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特許7522933アーク放電の点弧時にエネルギーを制限する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】アーク放電の点弧時にエネルギーを制限する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/067 20060101AFI20240718BHJP
   B23K 10/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B23K9/067
B23K10/00 502C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023527730
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021083682
(87)【国際公開番号】W WO2022117605
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】20211316.3
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アウマイア・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマニンガー・フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ムス・ミヒャエル
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-122913(JP,A)
【文献】特開平9-38771(JP,A)
【文献】特開昭53-29246(JP,A)
【文献】特開昭63-56359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/251968(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19507649(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/067
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接機器(100)を安全に動作させる方法であって、
溶接機器(100)の低電圧側(21)に発生する低電圧パルス(P(U1))が溶接機器(100)の高電圧側(22)に発生する高電圧パルス(P(U2))に変換され、
点弧動作及び/又はアイドリング動作中に、高電圧パルス(P(U2))を用いて、電極(17)と工作物(W)の間にアーク放電(arc)が点弧される方法において、
点弧動作、アイドリング動作及び溶接動作の中の一つ以上の動作時に、開始時点(Ta)から終了時点(Te)にまで及ぶ時間窓(T)が規定されており、前記時間窓(T)中に、前記電極(17)で発生する点弧エネルギー量(E)が特定されて、エネルギー制限値(G)と比較されることと、
前記エネルギー制限値(G)を上回った場合に、時間窓(T)内での更なる高電圧パルス(P(U2))を阻止するためのアクション(A)が発動されることとを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記時間窓(T)中に、高電圧パルス(P(U2))の高電圧エネルギー量(E2)が合算されることと、
当該高電圧エネルギー量(E2)が、電極で発生する点弧エネルギー量(E)を特定するために使用されることとを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
一つの高電圧パルス(P(U2))のエネルギー量が予め設定されることと、
前記時間窓(T)中に合算される高電圧エネルギー量(E2)を特定するために、前記時間窓(T)中に発生する高電圧パルス(P(U2))が計数されて、一つの高電圧パルス(P(U2))の前記エネルギー量と乗算されることとを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記時間窓(T)中に、低電圧パルス(P(U1))の低電圧エネルギー量(E1)が合算されることと、
前記低電圧エネルギー量(E1)が、電極で発生する点弧エネルギー量(E)を特定するために使用されることとを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
一つの低電圧パルス(P(U1))のエネルギー量が予め設定されることと、
前記時間窓(T)中に合算される低電圧エネルギー量(E1)を特定するために、前記時間窓(T)中に発生する低電圧パルス(P(U1))が計数されて、一つの低電圧パルス(P(U1))の前記エネルギー量と乗算されることとを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
時間単位当たりの低電圧パルス(P(U1))のエネルギー量が予め設定されることと、
前記時間窓(T)中に合算される低電圧エネルギー量(E1)を特定するために、前記時間窓(T)中に発生する低電圧パルス(P(U1))のパルス時間長の合計が特定されて、時間単位当たりの低電圧パルス(P(U1))の前記エネルギー量と乗算されることとを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法において、
アーク放電(arc)の点弧を支援するために、補助電圧パルス(P(U3))が高電圧側(22)に投入されることと、
補助電圧エネルギー量(E3)を特定するために、前記時間窓(T)中に補助電圧パルス(P(U3))の補助電圧エネルギー量(E3)が合算されることと、
前記補助電圧エネルギー量(E3)が、電極(17)で発生する点弧エネルギー量(E)を特定するために使用されることと、
前記アクション(A)の発動によって、前記時間窓(T)内での更なる補助電圧パルス(P(U3))が阻止されることとを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
補助電圧パルス(P(U3))が高電圧パルス(P(U2))と時間的に同期すること、或いは高電圧パルス(P(U2))が補助電圧パルス(P(U3))と時間的に同期すること、有利には、補助電圧パルス(P(U3))と高電圧パルス(P(U2))とが重なり合うことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法において、
一つの補助電圧パルス(P(U3))のエネルギー量が予め設定されることと、
前記時間窓(T)中に合算される補助電圧エネルギー量(E3)を特定するために、前記時間窓(T)中に発生する補助電圧パルス(P(U3))が計数されて、一つの補助電圧パルス(P(U3))の前記エネルギー量と乗算されることとを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の方法において、
時間単位当たりの補助電圧パルス(P(U3))のエネルギー量が予め設定されることと、
前記時間窓(T)中に合算される補助電圧エネルギー量(E3)を特定するために、前記時間窓(T)中に発生する補助電圧パルス(P(U3))のパルス時間長の合計が特定されて、時間単位当たりの補助電圧パルス(P(U3))の前記エネルギー量と乗算されることとことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7から10までのいずれか一つに記載の方法において、
前記時間窓(T)においてエネルギー制限値(G)と点弧エネルギー量(E)との差から残存エネルギー量が特定されて、当該残存エネルギー量に基づき、発動されるアクション(A)によって時間窓(T)内での更なる補助電圧パルス(P(U3))及び/又は高電圧パルス(P(U2))を阻止するのか否かを特定することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法において、
前記時間窓(T)を連続的にリアルタイムにスライドされて、前記終了時点(Te)が現在の時点と一致するようにすることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載の方法において、
アクション(A)として、更なる低電圧パルス(P(U1))、従って更なる高電圧パルスP(U2)及び/又は補助電圧パルス(P(U3))の発生がブロックされることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一つに記載の方法において、
溶接機器(100)が溶接動作にある場合に、前記アクション(A)の発動が停止されることを特徴とする方法。
【請求項15】
低電圧側(21)と高電圧側(22)を有する溶接機器(100)のためのエネルギー制限ユニット(5)において、
前記エネルギー制限ユニット(5)が、溶接機器(100)の点弧動作、アイドリング動作及び溶接動作の中の一つ以上の動作時に、開始時点(Ta)から終了時点(Te)にまで及ぶ時間窓(T)中に電極(17)で発生する点弧エネルギー量(E)を特定するように構成された少なくとも一つのエネルギー特定ユニット(51)を有することと、
前記エネルギー制限ユニット(5)が、点弧エネルギー量(E)を所与のエネルギー限界値(G)と比較するように構成された少なくとも一つのエネルギー比較ユニット(52)を有することと、
前記エネルギー制限ユニット(5)が、少なくとも一つのブロックユニット(53)を有し、当該ブロックユニット(53)は、エネルギー限界値(G)を上回った場合に、時間窓(T)内における電極(17)での更なる点弧エネルギーの発生を阻止するためのアクション(A)を発動するように構成されていることとを特徴とするエネルギー制限ユニット。
【請求項16】
請求項15に記載のエネルギー制限ユニット(5)において、
溶接機器(100)の溶接動作を溶接機器(100)の点弧動作及び/又はアイドリング動作から弁別して、少なくとも一つのエネルギー特定ユニット(51)、少なくとも一つのエネルギー比較ユニット(52)及び少なくとも一つのブロックユニット(53)の中の一つ以上を溶接動作時には停止させ、点弧動作及び/又はアイドリング動作時には作動させるように構成された検出ユニット(16)が配備されていることを特徴とするエネルギー制限ユニット。
【請求項17】
低電圧側(21)に低電圧パルス(P(U1))を発生させるように構成された低電圧源(Q1)と、電極(17)と工作物(W)の間でアーク放電(arc)を点弧させるために、低電圧パルス(P(U1))を高電圧側(22)に印加される高電圧パルス(P(U2))に変換する変換ユニット(20)と、請求項15又は16に記載の少なくとも一つのエネルギー制限ユニット(5)とを有する溶接機器(100)であって、S
ブロックユニット(53)が、低電圧側(21)での更なる低電圧パルス(P(U1))、高電圧側(22)での更なる高電圧パルス(P(U2))及び高電圧側(22)での更なる補助電圧パルス(P(U3))を阻止することによるアクション(A)によって、時間窓(T)内における電極(17)での更なる点弧エネルギーの発生を阻止するように構成されていることを特徴とする溶接機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接機器を安全に動作させる方法であって、溶接機器の低電圧側に発生する低電圧パルスを溶接機器の高電圧側に発生する高電圧パルスに変換し、点弧動作中に、この高電圧パルスを用いて電極にアーク放電を点弧させる方法に関する。更に、本発明は、低電圧側と高電圧側を有する溶接機器のためのエネルギー制限ユニット、並びに低電圧側に低電圧パルスを発生させるように構成された低電圧源と、低電圧側に発生させた低電圧パルスを高電圧側の高電圧パルスに変換して、高電圧側において電極と工作物の間にアーク放電を点弧させる変換ユニットと、本発明によるエネルギー制限ユニットとを有する溶接機器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの溶接機器では、低電圧パルスを高電圧パルスに変換している。それらの高電圧パルスは、大抵100マイクロジュール(μJ)~10ジュール(J)のエネルギーを有し、電極でアーク放電を点弧させる点弧プロセス中に使用される。点弧プロセス後に、燃焼するアーク放電により、本来の溶接プロセスが実行され、その場合、当然のことながら、点弧動作と比べて、遥かに大きなエネルギー量が電極で発生する。特許文献1は、パルスパケットパケットに纏められた点弧パルスを用いたアーク放電の非接触式点弧方法を開示している。それによって、点弧プロセス時に出力されるエネルギー量を大きく低減している。特許文献2は、溶接プロセス中に工作物に出力されるエネルギー量を監視する形態を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】オーストリア特許登録第413953号明細書
【文献】国際特許公開第2012/162582号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、溶接機器を安全に動作させる方法及び溶接機器のためのエネルギー制限ユニットを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、この課題は、点弧動作時に、開始時点から終了時点にまで及ぶ時間窓が規定され、この時間窓中に、電極で発生する点弧エネルギー量を特定して、エネルギー制限値と比較し、このエネルギー制限値を上回る場合に、時間窓内における電極での更なる点弧エネルギーを阻止するためのアクションを発動することによって解決される。更に、この課題は、エネルギー制限ユニットを用いて解決され、このエネルギー制限ユニットは、溶接機器の点弧動作時に、開始時点から終了時点にまで及ぶ時間窓中に、電極で発生する点弧エネルギー量を特定するように構成されたエネルギー特定ユニットを有する。このエネルギー制限ユニットは、この点弧エネルギー量を所与のエネルギー制限値と比較するように構成されたエネルギー比較ユニットを有する。このエネルギー制限ユニットは、更に、エネルギー制限値を上回る場合に、時間窓内における電極での更なる点弧エネルギーを阻止するアクションを発動するように構成されたブロックユニットを有する。更に、この課題は、低電圧源を有し、この低電圧源が低電圧側に低電圧パルスを発生させるように構成され、アーク放電を点弧させるために、この低電圧パルスを高電圧側に加わる高電圧パルスに変換する変換ユニットを有し、本発明によるエネルギー制限ユニットを有し、ブロックユニットが、そのアクションにより、時間窓内において、低電圧側での更なる低電圧パルス、高電圧側での更なる高電圧パルス及び高電圧側での更なる補助電圧パルスの中の一つ以上を阻止することによって、時間窓内における電極での更なる点弧エネルギーの発生を阻止するように構成された溶接機器によって解決される。有利には、このエネルギー制限値は、規定された時間期間に関して、0.01~100ジュール、有利には、0.1~10ジュール、特に有利には、0.5~5ジュールの範囲内にある。更に、4ジュール/秒のエネルギー制限値を追求することもできる。
【0006】
それにより、点弧動作、アイドリング動作、及び有利には溶接動作の中の一つ以上の動作時において、電極に対して規定された点弧エネルギー量がエネルギー制限値を上回らないことを保証することができ、それにより、溶接機器の使用者が、点弧プロセス時に、電極に接触するか、或いは電極に触れた場合に危険な、或いは健康に有害な電流ショックを受けることを防止できる。場合によっては、アーク放電が発生しないにも関わらず、高電圧パルスが溶接バーナーの電極に印加されるので、溶接者にとって、溶接動作と比べて、点弧動作又はアイドリング動作中に高電圧側で高電圧パルスに接触する可能性が高くなる。それに対して、低電圧パルスは、溶接機器内でしかこれに触れることができないので、溶接者が低電圧側での低電圧パルスと直に接触することは起り難い。溶接動作の場合には、エネルギーがほぼ完全に工作物を介して流れて、溶接者が燃焼するアーク放電に介入することが起り難いので、電極で発生する高電圧パルス(と、場合によっては、補助電圧パルス(以下を参照))は、溶接者にとって、さほど重大ではない。更に、エネルギー制限は、或る環境下では、溶接動作時にも望ましいことがあり、そのため、溶接動作時にも、点弧エネルギーがエネルギー制限値を上回るのかを検査することができ、上回った場合に、アクションを発動することができる。溶接動作とは、電極と工作物の間で少なくとも時間的に維持されて、工作物の表面の溶融、即ち、工作物の表面の組織改変又は少なくとも工作物の表面の一般的な改変を引き起こすような高いエネルギーのアーク放電を工作物内又は工作物上に投入することであると理解する。更に、溶接動作とは、100ジュール/秒よりも大きな、10ジュール/秒よりも大きな、或いは4ジュール/秒よりも大きな電力量による工作物へのエネルギーの投入であると理解する。有利には、溶接動作中には、アーク放電が既に燃焼しており、それに対して、点弧動作時に、アーク放電が点弧される。点弧動作とは、電極の先端と工作物の間にイオン化経路を最初に発生させること及び/又はアーク放電を最初に発生させること、並びにアーク放電の消滅後に電極の先端と工作物の間にイオン化経路を再度発生させること及び/又はアーク放電を再度発生させることであると理解する。更に、点弧動作とは、4ジュール/秒以下の電力量による工作物へのエネルギー投入及び/又はガス経路へのエネルギー投入であると理解する。アイドリング動作は、溶接機器の溶接準備の達成と点弧動作の開始の間の時間を規定する。点弧エネルギー量は、ハードウェアユニット及び/又はソフトウェアユニットで特定することができる。点弧エネルギー量の特定は、有利には、冗長性に基づき高い安全性を保証するために、複数の形態で特定される。
【0007】
有利には、時間窓中に、高電圧パルスの高電圧エネルギー量が合算されて、この高電圧エネルギー量が、電極で発生する点弧エネルギー量を特定するために使用される。これは、例えば、時間窓内に発生する高電圧パルスを積分することによって行うことができる。
【0008】
更に、時間窓中に合算された高電圧エネルギー量を特定するために、低電圧パルスのエネルギー量を予め設定し、時間窓中に発生する高電圧パルスを計数して、この一つの低電圧パルスのエネルギー量と乗算することができる。有利には、(特に、補助電圧パルスが規定されていない場合(以下を参照)に)高電圧エネルギー量が点弧エネルギー量に等しいと見做される。一定数の高電圧パルスを高電圧パルスパケットパケットに纏めることができ、一つの高電圧パルスの時間長は、数ナノ秒~数マイクロ秒であるとすることができる。そのため、一つの低電圧パルスパケットの、従って、一つの高電圧パルスパケットの全体的なエネルギー量を知ることができる。それにより、合算された高電圧エネルギー量を特定するために、ここでも時間窓中に低電圧パルスパケットの数を計数することができる。
【0009】
時間窓中に低電圧パルスの低電圧エネルギー量を合算して、この低電圧エネルギー量を、電極で発生するエネルギー量を特定するために使用するのが特に有利である。低電圧パルスは、同じ時間期間内において、(算定可能な損失及び/又は計算可能な損失及び/又は一定である損失を除いて)対応する高電圧パルスと同じエネルギー量を有する。それにより、低電圧側で発生する低電圧エネルギー量を測定することによって、電極に加わる高電圧エネルギー量を特定することが可能である。それにより、低電圧エネルギー量は、点弧エネルギー量を特定するために使用することができる。有利には、(特に、補助電圧パルスが規定されない場合(以下を参照)に)低電圧エネルギー量が点弧エネルギー量に等しいと見做される。低電圧側での低電圧エネルギー量の測定は、安価であり、高電圧側での(等価の)高電圧エネルギー量の測定よりも妨害を受け難い。高電圧パルスの電圧は、1kV~50kVの範囲内、例えば、約10kVであるとすることができる。低電圧エネルギー量の特定は、例えば、時間窓内の低電圧パルスの積分によって特定することができる。
【0010】
有利には、時間窓中に合算される低電圧エネルギー量を特定するために、一つの低電圧パルスのエネルギー量を予め設定し、時間窓中に発生する低電圧パルスを計数して、この一つの低電圧パルスのエネルギー量と乗算する。それにより、時間窓中の低電圧エネルギー量の精確な特定が可能である。
【0011】
低電圧エネルギー量を特定するために、低電圧パルスに対して、時間単位当たりのエネルギー量を予め設定することもできる。この場合、時間を計測するための物理的な単位としての時間単位は、秒sとして、ミリ秒msとして、或いは有利には、マクロ秒μsとして予め与えることもできる。一つの時間窓内において、この時間窓内に発生する全ての低電圧パルスのパルス時間長の合計が既知の場合、この時間窓内の低電圧エネルギー量を特定するために、この時間窓内の低電圧パルスのパルス時間長の合計を単位時間当たりの所与のエネルギー量と乗算することができる。低電圧パルスのパルス時間長を特定するために、この時間窓内の全ての個々の低電圧パルスのパルス時間長をソフトウェア技術及び/又はハードウェア技術により特定することができ、したがって決定又は測定することができる。この場合、単位時間当たりのエネルギー量は、有利には、J/μs単位で表すことができる。
【0012】
一定数の高電圧パルスが高電圧パルスパケットに纏められる場合、それに対応して、低電圧パルスも低電圧パルスパケットに纏めることができる。一つの低電圧パルスパケットのエネルギー量が既知の場合、時間窓中に合算される低電圧エネルギー量を特定するために、時間窓中に、低電圧パルスパケットの数を計数することができる。
【0013】
アクションとして、更なる低電圧パルスの発生をブロックすることができ、それにより、さらに高電圧パルスの発生もブロックされる。そのために、ブロックユニットは、アクションとして更なる低電圧パルスの発生をブロックするように構成することができる。ブロックユニットは、低電圧パルスの発生をブロックするために、低電圧パルスを発生するための、従って、高電圧パルスのために配備されたパルス発生ユニットに能動的に介入するように構成することができる。それにより、時間窓内に更なる低電圧パルスが発生しないことを保証できる。溶接動作に関して、点弧動作と同じエネルギー制限値を、または異なるエネルギー制限値も規定することができる。点弧動作のためのエネルギー制限値をアイドリング動作と異なるエネルギー制限値にすることもできる。溶接動作、点弧動作及びアイドリング動作に対して発動すべきアクションが異なるようにすることもでき、その場合、異なるアクションによって、それぞれ時間窓内において、電極での更なる点弧エネルギーの発生が防止される。
【0014】
溶接機器が溶接動作時にある場合に、低電圧エネルギー量の合算、低電圧エネルギー制限値との比較及びアクションの発動の中の一つ以上を停止することができる。しかし、溶接機器が溶接動作時にある場合に、低電圧エネルギー量の合算、低電圧エネルギー制限値との比較及びアクションの発動の中の一つ以上が作動するようにすることもできる。
【0015】
溶接機器の溶接動作を溶接機器の点弧動作及び/又はアイドリング動作から弁別して、エネルギーエネルギー特定ユニット、エネルギー比較ユニット及びブロックユニットの中の一つ以上を溶接動作時に場合によっては停止させるとともに、点弧動作及び/又はアイドリング動作時に場合によっては作動させるように構成された検出ユニットを配備することができる。
【0016】
アーク放電の点弧又は再点弧は、電極で発生する高電圧パルスによって行われる。点弧プロセスの実行後に、溶接電圧が電極に印加され、それによって、溶接電流が流れる。溶接プロセス中は、大きな電力出力が望ましいので、溶接動作中はエネルギー制限を停止することができる。
【0017】
溶接機器の異なる動作状態(溶接動作、点弧動作、アイドリング動作等)の弁別は、電流の流れ、全体的な電流の流れ及び/又は補助電流の流れを評価することによって非常に速く精確に行うことができる。更に、この評価は、溶接機器に割り当てられたインバータで直接的に行うことができ、それによって、追加的な遅延無しに動作状態を識別して、エネルギー制限ユニットの安全機能を直ちに作動させることができる。そのため、検出ユニットでの電流の流れの測定によって、同じくアーク放電の点弧が実行される時点を特定することができる。それによって、システム全体のエネルギー制限を安全に関連する時点に限定することができる。通常はインバータの外部で行われるプロセス電流測定及び/又はプロセス電圧測定と比べて、測定速度、測定データの評価及び測定の妨害の受け易さに関して、直にインバータで直接的に電流測定及び/又は電圧測定する方が明らかに有利である。それによって、この形式での測定が、安全に厳しい用途及び安全に関連する用途に対しても有利に使用される。
【0018】
しかし、溶接機器が交流電圧溶接に対して設計されている場合、電極で発生する溶接電流は、有利には、周期的に発生するセロ交差を有する。ゼロ交差中にアーク放電が途切れることを防止するために、例えば、200~300Vであるとすることができる、追加的な補助電圧、特に、補助直流電圧を設けることができる。直流電圧溶接では、通常、アーク放電を消滅させる可能性があるゼロ交差は溶接プロセス中に生じない。そのため、直流電圧溶接用に構成された溶接機器では、一般的に補助電圧パルスは設けられない。補助電圧パルスは、高電圧パルスと同様に溶接バーナーの電極に印加され、それにより、点弧動作中及び/又はアイドリング動作中において、溶接者にとって同程度に使用可能である。
【0019】
アーク放電ハンド溶接プロセス(E-hand溶接)、MIG/MAG溶接プロセス(金属不活性ガス溶接/金属活性ガス溶接)又はWIG溶接プロセス(タングステン不活性ガス溶接)などの二つ以上の溶接プロセスが行われるマルチプロセス溶接機器では、同様に、直流電圧溶接のために補助電圧源を使用することが考えられる。このようにして、例えば、プロセスを切り換える際の安定性を、例えば、直流電圧溶接から交流電圧溶接に切り換える際の安定性を向上させることができる。しかし、特に、MIG/MAG溶接時において、直流電圧溶接のために補助電圧源を使用することによって、アーク放電の途切れに対抗することもできる。
【0020】
有利には、アーク放電の点弧を支援するために、補助電圧源が高電圧側に設置される。この場合、補助電圧エネルギー量を特定するために、時間窓中に補助電圧パルスの補助電圧エネルギー量が合算され、この補助電圧エネルギー量が、電極で発生する点弧エネルギー量を特定するために使用される。アクションの発動によって、時間窓内での更なる補助電圧パルスが阻止される。
【0021】
特に、安全に関連する時間窓内でのみ、即ち、点弧中でありかつゼロ交差中でない時にのみ補助電圧エネルギー量の制限が行われることを保証するために、交流電圧溶接のために補助電圧パルスの使用に関連して、アーク放電の点弧とゼロ交差時のアーク放電の維持とを弁別することができる。
【0022】
補助電圧パルスを発生させるために、溶接機器は、少なくとも一つの補助電圧源を有することができる。補助電圧パルスは、アーク放電の点弧を改善し、例えば、100V~1kVの範囲内、有利には、200V~300Vの範囲内にすることができる。補助電圧パルスは、数マイクロ秒~数ミリ秒の時間長を有する。
【0023】
更に、補助電圧パルスのパルス時間長は、ソフトウェア又はハードウェアに基づき制限することができ、その結果、補助電圧パルスのパルス時間長は、例えば、点弧動作時には最長でも40μsであるか、例えば、溶接動作時には最長でも600μsであるか、或いはその両方である。
【0024】
補助電圧パルスが設けられている場合、補助電圧エネルギー量と高電圧エネルギー量の合計から、或いは補助電圧エネルギー量と低電圧エネルギー量の合計から点弧エネルギー量を特定するのが有利である。
【0025】
補助電圧パルスは、高電圧パルスと時間的に同期する、有利には、重なり合うことができる。更に、高電圧パルスは、補助電圧パルスと時間的に同期する、有利には、重なり合うことができる。それにより、溶接電流のゼロ交差時のアーク放電の維持を容易にすることができる。この同期のために、高周波(HF)点弧ユニットと補助電圧源との間でフィードバック信号を使用することができる。これは、同期のために、電圧測定が不要となり、それにより、妨害又は避けられない遅延も生じないとの利点を有する。このフィードバック信号は、例えば、高周波(HF)点弧ユニットの制御毎に発生させて、インバータに、従って補助電圧源に送信することができる。インバータは、有利には、高周波(HF)点弧ユニットの充放電プロセスの遅延時間を知っており、それ自身のサイクル時間及び補助電圧源の遅延時間も知っており、それによって、高電圧パルスと同期して補助電圧源を作動させることができる。更に、この場合でも、又もや高電圧源を補助電圧源と同期して作動させることができる。精確な同期を可能にするために、高周波パルスの発生時及び補助電圧パルスの発生時に相応の電圧が実際に電極に印加されるまでの全体的な遅延時間(プリント実行時間、スイッチングプロセス等)を考慮するのが有利である。それによって、高周波パルスを補助電圧の印加の直前、直後又はその最中に位置付けることができて、用途に応じて点弧特性を最適化できるように、用途に応じて補助電圧源を始動させることが可能である。
【0026】
時間窓中に合算される補助電圧エネルギー量を特定するために、1つの補助電圧パルスのエネルギー量を予め設定することができ、時間窓中に発生する補助電圧パルスを計数して、一つの補助電圧パルスのエネルギー量と乗算する。この補助電圧エネルギー量は、時間窓内の補助電圧パルスの積分によっても特定することができる。
【0027】
補助電圧パルスに関しても、補助電圧エネルギー量を計算するために、単位時間当たりのエネルギー量、例えば、同様にJ/μs単位のエネルギー量を予め設定することが可能である。補助電圧パルスにより運ばれる補助電圧エネルギー量を特定するために、ソフトウェア技術及び/又はハードウェア技術に基づき、所与の補助電圧パルスのパルス時間長を特定し、それにより、時間窓内に発生する補助電圧パルスのパルス時間長の合計を決定することができる。それにより、時間窓内に補助電圧パルスにより運ばれる補助電圧エネルギー量は、時間窓内に発生する補助電圧パルスのパルス時間長の合計を時間単位当たりの所与のエネルギー量と乗算することによって計算することができる。
【0028】
アクションとして、例えば、補助電圧源を停止することによって、時間窓内での更なる補助電圧パルスの発生を阻止することもできる。
【0029】
時間窓内のエネルギー制限値と点弧エネルギー量の差から残存エネルギー量を特定して、この残存エネルギー量に基づき、発動するアクションによって、時間窓内で更なる補助電圧パルス及び/又は高電圧パルスを阻止するのかどうかを特定することもできる。
【0030】
溶接機器が溶接動作中である場合に、補助電圧エネルギー量の合算、補助電圧エネルギー制限値との比較及び更なるアクションの発動の中の一つ以上を停止することができる。
【0031】
エネルギー制限ユニットは、独立した構成部品として、さもなければ溶接機器の一体的な構成部分として、或いは例えば、インバータ又は高周波(HF)点弧ユニットなどの溶接コンポーネントの一体的な構成部分として実現することができる。エネルギー特定ユニット、エネルギー比較ユニット及びブロックユニットの中の一つ以上は、エネルギー制限ユニットの一体的な構成部分であるか、或いは分散して配置することができる。
【0032】
時間窓を連続的にスライドさせて、終了時点が現在の時点と一致するようにするのが特に有利である。それにより、現在の時点に終了する時間窓中に低電圧パルスのエネルギー量が連続的に特定される、即ち、謂わばこの時間窓だけ過去に遡って観察される。これは、少なくとも時間窓の時間期間に渡って低電圧パルスを記録することによって、簡単な手法で実現することができる。そのため、観測時間当たりのエネルギー量のリアルタイム測定が得られる。この観測時間は、有利には、0.01~60秒の範囲内、有利には、0.25~5秒の範囲内、特に有利には、0.5~2秒の範囲内にある。更に、1秒の観測時間を追求することもできる。
【0033】
エネルギー制限値を上回る前に、時間窓内で現在発生する点弧エネルギー量を特定して、この点弧エネルギー量に基づき、低電圧パルス及び/又は補助電圧パルスの発生を予め事前に阻止するのが特に有利である。したがって、点弧エネルギー量がエネルギー制限値から大きく離れている場合、更なる低電圧パルス及び補助電圧パルスを阻止する代わりに、低電圧パルス又は補助電圧パルスの発生だけを阻止することが、後者の場合にもエネルギー制限値に達しないことが十分に起こり得る時には、有利であり得る。
【0034】
以下において、本発明の有利な実施例を模式的に本発明を限定しない形で図示する図1a~5dを参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】エネルギー比較ユニット、エネルギー特定ユニット及びブロックユニットを備えたエネルギー制限ユニットの模式的な構成図
図1b】低電圧エネルギー特定ユニットを備えたエネルギー制限ユニットを有する高周波(HF)点弧ユニットの模式的な構成図
図1c】エネルギー特定ユニットを備えた独自のエネルギー制限ユニットを有する補助電圧源の模式的な構成図
図2a】高電圧側での高電圧パルスと時間窓のシーケンスのグラフ図
図2b】高電圧側で発生する補助電圧パルスと時間窓のシーケンスのグラフ図
図2c】高電圧側で発生する高電圧パルス、高電圧パルスと少なくとも部分的に同期する補助電圧パルス及び時間窓のシーケンスのグラフ図
図3】それぞれ補助電圧パルスと高電圧パルスが発生するが、それぞれエネルギー制限値を上回らない二つの時間スロットのグラフ図
図4a】補助電圧パルス及び互いに同期する高電圧パルスが発生して、エネルギー制限値を上回る第一の時点におけるシフト可能な時間窓のグラフ図
図4b】補助電圧パルス及び互いに同期する高電圧パルスが発生するが、エネルギー制限値を上回らない第二の時点におけるシフト可能な時間窓のグラフ図
図4c】補助電圧パルス及び互いに同期する高電圧パルスが発生して、エネルギー制限値を上回る第三の時点におけるシフト可能な時間窓のグラフ図
図5a】本発明の第一の実施構成のブロック接続図
図5b】本発明の第二の実施構成のブロック接続図
図5c】本発明の第三の実施構成のブロック接続図
図5d】溶接機器の模式的な構成図
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1aに模式的に図示された溶接機器100は、低電圧側21に低電圧パルスP(U1)を発生させるように構成された低電圧源Q1を備える。この低電圧源Q1が低電圧U1を発生して、次に、パルス発生ユニット23が、この低電圧U1から低電圧パルスP(U1)を発生するようにすることもできる(図1には、図示されていない)。この溶接機器100は、更に、電極17と工作物Wの間でアーク放電arcを点弧させるために、低電圧パルスP(U1)を高電圧側22に加わる高電圧パルスP(U2)に変換する変換ユニット20を備えている。図1aでは、更に、エネルギー特定ユニット51、エネルギー比較ユニット52及びブロックユニット53を備えた本発明によるエネルギー制限ユニット5が配備されている。このエネルギー制限ユニット5は、溶接機器10と接続可能であり、溶接機器100の点弧動作時に、開始時点Ta~終了時点Teにまで及ぶ時間窓T中に溶接機器の電極17で発生する点弧エネルギー量Eを特定するように構成されている。このエネルギー比較ユニット52は、点弧エネルギー量Eを所与のエネルギー制限値Gと比較するように構成されている。このブロックユニット53は、エネルギー制限値Gを上回った場合に、時間窓T内における電極17での更なる点弧エネルギーの発生を阻止するためのアクションAを発動するように構成されている。図1aでは、点弧エネルギー量Eの特定とアクションAの発動が、点線の矢印に基づき単に模式的に図示されている。以下の図において、点弧エネルギー量Eを特定して、アクションAを発動する手法を記述するための実施例を説明する。
【0037】
図1bは、アーク放電arcを発生させる溶接機器100の高周波(HF)点弧ユニット3の例を図示している。この高周波(HF)点弧ユニット3には、基本的に低電圧側21に加わる低電圧U1(例えば、24V)を高電圧側22に加わる高電圧U2(例えば、9.8kV)に変換するように構成された変換ユニット20が配備されている。低電圧U1を発生させるために、低電圧源Q1が低電圧側21に配備されている。更に、低電圧U1から低電圧パルスP(U1)を発生させるパルス発生ユニット23が配備されている。これは、例えば、図1bに示される通り、パルス発生ユニット23により駆動されるスイッチSによって行うことができる。低電圧側21に発生する低電圧パルスP(U1)は、変換ユニット20を用いて高電圧側22に変圧され、それにより、高電圧側22に、高電圧パルスP(U2)が発生する。この高電圧パルスP(U2)を用いて、点弧プロセス中に、電極17と工作物Wの間でアーク放電が点弧される。
【0038】
図1bでは、変換ユニット20が単に低電圧側21の主巻線と高電圧側22の二次巻線を有する変圧器として図示されているが、この変換ユニット20は、当然のことながら、別の構成部品、特に、別の変圧器から構成することもできる。低電圧側21に、入力コンデンサC1が配備され、高電圧側22に、出力コンデンサC2が配備されている。
【0039】
アーク放電arcを発生させるために時間窓T内に出力される低電圧エネルギー量E1が低電圧制限値G1を上回らないことに配慮すべきである。本発明では、この目的のために、エネルギー制限ユニット5が配備されている。このエネルギー制限ユニット5は、点弧動作時又はアイドリング動作時に、開始時点Taから終了時点Teにまで及ぶ時間窓T内に電極17に導入される低電圧エネルギー量E1を特定するように構成されたエネルギー特定ユニット51を備えている。更に、このエネルギー制限ユニット5は、低電圧エネルギー量E1を所与の低電圧制限値G1と比較するように構成されたエネルギー比較ユニット52を備えている。更に、このエネルギー制限ユニット5には、低電圧制限値G1を上回った場合に、時間窓T中における更なる低電圧パルスP(U1)とそれに続く変換された高電圧パルスP(U2)の発生を阻止するためのアクションAを発動するように構成されたブロックユニット53が配備されている。それにより、時間窓T中に低電圧エネルギー量E1が更に上昇して、低電圧制限値G1を上回ることが防止される。
【0040】
図1bでは、エネルギー特定ユニット51が、有利には、低電圧側21で低電圧パルスP(U1)の低電圧エネルギー量E1を特定するように構成されている。当然のことながら、別の実施形態において、高電圧側22で高電圧パルスP(U2)の高電圧エネルギー量E2を特定するようにエネルギー特定ユニット51を構成することも想定可能である。更に、図1bでは、ブロックユニット53が、例えば、更なる低電圧パルスP(U1)の発生を阻止するために、パルス発生ユニット23に介入するように構成されている。
【0041】
低電圧側21において、それぞれ複数の低電圧パルスP(U1)を低電圧パルスパケットP1に纏めて、高電圧側22に変圧し、それにより、高電圧側22で複数の高電圧パルスP(U2)から成る高電圧パルスパケットP2を発生させることができる。図2aは、それぞれ低電圧パルスP(U1)から成る相応の低電圧パルスパケットP1と単一の低電圧パルスP(U1)の変換により点弧プロセス中に高電圧側22で発生する、それぞれ高電圧パルスP(U2)から成る高電圧パルスパケットP2と単一の高電圧パルスP(U2)の(計画された)シーケンスの例を図示している。この高電圧パルスパケットP2は、例えば、1kHz~100kHzの周波数で発生し、高電圧パルスP(U2)は、例えば、100kHz~10MHzの周波数で発生する。
【0042】
図1bに図示されたエネルギー特定ユニット51は、例えば、合算された低電圧エネルギー量E1を、ひいては点弧エネルギー量Eを取得するために、低電圧側21で低電圧パルスパケットP1の数を計数して、一つの低電圧パルスパケットP1のエネルギー容量(例えば、1ジュール)と乗算するように構成することができる。
【0043】
更に、高電圧側22に追加して投入できる補助電圧パルスP(U3)を発生させる補助電圧源10を溶接機器100に配備することができる。これらの補助電圧パルスP(U3)は、アーク放電arcの点弧を改善する役割を果たすことができる。
【0044】
図1cは、溶接変圧器7に配置された補助電圧源10と組みわせたエネルギー制限ユニット5の実施構成を図示している。ここでは、それぞれ一つの前置接続された電流制限用のチョークコイルとコンデンサの組合せと、それぞれ一つの後置接続された平滑及びエネルギー貯蔵用のコンデンサとを有する二つの整流器Rが補助電圧源10内に在る。ここでは、補助電圧パルスP(U3)を発生させるために、それぞれ一つのスイッチSを操作するように構成された二つの補助パルス発生ユニット15が配備されている。この実施例では、補助電圧源10内には、負と正の補助電圧パルスP(U3)を出力できるようにするための二つの整流器Rが図示されている。このエネルギー制限ユニット5内には、エネルギー特定ユニット51が在り、点弧動作時に、時間窓T中における補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3を特定するように構成されている。これは、ここでは、補助電圧パルスP(U3)を合算することによって行われる。点弧エネルギー量Eが補助電圧パルスP(U3)によってのみ発生される場合、点弧エネルギー量Eは補助電圧エネルギー量E3に等しい。このエネルギー比較ユニット52は、補助電圧エネルギー量E3を所与の補助電圧制限値G3と比較するように構成されている。このブロックユニット53は、補助電圧制限値G3を上回った場合に、時間窓T内での更なる補助電圧パルスP(U3)を阻止するためのアクションAを発動するように構成されており、このことは、ここでは、補助電圧源10に介入することによって行われる。
【0045】
低電圧パルスP(U1)、したがってそれから変換された高電圧パルスP(U2)と、更に補助電圧パルスP(U3)とが時間窓T内に発生する場合、点弧エネルギー量Eは、補助電圧エネルギー量E3と低電圧エネルギー量E1から、或いは補助電圧エネルギー量E3と高電圧エネルギー量E2から成ることができる。例えば、このことは、図1bと図1cに示された実施形態の組合せに相当する。
【0046】
エネルギー制限ユニット5、ブロックユニット53、エネルギー特定ユニット51及びエネルギー比較ユニット52の中の一つ以上は、マイクロプロセッサベースのハードウェア、例えば、各機能を実施する相応のソフトウェアが実行されるコンピュータ又はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)から構成することができる。エネルギー制限ユニット5、ブロックユニット53、エネルギー特定ユニット51及びエネルギー比較ユニット52の中の一つ以上は、集積回路、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、利用者プログラム可能なゲートアレー(FPGA)又は構成可能なプログラマブル論理素子(CPLD)から構成するか、それと並行してマイクロプロセッサで監視するか、或いはその両方を行うこともできる。しかし、エネルギー制限ユニット5、ブロックユニット53、エネルギー特定ユニット51及びエネルギー比較ユニット52の中の一つ以上は、アナログ回路又はアナログコンピュータから構成することもできる。それらの混合形態も考えられる。同様に、異なる機能を同じハードウェア及び/又は異なるハードウェア部分に実装することが可能である。個々のユニットをハードウェアとソフトウェアの両方で実現した混合形態が特に有利である。
【0047】
図2a~2c及び4a~4cは、それぞれ時点Taで始まり、時点Teで終わる時間窓Tを図示している。図3には、二つの時間窓T1及びT2が図示されている。例えば、一秒を一つの時間窓Tの時間長に対する値として仮定することができる。
【0048】
図2aでは、時間窓T内に、例えば、それぞれ高電圧パルスP(U2)から成る三つの高電圧パルスパケットP2だけが発生する。これらの高電圧パルスパケットP2は、対応する低電圧パルスパケットP1から変換されたものなので、時間窓T内では、低電圧パルスパケットP1と同じ数の高電圧パルスパケットP2が提供され、それにより低電圧パルスP(U1)と同じ数の高電圧パルスP(U2)も提供される。そのため、時間窓T内の高電圧パルスP(U2)は、同じ時間窓T内の低電圧エネルギー量E1に等しい高電圧エネルギー量E2を有する。
【0049】
低電圧パルスP(U1)とそれから変換された高電圧パルスP(U2)だけが提供され、しかしながら補助電圧パルスP(U3)が提供されない場合に、点弧エネルギー量Eに等しい合算された低電圧エネルギー量E1を得るために、時間窓T内に低電圧側21で発生する低電圧パルスP(U1)の数を、例えば、図1bに図示されたエネルギー特定ユニット51の実施形態を用いて計数して、一つの低電圧パルスP(U1)のエネルギー容量(例えば、1ジュール)と乗算することができる。しかし、低電圧パルスP(U1)とそれから変換された高電圧パルスP(U2)だけが提供され、しかしながら補助電圧パルスP(U3)が提供されない場合に、ここでも点弧エネルギー量Eに等しい合算された高電圧エネルギー量E2を得るために、時間窓T内に高電圧側22で発生する高電圧パルスP(U2)を計数して、一つの高電圧パルスP(U2)のエネルギー容量(例えば、1ジュール)と乗算するエネルギー特定ユニット51を配備することもできる。
【0050】
図2bでは、時間窓Tが、補助電圧パルスP(U3)の例示的な(計画された)シーケンスから構成される。これらの補助電圧パルスP(U3)は、点弧プロセス中に高電圧側22に投入される。この図では、時間窓T内に、例えば、合計して補助電圧エネルギー量E3を有する四つの補助電圧パルスP(U3)が図示されている。
【0051】
合算された補助電圧エネルギー量E3を得るために、例えば、図1cに図示された補助電圧エネルギー特定ユニット51を用いて、時間窓T内に発生する補助電圧パルスP(U3)の数を補助電圧源10で直に計数して、一つの補助電圧パルスのエネルギー容量(例えば、1ジュール)と乗算することができる。補助電圧パルスP(U3)だけが提供され、しかしながら低電圧パルスP(U1)とそれから変換される高電圧パルスP(U2)が提供されない場合、この補助電圧エネルギー量E3は点弧エネルギー量Eに等しい。
【0052】
図2cは、高電圧側22で発生する、高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)の組合せを図示している。更に、図2cでは、高電圧パルスP(U2)が、有利には、少なくとも部分的に補助電圧パルスP(U3)と時間的に同期している。高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)を同期して加えることは、パルスコンビネーションKと呼ばれる。更に、この図は、一つの時間窓T内における四つのパルスコンビネーションKを、即ち、四つの高電圧パルスP(U2)とそれと同期する四つの補助電圧パルスP(U3)を図示している。この時間窓T内のパルスコンビネーションKは、(低電圧エネルギー量E1に等しい)高電圧エネルギー量E2と補助電圧エネルギー量E3から成る点弧エネルギー量Eを有する。
【0053】
更に、エネルギー特定ユニット51は、時間窓T内において、低電圧パルスP(U1)の低電圧エネルギー量E1(又はそれと等価の高電圧パルスP(U2)の高電圧エネルギー量E2)を合算し、別個に補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3を合算することもできる。これは、別個のエネルギー特定ユニット51で行うこともできる。更に、点弧エネルギー量Eは、補助電圧エネルギー量E3と低電圧エネルギー量E1(又はそれと等価の高電圧エネルギー量E2)の和に等しい。
【0054】
合算されたエネルギー量Eは、エネルギー比較ユニット52に転送される。例えば、例示的に4ジュールのエネルギー制限値Gが、同様に例示的に1秒に定義された時間窓Tに対して事前に規定される。更に、例えば、パルスコンビネーションKが1ジュールのエネルギー量に相当すると仮定
される。比較ユニット52は、図2cでは時間窓Tに関して、点弧エネルギー量Eがエネルギー制限値G(1ジュールの4倍)に等しいことを確認し、それにより、アクションAは発動されない。これは、その時々の時間窓T内において、更なる高電圧パルスP(U2)が、したがって更なる低電圧パルスP(U1)(場合によっては、更なる補助電圧パルスP(U3))が許容されないことを意味する。そのため、比較ユニット52は、それらの印加を阻止することをブロックユニット53に伝える。ブロックユニット53は、それに対応するアクションAを発動する。これは、例えば、エネルギー制限ユニット5において、図1b又は図1cに対応して、パルス発生ユニット23及び/又は補助パルス発生ユニット15に直に作用することによって行うことができる。
【0055】
複数の時間窓Tを設けることができ、個々の時間窓T中に、それぞれそこに含まれる低電圧パルスP(U1)(又はパルスパケットP1)の合算された低電圧エネルギー量E1が低電圧エネルギー制限値G1と比較される。場合によっては、更に、個々の時間窓T中に、それぞれそこに含まれる補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3を合算して、補助電圧エネルギー制限値G3と比較することができる。
【0056】
対応する時間窓T内おいてエネルギー制限値Gを上回った場合、当該時間窓T内において、更なる高電圧パルスP(U2)及び/又は補助電圧パルスP(U3)が阻止される。これらの時間窓Tは、(少なくとも部分的に)重なり合うか、或いは互いに接することができる。更に、例えば、加工物へのエネルギー投入をドキュメント化したり、例えば、安全と関連する機能を同時に保証するなどのために、異なる使用目的に関して異なる時間窓Tを構築することができる。
【0057】
図3には、例えば、第一の時間窓T1と、単なる例として第一の時間窓T1と境界を接する第二の時間窓T2とが時間窓Tとして図示されている。第一の時間窓T1内では、四つの補助電圧パルスP(U3)と三つの高電圧パルスP(U2)が発生している。そのことから、三つの低電圧パルスP(U1)も第一の時間窓T1内に発生していると推定することができる。ここでは、単なる例として第一の時間窓T1に接する第二の時間窓T2内では、同様に四つの補助電圧パルスP(U3)と三つの高電圧パルスP(U2)が発生している。これらの時間窓T1及びT2の時間長がそれぞれ一秒であり、高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)のパルスコンビネーションKがそれぞれ1ジュールであると見做すと、第一の時間窓T1内の点弧エネルギー量Eも、第二の時間窓T2内の点弧エネルギー量Eも4ジュールのエネルギー制限値Gを下回る。そのため、二つの時間窓T1及びT2の何れにおいてもアクションAは発動されない。
【0058】
しかし、常に現在の時点で終了し、したがって、現在時間と共に移動する時間窓Tを規定するのが特に極めて有利である。このことは、時間窓Tが時間軸t上を右に向かってスライドし、それにより、現在の時点において常にそれぞれ時間窓Tだけリアルタイムに過去に遡って観察することを意味する。したがって、現在の時点は、常に終了時点Teに一致する。これは、少なくとも時間窓Tに等しい時間に渡る、高電圧パルスP(U2)と、場合によっては発生する補助電圧パルスP(U3)との時間的な推移を記録することによって達成できる。
【0059】
この場合、現在の時点に終了する時間窓T内において、既にエネルギー制限値Gに到達したことが確認された場合、時間窓Tのスライドによって、対応する低電圧パルスP(U1)(したがって高電圧パルスP(U2)と場合によっては補助電圧パルスP(U3))が時間窓Tから外れ、それにより、時間窓T内の点弧エネルギー量Eが最早エネルギー制限値Gに達しなくなるまで、更なる低電圧パルスP(U1)(したがって更なる高電圧パルスP(U2))の発生と、(補助電圧パルスP(U3)が提供される場合には)更なる補助電圧パルスP(U3)の発生とが阻止される。
【0060】
図4a~4cでは、それぞれ時間窓Tが右に向かってスライドされる。現在の時点は、終了時点Teと一致し、時間窓Tが、開始時点Taにまで遡って観察される。再び、高電圧パルスP(U2)とそれと同期する補助電圧パルスP(U3)から構成されるパルスコンビネーションKが1ジュールのエネルギー量を有し、エネルギー制限値Gが4ジュールに等しいことを前提とする。
【0061】
図4aでは、時間窓T内に四つのパルスコンビネーションKが発生し、それにより、エネルギー制限値Gを上回っていないが、その値に到達している。エネルギー制限値Gに到達しているので、新たなパルスコンビネーションKに対する要求が、時点TeでアクションAによって阻止され、それにより、これら四つのパルスコンビネーションKが時間窓T内に存在する限り、更なるパルスコンビネーションKは発生されない。この場合、時間窓Tは、連続的に右に向かってスライドされる。
【0062】
図4aと関連する図4bは、第一のパルスコンビネーションKが時間窓Tから既に外れており、それによって、更なるパルスコンビネーションKが時間窓T内で発生される、より遅い時点を図示している。更に、図4bには、発生されないパルスコンビネーションKが同じく破線で図示されており、この更なるパルスコンビネーションKが図4aに示されている通り発生されないので、十字記号は、このパルスコンビネーションKが点弧エネルギー量Eの計算に含まれないことを再度明確にする。それにより、図4bでは、又もや点弧エネルギー量Eがエネルギー制限値Gに等しくなる。これは、少なくとも一つの更なるパルスコンビネーションKが時間窓Tから外れるまで、時間窓T内において、更なるパルスコンビネーションKが許容されないことを意味する。そのため、アクションAによって、スライド可能な時間窓T内に更なるパルスコンビネーションKが発生することが阻止される。既に事前に阻止されたパルスコンビネーションKは、このパルスコンビネーションKが計画されただけであり、しかし、アクションAによって能動的に阻止されており、そのため、エネルギーが電極7に出力されていないので、その後の点弧エネルギー量Eの特定の際にも算入されないことに留意されたい。
【0063】
図4cでは、時間窓Tが更に右に向かってスライドされており、現在の終了時点Teにおいて、更なるパルスコンビネーションKがさらに提供されることになる。しかし、この破線で図示されたパルスコンビネーションKは、点弧エネルギー量Eがエネルギー制限値Gを上回らないことを保証するために、アクションAの発動によってここでも阻止される(これは、又もや十字記号によって表示されている)。
【0064】
図5aは、本発明の第一の模式的な実施構成を図示している。電源1内には、特に、プロセスコントローラ2、内部高周波(HF)点弧ユニット3、補助電圧源10を備えた内部インバータ4及びエネルギー制限ユニット5が在る。このプロセスコントローラ2は、エネルギー制限ユニット5、高周波(HF)点弧ユニット3及びインバータ4、従って、補助電圧源10と接続されている。このエネルギー制限ユニット5は、更に、高周波(HF)点弧ユニット3及びインバータ4、従って、補助電圧源10と接続されている。内部高周波(HF)点弧ユニット3は、高電圧パルスP(U2)に変換される低電圧パルスP(U1)を発生させる。そのために、高周波(HF)点弧ユニット3は、特に、上述した通り、低電圧源Q1、パルス発生ユニット23及び変換ユニット20を有する。統合された補助電圧源10を備えたインバータ4は、補助電圧パルスP(U3)を供給する。このプロセスコントローラ2は、アーク放電arcを点弧するために、高周波(HF)点弧ユニット3に低電圧パルスP(U1)を要求し、補助電圧源10を備えた内部インバータ4には、補助電圧パルスP(U3)を要求する。高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)は、共に、溶接ケーブル及び溶接トーチSBを介して電極17に供給される。電極17の先端と工作物Wの間に、アーク放電arcが点弧される。この実施構成では、エネルギー特定ユニット51、エネルギー比較ユニット52及びブロックユニット53から成る単一のエネルギー制限ユニット5が配備されており、エネルギー特定ユニット51が、時間窓T内において、低電圧パルスP(U1)の低電圧エネルギー量E1と補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3から構成される点弧エネルギー量Eを合算する。点弧エネルギー量Eがエネルギー制限値Gを上回ることに基づき実行すべき所望のエネルギー制限(即ち、時間窓T内での更なる点弧エネルギーEの阻止)の際に、アクションAの発動によって、低電圧パルスP(U1)が、従って高電圧パルスP(U2)及び/又は補助電圧パルスP(U3)が阻止される。更に、高周波(HF)点弧ユニット3とインバータ4が電源1の外に存在することも可能である。
【0065】
図5bは、本発明の別の模式的な実施構成を図示している。電源1内には、特に、プロセスコントローラ2、内部高周波(HF)点弧ユニット3、補助電圧源10を備えた内部インバータ4及び二つの別個の互いに通信するエネルギー制限ユニット5が在る。このプロセスコントローラ2は、二つのエネルギー制限ユニット5、高周波(HF)点弧ユニット3及びインバータ4、従って、補助電圧源10と接続されている。これら二つのエネルギー制限ユニット5は、結合
されており、更に、高周波(HF)点弧ユニット3及びインバータ4、従って、補助電圧源10と接続されている。内部高周波(HF)点弧ユニット3は、高電圧パルスP(U2)に変換される低電圧パルスP(U1)を発生させ、そのために、特に、上述した通り、低電圧源Q1、パルス発生ユニット23及び変換ユニット20を有することができる。補助電圧源10が統合されたインバータ4は補助電圧パルスP(U3)を供給する。このプロセスコントローラ2は、アーク放電arcを点弧するための低電圧パルスP(U1)及び/又は補助電圧パルスP(U3)を、高周波(HF)点弧ユニット3、及び補助電圧源10を備えた内部インバータ4において直に要求する。高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)は、纏められて、溶接ケーブル及び溶接トーチSBを介して電極17に運ばれる。電極17の先端と工作物Wの間に、アーク放電arcが点弧される。この実施構成では、二つの互いに通信するエネルギー制限ユニット5が配備されており、これらエネルギー制限ユニット5が点弧エネルギー量Eを合算する。第一のエネルギー制限ユニット5が低電圧パルスP(U1)の低電圧エネルギー量E1を合算し、第二のエネルギー制限ユニット5が補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3を合算する。更に、これら二つのエネルギー制限ユニット5の中の各々又は少なくとも一方が、低電圧パルスエネルギー量E1と補助電圧エネルギー量E3の合計である全体的な点弧エネルギー量Eを検知する。時間窓T内においてエネルギー制限値Gを上回ることによりエネルギー制限が行われる際に、少なくとも一方のエネルギー制限ユニット5によって、低電圧パルスP(U1)が、従って、高電圧パルスP(U2)及び/又は補助電圧パルスP(U3)が阻止される。そのため、この実施構成では、二つの互いに通信するエネルギー制限ユニット5が図示されており、これらエネルギー制限ユニット5が、エネルギー制限値Gを上回らないようにする役割を共に果たす。別の実施構成では、二つの別個の互いに通信するエネルギー特定ユニット51を配備することもでき、これらエネルギー特定ユニット51は、共に点弧エネルギー量Eを特定する。この別の実施構成では、点弧エネルギー量Eが、一方の中央のエネルギー制限ユニット5においてエネルギー制限値Gと比較される。更に、高周波(HF)点弧ユニット3、及び/又は補助電圧源10を備えたインバータ4が、各エネルギー制限ユニット5又はエネルギー特定ユニット51と共に電源1の外に存在し得ることも可能である。
【0066】
更に、図5bでは、第一のエネルギー制限ユニット5が、例えば、低電圧エネルギー量E1を第一の規定された制限値に制限し、第二のエネルギー制限ユニット5が、例えば、補助電圧エネルギー量E3を第二の規定された制限値に制限することも可能である。この場合、二つの制限値が異なるようにすることもできる。これら二つの内部エネルギー制限ユニット5は、共に点弧エネルギー量E1を第三の規定された制限値に制限する。この場合、二つの制限値の合計は、常に前記の規定されたエネルギー制限値G以内である。
【0067】
図5cは、本発明の第三の模式的な実施構成を図示している。電源1内には、特に、プロセスコントローラ2及びエネルギー比較ユニット52と、補助電圧源10、エネルギー特定ユニット51及びブロックユニット53を備えた内部インバータ4とが在る。この電源1の外には、独自のエネルギー特定ユニット51と独自のブロックユニット53を備えた外部高周波(HF)点弧ユニット3が配置されている。ここでは、エネルギー制限ユニット5が分散して実現されており、そのため、一つのエネルギー比較ユニット52、二つのエネルギー特定ユニット51及び二つのブロックユニット53を有し、このことは、図5cで矢印により示されている。このエネルギー制限ユニット5は、二つのエネルギー特定ユニット51をエネルギー比較ユニット52と接続することによって実現されている。このプロセスコントローラ2は、エネルギー比較ユニット52と、すなわち、内部と外部の構成部品から成るエネルギー制限ユニット5、外部高周波(HF)点弧ユニット3及びインバータ4、従って、補助電圧源10と接続されている。この外部高周波(HF)点弧ユニット3は、高電圧パルスP(U2)に変換される低電圧パルスP(U1)を発生させ、そのために、特に、上述した通り、低電圧源Q1、パルス発生ユニット23及び変換ユニット20を有することができる。補助電圧源10が統合された内部インバータ4は、補助電圧パルスP(U3)を供給する。このプロセスコントローラ2は、アーク放電arcを点弧するための低電圧パルスP(U1)及び/又は補助電圧パルスP(U3)を、外部高周波(HF)点弧ユニット3、及び補助電圧源10を備えた内部インバータ4において直に要求する。高電圧パルスP(U2)と補助電圧パルスP(U3)は、纏められて、溶接ケーブル及び溶接トーチSBを介して電極17に運ばれる。電極17の先端と工作物Wの間に、アーク放電arcが点弧される。この実施構成では、エネルギー制限ユニット5内で通信する二つの別個のエネルギー特定ユニット51が配備されており、これらのエネルギー特定ユニット51が点弧エネルギー量Eを合算する。第一のエネルギー特定ユニット51が低電圧パルスP(U1)の低電圧エネルギー量E1を合算し、第二のエネルギー特定ユニット51が補助電圧パルスP(U3)の補助電圧エネルギー量E3を合算する。このエネルギー制限ユニット5が、低電圧パルスエネルギー量E1と補助電圧エネルギー量E3の合計である全体的な点弧エネルギー量Eを検知する。時間窓T内においてエネルギー制限値Gを上回ることによりエネルギー制限が行われる際に、時間窓T内において、更なる低電圧パルスP(U1)が、従って、更なる高電圧パルスP(U2)及び/又は補助電圧パルスP(U3)がブロックユニット53からのアクションAによって阻止される。
【0068】
ここに図示された実施構成は単なる例である。ここに図示された例の外に、制限値の様々な組合せと共に、インバータ4、補助電圧源10、エネルギー制限ユニット5の内部又は外部配置、数及びエネルギー制限ユニット5の相互通信の全ての組合せが可能である。
【0069】
図5dは、本発明による二つの互いに通信するエネルギー制限ユニット5を備えた溶接機器100の回路技術的な実施構成を図示している。この溶接機器100は、電源1,溶接トーチSB及び電極17を有する。電極17は、溶接トーチSBの一端に在り、溶接トーチSBの第二端は、電源1と接続されており、電極17と工作物Wの間で、アーク放電arcが点弧され、工作物Wは、アース配線を介して、同じく電源1と接続されている。この電源1は、入力側で電気供給網AC LINEと接続されている。この電源1は、例えば、ユーザーインタフェース18を統合したプロセス制御ユニット又はプロセスコントローラ2、高周波(HF)点弧ユニット3、インバータ4、二つのエネルギー制限ユニット5、高電圧変換ユニット6、溶接変圧器7、アイドリング電圧昇圧部8、二次整流器9、補助電圧源10、転極ユニット11、主電力部12,プロセス電圧測定部13、プロセス電流測定部14及び検出ユニット16を有する。付属するエネルギー制限ユニット5を備えた高周波(HF)点弧ユニット3の例が図1bに詳しく図示され、付属するエネルギー制限ユニット5を備えた補助電圧源10の例が図1cに詳しく図示されている。電気供給網AC LINEの低周波の50/60Hz交流網電圧(単相又は複相、100V~600V)から出発して、この電圧が、主電力部12を用いて、高周波(例えば、1kHz~数百Hz)の交流電圧に変換される。この主電力部12は、プロセスコントローラ2と接続されており、このコントローラは、エネルギーの流れを開ループ制御するか、或いは閉ループ制御する。この変換された高周波交流電圧は、主巻線側の溶接変圧器7に供給されて、この変圧器がこの高周波交流電圧を、溶接プロセスに関して典型的である低電圧かつ大電流強度でもって二次巻線側に変圧する。この溶接変圧器7の二次巻線側には、例えば、中点タップを備えた全波整流器として実現された二次整流器9が在りしたがって、正及び負の出力電圧を供給できる。この二次整流器9は、インバータ4の転極ユニット11と接続されており、大部分の電流を溶接プロセスにおいて供給する。溶接変圧器7の二次巻線側には、アイドリング電圧昇圧部8が在る。このアイドリング電圧昇圧部8は、二次整流器9と並列に接続されており、例えば、60Vのアイドリング電圧を113Vにまで昇圧する役割を果たす。同様に、このアイドリング電圧昇圧部8は、正の電圧も負の電圧も供給することができる。このアイドリング電圧昇圧部8は、アーク放電arcの点弧の際に支援する形で寄与するが、結合されたチョークコイルによって制限された電流だけを供給する。更に、このアイドリング電圧昇圧部8によって、アーク放電arcの崩壊を或る程度まで防止することができる。このアイドリング電圧昇圧部8が十分でない場合、アーク放電の崩壊を防止するために、補助電圧源10が作動される。溶接変圧器7の二次巻線側には、更に、補助電圧源10も在り、この電圧源は、又もやインバータ4内に在る。更に、補助電圧源10が、そのためエネルギー制限ユニット5も、検出ユニット16を介して転極ユニット11と接続されている。この転極ユニットは、例えば、IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタなどの半導体トランジスタから構成することができる。この転極ユニット11は、アイドリング電圧昇圧部8、二次整流器9及び補助電圧源10の中の一つ以上から到来する電圧を、プロセスコントローラ2により設定された極性で電極17にスイッチングする。この検出ユニット16は、電流の流れを測定して、検知し、これにより、溶接動作/アイドリング動作/点弧動作を検出する。インバータ4内には、エネルギー制限ユニット5が在り、このユニットは、又もや補助電圧源10と接続されている。このエネルギー制限ユニット5は、図1cに図示された実施構成とほぼ同じである。溶接プロセスを制御するために、プロセス電圧測定部13とプロセス電流測定部14がプロセスコントローラ2によって使用される。このプロセスコントローラ2は、アーク放電の点弧又はアーク放電の安定化のために、高周波(HF)点弧ユニット3には高電圧パルスP(U2)を要求し、インバータ4には補助電圧パルスP(U3)を要求する。この実施例では、高周波(HF)点弧ユニット3の高電圧パルスP(U2)は、高電圧変換ユニット6を用いて溶接回路に入力結合される。高周波(HF)点弧ユニット3用のエネルギー制限ユニット5は、インバータ4用のエネルギー制限ユニット5と通信して、安全に関して厳密な点弧動作を提供する。このユーザーインタフェース18は、プロセスコントローラ2に対する使用者のためのインタフェースとしての役割を果たす。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d