(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】直接染料及び有機アルカリ化剤を含むケラチン繊維のための染色組成物、染色するための方法、並びにそのキットオブパーツ
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20240718BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240718BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q5/06
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/89
(21)【出願番号】P 2023516797
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021075791
(87)【国際公開番号】W WO2022069280
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネッカー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ブレイクスピア,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ギアシ,ファリバ
(72)【発明者】
【氏名】ノイ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】阿保 芙美奈
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/057829(WO,A1)
【文献】特表2017-522351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105921(US,A1)
【文献】特開2016-108296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258695(US,A1)
【文献】国際公開第2015/186817(WO,A1)
【文献】特開2019-151615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料
0.1重量%以上1重量%以下と、
b)トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン及び/又はその塩
0.5重量%以上12.5重量%以下と
を含
み、a)群による化合物に対するb)群による化合物の重量比が0.5以上50以下の範囲である、ケラチン繊維のための染色組成物。
【請求項2】
7~12の範囲のpHを有する水性組成物である、請求項1
に記載の組成物。
【請求項3】
8.5~10.5の範囲のpHを有する水性組成物である、請求項1
に記載の組成物。
【請求項4】
c)による化合物として1種又は複数種の有機溶媒を含み、水の含有量が1重量%以下であり、25℃及び大気圧で液体の組成物である、請求項1~
3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
粉末組成物であり、任意に、d)群による化合物として1種又は複数種の粉状賦形剤を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
e)群による化合物として、25℃で大気圧下で液体である1種又は複数種の親油性化合物を含む、請求項1~
5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
エマルジョンであり、C
12~C
22の範囲の分岐又は直鎖の飽和又は不飽和の炭素鎖長を有する脂肪アルコール、C
12~C
22の範囲の分岐又は直鎖の飽和又は不飽和の炭素鎖長を有する脂肪酸、エステル油、植物油、シリコーン油、パラフィン油から選択される、e)群による1種又は複数種の化合物を含む、請求項1~
3及び
6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
c)群による化合物として1種又は複数種の有機溶媒を含む、請求項1~
3及び
6~
7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
b)群による化合物とは異なる1種又は複数種のアルカリ化剤を含む、請求項1~
8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
b)群による化合物とは異なる1種又は複数種のアルカリ化剤が、アンモニア及び/若しくはその塩、有機アルキルアミン及び/若しくはアルカノールアミン及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
4以下のpKa値を有する少なくとも1つの酸性プロトンを有する1種又は複数種の酸を含む、請求項1~
10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
第1の組成物が請求項1~
11のいずれかに記載の組成物であり、第2の組成物が1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む水性組成物である、二剤式染色組成物。
【請求項13】
- a)群による化合物として、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物
を0.1重量%以上1重量%以下と、b)群によ
る化合物
として、
トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン及び/又はその塩を0.5重量%以上12.5重量%以下と、を含
み、a)群による化合物に対するb)群による化合物の重量比が0.5以上50以下の範囲である、第1の染色組成物と、
- HCイエロー1及び/若しくはディスパースブラック9、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料を含む、第2の組成物と、
- 任意に、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む、第3の水性組成物と
を含む、キットオブパーツ。
【請求項14】
i)請求項1~
3、
6~
11のいずれかに記載の組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
ii)任意にそれをすすぎ、任意にケラチン繊維を乾燥させるステップと
を含む、ケラチン繊維を染色するための方法。
【請求項15】
iii)請求項1~
11のいずれかに記載の組成物を、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む第2の水性組成物と混合して、7~12の範囲のpHを有する、即時使用可能な組成物を得るステップと、
iv)即時使用可能な組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
v)ケラチン繊維をすすぎ、任意にケラチン繊維をシャンプーするステップと
を含む、ケラチン繊維を染色するための方法。
【請求項16】
ステップiii)における1種又は複数種の酸化剤が過酸化水素である、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定の直接染料及び特定のアルカリ化剤を含む、ケラチン繊維のための染色組成物、並びに染色するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
直接染料は、過去10年にわたって特に化粧産業の関心の対象となってきた。直接染料は、それらの酸化対応物とは対照的に、より容易にケラチン繊維に適用することができるが、ケラチン繊維上での耐久性を欠くことが多い。加えて、直接染料は、白髪上では酸化染料を使用しなければ染色強度を欠くことが多い。
【0003】
本出願人は、既存の直接染料の入手可能性及び色の範囲を補う、新しい直接染料を開発した(特許文献1)。開発した前述の一連の染料は、HCブルー18、HCレッド18、及びHCイエロー16を含む。
【0004】
特許文献2は、酸化染色組成物のためのアルカリ化剤としてトリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタンを開示しており、一般に、直接染料との組合せを開示している。酸化染料による改善された着色均一性が見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】EP1366752
【文献】EP2979683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術では、直接染料の染色強度及び耐久性の課題が満足に解決されておらず、したがって、特に過去に損傷を受けた毛髪上で改善された染色強度及び耐久性を有する、ケラチン繊維のための直接染色組成物を開発することが真に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪のための染色組成物であって、
a)HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料と、
b)トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン及び/又はその塩と
を含む、染色組成物である。
【0008】
本発明の第2の目的は、第1の成分が、先に定義される組成物であり、第2の組成物が、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む水性組成物である、二剤式(two-part)染色組成物である。
【0009】
本発明の第3の目的は、
- a)群による化合物として、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物と、b)群による1種又は複数種の化合物と、を含む、第1の染色組成物と、
- HCイエロー1及び/若しくはディスパースブラック9、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料を含む、第2の組成物と、
- 任意に、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む、第3の水性組成物と
を含む、キットオブパーツである。
【0010】
本発明の第4の目的は、
i)先に定義される組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
ii)任意にそれをすすぎ、任意にケラチン繊維を乾燥させるステップと
を含む、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪を染色するための方法である。
【0011】
本発明の第5の目的は、
iii)先に定義される組成物を、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤、好ましくは過酸化水素を含む第2の水性組成物と混合して、7~12の範囲のpHを有する、即時使用可能な組成物を得るステップと、
iv)即時使用可能な組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
v)ケラチン繊維をすすぎ、任意にケラチン繊維をシャンプーするステップと
を含む、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪を染色するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、ある特定の直接染料の染色強度、耐久性、及び洗浄堅牢性が、アルカリ化剤としてのトリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン及び/又はその塩の存在下で改善されることを見出した。さらに、本発明のこのような染色組成物は、印象、光沢、及び手触りなどのケラチン繊維の化粧特性を改善する。
【0013】
・染色組成物
本発明は、
a)HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料と、
b)トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン及び/又はその塩と
を含む、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪のための染色組成物に関する。
【0014】
染色強度の観点から、a)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.002重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、さらにより好ましくは0.1重量%以上である。
【0015】
経済的理由及び化粧安全性の観点から、a)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下である。
【0016】
前述の効果を得るために、a)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.001重量%~10重量%の範囲、より好ましくは0.002重量%~5重量%の範囲、さらに好ましくは0.05重量%~2重量%の範囲、さらにより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲である。
【0017】
染色強度の観点から、b)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、さらにより好ましくは0.75重量%以上、さらにより好ましくは1重量%以上である。
【0018】
経済的理由及び化粧安全性の観点から、b)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、さらにより好ましくは15重量%以下、さらにより好ましくは12.5重量%以下である。
【0019】
前述の効果を得るために、b)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%~40重量%の範囲、より好ましくは0.25重量%~30重量%の範囲、さらに好ましくは0.5重量%~20重量%の範囲、さらにより好ましくは0.75重量%~15重量%の範囲、さらにより好ましくは1重量%~12.5重量%の範囲である。
【0020】
染色強度の観点から、a)群による化合物に対するb)群による化合物の重量比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、さらにより好ましくは1.5以上、さらにより好ましくは5以上、さらにより好ましくは10以上である。
【0021】
染色強度、配合安定性、及び化粧安全性の観点から、a)群による化合物に対するb)群による化合物の重量比は、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは150以下、さらにより好ましくは125以下、さらにより好ましくは100以下、さらにより好ましくは50以下である。
【0022】
前述の効果を得るために、a)群による化合物に対するb)群による化合物の重量比は、好ましくは0.1~200の範囲、より好ましくは0.5~180の範囲、さらに好ましくは1~150の範囲、さらにより好ましくは1.5~125の範囲、さらにより好ましくは5~100の範囲、さらにより好ましくは10~50の範囲である。
【0023】
・組成物の化粧品形態-水性組成物
本発明の一態様では、組成物は、水性組成物である。
【0024】
「水性」という用語は、水が大部分を占める組成物を示し、すなわち組成物は、化粧的に許容される組成物を達成する観点から、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上の水を含む。
【0025】
染色強度の観点から、組成物は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは92重量%以下の水を含む。
【0026】
前述の効果を達成するために、水の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは50重量%~98重量%の範囲、より好ましくは60重量%~95重量%の範囲、さらに好ましくは70重量%~92重量%の範囲、さらにより好ましくは80重量%~92重量%の範囲である。
【0027】
染色性能の観点から、水性組成物のpHは、好ましくは7以上、より好ましくはpHは7.5以上、さらに好ましくはpHは8以上、さらにより好ましくはpHは8.5以上である。
【0028】
毛髪への損傷及び染色性能の観点から、組成物のpHは、好ましくは12以下であり、より好ましくはpHは11以下であり、さらに好ましくはpHは10.5以下である。
【0029】
前述の効果を得るために、水性組成物は、好ましくは7~12の範囲、より好ましくは7.5~11の範囲、さらに好ましくは8~10.5の範囲、さらにより好ましくは8.5~10.5の範囲のpHを有する。
【0030】
本発明の一態様では、水性組成物は、c)群による化合物として、以下に説明される1種又は複数種の有機溶媒を含み得る。この態様では、c)群による化合物の適切な濃度は、組成物の全重量に対して計算して、0.1重量%~10重量%の範囲である。
【0031】
・1重量%未満の水を含む液体組成物
本発明の別の態様では、組成物は、c)群による化合物として1種又は複数種の有機溶媒を含み、組成物の全重量に対して計算して水の含有量が1重量%未満であり、25℃及び大気圧で液体の組成物である。好ましくは、組成物は、染料安定性の観点から無水である。
【0032】
「液体」という用語は、25℃及び大気圧での物理的状態を指し、すなわち、染色組成物は、室温で液体である。
【0033】
「無水」という用語は、水が添加されていない組成物を示す。これは、空気からの残留水分又は成分に結合した結晶水の存在を除外するものではない。
【0034】
本発明における本態様では、組成物は、c)群による化合物として1種又は複数種の有機溶媒を含み得る。
【0035】
有機溶媒は、a)~b)群による化合物を溶解させるために選択され得る。好ましい溶媒は、一価、二価、及び三価アルコール、並びに/又はそれらの混合物である。
【0036】
化粧安全性及び溶解能の観点から好ましい一価、二価、及び三価アルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、及びグリセロール、並びに/又はそれらの混合物である。
【0037】
溶液安定性の観点から、c)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上である。
【0038】
染色強度の観点から、c)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは92重量%以下である。
【0039】
前述の効果を得るために、c)群による化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは75重量%~98重量%の範囲、より好ましくは80重量%~95重量%、さらに好ましくは85重量%~92重量%の範囲である。
【0040】
・粉末組成物
本発明の一態様では、組成物は、粉末染色組成物であり得る。
【0041】
「粉末」という用語は、25℃及び大気圧で固体の組成物を示す。この用語は、自由流動性粉末及び圧縮粉末、例えば錠剤に関する。粉末組成物はまた、25℃でその固体の性質が変化しない限り、水を含んでいてもよい。粉末の種類に応じて、組成物の全重量に対して計算して10重量%以上の含水量が許容され得る。
【0042】
組成物の安定性及び使用の利便性の観点から、組成物は、d)群による化合物として1種又は複数種の粉状賦形剤を含むことが好ましい。
【0043】
「賦形剤」という用語は、染色組成物のその他の化合物のための充填材料及び分散剤として作用することができ、染料ともアルカリ化剤とも反応せず、したがって高度な保存安定性を長期間にわたって粉末に付与する化合物を示す。
【0044】
本発明の粉末染色組成物は、有機及び/又は無機の粉状賦形剤を含むことができ、それに、アルカリ化剤及び直接染料が分散させられる。
【0045】
適切な有機及び/又は無機の粉状賦形剤は、例えば、珪藻土、カオリン、ベントナイト、デンプン、特にトウモロコシ、タピオカ、コメ、コムギ及びジャガイモのデンプン、ナイロン粉末、モンモリロナイト、石こう、おがくず、並びにパーライトである。
【0046】
有機及び/又は無機の粉状賦形剤の全濃度は、粉末への直接染料の良好な分散性及び粉末の急速溶解を達成する観点から、組成物の全体に対して計算して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは65重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは75重量%以上である。
【0047】
有機及び/又は無機の粉状賦形剤の全濃度は、粉末への直接染料の良好な分散性及び配合しやすさを達成する観点から、組成物の全体に対して計算して、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。
【0048】
前述の効果を得るために、有機及び/又は無機の粉状賦形剤の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは50重量%~98重量%の範囲、より好ましくは55重量%~95重量%の範囲、さらに好ましくは60重量%~90重量%の範囲、さらにより好ましくは65重量%~90重量%の範囲、さらにより好ましくは70重量%~90重量%の範囲、さらにより好ましくは75重量%~90重量%の範囲である。
【0049】
・e)群による親油性化合物
染色強度をさらに上昇させる観点から、本発明の組成物は、e)群による化合物として、25℃で大気圧下で液体である1種又は複数種の親油性化合物を含むことが好ましい。
【0050】
e)群による適切な化合物は、天然油及び/又は植物油、ワセリンベースの化合物、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC12~C22脂肪アルコール、並びに直鎖又は分岐のC3~C12第一級アルコールとエステル化している直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC12~C22脂肪酸からなる脂肪酸エステル、並びにシリコーンである。
【0051】
適切な天然油及び/又は植物油は、オリーブ油、アーモンド油、アボカド油、コムギ胚芽油、及びヒマシ油である。
【0052】
適切なワセリンベースの化合物は、流動パラフィン、特に低粘度流動パラフィン(paraffinum perliquidum)及び高粘度流動パラフィン(paraffinum subliquidum)、並びに鉱油、特に白色鉱油である。
【0053】
直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC12~C22脂肪アルコールから選択される適切な脂肪化合物は、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、及び/又はそれらの混合物、例えばセテアリルアルコールである。
【0054】
直鎖又は分岐のC3~C18第一級アルコールとエステル化している直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC12~C22脂肪酸からなる脂肪酸エステルの適切な例は、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、及びミリスチン酸ミリスチル、並びにそれらの混合物である。
【0055】
適切には、組成物はまた、親油性成分、例えばシリコーン、例えば直鎖状ポリシロキサン、例えば様々な粘稠度を有するジメチコン及びジメチコノール、第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウム基を有するアミノ化シリコーン、例えばアモジメチコン、ポリシリコーン9、及びクオタニウム80、環状シリコーン、例えばシクロメチコン、アリール化シリコーン、例えばフェニルトリメチコン、C10~C36脂肪酸トリグリセリド、並びにそれらの混合物を含み得る。
【0056】
本発明の組成物が先に開示される水性組成物である場合、染色強度をさらに上昇させる観点から、組成物は、エマルジョンであって、C12~C22の範囲の分岐又は直鎖の飽和又は不飽和の炭素鎖長を有する脂肪アルコール、C12~C22の範囲の分岐又は直鎖の飽和又は不飽和の炭素鎖長を有する脂肪酸、エステル油、植物油、シリコーン油、パラフィン油から選択される、e)群による1種又は複数種の化合物を含むことが好ましい。
【0057】
エマルジョンにおけるe)による化合物の好適な濃度は、組成物の全重量に対して計算して、0.5重量%~20重量%、より好ましくは1重量%~10重量%の範囲である。
【0058】
前記組成物が粉末組成物である場合、前述の親油性化合物は、粉末にダストフリー特性を付与する。e)による化合物の適切な濃度は、組成物の全重量に対して計算して0.5重量%~10重量%の範囲である。
【0059】
本発明の一態様では、粉末組成物は、先に説明されるc)群による化合物として、1種又は複数種の有機溶媒も含み得る。c)による化合物の適切な濃度は、この場合、組成物の全重量に対して計算して0.1重量%~5重量%の範囲である。
【0060】
・界面活性剤
本発明の組成物は、本発明の組成物の混合性及びケラチン繊維の濡れ性の観点から、さらにf)による化合物として、1つ又は複数の界面活性剤、より好ましくは、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、双性イオン性/両性界面活性剤から選択される界面活性剤を含むことがさらに好ましい。
【0061】
好適なアニオン性界面活性剤は、基本的にはクレンジング組成物から公知である。これらは、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩及びアルキルリン酸塩タイプのアニオン性界面活性剤であり、例えば、公知のC10-C18アルキル硫酸塩、特にそれぞれのエーテル硫酸塩、例えばC12-C14アルキルエーテル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、特に分子中に1~4つのエチレンオキシド基を有するもの、モノグリセリド(エーテル)硫酸塩、エトキシ化及び後続の脂肪酸アルカノールアミドの硫酸化により得られる脂肪酸アミド硫酸塩及びそれらのアルカリ塩、並びに長鎖のモノ-及びジ-アルキルリン酸塩が挙げられる。好ましいアニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩界面活性剤、特にラウリル硫酸塩及びその塩である。
【0062】
さらに好適な界面活性剤はノニオン性界面活性剤である。非限定的な例としては、ココ脂肪酸モノ-又はジ-エタノールアミド及びミリスチン脂肪酸モノ-又はジ-エタノールアミド、ステアリン酸モノ-又はジ-エタノールアミド等の長鎖の脂肪酸モノ-及びジ-アルカノールアミド;炭素原子数8~18のアルキル基、及びグルコシド単位を1~5単位有するアルキルポリグルコシド;ポリエチレングリコールソルビタンステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタンパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタンミリスチン酸エステル及びポリエチレングリコールソルビタンラウリル酸エステル等のソルビタンエステル;脂肪酸ポリグリコールエステル又は「Pluronics(登録商標)」等の商品名で市販されているエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの重縮合物、並びにCTFA命名法により「Laureth」、「Myristeth」、「Oleth」、「Ceteth」、「Deceth」、「Steareth」及び「Ceteareth」との通称により知られている脂肪族アルコールエトキシレート、C10-C22脂肪アルコールエトキシレート、「Laureth-16」等のエチレンオキシド分子数が付記されており、その平均エトキシ化度が約2.5と約100との間、好ましくは約10と約30との間にあるものが挙げられる。
【0063】
好適な両性/双性イオン性界面活性剤は、特に、アルキルベタイン、脂肪酸アミドアルキルベタイン及びスルホベタイン等の各種公知のベタイン、例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン;ココアミノアセテート、ココアミノプロピオネート等の長鎖アルキルアミノ酸、並びにココアンホプロピオン酸ナトリウム及びココアンホ酢酸ナトリウムも好適である。
【0064】
一般的なカチオン性界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリモニウムクロライド、ジパルミトイルジモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロライド、ジオレオイルエチルジメチルアンモニウムメトスルフェート、ジオレオイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェートである。
【0065】
f)による化合物の合計濃度は、組成物の安定性、ケラチン繊維の濡れ性、及び原材料の分散性の観点から、組成物の合計重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.25重量%以上である。
【0066】
f)による化合物の合計濃度は、組成物の安定性、ケラチン繊維の濡れ性、及び原材料の分散性の観点から、組成物の合計重量に対して計算して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは2.5重量%以下である。
【0067】
上述の効果を得るため、g)による化合物の合計濃度は、組成物の合計重量に対して計算して、好ましくは0.1~5重量%の範囲内、より好ましくは0.2~4重量%の範囲内、さらに好ましくは0.2~2.5重量%の範囲内である。
【0068】
・b)群とは異なるアルカリ化剤
高pHで染色する観点から、本発明の組成物は、b)群による化合物とは異なる1種又は複数種のアルカリ化剤を含むことが好ましい。より好ましくは、b)群による化合物とは異なる前述のアルカリ化剤は、アンモニア及び/若しくはその塩、有機アルキルアミン及び/若しくはアルカノールアミン及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される。
【0069】
適切な有機アルキルアミン及び/又はアルカノールアミン及び/又はそれらの塩は、以下の一般構造:
【0070】
【化1】
[式中、R
1、R
2、及びR
3は、独立に、H、直鎖C
1~C
6アルキル(1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい)、又は分岐C
3~C
12アルキル若しくはアルカノールから選択され、R
1、R
2、又はR
3の少なくとも1つは、Hとは異なる]で表される化合物、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物である。
【0071】
アルカリ度及び化粧安全性の提供、並びにそれらの匂いの少なさの観点から、適切には、1種又は複数種のアルキルアミン及び/又はアルカノールアミン及び/又はその/それらの塩は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールメチルアミン、モノエタノールジメチルアミン、ジエタノールメチルアミン、モノエタノールエチルアミン、モノエタノールジエチルアミン、ジエタノールエチルアミン、モノエタノールプロピルアミン、モノエタノールジプロピルアミン、ジエタノールプロピルアミン、モノエタノールブチルアミン、ジエタノールブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、及び/若しくはその/それらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される。
【0072】
b)群による化合物とは異なる好ましいアルカリ化剤は、アルカリ度及び化粧安全性を提供する観点から、アンモニア、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、及び/若しくはその/それらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される。
【0073】
アルカリ度を提供する観点から、b)群による化合物とは異なるアルカリ化剤の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましくは0.4重量%以上である。
【0074】
アルカリ度の提供、毛髪への損傷、及び匂いの観点から、b)群による化合物とは異なるアルカリ化剤の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
【0075】
前述の効果を得るために、b)群による化合物とは異なるアルカリ化剤の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%~40重量%の範囲、より好ましくは0.25重量%~30重量%の範囲、さらに好ましくは0.4重量%~25重量%の範囲である。
【0076】
・4以下のpKa値を有する少なくとも1つの酸性プロトンを有する酸
染色強度、化粧安全性、及びpH調整の観点から、本発明の組成物は、4以下のpKa値を有する少なくとも1つの酸性プロトンを有する1種又は複数種の酸を含むことが好ましい。
【0077】
適切な酸は、無機酸若しくは有機酸、及び/又はそれらの混合物から選択され得る。
【0078】
適切な有機酸は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、及びコハク酸である。適切な無機酸は、リン酸及び塩酸である。
【0079】
染色強度、化粧安全性、及びpH調整の観点から、4以下のpKa値を有する少なくとも1つの酸性プロトンを有する好ましい酸は、乳酸、クエン酸、及びリン酸、並びに/又はそれらの混合物である。最も好ましい酸は、乳酸及びクエン酸、並びに/又はそれらの混合物である。
【0080】
4以下のpKa値を有する少なくとも1つの酸性プロトンを有する1種又は複数種の酸の好適な濃度範囲は、組成物の全重量に対して計算して、0.01重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%である。
【0081】
・a)群の直接染料とは異なる他の直接染料
本発明の一態様では、組成物は、a)群による直接染料とは異なる1種又は複数種の直接染料を含み得る。
【0082】
適切な直接染料は、陽イオン性、陰イオン性及び/又は非イオン性直接染料から選択され得る。
【0083】
a)直接染料とは異なる最も好ましい直接染料は、組成物の洗浄堅牢性を改善する観点から、HCイエロー1及びディスパースブラック9、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物である。
【0084】
本発明の組成物におけるa)群の直接染料以外の1種又は複数種の直接染料の全濃度は、それが存在する場合、洗浄堅牢性の観点から、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。
【0085】
本発明の組成物におけるa)群の直接染料及びb)群の化合物以外の1種又は複数種の直接染料の全濃度は、それが存在する場合、経済的理由及び洗浄堅牢性の観点から、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、さらに好ましくは7.5重量%以下、さらにより好ましくは6重量%以下、さらにより好ましくは4重量%以下である。
【0086】
前述の効果を得るために、本発明の組成物におけるa)群の直接染料以外の1種又は複数種の直接染料の全濃度は、それが存在する場合、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.01重量%~10重量%、より好ましくは0.05重量%~9重量%、さらに好ましくは0.1重量%~7.5重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~6重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~4重量%の範囲である。
【0087】
・増粘ポリマー
化粧安全性の観点から、本発明の組成物は、1種又は複数種の増粘ポリマーをさらに含むことが有利である。
【0088】
好ましくは増粘ポリマーは、ブルックフィールド粘度計によって、例えば10rpmで1分間、適切なスピンドルを25℃で用いて決定される、組成物の全重量に対して計算して水中1重量%のポリマー濃度で25℃で測定して少なくとも5,000mPa・sの粘度を有する、pH8~10の間の水溶液及び/又は水性分散液をもたらすポリマーから選択される。
【0089】
適切な非イオン性増粘ポリマーは、セルロースベースのポリマーである。セルロースベースのポリマーの適切な例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチル-メチルセルロース、及びアルキル化ヒドロキシルセルロース、例えば(C2~C8)アルキルセルロース又はセチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0090】
適切な陰イオン性増粘ポリマーは、天然ベースの陰イオン性ポリマー及び/又は合成陰イオン性ポリマーから選択される。
【0091】
適切には、天然陰イオン性ポリマーは、キサンタンガム、デヒドロキサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びデンプンベースのポリマー、例えば植物デンプン及び/又はそれらの合成的に変性された誘導体、例えばヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選択され得る。同様に、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アラビアガム、及びグアーガムも適している。
【0092】
本発明の組成物のための好ましい増粘ポリマーは、それらの生分解性及び環境への影響の少なさの観点から、天然陰イオン性ポリマー、より好ましくはキサンタンガム及び/又はデヒドロキサンタンガムである。
【0093】
好ましくは、本発明の増粘ポリマーの全濃度は、組成物に十分な粘度を提供する観点から、組成物の全重量に対して計算して、0.1重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。
【0094】
好ましくは、本発明の増粘ポリマーの全濃度は、組成物への十分な粘度の提供及び製品の費用の観点から、組成物の全重量に対して計算して、15重量%以下、より好ましくは12重量%以上、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0095】
前述の効果を得るために、本発明の組成物における増粘ポリマーの全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲、より好ましくは0.25重量%~12重量%の範囲、さらに好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲である。
【0096】
・二剤式染色組成物
本発明の一態様では、組成物は、第1の成分が先に定義される染色組成物であり、第2の組成物が1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む水性組成物である、二剤式染色組成物の一部であってもよい。
【0097】
第2の水性組成物は、好ましくは、酸化剤として過酸化水素を含む。適切な濃度は、第2の水性組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.25重量%~15重量%、さらに好ましくは0.5重量%~12重量%の範囲である。
【0098】
第2の水性組成物のpHは、好ましくは1.5~5の範囲、より好ましくは2~4.5の範囲であり、適切な酸及び塩基によって調整される。
【0099】
第1の組成物との混合性の観点から、第2の水性組成物は、染色組成物について先に説明したように、e)による1種又は複数種の親油性化合物を含むことがさらに好ましい。このような場合、第2の水性組成物はエマルジョンであり、染色組成物について先に説明したように、好ましくはf)による化合物として1種又は複数種の界面活性剤も含む。
【0100】
本発明のこの態様の第1及び第2の組成物は、ケラチン繊維上に適用する直前に混合されることを想定している。
【0101】
・キットオブパーツ
本発明はまた、
- a)群による化合物として、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物と、b)群による1種又は複数種の化合物と、を含む、第1の染色組成物と、
- HCイエロー1及び/若しくはディスパースブラック9、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料を含む、第2の組成物と、
- 任意に、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤を含む、第3の水性組成物と
を含む、キットオブパーツに関するものである。
【0102】
第1の染色組成物は、好ましくは、先に開示される組成物である。
【0103】
第2の組成物は、1種又は複数種のアルカリ化剤を含み、7~12の範囲のpHを有する染色組成物であってもよい。
【0104】
しかし、第2の組成物はまた、好ましくは1種又は複数種の界面活性剤と、HCイエロー1及び/若しくはディスパースブラック9、及び/若しくはそれらの塩、並びに/又はそれらの混合物から選択される1種又は複数種の直接染料とを含む、ケラチン繊維のためのクレンジング及び/又はコンディショニング組成物であってもよい。これらの染料の適切な濃度は、a)群の直接染料とは異なる他の直接染料の節で既に説明されている。
【0105】
任意の第3の組成物は、二剤式組成物について先に説明した第2の組成物と同一であってもよい。
【0106】
・染色するための方法
本発明はまた、
i)先に定義される組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
ii)任意にそれをすすぎ、任意にケラチン繊維を乾燥させるステップと
を含む、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪を染色するための方法に関するものである。
【0107】
染色強度及び染色方法の節約の観点から、ステップi)に定義される放置時間は、好ましくは2分~45分の範囲、より好ましくは5分~40分の範囲、さらに好ましくは10分~30分の範囲である。
【0108】
化粧安全性の観点から、組成物は、ステップii)ですすぎ落されることがさらに好ましい。
【0109】
本発明はまた、
iii)先に定義される組成物を、1~6の範囲のpHを有し、任意に1種又は複数種の酸化剤、好ましくは過酸化水素を含む第2の水性組成物と混合して、7~12の範囲のpHを有する、即時使用可能な組成物を得るステップと、
iv)即時使用可能な組成物をケラチン繊維上に適用し、それを1分~60分間の範囲の間、放置するステップと、
v)ケラチン繊維をすすぎ、任意にケラチン繊維をシャンプーするステップと
を含む、ケラチン繊維、好ましくはヒトケラチン繊維、より好ましくはヒト毛髪を染色するための方法に関するものである。
【0110】
色の強度の観点から、ステップiii)に定義される、即時使用可能な組成物のpHは、好ましくは8~11の範囲、より好ましくは8.5~10.5の範囲である。
【0111】
ステップiii)の第2の水性組成物は、先の二剤式組成物について説明したものと同じ第2の組成物であってもよい。
【0112】
染色強度及び染色方法の節約の観点から、ステップiv)に定義される放置時間は、好ましくは2分~45分の範囲、より好ましくは5分~40分の範囲、さらにより好ましくは10分~30分の範囲である。
【実施例】
【0113】
【0114】
これらの組成物のpHは、9.5±0.3であった。
【0115】
・結果の議論
表1の例は、実施例が比較例に対して、より高い色強度(高ΔE*
a,b値)を達成したことを示した。その観察は、毛髪タイプに依存しないものであった。
【0116】
実施例1は、トリスを同量のAMPで置き換えた比較例1に対して、優れた色の強度及び洗浄堅牢性(ΔΔE*
a,b値)を示した。この観察も、毛髪タイプに依存しない。
【0117】
加えて、ブリーチ処理を受けた毛では、比較用組成物に対して最良の性能が見出された。
【0118】
・方法
・毛の準備
商業的に入手可能なヤギの毛(長さ15cm、毛束1つ当たり2g)を、各処理の前に予洗し、ブロー乾燥させた。
【0119】
パーマ処理を受けた毛については、ブランド名Goldwellから商標Structure and Shineで入手可能な市販のパーマを実施した。最初のステップは、チオグリコール酸を含む還元組成物を適用し、還元組成物を毛の上で20分間放置し、次に毛をすすぎ、過酸化水素を含む酸化組成物を適用することであった。酸化組成物を、毛の上に15分間放置し、次に毛をシャンプーし、ブロー乾燥させた。この方法によって得られた毛を、パーマ処理を受けた毛での染色実験のために使用した。
【0120】
ブリーチ処理を受けた毛については、Goldwell製の商標Oxycur Platinで入手可能な市販のブリーチを実施した。ブリーチ用粉末は過酸塩(persalt)を含んでおり、毛への適用の前に、過酸化水素を含む酸化組成物と1:1の重量比で混合した。次に、毛に、即時使用可能な混合物を適用し、混合物を20分間放置した。次に、毛をすすぎ、シャンプーし、ブロー乾燥させた。この方法によって得られた毛を、ブリーチ処理を受けた毛での染色実験のために使用した。
【0121】
・毛髪の染色
即時使用可能な組成物を調製するために、先の組成物のそれぞれを、2.5のpHを有する酸性組成物と、1:1の重量比で混合した。得られた即時使用可能な組成物2gを、上で準備した毛に適用し、周囲温度で20分間放置した。次に、毛を水ですすぎ、ブロー乾燥させた。
【0122】
比色測定は、毛束に対して色差計を用いてCIE表色系(L*,a*
,b*)を使用して実施した。その値を、さらに計算する目的で「染色直後」と称する。
【0123】
・洗浄堅牢性実験
次に、各毛束を、ラウレス硫酸ナトリウムの1.5重量%溶液を含む、40℃及び100rpmの振とう浴に30分間入れた。次に、毛束を水ですすぎ、ブロー乾燥させた。比色測定を再び実施し、(L*,a*,b*)値を得た。それらの値を、さらに計算する目的で「洗浄後」と称する。
【0124】
・ΔE*
a,bの計算
洗浄後の毛と染色直後の毛の間の色差を評価するために、試料の各L*、a*、及びb*値を得た。
【0125】
次に、ΔE*を以下の式によって計算した。
【0126】
【0127】
【0128】
上記の組成物を、事前の混合なしにケラチン繊維に適用し、30分間放置した。その後、組成物をすすぎ落し、ケラチン繊維をシャンプーし、ブロー乾燥させた。
【0129】
表1に提示した洗浄堅牢性及び色測定方法を、表2のために使用した。
【0130】
・結果の議論
表2の例は、低濃度のトリスの技術的効果を示している。色の強度は、概して実施例を上回るほどには上昇しないが、耐久性/洗浄堅牢性は、比較例2と比較して顕著に異なっている。
【0131】
以下の実施例は、本発明の範囲内に含まれる。
【0132】
実施例6
重量%
HCブルー18 0.1
HCレッド18 0.05
HCイエロー16 0.08
トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン 0.8
2-アミノメチルプロパノール 2.5
セテアレス-30 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
セテアリルアルコール 4.0
ベンジルアルコール 1.0
アクリレートコポリマー 1.5
NaOH/HCl pH9.5まで添加
水 100.0まで添加