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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20240718BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240718BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20240718BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240718BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240718BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240718BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240718BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W30/09
B60W30/16
B60W50/04
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
B60T7/12 C
B60T7/12 F
B60T7/12 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023550525
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2022033907
(87)【国際公開番号】W WO2023053906
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021159875
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】井上 知彦
(72)【発明者】
【氏名】増井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 健
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直紀
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-30940(JP,A)
【文献】特表2017-512696(JP,A)
【文献】特開2010-163122(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044569(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制動装置を自動制動制御する車両制御装置(10)であって、
制動装置の耐久性を判定する耐久性判定部(18)と、前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記自動制動制御の制御モードを、前記制動装置の作動を制限する制限モードに設定するモード設定部(19)とを有する制動制限判定部(17)を備え、
前記制限モードは、前記車両の減速要求の発生要因に基づいて、前記制動装置の作動の実行を制限するものであり、
前記制動制限判定部は、前記車両の減速要求があった場合に、前記制限モードと、前記減速要求の発生要因とに基づいて、前記減速要求に基づいて前記車両の制動を実行するか否かを判定する車両制御装置。
【請求項2】
前記モード設定部は、
前記車両の減速要求の発生要因と、前記制動装置の作動の実行可否との対応関係が相違する複数の制限モードを設定可能であり、
前記制動装置の耐久性に影響する所定のパラメータと、前記パラメータに対して設定した所定のモード設定閾値との比較に基づいて、前記複数の制限モードのうちから選択した制限モードを設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記減速要求の発生要因は、前記車両の前方の障害物に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記減速要求の発生要因は、前記車両の先行車および隣接車に対し、衝突を回避または軽減、または車間を維持するための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記減速要求の発生要因は、歩行者に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記減速要求の発生要因は、カーブ路に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記減速要求の発生要因は、交通信号の停止指示に対し、停止または車速を下げるための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記減速要求の発生要因は、速度規制標識または停止指示標識に対し、規制標識の車速に対応するまたは停止するための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記減速要求の発生要因は、降坂路、路面状況に対し、車速を下げるための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記減速要求の発生要因は、クルーズコントロールの車速制御に対し、車速を下げるための要因を含む請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記モード設定部が前記制限モードを設定したことを前記車両の運転者に通知する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記制動装置の耐久性が低下したことを前記車両の運転者に通知するとともに、前記車両を停車させることを前記運転者に提案する請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月29日に出願された日本出願番号2021-159875号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
車両の制動装置を自動で制動制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
クルーズコントロール(CC:Cruise Control)機能を備える車両制御装置は、例えば特許文献1に記載されているように、自車の速度維持や、先行車に対する追従制御に際して、制動装置を自動で作動させる自動制動制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-85406号公報
【発明の概要】
【0005】
安全かつ快適な走行のためにCC機能により制動装置の駆動頻度や駆動時間が増加すると、制動装置の耐久性が低下し、走行の安全性が却って損なわれることが懸念される。
【0006】
上記に鑑み、本開示は、制動装置の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる安全性の高い車両制動装置を提供することを目的とする。
【0007】
本願は、車両の制動装置を自動制動制御する第1および第2の車両制御装置を提供する。本願に係る第1の車両制御装置は、制動装置の耐久性を判定する耐久性判定部と、前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記自動制動制御の制御モードを、前記制動装置の作動を制限する制限モードに設定するモード設定部とを有する制動制限判定部を備える。前記制限モードは、前記車両の減速要求の発生要因に基づいて、前記制動装置の作動の実行を制限するものであり、前記制動制限判定部は、前記車両の減速要求があった場合に、前記制限モードと、前記減速要求の発生要因とに基づいて、前記減速要求に基づいて前記車両の制動を実行するか否かを判定する。
【0008】
第1の車両制御装置によれば、制動装置の耐久性が低下したと判定された場合には、自動制動制御の制御モードを、制動装置の作動を制限する制限モードに設定する。この制限モードは、車両の減速要求の発生要因に基づいて、制動装置の作動の実行を制限するものであり、制動制限判定部は、設定されている制限モードと、減速要求の発生要因とに基づいて、減速要求に基づいて車両の制動を実行するか否かを判定する。このため、制動装置の作動を制限して制動装置の耐久性の低下を抑制する一方で、車両の減速要求の発生要因が制動装置を作動する必要性の高い内容である場合には、確実に制動装置を作動させるような自動制動制御を実現できる。その結果、制動装置の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる安全性の高い車両制動装置を提供することができる。
【0009】
本願に係る第2の車両制御装置は、制動装置の耐久性を判定する耐久性判定部を備え、前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記制動装置の耐久性が低下したことを前記車両の運転者に通知するとともに、前記車両を停車させることを前記運転者に提案する。
【0010】
第2の車両制御装置によれば、制動装置の耐久性が低下したと判定された場合には、運転者に対して、制動装置の耐久性が低下したことを通知するとともに、車両を停車させることを提案する。この通知および提案により、制動装置を作動する必要性の高い発生要因による減速要求が生じる以前に運転者が車両を停車させれば、車両の安全性を確保できる。その結果、制動装置の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる安全性の高い車両制動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、第1実施形態に係る車両制御装置を含む車載システムであり、
図2図2は、第1実施形態に係る車両制御装置が実行する車両制御処理のフローチャートであり、
図3図3は、図2に示すモード選択処理のフローチャートであり、
図4図4は、図2に示す制動制限判定処理のフローチャートであり、
図5図5は、第2実施形態に係る車両制御装置が実行する車両制御処理のフローチャートであり、
図6図6は、図5に示す制限モード選択処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態に係る車両制御装置10を含む車載システムを示す。車載システムは、車両制御装置10と、センサ類20と、通信装置30と、被制御装置40と、を備えている。
【0013】
センサ類20は、前方監視センサ21と、側方監視センサ22と、後方監視センサ23と、自己位置推定センサ24と、車速センサ25と、操舵角センサ26と、加速度センサ27と、を備えている。センサ類20により取得された情報は、車両制御装置10に入力される。
【0014】
前方監視センサ21、側方監視センサ22、および後方監視センサ23は、それぞれ、自車の前方、側方、後方を監視する周辺監視センサである。前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23としては、画像センサ、電波レーダ、レーザレーダ、超音波センサを好適に用いることができる。
【0015】
画像センサは、CCDカメラやCMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等で構成されている。なお、画像センサは、単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23としてカメラを用いる場合、前方カメラ及び後方カメラは、自車両の車幅方向中央の所定高さ、例えばフロントガラス上端付近やリアガラス上端付近にそれぞれ取り付けられ、自車前方や自車後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮像する。側方カメラは、自車両の左右方向の両側、例えばフロントドア付近やリアドア付近に取り付けられて、自車両の左右方向の両側へ向けて所定の角度範囲で広がる領域を撮像する。
【0016】
電波レーダは、照射した電波の反射波を検出することにより、自車の周囲における物体の存否、物体と自車との距離、物体の位置、大きさ、形状、および自車に対する相対速度等を検出することができる。レーザレーダは、赤外線のレーザ光を用いることにより、電波レーダと同様に、自車の周囲における物体の存否等を検出することができる。超音波センサは、超音波を用いることにより、電波レーダと同様に、自車の周囲における物体と自車との距離等を検出することができる。これらのレーダセンサは、自車の前端部、後端部及び側端部にそれぞれ取り付けられる。所定時間ごとに自車の周囲の領域をレーダ信号で走査するとともに、自車の周囲に存在する物体の表面で反射された電磁波を受信することで、レーダセンサは、物体との距離、物体との相対速度等を物体情報として取得し、車両制御装置10に入力する。物体が先行車であれば、自車と先行車との車間距離、先行車との相対速度、先行車との相対加速度等は、先行車情報として車両制御装置10に入力する。
【0017】
自己位置推定センサ24としては、ジャイロセンサ、ヨーレートセンサ等を例示できる。ジャイロセンサは、自車両を中心に定義される直交する3軸まわりの回転角を検知し、回転角信号を車両制御装置10に出力する。ヨーレートセンサは、1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。1つのみ設置する場合には、例えば、自車の中央位置に設けられる。ヨーレートセンサは、自車の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号を車両制御装置10に出力する。
【0018】
車速センサ25は、自車の走行速度を検出するセンサであり、限定されないが、例えば、車輪の回転速度を検知可能な車輪速センサを用いることができる。車速センサ25として利用される車輪速センサは、例えば、車輪のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度に応じた車輪速度信号を車両制御装置10に出力する。
【0019】
操舵角センサ26は、例えば、車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号を車両制御装置10に出力する。ジャイロセンサは、自車両を中心に定義される直交する3軸まわりの回転角を検知し、回転角信号を車両制御装置10に出力する。
【0020】
加速度センサ27は、自車両を中心に定義される直交する3軸まわりの加速度を検知し、加速度信号を車両制御装置10に出力する。加速度センサ27は、Gセンサと称されることもある。
【0021】
通信装置30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置31を備えている。GNSS受信装置により、人工衛星によって地上の現在位置を決定する衛星測位システムからの測位信号を受信し、この測位信号に基づいて、自己位置、すなわち、自車の現在位置(経度・緯度)を推定する。GNSS受信装置31は、所定周期毎に測位信号を受信できる。測位信号を逐次受信することにより、自己位置を逐次推定できる。通信装置30はGNSS受信装置以外の通信装置を備えていてもよい。図示しないが、例えば、無線通信装置等を備えていてもよい。無線通信装置は、高度道路交通システムとの無線通信と、他の車両との車車間通信と、道路設備に設置された路側無線機との路車間通信とを実行する。これにより、自車の状況や周囲の状況に関する状況情報を交換できる。
【0022】
被制御装置40は、駆動装置41と、制動装置42と、操舵装置43と、警報装置44と、表示装置45とを備えている。被制御装置40は、車両制御装置10からの制御指令に基づいて作動するともに、運転者の操作入力によって作動するように構成されている。なお、運転者の操作入力は、車両制御装置10によって適宜処理された後に、制御指令として被制御装置40に入力されてもよい。
【0023】
駆動装置41は、車両を駆動するための装置であり、運転者のアクセル等の操作または車両制御装置10からの指令によって制御される。具体的には、内燃機関やモータ、蓄電池等の車両の駆動源と、それに関連する各構成を駆動装置41として挙げることができる。車両制御装置10は、自車両の走行計画や車両状態に応じて駆動装置41を自動で制御する機能を有している。
【0024】
制動装置42は、自車両を制動するための装置であり、センサ、モータ、バルブおよびポンプ等のブレーキ制御に関わる装置群(アクチュエータ)により構成される。制動装置42は、運転者のブレーキ操作または車両制御装置10からの指令によって制御される。車両制御装置10は、ブレーキを掛けるタイミングおよびブレーキ量(制動量)を決定し、決定されたタイミングで決定されたブレーキ量が得られるように、制動装置42を制御する。
【0025】
操舵装置43は、自車両を操舵するための装置であり、運転者の操舵操作または車両制御装置10からの指令によって制御される。車両制御装置10は、衝突回避または車線変更のために、操舵装置43を自動で制御する機能を有している。
【0026】
警報装置44は、聴覚的に運転者等に報知するための装置であり、例えば自車両の車室内に設置されたスピーカやブザー等である。警報装置44は、車両制御装置10からの制御指令に基づき警報音等を発することにより、例えば、運転者に対し、物体との衝突の危険が及んでいること等を報知する。
【0027】
表示装置45は、視覚的に運転者等に報知するための装置であり、例えば自車両の車室内に設置されたディスプレイ、計器類である。表示装置45は、車両制御装置10からの制御指令に基づき警報メッセージ等を表示することにより、例えば、運転者に対し、物体との衝突の危険が及んでいること等を通知する。
【0028】
被制御装置40は、上記以外の車両制御装置10により制御される装置を含んでいてもよい。例えば、運転者の安全を確保するための安全装置等が含まれていてもよい。安全装置としては、具体的には、自車両の各座席に設けられたシートベルトを引き込むプリテンショナ機構を備えたシートベルト装置等を例示できる。また、座席等を振動させることによって運転者に注意を促す振動装置等が含まれていてもよい。
【0029】
車両制御装置10は、駆動力及び制動力を調整することで、先行車両との目標車間距離を維持するように自車の走行速度を制御するACC(Adaptive Cruise Control)機能、自車の横滑りを防止して車両の挙動を安定化させるESC(Electronic Stability Control)機能、自車両の周囲に位置する物体に対して、自車両に対する衝突の有無を判定し、その物体との衝突を回避すべく、若しくは衝突被害を軽減すべく制御を行うPCS(Pre-Crash Safety)システムとしての機能、走行区画線への接近を阻む方向への操舵力を発生させることで、走行中の車線を維持して車両を走行させるLKA(Lane Keeping Assist)機能、隣接車線へと車両を自動で移動させるLCA(Lane Change Assist)機能等を備える。
【0030】
車両制御装置10は、物体検出部11と、自己位置推定部12と、ESC部13と、衝突回避部14と、自動運転部15と、ACC部16と、制動制限判定部17と、を備えている。車両制御装置10は、ECUであり、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。CPUがROMにインストールされているプログラムを実行することで車両制御装置10が備える各部の機能を実現する。これによって、車両制御装置10は、センサ類20および通信装置30から取得した情報に基づいて、被制御装置40に制御要求を出力することにより、自車の運転支援を実行し、ACC、ESC,PCS、LKA,LCA等を実行可能な車両制御装置として機能する。
【0031】
物体検出部11は、前方監視センサ21、側方監視センサ22、後方監視センサ23から取得した物体情報に基づいて、自車の周囲の物体を検出する。例えば、画像センサから取得される画像から算出した物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報を画像情報として取得する。レーダセンサから取得される距離情報に含まれる物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報をレーダ情報として取得する。物体検出部11は、画像情報とレーダ情報とを融合(フュージョン)して、物体を認識する。より具体的には、画像情報に含まれる物体の存在領域と、レーダ情報に含まれる物体の存在領域とに重複部が存在する場合に、物体を認識する。物体検出部11により、自車の周囲の車両や歩行者等の移動物、道路面の区画白線、交差点の信号機の赤信号の情報、横断歩道や制限速度等の交通標示、及び道路面の各種標示を検出することができる。
【0032】
自己位置推定部12は、センサ類20から取得した情報に基づいて、自車両の現在または将来の位置を推定する。将来の自車両の位置は、自車両の現在の位置に基づいて推定されてもよいし、車両制御装置10の走行計画に応じて推定されてもよい。自己位置推定部12は、自車両の現在または将来の位置に加えて、速度、加速度、回転速度等を推定可能であってもよい。上記の自車両についての各種パラメータを予測するための予測モデルとしては、特に限定されないが、例えば、等速等加速度を仮定する等速等加速度モデル、等操舵角を仮定する等操舵角モデル、等回転速度を仮定する等回転速度モデル等を用いることができる。
【0033】
ESC部13は、自己位置推定センサ24,車速センサ25、加速度センサ27から出力される情報に基づいて、車両の挙動を安定させるための演算を実行し、演算結果に基づいて、車両の速度を調整するための信号を駆動装置41や制動装置42に出力する。
【0034】
衝突回避部14は、物体検出部11により検出された自車両の周囲に位置する物体に対して、自車両に対する衝突の有無を判定し、その物体との衝突を回避すべく、若しくは衝突被害を軽減すべく制御を行うPCS(Pre-Crash Safety)システムとしての機能を有する。具体的には、自車両と物体との相対距離に基づいて、自車両と物体とが衝突するまでの時間である衝突予測時間(TTC:Time to Collision)を算出し、衝突予測時間と作動タイミングとの比較から、衝突を回避するために制動装置51、操舵装置43、警報装置44等を作動させるか否かを判定する。なお、作動タイミングとは、制動装置42等を作動させたいタイミングであり、作動させる対象によってそれぞれ設定されていてもよい。また、衝突予測時間は、自己位置推定部12が推定する自車両の現在の位置と将来の位置に基づいて算出される。
【0035】
自動運転部15は、走行計画等に従って自動運転を行い、自動駐車を実行可能に構成されている。例えば、自動運転部15は、走行区画線への接近を阻む方向への操舵力を発生させることで、走行中の車線を維持して車両を走行させるLKA(Lane Keeping Assist)機能、隣接車線へと車両を自動で移動させるLCA(Lane Change Assist)機能等を備えていてもよい。
【0036】
ACC部16は、駆動力及び制動力を調整することで、先行車両との目標車間距離を維持するように自車両の走行速度を制御するACC(Adaptive Cruise Control)機能を有するように構成されている。
【0037】
制動制限判定部17は、耐久性判定部18と、モード設定部19とを備えている。
【0038】
耐久性判定部18は、制動装置42の耐久性に影響する耐久パラメータに基づいて、制動装置42の耐久性が低下しているか否かを判定する。耐久パラメータとしては、制動装置42の温度、作動時間、作動頻度、印加電流、印加電圧等を例示できる。
【0039】
耐久性判定部18は、パラメータに対して設定した所定の耐久評価閾値との比較に基づいて、耐久性が低下しているか否かを判定する。耐久性判定部18は、1つのパラメータに対して、段階的に複数の耐久評価閾値を設定し、これらの比較に基づいて、耐久性の低下度合いを評価可能に構成されていてもよい。
【0040】
例えば、耐久パラメータについては、制動装置42の温度が高温であるほど耐久性が低下していると判定できる。このため、耐久評価閾値としての温度閾値を段階的に設定し、制動装置42の温度が、より高温の温度閾値以上となるほど、制動装置42の耐久性が低下していると判定してもよい。
【0041】
また、制動装置42の作動時間が長いであるほど耐久性が低下していると判定できる。このため、耐久評価閾値としての時間閾値を段階的に設定し、制動装置42の作動時間が、より長い時間閾値以上となるほど、制動装置42の耐久性が低下していると判定してもよい。
【0042】
また、制動装置42の作動頻度が多いであるほど耐久性が低下していると判定できる。このため、耐久評価閾値としての回数閾値を段階的に設定し、制動装置42の作動回数が、より多い回数閾値以上となるほど、制動装置42の耐久性が低下していると判定してもよい。
【0043】
また、制動装置42の印加電流が高いほど耐久性が低下していると判定できる。このため、耐久評価閾値としての電流閾値を段階的に設定し、制動装置42の印加電流が、より高い電流閾値以上となるほど、制動装置42の耐久性が低下していると判定してもよい。
【0044】
また、制動装置42の印加電圧が高いほど耐久性が低下していると判定できる。このため、耐久評価閾値としての電圧閾値を段階的に設定し、制動装置42の印加電圧が、より高い電圧閾値以上となるほど、制動装置42の耐久性が低下していると判定してもよい。
【0045】
複数の耐久パラメータを用いて評価する場合には、最も耐久性の低下度合いが大きいと評価されたパラメータに基づいて、制動装置42の耐久性を評価してもよいし、複数のパラメータの耐久性の低下度合いから総合的に制動装置42の耐久性を評価してもよい。
【0046】
モード設定部19は、制御モードを、通常モードまたは制限モードを設定する。通常モードは、制動装置42の作動の実行を制限しない、通常の制御モードである。制限モードは、車両の減速要求の発生要因に基づいて、制動装置42の作動の実行を制限する制御モードである。制動装置42の作動の実行を制限する手法としては、制動装置42の耐久性低下を軽減する手法を用いることができ、具体的には、自動ブレーキの不使用、間欠ブレーキ、エンジンブレーキの使用、シフトダウンなどを例示できる。
【0047】
制限モードは、制動装置42の作動を制限する発生要因と、制動装置42の作動を制限しない発生要因とを設定する。減速要求の発生要因としては、下記の要因1~9を例示できる。減速要求は、要因1~9のうちの少なくともいずれか1つを発生要因とする減速要求であることが好ましい。
(要因1)車両の前方の障害物に対し、衝突を回避または軽減する。
(要因2)車両の先行車および隣接車に対し、衝突を回避または軽減する。
(要因3)歩行者に対し、衝突を回避または軽減する。
(要因4)カーブ路に対し、衝突を回避または軽減する。
(要因5)車両の先行車および隣接車に対し、車間を維持する。
(要因6)交通信号の停止指示に対し、停止または車速を下げる。
(要因7)速度規制標識または停止指示標識に対し、規制標識の車速に対応するまたは停止する。
(要因8)降坂路、路面状況に対し、車速を下げる。
(要因9)クルーズコントロール(CC)機能による車速制御に対し、車速を下げる。
【0048】
上記の各要因に基づく減速要求は、車両制御装置10に含まれる運転支援の実行に関与する各構成から発生し得る。例えば、要因1~4は、衝突回避部14からの減速要求として発生する。要因5,6は、ACC部16からの減速要求として発生する。要因7,9は、自動運転部15からの減速要求として発生する。要因8は、ESC部13からの減速要求として発生する。
【0049】
モード設定部19が設定する制限モードは、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の制限モードは、それぞれ、制動装置42の作動を制限する発生要因と、制動装置42の作動を制限しない発生要因との組合せが相違するものである。すなわち、車両の減速要求の発生要因と、制動装置42の作動の実行可否との対応関係が相違する。
【0050】
例えば、要因2~5および9に対応する複数の制限モード1~3において、制限モード1では、制動装置42の作動を制限する発生要因:要因9、制動装置42の作動を制限しない発生要因:要因2~5とする。制限モード2では、制動装置42の作動を制限する発生要因:要因5,9、制動装置42の作動を制限しない発生要因:要因2~4とする。制限モード3では、制動装置42の作動を制限する発生要因:要因4,5,9、制動装置42の作動を制限しない発生要因:要因2,3とする。
【0051】
制限モード1,2,3は、この順序で、制動装置42の作動を制限する発生要因の個数が多くなっており、この順序で、制限が厳しくなっていると言える。また、発生要因のうち、衝突や事故につながる危険性が高い発生要因ほど、より厳しい制限モードにおいても制動装置42の作動が制限されない。
【0052】
モード設定部19は、制動装置42の耐久性に影響する所定のパラメータと、パラメータに対して設定した所定のモード設定閾値との比較に基づいて、複数の制限モードのうちから選択した制限モードを設定するように構成されていてもよい。モード設定閾値は、耐久閾値と同様に、制動装置42の耐久性の低下度合いが深刻となる条件を満たすほど、より厳しい制限モードに設定されるような値であることが好ましい。
【0053】
例えば、耐久パラメータが制動装置42の温度Tである場合、モード設定閾値として、温度閾値T1,T2,T3を、T1<T2<T3となるように段階的に設定する。そして、温度Tと温度閾値T1~T3との比較に基づいて、T<T1の場合には通常モードに設定し、T1≦T<T2の場合には制限モード1に設定し、T2≦T<T3の場合には制限モード2に設定し、T3≦Tの場合には制限モード3に設定してもよい。
【0054】
複数の耐久パラメータを用いてモード設定する場合には、個別に耐久パラメータとモード設定閾値とを比較し、選択された各制限モードのうち、最も厳しい制限モードを制御モードとして設定することが好ましい。
【0055】
図2に、車両制御装置10が実行する車両制御処理に係るフローチャートを示す。図2に示す処理は、車両制御装置10により所定周期で繰り返し実行される。
【0056】
ステップS101では、センサ類20からセンサ情報を取得する。その後、ステップS102に進む。ステップS102では、自動制動制御における制御モードを選択し、設定する。制御モードは、制動装置42の作動を制限する制限モードと、制動装置の作動を制限しない通常モードとを含む。
【0057】
図3に、モード選択処理のフローチャートを示す。ステップS201では、耐久パラメータが制動装置42の温度Tである場合を例示して説明する。モード設定閾値として、温度閾値T1,T2,T3は、T1<T2<T3となるように段階的に設定されている。
【0058】
ステップS201では、制動装置42の温度Tが最も低い温度閾値T1以上であるか否かを判定する。T≧T1である場合には、ステップS202に進む。T<T1である場合には、ステップS207に進み、通常モードを選択して設定する。
【0059】
ステップS202では、制動装置42の温度Tが中間の温度閾値T2以上であるか否かを判定する。T≧T2である場合には、ステップS203に進む。T<T2である場合には、ステップS206に進み、制限モード1を選択して設定する。
【0060】
ステップS203では、制動装置42の温度Tが最も高い温度閾値T3以上であるか否かを判定する。T≧T3である場合には、ステップS204に進み、制限モード3を選択して設定する。T<T3である場合には、ステップS205に進み、制限モード2を選択して設定する。図3に示す一連の処理により、制限モード1~3または通常モードを選択して、制御モードとして設定した後、ステップS103に進む。
【0061】
ステップS103では、設定された制御モードが制限モードであるか否かについて判定する。ステップS102において制限モード1~3に設定された場合には、肯定判定され、ステップS104に進む。ステップS102において通常モードに設定された場合には、否定判定され、ステップS105に進む。
【0062】
ステップS104では、制限モードに設定されたことを運転者に通知する。通知は、音、表示、振動のいずれかにより実行される。例えば、警報装置44や表示装置45に対して通知を実行する指示を出力することにより、運転者に対して制限モードを通知する。その後、ステップS105に進む。
【0063】
ステップS105では、車両の減速要求があった場合に、制限モードと、減速要求の発生要因とに基づいて、減速要求に基づいて車両の制動を実行するか否かを判定する制動制限判定処理を実行する。
【0064】
なお、本フローチャートでは、上述の制限モード1~3において、「制動装置42の作動を制限する発生要因」を「自動ブレーキを使用しない発生要因」に置き換え、「制動装置42の作動を制限しない発生要因」を「自動ブレーキを使用する発生要因」に置き換えて説明する。制限モード1では、自動ブレーキを使用しない発生要因:要因9、自動ブレーキを使用する発生要因:要因2~5とする。制限モード2では、自動ブレーキを使用しない発生要因:要因5,9、自動ブレーキを使用する発生要因:要因2~4とする。制限モード3では、自動ブレーキを使用しない発生要因:要因4,5,9、自動ブレーキを使用する発生要因:要因2,3とする。
【0065】
図4に、制動制限判定処理のフローチャートを示す。ステップS301では、減速要求が発生したか否かを判定する。減速要求が発生した場合には、ステップS302に進む。減速要求が発生しなかった場合には、ステップS304に進み、自動ブレーキを使用しないことを決定する。
【0066】
ステップS302では、ステップS301における減速要求の発生要因のうちの少なくとも1つが、図2に示すステップS102において設定した制御モードにおいて、自動ブレーキを使用する発生要因に該当しているか否かを判定する。
【0067】
例えば、通常モードが選択されており、発生要因が、要因2~5,9である場合には、ステップS302では肯定判定される。制限モード1が選択されており、発生要因が、要因2~5である場合には、ステップS302では肯定判定される。制限モード2が選択されており、発生要因が、要因2~4である場合には、ステップS302では肯定判定される。制限モード3が選択されており、発生要因が、要因2,3である場合には、ステップS302では肯定判定される。
【0068】
制限モード1が選択されており、発生した減速要求が、要因9である場合には、ステップS302では否定判定される。制限モード2が選択されており、発生した減速要求が、要因5,9である場合には、ステップS302では否定判定される。制限モード3が選択されており、発生した減速要求が、要因4,5,9である場合には、ステップS302では否定判定される。制限モード3が選択されており、発生した減速要求が、要因4,5,9である場合には、ステップS302では否定判定される。
【0069】
なお、設定された制限モードにおいて「自動ブレーキを使用する発生要因」と「自動ブレーキを使用しない発生要因」の双方が含まれている場合、ステップS302では肯定判定される。例えば、制限モード3が選択されており、発生した減速要求が、要因2,5,9である場合には、ステップS302では肯定判定される。
【0070】
ステップS302で肯定判定された場合には、ステップS303に進み、自動ブレーキを使用することを決定する。否定判定された場合には、ステップS304に進み、自動ブレーキを使用しないことを決定する。自動ブレーキを使用することを決定した場合、ステップS301において発生した減速要求に従い、自動ブレーキを使用するように制動装置42に作動指令を出力する。自動ブレーキを使用することを決定した場合、ステップS301において発生した減速要求に従うことなく、自動ブレーキを使用しないように制動装置42に指令を出力する(もしくは、作動指令を出力しない)。図4に示す一連の処理により、自動ブレーキの使用または不使用を決定し、この決定に従う指令を制動装置42に出力した後、処理を終了する。
【0071】
第1実施形態に係る車両制御装置10によれば、ステップS102、S201~S207に示すように、制動装置42の耐久性が低下したと判定された場合には、自動制動制御の制御モードを、制動装置42の作動を制限する制限モード1~3に設定する。制限モード1~3は、車両の減速要求の発生要因に基づいて、制動装置42の作動の実行を制限する内容に設定されている。さらに、ステップS105、S301~S304に示すように、設定されている制御モード(通常モードもしくは制限モード1~3)と、減速要求の発生要因とに基づいて、減速要求に基づいて車両の制動を実行するか否かを判定する。このため、制動装置42の作動を制限して制動装置42の耐久性の低下を抑制する一方で、車両の減速要求の発生要因が、要因2,3のように、制動装置42を作動する必要性の高い内容である場合には、確実に制動装置42を作動させるような自動制動制御を実現できる。その結果、制動装置42の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる。
【0072】
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態に係る車両制御処理に係るフローチャートを示す。図5に示す車両制御処理は、図1に示す車両制御装置10およびこれを含む車載システムと同様の構成により実現できる。図5に示す処理は、車両制御装置10により所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
ステップS401では、センサ類20からセンサ情報を取得する。その後、ステップS402に進む。
【0074】
ステップS402では、制動装置42の耐久性が低下しているか否かを判定する。具体的には、耐久パラメータと耐久評価閾値との比較に基づいて、耐久性が低下しているか否かを判定する。さらに具体的には、耐久パラメータが制動装置42の温度Tである場合を例示して説明すると、耐久評価閾値をT1に設定し、制動装置42の温度Tが最も低い温度閾値T1以上であるか否かを判定する。T≧T1である場合には、ステップS403に進み、停車モードを選択した後、ステップS405に進む。T<T1である場合には、ステップS404に進み、通常モードを選択して設定した後、ステップS409に進む。
【0075】
ステップS405では、運転者に対して、制動装置42の耐久性が低下したこと、および、停車モードを選択したことを通知するとともに、車両を停車させることを提案する。通知および提案は、音、表示、振動のいずれかにより実行され、警報装置44や表示装置45に対して通知を実行する指示を出力する。その後、ステップS406に進む。
【0076】
ステップS406では、停車が完了したか否かを判定する。停車が完了した場合、処理を終了する。停車が完了していない場合、ステップS407に進む。
【0077】
ステップS407では、制限モードを選択する処理を実行する。図6に、制限モード選択処理のフローチャートを示す。図6に示す処理は、図3に示す処理からステップS201の処理を削除したものと同様である。
【0078】
ステップS502では、制動装置42の温度Tが中間の温度閾値T2以上であるか否かを判定する。T≧T2である場合には、ステップS503に進む。T<T2である場合には、ステップS506に進み、制限モード1を選択して設定する。ステップS503では、制動装置42の温度Tが最も高い温度閾値T3以上であるか否かを判定する。T≧T3である場合には、ステップS504に進み、制限モード3を選択して設定する。T<T3である場合には、ステップS505に進み、制限モード2を選択して設定する。図5に示す一連の処理により、制限モード1~3を選択して、制御モードとして設定した後、図5に示すステップS408に進む。
【0079】
ステップS408では、制限モードに設定されたことを運転者に通知する。図2に示すステップS104と同様に、通知は、音、表示、振動のいずれかにより実行される。その後、ステップS409に進む。
【0080】
ステップS409では、図2に示すステップS105および図4に示すS301~S304と同様に、車両の減速要求があった場合に、制限モードと、減速要求の発生要因とに基づいて、減速要求に基づいて車両の制動を実行するか否かを判定する制動制限判定処理を実行する。図4に示す一連の処理により、自動ブレーキの使用または不使用を決定し、この決定に従う指令を制動装置42に出力した後、図5に示す処理を終了する。
【0081】
第2実施形態に係る車両制御装置10によれば、ステップS402,S403,S405に示すように、制動装置42の耐久性が低下したと判定された場合には、運転者に対して、制動装置42の耐久性が低下したことを通知するとともに、車両を停車させることを提案する。制動装置を作動する必要性の高い発生要因による減速要求が生じる以前に運転者が車両を停車させれば、車両の安全性を確保できる。
【0082】
この通知および提案によっても、運転者が車両を停車させなかった場合には、ステップS406~S409に示すように、制限モードを設定して、制動制限判定を実行する。第2実施形態によれば、制動装置42を作動する必要性の高い発生要因による減速要求が生じる以前に運転者が車両を停車させることを優先しながら、停車できなかった場合には、制限モードを設定して制動制限判定を実行して、制動装置42の作動を制限して制動装置42の耐久性の低下を抑制する一方で、車両の減速要求の発生要因が制動装置42を作動する必要性の高い内容である場合には、確実に制動装置42を作動させるような自動制動制御を実現できる。
【0083】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0084】
車両制御装置10は、車両の制動装置42を自動制動制御可能に構成されており、耐久性判定部18と、モード設定部19とを含む制動制限判定部17を備えている。耐久性判定部18は、制動装置42の耐久性を判定する。モード設定部19は、耐久性判定部18により制動装置42の耐久性が低下したと判定された場合に、自動制動制御の制御モードを、制動装置42の作動を制限する制限モード(例えば、制限モード1~3)に設定する。制限モードは、車両の減速要求の発生要因(例えば、要因1~9)に基づいて、制動装置42の作動の実行を制限するものである。制動制限判定部17は、車両の減速要求があった場合に、制限モードと、減速要求の発生要因とに基づいて、減速要求に基づいて車両の制動を実行するか否かを判定する。
【0085】
車両制御装置10によれば、制動装置42の作動を制限して制動装置42の耐久性の低下を抑制する一方で、車両の減速要求の発生要因が制動装置42を作動する必要性の高い内容である場合には、確実に制動装置42を作動させるような自動制動制御を実現できる。その結果、制動装置42の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる安全性の高い車両制御装置10を提供することができる。
【0086】
モード設定部19は、車両の減速要求の発生要因と、制動装置42の作動の実行可否との対応関係が相違する複数の制限モードを設定可能であってもよい。この場合、モード設定部19は、制動装置42の耐久性に影響する所定のパラメータと、パラメータに対して設定した所定のモード設定閾値との比較に基づいて、複数の制限モードのうちから選択した制限モードを設定するように構成されていることが好ましい。例えば、発生要因のうち、衝突や事故につながる危険性が高い発生要因ほど、より厳しい制限モードにおいても制動装置42の作動が制限されないようにすることができ、より適切に、制動装置42の作動を制限して制動装置42の耐久性の低下を抑制する一方で、車両の減速要求の発生要因が制動装置42を作動する必要性の高い内容である場合には、確実に制動装置42を作動させるような自動制動制御を実現できる。
【0087】
車両制御装置10は、耐久性判定部18により制動装置42の耐久性が低下したと判定された場合に、制動装置42の耐久性が低下したことを車両の運転者に通知するとともに、車両を停車させることを運転者に提案するように構成されていてもよい。この通知および提案により、制動装置42を作動する必要性の高い発生要因による減速要求が生じる以前に運転者が車両を停車させれば、車両の安全性を確保できる。その結果、制動装置42の耐久性を考慮した自動制動制御を実現できる安全性の高い車両制御装置10を提供することができる。
【0088】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0089】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0090】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
車両の制動装置を自動制動制御する車両制御装置(10)であって、
制動装置の耐久性を判定する耐久性判定部(18)と、前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記自動制動制御の制御モードを、前記制動装置の作動を制限する制限モードに設定するモード設定部(19)とを有する制動制限判定部(17)を備え、
前記制限モードは、前記車両の減速要求の発生要因に基づいて、前記制動装置の作動の実行を制限するものであり、
前記制動制限判定部は、前記車両の減速要求があった場合に、前記制限モードと、前記減速要求の発生要因とに基づいて、前記減速要求に基づいて前記車両の制動を実行するか否かを判定する車両制御装置。
[構成2]
前記モード設定部は、
前記車両の減速要求の発生要因と、前記制動装置の作動の実行可否との対応関係が相違する複数の制限モードを設定可能であり、
前記制動装置の耐久性に影響する所定のパラメータと、前記パラメータに対して設定した所定のモード設定閾値との比較に基づいて、前記複数の制限モードのうちから選択した制限モードを設定する構成1に記載の車両制御装置。
[構成3]
前記減速要求の発生要因は、前記車両の前方の障害物に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む構成1または2に記載の車両制御装置。
[構成4]
前記減速要求の発生要因は、前記車両の先行車および隣接車に対し、衝突を回避または軽減、または車間を維持するための要因を含む構成1~3のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成5]
前記減速要求の発生要因は、歩行者に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む構成1~4のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成6]
前記減速要求の発生要因は、カーブ路に対し、衝突を回避または軽減するための要因を含む構成1~5のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成7]
前記減速要求の発生要因は、交通信号の停止指示に対し、停止または車速を下げるための要因を含む構成1~6のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成8]
前記減速要求の発生要因は、速度規制標識または停止指示標識に対し、規制標識の車速に対応するまたは停止するための要因を含む構成1~7のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成9]
前記減速要求の発生要因は、降坂路、路面状況に対し、車速を下げるための要因を含む構成1~8のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成10]
前記減速要求の発生要因は、クルーズコントロールの車速制御に対し、車速を下げるための要因を含む構成1~9のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成11]
前記モード設定部が前記制限モードを設定したことを前記車両の運転者に通知する構成1~10のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成12]
前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記制動装置の耐久性が低下したことを前記車両の運転者に通知するとともに、前記車両を停車させることを前記運転者に提案する構成1~11のいずれかに記載の車両制御装置。
[構成13]
車両の制動装置を自動制動制御する車両制御装置(10)であって、
制動装置の耐久性を判定する耐久性判定部(18)を備え、
前記耐久性判定部により前記制動装置の耐久性が低下したと判定された場合に、前記制動装置の耐久性が低下したことを前記車両の運転者に通知するとともに、前記車両を停車させることを前記運転者に提案する車両制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6