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特許7522947フレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】フレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/16 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C09D175/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024051121
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 文男
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204585(JP,A)
【文献】特開2023-119468(JP,A)
【文献】特開2016-11365(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートと、を含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートと、
4官能チオール化合物と、
を含む、硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物の固形分100質量%における前記ウレタン(メタ)アクリレートの量が80~98質量%である、
フレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記4官能チオール化合物がペンタエリスリトール由来の4官能チオール化合物を含む、請求項1に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートと前記4官能チオール化合物との質量比が90/10~98/2である、請求項1に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートが、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの混合物である、請求項1に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフィルムにコーティングするために用いられる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化可能な硬化性樹脂組成物をフィルムの表面を保護するためのコーティング剤として用いることが知られている。例えば、特許文献1には、特定のウレタン(メタ)アクリレート、及び、多官能(メタ)アクリレートと多官能チオールとの反応生成物を含む硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0003】
近年、例えばディスプレイ用途において、繰り返し屈曲して使用されるフレキシブルディスプレイが普及しつつある。フレキシブルディスプレイには、折り畳み可能なディスプレイであるフォルダブルディスプレイや、筒状に巻くことができるディスプレイであるローラブルディスプレイなどがあり、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯電子機器に組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-113414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなフレキシブルディスプレイに用いられる光学フィルムにおいて、表面に形成されるコーティング膜には、繰り返し屈曲しても筋が付きにくいという屈曲性が求められるとともに、表面が擦られても傷が付きにくいこと、すなわち耐擦傷性が求められる。一般に表面硬度を高くすることで耐擦傷性は向上する傾向にあるが、硬度を高めると柔軟性が低下して屈曲性が低下する傾向があり、屈曲性と耐擦傷性を両立することは容易ではない。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、屈曲性と耐擦傷性に優れる硬化膜を形成することができるフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートと、を含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートと、
4官能チオール化合物と、
を含む、フレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
[2] 前記4官能チオール化合物がペンタエリスリトール由来の4官能チオール化合物を含む、[1]に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレートと前記4官能チオール化合物との質量比が90/10~98/2である、[1]又は[2]に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
[4] 前記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートが、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの混合物である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物。
[5] 水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートと、を含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートと、4官能チオール化合物と、を含む硬化性樹脂組成物の、フレキシブルフィルムコーティングのための使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係るフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物であると、屈曲性及び耐擦傷性に優れる硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」という。)は、下記(A)成分及び(B)成分を含む。
(A)成分:水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートと、を含む原料の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート。
(B)成分:4官能チオール化合物。
【0010】
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを表す。
【0011】
[(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート]
(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートとを必須原料として反応させて得られるものであり、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートに含まれる水酸基と脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基とが反応してウレタン結合が形成される。
【0012】
(ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート)
本実施形態では、(A)成分の原料(反応成分)として、水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートが用いられる。水酸基価が240mgKOH/g以下であることにより、硬化膜の耐擦傷性の低下を抑えることができる。水酸基価が150mgKOH/g以上であることにより、硬化膜が伸びやすくなり、繰り返し屈曲により筋が付くのを抑制することができる。ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの水酸基価は、155~230mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは180~230mgKOH/gである。
【0013】
本明細書において、水酸基価はJIS K0070-1992に準じて測定される。詳細には、試料(ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート)を、無水酢酸/ピリジン(15質量部/85質量部)に溶解させる。その後、90℃で1.5時間反応させた後、少量の水を加え、さらに10分間反応させ、その後に、室温まで冷却する。そして、指示薬としてフェノールフタレインを加え、1mol/L水酸化カリウム(KOH)エタノール溶液で滴定することにより、水酸基価が求められる。
【0014】
ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸が反応して得られるものであり、ペンタエリスリトールの水酸基の水素原子が(メタ)アクリロイル基に置換されたものである。水酸基価は、置換された水酸基の数に応じた値となる。ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応は、公知方法で行うことができる。これにより、ペンタエリスリトールに対して(メタ)アクリル酸が1つ付加したペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、2つ付加したペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、3つ付加したペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、4つ付加したペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが形成されてもよく、通常はこれら(メタ)アクリレートの2種以上を含む混合物である。なお、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートは水酸基を持たないため、脂肪族ポリイソシアネートとは反応しないが、本実施形態ではペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートも含めて原料(反応成分)とする。
【0015】
本実施形態において、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの混合物であることが好ましい。一実施形態において、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート100質量%は、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート5~35質量%、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート35~55質量%、及び、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート20~45質量%を含むことが好ましく、より好ましくは、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート10~30質量%、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート40~55質量%、及び、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート25~40質量%を含むことである。ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートの含有割合は、例えば5質量%以下でもよく、0~3質量%でもよい。
【0016】
本実施形態において、脂肪族ポリイソシアネートと反応させる成分は、水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートのみでもよいが、効果が損なわれない限り、ポリオール等の他の水酸基含有成分を含んでもよい。好ましい実施形態において、水酸基含有成分は、上記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを90質量%以上含むことである。すなわち、水酸基含有成分100質量%中に上記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを90質量%以上含むことが好ましい。
【0017】
他の水酸基含有成分としては、特に限定されず、例えば、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(脂肪族ポリイソシアネート)
本実施形態では、(A)成分の原料(反応成分)として、脂肪族ポリイソシアネートが用いられる。脂肪族ポリイソシアネートを上記特定の水酸基価を持つペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと反応させて得られたウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、硬化膜の耐擦傷性を向上することができる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、これら脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アロファネート体、アダクト体などが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本実施形態において、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと反応させる成分は、脂肪族ポリイソシアネートのみでもよいが、効果が損なわれない限り、他のポリイソシアネートを含んでもよい。好ましい実施形態において、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート(好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート)を90質量%以上含むことである。すなわち、ポリイソシアネート100質量%中に脂肪族ポリイソシアネートを90質量%以上含むことが好ましい。
【0021】
他のポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアヌレート体、アロファネート体、アダクト体などが挙げられる。
【0022】
上記のペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと脂肪族ポリイソシアネートを含む原料の反応は、公知の方法で行うことができ、特に限定されない。ペンタエリスリトールと脂肪族ポリイソシアネートとの仕込み比は、硬化膜の硬度と安全性の観点から、水酸基(OH)とイソシアネート基(NCO)とのモル比([OH]/[NCO])で、例えば1.01~1.30であることが好ましく、より好ましくは1.05~1.20である。
【0023】
原料における上記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、両者の合計量で、原料(反応成分)100質量%に対して80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0024】
反応に際しては、(メタ)アクリロイル基の重合を阻害する重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、p-t-ブチルカテコール等が挙げられる。
【0025】
反応に際しては、反応を促進するための触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等が挙げられる。
【0026】
また、反応においては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を用いてもよい。
【0027】
[(B)成分:4官能チオール化合物]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物には、(B)成分として4官能チオール化合物が配合される。4官能チオール化合物のチオール基(SH)は、硬化性樹脂組成物の硬化時に、ウレタン(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合と反応してC-S結合を形成する。上記特定のウレタン(メタ)アクリレートに4官能チオール化合物を組み合わせることにより、屈曲性と耐擦傷性を向上することができる。
【0028】
4官能チオール化合物は、分子内に4つのチオール基を有する化合物である。4官能チオール化合物は、ペンタエリスリトール由来の4官能チオール化合物を含むことが好ましい。ペンタエリスリトール由来の4官能チオール化合物は、チオール基を持つ脂肪酸(好ましくは飽和脂肪酸)とペンタエリスリトールとのエステルである。該チオール基を持つ脂肪酸の炭素数は2~5であることが好ましく、より好ましくは2~4である。
【0029】
一実施形態において、4官能チオール化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化1】
【0030】
式中、R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルカンジイル基を表し、より好ましくは炭素数1~3のアルカンジイル基を表す。チオール基は、第1級炭素に結合した第1級チオール基でもよく、第2級炭素に結合した第2級チオール基でもよく、第3級炭素に結合した第3級チオール基でもよいが、好ましくは第2級チオール基である。すなわち、4官能チオール化合物は、1級チオールでもよく、2級チオールでもよく、3級チオールでもよいが、好ましくは2級チオールである。
【0031】
4官能チオール化合物の具体例としては、上記一般式(1)で表されるものとして、例えばペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が特に好ましい。
【0032】
(B)成分の4官能チオール化合物は、ペンタエリスリトール由来の4官能チオール化合物(好ましくは、一般式(1)で表される化合物)を70質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは80質量%以上含むことであり、更に好ましくは90質量%以上含むことであり、100質量%でもよい。
【0033】
[硬化性樹脂組成物]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートと(B)成分の4官能チオール化合物を含有するものであり、活性エネルギー線を照射されることで硬化可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0034】
該硬化性樹脂組成物において、(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートと(B)成分の4官能チオール化合物との質量比(A)/(B)は90/10~98/2であることが好ましい。該質量比(A)/(B)が90/10以上であることにより耐擦傷性の向上効果を高めることができる。該質量比(A)/(B)が98/2以下であることにより屈曲性の向上効果を高めることができる。該質量比(A)/(B)は、より好ましくは92/8~97/3であり、更に好ましくは93/7~96/4である。
【0035】
該硬化性樹脂組成物における(A)成分の含有量は特に限定されず、固形分100質量%における(A)成分の量として70~98質量%でもよく、80~97質量%でもよく、90~96質量%でもよい。
【0036】
該硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート及び4官能チオールのみで構成されてもよいが、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
光重合開始剤の含有量としては、特に限定されず、例えば、上記(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1~20質量部でもよく、0.5~10質量部でもよく、1~5質量部でもよい。
【0038】
該硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、塗布時の粘度を調整するために、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン等の芳香族類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらの有機溶剤はいずれか1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
該硬化性樹脂組成物には、また、本実施形態の効果が損なわれない範囲で、(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマー、4官能以外のチオール化合物、アクリル樹脂、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤、フィラー、染料、顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、界面活性剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、ジルコニウム化合物、防腐剤等が配合されてもよい。
【0040】
該硬化性樹脂組成物は、フレキシブルフィルムにコーティングするために用いることができ、フレキシブルフィルムの表面を保護することができる。該硬化性樹脂組成物は、フレキシブルフィルムの基材に塗布された後、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができ、基材表面に硬化膜が形成される。硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、塗布後に乾燥して有機溶剤を除去した後、活性エネルギー線を照射することにより硬化させてもよい。
【0041】
フレキシブルフィルムの基材としては、繰り返し屈曲可能な柔軟性を持つものであれば特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等からなる樹脂フィルム、ガラスフィルム等が挙げられる。
【0042】
本明細書において、「フィルム」は、シートも含む概念である。上記の樹脂フィルムやガラスフィルム等のフレキシブルフィルムの基材の厚さは、特に限定されず、例えば10~250μmでもよく、20~100μmでもよく、30~80μmでもよい。
【0043】
該硬化性樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、グラビア、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられる。
【0044】
基材上に塗布された硬化性樹脂組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。これらの中でも紫外線照射により硬化させることが好ましい。その場合、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LEDランプ等を用いて、30~3,000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させてもよい。
【0045】
該硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜の厚さは、特に限定されず、例えば1~10μmでもよく、2~5μmでもよい。
【0046】
該硬化膜の硬度は、特に限定されず、JIS K5600-5-4:1999に準拠して測定される鉛筆硬度が、例えば、3H以上でもよく、3H~5Hでもよい。
【0047】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物から形成される硬化膜を有するフレキシブルフィルムは、様々な用途に用いられる。例えば、フレキシブルディスプレイ用光学フィルム、車両内装用又は外装用フィルム、建材用加飾フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはフレキシブルディスプレイ用光学フィルムに用いられることである。
【0048】
フレキシブルディスプレイ用光学フィルムとは、繰り返し屈曲して使用されるフレキシブルディスプレイに用いられる光学フィルムである。フレキシブルディスプレイとしては、折り畳み可能なディスプレイであるフォルダブルディスプレイ、筒状に巻くことができるディスプレイであるローラブルディスプレイ等が挙げられる。例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯電子機器に組み込まれるフレキシブルディスプレイが挙げられる。
【実施例
【0049】
以下、実施例及び比較例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。
【0050】
ペンタエリスリトールアクリレート1~3の合成例を以下に示す。
【0051】
[ペンタエリスリトールアクリレート1]
(水酸基価205mgKOH/gのペンタエリスリトールアクリレート)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1151質量部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(Perstorp社製「Pentaerythritol mono」)604質量部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1質量部、トルエン552質量部を添加し、混合した。その後、減圧下において、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持しつつ、反応するペンタエリスリトール中の全水酸基の56%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行った。反応終了後に、トルエン353質量部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.1倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加することによって中和処理を実施し、それにより過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。その後、有機層を分離し、攪拌しながら有機層100質量部に対して水10質量部を添加することにより水洗処理を行った。その後、再度、有機層を分離し、減圧下において加熱することによりトルエンを留去した。得られたペンタエリスリトールアクリレート1は860質量部であり、水酸基価は205mgKOH/gであった。
【0052】
HPLC分析によるペンタエリスリトールアクリレート1のジ体、トリ体及びテトラ体の比率は以下のとおりであった。
ペンタエリスリトールジアクリレート 24質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 45質量%
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 31質量%
【0053】
[ペンタエリスリトールアクリレート2]
(水酸基価158mgKOH/gのペンタエリスリトールアクリレート)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1151質量部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(Perstorp社製「Pentaerythritol mono」)604質量部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1質量部、トルエン552質量部を添加し、混合した。その後、減圧下において、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持しつつ、反応するペンタエリスリトール中の全水酸基の68%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行った。反応終了後に、トルエン353質量部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.1倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加することによって中和処理を実施し、それにより過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。その後、有機層を分離し、攪拌しながら有機層100質量部に対して水10質量部を添加することにより水洗処理を行った。その後、再度、有機層を分離し、減圧下において加熱することによりトルエンを留去した。得られたペンタエリスリトールアクリレート2は649質量部であり、水酸基価は158mgKOH/gであった。
【0054】
HPLC分析によるペンタエリスリトールアクリレート2のジ体、トリ体及びテトラ体の比率は以下のとおりであった。
ペンタエリスリトールジアクリレート 10質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 51質量%
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 39質量%
【0055】
[ペンタエリスリトールアクリレート3]
(水酸基価229mgKOH/gのペンタエリスリトールアクリレート)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサーを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸1151質量部(16.0モル)、ペンタエリスリトール(Perstorp社製「Pentaerythritol mono」)604質量部(4.44モル)、パラトルエンスルホン酸43.9質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.1質量部、トルエン552質量部を添加し、混合した。その後、減圧下において、空気を吹き込みながら反応温度約100℃を維持しつつ、反応するペンタエリスリトール中の全水酸基の50%がエステル化されるまで反応させた。反応は縮合水を除去しながら行った。反応終了後に、トルエン353質量部を追加した。このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1.1倍モル量に相当する20質量%水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加することによって中和処理を実施し、それにより過剰なアクリル酸及びパラトルエンスルホン酸を除去した。その後、有機層を分離し、攪拌しながら有機層100質量部に対して水10質量部を添加することにより水洗処理を行った。その後、再度、有機層を分離し、減圧下において加熱することによりトルエンを留去した。得られたペンタエリスリトールアクリレート3は807質量部であり、水酸基価は229mgKOH/gであった。
【0056】
HPLC分析によるペンタエリスリトールアクリレート3のジ体、トリ体及びテトラ体の比率は以下のとおりであった。
ペンタエリスリトールジアクリレート 30質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 44質量%
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 26質量%
【0057】
[HPLC分析方法]
ペンタエリスリトールアクリレート中の各成分の含有割合は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC、(株)島津製作所製「Prominence-iLC2050C」)分析により求めた。詳細には、カラム(ジーエルサイエンス(株)製「Inertsil ODS-2」、内径4.6mm×長さ250mm)、カラム温度40℃、移動相にメタノール/水=20/80から100/0のグラジエント溶出法で測定した。
【0058】
ペンタエリスリトールアクリレート4,5の詳細は以下のとおりである。
【0059】
・ペンタエリスリトールアクリレート4:東亞合成(株)製「アロニックスM-933」、水酸基価280mgKOH/g。
【0060】
・ペンタエリスリトールアクリレート5:第一工業製薬(株)製「ニューフロンティアPET-3」、水酸基価120mgKOH/g。
【0061】
ウレタンアクリレートUA1~UA3及びUAC1~UAC4の合成例を以下に示す。
【0062】
[ウレタンアクリレートUA1]
フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)21.4質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.05質量部、反応触媒としてジオクチル錫ジネオデカネート0.02重量部、及び、水酸基価205mgKOH/gのペンタエリスリトールアクリレート(アクリレート1)78.6質量部を仕込んだ(モル比[OH]/[NCO]=1.13)。その後、50~80℃にて遊離イソシアネート量が0.1%以下になるまで反応させることにより、ウレタンアクリレートUA1を得た。
【0063】
[ウレタンアクリレートUA2~UA3及びUAC1~UAC4]
ペンタエリスリトールアクリレートの種類及び仕込み量、並びにポリイソシアネートの種類及び仕込み量を下記表1に示すとおりに変更し、その他はウレタンアクリレートUA1と同様にして、ウレタンアクリレートUA2~UA3及びUAC1~UAC4を合成した。表1中のIPDIは、脂環式ポリイソシアネートであるイソホロンジイソシアネートを示し、XDIは、芳香族ポリイソシアネートであるキシリレンジイソシアネートを示す。
【0064】
【表1】
【0065】
[実施例1~6及び比較例1~6]
下記表2,3に示す配合処方(質量部)にメチルエチルケトンを添加して固形分濃度40質量%の塗工液(硬化性樹脂組成物)を調製した。表2,3中のウレタンアクリレートUA1~UA3及びUAC1~UAC4以外の成分の詳細は以下のとおりである。
【0066】
・チオール化合物1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、(株)レゾナック製「カレンズMT PE1」、4官能2級チオール化合物
【0067】
・チオール化合物2:1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、(株)レゾナック製「カレンズMT NR1」、3官能2級チオール化合物
【0068】
・重合開始剤1:IGM Resins B.V.製「Omnirad 184」
【0069】
・重合開始剤2:IGM Resins B.V.製「Omnirad TPO H」
【0070】
上記で得られた塗工液(硬化性樹脂組成物)について、鉛筆硬度、屈曲性、耐擦傷性、及び伸び性を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0071】
[鉛筆硬度]
塗工液を、ガラス板上に乾燥した状態での膜厚が約3μmとなるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させた。その後、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(80W/cm×1灯)を用いて、積算照度600mJ/cmにて照射することにより、塗膜を硬化させた試験片を得た。この試験片に対してJIS K5600-5-4:1999準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0072】
[屈曲性]
塗工液を、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4360」)に乾燥した状態での膜厚が約3μmとなるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させた。その後、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(80W/cm×1灯)を用いて、積算照度600mJ/cmにて照射することにより、塗膜を硬化させたフィルムを得た。塗膜を硬化させたフィルムに対してJIS K5600-5-1:1999に準拠して測定を行い、下記基準で屈曲性を評価した。なお、繰り返し屈曲しても筋が付きにくいという屈曲性の観点からは、この評価がB以上であり、かつ下記の伸び性の評価がB以上であることが好ましい。
A:マンドレル直径が2mmで筋が付かない。
B:マンドレル直径が2mmで筋が付く。
C:マンドレル直径が3mm以上で筋が付く。
【0073】
[耐擦傷性]
塗工液を、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4360」)に乾燥した状態での膜厚が約3μmとなるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させた。その後、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(80W/cm×1灯)を用いて、積算照度600mJ/cmにて照射することにより、塗膜を硬化させたフィルムを得た。塗膜を硬化させたフィルムに対して#0000のスチールウールを用い、荷重250g/cm、ストローク6cmで1000往復の条件で擦傷性試験を行い、試験後の塗膜を硬化させたフィルムを目視で確認し下記基準で評価した。
A:傷本数が2本以下
B:傷本数が3本以上4本以下
C:傷本数が5本以上
【0074】
[伸び性]
塗工液を、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4360」)に乾燥した状態での膜厚が約3μmとなるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させた。その後、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(80W/cm×1灯)を用いて、積算照度600mJ/cmにて照射することにより、塗膜を硬化させたフィルムを得た。この塗膜を硬化させたフィルムの表裏に厚さ75μmのPET保護フィルム(東京フィルムサービス(株)製「KTF」)を貼り合わせ、型抜きプレス機で打ち抜いた後にPET保護フィルムを剥がして試験幅5mm、試験長30mm(引張試験でのつかみ部を除く長さ)の試験片を作製した。この試験片を引張試験装置(株式会社エー・アンド・デイ製「TENSILON ORIENTEC RTC-1225A」)で試験速度5mm/minで引張り、塗工膜表面に亀裂が入った時点での伸び(mm)を測定値として求めた。この操作をn=5で行い、測定値が近い3データの平均値について次の式から伸び性を計算して下記基準で評価した。
伸び性=(測定値が近い3データの平均値(mm)/30(mm))×100(%)
A:10%以上
B:8%以上10%未満
C:8%未満
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
結果は表2,3に示すとおりである。比較例1,2は、ペンタエリスリトールアクリレートと脂肪族ポリイソシアネートとの反応生成物であるウレタンアクリレートを4官能チオール化合物と併用した例である。しかしながら、比較例1では、ペンタエリスリトールアクリレートの水酸基価が規定値よりも大きく、耐擦傷性に劣っていた。比較例2では、ペンタエリスリトールアクリレートの水酸基価が規定値よりも小さく、伸び性に劣っており、繰り返し屈曲しても筋が付きにくいとの屈曲性の点で劣るものであった。
【0078】
比較例3では、ウレタンアクリレートを構成するポリイソシアネートが脂環式ポリイソシアネートであったため、硬度が低く、耐擦傷性に劣っていた。比較例4では、ウレタンアクリレートを構成するポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートであったため、耐擦傷性及び屈曲性に劣っていた。
【0079】
比較例5では、チオール化合物を配合していないため、屈曲性に劣っていた。比較例6では、ウレタンアクリレートと併用するチオール化合物が3官能チオール化合物であり、耐擦傷性に劣っていた。
【0080】
これに対し、特定の水酸基価を持つペンタエリスリトールアクリレートと脂肪族ポリイソシアネートとの反応生成物であるウレタンアクリレートを、4官能チオール化合物と併用した実施例1~6であると、耐擦傷性に優れるとともに、屈曲性及び伸び性に優れていた。
【0081】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0082】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】屈曲性と耐擦傷性に優れる硬化膜を形成することができるフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係るフレキシブルフィルムコーティング用硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートと、4官能チオール化合物とを含む。該ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基価が150~240mgKOH/gのペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、脂肪族ポリイソシアネートと、を含む原料の反応生成物である。
【選択図】なし