(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】真空減圧装置並びにそれを用いたアンダーフィル充填方法及び脱泡充填方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2023576724
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2022047998
(87)【国際公開番号】W WO2023145366
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2022013418
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390022220
【氏名又は名称】株式会社フジ機工
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-340589(JP,A)
【文献】特開2008-302535(JP,A)
【文献】特開2015-37195(JP,A)
【文献】特開2018-144371(JP,A)
【文献】特開2006-294814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定容量の真空チャンバと、
前記真空チャンバに接続される連通路を介して接続される所定容量のサブタンクと、前記サブタンクに連通され、当該サブタンクを大気に開放する大気開放通路と、前記真空チャンバと前記サブタンクとの間の通路に介装される第1開閉装置と、前記大気開放通路に介装される第2開閉装置とを具備する、減圧調整装置と、
前記真空チャンバに接続される真空装置と、
を具備することを特徴とする真空減圧装置。
【請求項2】
前記真空チャンバには、当該真空チャンバを直接大気に開放する直接開放通路と、当該直接開放通路に介装される開閉装置とを具備する大気開放装置が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の真空減圧装置。
【請求項3】
前記減圧調整装置が複数系統設けられ、それぞれが前記真空チャンバに接続され、これら複数系統の前記減圧調整装置の前記サブタンクは、それぞれ容量が異なる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空減圧装置。
【請求項4】
前記減圧調整装置の前記サブタンクは、交換可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の真空減圧装置。
【請求項5】
前記減圧調整装置の前記サブタンクには、開閉可能に接続された少なくとも1つの容量調整用タンクが連結されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の真空減圧装置。
【請求項6】
前記真空チャンバ内には、加熱ステージが設けられ、
前記加熱ステージを加熱する加熱装置が設けられている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の真空減圧装置。
【請求項7】
前記加熱ステージを加熱する加熱装置は、前記真空チャンバの外側に設けられている
ことを特徴とする請求項6記載の真空減圧装置。
【請求項8】
前記サブタンクは、前記第2開閉装置を開として内部を大気圧とした後、前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にすることで、前記真空チャンバの減圧状態を所定圧だけ上昇する減圧状態調整装置として機能する
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の真空減圧装置。
【請求項9】
前記減圧状態調整装置による圧力上昇が、2~15kPaである
ことを特徴とする請求項8に記載の真空減圧装置。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の真空減圧装置を用い、
半導体基板に実装した半導体装置の周囲にアンダーフィルを塗布したものを前記真空チャンバの前記加熱ステージ上に載置し、
前記真空チャンバ内を真空状態にし、前記加熱ステージを加熱しながら前記アンダーフィルを脱泡すると共に所定の隙間に充填する第1充填工程と、
前記サブタンクを大気圧状態として前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にして前記真空チャンバを所定の減圧状態にして差圧充填する第2充填工程と、
前記真空チャンバを大気に開放して大気圧状態とする大気開放工程と
を具備することを特徴とするアンダーフィル充填方法。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の真空減圧装置を用い、
少なくとも貫通ビア又は非貫通ビアであるビアを有する半導体装置の前記ビアに充填ペーストを真空充填又は印刷した半導体装置を前記真空チャンバの前記加熱ステージ上に載置し、
前記真空チャンバ内を真空状態にし、前記加熱ステージを加熱して前記充填ペーストを脱泡すると共に充填する充填工程と、
前記サブタンクを大気圧状態として前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にして前記真空チャンバを所定の減圧状態にして脱泡する脱泡工程と、
前記真空チャンバを大気に開放して大気圧状態とする大気開放工程と
を具備することを特徴とする脱泡充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空減圧装置並びにそれを用いたアンダーフィル充填方法及び脱泡充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の製造のフリップチップ実装においては、基板と、該基板上に搭載された電子部品との間にアンダーフィルが充填される。かかるアンダーフィルの充填方法としては、基板上にフリップチップをバンプを介して搭載した後に、上記基板とフリップチップとの間の間隙内に液状封止樹脂を充填する電子部品の製造方法において、上記間隙の周囲を、上記フリップチップの周りに供給した液状封止樹脂により密封した後に、減圧下に置くことにより、上記間隙内並びに封止樹脂中の空気を該封止樹脂による密封状態を保持した状態のままで外部に吸引排出し同時に上記間隙内を真空となし、しかる後に上記減圧を解くことにより、間隙内真空にもとづき、上記封止樹脂を上記間隙内に強制的に吸引充填する手法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このようなアンダーフィル充填においては、未充填部のない製品とするために、電極のピッチを均一にすることや電極の配置をできるだけ均一にするという制限があり、近年、電子部品の複雑化などにより、未充填が回避できないという問題がある。
【0004】
また、多層回路基板のスルーホールやビアホールなどの貫通孔、又はブラインドスルーホールやブラインドビアホールなどの非貫通孔に、導電性ペーストや絶縁性樹脂ペースト等の液状粘性材料を充填する方法が知られている。このような充填方法として、液状粘性材料を真空雰囲気下で回路基板上に孔版印刷した後、真空雰囲気の真空度を低下せしめるか若しくは真空雰囲気を通常の大気圧雰囲気にせしめて差圧充填を行う充填方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
このような充填方法によって充填した場合にも、貫通孔や非貫通孔の中に空隙が残存する場合があり、また、充填された液状粘性材料内ボイドが存在する場合があるという問題がある。
【0006】
さらに、従来より、真空孔版印刷手段を適用して電子部品素子の樹脂封止を行う方法が提案されている。かかる樹脂封止法は、基板上に搭載の電子部品素子の樹脂封止に適用される真空孔版印刷方法であって、真空雰囲気下に於いてスキージの作動をして封止樹脂を孔版通孔部内に、封止樹脂の過剰供給層を孔版上に層状に形成しながら押し込み充填する工程、過剰供給層の封止樹脂の一部を気圧差により孔版通孔部内に押し込み充填する工程、及び気圧差充填後に残る過剰供給層の封止樹脂を孔版上から取り除き、その後、孔版を離脱する工程、を含んでいる、というものであり、気圧差充填が、少なくとも30torrの気圧差のもとに行われるのが好ましいというものである(特許文献3参照)。
【0007】
このような樹脂封止法では、真空雰囲気下から気圧差充填を行う気圧差まで圧力を上昇させる際に、いかに精密に調整しても、所定の気圧差で停止する直前に、一瞬だけ所定の気圧差より常圧に近い状態になるオーバーシュートが生じてしまい、オーバーシュートによって高圧になった部分には、気圧差充填で封止樹脂が充填されず、空隙が残るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-264587号公報
【文献】特開平11-298138号公報
【文献】特開2000-216526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑み、真空チャンバ内を真空状態から所定の減圧状態に制御する際に、オーバーシュートすることなく所定の減圧状態に制御できる真空減圧装置を提供することを目的とする。また、かかる真空減圧装置を用い、未充填部を残すことなくアンダーフィルの充填を行うアンダーフィル充填方法、未充填部やボアが残存することなく、貫通孔や非貫通孔に導電性ペーストや絶縁性ペーストである充電ペーストを充填する脱泡充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明は以下のとおりである。
本発明の第1の態様は、所定容量の真空チャンバと、前記真空チャンバに接続される連通路を介して接続される所定容量のサブタンクと、前記サブタンクに連通され、当該サブタンクを大気に開放する大気開放通路と、前記真空チャンバと前記サブタンクとの間の通路に介装される第1開閉装置と、前記大気開放通路に介装される第2開閉装置とを具備する、減圧調整装置と、前記真空チャンバに接続される真空装置と、を具備することを特徴とする真空減圧装置。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記真空チャンバには、当該真空チャンバを直接大気に開放する直接開放通路と、当該直接開放通路に介装される開閉装置とを具備する大気開放装置が設けられていることを特徴とする第1の態様の真空減圧装置。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記減圧調整装置が複数系統設けられ、それぞれが前記真空チャンバに接続され、これら複数系統の前記減圧調整装置の前記サブタンクは、それぞれ容量が異なることを特徴とする第1又は2の態様の真空減圧装置。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記減圧調整装置の前記サブタンクは、交換可能に取り付けられていることを特徴とする第1~3の態様の真空減圧装置。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記減圧調整装置の前記サブタンクには、開閉可能に接続された少なくとも1つの容量調整用タンクが連結されていることを特徴とする第1~4の態様の真空減圧装置。
【0015】
本発明の第6の態様は、前記真空チャンバ内には、加熱ステージが設けられ、前記加熱ステージを加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする第1~5の態様の真空減圧装置。
【0016】
本発明の第7の態様は、前記加熱ステージを加熱する加熱装置は、前記真空チャンバの外側に設けられていることを特徴とする第6の態様の真空減圧装置。
【0017】
本発明の第8の態様は、前記サブタンクは、前記第2開閉装置を開として内部を大気圧とした後、前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にすることで、前記真空チャンバの減圧状態を所定圧だけ上昇する減圧状態調整装置として機能することを特徴とする第1~7の態様の真空減圧装置。
【0018】
本発明の第9の態様は、前記減圧状態調整装置による圧力上昇が、2~15kPaであることを特徴とする第8の態様の真空減圧装置。
【0019】
本発明の第10の態様は、第6又は7の態様の真空減圧装置を用い、半導体基板に実装した半導体装置の周囲にアンダーフィルを塗布したものを前記真空チャンバの前記加熱ステージ上に載置し、前記真空チャンバ内を真空状態にし、前記加熱ステージを加熱しながら前記アンダーフィルを脱泡すると共に所定の隙間に充填する第1充填工程と、前記サブタンクを大気圧状態として前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にして前記真空チャンバを所定の減圧状態にして差圧充填する第2充填工程と、前記真空チャンバを大気に開放して大気圧状態とする大気開放工程とを具備することを特徴とするアンダーフィル充填方法。
【0020】
本発明の第11の態様は、第6又は7の態様の真空減圧装置を用い、少なくとも貫通ビア又は非貫通ビアであるビアを有する半導体装置の前記ビアに充填ペーストを真空充填又は印刷した半導体装置を前記真空チャンバの前記加熱ステージ上に載置し、前記真空チャンバ内を真空状態にし、前記加熱ステージを加熱して前記充填ペーストを脱泡すると共に充填する充填工程と前記サブタンクを大気圧状態として前記第2開閉装置を閉とした状態で前記第1開閉装置を開にして前記真空チャンバを所定の減圧状態にして脱泡する脱泡工程と、前記真空チャンバを大気に開放して大気圧状態とする大気開放工程とを具備することを特徴とする脱泡充填方法。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、真空チャンバ内を真空状態から所定の減圧状態に制御する際に、オーバーシュートすることなく所定の減圧状態に制御できる真空減圧装置を提供することができる。また、かかる真空減圧装置を用いることにより、未充填部を残すことなくアンダーフィルの充填を行うアンダーフィル充填方法、未充填部やボアが残存することなく、貫通孔や非貫通孔に導電性ペーストや絶縁性ペーストである充電ペーストを充填する脱泡充填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係る真空減圧装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】実施形態1に係る真空減圧装置の効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施形態1)
図1には、本実施形態に係る真空減圧装置の概略構成を示す。
図示するように、この真空減圧装置は、真空チャンバ1と、真空チャンバ1の下面に設けられた加熱装置2と、前記真空チャンバ1の内部を真空状態にする真空装置3と、真空チャンバ1を大気に開放する大気開放系統4と、真空チャンバ1を所定の減圧状態とする減圧調整装置5とを具備し、本実施形態では、減圧調整装置5は、第1減圧調整系統6と、第2減圧調整系統7とからなる。
真空チャンバ1は、真空状態を保持する気密なチャンバである。
【0024】
加熱装置2は、真空チャンバ1の下面の内部に設けられた加熱ステージ21と、真空チャンバ1の外側に設けられて、加熱ステージ21の下部に設けられた加熱ヒータ22とを具備する、加熱ヒータ22は、加熱ステージ21の上に載置される被処理体8を加熱するためのものであり、加熱ヒータ22は、加熱ステージ21の下部から離れる方向に移動可能に設けられている。
【0025】
真空装置3は、真空チャンバ1に一端部が接続される真空通路31と、真空通路31の他端部に接続される真空ポンプ32と、真空チャンバ1と真空ポンプ32との間に介装される開閉バルブ33とを具備する。
【0026】
大気開放系統4は、真空チャンバ1に一端部が接続されて他端部が大気に開放されている大気開放通路41と、大気開放通路41の途中に介装される開閉バルブ42とを具備する。
【0027】
第1減圧調整系統6は、真空チャンバ1に一端部が接続された連結通路51の他端部から分岐した連結通路61と、連結通路61の分岐側とは反対側の端部に接続される第1サブタンク62と、この第1サブタンク62に一端部が接続されて他端部が大気に開放されている大気開放通路63と、連結通路61の途中に介装される第1開閉バルブ64と、大気開放通路63の途中に介装される第2開閉バルブ65とを具備する。
【0028】
第2減圧調整系統7は、真空チャンバ1に一端部が接続された連結通路51の他端部から分岐した連結通路71と、連結通路71の分岐側とは反対側の端部に接続される第2サブタンク72と、この第2サブタンク72に一端部が接続されて他端部が大気に開放されている大気開放通路73と、連結通路71の途中に介装される第1開閉バルブ74と、大気開放通路73の途中に介装される第2開閉バルブ75とを具備する。
【0029】
ここで、第1減圧調整系統6と第2減圧調整系統7とは、連結通路51から分岐した連結通路61、71を介して設けられているが、連結通路61、71をそれぞれ真空チャンバ1に連通するように設けられてもよい。
【0030】
なお、第1減圧調整系統6及び第2減圧調整系統7を含む減圧調整装置5の連結通路51、61、71、及び大気開放通路63、73は、真空通路31や大気開放通路41より細い管を用いている。真空通路31や大気開放通路41に流れる空気より小さな容量の空気しか流通しないからである。
【0031】
以上説明した真空減圧装置は、例えば、以下のように使用する。
まず、開閉バルブ42、64、74を閉にし、開閉バルブ33を開にした状態で真空ポンプ32を動作させることにより、真空チャンバ1内を真空状態とする。
【0032】
ここで、真空状態とは、例えば、10kPa以下、好ましくは、0.1~5kPa程度の圧力をいう。
【0033】
この状態で、例えば、第1減圧調整系統6の第2開閉バルブ65を開として第1サブタンク62内を大気圧状態とした後、第2開閉バルブ65を閉とし、この後、第1開閉バルブ64を開として第1サブタンク62と真空チャンバ1とを連通し、第1サブタンク62内の空気を真空チャンバ1内に導入し、真空チャンバ1内を所定の減圧状態とする。
【0034】
このときの真空チャンバ1内の圧力は、真空チャンバ1内の真空状態、真空チャンバ1と第1サブタンク62と容量で決定する。
【0035】
例えば、真空チャンバ1の容量をV0、第1サブタンク62の容量をV1とし、V1/V0=4.2%とすると、第1サブタンク62内の空気を導入した後の減圧状態は、4.0kPa上昇する。よって、最初の真空チャンバ1の真空状態が2.3kPaとすると、6.3kPaに調整される。
【0036】
また、第2サブタンク72の容量をV2とし、V2/V0=7.2%とすると、第2サブタンク72内の空気を導入した後の減圧状態は、6.7kPa上昇する。よって、最初の真空チャンバ1の真空状態が2.3kPaとすると、9.0kPaに調整される。
【0037】
このように、第1サブタンク62と第2サブタンク72の容量は、それぞれ所定容量に規定されている。これらの第1サブタンク62、第2サブタンク72は、真空状態の真空チャンバ1の内部に導入する空気量を規定するものである。大気圧状態の第1サブタンク62内の空気を真空状態の真空チャンバ1内に導入すると、真空チャンバ1と第1サブタンク62の容量と、それぞれの圧力により、導入後の真空チャンバ1内の減圧状態が一義的に規定される。
【0038】
よって、減圧調製後の減圧状態をどの程度に規定するかで、第1サブタンク62、第2サブタンク72の真空チャンバ1に対する容量比を決定すればよい。
【0039】
本実施形態では、容量の異なる第1サブタンク62と、第2サブタンク72とをそれぞれ具備する第1減圧調整系統6と、第2減圧調整系統7とを設けることで、減圧調整後の減圧状態を複数段階に調整できる。それぞれ単独で開放した場合は上述したとおりであるが、第1減圧調整系統6と、第2減圧調整系統7とを両方使用すると、4.0+6.7=10.7kPa上昇した減圧状態にすることができる。
【0040】
よって、必要な減圧状態を得るために、第1サブタンク62又は第2サブタンク72の容量を可変とするようにしてもよい。
【0041】
例えば、第1サブタンク62又は第2サブタンク72を交換可能な構造とし、他の容量のサブタンクと交換可能としてもよい。
【0042】
また、第1サブタンク62又は第2サブタンク72に補助タンク1つ又は2つ以上を、開閉可能な連結通路を介して連結しておき、必要に応じて連結状態を変更することで、サブタンクの容量を変更できるようにすることもできる。
【0043】
このように、第1サブタンク62又は第2サブタンク72は、減圧調整装置として機能し、真空チャンバ1の減圧状態を所定圧だけ上昇させることができる。
【0044】
また、このような減圧状態調整装置による減圧状態調整は、複数回繰り返して行ってもよく、また、複数回の減圧状態の調整による上昇圧力は、一定である必要はなく、例えば、上述した第1減圧調整系統6と第2減圧調整系統7とを交代で使用して減圧状態を調整してもよい。
【0045】
このような減圧状態調整装置による圧力上昇は、1回当たり、2~15kPa、好ましくは、2~10kPa、さらに好ましくは、3~8kPaである。
【0046】
本発明の真空減圧装置によれば、減圧状態調整装置により真空チャンバ1内の減圧状態を調整する際に、オーバーシュートしないという特徴がある。ここで、オーバーシュートとは、目標とする所定の減圧状態とする場合、精密に調節可能な電磁バルブを用いて大気を真空チャンバに直接導入しようとすると、所定の減圧状態となる直前に、一瞬だけ所定の減圧状態よりも高い圧力の状態になることをいう。
【0047】
本発明の真空減圧装置を用いると、大気中の空気を直接、真空チャンバ1に導入するのではなく、大気圧ではあるが、大気とは隔離された第1サブタンク62又は第2サブタンク72を真空チャンバ1と接続し、完全に規定量の空気を真空状態の真空チャンバ1の内部に導入するので、オーバーシュートが生じる虞はない。
【0048】
ここで、本発明の真空減圧装置を用いた場合の真空チャンバ1内の圧力変化の一例を
図2(a)に示す。工程S1は、開閉バルブ42、64、74を閉にし、開閉バルブ33を開にした状態で真空ポンプ32を動作させる真空引き工程である。この工程S1では、真空引きが開始され、真空チャンバ1内の圧力がP0からP1の真空状態になる。
【0049】
工程S2は、第2減圧調整系統7の第2開閉バルブ75を開として第2サブタンク72内を大気圧状態とした後、第2開閉バルブ75を閉とした状態で、第1開閉バルブ74を開として第2サブタンク72と真空チャンバ1とを連通し、第2サブタンク72内の空気を真空チャンバ1内に導入して真空チャンバ1内を所定の減圧状態とする減圧状態調整工程である。この工程S2では、真空チャンバ1内の圧力は、P1からP2に上昇するが、P2より高い圧力となることは一瞬もない。すなわち、オーバーシュートは生じない。
【0050】
また、工程S3は、第1減圧調整系統6の第2開閉バルブ65を開として第1サブタンク62内を大気圧状態とした後、第2開閉バルブ65を閉とした状態で、第1開閉バルブ64を開として第1サブタンク62と真空チャンバ1とを連通し、第1サブタンク62内の空気を真空チャンバ1内に導入して真空チャンバ1内を所定の減圧状態とする減圧状態調整工程である。この工程S3では、真空チャンバ1内の圧力は、P2からP3に上昇するが、P3より高い圧力となることは一瞬もない。すなわち、オーバーシュートは生じない。
【0051】
工程S4は、大気開放工程であり、大気開放系統4の開閉バルブ42を開として真空チャンバ1を大気に開放する工程であり、これにより、真空チャンバ1内の圧力はP0に上昇する。
【0052】
図2(b)は、本発明の真空減圧装置において、第1減圧調整系統6、第2減圧調整系統7を用いないで、大気開放系統4を用いて真空状態の真空チャンバ1に微量の空気を導入して減圧状態を調整する場合を示している。真空引き工程S11では、同様に圧力P1の真空状態となるが、減圧状態調整工程S12では、所定の圧力P2となる前に一瞬だけP3まで上昇するオーバーシュートが生じる。このオーバーシュートは、開閉バルブ42を高度に微調整できる電磁バルブとしても必ず発生してしまう。
【0053】
(実装実施形態1)
以下、上述した実施形態の真空減圧装置を用いた実装方法の一例を例示する。
まず、
図3(a)、(b)の断面図及び平面図に示すような半導体実装部品を用意する。この半導体実装部品は、配線101と凹部102とを具備する半導体基板100上に、はんだバンプ端子201を具備する半導体部品200を実装したものであり、半導体基板100と半導体部品200との間の隙間と凹部102内にアンダーフィルを充填するものである。
【0054】
次に、
図4(a)に示すように、アンダーフィル300を半導体部品200の周囲に塗布したものを、真空チャンバ1の加熱ステージ21上に載置する。
【0055】
この状態で、真空チャンバ1内を真空状態とする。すなわち、開閉バルブ42、64、74を閉にし、開閉バルブ33を開にした状態で真空ポンプ32を動作させて真空引きをし、真空チャンバ1が真空状態となった後、加熱装置2の加熱ヒータ22を動作させ、加熱ステージ21を加熱する。これにより、アンダーフィル300は、加熱されて粘度が低下し、毛細現象で、半導体基板100と半導体部品200との間の隙間のはんだバンプ端子201の間の隙間に充填される(
図4(b))。このように、アンダーフィル300は、毛細現象により微細な隙間に入っていくが、相対的に大きな凹部102内の隙間には充填されない。
【0056】
次いで、第2減圧調整系統7の第2開閉バルブ75を開として第2サブタンク72内を大気圧状態とした後、第2開閉バルブ75を閉とした状態で、第1開閉バルブ74を開として第2サブタンク72と真空チャンバ1とを連通し、第2サブタンク72内の空気を真空チャンバ1内に導入して真空チャンバ1内を所定の減圧状態とする減圧状態調整工程を実施する。これにより、凹部102内の隙間は真空状態が保たれるが、周囲の環境は所定の減圧状態となるので、差圧によりアンダーフィル300が凹部102内の隙間に徐々に充填される(
図4(c))。この工程でも、加熱ヒータ22はオン状態としておく。また、この減圧状態調整工程は、複数回繰り返し行ってもよい。
【0057】
因みに、その際、先に説明したオーバーシュートが生じると、凹部102内に空気が入り込んでしまうので、差圧充填が行われなくなる。
【0058】
最後に、大気開放系統4の開閉バルブ42を開として真空チャンバ1を大気に開放する大気開放工程を実施し、半導体実装部品を取り出した後、アンダーフィル300を硬化し、アンダーフィル硬化物301とする(
図4(d))。
【0059】
以上説明した例では、アンダーフィル300を半導体部品200の周囲に塗布したものを加熱ステージ21上に載置したが、アンダーフィル300を2辺だけ塗布した状態の半導体部品に対しても同様に充填することができる。
【0060】
さらに、真空印刷装置などで、アンダーフィルを塗布して充填したが、未充填部やボイドが存在する半導体部品を処理対象とし、未充填部やボイドの除去を行うようにすることもできる。
【0061】
(実装実施形態2)
まず、
図5(a)に示すように、複数の貫通ビア401に充填ペースト500を印刷装置や充填装置により充填した半導体実装用基板400を準備し、真空チャンバ1の加熱ステージ21上に載置する。このような半導体実装用基板400の貫通ビア401は粘着剤層付フィルム402によって底辺が塞がれて実質的に非貫通ビアとなっているので、貫通ビア401の直径が微小になればなるほど充填ペースト500が全体に充填されず、又は空気を巻き込み、内部に空隙600が包含される可能性が高い。
【0062】
次に、真空チャンバ1内を上述した実施形態と同様に真空状態にすると共に加熱ステージ21を加熱する。この状態では、貫通ビア401内の空隙600が真空状態となって、その後、貫通ビア401の蓋となる充填ペースト500がレベリングされる(
図5(b))。
【0063】
次に、第2減圧調整系統7の第2開閉バルブ75を開として第2サブタンク72内を大気圧状態とした後、第2開閉バルブ75を閉とした状態で、第1開閉バルブ74を開として第2サブタンク72と真空チャンバ1とを連通し、第2サブタンク72内の空気を真空チャンバ1内に導入して真空チャンバ1内を所定の減圧状態とする減圧状態調整工程を実施する。これにより、空隙600内は真空状態が保たれるが、周囲の環境は所定の減圧状態となるので、差圧により充填ペースト500が空隙600内に徐々に充填される(
図5(c))。この工程でも、加熱ヒータ22はオン状態としておく。また、この減圧状態調整工程は、複数回繰り返し行ってもよい。
【0064】
因みに、その際、先に説明したオーバーシュートが生じると、空隙600内に空気が入り込んでしまうので、差圧充填が行われなくなる。
【0065】
最後に、大気開放系統4の開閉バルブ42を開として真空チャンバ1を大気に開放する大気開放工程を実施し、半導体実装部品を取り出した後、充填ペースト500を硬化し、充填ペースト硬化物501とする(
図5(d))。
【0066】
本実施形態では、実質的な非貫通ビアに充填ペーストを充填した半導体実装用基板400を処理したが、基板くり抜き部を凹部上に実装した半導体部品に適用できることは勿論である。
【0067】
また、真空印刷した貫通ビアの内部の空隙600が真空ではなく、空気が入った状態の場合には、通常の処理では除去できない場合もあるが、この場合には、減圧状態調整工程を連続的に複数回繰り返し行ったり、減圧状態調整工程での昇圧を大きめに行ったりすることで、空隙を除去することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 真空チャンバ
2 加熱装置
3 真空装置
4 大気開放系統
5 減圧調整装置
6 第1減圧調整系統
7 第2減圧調整系統
21 加熱ステージ
22 加熱ヒータ
31 真空通路
32 真空ポンプ
33 開閉バルブ
41 大気開放通路
42 開閉バルブ
51 連結通路
61 連結通路
62 第1サブタンク
63 大気開放通路
64 第1開閉バルブ
65 第2開閉バルブ
71 連結通路
72 第2サブタンク
73 大気開放通路
74 第1開閉バルブ
75 第2開閉バルブ