人の影響力を示す指標値として、当該新規構成員のページランクを算出する。
【0100】
ステップS18において、通信装置160は、個人のワーク・エンゲージメントを示す指標値、個人の発想力を示す指標値、及び個人の影響力を示す指標値を、ユーザ端末30-1~30-nのうち少なくとも1つのユーザ端末30に出力する。その後、能力評価装置10は、
図11Aに示される全ての処理を終了する。
【0101】
〔2.2.2 チーム単位での指標値を出力する動作〕
図11BのステップS21において、第4データ取得部120は、チームごとに、外部範囲の数値A1と、次数中心性の数値A2とを取得する。外部範囲の数値A1は、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの構成員の数である。次数中心性の数値A2は、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの数である。
【0102】
ステップS22において、第4算出部121は、第4データ取得部120によって取得された外部範囲の数値A1及び次数中心性の数値A2を用いて、チームの効率性を示す指標値を算出する。
【0103】
ステップS23において、第4算出部121は、第4データ取得部120によって取得された外部範囲の数値A1及び次数中心性の数値A2を用いて、チームのイノベーションの度合いを示す指標値を算出する。
【0104】
ステップS24において、通信装置160は、チームの効率性を示す指標値、及びチームのイノベーションを示す指標値のうち少なくとも1つを、ユーザ端末30-1~30-nのうち少なくとも1つのユーザ端末30に出力する。その後、
図11Bに示される全ての処理が終了する。
【0105】
〔2.2.3 組織単位での指標値を出力する動作〕
図11CのステップS31において、第5データ取得部122は、組織ごとに、外部範囲の数値B1と、次数中心性の数値B1とを取得する。外部範囲の数値B1は、当該組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の構成員の数である。次数中心性の数値B2は、当該組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の数である。
【0106】
ステップS32において、第5算出部123は、第5データ取得部122によって取得された外部範囲の数値B1及び次数中心性の数値B2を用いて、組織の孤立度としてのサイロの度合いを示す指標値を算出する。
【0107】
ステップS33において、第6データ取得部124は、組織ごとに、1つの他組織の1又は複数の構成員と会話した自組織の構成員の人数を、当該1つの他組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する。
【0108】
ステップS34において、通信装置160は、各組織のサイロの度合いを示す指標値、及び、各組織の1つ又は複数の他組織に対する脆弱性を示す指標値のうち少なくとも1つを、ユーザ端末30-1~30-nのうち少なくとも1つのユーザ端末30に出力する。その後、全ての処理を終了する。
【0109】
〔3.適用例〕
〔3.1 機械学習方法の例〕
最初に、上記の「ワーク・エンゲージメント」の概念について説明し、続いて上記の機械学習方法の例について説明する。
【0110】
Covid19の大流行が爆発的に世界を席巻した結果、従来のオフィスワークからリモートワークへの移行を含む「ニューノーマル」と呼ばれる新しい生き方が急速に広まっている。しかし、リモートワークでは対面でのコミュニケーションが少なくなるため、管理者が部下のエンゲージメント・レベルを把握しづらくなる。ここで、「ワーク・エンゲージメント」のレベルは、活力、熱意、及び没頭の総和と定義される(例えば、“Wilmar B. Schaufeli, Marisa Salanova, Vicente Gonzalez-Roma, and Arnold B.Bakker. 2002. The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. (Journal of Happiness studies 3, 1 (2002),71-92.)”)。従業員のワーク・エンゲージメントは企業の業績に影響を与える。具体的には、従業員のワーク・エンゲージメント・レベルが低下すると企業の業績が悪化する。従って、企業はこの状況を認識し、従業員のワーク・エンゲージメント・レベルを維持することが重要である。
【0111】
このワーク・エンゲージメント・レベルを取得するために、後述のように、Slack(登録商標)及びMicrsoft Teams(登録商標)のようなテキストベースのコミュニケーション・ツールを利用して、アンケート及びチャットツールのテキストの内容を利用せずに発言者のワーク・エンゲージメント・レベルを推定することが可能である。具体的には,発言者と会話する相手と発言者の所属を知るだけで、発言者のワーク・エンゲージメント・レベルを推定することが可能である。業務に係るエンゲージメントは、チャットツールを介したコミュニケーションを通じて伝播すると考えられる。つまり、業務に係るエンゲージメントは、発言者と会話相手との会話頻度に強く影響される。出願人は、この考え方に基づき、発言者と会話している相手と、発言者の所属先と、に基づいて、発言者のワーク・エンゲージメントを推定するための学習済みモデルを構築し、この学習済みモデルを用いて実際のSlackデータに基づいて評価を行った。その結果、チャットの内容よりも、発言者が会話をしているチーム、及び発言者の会話の頻度が、発言者のワーク・エンゲージメントに大きく影響することが明らかになった。また、真値と予測値の相関係数が0.72であったことから、発言者のワーク・エンゲージメントを算定するためのアンケート自体、及び、アンケートへの回答内容への秘匿性を必要とせず、発言者のワーク・エンゲージメント・レベルを推定することが可能となった。
【0112】
以下、学習済みモデルの開発例について説明する。
出願人は、上記の学習済みモデルとして、テキストベースのコミュニケーション・ツールであるSlackデータから、発言者のワーク・エンゲージメント・レベルを予測する学習済みモデルを開発した。モデルの学習には、株式会社NTTドコモの開発部門のSlackデータから、発言者の同意を得てテキストデータが用いられた。Slackには2つのチームレイヤーが存在する。1つ目のレイヤーはワーク・スペースと呼ばれ、部署の全てのメンバーが含まれる。2つ目のレイヤーはチャンネルと呼ばれ、プロジェクトベースのメンバーが含まれる。プライベート・チャンネルは、アクセスに許可を要求するパーミッションベースのチャンネルである。一方、パブリック・チャンネルは、ワーク・スペースの全メンバーが閲覧することができる。このため、パブリック・チャンネルではプライバシーへの懸念は少ない。学習済みモデル開発の際は、すべての公開チャンネルのデータが抽出された。データには,テキスト、発言者、及び会話相手が含まれる。各テキストには,@[ユーザ名]のようなチャット言及マーカがある。このマーカを用いて各ユーザの発言数がカウントされた。テキスト中にマーカがない場合には、発言者がチャンネル内の全ユーザと会話をしていると判断された。
【0113】
上記の開発部門には、チーム1からチーム5までの5つのチームが存在する。各チームの被験者数は、それぞれ6名、6名、3名、6名、及び7名である。学習済みモデルの目的変数である、ワーク・エンゲージメント・スコアは、質問紙法を用いて、28人の被験者について、測定された。
図12は、各チームのワーク・エンゲージメント・レベルのボックスプロットを示す。例えば,チーム5のワーク・エンゲージメント・レベルは高いレベルに集中している。チーム2とチーム3のワーク・エンゲージメント・レベルは低いレベルから高いレベルに分布している。
【0114】
上記のように、ワーク・エンゲージメントはチャットツールを介して伝播すると考えられる。つまり、発言者が、ワーク・エンゲージメントの高い又は低いチームと会話することによって、発言者のワーク・エンゲージメントのレベルが変化する。出願人は、発言者の会話の内容は、発言者が会話した相手ほど、発言者のワーク・エンゲージメント・レベルに影響を与えないと考えた。一方で、発言者の言語の使い方が、発言者の性格を評価する上で重要な要素であることを示す研究が存在する。そこで出願人は、どのチームが、どのくらいの頻度で会話をしているかを表す頻度特徴と、チャットの内容を表す内容特徴との2つの特徴について考察した。その結果、ワーク・エンゲージメントの評価は、統計的には、内容特徴よりも頻度特徴に強く依存することが判明した。
【0115】
頻度特徴に係る特徴量は、以下の数式[7]によって算出される。
【数6】
【0116】
ここで、チームiへの発言回数は、発言者からチームiに所属する構成員への発言回数の合計である。上記のように、チャットツールで用いられる「@[ユーザ名]」というマーカを用いて、チャットでの発言、すなわち発言者が誰と会話しているかが認識される。
【0117】
これに対して、出願人は、内容特徴に係る特徴量の取得方法として、自然言語処理モデルであるBERTに基づく単語埋め込みを用いた。出願人は、全ての書き込みを収集し、全ての書き込みを形態素(単語)に分割し、分割された単語を500次元の埋め込みベクトルとして表現し、500次元の埋め込みベクトルに基づいてユーザごとにサンプル平均を取得した。ここで考慮するテキストデータの言語は日本語であるため、生のテキストを形態素に分割する必要があった。そこで、出願人は、日本語形態素解析システムであるJUMANを利用して、名詞、動詞、形容詞、副詞のみを用いてテキストを単語に分割した。
【0118】
次に、相互情報量に基づいて、ワーク・エンゲージメントに有意な影響を与える特徴量について述べる。2つの確率変数間の相互情報量は、負ではない値であり、それら変数間の統計的な非依存性を測定するために用いられる。2つの確率変数が独立している場合にのみ、相互情報量は0となる。相互情報量が高くなるほど、確率変数の依存性は高くなる。出願人は、k近傍への距離を用いたエントロピー推定に基づくノンパラメトリック手法を用いて、上記の特徴量とワーク・エンゲージメントとの全ての組み合わせの相互情報量を推定した。
【0119】
図13は、特徴ごとに、特徴とワーク・エンゲージメントとの相互情報量の値を示すグラフである。さらに言えば、
図13は、相互情報量が最も高かった特徴から、相互情報量が10番目に高かった特徴までを高い順に示すグラフである。なお、
図13の横軸において、例えば、“team5”は、発言者と「チーム5」に所属する会話相手との会話の頻度に対する、発言者のワーク・エンゲージメントの依存を意味する。また、“affiliation”は、発言者の所属先に対する、発言者のワーク・エンゲージメントの依存を意味する。更に、“emb”は、発言者の発言に特定の単語が埋め込まれていることに対する、発言者のワーク・エンゲージメントの依存を示す。“emb”に続く数字は、発言に埋め込まれている単語の識別子を意味する。
【0120】
図13によると、発言者のワーク・エンゲージメントは、チーム5の特徴、すなわち、発言者とチーム5との会話頻度に最も依存している。次に依存度が高い特徴は、発言者の所属先である。このため、発言者のワーク・エンゲージメントは、発言者が会話している相手、及び、発言者の所属先に大きく依存していることがわかる。更に、
図13からは、単語の埋め込みに起因する特徴は、ほとんど見られなかった。具体的には、単語の埋め込みに起因する特徴に関しては、相互情報量の10位以内に、全ての埋め込まれた単語のうち、(6/500×100)%=1.2%の単語しか含まれていなかった。一方で、会話の頻度に関する特徴に関しては、相互情報量の上位10位以内に、全チームのうち、(3/5×100)%=60%のチームが含まれている。従って、発言者のワーク・エンゲージメントは、発言者の会話の内容よりも、発言者が誰とどのくらいの頻度で会話しているかという要素、及び、発言者がどこに所属しているかという要素に強く依存していることが分かった。
【0121】
出願人は、上記の分析に基づいて、発言者が会話している相手、及び、発言者が所属するチーム、を表す特徴量を用いた発言者のワーク・エンゲージメントの回帰モデルを開発した。具体的には、特徴量xi(i=1,2,…,5)は、上記の数式[2]によって定義され、特徴量x6は、発言者の所属チームの番号である。これらの特徴量は、「@[ユーザ名]」というマーカに基づくチャットへの発言度、及びSlackでのデータ量に基づいて算出された。回帰モデルには、LightGBMが適用された。
【0122】
上記の学習済みモデルを評価するために、出願人は、ワーク・エンゲージメントの予測値と真値との相関係数を算出した。上記のSlackのデータセットに含まれる28人の被験者に対して、上記の特徴量x1,…,x6を用いたモデルが、被験者のワーク・エンゲージメントを予測した。その上で、出願人は、上記の学習済みモデルとベースラインモデルとの交差検証をすることによって、双方のモデルを比較した。なお、第1のベースラインモデルは、内容特徴を用いており、第2のベースラインモデルは、内容特徴と頻度特徴の双方を用いている。
【0123】
以下、交差検証の詳細について説明する。最初に、テストデータとして、1人の被験者が選択される。次に、確保したデータセットが、8:2の比率によって、訓練セットと検証セットに分割される。訓練セットを用いて、LightGBMによって機械学習が実行される。次に、木構造Parzen推定器を用いてハイパーパラメータを最適化するOptuna(登録商標)によって、検証セットに対するハイパーパラメータが調整される。
【0124】
図14及び表1は、実験結果を示す。より詳細には、
図14は、本発明の学習済みモデルを用いた場合の、予測値と真値との対応関係を示すグラフである。表1は、各モデルを用いた場合の、予測値と真値との相関係数を示す。表1に示されるように、頻度特徴のみを用いた場合のピアソン相関係数は0.72である。このため、本発明の学習済みモデルは、チャットツールにおける内容特徴を使用せずに、発言者のワーク・エンゲージメントの値を十分予測可能であることが分かる。また、ワーク・エンゲージメントの予測値と真値との相関係数を0とした場合の、統計的仮説検定におけるp値は、1.1×10
-5であった。一方で、内容特徴のみを使用した第1のベースラインモデルは、異なる特徴を使用する他のモデルと比較して、発揮する性能において最低であった。より具体的には、内容特徴のみを用いたベースラインモデルを利用した場合、発言者のワーク・エンゲージメントの予測値と真値との相関係数は-0.05であった。すなわち、内容特徴のみを用いた第1のベースラインモデルを利用した場合、発言者のワーク・エンゲージメントを予測することはできない。また、内容特徴と頻度特徴の双方を用いた第2のベースラインモデルを利用した場合、発言者のワーク・エンゲージメントの予測値と真値との相関係数は0.55となった。これらの結果から、ワーク・エンゲージメント・レベルが高い構成員がいるチームでは、会話の頻度によってのみ、構成員のワーク・エンゲージメントの値が予測されることが明らかとなった。すなわち、ワーク・エンゲージメントは、テキストベースのコミュニケーションによって促進されている。
【表1】
【0125】
上記のように、発言者のワーク・エンゲージメントと、発言者と各チームメンバーとの会話の頻度と、の間の相互情報量を、発言者のワーク・エンゲージメントと発言者の会話の内容との間の相互情報量と比較することによって、発言者の会話の内容よりも、発話者の所属先及び発言者の会話頻度の方が、発言者のワーク・エンゲージメントに影響を与えることが明らかとなった。出願人は、これらの結果を考慮して、テキストベースのチャットツールを用いて、発言者のワーク・エンゲージメントを予測する回帰モデルを開発した。このモデルは、発言者の会話の内容を必要とされず、発言者の所属と発言者の会話頻度のみを利用している。このため、この回帰モデルでは、当該回帰モデルを生成する際に用いる特徴量として、チャットツールの会話内容に係る機密データが必要とされない。また、本発明の学習済みモデルは、0.72の相関係数において、発言者のワーク・エンゲージメントを予測することが示された。この結果は、本発明の学習済みモデルが、発言者がどのチームと、どの程度の頻度で会話をするかに係るデータのみを用いて、発言者のワーク・エンゲージメントを十分に予測することが可能であるということを示している。つまり、ワーク・エンゲージメントは、テキストベースのチャットツールを介して伝播し、他のチームのメンバーとの会話頻度に影響を受けていることが明らかとなった。
【0126】
学習済みモデル生成部114は、上記のように、例えばLightGBMを用いて学習器に機械学習を実行させることによって、新規構成員から各チームへの発言回数の割合に対応する、新規構成員のワーク・エンゲージメントを算出するための学習済みモデルを生成する。しかしながら、学習済みモデルを生成する手法は、この手法には限定されない。例えば、LightGBMの代わりに、XGboost、ランダムフォレスト、及びサポート・ベクター・マシン等の他の機械学習の手法が用いられてもよい。
【0127】
〔3.2 表示画面の例〕
上記のように、能力評価装置10が備える表示装置140、又はユーザ端末30が備える表示装置330は、能力評価装置10によって処理された処理データを表示する。
図15~
図26は、処理データを表示する画像の例である。
【0128】
表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図15に示されるようなチャンネルごとの発言回数を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図15に示されるようなチャンネルごとの発言回数を表示させてもよい。
【0129】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図16に示されるようなユーザごとの発言回数を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図16に示されるようなユーザごとの発言回数を表示させてもよい。
【0130】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図17に示されるような特定のユーザのチャンネルごとの発言回数を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図17に示されるような特定のユーザのチャンネルごとの発言回数を表示させてもよい。
【0131】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図18に示されるような特定のチャンネルにおける各ユーザの発言回数を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図18に示されるような特定のチャンネルにおける各ユーザの発言回数を表示させてもよい。
【0132】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図19に示されるようなユーザごとのワーク・エンゲージメントの値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図19に示されるようなユーザごとのワーク・エンゲージメントの値を表示させてもよい。
【0133】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図20に示されるようなユーザごとの発想力を示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図20に示されるようなユーザごとの発想力を示す値を表示させてもよい。
【0134】
なお、ここで「発想力」とは、構成員が所属するチーム又は組織の情報と、他チームの情報又は他組織の情報とを統合することによって、新しい知見又は新しい知識を生み出す能力である。あるチーム又はある組織の構成員は、当該構成員が所属するチーム又は組織の構成員だけではなく、他のチーム又は他の組織の構成員と会話をすることによって、他のチーム又は他の組織の情報をより多く獲得できる。このため、発想力は、色々なチーム又は色々な組織の知見及び知識が相互に組み合わせられる場合に増加する。
【0135】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図21に示されるようなユーザごとの発想力を示す値を表示させてもよい。
図21では、横軸にユーザ自らの発言を基準にした発想力を示す値が示され、縦軸に他人からの発言を基準にした発想力を示す値が示される。ここで、「ユーザ自らの発言を基準にした発想力」は、上記の数式[2]によって算出される。一方で、「他人からの発言を基準にした発想力」は、上記の数式[2]の分母を「チーム内被発言回数」に変更することに加えて、数式[2]の分子を「チーム外被発言回数」に変更することによって算出される。なお、ここで「チーム内被発言回数」とは、新規構成員が属するチームの1又は複数の構成員から新規構成員の発言に対して発言を受けた回数である。一方で、「チーム外被発言回数」とは、新規構成員が属さない1又は複数のチームの1又は複数の構成員から新規構成員の発言に対して発言を受けた回数である。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図21に示されるようなユーザごとの発想力を示す値を表示させてもよい。なお、
図21に示される各円の大きさは、縦軸の値と横軸の値の合計値を示す。
【0136】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図22に示されるようなユーザごとの影響力を示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図22に示されるようなユーザごとの影響力を示す値を表示させてもよい。
【0137】
なお、ここでの「影響力」とは、仮にそれが少数者であったとしても、他者との間に強力なつながりを持つと同時に、自身のコネクションと他者のコネクションとを強力に結びつける能力のことである(『ハーバード・ビジネスレビュー 人材育成・人事の教科書』,第5章 ピープルアナリティクスで人事戦略が変わる,ダイヤモンド社,2020年)。
【0138】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図23に示されるようなチームごとの効率性を示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図23に示されるようなチームごとの効率性を示す値を表示させてもよい。
【0139】
なお、ここでの「効率性」とは、チーム単位で業務を効率的に遂行できる能力である。上記の外部範囲が広いチームほど、当該チームを構成する各構成員がチーム外の専門家とやり取りすることが可能となる。このため、そのチームは、業務に必要な情報を入手し、例えば締め切りを守るために必要なリソースを確保できる。
【0140】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図24に示されるようなチームごとのイノベーションの度合いを示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図24に示されるようなチームごとのイノベーションの度合いを示す値を表示させてもよい。
【0141】
なお、ここでの「イノベーション」とは、意見の相違又は対立を糧にすることによって、ブレークスルーに達するような創造を遂行する能力である。このためには、外部範囲の広さを利用して、支援又は支持を獲得することが有効である。
【0142】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図25に示されるような組織ごとのサイロの度合いを示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図25に示されるような組織ごとのサイロの度合いを示す値を表示させてもよい。
【0143】
なお、ここでの「サイロ」とは、組織が専門知識を深く追求するほど、組織間の共同作業が困難になることによって発生する、いわゆる「タコつぼ化」の度合いである。
【0144】
また、表示制御部125は、入力装置150からの入力内容に基づいて、表示装置140に対し、
図26に示されるような組織ごとの脆弱性の度合いを示す値を表示させてもよい。同様に、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、
図26に示されるような組織ごとの脆弱性の度合いを示す値を表示させてもよい。
【0145】
なお、ここでの「脆弱性」とは、組織のある部分から他の部分へと情報又は知見の移動を促進する構成員に対する依存度の高さである。
【0146】
〔4.実施形態が奏する効果〕
以上の説明によれば、能力評価装置10は、複数のチームによって構成される組織に利用されるチャットシステムの会話データに基づいて、第1期間における当該複数のチームのうち1つのチームの評価対象構成員から各チームへの発言回数を取得する第1データ取得部112を備える。また、能力評価装置10は、評価対象構成員から各チームへの発言回数に基づいて、評価対象構成員から各チームへの発言回数の割合である第1割合を算出する第1算出部113を備える。更に、能力評価装置10は、第1期間以前の第2期間における上記の組織に属する複数の構成員のうち一の構成員から各チームへの発言回数の割合である第2割合と、当該一の構成員の業務に係る精神状態を表すワーク・エンゲージメントを示す第2指標値と、の関係に基づいて、第1割合に対応する評価対象構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する推定部115を備える。
【0147】
能力評価装置10は、上記の構成を用いて、構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定することによって、組織の構成員にかける負荷を低減することが可能となる。また、能力評価装置10では、アンケート又はテストによって、ワーク・エンゲージメントを示す値を取得する方法に比較して、データの更新頻度を高くすると共に、常に現状を反映したスコアを算出することが可能となる。更に、能力評価装置10では、ワーク・エンゲージメントを示す値の経時的な変化に着目することによって、組織の構成員の機微の変化を捉えることが可能となる。このため、能力評価装置10では、構成員のメンタルヘルスの不調及び退職予兆を早期に発見することが可能となる。
【0148】
また、上記の推定部115は、上記の組織に属する複数の構成員のうち一の構成員から各チームへの発言回数の割合と当該一の構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値との関係を機械学習によって学習済みである学習済みモデルを用いて、新規構成員から各チームへの発言回数の割合に対応する上記の第1指標値を算出してもよい。
【0149】
能力評価装置10が、機械学習によって生成される学習済みモデルを用いることによって、自律的な洞察に基づいて、ワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定することが可能となる。
【0150】
また、能力評価装置10は、構成員ごとに、当該構成員から各チームへの発言回数の割合である第3割合と当該構成員のワーク・エンゲージメントを示す第3指標値との組を表す学習用データをモデルに機械学習によって学習させることによって学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部114を更に備えてもよい。
【0151】
能力評価装置10が、学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部114を備えることによって、能力評価装置10が学習フェーズの動作と運用フェーズの動作との双方の動作を実行することが可能となる。
【0152】
また、能力評価装置10は、チャットシステムの会話データに基づいて、評価対象構成員から当該評価対象構成員が属するチームの1又は複数の構成員への発言回数であるチーム内発言回数と、当該評価対象構成員から当該評価対象構成員が属さない1又は複数のチームの1又は複数の構成員への発言回数であるチーム外発言回数とを取得する第2データ取得部116を備えてもよい。更に、能力評価装置10は、チーム内発言回数及びチーム外発言回数を用いて、評価対象構成員の発想力を示す指標値を算出する第2算出部117を備えてもよい。
【0153】
能力評価装置10が、第2データ取得部116及び第2算出部117を備えることによって、評価対象構成員が所属する自チーム又は自組織の情報と、他チーム又は他組織の情報とを統合して、新しい知見又は新しい知識を生み出す能力である発想力を示す指標値を算出することが可能となる。
【0154】
また、能力評価装置10は、チャットシステムの会話データに基づいて、評価対象構成員の発言が引用された回数である引用回数、及び当該評価対象構成員と発言を引用した1又は複数の構成員との関係を示す引用関係を、発言ごとに取得する第3データ取得部118を備えてもよい。更に、能力評価装置10は、上記の引用回数及び引用関係を用いて、評価対象構成員の影響力を示す指標値として、評価対象構成員のページランクを算出する第3算出部119を備えてもよい。
【0155】
能力評価装置10が、第3データ取得部118及び第3算出部119を備えることによって、仮にそれが少数者であったとしても、他者との間に強力なつながりを持つと同時に、自身のコネクションと他者のコネクションとを強力に結びつける能力としての影響力を示す指標値を算出することが可能となる。
【0156】
また、能力評価装置10は、チャットシステムの会話データに基づいて、チームごとに、当該チームの1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他チームの構成員の数である外部範囲の第1数値と、当該1又は複数の他チームの数である次数中心性の第2の数値とを取得する第4データ取得部120を備えてもよい。更に、能力評価装置10は、外部範囲の第1の数値及び次数中心性の第2の数値を用いて、チームの効率性を示す指標値とチームのイノベーションの度合いを示す指標値とのうち少なくとも一方を算出する第4算出部121を備えてもよい。
【0157】
能力評価装置10が、第4データ取得部120及び第4算出部121を備えることによって、チーム単位で業務を効率的に遂行できる能力である効率性、及び、意見の相違又は対立を糧にすることによって、ブレークスルーに達するような創造を遂行する能力であるイノベーションの度合いを示す指標値を算出することが可能となる。
【0158】
また、能力評価装置10は、チャットシステムの会話データに基づいて、組織ごとに、当該組織の1又は複数の構成員と会話した1又は複数の他組織の構成員の数である外部範囲の第2の数値と、当該1又は複数の他組織の数である次数中心性の第2の数値とを取得する第5データ取得部122を備えてもよい。更に、能力評価装置10は、外部範囲の第2の数値及び次数中心性の第2の数値を用いて、組織の孤立度としてサイロの度合いを示す指標値を算出する第5算出部123を備えてもよい。
【0159】
能力評価装置10が、第5データ取得部122及び第5算出部123を備えることによって、組織が専門知識を深く追求するほど、組織間の共同作業が困難になることによって発生する、「タコつぼ化」の度合いとして孤立度を示す指標値を算出することが可能となる。
【0160】
また、能力評価装置10は、チャットシステムの会話データに基づいて、組織ごとに、1つの他組織の1又は複数の構成員と会話した自組織の構成員の人数を、当該1つの他組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する第6データ取得部124を備えてもよい。
【0161】
能力評価装置10が、第6データ取得部124を備えることによって、組織のある部分から他の部分へと情報又は知見の移動を促進する構成員に対する依存度の高さとして脆弱性を示す指標値を取得することが可能となる。
【0162】
〔5.変形例〕
本開示は、以上に例示した実施形態に限定されない。具体的な変形の態様が以下に例示される。以下の例示から任意に選択された2以上の態様が併合されてもよい。
【0163】
〔5.1 変形例1〕
上記の実施形態では、能力評価装置10が、解析部111を備える構成である。しかしながら、能力評価装置10が、解析部111を備える構成には限定されない。例えば、能力評価装置10ではなく、サーバ20が、解析部111と同様の解析部を備えてもよい。より具体的には、能力評価装置10からサーバ20に対し、データ要求が送信されると、サーバ20の解析部は、記憶装置220に格納される発言履歴データベースDB1、発言内容データベースDB2、及びユーザ情報データベースDB3のレコードに基づいて、解析部111が算出するデータと同様のデータを算出してもよい。サーバ20の解析部は、算出したデータを、応答データとして能力評価装置10に送信してもよい。
【0164】
〔5.2 変形例2〕
上記の実施形態では、能力評価装置10は、複数のチームのうち1つのチームに新たに参加する新規構成員から各チームへの発言回数の割合に対応する当該新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する構成である。しかしながら、能力評価装置10は、新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す第1指標値を推定する構成には限定されない。例えば、能力評価装置10は、アンケートなどによって既にワーク・エンゲージメントを示す指標値を算出した、以前からチームに所属する構成員から、上記のアンケートの後の期間における各チームへの発言回数の割合に対応する指標値を推定してもよい。また、能力評価装置10は、ワーク・エンゲージメントを示す指標値に限らず、発想力を示す指標値、影響力を示す指標値等についても同様に、以前からチームに所属する構成員に関して、これらの指標値を算出してもよい。
【0165】
〔5.3 変形例3〕
上記の実施形態では、サーバ20が、発言履歴データベース生成部211、発言内容データベース生成部212、発言履歴データベースDB1、発言内容データベースDB2、ユーザ情報データベースDB3を備える構成である。しかしながら、サーバ20は、これらの構成要素を含む構成には限定されない。例えば、能力評価装置10が、これらの構成要素を備えてもよい。あるいは、サーバ20とは別体の第2のサーバが、これらの構成要素を備えてもよい。
【0166】
〔5.4 変形例4〕
上記の実施形態では、学習済みモデル生成部114が、構成員から各チームへの発言回数の割合と構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値との組を表す学習用データをモデルに機械学習よって学習させることによって学習済みモデルLM1を生成する。推定部115が当該学習済みモデルLM1を用いて、構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定する。しかしながら、推定部115の構成は、学習済みモデルLM1を用いる構成には限定されない。例えば、推定部115は、1人の構成員から各チームへの発言回数の割合と当該1人の構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値との関係が構成員ごとに記載されたテーブルを参照することによって、構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定してもよい。なお、当該テーブルは、記憶装置130に予め格納されている。
【0167】
〔5.5 変形例5〕
上記の実施形態では、表示制御部314は、入力装置340からの入力内容に基づいて、表示装置330に対し、チャンネルごとの発言回数、ユーザごとの発言回数、特定のユーザのチャンネルごとの発言回数、特定のチャンネルにおける各ユーザの発言回数、ユーザごとのワーク・エンゲージメントの値、ユーザごとの発想力を示す値、ユーザごとの影響力を示す値、チームごとの効率性を示す値、チームごとのイノベーションの度合いを示す値、組織ごとのサイロの度合いを示す値、及び組織ごとの脆弱性を示す値を示すグラフを表示させる構成である。しかしながら、表示制御部314は、この構成には限定されない。例えば、表示制御部314は、チャットシステムの会話データに対し、自然言語処理を施し、自然言語処理の結果に基づいて、表示装置330に対し、トピックごとの発言回数を表示させてもよい。
【0168】
〔5.6 変形例6〕
上記の実施形態では、推定部115は、新規構成員から各チームへの発言回数の割合に対応する、当該新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定する。また、第2算出部117は、チーム内発言回数及びチーム外発言回数を用いて、新規構成員の発想力を示す指標値を算出する。また、第3算出部119は、引用回数及び引用関係を用いて、新規構成員の影響力を示す指標値として、新規構成員のページランクを算出する。また、第4算出部121は、外部範囲の数値A1及び次数中心性の数値A2を用いて、チームの効率性を示す指標値とイノベーションの度合いを示す指標値とのうち少なくとも一方を算出する。また、第5算出部123は、外部範囲の数値B1及び次数中心性の数値B2を用いて、組織の孤立度としてサイロの度合いを示す指標値を算出する。更に、第6データ取得部124は、組織ごとに、1つの他組織の1又は複数の構成員と会話した自組織の構成員の人数を、当該1つの他組織に対する脆弱性を示す指標値として取得する。しかし、本発明の実施形態は、この構成には限定されない。例えば、上記の指標値を算出するために、上記の構成要素は、各構成員が登録する登録チャンネルのチャンネル数を用いてもよい。例として、推定部115は、新規構成員から各チームへの発言回数の割合と新規構成員の登録チャンネル数に対応する、当該新規構成員のワーク・エンゲージメントを示す指標値を推定してもよい。更に、上記の構成要素は、チャンネルごとに重みづけを行い、当該重みを上記の各指標値を算出するためのファクターとして用いてもよい。例として、第3算出部119は、引用回数及び引用関係を用いて、新規構成員の影響力を示す指標値を算出する際、新規構成員の引用された発言が経由したチャンネルに応じて、引用回数及び引用関係に重み付けをしてもよい。
【0169】
〔6.その他〕
(1)上述した実施形態では、記憶装置130、220、及び320は、ROM及びRAMなどを例示したが、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティック、キードライブ)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、レジスタ、リムーバブルディスク、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップ、データベース、サーバその他の適切な記憶媒体である。また、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。また、プログラムは、電気通信回線を介して通信網から送信されてもよい。
【0170】
(2)上述した実施形態において、説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0171】
(3)上述した実施形態において、入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0172】
(4)上述した実施形態において、判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0173】
(5)上述した実施形態において例示した処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0174】
(6)
図2、
図8、及び
図11に例示された各機能は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0175】
(7)上述した実施形態で例示したプログラムは、ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0176】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0177】
(8)前述の各形態において、「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0178】
(9)本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0179】
(10)上述した実施形態において、能力評価装置10、サーバ20、及びユーザ端末30-1~30-nは、移動局(MS:Mobile Station)である場合が含まれる。移動局は、当業者によって、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、又はいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。また、本開示においては、「移動局」、「ユーザ端末(user terminal)」、「ユーザ装置(UE:User Equipment)」、「端末」等の用語は、互換的に使用され得る。
【0180】
(11)上述した実施形態において、「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブル及びプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
【0181】
(12)上述した実施形態において、「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0182】
(13)本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0183】
(14)上述した実施形態において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。更に、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0184】
(15)本開示において、例えば、英語でのa, an及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0185】
(16)本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」等の用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【0186】
(17)本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0187】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0188】
1…能力評価システム、10…能力評価装置、20…サーバ、30,30-1,30-n…ユーザ端末、110…処理装置、111…解析部、112…第1データ取得部、113…第1算出部、114…学習済みモデル生成部、115…推定部、116…第2データ取得部、117…第2算出部、118…第3データ取得部、119…第3算出部、120…第4データ取得部、121…第4算出部、122…第5データ取得部、123…第5算出部、124…第6データ取得部、125…表示制御部、130…記憶装置、140…表示装置、150…入力装置、160…通信装置、210…処理装置、211…会話データ処理部、212…発言履歴データベース生成部、220…記憶装置、230…通信装置、310…処理装置、311…発言データ生成部、312…会話データ取得部、313…処理データ取得部、314…表示制御部、320…記憶装置、330…表示装置、340…入力装置、350…通信装置、DB1…発言履歴データベース、DB2…発言内容データベース、DB3…ユーザ情報データベース、LM1…学習済みモデル、PR1,PR2,PR3…制御プログラム