(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】部品移載装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
(21)【出願番号】P 2023521984
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018533
(87)【国際公開番号】W WO2022244034
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】春日 大介
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-188194(JP,A)
【文献】特開2018-064045(JP,A)
【文献】特開2007-053271(JP,A)
【文献】特開2010-278187(JP,A)
【文献】特開2009-238873(JP,A)
【文献】特開2003-059955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の部品が配置された部品配置エリアを有する部品供給部と、
前記部品配置エリアと所定の部品移載部との間の上方空間を第1移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品をピッキングし、前記部品移載部へ前記部品を移動する部品移載ユニットと、
前記部品配置エリアと所定の待機位置との間の上方空間を第2移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品を撮像するカメラユニットと、
前記部品移載ユニットの前記第1移動軸に沿った移動、及び前記カメラユニットの前記第2移動軸に沿った移動を制御する移動制御部と、を備え、
前記移動制御部は、
前記部品配置エリアの上方空間において前記部品移載ユニットと前記カメラユニットとが並存した場合に両者が干渉する干渉エリア内に、前記部品移載ユニット及び前記カメラユニットのいずれか一方ユニットを基準として、他方ユニットの進入可能範囲を定める干渉リミットラインを設定し、
前記他方ユニットの移動範囲を、前記干渉リミットラインを超過しない範囲に規制する、部品移載装置
において、
前記移動制御部は、
前記一方ユニットの前記干渉エリアからの退避移動と、他方ユニットの前記干渉エリアへの進入移動とを、互いに重複する期間内に実行するものであって、
前記第1移動軸に沿って移動する部品移載ユニットと、前記第2移動軸に沿って移動するカメラユニットとが互いに干渉しないよう、前記退避移動及び前記進入移動の各々の加速度及び移動速度を設定し、
前記一方ユニットの前記退避移動について所定の第1加速度及び第1移動速度を設定した場合に、前記一方ユニット及び前記他方ユニットの現在位置情報及び移動目標位置情報を取得し、
前記現在位置情報及び前記移動目標位置情報に基づいて、前記進入移動として、前記他方ユニットが前記第1加速度及び前記第1移動速度で移動する前記一方ユニットに対して干渉はしないが最接近する範囲における、最速の加速度及び移動速度となる第2加速度及び第2移動速度を設定する、部品移載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品移載装置において、
前記カメラユニットは、前記部品配置エリアにおける前記部品の撮像が完了すると前記待機位置に移動する、部品移載装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品移載装置において、
前記移動制御部は、前記一方ユニットが前記干渉エリア内において所要の動作を実行している間、前記他方ユニットを前記干渉リミットライン又はその近傍まで移動させて待機状態とする、部品移載装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の部品移載装置において、
前記移動制御部は、前記一方ユニットの前記干渉エリアからの退避移動において、前記一方ユニットが前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアから脱出するまでの区間では所定の高速の退避移動速度に設定し、前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアから脱出した後の区間では、前記高速よりも低速の退避移動速度に設定する、部品移載装置。
【請求項5】
請求項3に記載の部品移載装置において、
前記移動制御部は、
前記一方ユニットが前記干渉エリア内の第1位置で所要の動作を実行するに際して、前記他方ユニットとの干渉を回避する第1干渉リミットラインを設定し、
続いて前記一方ユニットが前記干渉エリア内の前記第1位置とは異なる第2位置で所要の動作を実行するに際して、前記第1干渉リミットラインとは異なる位置に第2干渉リミットラインを設定し、前記他方ユニットを前記第2干渉リミットライン又はその近傍まで移動させて待機状態とする、部品移載装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の部品移載装置において、
前記部品配置エリアは、ダイシングされたウェハが配置されるエリアであって、前記部品はダイである、部品移載装置。
【請求項7】
請求項6に記載の部品移載装置において、
前記部品移載ユニットは、前記ダイを吸着するヘッドを有するヘッドユニットであり、
前記カメラユニットは、前記ウェハを撮像するウェハカメラであり、
前記部品移載部は、前記ダイが実装される基板が配置される基板配置部である、部品移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品配置エリアから部品をピッキングする部品移載ユニットと、前記部品エリアにおいて部品を撮像するカメラユニットとを備えた部品移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイシングされたウェハからダイ(ベアチップ)をピックアップして基板に実装する部品実装装置が知られている。この部品実装装置では、ウェハ供給機によって機内の所定位置(部品配置エリア)に搬入されたウェハを、ウェハカメラが撮像してウェハ認識を行い、次いでダイの保持機能を備えたヘッドでダイをピッキングするという動作が繰り返される。つまり、前記ウェハカメラと前記ヘッドとが、共に機内へ搬入されたウェハの上空で各々所要の動作を行う。従って、前記ウェハカメラを有するカメラユニットと、前記ヘッドを有するヘッドユニットとの干渉が問題となる。
【0003】
特許文献1には、互いの移動領域が重複する2つの部品実装ヘッドを備え、これら部品実装ヘッド同士の干渉を回避できる部品実装装置が開示されている。この部品実装装置では、両ヘッドが干渉する干渉エリアに向けて、一方のヘッドが進入移動を開始する際に、他方のヘッドが干渉エリア内に存在するときは、前記一方のヘッドの前記進入移動を停止させる。
【0004】
しかし、上述のカメラユニット及びヘッドユニットのように、役目の異なるユニットについての干渉防止のために特許文献1の技術を適用した場合、タクトロスが大きくなる。すなわち、前記カメラユニット及び前記ヘッドユニットのいずれか一方ユニットが干渉エリア内に存在する間、他方ユニットを前記干渉エリア外で待機させる制御を行うと、他方ユニットの待機時間がネックになって、部品撮像から部品ピッキングに至る作業サイクルを高速化できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、部品配置エリアから部品をピッキングする部品移載ユニットと、前記部品エリアにおいて部品を撮像するカメラユニットとを備えた部品移載装置において、タクトロスを低減することにある。
【0007】
本発明の一局面に係る部品移載装置は、複数個の部品が配置された部品配置エリアを有する部品供給部と、前記部品配置エリアと所定の部品移載部との間の上方空間を第1移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品をピッキングし、前記部品移載部へ前記部品を移動する部品移載ユニットと、前記部品配置エリアと所定の待機位置との間の上方空間を第2移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品を撮像するカメラユニットと、前記部品移載ユニットの前記第1移動軸に沿った移動、及び前記カメラユニットの前記第2移動軸に沿った移動を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記部品配置エリアの上方空間において前記部品移載ユニットと前記カメラユニットとが並存した場合に両者が干渉する干渉エリア内に、前記部品移載ユニット及び前記カメラユニットのいずれか一方ユニットを基準として、他方ユニットの進入可能範囲を定める干渉リミットラインを設定し、前記他方ユニットの移動範囲を、前記干渉リミットラインを超過しない範囲に規制する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る部品実装装置の全体構成を示す、上面視の平面図である。
【
図2】
図2は、ヘッドユニット及び突き上げユニットを示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、前記部品実装装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、ヘッドユニットとカメラユニットとの干渉エリアを示す図である。
【
図5】
図5(A)~(E)は、ウェハカメラによるウェハの撮像から、ヘッドユニットによるダイのピッキング及び実装までの一連の工程を示す模式図である。
【
図6】
図6(A)~(D)は、ヘッドユニット及びカメラユニットの動作を示す模式図である。
【
図7】
図7(A)~(D)は、ヘッドユニット及びカメラユニットの動作を示す模式図である。
【
図8】
図8(A)~(D)は、ヘッドユニット及びカメラユニットの動作を示す模式図である。
【
図9】
図9は、部品実装装置による部品実装処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、部品実装装置による部品実装処理のフローチャートである。
【
図11】
図11(A)~(C)は、第1実施形態におけるヘッドユニット及びカメラユニットの移動制御を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態におけるヘッドユニット及びカメラユニットの移動制御を示すグラフである。
【
図13】
図13(A)~(C)は、第2実施形態におけるヘッドユニット及びカメラユニットの移動速度設定を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態におけるヘッドユニット及びカメラユニットの移動制御を示すグラフである。
【
図15】
図15(A)~(D)は、第4実施形態におけるヘッドユニット及びカメラユニットの移動制御を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る部品移載装置は、例えばウェハからダイシングされたダイをテープに収容するテーピング装置、前記ダイを基板にワイヤボンディングするダイボンダ、或いは前記ダイを基板に実装する部品実装装置などの各種装置に適用することができる。ここでは、本発明の部品移載装置が、部品実装装置に適用される例について説明する。
【0010】
[部品実装装置の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る部品実装装置1の全体構成を示す、上面視の平面図である。部品実装装置1は、ウェハ7からダイシングされたダイ7a(部品)を基板Pに実装する装置である。部品実装装置1は、基台2、コンベア3、ヘッドユニット4(部品移載ユニット)、部品供給部5(部品配置エリア)、ウェハ供給装置6、カメラユニット32U及び突き上げユニット40を含む。
図2は、ヘッドユニット4と、
図1では表出しない突き上げユニット40とを示す概略斜視図である。
【0011】
基台2は、部品実装装置1が備える各種の機器の搭載ベースである。コンベア3は、基台2上にX方向に延びるように設置された、基板Pの搬送ラインである。コンベア3は、機外から所定の実装作業位置(所定の部品移載部/基板配置部)に基板Pを搬入し、実装作業後に基板Pを前記作業位置から機外へ搬出する。コンベア3は、基板Pを上記実装作業位置で保持する図略のクランプ機構を有する。なお、
図1中に基板Pが示されている位置が、前記実装作業位置である。部品供給部5は、複数個のダイ7aを、ウェハ7からダイシングされた配置状態で供給する。
【0012】
ヘッドユニット4は、部品供給部5においてダイ7aをピッキングし、上記実装作業位置へ移動すると共に、基板Pにダイ7aを実装する。ヘッドユニット4は、前記ピッキングの際にダイ7aを吸着して保持し、前記実装の際に保持しているダイ7aをリリースする複数のヘッド4Hを備える。ヘッド4Hは、ヘッドユニット4に対するZ方向への進退(昇降)移動と、軸回りの回転移動とが可能である。ヘッドユニット4には、基板Pを撮像する基板認識カメラ31が搭載されている。基板認識カメラ31の撮影画像より、基板Pに付されたフェデューシャルマークFid(
図6)が認識される。これにより基板Pの位置ずれが認識され、部品実装時に前記位置ずれの補正が為される。
【0013】
部品実装装置1は、ヘッドユニット4を、少なくとも部品供給部5と前記実装作業位置で保持された基板Pとの間の上方空間を、水平方向(X及びY方向)に移動可能とする第1駆動機構D1を備える。第1駆動機構D1は、ヘッドユニット4のY方向の移動機構として、それぞれ+X側及び-X側で一対のY軸固定レール13、第1Y軸サーボモータ14及びボールねじ軸15(第1移動軸の一つ)を備える。一対のY軸固定レール13は、基台2上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。ボールねじ軸15は、Y軸固定レール13に近接する位置においてY方向に延びるように配置されている。第1Y軸サーボモータ14は、ボールねじ軸15を回転駆動する。一対のY軸固定レール13間には、ヘッドユニット4を支持する支持フレーム16が架設されている。支持フレーム16の+X側端部及び-X側端部には、各ボールねじ軸15に螺合されるナット17が組付けられている。
【0014】
第1駆動機構D1は、ヘッドユニット4のX方向の移動機構として、支持フレーム16に搭載された図略のガイド部材、第1X軸サーボモータ18及びボールねじ軸19(第1移動軸の一つ)を備える。前記ガイド部材は、ヘッドユニット4のX方向の移動をガイドする部材であり、支持フレーム16の+Y側面においてX方向に延びるように固定されている。ボールねじ軸19は、前記ガイド部材に近接して、X方向に延在するよう配設されている。第1X軸サーボモータ18は、ボールねじ軸19を回転駆動する。ヘッドユニット4には図略のナットが付設され、当該ナットはボールねじ軸19に螺合されている。
【0015】
以上の構成を備える第1駆動機構D1によれば、第1Y軸サーボモータ14が作動してボールねじ軸15が回転駆動されることにより、ヘッドユニット4が支持フレーム16と一体にY方向に移動する。また、第1X軸サーボモータ18が作動してボールねじ軸19が回転駆動されることにより、ヘッドユニット4が支持フレーム16に対してX方向に移動する。
【0016】
部品供給部5は、複数個のダイ7aをウェハ7の形態で、所定の部品取出作業位置(ウェハステージ10)へ供給するウェハ供給装置6を備える。ウェハ7は、円盤形状の半導体ウェハであって、回路パターン等が既に形成されている。ウェハ供給装置6は、ウェハシート8aを保持するウェハ保持枠8を含む。ウェハシート8aには、ウェハ7を碁盤目状にダイシングされて形成された多数のダイ7a,7a…の集合体が貼着されている。ウェハ供給装置6は、ウェハ保持枠8を入れ替える態様で、ダイ7aを前記部品取出作業位置へ供給する。なお、部品供給部5は、ウェハ供給装置6に加えて、電子部品を収容した部品収容テープの形態で部品供給するテープフィーダを備えていても良い。
【0017】
ウェハ供給装置6は、ウェハ収納エレベータ9、ウェハステージ10及びウェハコンベア11を含む。ウェハ収納エレベータ9は、ウェハ7が貼着されたウェハシート8aをウェハ保持枠8に保持した状態で、上下多段に収納している。ウェハステージ10は、ウェハ収納エレベータ9の-Y側の位置において、基台2上に設置されている。基板Pの停止位置となる前記実装作業位置に対して、ウェハステージ10は+Y側に並ぶ位置に配置されている。本実施形態では、ダイシングされたウェハ7が基台2上で配置されるエリアとなるウェハステージ108が、部品配置エリアとなる。ウェハコンベア11は、ウェハ収納エレベータ9からウェハステージ10上にウェハ保持枠8を引き出す。
【0018】
カメラユニット32Uは、X方向及びY方向に移動可能なユニットであって、ウェハカメラ32を備えている。ウェハカメラ32は、ウェハステージ10上に位置決めされたウェハ7の一部分、つまりカメラ視野内のダイ7aを撮像する。この撮像画像に基づいて、ピックアップ対象のダイ7aの位置認識が為される。部品実装装置1は、カメラユニット32Uを、少なくとも部品供給部5と所定の待機位置との間の上方空間を、水平方向(X及びY方向)に移動可能とする第2駆動機構D2を備える。この第2駆動機構D2は、ヘッドユニット4を駆動する第1駆動機構D1とは別個に独立した駆動系である。なお、本実施形態では、前記待機位置は、ウェハステージ10から+Y側に離間した位置である。
【0019】
第2駆動機構D2は、カメラユニット32UのY方向の移動機構として、+X側及び-X側で一対のY軸固定レール33と、+X側に配置された第2Y軸サーボモータ34及びボールねじ軸35(第2移動軸の一つ)とを備える。一対のY軸固定レール33は、基台2上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。ボールねじ軸35は、+X側のY軸固定レール33に近接する位置においてY方向に延びるように配置されている。第2Y軸サーボモータ34は、ボールねじ軸35を回転駆動する。一対のY軸固定レール33間には、カメラユニット32Uを支持する支持フレーム36が架設されている。支持フレーム36の+X側端部には、ボールねじ軸35に螺合されるナット37が組付けられている。
【0020】
第2駆動機構D2は、カメラユニット32UのX方向の移動機構として、支持フレーム36に搭載された図略のガイド部材、第2X軸サーボモータ38及びボールねじ軸39(第2移動軸の一つ)を備える。前記ガイド部材は、カメラユニット32UのX方向の移動をガイドする部材であり、支持フレーム36の-Y側面においてX方向に延びるように固定されている。ボールねじ軸39は、前記ガイド部材に近接して、X方向に延在するよう配設されている。第2X軸サーボモータ38は、ボールねじ軸39を回転駆動する。カメラユニット32Uには図略のナットが付設され、当該ナットはボールねじ軸39に螺合されている。
【0021】
以上の構成を備える第2駆動機構D2によれば、第2Y軸サーボモータ34が作動してボールねじ軸35が回転駆動されることにより、カメラユニット32Uが支持フレーム36と一体にY方向に移動する。また、第2X軸サーボモータ38が作動してボールねじ軸39が回転駆動されることにより、カメラユニット32Uが支持フレーム36に対してX方向に移動する。
【0022】
なお、第2駆動機構D2における駆動源の第2X軸、Y軸サーボモータ34、38は、第1駆動機構D1の駆動源である第1X軸、Y軸サーボモータ14、18とはモータスペックが異なる。ヘッドユニット4よりもカメラユニット32Uの方が軽量であるため、第1X軸、Y軸サーボモータ14、18の方が高出力である。このため、カメラユニット32Uよりもヘッドユニット4の方が、加速度が高く、最高移動速度も速い。従って、両ユニットを同時に移動させる場合には、これらの干渉を回避するための速度制御が必要となる場合が生じる。この点については、後記で詳述する。
【0023】
突き上げユニット40は、部品供給部5の下方に配置され、ヘッド4Hが吸着すべきダイ7aを、ウェハシート8aの下面側から突き上げる。突き上げユニット40は、ウェハステージ10に対応する程度の範囲にわたってXY方向に移動可能に、基台2上に配置されている。突き上げユニット40は、Y方向に延びる一対のガイドレール41に沿って移動可能な支持フレーム42に、X方向に移動可能に支持されている。
【0024】
支持フレーム42の内部に設けられた図略のナット部分に螺合するボールねじ軸43が、第3Y軸サーボモータ44により回転駆動される。これにより、突き上げユニット40が支持フレーム42と一体にY方向に移動する。また、支持フレーム42には、突き上げユニット40の内部に設けられた図略のナット部分と螺合するボールねじ軸45が配設されている。ボールねじ軸45が第3X軸サーボモータ46により回転駆動されることで、突き上げユニット40がX軸方向に移動する。突き上げユニット40は、ダイ7aを突き上げる突き上げピン47を有する。ヘッド4Hによるダイ7aの吸着時に、突き上げピン47が上昇し、ウェハシート8aを通してダイ7aを突き上げる。突き上げピン47は、ピン昇降モータ48(
図3)によって昇降駆動される。
【0025】
基台2には、部品認識カメラ30が据え付けられている。部品認識カメラ30は、ヘッドユニット4のヘッド4Hに吸着されているダイ7aを、基板Pへの実装の前に下側から撮像する。この撮像画像に基づいて、ヘッド4Hによるダイ7aの吸着異常や吸着ミス等が判定される。
【0026】
[部品実装装置の制御構成]
図3は、部品実装装置1の制御構成を示すブロック図である。部品実装装置1は、当該部品実装装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部20を備える。制御部20には、ヘッドユニット4、カメラユニット32U及び突き上げユニット40が備える各機器と、ウェハ供給装置6及び部品認識カメラ30とが電気的に接続されている。制御部20は、予め定められたプログラムが実行されることで、機能的に全体制御部21、軸制御部22(移動制御部)、撮像制御部23、画像処理部24及び記憶部25を具備するように動作する。
【0027】
全体制御部21は、制御部20が備える各機能部の動作を統括的に制御すると共に、各種の演算処理を実行する。軸制御部22は、各ユニットが備えるサーボモータを駆動するドライバであり、全体制御部21からの指示に従って各駆動モータを動作させる。具体的には軸制御部22は、ヘッドユニット4に関し、第1Y軸サーボモータ14及び第1X軸サーボモータ18の駆動を制御することにより、ボールねじ軸15、19(第1移動軸)に沿ったヘッドユニット4のXY方向の移動を制御する。また、軸制御部22は、Z軸サーボモータ401の駆動を制御してヘッド4HのZ方向の移動(昇降移動)を制御すると共に、R軸サーボモータ402の駆動を制御してヘッド4Hの自軸回りの回転移動を制御する。
【0028】
軸制御部22は、カメラユニット32Uに関し、第2Y軸サーボモータ34及び第2X軸サーボモータ38の駆動を制御することにより、ボールねじ軸35、39(第2移動軸)に沿ったカメラユニット32UのXY方向の移動を制御する。また、軸制御部22は、突き上げユニット40に関し、第3Y軸サーボモータ44及び第3X軸サーボモータ46の駆動を制御することにより、ボールねじ軸43、45に沿った突き上げユニット40のXY方向の移動を制御する。また、軸制御部22は、ピン昇降モータ48の駆動を制御することにより、突き上げピン47の昇降移動を制御する。
【0029】
撮像制御部23は、部品認識カメラ30、基板認識カメラ31及びウェハカメラ32の撮像動作を制御する。具体的には撮像制御部23は、部品認識カメラ30の動作を制御して、ヘッド4Hに吸着されたダイ7a又は他の部品を撮像させる。また、撮像制御部23は、基板認識カメラ31の動作を制御して、基板PのフェデューシャルマークFidを撮像させる。さらに、撮像制御部23は、ウェハカメラ32の動作を制御して、ウェハステージ10内のダイ7aを撮像させる。
【0030】
画像処理部24は、部品認識カメラ30、基板認識カメラ31及びウェハカメラ32から入力される画像データに対しエッジ抽出処理等を含む各種の画像処理を施す。画像処理後の画像データに基づき、ダイ7aのヘッド4Hへの吸着姿勢の認識、基板Pの位置認識、ウェハステージ10において吸着すべきダイ7aの位置認識等の処理が実行される。
【0031】
記憶部25は、実装プログラムなどの各種プログラムや各種データを記憶する。本実施形態では、記憶部25は、後述する干渉エリアCAの位置情報や干渉リミットラインCLの設定に関する情報、ヘッドユニット4及びカメラユニット32Uの加速度や移動速度に関する情報を記憶する。
【0032】
[装置内レイアウトと基本動作]
次に、部品実装装置1におけるヘッドユニット4及びカメラユニット32Uのレイアウトと、当該部品実装装置1の基本動作について説明する。
図4は、
図1に示した部品実装装置1の上面図に、ヘッドユニット4及びカメラユニット32Uの移動範囲を付記した図である。ヘッドユニット4は、各々XY方向に延びるボールねじ軸15、19の架設範囲に対応した、ヘッドユニット移動エリアA1を有している。同様に、カメラユニット32Uは、各々XY方向に延びるボールねじ軸35、39の架設範囲に対応したウェハカメラ移動エリアA2を有している。
【0033】
ヘッドユニット移動エリアA1は、Y方向において、部品供給部5(ウェハステージ10)の上方空間から、コンベア3上を通って部品認識カメラ30の上方空間に至るサイズを有している。これは、ヘッドユニット4が、ウェハステージ10上のウェハ7からダイ7aをピッキングし、部品認識カメラ30で部品認識を行った後、コンベア3上の基板Pにダイ7aを実装する動作を行うことによる。ウェハカメラ移動エリアA2は、Y方向において、部品供給部5の上方空間から、+Y側のウェハ収納エレベータ9の手前の上方空間に至るサイズを有している。これは、ウェハカメラ32が、ウェハステージ10上のウェハ7の撮像動作と、ウェハステージ10上から+Y側への退避動作とを行うことによる。なお、図示は省くが、ヘッドユニット移動エリアA1とウェハカメラ移動エリアA2とは、Z方向に互いに重なる高さ位置にある。
【0034】
このように、ヘッドユニット4及びカメラユニット32Uは、共にウェハステージ10上のウェハ7に対して作業を行うので、ヘッドユニット移動エリアA1とウェハカメラ移動エリアA2とは、ウェハステージ10の上方空間において重なり合う。
図4には、両エリアA1、A2が重なり合う干渉エリアCAが示されている。干渉エリアCAは、ヘッドユニット4とカメラユニット32Uとが並存した場合に、両者に干渉が生じるエリアである。従って、干渉エリアCAにおいて衝突が生じないよう、ヘッドユニット4及びカメラユニット32Uの移動を制御する必要がある。
【0035】
図5(A)~(E)は、ウェハカメラ32によるウェハ7の撮像から、ヘッドユニット4によるダイ7aのピッキング及び実装までの基本動作を示す模式図である。各図には、ヘッドユニット4及びウェハカメラ32(カメラユニット32U)、ウェハ7、基板P及び干渉エリアCAが簡略的に示されている。
図5(A)は、ヘッドユニット4が、
図4に示すヘッドユニット移動エリアA1の最も-Y側に位置し、ウェハカメラ32が、ウェハカメラ移動エリアA2の最も+Y側に位置している状態を示している。
【0036】
図5(B)は、ウェハカメラ32が干渉エリアCA内でウェハ7の撮像を行い、ヘッドユニット4のヘッド4Hが基板Pにダイ7aの実装動作を行っている状態を示している。ここでのウェハカメラ32の撮像は、次回のピッキング動作でヘッド4Hが吸着するダイ7a群の認識のための撮像である。一方、ここでのヘッド4Hによる実装動作は、今回のピッキング動作で吸着したダイ7aを基板Pに実装するための動作である。
【0037】
図5(C)は、ウェハカメラ32が干渉エリアCAから退出する退避移動を行う一方、ヘッドユニット4が干渉エリアCAへ入る進入移動を行っている状態を示している。ヘッドユニット4の進入移動は、直前にウェハカメラ32による撮像で認識したダイ7a群を、ウェハ7からピッキングするための移動である。ウェハカメラ32の退避移動は、ヘッドユニット4との干渉を回避するための移動である。
図5(C)は、ヘッド4Hがダイ7aをピッキングしている状態である。
【0038】
図5(D)は、ヘッドユニット4が干渉エリアCAから退避移動を行う一方、ウェハカメラ32が干渉エリアCAへ進入移動を行っている状態を示している。ヘッドユニット4の退避移動は、
図5(C)のピッキング動作で吸着したダイ7a群を基板Pに実装するための動作である。ウェハカメラ32の進入移動は、次回のピッキング動作でヘッド4Hが吸着するダイ7a群を撮像するための移動である。
【0039】
以上の通り、ダイ7aの認識~ピッキング~実装のサイクルが、干渉エリアCAにヘッドユニット4とウェハカメラ32とが順次入れ替わるようにして実行される。ヘッドユニット4とウェハカメラ32との干渉を確実に回避するには、いずれか一方ユニットが干渉エリアCAに存在している限り、他方ユニットを干渉エリアCAに進入させない制御を行えば良い。しかし、このような制御を行うと、他方ユニットの待機時間がネックになってタクトロスが生じ、前記サイクルを高速化できない。
【0040】
この問題に鑑み本実施形態では、干渉エリアCA内に、ヘッドユニット4とカメラユニット32Uのいずれか一方ユニットを基準として、他方ユニットの進入可能範囲を定める干渉リミットラインCLを設定する。そして、前記他方ユニットの移動範囲を、干渉エリアCAへの進入禁止ではなく、干渉リミットラインCLを超過しない範囲に規制することで、タクトロスを低減する。以下、干渉リミットラインCLを設定する実装動作例を説明する。
【0041】
[干渉リミットラインを設定する実装動作]
図6(A)~
図8(D)は、干渉リミットラインCLを設定する実装動作における、ヘッドユニット4及びカメラユニット32Uの動作を示す模式図である。これらの図では、カメラユニット32U(ウェハカメラ32)を基準として設定される干渉リミットラインCLを「CL1」、ヘッドユニット4を基準として設定される干渉リミットラインCLを「CL2」として記載している。詳しくは「CL2」は、ヘッドユニット4が今回分のダイ7aの実装を行う際に、当該ダイ実装により、若しくは、当該ダイ実装に関して最も+Y側に移動する位置である。干渉リミットラインCL1、CL2は、両ユニットの動作状態に応じて、軸制御部22が適宜設定する。
【0042】
図6(A)は、ウェハカメラ32(一方ユニット)が初回のダイ認識のため、干渉エリアCAに進入してウェハ7の撮像を行っている状態を示している。このダイ認識では、ヘッドユニット4による初回のピッキング動作で吸着される予定のダイ7aの群の位置認識が行われる。ヘッドユニット4(他方ユニット)は、干渉エリアCAから離れ、最も-Y側の位置で待機している。この状態では、ウェハカメラ32が作業を行うので、ウェハカメラ32を基準として干渉エリアCAに干渉リミットラインCL1が設定される。
【0043】
干渉リミットラインCL1は、ウェハカメラ32が今回のダイ認識の撮像を行う際に、最も-Y側に移動する位置を参照して設定される。この場合、ヘッドユニット4の移動範囲は、干渉リミットラインCL1を超過しない範囲に規制される。換言すると、ヘッドユニット4は、干渉リミットラインCL1よりも-Y側であれば自在に移動可能であり、干渉エリアCA内へも進入可能である。例えば、ダイ認識の間に、ヘッドユニット4に搭載されている基板認識カメラ31に、基板PのフェデューシャルマークFidを認識する撮像動作を行わせても良い。
【0044】
図6(B)は、ウェハカメラ32がダイ認識の撮像を行っている間に、ヘッドユニット4が初回のピッキング動作に備えて、干渉リミットラインCL1へ接近している様子を示している。ヘッドユニット4の一部は、干渉エリアCA内へ進入している。
【0045】
図6(C)は、ウェハカメラ32がダイ認識を終えて干渉エリアCAから+Y側へ退避移動する一方で、ヘッドユニット4が干渉エリアCAへ進入移動している様子を示している。ヘッドユニット4は、前記ダイ認識によって特定されたダイ7aのXY座標を目指して移動される。ヘッドユニット4は既に干渉リミットラインCL1まで接近しているので、目標座標への移動時間は短くなる。また、両ユニットを同期的に移動させれば、よりタクトロスが低減できる。移動後、初回のピッキング動作で対象とされたダイ7aがヘッド4Hに吸着される。ウェハカメラ32は、ヘッドユニット4の作業が完了するまで待機する。
【0046】
図6(D)は、ヘッドユニット4がピッキング動作を終えて干渉エリアCAから-Y側へ退避移動する一方で、ウェハカメラ32が次回のダイ認識のために干渉エリアCAへ進入移動している様子を示している。この際、ヘッドユニット4を基準として干渉リミットラインCL2が設定される。この両ユニットの移動も同期的に行わせることが望ましい。ウェハカメラ32は、干渉エリアCAへ進入できるものの、干渉リミットラインCL2よりも-Y側の干渉エリアCAへは進入できない状態となる。ヘッドユニット4は、ピッキング動作によりヘッド4Hが保持したダイ7aを基板Pに搬送している状態である。
【0047】
図7(A)は、ウェハカメラ32が撮像動作を、ヘッドユニット4が実装動作を、それぞれ行っている状態を示している。すなわち、ウェハカメラ32は、次回のダイ認識のため、干渉エリアCAに進入してウェハ7の撮像を行う。ヘッドユニット4は、ヘッド4Hが今回吸着したダイ7aの基板Pへの実装動作を行う。ここでは、次回のダイ認識の撮像、つまり次回のピッキング動作で吸着される予定のダイ7aの群の位置に、ウェハカメラ32が干渉リミットラインCL2を超過することなく移動できる場合を例示している。
【0048】
図7(B)は、ウェハカメラ32の上記撮像動作が終わり、干渉エリアCAからウェハカメラ32が退避移動している状態である。ヘッドユニット4は実装動作を継続している。一般に、ウェハカメラ32の撮像動作の方がヘッドユニット4の実装動作よりも作業時間が短いので、ウェハカメラ32の干渉エリアCAからの先行退出が可能である。
【0049】
図7(C)は、ヘッドユニット4が、基板Pへの実装動作を終えて、次回のピッキング動作のために干渉エリアCAへ進入移動を行っている状態を示している。進入移動後、ヘッドユニット4のヘッド4Hは、ウェハ7から先のダイ認識で認識されたダイ7aの群を吸着する。ウェハカメラ32は待機状態である。なお、
図7(B)のウェハカメラ32が退避移動を、ヘッドユニット4の進入移動と同時期に行わせても良い。
【0050】
図7(D)は、ヘッドユニット4がピッキング動作を終えて、干渉エリアCAから退避移動を行う一方、ウェハカメラ32が干渉エリアCAへ進入移動を行っている状態を示している。この際も、ヘッドユニット4を基準として干渉リミットラインCL2が設定され、ウェハカメラ32は干渉リミットラインCL2を-Y側へ超過しない範囲において、干渉エリアCAへ進入可能となる。ヘッドユニット4は、退避移動によって基板Pの上空へ移動し、ヘッド4Hは吸着したダイ7aを基板Pに実装する。ウェハカメラ32は、進入移動後、次回にピッキングされるダイ7aの認識のため、ウェハ7の撮像を行う。
【0051】
図8(A)及び(B)は、
図7(B)とは逆に、ヘッドユニット4の実装動作の方がウェハカメラ32の撮像動作よりも先に終了した場合の動作を示している。
図8(A)は、
図7(A)と同様に、ウェハカメラ32が撮像動作を、ヘッドユニット4が実装動作を、それぞれ行っている状態を示している。ヘッドユニット4の実装動作が先に完了した場合、
図8(B)に示すように、ウェハカメラ32(カメラユニット32U)を基準として干渉リミットラインCL1が設定される。ヘッドユニット4は、ウェハカメラ32が撮像動作を行っている間に、初回のピッキング動作に備えて、干渉リミットラインCL1へ接近する。この状態は、
図6(B)と同じである。
【0052】
図8(C)は、ヘッドユニット4が追加退避移動を、ウェハカメラ32が干渉エリアCAへの追加進入移動を、それぞれ行っている状態を示している。ウェハカメラ32の追加進入移動は、次回のダイ認識の撮像動作を、干渉リミットラインCL2を超過しないと行えない場合に実行される。すなわち、次回のピッキング動作で吸着される予定のダイ7aの位置(第2位置)が、ウェハカメラ32が干渉リミットラインCL2を-Y側に超過するまで移動しないと撮像できない位置の場合に、前記追加進入移動が実行される。
【0053】
この場合、
図8(A)ではヘッドユニット4(他方ユニット)を基準として設定されている干渉リミットラインCL2(第1干渉リミットライン)が、
図8(C)に示すように、ウェハカメラ32(一方ユニット)を基準とした干渉リミットラインCL1(第2干渉リミットライン)に更新される。その後、ウェハカメラ32は、所要の撮像動作を行う。ヘッドユニット4は、干渉リミットラインCL1を+Y側へ超過しない範囲で、実装動作を行う、若しくは待機する。なお、ヘッドユニット4が干渉リミットラインCL1を超過しない範囲にあれば、前記追加退避移動は行われない。ウェハカメラ32の撮像動作が完了したら、
図8(D)に示すように、ウェハカメラ32は干渉エリアCAから退避移動する一方で、ヘッドユニット4が干渉エリアCAへ進入移動する。この状態は、
図6(C)と同じである。
【0054】
[部品実装処理のフロー]
続いて、
図9及び
図10のフローチャートに基づいて、
図6~
図8で説明したカメラユニット32U及びヘッドユニット4の進入移動及び退避移動を伴う、部品実装装置1による部品実装動作を説明する。制御部20(
図3)は、ウェハステージ10のウェハ7から、今回及び次回のターンでヘッドユニット4のヘッド4Hに吸着させるダイ7aの群であるダイ吸着グループのデータを作成する(ステップS1)。なお、部品実装装置1の初動ターンのみ、今回及び次回のダイ吸着グループデータが作成され、2ターン目以降は次回分だけが作成される。
【0055】
ウェハカメラ32(カメラユニット32U)側の動作に関し、軸制御部22は、
図6(A)に例示したように、ウェハカメラ32を基準とした干渉リミットラインCL1を設定する(ステップS2)。次いで軸制御部22は、第2Y軸サーボモータ34及び第2X軸サーボモータ38を駆動して、干渉エリアCAにウェハカメラ32を進入移動させる(ステップS3)。詳しくは、今回のターンで吸着するダイ吸着グループが撮像視野に入る位置に、ウェハカメラ32が移動される。なお、干渉リミットラインCL1の設定に併せて軸制御部22は、第1Y軸サーボモータ14によるヘッドユニット4の+Y側の移動範囲を、干渉リミットラインCL1又はその近傍に規制するフラグを設定する。
【0056】
続いて、撮像制御部23がウェハカメラ32に、ウェハ7の撮像動作を実行させる(ステップS4)。取得された画像に対し、画像処理部24が所定の画像処理を実行する。画像処理部24は、今回の撮像視野内において存在する吸着対象のダイ7aの良否認識及びそのダイ7aの座標認識を行う(ステップS5)。
【0057】
軸制御部22は、今回のターンでの認識対象とするダイ7aが他に存在するか否かを判定する(ステップS6)。これは、ウェハカメラ32の撮像視野が狭く、一度の撮像で認識対象とするダイ7aの全てをカバーできない場合があるからである。認識対象とするダイ7aが残存している場合(ステップS6でNO)、軸制御部22は、第1Y軸サーボモータ14及び第1X軸サーボモータ18を駆動して、前記残存するダイ7aの上空にヘッドユニット4を移動させる(ステップS3に戻る)。他の認識対象のダイ7aが残存していない場合(ステップS6でYES)、軸制御部22は、ウェハカメラ32を干渉エリアCAから退避移動させる(ステップS7)。
【0058】
ヘッドユニット4側の動作に関し、軸制御部22は、干渉エリアCA内にウェハカメラ32(一方ユニット)が存在しているか否かを確認する(ステップS11)。ウェハカメラ32が存在している場合(ステップS11でYES)、つまりウェハカメラ32が撮像動作(所要の動作)を実行している場合、軸制御部22は、第1Y軸サーボモータ14を駆動して、ヘッドユニット4(他方ユニット)を干渉リミットラインCL1又はその近傍まで移動させ、待機させる(ステップS12/
図6(B)参照)。
【0059】
その後、軸制御部22は、ウェハカメラ32の干渉エリアCAからの退避移動が開始されたか否かを確認する(ステップS13)。ウェハカメラ32が退避移動を開始しない場合(ステップS13でNO)、ヘッドユニット4は待機状態となる。一方、ウェハカメラ32が退避移動を開始する場合(ステップS13でYES)、軸制御部22は、認識されたダイ7aのピッキングのため、ヘッドユニット4を干渉エリアCAへ進入移動させる(ステップS14)。
【0060】
この場合、
図6(C)に示すように、ステップS7におけるウェハカメラ32の退避移動と、ステップS14におけるヘッドユニット4の進入移動とが、同期して実行される。ここでの「同期」とは、典型的には前記退避移動と前記進入移動とが、同じタイミングで同一加速度、同一移動速度で実行される場合であるが、本実施形態ではこれに限らない。前記退避移動と前記進入移動とが、一部重複する期間に、異なる加速度、移動速度で実行される場合も「同期」に包含される。なお、ステップS11においてウェハカメラ32が既に干渉エリアCAから退避している場合は(ステップS11でNO)、軸制御部22はヘッドユニット4を、待機させることなく干渉エリアCAへ進入移動させる。
【0061】
その後、軸制御部22は、第1Y軸サーボモータ14及び第1X軸サーボモータ18に加えて、Z軸サーボモータ401及びR軸サーボモータ402を駆動して、ヘッド4Hにダイ7aを吸着するピッキング動作を実行させる(ステップS15)。続いて、撮像制御部23が部品認識カメラ30を動作させて、ヘッド4Hに吸着されたダイ7aを撮像する。撮像された画像に基づき、画像処理部24がダイ7aの吸着ミス等を検出する認識処理を実行する(ステップS16)。そして、基板PのフェデューシャルマークFidの認識処理を実行するシーケンスが存在するか否かが確認される(ステップS17)。シーケンスに組み込まれている場合(ステップS17でYES)、撮像制御部23は基板認識カメラ31にフェデューシャルマークFidを撮像させる(ステップS18)。この撮像で取得された画像に基づいて、基板Pの位置認識が為される。
【0062】
図10を参照して、次に軸制御部22は、ヘッド4Hに吸着されたダイ7aの基板Pへの搭載位置に、ヘッドユニット4を移動させる(ステップS21)。移動後、軸制御部22は、ヘッドユニット4を基準とした干渉リミットラインCL2を設定する(ステップS22/
図6(D)参照)。なお、干渉リミットラインCL2の設定に併せて軸制御部22は、第2Y軸サーボモータ34によるウェハカメラ32の-Y側の移動範囲を、干渉リミットラインCL2又はその近傍に規制するフラグを設定する。
【0063】
続いて軸制御部22は、Z軸サーボモータ401を駆動してヘッド4Hを下降させ、吸着しているダイ7aを基板Pへ搭載させる(ステップS23)。その後、今回のターンで吸着したダイ7aの全ての基板Pへの搭載が完了したか否かが確認され(ステップS24)、未完了の場合(ステップS24でNO)、ステップS21に戻る。一方、搭載が完了した場合(ステップS24でYES)、ウェハカメラ32が干渉回避のために待機中であるか否かが確認される(ステップS25)。干渉回避待ちではない場合(ステップS25でNO)、ステップS1に戻り、次のターンのピッキング動作に移行する。
【0064】
ヘッドユニット4側のステップS21~S25の動作に並行して、ウェハカメラ32側では、次のターンでピッキング対象となるダイ7aの認識処理が実行される。まず、軸制御部22は、次ターンの認識処理での撮像位置が、ステップS22で設定された干渉リミットラインCL2を超過しない位置であるか否かを確認する(ステップS31)。干渉リミットラインCL2を超過しない撮像位置である場合(ステップS31でYES)、軸制御部22は、ウェハカメラ32を当該撮像位置へ移動させる(ステップS32)。このステップS32におけるウェハカメラ32の移動(干渉エリアCAへの進入移動)と、先述のステップS21のヘッドユニット4の移動(干渉エリアCAからの退避移動)とは、
図7(D)に示すように、同期して実行させることができる。
【0065】
撮像位置へ移動後、撮像制御部23がウェハカメラ32に、ウェハ7の撮像動作を実行させる(ステップS33)。取得された画像に基づき、画像処理部24がダイ7aの認識処理を行う(ステップS34)。その後、今回のターンでの認識対象とするダイ7aが残存しているか否かが確認される(ステップS35)。これらステップS33~S35の動作は、先述のステップS4~S6と同様である。
【0066】
認識対象のダイ7aが残存していない場合(ステップS35でYES)、軸制御部22はウェハカメラ32を干渉エリアCAから退避移動させる(ステップS7)。その後、ステップS1に戻る。これに対し、認識対象のダイ7aが残存している場合(ステップS35でNO)、ステップS31に戻って処理が繰り返される。一方、ステップS31において、撮像位置が干渉リミットラインCL2を超過する撮像位置である場合(ステップS31でNO)、軸制御部22はウェハカメラ32を干渉リミットラインCL2又はその近傍まで移動させ(ステップS36)、待機させる。
【0067】
ヘッドユニット4側の処理に戻り、ウェハカメラ32が干渉回避待ちの状態である場合(ステップS25でYES)、軸制御部22は、ウェハカメラ32との干渉を回避できるよう、ヘッドユニット4を退避移動させる(ステップS26)。そして、現状の干渉リミットラインCL2が、ウェハカメラ32を基準とする新たな干渉リミットラインCL1に更新される(ステップS27)。
【0068】
ここでのヘッドユニット4の退避移動としては、単純にヘッドユニット4を干渉エリアCAから退避させる移動、若しくは、
図8(C)に示したような、ウェハカメラ32の作業領域に応じた追加退避移動を例示することができる。すなわち、ウェハカメラ32(一方ユニット)が干渉エリアCA内の所定位置(第1位置)で撮像動作を実行させることを想定して設定されている干渉リミットラインCL2(第1干渉リミットライン)を、干渉エリアCA内の異なる位置(第2位置)で撮像動作を実行させることを想定する干渉リミットラインCL1(第2干渉リミットライン)に更新する。そして、ヘッドユニット4を干渉リミットラインCL1又はその近傍で待機させる(ステップS12)。このように、干渉リミットラインCLをフレキシブルに変更することで、ウェハカメラ32の干渉エリアCA内における作業態様に応じて、最適な干渉リミットラインCLを設定することができる。
【0069】
[ヘッドユニット及びカメラユニットの移動制御例]
続いて、ヘッドユニット4及びウェハカメラ32(カメラユニット32U)の具体的な移動制御例について説明する。上述の通り、本実施形態では、ヘッドユニット4及びウェハカメラ32のいずれか一方ユニットの干渉エリアCAからの退避移動と、他方ユニットの干渉エリアCAへの進入移動とが、互いに重複する期間内に実行されることがある。この場合、ヘッドユニット4とウェハカメラ32とが互いに干渉しないよう、その反面、タクトロスを可及的に抑制できるよう、軸制御部22は前記退避移動及び前記進入移動の各々の加速度及び移動速度を設定する。以下、前記移動制御の各種の態様を例示する。
【0070】
<移動制御の第1実施形態>
図11(A)~(C)は、第1実施形態におけるヘッドユニット4及びウェハカメラ32の移動制御を示す図である。ここでは、
図11(A)に示すように、ウェハカメラ32が干渉エリアCAから退避移動する側(逃げる側)で、ヘッドユニット4が干渉エリアCAへの進入移動する側(追う側)である場合を例示する。既述の通り、ヘッドユニット4は第1駆動機構D1でXY方向に移動され、カメラユニット32Uは第1駆動機構D1から独立した第2駆動機構D2でXY方向に移動される。両駆動機構D1、D2によるユニット移動能力(加速度及び最高移動速度)は異なるため、同期的にヘッドユニット4とカメラユニット32Uを移動させる場合、両ユニットに干渉が生じ得る。すなわち、一方ユニットの加速度及び最高移動速度が速すぎる(遅すぎる)と、遅すぎる(速すぎる)他方ユニットと衝突が生じ得る。
【0071】
第1実施形態では、ウェハカメラ32の干渉エリアCAからの退避移動と、ヘッドユニット4の干渉エリアCAへの進入移動とが、同一の加速度及び移動速度に設定される例を示す。
図11(B)は、ウェハカメラ32及びヘッドユニット4の移動位置と時間との関係を示すグラフであって、ウェハカメラ32の軸移動軌跡F11及びヘッドユニット4の軸移動軌跡F21が示されている。当該グラフにおいて、縦軸の増加方向は、-Y側から+Y側へ向かう方向である。
【0072】
軸移動軌跡F11において時刻t11は、逃げる側のウェハカメラ32が、干渉エリアCA内の進入位置p11から+Y側へ退避移動を開始する時刻である。また、時刻t12は、ウェハカメラ32が、干渉エリアCAから+Y側へ所定距離だけ離れた退避位置p12への退避移動を完了する時刻である。一方、軸移動軌跡F21において時刻t21は、追う側のヘッドユニット4が、干渉エリアCAの-Y側の退避位置p21から+Y側への進入移動を開始する時刻である。ここでは、t21がt11よりも遅い時刻である例を示しているが、t21=t11としても良い。また、時刻t22は、ヘッドユニット4が、退避位置p21から干渉エリアCA内の進入位置p22への進入移動を完了する時刻である。このように、同一の加速度及び移動速度で移動する軸移動軌跡F11、F21にてウェハカメラ32及びヘッドユニット4を移動させれば、両ユニットの干渉を確実に回避することができる。
【0073】
一般に、カメラユニット32Uに比べてヘッドユニット4の方が重い構造物である。このため、第1駆動機構D1として、第2駆動機構D2よりも高いユニット移動能力を具備する機構が採用される。つまり、ヘッドユニット4の方がカメラユニット32Uよりも速い加速度及び移動速度で移動可能である。従って、追う側のヘッドユニット4が本来の加速度及び移動速度で移動する軸移動軌跡Fmaxで移動されると、逃げる側のカメラユニット32Uに干渉することがある。
【0074】
上記の干渉を防止するために、第2駆動機構D2によるカメラユニット32Uの移動の際の加速度及び移動速度が、予め記憶部25(
図3)に記憶される。そして、前記退避移動及び前記進入移動が重複する期間内に実行して行われる場合、軸制御部22はカメラユニット32Uの加速度及び移動速度を記憶部25から取得して、第1駆動機構D1によるヘッドユニット4の軸移動パラメータを設定する。
【0075】
図11(C)を参照して、第1駆動機構D1がヘッドユニット4を、本来は加速度a1及び移動速度v1で移動させるユニット移動能力を具備しているとする。この場合、
図11(C)に示す速度変化グラフで囲まれる面積SAがヘッドユニット4の移動距離となる。つまり、移動距離は次式で表される。
移動距離=v1・(加速時間/2+一定速度時間+減速時間/2)
上記の一定速度時間は、一定移動速度v1でヘッドユニット4が移動する期間である。減速度が加速度a1と同一であるとすると、
移動距離=v1・(加速時間+一定速度時間)
で表される。
【0076】
一方、第2駆動機構D2がカメラユニット32Uを、加速度a2及び移動速度v2で移動させるユニット移動能力を具備しているとする(a1>a2、v1>v2)。この場合、ヘッドユニット4の軸移動パラメータが、カメラユニット32Uの軸移動パラメータと同一の加速度a2及び移動速度v2に減速設定される。但し、前記減速設定の分だけ移動時間を長くし、その面積SBが本来の軸移動パラメータによる面積SAと同一とする。このような減速設定により、ヘッドユニット4とカメラユニット32Uとが、同一の加速度及び移動速度で移動することとなり、両ユニットの干渉を確実に回避できる。なお、追う側のヘッドユニット4の移動速度を、逃げる側のカメラユニット32Uの移動速度v2よりも遅く設定しても良い。
【0077】
<移動制御の第2実施形態>
第2実施形態では、追う側のヘッドユニット4が、逃げる側のウェハカメラ32に干渉しない限りにおいて、最速の加速度及び移動速度で移動する例を示す。
図12は、第2実施形態におけるヘッドユニット4及びウェハカメラ32の移動制御を示すグラフである。第1実施形態では、ウェハカメラ32の軸移動軌跡F11とヘッドユニット4の軸移動軌跡F21とが、同一の加速度及び移動速度で形成される例を示した。これに対し第2実施形態では、追う側のヘッドユニット4の加速度及び移動速度が、軸移動軌跡F11に最接近する最速軸移動軌跡F22を取るように設定される。但し、最接近とはいえども、駆動誤差等を見込んで、軸移動軌跡F11と最速軸移動軌跡F22との間には最小限のマージンMaが設定される。
【0078】
軸制御部22が、逃げる側のウェハカメラ32(一方ユニット)について、例えば
図11(C)に例示したように、加速度a2(第1加速度)及び移動速度v2(第1移動速度)に設定し、軸移動軌跡F11に沿って移動させる場合を想定する。同じ加速度a2及び移動速度v2でヘッドユニット4(他方ユニット)を移動させると、軸移動軌跡F21を形成する。しかし、軸移動軌跡F11、F21間には距離を詰める余裕がある。そこで、軸制御部22は、ウェハカメラ32に対して干渉せず、且つ、マージンMaを見込んだ範囲における、最速の加速度a3(第2加速度)及び移動速度v3(第2移動速度)を設定して、ヘッドユニット4を移動させる(a1>a3>a2、v1>v3>v2)。
【0079】
具体的には軸制御部22は、ウェハカメラ32が干渉エリアCAから退避移動を行う際に設定されている加速度及び移動速度を、記憶部25から取得する。さらに、軸制御部22は、ヘッドユニット4及びウェハカメラ32の現在位置情報及び移動目標位置情報を示すXY座標値を取得する。
図12の例では、現在位置は、時刻t11におけるウェハカメラ32の進入位置p11及びヘッドユニット4の退避位置p21である。ウェハカメラ32の移動目標位置は退避位置p12、ヘッドユニット4の移動目標位置は進入位置p22である。これらの情報を参照して、軸制御部22は、ウェハカメラ32に対して干渉はしないが最接近するヘッドユニット4の加速度a3及び移動速度v3を算出する。このような加速度a3及び移動速度v3にてヘッドユニット4を干渉エリアCAへ進入移動させることで、タクトロスを極限まで削減することができる。
【0080】
図13(A)~(C)は、第2実施形態におけるヘッドユニット4及びウェハカメラ32の移動速度設定を説明するための図である。
図13(A)に示すように、進入位置p11に存在していたウェハカメラ32が退避位置p12へ退避移動し、ヘッドユニット4が干渉エリアCA内へ進入移動するケースを想定する。図中の位置p13は、今回のピッキング動作を実行するヘッドユニット4の進入位置に対して、干渉が生じるリミットラインの位置を示している。
【0081】
図13(B)は、逃げる側のウェハカメラ32の移動速度と時間との関係を示すグラフである。ウェハカメラ32は、時刻T0から退避移動を開始し、加速度anで加速し、加速完了時刻T1より第2駆動機構D2が発生可能な最高速度V1の一定速度で退避移動を行うものとする。現在時刻t、つまり追う側のヘッドユニット4が進入移動を開始する時刻は、加速期間中において現在速度Vtでウェハカメラ32が移動している時刻とする。時刻T2は、ウェハカメラ32が今回のヘッドユニット4の進入位置に対する干渉ライン(
図13(A)の位置p13)を抜ける時刻である。なお、時刻T2より手前の時刻Trは、追う側のヘッドユニット4が減速を開始する減速開始時刻Trである。なお、
図13(B)に示されているS1、S2、S3、Sxは、次の説明では単純に距離を表すように説明しているが、実際は時間と速度との乗算からなる面積を示している。
【0082】
ウェハカメラ32の、現在時刻tの位置からの残り加速距離S1と、加速完了後、ウェハカメラ32が一定速度で移動する一定速距離S2と、時刻T0から加速完了までの時間に相当する加速完了時刻T1とは、次式で表される。
S1=(0.5(V1+Vt))・(T1-t)
S2=V1・(T2-T1)
T1=V1/an
【0083】
また、ウェハカメラ32が、退避移動の開始位置(時刻T0)から前記干渉ラインを抜ける位置p13までの距離S3と、時刻T0から前記干渉ラインを抜けるまでの時間に相当する時刻T2と、現在時刻tから前記干渉ラインを抜けるまでの時間Txとは、次式で表される。
S3=0.5(V1・T1)+V1・(T2-T1)
=-0.5(V1・T1)+V1・T2
T2=(S3+0.5(V1・T1))/V1
Tx=T2-t
【0084】
図13(C)は、追う側のヘッドユニット4の移動速度の設定状況を示すグラフである。ヘッドユニット4は、現在時刻tから、加速期間Ta、一定速度で移動する一定速期間Tc、及び減速期間Tdを具備するように移動される。なお、Vmaxは、第1駆動機構D1でヘッドユニット4を最も速く移動させ得る最高移動速度を示す。
【0085】
先ず、現在時刻tからヘッドユニット4を最高移動速度Vmaxで移動させてもウェハカメラ32との干渉が生じない場合は、退避移動と進入移動とが同期的に行われる場合であっても、ヘッドユニット4の減速制御は不要となる。減速制御が不要な条件は、ウェハカメラ32が現在位置p11から干渉ラインの位置p13を抜けるまでの距離をSxとすると、次式を満たすことである。
Sx-Td・V1>(Tc+0.5Ta)・Vmax ・・・(1)
なお、Td・V1は、
図13(B)において、減速開始時刻Trから干渉ラインを抜ける時刻T2までの面積SCに相当するウェハカメラ32の移動距離である。
【0086】
ヘッドユニット4が減速を開始する減速開始時刻Trに、ヘッドユニット4がウェハカメラ32に最接近(マージンMaを介在した最接近でも良い)する状態となるヘッドユニット4の移動速度が、同期的な移動を行う場合において設定し得るヘッドユニット4の最速の移動速度となる。次式(2)を満たす場合、ヘッドユニット4を上記の最高移動速度Vmaxで進入移動を行わせることができる。
0.5Td・Vmax<Td・V1 ・・・(2)
なお、0.5Td・Vmaxは、
図13(C)において、減速期間Tdの面積SDに相当するヘッドユニット4の移動距離である。
【0087】
これに対し、上記の式(1)及び式(2)を満たさない場合、つまりヘッドユニット4を上記の最高移動速度Vmaxで進入移動させるとウェハカメラ32に干渉する場合、ヘッドユニット4の減速制御が必要となる。この場合、軸制御部22は、加速期間Ta及び減速期間Tdを固定して、一定速期間Tcの移動速度を下げ、干渉の生じない目標移動速度Vnを探知する。移動速度を下げることで、一定速期間Tcが増加する。Tcの増加分をΔTcとすると、
ΔTc=0.5(Vmax-Vn)・(Ta+Td)
となる。そして、下記(3)式を満たす目標移動速度Vn、並びにVnを基準とする加減速度が、ウェハカメラ32に干渉しない範囲で最も速いヘッドユニット4の移動速度となる。
Sx-0.5Td・Vn>(Tc+ΔTc+0.5Ta)・Vn ・・・(3)
もちろん、目標移動速度Vnを、干渉が発生しないギリギリの範囲で設定するのではなく、所要のマージンMaを考慮した速度に設定しても良い。例えば、上記(3)式の不等号を等号に置き換えた次の(3A)式;
Sx-0.5Td・Vn=(Tc+ΔTc+0.5Ta)・Vn ・・・(3A)
に基づき算出した速度Vnから、所定のマージンMa分を減算した速度を目標移動速度に設定することができる。
【0088】
<移動制御の第3実施形態>
第3実施形態では、干渉エリアCAから退避移動するユニットについての好ましい移動制御例を示す。ヘッドユニット4又はウェハカメラ32の退避移動は、タクトロスの低減のため、干渉エリアCA内では可及的に高速移動させることが望ましい。反面、干渉エリアCAを脱出した後は、もはや高速移動は必要ではない。むしろ、高速移動を行うと、ユニット本来の動作に支障を来す場合がある。
【0089】
例えば、ヘッドユニット4には、ダイ7aのピッキングを行って干渉エリアCAを脱出した後、部品認識カメラ30によるダイ認識(
図9のステップS16)、基板認識カメラ31によるフェデューシャルマークFidの撮像(ステップS18)の動作が控えている。これらの動作の際、高速移動によりヘッドユニット4に揺れが発生すると、ダイ7aやフェデューシャルマークFidの認識が正確に行えないケースが生じ得る。この点に鑑み、第3実施形態では、軸制御部22が、ヘッドユニット4又はウェハカメラ32のうち退避移動を行う一方ユニットが干渉リミットラインCL若しくは干渉エリアCAから脱出するまでの区間では所定の高速の退避移動速度に設定し、干渉リミットラインCL若しくは干渉エリアCAから脱出した後の区間では、前記高速よりも低速の退避移動速度に設定する例を示す。
【0090】
図14は、第3実施形態におけるヘッドユニット4及びウェハカメラ32の移動制御を示すグラフである。ここでは、ウェハカメラ32が干渉エリアCAへ進入移動するユニット(追い側)、ヘッドユニット4が干渉エリアCAから退避移動するユニット(逃げる側)である場合を示している。
図14には、ウェハカメラ32の軸移動軌跡F31及びヘッドユニット4の軸移動軌跡F41が示されている。
【0091】
軸移動軌跡F31において時刻t31は、追い側のウェハカメラ32が、干渉エリアCA外の退避位置p31から-Y側へ進入移動を開始する時刻である。ウェハカメラ32は、所定の加速度及び移動速度で移動され、干渉エリアCA内の目標位置p32に到達する。時刻t32は、目標位置p32への到達完了時刻である。
【0092】
軸移動軌跡F41において時刻t31は、逃げる側のヘッドユニット4が、干渉エリアCA内の進入位置p41から-Y側へ退避移動を開始する時刻である。時刻t33は、ヘッドユニット4が、干渉エリアCAから-Y側へ所定距離だけ離れた退避位置p42への退避移動を完了する時刻である。また、時刻t3Aは、ヘッドユニット4が、干渉エリアCA(干渉リミットラインCL1)から脱出する時刻である。
【0093】
ヘッドユニット4の移動速度は、時刻t3Aまでは所定の高速の退避移動速度V11に設定されるが、時刻t3A以降はV11よりも低速の退避移動速度V12に設定される。
図14に点線で示す軸移動軌跡F42は、退避移動の全期間を高速の退避移動速度V11に設定してヘッドユニット4を移動させた場合の移動軌跡である。当然、軸移動軌跡F42を採用した方が、軸移動軌跡F41を採用する場合よりも速く退避位置p42に到達する。しかし、軸移動軌跡F42であると、干渉エリアCAを脱出した後においてもヘッドユニット4が高速移動を行うことになり、ダイ認識やフェデューシャルマークFidの認識等の動作に支障が生じ得る。しかし、ヘッドユニット4を軸移動軌跡F41に沿って移動させることで、干渉エリアCAからの脱出後にヘッドユニット4が行う動作を、低速移動状態で安定的に実行させることができる。
【0094】
<移動制御の第4実施形態>
第4実施形態では、
図8(C)に示したヘッドユニット4の追加退避移動及びウェハカメラ32の追加進入移動に類する具体例を示す。ウェハカメラ32によるダイ認識処理では、ダイ7aの浮き等に起因する認識エラーや、予め作成されているウェハマップで「不良品ダイ」と指定されたダイ7aの検出によって、ウェハ7上の「良品ダイ」の消費が進行することがある。このため、ウェハカメラ32によるウェハ7の撮像位置が、予定よりも-Y側(ヘッドユニット4に接近する側)にシフトすることがある。この場合、ヘッドユニット4を干渉リミットラインCL1の位置で待機させていると、両ユニットの干渉が発生し得る。従って、ヘッドユニット4の追加退避移動及びウェハカメラ32の追加進入移動が必要となる。
【0095】
図15(A)~(D)は、第4実施形態におけるヘッドユニット4(他方ユニット)及びウェハカメラ32(一方ユニット)の移動制御を説明するための模式図である。
図15(A)は、ウェハ7において次にウェハカメラ32で撮像(ダイ認識処理/所要の動作)が行われるダイ7aの群の位置を模式的に示している。これら撮像予定のダイ7aのXY座標(第1位置)に基づいて、ウェハカメラ32を基準として、ヘッドユニット4との干渉を回避する干渉リミットラインCL1(第1干渉リミットライン)が設定される。
【0096】
図15(B)は、干渉リミットラインCL1に依拠した動作を、ウェハカメラ32及びヘッドユニット4が実行している状態を示している。すなわち、ウェハカメラ32は、予定されたダイ7aの撮像を行い、ヘッドユニット4は干渉リミットラインCL1を+Y側に超過しないギリギリの位置で待機している。
【0097】
図15(C)は、撮像予定のダイ7a群に不良品ダイ7a-Badが検出された状態を示している。不良品ダイ7a-Badの代替ダイが、撮像予定としていたダイ7aと同じ行に存在しない場合、ウェハ7における-Y側の次の行に配列されているダイ7a-Nが撮像対象となる。つまり、ウェハカメラ32が当初予定していた撮像位置が、ダイ7a-NのXY座標(第2位置)の位置へ、-Y側にシフトすることになる。このシフトに応じて、新たな干渉リミットラインCL1(第2干渉リミットライン)が設定される。
【0098】
図15(D)は、-Y側にシフトするよう更新された干渉リミットラインCL1に依拠した動作を、ウェハカメラ32及びヘッドユニット4が実行している状態を示している。すなわち、ウェハカメラ32は、代替のダイ7a-Nの撮像を行い、ヘッドユニット4は更新後の干渉リミットラインCL1を+Y側に超過しないギリギリの位置で待機する。第4実施形態によれば、ウェハカメラ32の作業領域の変更に合わせて、最適な干渉リミットラインCL1を設定することができる。
【0099】
[上記実施形態に含まれる発明]
本発明の一局面に係る部品移載装置は、複数個の部品が配置された部品配置エリアを有する部品供給部と、前記部品配置エリアと所定の部品移載部との間の上方空間を第1移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品をピッキングし、前記部品移載部へ前記部品を移動する部品移載ユニットと、前記部品配置エリアと所定の待機位置との間の上方空間を第2移動軸に沿って水平方向に移動可能であり、前記部品配置エリアにおいて前記部品を撮像するカメラユニットと、前記部品移載ユニットの前記第1移動軸に沿った移動、及び前記カメラユニットの前記第2移動軸に沿った移動を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記部品配置エリアの上方空間において前記部品移載ユニットと前記カメラユニットとが並存した場合に両者が干渉する干渉エリア内に、前記部品移載ユニット及び前記カメラユニットのいずれか一方ユニットを基準として、他方ユニットの進入可能範囲を定める干渉リミットラインを設定し、前記他方ユニットの移動範囲を、前記干渉リミットラインを超過しない範囲に規制する。
【0100】
この部品移載装置によれば、部品移載ユニットは第1移動軸に沿って、カメラユニットは第2移動軸に沿って、各々独立して水平移動する。さらに、両ユニットとも部品配置エリアの上空に移動可能であるので、両者が干渉する干渉エリアが発生する。このような部品移載装置おいて、移動制御部は、前記干渉エリア内に干渉リミットラインを設定し、他方ユニットの移動範囲を規制する。換言すると、一方ユニットが干渉エリア内に存在している場合に、他方ユニットを前記干渉エリアへ進入させないのではなく、干渉リミットラインまでは移動可能とする。このため、前記一方ユニットに続いて前記他方ユニットが前記干渉エリアの所定の作業位置で所要の動作を行うシーケンスが設定されている場合に、前記他方ユニットを前記作業位置へより速く到達させることが可能となる。従って、両ユニットの干渉を回避しながら、タクトロスを抑制することができる。
【0101】
上記の部品移載装置において、前記移動制御部は、前記一方ユニットが前記干渉エリア内において所要の動作を実行している間、前記他方ユニットを前記干渉リミットライン又はその近傍まで移動させて待機状態とすることが望ましい。
【0102】
この部品移載装置によれば、次に干渉エリアで所要の動作を行う他方ユニットを、干渉リミットライン又はその近傍まで移動させて待機させることができる。従って、タクトロスを最小限に抑制することができる。
【0103】
上記の部品移載装置において、前記移動制御部は、前記一方ユニットの前記干渉エリアからの退避移動と、他方ユニットの前記干渉エリアへの進入移動とを、互いに重複する期間内に実行するものであって、前記第1移動軸に沿って移動する部品移載ユニットと、前記第2移動軸に沿って移動するカメラユニットとが互いに干渉しないよう、前記退避移動及び前記進入移動の各々の加速度及び移動速度を設定することが望ましい。
【0104】
この部品移載装置によれば、干渉エリアから退避する一方ユニットを追い掛けるようにして、他方ユニットが前記干渉エリアへ進入する。このため、干渉エリアにおける一方ユニットから他方ユニットへの作業遷移を速やかに行わせることができる。また、両ユニットについての前記加速度及び移動速度の設定により、一方ユニットを追い掛ける他方ユニットが、前記一方ユニットに干渉しないようにすることができる。
【0105】
この場合、前記移動制御部は、前記退避移動と前記進入移動とを、同一の加速度及び移動速度に設定することが望ましい。
【0106】
この部品移載装置によれば、両ユニットが同一の加速度及び移動速度で移動するので、一方ユニットと、これを追い掛ける他方ユニットとの間に、確実に干渉が発生しないようにすることができる。
【0107】
上記の部品移載装置において、前記移動制御部は、前記一方ユニットの前記退避移動について所定の第1加速度及び第1移動速度を設定した場合に、前記進入移動として、前記他方ユニットが前記第1加速度及び前記第1移動速度で移動する前記一方ユニットに対して干渉しない範囲における、最速の加速度及び移動速度となる第2加速度及び第2移動速度を設定することが望ましい。
【0108】
この部品移載装置によれば、一方ユニットを追い掛ける他方ユニットが、当該一方ユニットに対して干渉寸前となる加速度及び移動速度で移動される。従って、タクトロスを極限まで削減することが可能となる。
【0109】
上記の部品移載装置において、前記移動制御部は、前記一方ユニットの前記退避移動において、前記一方ユニットが前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアから脱出するまでの区間では所定の高速の退避移動速度に設定し、前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアから脱出した後の区間では、前記高速よりも低速の退避移動速度に設定することが望ましい。
【0110】
この部品移載装置によれば、一方ユニットは高速で干渉エリアから脱出する一方で、前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアからの脱出後は低速で移動する。このため、他方ユニットの前記干渉リミットライン若しくは前記干渉エリアへの進入を速やかに行わせると共に、一方ユニットについて前記エリアからの脱出後に必要な動作を、低速移動状態で安定的に実行させることができる。
【0111】
上記の部品移載装置において、前記移動制御部は、前記一方ユニットが前記干渉エリア内の第1位置で所要の動作を実行するに際して、前記他方ユニットとの干渉を回避する第1干渉リミットラインを設定し、続いて前記一方ユニットが前記干渉エリア内の前記第1位置とは異なる第2位置で所要の動作を実行するに際して、前記第1干渉リミットラインとは異なる位置に第2干渉リミットラインを設定し、前記他方ユニットを前記第2干渉リミットライン又はその近傍まで移動させて待機状態とすることが望ましい。
【0112】
この部品移載装置によれば、干渉リミットラインが、一方ユニットの干渉エリア内の作業位置によってフレキシブルに変更される。すなわち、前記一方ユニットの干渉エリア内における作業態様に応じて、最適な干渉リミットラインを設定することができる。
【0113】
上記の部品移載装置において、前記部品配置エリアは、ダイシングされたウェハが配置されるエリアであって、前記部品はダイであることが望ましい。また、前記部品移載ユニットは、前記ダイを吸着するヘッドを有するヘッドユニットであり、前記カメラユニットは、前記ウェハを撮像するウェハカメラであり、前記部品移載部は、前記ダイが実装される基板が配置される基板配置部であることが望ましい。
【0114】
この部品移載装置によれば、ダイシングされたウェハからダイを吸着し、基板に前記ダイを実装する部品実装装置において、ヘッドユニットとウェハカメラとを干渉させることなく、タクトロスを削減することができる。
【0115】
以上説明した本発明に係る部品移載装置によれば、部品配置エリアから部品をピッキングする部品移載ユニットと、前記部品エリアにおいて部品を撮像するカメラユニットとを備えた部品移載装置において、タクトロスを低減することができる。