(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】複数の半導体レーザを製造する方法、及び半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/22 20060101AFI20240718BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20240718BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20240718BHJP
H01S 5/02 20060101ALI20240718BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01S5/22
H01S5/40
H01S5/323
H01S5/02
H01L21/78 S
(21)【出願番号】P 2023542610
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2022051854
(87)【国際公開番号】W WO2022171447
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】102021103484.1
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネーレ ラース
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト スヴェン
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0239250(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0219305(US,A1)
【文献】特開2002-368344(JP,A)
【文献】特開2011-181604(JP,A)
【文献】特開平06-152074(JP,A)
【文献】特開平03-030490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0268775(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111344915(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザ(1)を製造する方法であって、
(a)半導体層列(2)と複数のデバイス領域(10)とを備えた基板(25)を設けるステップであって、各デバイス領域は、少なくとも1つの共振器領域(29)を有し、横方向のダイシングライン(91)によって前記共振器領域に対して垂直に、かつ縦方向のダイシングライン(92)によって前記共振器領域(29)に対して平行に境界付けられる、前記基板(25)を設けるステップ、
(b)乾式化学エッチングプロセスによって横方向の前記ダイシングラインに重なる凹部(3)を形成するステップであって、前記凹部は、それぞれ、少なくとも1つの遷移部(39)を有し、前記遷移部(39)で、前記基板の平面図において、前記凹部の側面(31)の第1のセクション(311)と前記凹部の前記側面の第2のセクション(312)が前記凹部で180°を超える角度を囲む、前記凹部(3)を形成するステップ、
(c)前記凹部の前記側面(31)に湿式化学エッチングを行って、共振器表面(30)を形成するステップ、及び、
(d)横方向及び前記縦方向の前記ダイシングラインに沿って前記基板(25)をダイシングするステップ、
を含み、
(i)前記共振器領域(29)がリッジ導波路であり、前記リッジ導波路は横方向の前記ダイシングラインに沿った拡大領域(27)を有し、前記凹部が、前記拡大領域(27)内に完全に形成され、及び/または、
(ii)前記第2のセクション(312)が、少なくとも適所で湾曲している、前記方法。
【請求項2】
前記遷移部の前記凹部の前記側面が、それぞれ湾曲しているか、またはキンクしている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移部が、横方向に最も近い共振器領域の共振器軸から見て、前記側面が直線コースから逸れる前記側面の最初の点である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移部が、前記凹部の第1の部分領域と前記凹部の第2の部分領域との間に配置され、前記第1の部分領域によって、前記共振器表面(30)が形成され、前記第2の部分領域は、前記第1の部分領域より縦方向により大きい拡張部を少なくとも適所に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移部の前記角度が、180
.001°以上359°以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移部と前記最も近い共振器領域との間の距離が最大100μmである、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記共振器領域(29)の領域において、前記共振器領域(29)に対して垂直に延びる結晶面が、ステップ(c)において露出される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体層列(2)が、窒化物化合物半導体材料ベースであり、ステップ(c)において、半導体層列(2)の(1-100)面または(10-10)面が露出される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)における前記凹部(3)が、縦方向の前記ダイシングライン(92)から離間するように形成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
隣接するデバイス領域(10)間の前記凹部(3)が、縦方向の前記ダイシングライン(92)を横切って連続的に延びている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記共振器領域(29)がリッジ導波路であり、前記リッジ導波路は横方向の前記ダイシングライン(91)に沿った拡大領域(27)を有し、前記凹部が前記拡大領域に少なくとも部分的に形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記凹部(3)が、前記拡大領域内に完全に形成される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のセクションが、少なくとも適所で湾曲している、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
半導体層列(2)及び共振器領域(29)を備える半導体レーザ(1)であって、
前記半導体レーザ(1)は、横方向に延びる2つの側面(11)の間の前記共振器領域に沿って延び、
前記半導体レーザ(1)は、横方向に延びる前記側面(11)のそれぞれに共振器表面(30)を有し、前記共振器表面(30)は、前記半導体レーザ(1)の横方向に延びる前記側面(11)からオフセットされて配置され、かつ、
前記半導体レーザ(1)は、横方向に延びる前記側面(11)のそれぞれに沿って凹部(3)を有し、前記凹部は、少なくとも1つの遷移部を有し、前記遷移部で、前記半導体レーザの平面図において、前記凹部の側面の第1のセクションと前記凹部の前記側面の第2のセクションとが、前記凹部で180°を超える角度を囲み、
(i)前記共振器領域(29)がリッジ導波路であり、前記リッジ導波路は横方向に延びる前記側面(11)に沿った拡大領域(27)を有し、前記凹部が、前記拡大領域(27)に位置し、前記凹部が、横方向に延びる前記側面(11)とは反対側の面でその周囲に沿って同じ高さの半導体材料によって囲まれ、及び/または、
(ii)前記第2のセクションが、少なくとも適所で湾曲している、
前記半導体レーザ(1)。
【請求項15】
前記凹部(3)が、前記半導体層列(2)が配置される前記半導体レーザ(1)の基板(25)内に延びている、請求項14に記載の半導体レーザ。
【請求項16】
前記共振器領域(29)が、横方向に拡大された部分(27)を有するリッジ導波路である、請求項14または15に記載の半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体レーザを製造する方法、及び半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
青色または紫外スペクトル領域で発光する半導体レーザなどの端面発光半導体レーザの製造において、半導体レーザの共振器表面を構成するファセットは、通常、スクライビング及びブレークによって製造される。ただし、このプロセスはばらつきやすく、時間とコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つの目的は、高品質の共振器表面を確実かつコスト効率よく実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、とりわけ、独立請求項に記載の方法及び半導体レーザによって解決される。さらなる実施形態及び有用性は、従属請求項の主題である。
【0005】
複数の半導体レーザを製造する方法が開示される。
【0006】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、方法は、半導体層列及び複数のデバイス領域を有する基板を設けるステップを含む。ここでのデバイス領域は、例えば、製造中に半導体レーザが現れる半導体層列を有する基板の領域に対応する。
【0007】
例えば、半導体層列は、第1の導電型の第1の半導体層と、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2の半導体層との間に位置し、放射線を発生させるために設けられた活性領域を有する。例えば、活性領域は、紫外、可視、または赤外スペクトル範囲の放射線を生成するために設けられる。
【0008】
基板は、例えば、半導体層列の成長基板である。しかしながら、基板は、成長基板とは異なる担体であってもよく、これは、半導体レーザにおけるダイシングの前に、すなわちまだウェハアセンブリ中に半導体層列に適用される。
【0009】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、各デバイス領域は少なくとも1つの共振器領域を含む。例えば、各デバイス領域は、正確に1つの共振器領域、または少なくとも2つの共振器領域を備える。共振器領域の幅、すなわち共振器軸に対して垂直な横方向の共振器領域の拡張部は、例えば、1μm以上80μm以下である。
【0010】
詳細には、共振器領域は、共振器を伝播する放射線が共振器表面間で横方向に導かれる領域であると理解される。放射線は、例えば、屈折率ガイド、またはエンハンスメントガイド(ゲインガイドとも呼ばれる)される。
【0011】
例えば、共振器領域はリッジ導波路である。あるいは、共振器領域は、例えば、横方向に制限された電流によって、共振器内でゲインガイド方式で放射線が伝播する半導体レーザの領域である。この場合、半導体層列を横方向に構造化して隆起部を形成する必要はない。
【0012】
例えば、各デバイス領域は、横方向のダイシングラインと縦方向のダイシングラインによってそれぞれ境界付けられる。ダイシングラインは、特に方法の最後に、複数の半導体レーザへのダイシングが行われる点に対応する。
【0013】
ここで、縦方向とは、共振器領域の主に延びている方向(または、共振器軸)に平行な方向とみなされる。完成した半導体レーザでは、活性領域で発生した放射線が共振器領域の共振器軸に沿って振動する。横方向は、縦方向に対して垂直に延びる。
【0014】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、方法は、横方向のダイシングラインと重なる凹部を形成するステップを含む。詳細には、凹部はまた、共振器領域の共振器軸が横方向のダイシングラインと交わる点に位置する。
【0015】
凹部は、例えば、プラズマエッチングプロセスなどの乾式化学エッチングプロセスによって生成される。半導体層列のこの構造化のために、例えばフォトレジストマスクまたはハードマスクを使用してリソグラフィプロセスを適用することができる。凹部は、例えば、半導体層列を通って適所に延びるように形成される。例えば、凹部は基板内にも延びている。
【0016】
例えば、凹部は、垂直方向、すなわち半導体層列の主に延びている面に対して垂直な方向に、0.5μm以上25μm以下の深さを有する。
【0017】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部はそれぞれ、少なくとも1つの遷移部を有し、遷移部では、基板の平面図において、凹部の側面の第1のセクションと凹部の側面の第2のセクションは、凹部で180°を超える角度を囲む。詳細には、第1のセクションと第2のセクションは互いに直接隣り合っている。詳細には、第1のセクションは、第2のセクションよりも関連する共振器領域の共振器軸の近くに配置される。例えば、少なくとも1つのそのような遷移部は、各デバイス領域または各共振器領域に関連付けられる。第1のセクションは、例えば、横方向から見て直線状に、すなわちキンクや屈曲なしに、関連する共振器領域全体にわたって延びている。
【0018】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、方法は、共振器表面を形成するために凹部の側面を湿式化学エッチングするステップを含む。湿式化学エッチングにより、材料は垂直方向だけでなく横方向にも除去することができる。乾式化学エッチングによって以前に達成された凹部の形での構造化から始めて、湿式化学エッチングを使用して、縦方向に対して垂直に走る結晶面を露出させることができる。湿式化学エッチング中、乾式化学エッチングプロセスに使用されたマスクはすでに除去されている場合もあれば、まだ半導体層列上に存在している場合もある。
【0019】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、方法は、横方向及び縦方向のダイシングラインに沿って基板をダイシングするステップを含む。基板のダイシングは、詳細には、乾式化学エッチングプロセス及び湿式化学エッチングプロセスの後に実行される。したがって、半導体レーザの共振器表面は、基板のダイシング中に形成されるのではなく、前のステップですでに形成されている。湿式化学エッチング、または乾式化学エッチング、例えばプラズマエッチングなどの化学プロセス、ソーイングまたは破断などの機械プロセス、及び/またはレーザアブレーションもしくはステルスダイシングなどのレーザ放射を使用するプロセスが、ダイシングに適している。
【0020】
複数の半導体レーザを製造する方法の少なくとも1つの実施形態では、半導体層列と複数のデバイス領域とを備えた基板が提供され、各デバイス領域は、少なくとも1つの共振器領域を有し、横方向のダイシングラインによって共振器領域に対して垂直に、縦方向のダイシングラインによって共振器領域に対して平行に境界付けられている。詳細には乾式化学エッチングプロセスによって、横方向にダイシングラインと重なる凹部が形成される。凹部はそれぞれ、少なくとも1つの遷移部を有し、遷移部では、基板の平面図において、凹部の側面の第1のセクションと凹部の側面の第2のセクションは、凹部で180°を超える角度を囲む。凹部の両側面は、湿式化学エッチングされて共振器表面を形成する。基板は、横方向と縦方向のダイシングラインに沿ってダイシングされる。
【0021】
記載された方法では、共振器表面は、2段階のエッチングプロセスによって形成することができ、共振器表面が形成された後にのみ基板がダイシングされる。したがって、ダイシング自体は、共振器表面の品質に直接的な影響を与えることはない。詳細には、スクライビングやブレークによる製造に比べて、低コストで比較的バラツキの少ない、高品質な共振器表面を高効率に製造することができる。
【0022】
凹部の側面が遷移部の領域の直線コースから逸れ、それによって側面の隣接するセクション間に180°を超える角度を形成する場合、特に滑らかな共振器表面が得られることが分かった。換言すれば、遷移部は、例えば開放屈曲部の形態の開放遷移部である。このようにして、側面の湿式化学エッチング中に平坦な共振器表面が形成され、さらなるエッチング時に、遷移部によって湿式化学エッチングによる攻撃を受ける可能性がなくなるということを特に確実に達成することができる。
【0023】
したがって、湿式化学エッチングの挙動は、エッチングによって特に滑らかな共振器表面を実現するために、凹部の形状によってターゲットを絞った形で影響を受ける。
【0024】
共振器表面の平均粗さ(rms粗さ)は、例えば50nm以下、好ましくは30nm以下、特に好ましくは5nm以下である。
【0025】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、遷移部の凹部の側面はそれぞれ、湾曲しているか、またはキンクしている。曲線コースの場合、遷移部の領域の角度は、詳細には第2のセクションの側面の接線によって決定することができる。遷移部の領域における側面の曲率は、例えば凹部の内側から見ると凸状である。
【0026】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、最も近い共振器領域の共振器軸から横方向に見た遷移部は、側面が直線コースから逸れる側面の最初の点である。この直線コースは第1のセクションによって形成され、詳細には共振器軸に対して垂直に延びる。
【0027】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、遷移部は、凹部の第1の部分領域と凹部の第2の部分領域との間に配置され、共振器表面は、第1の部分領域と第2の部分領域によって形成され、第2の部分領域は、少なくとも適所で、第1の部分領域よりも縦方向の範囲が広い。このような第2の部分領域は、横方向から見て、第1の部分領域の片側のみに配置されてもよいし、第1の部分領域の両側に配置されてもよい。横方向から見て、第2の領域は、例えば共振器領域の側方に配置される。
【0028】
本方法の少なくとも1つの実施形態によると、遷移部の角度は180,001°以上359°以下である。遷移点での直線からより大きな角度へのわずかなずれでさえ、湿式化学エッチング中のエッチング挙動に大きな変化をもたらす可能性があることが分かった。しかしながら、180°より実質的に大きい角度、例えば181°以上270°以下の角度、あるいは少なくとも270°の角度も適切であってよい。
【0029】
270°を超える角度では、縦方向に沿って見たときに、第1の部分領域と第2の部分領域とが適所で重なり得る。ただし、この場合、第2の部分領域は、共振器領域と重ならないように配置される。
【0030】
本方法の少なくとも1つの実施形態によると、遷移部と最も近い共振器領域との間の距離は、最大100μm、最大30μm、最大10μm、最大5μm、または最大1μmである。湿式化学エッチング中は遷移によりエッチング挙動が大きく変化し、この変化は数マイクロメータ以上の長さにわたって長距離に影響を与えることが分かった。便宜上、遷移部とそれに最も近い共振器領域との間の距離は、製造される共振器表面の全幅にわたって所望の低い粗さが得られる程度に大きくてよい。
【0031】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、共振器領域に対して垂直に延びる結晶面が、湿式化学エッチング中に少なくとも共振器領域のその領域で露出される。これは、例えば、結晶方向に関して高い選択性を特徴とする湿式化学エッチングプロセスによって達成することができる。
【0032】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、半導体層列は窒化物化合物半導体材料をベースにしている。
【0033】
例えば、湿式化学エッチングは、半導体層列の(1-100)面または(10-10)面を少なくとも適所で露出させる。これらの面は、m面とも呼ばれる。
【0034】
例えば、窒化物化合物半導体材料の場合、OH-イオンが形成される塩基性溶液が適している。例えば、KOH、TMAH、またはNH3を使用することができる。
【0035】
「窒化物化合物半導体材料」をベースとするとは、本文脈では、半導体層列または少なくともその一部、特に好ましくは少なくとも活性領域及び/または成長基板が、窒化物化合物半導体材料、好ましくは、AlxInyGa1-x―yN、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、及びx+y≦1を含むか、またはそれから構成されることを意味する。この材料は、必ずしも上記の式に従って数学的に正確な組成を持つ必要は無い。むしろ、材料は、例えば、1つまたは複数のドーパントと追加の成分とを有してよい。ただし、簡単にするために、上式には結晶格子の必須構成要素(Al、Ga、In、N)のみが含まれている。ただし、これらが少量の他の物質で部分的に置き換えられる及び/または補足される場合もある。
【0036】
窒化物化合物半導体材料をベースにした活性領域は、紫外、青色、または緑色のスペクトル範囲の放射線を高効率で生成することができる。
【0037】
特に平滑な共振器表面は、インジウム含有量が比較的大きい、例えばインジウム含有量yが0.10以上0.35以下の窒化物化合物半導体材料ベースの活性領域の半導体層を用いて達成できることが分かった。活性領域のそのようなインジウム含有量は、例えば青色または緑色のスペクトル範囲の放射線を生成するのに適している。
【0038】
しかしながら、記載された方法は、インジウム含有量が低い窒化物化合物半導体材料及びインジウムを含まない窒化物化合物半導体材料にも適している。さらに、この方法は、他の半導体材料、詳細には、AlxInyGa1-x-ySbuAsvP1-u―vなどの他のIII-V族化合物半導体材料、例えば黄色から赤色の放射線または赤外線にも適している。ここで、それぞれの場合、0≦x≦1、0≦y≦1、及びx+y≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、及びu+v≦1、詳細にはx≠1、y≠1、u≠1、v≠1、x≠0、y≠0、u≠0、及び/またはv≠0。
【0039】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、凹部は、縦方向のダイシングラインから例えば少なくとも1μmだけ離間するように、乾式化学エッチングプロセスによって形成される。したがって、この場合、凹部は、隣接するデバイス領域を横切って連続的に延びていない。
【0040】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、隣接するデバイス領域間の凹部は、縦方向のダイシングラインに沿って連続的に延びている。換言すれば、凹部は、複数のデバイス領域にわたって横方向のダイシングラインに沿って、あるいは基板のすべてのデバイス領域にわたって横方向に沿って連続的に延びている。例えば、凹部はトレンチ形状であり、トレンチの主に延びている方向は、横方向のダイシングラインに沿って延びており、トレンチは遷移部を含む。
【0041】
横方向に隣接する凹部は、チャネルによって互いに接続することもできる。凹部とは対照的に、チャネルは詳細には共振器領域の外側に配置される。このようなチャネルを介して、湿式化学エッチング中に個々の凹部間の媒体の交換を達成することができる。さらに、エッチング溶液による半導体材料の濡れ性も向上させることができる。チャネルの深さは、凹部の深さと同じであっても、異なっていてもよい。例えば、チャネルの深さは、凹部の深さよりも浅くても十分である可能性がある。
【0042】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、共振器領域はリッジ導波路である。半導体層列は、リッジ導波路が共振器内を伝播する放射の屈折率ガイドが行われる隆起部を形成するように、詳細には横方向に構造化される。
【0043】
この方法の少なくとも1つの実施形態によると、リッジ導波路は、横方向のダイシングラインに沿って拡大領域を有する。拡大領域では、横方向の拡張部は、残りの領域のリッジ導波路の横方向の拡張部よりも大きくなる。拡大領域は、縦方向のダイシングラインに対して横方向に延びてもよく、またはこれらのダイシングラインから離間してもよい。縦方向に沿って、拡大領域の範囲は、その方向に沿った半導体レーザの範囲に比べて小さいことが好ましい。例えば、デバイス領域内の縦方向に沿った拡大領域の範囲は、その方向に沿って製造されるデバイス領域または半導体レーザの範囲の最大20%、最大10%、または最大2%である。
【0044】
詳細には、凹部は、拡大領域に少なくとも部分的に形成することができる。例えば、凹部は、同じ高さの半導体材料から始まる横方向に沿って形成することができる。これにより、リッジ導波路の縁部の高さの変化が、製造される共振器表面の品質に影響を与えるリスクが軽減される。
【0045】
凹部は、拡大領域内に完全に形成することもできる。したがって、凹部の形成直後、凹部はその全周に沿って同じ高さの半導体材料によって囲まれる。その後、各凹部を通る横方向のダイシングラインに沿ってダイシングすると、横方向に延びる側面とは反対側の各凹部がその周囲に沿って同じ高さの半導体材料で囲まれた半導体レーザを作製することができる。換言すれば、凹部は、横方向に延びる側面から離間した各位置で同じ高さに位置する半導体材料に隣接している。
【0046】
あるいは、凹部は、関連する拡大領域を超えて横方向に沿って延びてよい。
【0047】
さらに、半導体レーザも記載されている。上述した方法は、例えば半導体レーザの製造に適している。したがって、方法に関連して説明した特徴は半導体レーザにも適用でき、またその逆も可能である。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によると、半導体レーザは、半導体層列及び共振器領域を有し、半導体レーザは、横方向に延びる2つの側面の間の共振器領域に沿って延び、半導体レーザは、横方向に延びている側面のそれぞれに共振器表面を有する。この共振器表面は側面に対してオフセットして配置されている。半導体レーザは、横方向に延びる側面のそれぞれに沿って凹部を有し、凹部は少なくとも1つの遷移部を有し、遷移部では、半導体レーザの平面図において、凹部の側面の第1のセクションと凹部の側面の第2のセクションは、凹部で180°を超える角度を囲む。
【0049】
したがって、半導体レーザの上面図では、共振器表面は、横方向に延びる側面には存在しない。ここで、対向する共振器表面間の距離は、半導体チップの縦方向に沿った長さよりも小さい。
【0050】
半導体レーザの少なくとも1つの実施形態によると、凹部は、半導体レーザの半導体層列が配置される、例えば堆積される半導体レーザの基板内に延びている。したがって、垂直方向では、凹部は半導体層列を完全に貫通する。
【0051】
半導体レーザの少なくとも1つの実施形態によると、共振器領域はリッジ導波路として形成される。
【0052】
半導体レーザの少なくとも1つの実施形態によると、リッジ導波路は、横方向に拡大領域を有する。したがって、共振器領域は、拡大領域を有するリッジ導波路によって形成される。例えば、拡大領域は、横方向に延びる最も近い側面まで少なくとも適所で延びている。あるいは、拡大領域は、横方向に延びる側面から任意の位置で離間してよい。
【0053】
半導体レーザの上面図において、凹部は、関連する拡大領域内に完全にまたは部分的にのみ配置されてよい。前者の場合、凹部はその円周に沿って、詳細には横方向に延びる側面の反対側で、同じ高さの半導体材料によって囲まれる。換言すれば、凹部は、横方向に延びる関連する側面から離間した任意の位置で同じ高さに位置する半導体材料に隣接している。
【0054】
さらなる実施形態及び有用性は、図面と併せて以下の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1-1】半導体レーザを製造する方法の例示的な実施形態を示し、A及びBはそれぞれ中間ステップを平面図で概略的に示す。
【
図1-2】半導体レーザを製造する方法の例示的な実施形態を示し、Cは中間ステップを平面図で概略的に示し、DはCの一部の拡大図を示す。
【
図1-3】半導体レーザを製造する方法の例示的な実施形態を示し、E及びFはそれぞれ中間ステップを平面図で概略的に示す。
【
図2-1】A及びBは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図2-2】Cは、平面図における中間ステップの概略図によって、方法の例示的な実施形態を示す。
【
図3】A及びBは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図4】A及びBは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図5-1】A及びBは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図5-2】C及びDは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図6-1】A及びBは、いずれの場合も、平面図における中間ステップの概略図によって、それぞれの場合における方法の例示的な実施形態を示す。
【
図6-2】Cは、平面図における中間ステップの概略図によって、方法の例示的な実施形態を示す。
【
図7】Aは、半導体レーザの例示的な実施形態を概略上面図で示し、Bは、半導体レーザの例示的な実施形態の対応する側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
同一、類似の要素、または同じ効果を有する要素には、それぞれ同じ参照符号が与えられている。
【0057】
各図は概略図であるため、必ずしも縮尺どおりではない。むしろ、個々の要素、特に層の厚さは、より良く理解するため、及び/またはより良く表現するために、誇張して示される場合がある。
【0058】
図1A~1Fを参照すると、複数の半導体レーザを製造する方法の例示的な実施形態が、それぞれ、平面図の概略表現によって示されている。ここでは、6つのデバイス領域10を有する基板25の断面が示されている。デバイス領域10はそれぞれ、横方向のダイシングライン91と、それに対して垂直に縦方向に延びるダイシングライン92の2つによって境界付けられている。
【0059】
半導体層列2は基板25上に形成され、デバイス領域10はそれぞれ共振器領域29を有する。基板は、例えば、窒化物化合物半導体材料をベースとした半導体層列のエピタキシャル堆積用のGaNまたはサファイアなど、半導体層列のエピタキシャル堆積用の成長基板である。
【0060】
記載の例示的な実施形態から逸脱して、製造される半導体レーザ1は、複数の共振器領域29を有してもよい。製造される半導体レーザは、例えば屈折率ガイド型またはゲインガイド型であってよい。
【0061】
図1Bに示すように、
図1Bに斜線で示すマスク6が、複数の開口部60を備えて基板25上に形成される。マスクは、フォトレジストマスクまたはハードマスク、例えばSiNマスクもしくはSiO2マスク、または例えばTiの金属マスクであってよい。
【0062】
開口部60のエリアでは、半導体層列を有する基板に乾式化学エッチングプロセス、例えばプラズマエッチングプロセスが施され、開口部60のエリアに凹部3が形成される(
図1C)。開口部60の形状は、半導体層列とともに基板に転写される。凹部は、横方向のダイシングライン91と重なる。凹部3は、例えば、半導体層列2を通って基板25まで延びる。
【0063】
【0064】
凹部3は、第1の部分領域35と、第1の部分領域に隣接する第2の部分領域36とを有する。第1の部分領域35は、平面図において、長方形の基本形状を有する。第2の部分領域36は、縦方向に見たとき、少なくとも適所で、第1の部分領域35よりも大きな拡張部を有する。凹部3の側面31は遷移部39を有する。遷移部において、第1の部分領域35の側面31の第1のセクション311は、第2の部分領域36の側面31の第2のセクション312と180°を超える角度αを凹部に形成する。したがって、遷移部39の領域では、凹部3が開口する。
【0065】
例えば、側面31の第1のセクション311と第2のセクション312の間の角度αは、180,001°以上359°以下であり、例えば200°、235°、270°、300°または335°である。図示の例示的な実施形態では、横方向から見たときに、第1の部分領域35は2つの第2の部分領域36の間に配置されている。これにより、凹部3のダンベル形の基本形状が得られる。しかしながら、凹部3は、第2の部分領域36を1つだけ有することもできる(
図5A~5Dを比較)。
【0066】
図1Dでは、第2の部分領域36は、例えば円または楕円の一部の形状で連続的に湾曲している。しかしながら、側面31は、第2の部分領域36のエリアの適所で直線であってもよく、それにより、直線のセクションの間にキンクや曲がりが存在し得る。
【0067】
次のステップでは、
図1Eに凹部3の矢印7で概略的に示すように、凹部3の側面31が湿式化学エッチングされ、それにより、共振器領域29のそのエリアに共振器表面30が形成される。湿式化学エッチングは、半導体材料の結晶方向に対して高い選択性を有するように行われ、それによって、製造される半導体レーザの縦方向に対して垂直に延びる結晶面が露出される。例えば、窒化物化合物半導体材料ベースの半導体層列を有する半導体レーザは、(1-100)結晶面であってよい。
【0068】
湿式化学エッチングの時点で、
図1Eに示すように、マスク6はすでに除去されている場合がある。しかしながら、湿式化学エッチングの後にのみマスク6を除去することも適切であってよい。
【0069】
次に、基板は、横方向のダイシングライン91と縦方向のダイシングライン92に沿ってダイシングされる(
図1F)。横方向のダイシングライン91に沿って、各半導体レーザの横方向に延びる側面11が形成され、縦方向のダイシングライン92に沿って、各半導体レーザの縦方向に延びる側面12が形成される(
図7A参照)。ダイシングの時点で、共振器表面30はすでに形成されているため、ダイシングプロセス自体は共振器表面30の品質に直接的な影響を及ぼさない。その結果、ダイシングプロセスに関して高度な柔軟性が得られる。例えば、ダイシングは、機械的、化学的、またはレーザ放射によって実行することができる。
【0070】
窒化物化合物半導体材料の場合、特にインジウム含有量が比較的高い、例えばインジウム含有量が10%を超える窒化物化合物半導体材料では、遷移部39における湿式化学エッチングプロセスで、180°を超える角度が提供される場合、共振器表面30を特に高品質で製造できることが分かった。したがって、遷移部39を有する凹部3の幾何学的形状は、エッチング挙動に好ましい変化をもたらし、それにより、特に粗さが低い、特に平滑な共振器表面30を得ることができる。
【0071】
原理的には、凹部3の形状は広い制限内で可変であってよい。ここで、横方向に最も近い共振器領域29の共振器軸から見た遷移部39は、側面が直線コースから逸れる側面31の最初の点であることが好ましい。一方、側面31のさらなるコースは二次的に重要なだけであり、あるセクションで直線及び/または湾曲していてよく、それにより、さらなるセクション間のさらなる遷移部は、互いに180°より小さい角度も含み得る。
【0072】
凹部3の形状のさらなる例は、
図2A~6Cに示されている。上述の手順は、凹部のこの構成についても同様に実行することができる。
【0073】
図2A~2Cに示す例示的な実施形態では、凹部3はそれぞれ、第1の部分領域35と、第1の部分領域35の両側に隣接する2つの第2の部分領域36とを有するダンベル形の基本形状を有する。
【0074】
図2Aに示す例示的な実施形態では、第2の部分領域36は、4辺の、例えば長方形または正方形の基本形状などの多角形の基本形状を有する。
図2Aでは、角度α=270°であるが、270°未満または270°より大きくてもよい(
図3A及び3Bを比較)。多角形の基本形状の角を丸くすることもできる。
【0075】
図2Bに示す例示的な実施形態では、第2の部分領域36は、例えば連続的に、関連する共振器領域29からの距離が増加するにつれて、凹部3の縦方向の範囲が増加する基本形状を有する。例えば、第2の部分領域36は、直線状に延びるセクションを備える台形の基本形状を有する。ただし、側面31の個々のセクションは、第2の部分領域36において湾曲して延びていてもよい。
【0076】
図2Cに示す例示的な実施形態では、第2の部分領域36はそれぞれ、多角形、例えば六角形の基本形状を有し、それによって、縦方向の拡張部は、共振器領域29からの距離が増加するにつれて、最初に増加し、その後減少する。
図2Cに示すように、増加領域と減少領域との間に、縦方向の範囲が一定のままである第2のサブ領域の領域も存在し得る。
【0077】
図3A及び3Bは、遷移部39における角度αが270°を超える凹部3のさらなる例示的な実施形態を示す。
【0078】
図3Aに示す例示的な実施形態では、第2の部分領域36の側面31は、上から見ると、円形のセグメントまたは楕円セグメントの形など、適所で湾曲している。
【0079】
図3Bに示す例示的な実施形態では、第2の部分領域36は、
図3Bに示す八角形の基本形状など、多角形の基本形状を有する。第2の部分領域36の側面31はまた、部分的に湾曲している部分と部分的に直線である部分とを有し得る。
【0080】
遷移部39におけるα>270°の角度により、遷移部39は、第2の部分領域36が共振器領域29に対して平面図で重なり合うことなく配置される程度まで、遷移部39の最も近くに位置する共振器領域29から便宜的に離間される。縦方向に沿って見ると、第1の部分領域35と第2の部分領域36は、適所で重なり合う。
【0081】
図4A及び4Bは、横方向に沿って隣接するデバイス領域10を横切って連続的に延びる凹部3の実施形態を示す。
【0082】
図4Aに示す例示的な実施形態では、隣接するデバイス領域10の第2の部分領域36はそれぞれ、第1のサブ領域と同じ縦方向の範囲を有する部分領域によって接続される。
図4Bに示す例示的な実施形態では、隣接するデバイス領域10の第2の部分領域36は、チャネル4によって互いに接続される。チャネル4は、いずれの場合も、横方向に沿って2つ以上のデバイス領域10わたって、特にすべてのデバイス領域10にわたって延びていてよい。チャネル4の深さは、凹部3の残りのエリアの深さに対応してもよいし、それより小さくても大きくてもよい。媒体は、湿式化学エッチングプロセス中に、例えばトレンチの形で連続的に延びる凹部3を介して、またはチャネル4を介して交換されてよい。これにより、製造される半導体レーザ1のための基板25を横断する横方向の個々の共振器表面の均一な形成が簡素化される。隣接するデバイス領域にわたって連続的に延びる凹部3を有する幾何学的形状は、第2の部分領域36の上述の構成と組み合わせることができる。
【0083】
図5A~5Dは、凹部3がそれぞれ、関連する共振器領域29の片側のみに遷移部39を有する例示的な実施形態を示す。凹部3は、第2の部分領域36を1つだけ有する。この第2の部分領域36については、
図2Aの説明が
図5Aに適用され、
図1Dの説明が
図5Bに適用され、
図2Bの説明が
図5Cに適用され、
図2Cの説明が
図5Dに適用される。
【0084】
共振器領域29の共振器軸5に関して
図5A~5Dに関連して説明した凹部3の非対称設計は、
図4A及び4Bによる実施形態と組み合わせることもできる。
【0085】
図6A~6Cによる例示的な実施形態では、共振器領域29は、いずれの場合もリッジ導波路であり、拡大領域27を有する。拡大領域27では、リッジ導波路は、残りの領域よりも横方向に広い幅を有する。垂直方向では、拡大領域27は共振器領域29の残りの部分と同じ厚さを有する。
【0086】
図6A及び6Bに示す例示的な実施形態のそれぞれにおいて、拡大領域27は、縦方向のダイシングライン92から離間される。
【0087】
ここで、
図6Aに示す例示的な実施形態では、凹部3は、拡大領域27内に完全に配置される。
図6A~6Cにおいて、凹部3はそれぞれ、
図1Dに関連して説明したような基本形状を有する。しかしながら、他の基本的な形状、特に
図2A~3Bの実施形態による形状も使用されてよい。さらに、凹部3は、
図4A及び4Bに関連して説明したように、隣接するデバイス領域10の間に連続的に延びてよい。また、凹部3については、
図5A~5Dに関連して説明したような構成も可能である。
【0088】
図6Aに示すように、凹部3はそれぞれ、拡大領域27内に完全に収まるように形成することができる。したがって、凹部3は、その全周に沿って、乾式化学エッチングプロセス前に、同じ高さの半導体材料によって囲まれる。これにより、リッジ導波路として設計された共振器領域29によって形成された隆起が、形成される共振器表面30との干渉を引き起こす危険性を低減することができる。
【0089】
図6Bに示す例示的な実施形態では、凹部3は、拡大領域27よりも横方向に大きな拡張部を有する。ここで、遷移部39は拡大領域27内に位置する。したがって、共振器表面30の形成にとって決定的な凹部の少なくとも第1のセクション311は、拡大領域27内に位置することができる。
【0090】
図6Cに示す例示的な実施形態では、基板上を上から見たときに、拡大領域27は隣接するデバイス領域10を横切って連続的に延びている。したがって、拡大領域27は縦方向のダイシングライン92と重なる。
【0091】
図6A~6Cに関連して説明した拡大領域27を備えた例示的な実施形態は、方法の上記の例示的な実施形態と組み合わせることができる。
【0092】
図7A及び
図7Bは、半導体レーザの例示的な実施形態を概略上面図及び関連する側面図で示す。例として、
図1A~1Fに関連して説明したように製造できる半導体レーザが示されている。しかしながら、例えば拡大領域27を有する共振器領域(
図6A~6Cを参照)に関する方法の様々な例示的な実施形態に関連して説明された例示的な実施形態、及び/または凹部3の実施形態(
図2A~5D参照)は、半導体レーザ1にも同様に適用可能である。
【0093】
半導体レーザ1は、基板25と、基板25上に配置された半導体層列2とを備える。半導体層列は、第1の導電型の第1の半導体層21と、第2の導電型の第2の半導体層22との間に配置された活性領域20を有し、その結果、活性領域は、pn接合に位置する。例えば、第1の半導体層はn型であり、第2の半導体層22はp型である。例えば、バンド間カスケードレーザとして設計された半導体レーザ1や量子カスケードレーザとして設計された半導体レーザ1においては、第1の半導体層21と第2の半導体層22は同じ導電型を有してもよい。第1の半導体層21と第2の半導体層22とを外部に電気的に接触させるための接触域は、図を簡略化するために
図7Bには明示していない。
【0094】
半導体レーザ1は、共振器領域29を備え、半導体レーザ1は、横方向に延びる2つの側面11の間で、縦方向、すなわち共振器軸5に沿って延びている。これに垂直に、半導体レーザ1は、縦方向に延びる側面12を有する。図示の例示的な実施形態では、共振器領域29はリッジ導波路として形成されている。活性領域20は、リッジ導波路に配置されてもよいし、リッジ導波路の下に配置されてもよい。
【0095】
しかしながら、リッジ導波路構成から離れて、共振器領域29は、ゲインガイド方式で放射線が共振器で発振する半導体レーザ1の領域であってもよい。
【0096】
横方向に延びる側面11のそれぞれに、半導体レーザは、半導体レーザ1の横方向に延びる側面11からオフセットして配置された共振器表面30を有する。共振器表面30は、共振器軸5に沿って見たとき、共振器領域29を2つの対向する側面で境界付けている。
【0097】
さらに、半導体レーザ1は凹部3を有し、凹部の側面31が共振器表面30を形成する。凹部3は、基板25内に垂直方向、すなわち、半導体層列2が主に延びている面に対して垂直に延びている。
【0098】
凹部の側面31は、横方向に見て、共振器領域29の各側の第1のセクション311と第2のセクション312の間に遷移部39を有する。遷移部39において、側面31の角度は、半導体レーザを上方から見たときに180°を超えている。第1のセクション311は共振器表面30を形成し、共振器軸に対して垂直である。第2のセクション312は、横方向に共振器領域29に直接隣り合ってよい、あるいは横方向に共振器領域29から、例えば最大100μm、最大30μm、最大10μm、または最大5μm、または最大1μmだけ離間していてもよい。半導体レーザ1の動作中、共振器領域29を伝播するレーザ放射の大部分、例えば少なくとも80%が、第1のセクション311から出射される。
【0099】
第1のセクション311は、凹部31の第1の部分領域35によって形成される。第1の部分領域は、長方形の断面を有する。第2の部分領域36は、横方向に見て両方向で第1の部分領域35に隣接し、少なくとも一部のエリアにおいて第1の部分領域35よりも縦方向に沿って大きな範囲を有する。曲がり及び/またはキンクを有する様々な基本形状、例えば
図2A~3Bに関連して説明した基本形状を第2の部分領域36に使用することができる。
【0100】
凹部31の幾何学的形状は、共振器表面30の製造中のエッチング挙動にプラスの影響を与えることができ、その結果、特に滑らかな共振器表面を製造することができる。共振器表面の平均粗さは、例えば50nm以下、好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。
【0101】
図示の例示的な実施形態から逸脱して、このような遷移部39は、
図5A~5Dに関連して説明したように、共振器領域29の片側にのみ存在してもよい。
【0102】
さらに、図示の例示的な実施形態から逸脱して、リッジ導波路として設計された共振器領域29の拡大領域27のエリアに凹部3を形成することもできる。例えば、横方向に延びる側面11の反対側では、凹部3が、その周囲に沿って、同じ高さの半導体材料によって囲まれている。換言すれば、凹部3は、横方向に延びる側面11から離間した任意の位置で同じ高さにある半導体材料に隣接している。必要に応じて、拡大領域27は縦方向に側面から離間してよい(
図6A参照)、または、拡大領域27は、半導体レーザ1と横方向に同じ範囲を有するように、縦方向の側面12まで延びていてもよい(
図6Cを参照)。同様に、凹部3は、縦方向に延びる側面12まで延びていてもよい。
【0103】
さらに、半導体レーザ1はまた、複数の共振器領域29を有し得る。
【0104】
本特許出願は、ドイツ特許出願第10 2021 103 484.1号の優先権を主張し、その開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0105】
本発明は、例示的な実施形態に基づく説明により限定されるものではない。むしろ、特に特許請求の範囲の特徴の任意の組み合わせを含む任意の新しい特徴及び特徴の任意の組み合わせは、この特徴または組み合わせ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態に明示的に記載されていなくても、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 半導体レーザ
10 デバイス領域
11 横方向に延びる側面
12 縦方向に延びる側面
2 半導体層列
20 活性領域
21 第1の半導体層
22 第2の半導体層
25 基板
27 拡大領域
29 共振器領域
3 凹部
30 共振器表面
31 凹部側面
311 第1のセクション
312 第2のセクション
35 第1の部分領域
36 第2の部分領域
39 遷移部
4 チャネル
5 共振器軸
6 マスク
60 開口部
7 矢印
91 横方向のダイシングライン
92 縦方向のダイシングライン
α 角度