(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】セメント系物質の充填管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
(21)【出願番号】P 2024068416
(22)【出願日】2024-04-19
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2023083375
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊男
(72)【発明者】
【氏名】駒田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】村田 康平
(72)【発明者】
【氏名】山口 潤
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-229968(JP,A)
【文献】特開2022-010096(JP,A)
【文献】特開2002-207021(JP,A)
【文献】特開2018-040681(JP,A)
【文献】特開2009-008521(JP,A)
【文献】特開2013-205327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00 - E04G 21/10
G01B 7/00 - G01B 7/34
G01F 23/00
G01F 23/14 - G01F 23/2965
G01F 23/80
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系物質の充填空間に2芯被覆電線からなる検出プローブを設置し、該検出プローブを用いて静電容量を測定して前記セメント系物質の充填状況を検知する充填管理方法であって、
2芯被覆電線の中間部に2芯の各芯の被覆部を除去した非被覆部を設けるとともに、前記2芯の一端側の末端を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置の接続線とし、前記被覆部及び前記非被覆部を一体形成した第1の検出プローブ及び/又は、
2芯被覆電線の1芯の中間部に被覆部を除去した非被覆部を設けるとともに、2芯の各一端側の端末を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置の接続線とし、前記被覆部及び前記非被覆部を一体形成した第2の検出プローブを設置し、
前記セメント系物質の充填空間への前記セメント系物質の充填時に、
前記第1の検出プローブ及び前記第2の検出プローブを設置した場合、設置した前記第1の検出プローブ及び前記第2の検出プローブに交流電圧を印加して、
前記第1の検出プローブ又は前記第2の検出プローブを設置した場合、設置した前記第1の検出プローブ又は前記第2の検出プローブに交流電圧を印加して、
前記2芯被覆電線の被覆部において静電容量を測定するとともに、
前記第1の検出プローブにおいては2芯の非被覆部における静電容量を測定し、
前記第2の検出プローブにおいては1芯の非被覆部における静電容量を測定し、
前記2芯の被覆部における静電容量と前記非被覆部の静電容量の値の変化に基づいて、前記セメント系物質の充填状況を検知することを特徴とするセメント系物質の充填管理方法。
【請求項2】
前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブをセメント系物質の充填空間に、鉛直かつ非被覆部が上端側の所定の位置になるように設置し、
前記2芯の被覆部において静電容量を測定して充填高さを測定するとともに、
前記第1の検出プローブにおいては上端側の所定位置に設けた2芯の非被覆部における静電容量を測定し、
前記第2の検出プローブにおいては1芯の非被覆部における静電容量を測定し、前記2芯の被覆部における静電容量と前記非被覆部の静電容量の変化により、非被覆部の所定位置の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項3】
前記第2の検出プローブを設置する場合であって、前記第2の検出プローブを前記セメント系物質の充填空間に鉛直に設置した状態において、
前記第2の検出プローブの2芯の被覆部における静電容量の変化を検出した充填高さを、1芯が被覆部で他の1芯が非被覆部の定点高さを検出した高さに修正することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項4】
前記セメント系物質の充填前の状態における静電容量の初期値を0Fに補正して測定を開始することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項5】
予め、セメント系物質の充填状況と、セメント系物質の硬化温度及び硬化時間の変化に伴う静電容量の変化を調べ、充填状況に対する静電容量の比例定数を求めておき、実際のセメント系物質の充填状況の検知に反映させることを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項6】
前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブを、前記セメント系物質の充填状況の検知位置に1本又は2本以上水平方向に配設し、被覆部と非被覆部の静電容量の変化
、又は被覆部と非被覆部の静電容量及び電気抵抗の変化に基づいて、前記セメント系物質の充填状況を検知することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項7】
前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブにおける2芯被覆電線がフラットケーブルであることを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項8】
静電容量の測定方法が、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブに交流電流を印加した状態でインピーダンスと位相角を測定し、容量性リアクタンスを算出し、静電容量を求める方法であり、前記交流電流が5mVrms~5Vrms、周波数が1KHz~5MHzの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項9】
前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブの電気の入力及び計測装置の接続側の端部に、接続用コネクタを用いて他の2芯被覆電線を接続することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項10】
前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブの前記他端側と計測装置とを、前記検出プローブとは異なる導線を用いて接続することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項11】
前記セメント系物質の充填状況の検知データを無線通信装置により表示装置に送信することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【請求項12】
前記セメント系物質の充填状況を画面表示することを特徴とする請求項1に記載のセメント系物質の充填管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化前のコンクリート(フレッシュコンクリート)や硬化前のモルタル(フレッシュモルタル)等のセメント系物質の充填管理方法に関し、詳しくは、トンネルの覆工コンクリートやニューマチックケーソン等の充填空間へのセメント系物質の充填状況を管理するセメント系物質の充填管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物を施工する際には、型枠で囲まれた閉塞空間内にフレッシュコンクリート等を充填する。例えば、山岳トンネル工事では、掘削した内空の地山面を被覆する覆工コンクリートを打込む際、セントルと呼ばれているトンネルアーチ形状の型枠が用いられる。このような用途に用いられる一般的な型枠長は9~12mで、コンクリートの充填1スパンをその長さで行い、その後トンネル方向に順次移動して施工する。一般に掘削した地山面は防水シートで被覆しており、防水シート内空面とセントル外周面との間の空間にセントル型枠面に設けた検査窓を充填口としてコンクリートポンプ車で覆工用コンクリートを充填する。
【0003】
コンクリートの打込み高さ50cm程度毎にバイブレータによる締固めを行い、検査窓を切り替えて左右が水平レベルで打ち上がるように打ち込みを進める。さらに、コンクリートの打込み高さに応じて検査窓を上方に切り替えつつ打込みを進め、最後に天端部吹上げ口1箇所からの打込みでコンクリートを充填する。
【0004】
天端部吹上げ口からの打込みまでは、セントル型枠に偏圧がかからないように、左右均等にできるだけ水平に、コンクリートを連続して打込まなければならないとされており、打込み時の左右のコンクリート高さに大きな差が生じると、セントルに大きな圧力や偏圧が作用して横振れし、セントルの位置が移動したり、偏荷重による型枠変形や押出しによる施工目地部に不具合が発生するおそれがある。また、打重ね時間が長くなるとコールドジョイントの原因にもなる。
【0005】
このような施工上の不具合を防ぐため、コンクリートの打込み高さを管理することは品質管理上重要となるが、従来、この打込み高さの確認は、狭隘なセントル内に複数ある検査窓から作業員が照明を当てながら目視により行われていた。また、検査窓から離れた場所については目視確認が困難になることもあった。
【0006】
また、覆工コンクリートをトンネル天端部とセントル上部との間の閉塞空間に充填するとき、トンネル天端部の隅々まで密実に充填することが重要である。そのために、充填コンクリートが、天端部長手方向に沿って確実に充填されていることを確認する必要があるが、閉塞空間であるため目視確認ができず、充填中に作業員が妻型枠からの充填コンクリートやブリージング水の漏れ状況や漏れ位置等を見ながら、充填状況を推測している。
【0007】
そこで、充填コンクリートの充填の確認、充填高さを検出するために、これまでに以下に示す提案がなされている。例えば、一定間隔で隔てた2導体からなる検出部をコンクリート充填用型枠内の所定の位置に固定し、コンクリートを検出部の間隙に充填しつつ型枠内へ密に充填した時の充填時静電容量を計測し、充填時静電容量と充填時静電容量との比較により充填したコンクリートの充填度を求める静電容量によるコンクリート充填確認方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、充填されるコンクリートの高さ方向に沿って対向延設される少なくとも一対の電極棒を備えたレベルセンサを設置し、電極棒の静電容量に基づいて、コンクリートの打込み材料を確認し、また、静電容量の変化に基づいて、充填コンクリートの打ち上がり高さを測定する方法(特許文献2)や、水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線を絶縁材で被覆してなるレベルセンサを空所内に設置し、前記空所にコンクリートが充填されるのに伴い、コンクリートの比誘電率に応じて一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて空所に充填されたコンクリートの打ち上がり高さを算出する方法(特許文献3)が提案されている。
【0009】
また、トンネルの内壁面に前記内壁面を覆うように取着される防水シートであって、防水シートに、コンクリートに接触する長さに応じて検出量が変化する細長のレベルセンサーが、その長手方向を前記トンネルの長手方向あるいは周方向に沿って延在するように取り付けられ、レベルセンサーの検出を一対の電極線間に生じる静電容量で行う方法が提案されている(特許文献4)。
【0010】
さらに、二つの棒状電極を備えるフレッシュコンクリートセンサを、充填状況を確認したい箇所に配置し、当該フレッシュコンクリートセンサに対して商用電源から供給される交流電圧を印加して電気抵抗を測定し、フレッシュコンクリートの充填を検出する方法(特許文献5)や、シート部材と充填物の充填状況を検知するセンサとを有し、前記シート部材は、基材と、この基材に沿って配線されたリード線とを有し、前記センサは、上部電極層、圧電層、下部電極層が順に積層された圧電式センサ又は静電容量式センサと、2つの電極が所定の離隔幅で対向配置された抵抗式センサとから構成され、覆工コンクリートなどの充填物の充填状況を検知する方法(特許文献6)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平6-229968号公報
【文献】特開平11-287045号公報
【文献】特開2012-172375号公報
【文献】特開2019-78047号公報
【文献】特開平9-228639号公報
【文献】特開2018-179995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の提案では、コンクリート充填用型枠内において、一定間隔で隔てた2導体からなる検出部でコンクリートの充填時、充填時の静電容量を計測し、その比較により充填したコンクリートの充填度を求めている。また、静電容量の検出は、電線2本の導体部分のみで計測するもので、充填時静電容量と打設時静電容量を比較しその位置に充填コンクリートが充填されたと高さ方向に段階的に充填度を検出している。しかしながら、この方法は断続的な計測であり、管理精度が劣るという問題があった。
【0013】
特許文献2の提案では、対向延設される少なくとも一対の電極棒の静電容量に基づいて、コンクリートの打ち上がり高さを連続的に測定できるとしている。しかしながら、この場合、一対の電極棒を備えたレベルセンサーを設置することになり、設備的に大きなものになる。また、具体的に静電容量とコンクリートの打ち上がり高さの関係が記載されていない。
【0014】
特許文献3の提案は、上下に延在する空所にコンクリートが充填されるのに伴い、一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて充填されたコンクリートの打ち上がり高さのみを算出する方法である。
【0015】
特許文献4の提案は、トンネルの内壁面の防水シートに長手方向あるいは周方向に沿って延在する一対の電極線間にコンクリートが充填されるのに伴い生じる静電容量に基づいて、充填されたコンクリートの打ち上がり高さと水平部にコンクリートが浸ったことを検知する。しかしながら、天端部の水平部については、レベルセンサーのどの位置にコンクリートが充填されたかはわからない。
【0016】
特許文献5の提案は、棒状電極間にフレッシュコンクリートが達したときの電気抵抗を測定することにより、そのフレッシュコンクリートがその棒状電極の位置に充填されたことを検出できる。しかしながら、充填状況を検出したい各位置の数だけリード線を有する棒状電極を製作する必要があり、検出部の数だけ費用が発生する。
【0017】
特許文献6の提案は、シート部材と充填物の充填状況を検知するセンサとして、シート部材が圧電式センサ、静電容量式センサ、抵抗式センサの各センサを有し、総合的に充填コンクリートの充填状況を判断している。しかしながら、センサが複雑であり高価になるという問題がある。
【0018】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、充填中のフレッシュコンクリートの充填位置を、簡単な構造の検出プローブを用いて容易かつ低コストで検出することが可能なセメント系物質の充填管理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のセメント系物質の充填管理方法は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
【0020】
第1に、本発明のセメント系物質の充填管理方法は、セメント系物質の充填空間に2芯被覆電線からなる検出プローブを設置し、該検出プローブを用いて静電容量を測定して前記セメント系物質の充填状況を検知する充填管理方法であって、
2芯被覆電線の中間部に2芯の各芯の被覆部を除去した非被覆部を設けるとともに、前記2芯の一端側の末端を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置の接続線とし、前記被覆部及び前記非被覆部を一体形成した第1の検出プローブ及び/又は、
2芯被覆電線の1芯の中間部に被覆部を除去した非被覆部を設けるとともに、2芯の各一端側の端末を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置の接続線とし、前記被覆部及び前記非被覆部を一体形成した第2の検出プローブを設置し、
前記セメント系物質の充填空間への前記セメント系物質の充填時に、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブに交流電圧を印加して、2芯間の静電容量を測定し、静電容量の値の変化に基づいて、前記セメント系物質の充填状況を検知することを特徴とする。
第2に、上記第1の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブをセメント系物質の充填空間に、鉛直かつ非被覆部が上端側の所定の位置になるように設置し、
前記2芯の被覆部において静電容量を測定して充填高さを測定するとともに、
前記第1の検出プローブにおいては上端側の所定位置に設けた2芯の非被覆部における静電容量を測定し、
前記第2の検出プローブにおいては1芯の非被覆部における静電容量を測定し、前記2芯の被覆部における静電容量と前記非被覆部の静電容量の変化により、非被覆部の所定位置の検出を行うことが好ましい。
第3に、上記第1又は第2の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第2の検出プローブを前記セメント系物質の充填空間に鉛直に設置した状態において、
前記第2の検出プローブの2芯の被覆部における静電容量の変化を検出した充填高さを、1芯が被覆部で他の1芯が非被覆部の定点高さを検出した高さに修正することが好ましい。
第4に、上記第1から第3の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記セメント系物質の充填前の状態における静電容量の初期値を0Fに補正して測定を開始することが好ましい。
第5に、上記第1から第4の発明のセメント系物質の充填管理方法において、予め、セメント系物質の充填状況と、セメント系物質の硬化温度及び硬化時間の変化に伴う静電容量の変化を調べ、充填状況に対する静電容量の比例定数を求めておき、実際のセメント系物質の充填状況の検知に反映させることが好ましい。
第6に、上記第1から第5の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブを、前記セメント系物質の充填状況の検知位置に1本又は2本以上水平方向に配設し、被覆部と非被覆部の静電容量及び/又は電気抵抗の変化に基づいて、前記セメント系物質の充填状況を検知することが好ましい。
第7に、上記第1から第6の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブにおける2芯被覆電線がフラットケーブルであることが好ましい。
第8に、上記第1から第7の発明のセメント系物質の充填管理方法において、静電容量の測定方法が、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブに交流電流を印加した状態でインピーダンスと位相角を測定し、容量性リアクタンスを算出し、静電容量を求める方法であり、前記交流電流が5mVrms~5Vrms、周波数が1KHz~5MHzの範囲であることが好ましい。
第9に、上記第1から第8の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブの電気の入力及び計測装置の接続線側の端部に、接続用コネクタを用いて2線被覆導線を接続することが好ましい。
第10に、上記第1から第9の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記第1の検出プローブ及び/又は前記第2の検出プローブの前記他端側と計測装置とを、前記検出プローブとは異なる導線を用いて接続することが好ましい。
第11に、上記第1から第10の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記セメント系物質の充填状況の検知データを無線通信装置により表示装置に送信することが好ましい。
第12に、上記第1から第11の発明のセメント系物質の充填管理方法において、前記セメント系物質の充填状況を画面表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセメント系物質の充填管理方法によれば、充填中のフレッシュコンクリートの充填位置を、簡単な構造の検出プローブを用いて容易かつ低コストで検出することが可能セメント系物質の充填管理方法となる。特に、トンネルの二次覆工やニューマチックケーソンの作業室内のような閉塞空間に対するフレッシュコンクリート充填状況が目視できない場所での充填高さ等の充填確認に有効である。また、本発明の充填管理方法によれば、コンクリートの充填状況が精密かつビジュアル的に表示でき、充填ステップや充填速度の遵守、打ち重ね時間等の詳細な管理を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)は、本発明に係るセメント系物質の充填管理方法の測定に使用する第1の検出プローブの被覆部にセメント系物質が充填されている状態を示す正面図であり、(b)は、第1の検出プローブの非被覆部までセメント系物質が充填されている状態を示す正面図である。
【
図2】フレッシュコンクリートが被覆電線に充填された長さと静電容量の関係を示すグラフである。
【
図3】(a)は、第1の検出プローブで、フィーダー線の相対する2線の被覆部を除去した実施形態の概略図であり、(b)は、(a)におけるフレッシュコンクリート中の非被覆部の長さと静電容量の関係を示すグラフである。
【
図4】(a)は、第1の検出プローブで、単芯2線の平形ケーブルにおいて、前後に非被覆部が離隔した実施形態の概略図であり、(b)は、(a)におけるフレッシュコンクリート中の非被覆部離隔の長さと静電容量の関係を示すグラフである。
【
図5】(a)は、第2の検出プローブで、フィーダー線において、1芯の途中の被覆部を除去した実施形態を示す概略図であり、(b)は、(a)におけるフレッシュコンクリート中の非被覆部の長さと静電容量の関係を示すグラフである。
【
図6】第1の検出プローブで、フィーダー線におけるフレッシュコンクリートの充填高さ及び充填と静電容量の関係を示すグラフである。
【
図7】第2の検出プローブで、フィーダー線におけるフレッシュコンクリートの充填高さ及び充填と静電容量の関係を示すグラフである。
【
図8】(a)は、トンネルの二次覆工における空間で、フレッシュコンクリートの充填高さ及び天端部の充填を本発明の検出プローブで計測する場合の斜視図であり、(b)は、(a)の断面図である。
【
図9】ニューマチックケーソンにおける作業室内の空間で、フレッシュコンクリート充填高さと作業室天端部の充填を本発明の検出プローブで計測する正面断面図である。
【
図10】トンネルの二次覆工において、検出部を有する複数の単線2芯の検出プローブを天端部に長手方向に設置した実施形態を示す斜視図である。
【
図11】ニューマチックケーソンにおいて、検出部を有する複数の単線2芯の検出プローブを作業室の天井に設置した実施形態を示す断面図及び平面図である。
【
図12】(a)は、被覆電線のフレッシュコンクリート中の電気抵抗であり、(b)は、非被覆電線のフレッシュコンクリート中の電気抵抗である。
【
図13】(a)は、一対の非被覆部を複数設けているフラットケーブルを用いた検出プローブの平面図であり、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【
図14】(a)は、電線同士を接続具を用いて接続し、検出プローブにしている正面図であり、(b)は、平面図である。
【
図15】検出プローブの他端側に同軸ケーブルを接続した実施形態を示す正面図である。
【
図16】計測装置で測定したデータを無線装置で表示装置に送信している実施形態の斜視図である。
【
図17】(a)は、トンネルの二次覆工におけるフレッシュコンクリートの充填高さを画面表示している図であり、(b)は、トンネルの二次覆工におけるフレッシュコンクリートの天端部充填状況を画面表示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るセメント系物質の充填管理方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係るセメント系物質の充填管理方法の測定に使用する第1の検出プローブの被覆部にコンクリートが充填されている状態を示す正面図であり、(b)は、第1の検出プローブの非被覆部までコンクリートが充填されている状態を示す正面図である。また、
図5(a)は、第2の検出プローブで、フィーダー線において、1芯の途中の被覆部を除去した実施形態を示す概略図である。なお、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。
【0024】
本実施形態のセメント系物質の充填管理方法は、セメント系物質20の充填空間に2芯被覆電線からなる検出プローブ1を設置し、該検出プローブ1により、静電容量を測定してセメント系物質20の充填状況を検知する充填管理方法である。
【0025】
また、本実施形態のセメント系物質の充填管理方法においては、2芯被覆電線の中間部に2芯の各芯の被覆部10を除去した非被覆部11を設けるとともに、2芯の一端側の末端を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置3の接続線とし、被覆部10及び非被覆部11を一体形成した第1の検出プローブ12(1)又は、第2の検出プローブ13(1)として、2芯被覆電線の1芯の中間部に被覆部10を除去した非被覆部11を設けるとともに、2芯の各一端側の端末を絶縁処理し、他端側を電気の入力及び計測装置3の接続線とし、被覆部10及び非被覆部11を一体形成した検出プローブ1の少なくともいずれかを用いるものである。
【0026】
本実施形態の検出プローブ1としては、2芯被覆電線の2芯又は1芯の導線の被覆部10を部分的に除去したものであり、例えば、
図3(a)に示すような、フィーダー線における2芯の両芯の被覆部10を除去して非被覆部11を形成した第1の検出プローブ12(1)の実施形態や、
図5(a)に示すような、2線のうちの1線の被覆部10の一部を除去して非被覆部11を形成した第2の検出プローブ13(1)の実施形態を例示することができる。第1の検出プローブ12(1)及び第2の検出プローブ13(1)の何れにおいても、2芯の各一端側の端末は絶縁処理され、他端側が電気の入力及び計測装置3の接続線として形成されている。
【0027】
検出プローブ1は2芯被覆付きの電線であれば、いずれの電線を使用することができ限定されないが、例えば、被覆が対向して離隔した状態はフィーダー線において平行して対向した2線の被覆部10を一定長さ除去し、非被覆部11を形成することができる。また、単線2芯の被覆電線において、
図4(a)に示すように、平行した2線の前後にずらして離隔した位置の被覆部10を一定長さ除去し、非被覆部11を形成する実施形態も例示することができる。
【0028】
さらに、一般の撚線2芯の被覆電線において、平行した2線の前後にずらして離隔した位置の被覆部10を一定長さ除去し、非被覆部11を形成することができる。なお、撚線が細い場合などは、複数の撚線をハンダ付けし一体化したり、非被覆部11を切断し金属製圧着スリーブ等を用いて再接続する等して、非被覆部11の強度を高めることもできる。そして、電線の他端部は、そのまま電気の入力及び計測装置3の接続線として計測装置3に接続する。
【0029】
検出プローブ1は、検出する箇所に応じて単数あるいは複数用いることができる。2芯の各々の一端は絶縁されていればよく、絶縁方法としては、シリコン樹脂等の絶縁樹脂材料により端部を絶縁処理したり、絶縁テープを貼り付ける等の方法を用いることができる。なお、フィーダー線としては、特に平行フィーダー線が適している。
【0030】
検出プローブ1における被覆部10の除去範囲、除去部位、除去数は、検出プローブ1の使用用途等に応じて適宜決定することができるが、第1の検出プローブ12(1)においては2芯各々1箇所、第2の検出プローブ13(1)においては1芯の複数個所に設けることが好ましい。
【0031】
上記本実施形態の検出プローブ1は、セメント系物質20を充填する空間2であれば特に限定なく設置することができ、具体的には、建築物の基礎構築のためのコンクリート充填空間2や、トンネルの覆工におけるセメント充填空間2、ニューマチックケーソン工法等における充填空間2への設置を例示することができる。また、本発明において充填空間2に充填するセメント系物質20としては、セメント、コンクリート、モルタル等を例示することができる。
【0032】
図1(a)は、本実施形態の第1の検出プローブ12(1)を充填空間2に設置した状態において、第1の検出プローブ12(1)の被覆部10の途中までセメント系物質20が充填されている状態を示す正面図であり、
図1(b)は、さらに非被覆部11までセメント系物質20が充填されている状態を示す正面図である。
【0033】
図1に示す実施形態の第1の検出プローブ12(1)は、
図3(a)に示す実施形態の第1の検出プローブ12(1)であり、2芯の両非被覆部11が下端部から同寸法の箇所で隣り合うように設けられている。即ち、非被覆部11は、導体が露出している状態で、非被覆部11が対向して離隔した状態に形成されている。
【0034】
そして、この第1の検出プローブ12(1)を充填空間2に設置し、2芯の検出プローブ1に適切な範囲内における測定周波数の交流電流を印加して、
図1(a)から
図1(b)の状態にセメント系物質20が充填されたとき、2芯間の静電容量を計測装置3で測定し、被覆部10と非被覆部11の静電容量の違いにより、その充填されたセメント系物質20の充填状況を検知する。
【0035】
本発明における静電容量の測定方法としては、第1の検出プローブ12(1)又は第2の検出プローブ13(1)において、検出プローブ1のインピーダンスと位相角を測定して容量性リアクタンスを算出し次式に代入することにより静電容量Cを求めることができる。
XC=1/(2πfC)
(XC:容量リアクタンス、f:交流電圧の周波数、C:静電容量)
計測装置3としては、LCRメータ、マルチメータあるいはインピーダンスアナライザ等入力交流信号の静電容量を測定できる機器を好適に用いることができる。
測定用の交流電流の印加条件としては、5mVrms~5Vrms、測定周波数は1KHz~5MHzの範囲が望ましい。また、静電容量の測定範囲は1pF~500nF、単位表示はpFからnFへの切換えが自動切換え可能な計測装置3を用いることが好ましい。
【0036】
以下に、上記実施形態の第1及び第2の検出プローブ12(1)、13(1)を用いて実施した静電容量の測定実験(実験1~6)について説明する。
【0037】
<実験1>
実験1として、第1の検出プローブ12(1)における異なる電線の被覆部10と非被覆部11にフレッシュコンクリート20が充填されたときの静電容量を測定した。静電容量の測定は、測定用交流信号を0.63Vrms、測定周波数を100KHzで測定した。以降の実験においても同様とした。
【0038】
図2は、フレッシュコンクリート20が被覆電線に充填された長さと静電容量の関係についての結果を示したグラフである。
図2のグラフ中、(1)はフィーダー線で、フレッシュコンクリート20中でのフィーダー線の静電容量C(pF)は、電線にフレッシュコンクリート20が浸かる長さにほぼ比例して増加し、単位長さ当りの静電容量C(pF)/mの増加は97pF/m程度であった。
【0039】
また、(2)は単線2芯平行線で、フレッシュコンクリート20中での単線2芯平行線の静電容量C(pF)は、電線にフレッシュコンクリート20が浸かる長さにほぼ比例して増加し、単位長さ当りの静電容量C(pF)/mの増加は54pF/m程度であった。なお、本実験1においては、フィーダー線と単線2芯平行線のフレッシュコンクリート20に浸かる前の環境下における静電容量の値を減じて初期値をゼロ(0F)とした。
【0040】
<実験2>
実験2として、第1の検出プローブ12(1)における非被覆部11の長さと静電容量の関係を確認した。
図3(a)は、第1の検出プローブ12(1)で、フィーダー線の相対する2線の被覆部10を除去した検出プローブ1の非被覆部11の長さと静電容量の関係を示した概略図である。本実験2では、
図3(a)の検出プローブにおける非被覆部11の長さL1を5mm、10mm、15mm、20mmの4ケースについて各々下方から上方にフレッシュコンクリート20を充填したときの静電容量を測定した。
【0041】
図3(b)は、
図3(a)におけるフレッシュコンクリート20中の非被覆部11の長さと静電容量の関係を調べた結果のグラフである。本実験2の結果によると、静電容量が4ケースとも被覆部10が充填されている時点で10pFであったものが、非被覆部11に充填されると60~300nFと著しく増加していることがわかる。これにより、電線の被覆部10から非被覆部11にフレッシュコンクリート20の充填位置が移ったとき、急激に静電容量が大きくなる現象が現れる。このことから、フレッシュコンクリート20が被覆部10を浸しているか、非被覆部11を浸しているかが静電容量を測定することにより判断できることが確認された。
【0042】
また、非被覆部11の長さL1と静電容量とはほぼ比例関係になっている。このように、非被覆部11長さによりフレッシュコンクリート20が充填されるときの静電容量の値が異なることがわかる。
【0043】
<実験3>
実験3として、他の実施形態の第1の検出プローブ14(1)における非被覆部11の長さと静電容量の関係を確認した。
図4(a)は、他の実施形態の第1の検出プローブ14(1)で、単芯2線の平形ケーブルにおいて、前後に非被覆部11が離隔した実施形態の概略図である。本実験3では、非被覆部11の長さを5mmで共通とし、非被覆部11の離隔長さを5mm、10mm、15mm、20mmとした4ケースについて、各々下方から上方へフレッシュコンクリート20を充填したときの静電容量を測定した。
【0044】
図4(b)は、
図4(a)におけるフレッシュコンクリート20中の非被覆部11離隔の長さと静電容量の関係を調べた結果のグラフである。本実験3の結果によると、静電容量が4ケースとも被覆部10が充填されている時点で40pFであったものが、非被覆部11が充填されると70~60nFと著しく増加している。また、非被覆部11の長さL1と静電容量とはほぼ逆比例関係になっている。このように、非被覆部11間のずれ長さによりフレッシュコンクリート20が充填されるときの静電容量の値が異なる。
【0045】
以上、
図4(a)に示す他の実施形態の第1の検出プローブ14(1)によっても、充填空間2にフレッシュコンクリート20が充填されたとき、被覆部10間と非被覆部11間の静電容量の大きな違いにより、そのフレッシュコンクリート20がその電線の非被覆部11の位置まで充填されたことを検知できることが確認された。
【0046】
<実験4>
実験4として、第2の検出プローブ13(1)における非被覆部11の長さと静電容量の関係を確認した。
図5(a)は、フィーダー線において、1芯の途中の被覆部10を除去した第2の検出プローブ13(1)の実施形態の概略図である。本実験4では、非被覆部11の長さL1を5mm、10mm、15mm、20mmの4ケースについて、各々下方から上方へフレッシュコンクリート20を充填したときの被覆部10から非被覆部11にフレッシュコンクリート20が浸かった位置が移行したときの静電容量を測定した。
【0047】
図5(b)は、
図5(a)におけるフレッシュコンクリート20中の非被覆部11の長さと静電容量の関係を調べた結果のグラフである。この実験結果によると、いずれの場合も、被覆部10から非被覆部11に移行したとき、静電容量は9~10上昇した。以上の検出プローブ1の形成や設置方法を考慮して、充填空間2にフレッシュコンクリート20が充填されたとき、被覆部10間と非被覆部11間の静電容量の大きな違いにより、そのフレッシュコンクリート20がその電線の非被覆部11の位置まで充填されたことを検知することができる。
【0048】
また、非被覆部11の長さL1と静電容量とはほぼ比例関係になっている。このように、非被覆部11長さによりフレッシュコンクリート20が充填されるときの静電容量の値が異なる。
【0049】
<実験5>
実験5として、第1の検出プローブ12(1)のフィーダー線における静電容量とフレッシュコンクリート20の充填高さ及び充填との関係を確認した。
図6は、第1の検出プローブ12(1)を用いた充填において、フィーダー線における静電容量とフレッシュコンクリート20の充填高さ及び充填との関係を示すグラフである。このグラフでは、充填空間2が閉塞され、その内部に高さ空間と天端位置を有する空間2で、フレッシュコンクリート20の充填高さと上方の充填を検出する電線を設置し計測する場合に、下方部分の被覆部10で静電容量を測定するとともに、上方の非被覆部11で静電容量を測定した場合の静電容量の変化を示している。
【0050】
検出プローブ1の被覆部10にフレッシュコンクリート20が上方に順次充填されるのに伴ない、検出プローブ1の被覆部10の周囲が下方から上方に向かって充填空間2内の空気からフレッシュコンクリート20に置き換わると、検出プローブ1の被覆部10はフレッシュコンクリート20に浸かる長さに比例して増加し、その後フレッシュコンクリート20が非被覆部11に充填されると静電容量が著しく大きくなると想定される。
【0051】
実際の実験では、
図6に示すように、電線の被覆部10の静電容量と高さの関係は、フレッシュコンクリート20が充填されるのにともなって、電線の下方部分の被覆部10で高さを測定すると、充填高さ150cmで静電容量152pFの値(101pF/m)の後、フレッシュコンクリート20が175cmの非被覆部11の長さ2cmの位置にきたとき、静電容量が20nF(1000nF/m)となっている。
【0052】
この結果に示すように、非被覆部11の電線の位置では被覆部10の電線の位置の約10000倍の静電容量となり、非被覆部の静電容量C0≫被覆部の静電容量CSで、非被覆部11の静電容量の方が著しく大きくなることがわかる。このことより、電線の被覆部10から非被覆部11にフレッシュコンクリート20の充填位置が移ったとき、急激に静電容量が大きくなり、非被覆部11にフレッシュコンクリート20が充填されたと判断できる。
【0053】
実際の測定に際しては、フレッシュコンクリート(硬化前のコンクリート)やフレッシュモルタル(未硬化状態のモルタル)等のセメント系物質20の特性は、使用する材料、配合、含水比等の影響で一様ではないので、実施する前に第1の検出プローブ12(1)、第2の検出プローブ13(1)の被覆部10に浸かる長さと静電容量の比例定数を求めておき、また、第1の検出プローブ12(1)や第2の検出プローブ13(1)の非被覆部11での静電容量の値を求めておくことが望ましい。また、電気抵抗の測定も、交流電圧を印加して測定できる計測装置3であれば限定なく使用できる。
【0054】
<実験6>
実験6として、第2の検出プローブ13(1)のフィーダー線における静電容量とフレッシュコンクリート20の充填高さ及び充填との関係を確認した。
図7は、第2の検出プローブ13(1)を用いた充填において、フィーダー線におけるフレッシュコンクリート20の充填高さ及び充填と静電容量の関係を示したグラフである。
図7では、下方部分の被覆部10から静電容量を測定するとともに途中の非被覆部11を過ぎ、引き続き被覆部10、非被覆部11、被覆部10にフレッシュコンクリート20が浸かったときの静電容量を測定した場合の静電容量の変化を示している。
【0055】
この場合、第2の検出プローブ13(1)の被覆部10はフレッシュコンクリート20に浸かる長さに比例して増加する。なお、非被覆部11が片側1芯であるため、フレッシュコンクリート20が非被覆部11に充填されると静電容量は大きくなるが、
図5(b)のグラフも参考にして、非被覆部11が2芯の
図7の場合ほどは大きくないと想定される。
【0056】
実際の実験では、
図7に示すように、電線の被覆部10の静電容量と高さの関係より、フレッシュコンクリート20が充填されるのにともない、電線の下方部分の被覆部10で高さを測定し、フレッシュコンクリート20が順次充填されるのに伴い充填高さと静電容量が比例し、充填高さ90cmで静電容量90pFの値とした後、1芯が非被覆部11の長さ2cmの位置にきたとき、静電容量が100pFとなり、その後非被覆部11に移り、再度充填高さと静電容量が比例し、静電容量160pFで充填高さ160cmまで検出している。
【0057】
このとき、1芯の非被覆部11を定点の高さの位置になるように第2の検出プローブ13(1)を設置することにより、充填途中のフレッシュコンクリート20充填高さの確認、修正ができ、検出プローブ1の設置誤差やフレッシュコンクリート20の硬化による比例定数の変化などに対応してより検出精度を高めることができる。
【0058】
以下に、上記検出プローブ1をトンネルの施工に用いる場合の実施形態について詳述する。
図8(a)は、トンネル4の二次覆工のコンクリート20の充填空間2における、コンクリート20の充填高さとトンネル天端部41の充填を本発明の検出プローブ1で計測する状態を示す斜視図である。具体的には、トンネル4の二次覆工において、単線2芯の検出プローブ1を円周方向の防水シート42に配設し、下方部分の被覆部10で静電容量を測定するとともに、延長してトンネル天端部41において非被覆部11で静電容量を測定する状態を示している。
【0059】
掘削面に設置する防水シート42に検出プローブ1を必要数円周方向に天端部41に向けて配設し、トンネル天端部41からは長手方向に沿わせ、妻型枠側43の外の計測装置3と表示装置5につなげる。防水シート42への検出プローブ1の配設は、バンド状の取り付け部材を防水シート42に溶着して検出プローブ1を支持したり、テープ等を用いて貼り付けることができる。
【0060】
防水シート42とセントル44との間にフレッシュコンクリート20を充填し、被覆部10の上方側にコンクリート20が順次充填されるのに伴ない静電容量が増加し、その値に伴い円周方向でのコンクリート20の充填高さが測定できる。この測定により、充填高さを左右均等になるように施工管理しやすくなる。また、コンクリート20の充填高さの検出が終了後、さらに延長された検出プローブ1の離隔した非被覆部11で静電容量を測定し天端部41での非被覆部10の位置のコンクリート20の充填を検知する。この検知により天端部41の充填を確実に確認することができる。
【0061】
なお、コンクリート20の流動性の状況により充填高さの高低差の大小が生ずるため、使用コンクリート20の流動性に応じて検出プローブ1の本数を定めることが好ましく、通常、片側2~4本程度、両側に設置することが考慮される。この場合、天端部41での充填検知箇所は両側からの検出プローブ1を合わせて4~8箇所となる。天端部41の充填検出は、測定対象を電気抵抗に切り替え電気抵抗を測定し検出することもできる。
【0062】
また、防水シート42とセントル44の間に鉄筋が設置されている場合は、検出プローブ1を鉄筋に配設することもできる。鉄筋は、充填したコンクリート20の構造体としての強度をより高めるために設置するもので、トンネル4により高い荷重がかかる場合に設置する。鉄筋部には検出プローブ1を結束線等で鉄筋に取り付けることができる。
【0063】
また、測定に際しては、フレッシュコンクリート20の比誘電率は温度に依存し、フレッシュコンクリート20温度が高い程比誘電率が低くなり、比例定数が多少変わることが考えられる。また、フレッシュコンクリート20の充填に際し、充填条件により長時間かけて充填するような場合、既に下方部に充填されているフレッシュコンクリート20が時間経過により硬化が進むことで含水比が低下することにより、高さと静電容量との比例定数が多少変化することも考えられる。そのため、実際の施工に際しては、事前に使用するフレッシュコンクリート20において、温度と硬化時間を考慮した高さと静電容量の比例定数を調べておき、実際の高さ測定の算定に反映させることが好ましい。
【0064】
図8(b)は、
図8(a)の断面図である。本実施形態では、検出プローブ1の被覆部10が下から上側に向かうように防水シート42に沿わせて配設し、トンネル天端部41の位置では非被覆部11としている。被覆部10は円弧状の位置に設置するので、事前に断面形状から被覆部10に浸る長さと充填高さとの関係を求めておいて、フレッシュコンクリート20の充填高さを求めることができる。
【0065】
図9は、ニューマチックケーソン6の工事において作業室内の空間2で、フレッシュコンクリート20の充填高さと作業室61天端部の充填を本発明の検出プローブ1で計測する正面断面図である。通常、ニューマチックケーソン6でケーソン沈下完了後、作業室61をフレッシュコンクリート20で埋めるが、その際に充填作業時には断面の大きなケーソンでは作業室61内を隅々まで監視カメラ62では映せない場合がある。そこで、縦方向に立てた鋼製標尺に代わり、作業室61の天井や天井角部に本発明による検出プローブ1を作業室61の側壁等に設置して、中埋コンクリート20の充填高さを測定し、引き続き作業室61天井や天井角部に非被覆部11を設置し充填状況を確認することができる。
【0066】
以上
図8(a)~
図9に示すように、トンネル4やニューマチックケーソン6の構築時における閉塞された充填空間2において、静電容量の測定によりフレッシュコンクリート20の高さの測定と同時に天端部41や天井の充填の検知を行うことができる。
【0067】
図10は、トンネル4の二次覆工において、検出部を有する複数の単線2芯の検出プローブ1を天端部41に長手方向に設置した斜視図である。フレッシュコンクリート20がトンネル天端部41に充填されその各非被覆部11間にフレッシュコンクリート20が充填されたとき、フレッシュコンクリート20の静電容量を検出することにより天端部41の各位置にフレッシュコンクリート20が充填されたことを検知する。防水シート42への検出プローブ1の取り付けは、バンド状のものを防水シート42に溶着して検出プローブ1を支持したり、テープなどを用いて貼り付けることができる。
【0068】
図11は、ニューマチックケーソン6において、検出部を有する複数の単線2芯の検出プローブ1を作業室61の天井に設置した断面図及び平面図である。中詰めコンクリート20が作業室61内天井に充填されその各非被覆部11間に中詰めコンクリート20が充填されたとき、中詰めコンクリート20の静電容量を検出することにより、作業室61内天井やハンチ部の各位置に中詰めコンクリート20が充填されたことを検知することができる。作業室61天井への検出プローブ1の取り付けは、天井に打ち込んだコンクリート釘にバンド等で所々留めるなどして取り付けることができる。
【0069】
図12(a)は、被覆電線のフレッシュコンクリート20中の電気抵抗である。フレッシュコンクリート20が充填されたときの被覆電線の長さと電気抵抗の関係を示すグラフである。
図12(a)の被覆部10のみの被覆電線にフレッシュコンクリート20が充填されたときは、電気抵抗はフレッシュコンクリート20の充填長さ20cmで250kΩ、90cmで49kΩでフレッシュコンクリート20の充填長さの増加と電気抵抗がほぼ反比例している。
【0070】
図12(b)は、非被覆電線のフレッシュコンクリート20中の電気抵抗である。フレッシュコンクリート20が充填されたときの非被覆電線の長さと電気抵抗の関係を示すグラフである。
図12(b)の非被覆のみの非被覆電線にフレッシュコンクリート20が充填されたときは、電気抵抗はフレッシュコンクリート20充填長20cmで25Ω、90cmで6Ωでフレッシュコンクリート20の充填長さの増加と電気抵抗がほぼ反比例している。
【0071】
このように、被覆電線と非被覆電線に各々フレッシュコンクリート20が充填された場合の電気抵抗の値を比較すると非被覆電線の電気抵抗≪被覆電線の電気抵抗となり、被覆電線の電気抵抗に比べ非被覆電線の電気抵抗は著しく小さい値となる。このことより、電線の被覆部10から非被覆部11にフレッシュコンクリート20の充填位置が移ったとき、急激に電気抵抗が小さくなり、非被覆部11にフレッシュコンクリート20が充填されたと判断できる。また、電気抵抗の値は、被覆電線と非被覆電線各々において、フレッシュコンクリート20の充填長さに反比例しているといえる。したがって、静電容量と同様に電気抵抗によっても、トンネル天端部41やニューマチックケーソン6の作業室61内天井やハンチ部の単数、複数の各位置においてフレッシュコンクリート20が充填されたことを検知できることがわかる。
【0072】
図13(a)は、一対の非被覆部11を複数設けているフラットケーブルを用いた検出プローブ1の平面図である。
図10、
図11の実施形態に使用可能な検出プローブ1の例である。1対の2芯の電線について非被覆部11をずらして複数形成させている。非被覆部11が並行に一定距離あるので、非被覆部11の長さと隣り合う非被覆部11間との距離を定めることにより、同様の検出部が形成されるため、検出値の個体差も極小に抑えることができる。非被覆部11の位置は、フレッシュコンクリート20の充填位置を検知する箇所に形成する。
【0073】
図13(b)は、
図13(a)のA-A断面図である。本実施形態は単線10対の場合であるが、必要な充填検知箇所の数の対数のものを使用する。内部は、導体、その導体を絶縁する絶縁体から構成される。本断面では、1本の被覆部10を除去した断面を示し、2本の非被覆部11を一対の被覆部10として静電容量又は電気抵抗を測定する。
【0074】
また、その他の検出プローブ1に使用する電線としては、フィーダー線、特に、平行フィーダー線が適している。平行フィーダー線は、隣り合う銅線間の距離がある程度あるので、非被覆部11を対面して形成させても銅線同士の接触がなく、また非被覆部11の長さを定めることにより、同様の検出部が形成されるため、検出値の個体差も極小に抑えることができる。
【0075】
図14(a)は、電線同士を接続具7を用いて接続し、検出プローブ1にしている例の正面図である。
図14(b)は、電線同士を接続具7を用いて接続し、検出プローブ1にしている実施形態の平面図である。
図14(a)、
図14(b)において、電線同士の接続は前後にずらして非被覆部11を形成したプラグ側ハウジング71をレセプタクル側ハウジング72に差し込み、非被覆部11電線に圧着接続している接触端子同士を接続している。
【0076】
検出プローブ1は、セメント系物質20の充填検知や高さ測定と充填検知をする箇所に取り付けるが、検出プローブ1の端部の絶縁部から計測装置3まで電線が繋がっているため、測定や検知条件によっては検出プローブ1が長くなることがある。この場合、検出プローブ1が長いため扱いにくく取り付けに手間を要し非効率になることが考慮される。そのようなときの場合を考慮し、電線同士を接続具7を用いて接続し、長尺の検出プローブ1にすることで対応することができる。
【0077】
上記本接続具7による接続は実施形態の一部であり、確実に接続できる接続具であれば、他の接続具により接続することもできる。
【0078】
また、この例では、非被覆部11を電線の部分に形成しているが、その他の非被覆部11の形成の形態として、導電性の接続端子73を裸出した状態で接続させてもよい。その裸出した部分が非被覆部11となり充填を検知することができる。また、フラットケーブルの検出プローブ1についても電線同士を接続具7を用いて防水状態で全線一括で接続することもできる。
【0079】
本発明においては、検出プローブ1の他端側と計測装置3とを、検出プローブ1とは異なる他の導線を用いて接続することができる。
図15は、検出プローブ1の他端側を、接続線としの同軸ケーブル15に接続した状態を示す正面図である。検出プローブ1の他端側(2芯の各一端側を絶縁処理した端末に対する他端側)は、
図1に示すように、検出プローブ1としてのフィーダー線(2芯被覆電線)をそのまま計測装置3に接続してもよいが、フィーダー線とは異なる他の導線を中継して計測装置3に接続してもよい。フィーダー線とは異なる他の導線としては、例えば、フィーダー線より細めで取り扱いやすい他の2芯被覆電線や、外部から到来する電磁波の影響を受けにくい同軸ケーブルを例示することができる。
【0080】
特に、本発明の測定方法においては、周波数が1KHz~5MHzの範囲の高周波を使用するため、導線の距離が長い場合や周囲に測定周波数に近い周波数の電磁波が発生している場合を考慮して、高周波信号の伝送用ケーブルとして用いられる同軸ケーブル15を用いるのが好ましい。
【0081】
また、
図15に示すように、検出プローブ1との接続線として同軸ケーブル15を使用し、さらにビニール線16を介して計測装置3に接続してもよい。本実施形態では、同軸ケーブル15の両端にコネクタ151を設けており、同軸ケーブル15の一端をコネクタ151を介して検出プローブ1の他端側に接続し、同軸ケーブル15の他端をコネクタ151を介してビニール線16に接続している。なお、多数の検出プローブ1を用いる場合や、フラットケーブルを使用している場合は、多芯同軸ケーブルを用いることができる。
【0082】
図16は、計測装置3で測定したデータを無線通信装置8で表示装置5に送信する実施形態の斜視図である。これは、トンネル4の二次覆工において充填高さの測定とトンネル天端部41の充填の検知している場合である。検出プローブ1で検出する計測装置3を妻部の外側に設置し、測定データを無線通信装置8でパソコン等の表示装置5に無線でデータ送信する。
【0083】
ニューマチックケーソン6の作業室61内への中詰めコンクリート20の充填においては、計測装置3を函内への人用の出入り口であるマンシャフト63あるいは土砂バケツ、函内設備などを搬出入するマテシャフトに設置し、同様に測定データを無線通信装置8でパソコン等の表示装置5に無線でデータ送信することができる。また、トンネル4の二次覆工の複数個所の天端部41の充填、ニューマチックケーソン6の中詰めコンクリート20の複数個所の天端部41の充填においても、同様に無線通信装置8を使用することができる。このように、無線通信装置8を使用することにより、狭い場所での通信を有線から無線にすることができ、これにより電線の切断の危険性がなくなり、作業性も向上する。無線通信装置8の使用については、もちろん電線の接続具7との併用も可能である。
【0084】
図17(a)は、トンネル4の二次覆工におけるフレッシュコンクリート20の充填高さをモニタ5で画面表示している説明図である。ここでは、一対の電極体を防水シート42の内側に、既設側、中央、妻側の3ヶ所で上下に左右取り付けて測定している。上図はトンネル4の側面から見た図で、下図はトンネル4の横断から見た図である。フレッシュコンクリート20の高さをこのように表示、図化することにより、充填状況をリアルタイムに把握することができる。この場合、トンネル4の断面形状はアーチ型になるので、事前に、アーチ形状に合わせて検出プローブ1がフレッシュコンクリート20に浸かる長さとそのときの打ち上がり高さとの関係を算定しておき、充填高さを算出する。
【0085】
図17(b)は、トンネル4の二次覆工におけるフレッシュコンクリート20の天端部41の充填状況をモニタ5で画面表示している説明図である。現時点で天端部41の検知予定の箇所を長さ方向に10箇所(No.1~No.10)とし、そのうち色塗りされている5箇所(No.1、No.2、No.5、No.6、No.8)が充填されている状況を示している。
【0086】
このように、パソコン等のディスプレイにより充填高さや天端部41の充填状況を画面表示することで、フレッシュコンクリート20の充填の進捗状況が精密かつビジュアル的に表示できる。これにより、充填ステップや充填速度の遵守、打ち重ね時間等の管理に役立たせることができる。また、打設投入口配管のバルブを切換えて打設する場合、打設箇所のコンクリートの打設高さを同時に知ることができるので、各バルブ切り替えのタイミングを適時把握でき、効率よく施工できる。
【0087】
以上、本発明係る実施形態について説明したが、本発明による2芯の検出プローブ1によるセメント系物質の充填管理方法は、用途として、セメント系物質の充填高さの測定及び充填検知したい位置の充填検知は、上記実施形態以外にも、道路橋脚、ボックスカルバートや建築工事での型枠内へのセメント系物質の充填管理などに利用でき、また、充填検知したい位置の検知は、PCシース管のグラウトの充填検知、トンネル裏込めでのエアーモルタルの充填検知、CFTダイヤフラム下面やプレカラムなどへのセメント系物質の充填検知、その他高密度配筋や目視が困難な箇所の充填確認等にも適用可能である。またその他、目視が困難な箇所のグラウト充填の検知にも有効である。
【0088】
また、本発明は、フレッシュコンクリートやフレッシュモルタルを含むセメント系物質の充填管理方法に適しているが、水や溶液等の液体の高さ測定や充填管理にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 検出プローブ
10 被覆部
11 非被覆部
12 第1の検出プローブ
13 第2の検出プローブ
14 他の実施形態の第1の検出プローブ
15 同軸ケーブル
151 コネクタ
16 ビニール線
2 充填空間
20 セメント系物質(コンクリート、フレッシュコンクリート)
3 計測装置
4 トンネル
41 トンネル天端部
42 防水シート
43 妻型枠側
44 セントル
45 地山
5 表示装置(モニタ)
6 ニューマチックケーソン
61 作業室
62 監視カメラ
63 マンシャフト
7 接続具
71 プラグ側ハウジング
72 レセプタクル側ハウジング
73 接続端子
8 無線通信装置
【要約】
【課題】 充填中のフレッシュコンクリートの充填位置を、簡単な構造の検出プローブを用いて容易かつ低コストで検出することが可能セメント系物質の充填管理方法を提供すること。
【解決手段】 セメント系物質の充填空間に2芯被覆電線からなる検出プローブを設置し、該検出プローブを用いて静電容量を測定してセメント系物質の充填状況を検知することを特徴とする。
【選択図】
図1