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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】空調機能付コンソール装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240719BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240719BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20240719BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60H1/00 102T
F24F13/15 A
F24F13/06 A
B60R7/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021063089
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158307
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 伸弘
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-175156(JP,A)
【文献】特開2014-231241(JP,A)
【文献】特開2019-209764(JP,A)
【文献】特開2020-097361(JP,A)
【文献】特開2020-200007(JP,A)
【文献】実開昭58-043510(JP,U)
【文献】実開平01-104809(JP,U)
【文献】米国特許第04633770(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0184876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
F24F 13/06
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し車両の座席の側方に配置される筐体と、前記筐体に組付けられて前記内部空間に配置されるダクトと、を有し、
前記ダクトは、ダクト本体と、複数のフィン体を有し前記ダクト本体の内部に配置されているフィン部材と、を有し、
前記ダクト本体は、その一端部であり車両進行方向の前側に配置され車両用空調装置に連絡する流入口と、その他端部であり車両進行方向の後側に配置され車両後方を向くリヤ吹出口とを有する直管状をなし、かつ、前記流入口と前記リヤ吹出口との間に設けられ前記ダクト本体の軸線方向に延び前記座席を向くフロント吹出口を有し、
前記流入口から前記フロント吹出口に至る流路は、前記流入口から前記リヤ吹出口に至る流路の一部であり、
前記フィン部材は、前記フロント吹出口に対面し、
各々の前記フィン体は、前記軸線方向に配列し、
各々の前記フィン体を前記軸線方向に投影した投影面積は、前記流入口側の前記フィン体から前記リヤ吹出口側の前記フィン体にかけて増大する、空調機能付コンソール装置。
【請求項2】
前記ダクト本体の内部における前記フィン体の突出長さは、前記流入口側の前記フィン体から前記リヤ吹出口側の前記フィン体にかけて増大する、請求項1に記載の空調機能付コンソール装置。
【請求項3】
各々の前記フィン体は、前記投影面積が最小となる第1位置と、前記投影面積が最大となる第2位置と、の間を同期して回動する、請求項1または請求項2に記載の空調機能付コンソール装置。
【請求項4】
前記軸線方向と直交する方向における前記ダクトの流路断面積は、前記フロント吹出口の奥側において、前記フィン体が前記第2位置にあるときに、前記第1位置にあるときの20面積%以上である、請求項3に記載の空調機能付コンソール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷暖房を行うための空調機能を有する空調機能付コンソール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両には、冷暖房を行うための空調システムが搭載されている。ガソリン等の石油燃料を動力源としエンジンを原動機とするエンジン車においては、空調システムにおける暖房用の熱源として、石油燃料の燃焼時の排熱を利用するのが一般的である。
【0003】
近年台頭のめざましい電気自動車は、リチウムイオン二次電池等の自動車用電池を動力源とするものであり、石油燃料の燃焼がないために、上記したエンジン車に比べて、CO排出量低減等の面で有利である。
【0004】
しかしその反面、電気自動車は、石油燃料の燃焼時の排熱を利用できない。
このため、電気自動車に搭載される空調システムにおいては、電動モータの動力源である自動車用電池を電熱ヒータの動力源としても用いるのが一般的である。しかし、走行用の電動モータ及び暖房用の電熱ヒータの動力源として同じ自動車用電池を用いることで、例えば厳寒期等の暖房に必要なエネルギ量が大きい場合、大きなエネルギを空調システムに費やすことで車両の走行可能な距離が短くなる問題がある。この面において、電気自動車はエンジン車に比べて不利といい得る。エンジンと電動モータとを併用したハイブリッド車についても同様である。
【0005】
近年、車室全体の空調を行うかわりに、車室のうちの目的とする部分だけに空調を行う技術が提案されている。
特許文献1には、車両における座席の側方に配置されるコンソール装置において、コンソールボックスの側面部の上端側と蓋体の側端部との間に、座席に着座した乗員に対して空調空気を吹き出すための隙間を設ける技術が開示されている。
このように、車室内において乗員に近接した部分だけに空調を行うことで、車室全体の空調を行う場合に比べてエネルギの使用量を低減できる可能性がある。
以下、本明細書において、このように車室内において乗員に近接した部分に空調を行う技術を近接空調と称する場合がある。また、車室内の広範囲にわたって空調を行う技術を一般空調と称する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-56917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、近接空調は空調システムひいては車両の省エネルギ化を実現し、かつ、乗員が快適に過ごし得るよう車室内の空調を行うのに有用と考えられる。しかし実際には、近接空調だけでは、車室内の空調を充分に行い難い場合がある。
例えば乗員の数が多い場合には、近接空調によって車室における一部の領域のみに空調を行うと、空調が行われない領域に搭乗する乗員が不快感をおぼえる可能性がある。このような面からも、車両用の空調システムとして、近接空調だけを行うものは充分でないと考えられる。
【0008】
特許文献1は、実施例として、近接空調と一般空調とをともに行う例を開示している。特許文献1の実施例には、コンソールボックスの外側パネルと内側パネルとの間に一般空調用の流路を区画形成し、当該流路に供給穴を設け、当該供給穴を経て、流路を流通する空調空気を近接空調用の吹出口(隙間27)に供給する旨が開示されている。
また、特許文献1には、他の例として、一般空調用の流路とは別に、近接空調用のダクト(専用ダクト34)を設ける旨も開示されている。
【0009】
このような特許文献1の技術によると、近接空調と一般空調とを同時に行うことが可能である。
しかしその一方で、この技術によると、近接空調用の流路と一般空調用の流路とを兼用していることにより、近接空調用の流路には充分な空調空気が供給されない場合がある。また特許文献1の技術において、近接空調用の吹出口は、空調空気の流路に沿って延びる細長いスリット状をなす。このような吹出口に供給される空調空気の量は、流路上流側部分において多く、流路下流側部分において少なくなる。これにより、近接空調用の吹出口から吹き出す空調空気の量に偏りが生じ、近接空調を好適に行い難くなる虞がある。
【0010】
ダクト、すなわち、空調空気の流路を区画形成する部材を、一般空調用の流路と近接空調用の流路とに分岐させることで、ダクトに流通する空調空気を一般空調用の吹出口と近接空調用の吹出口とに適切に分配し、近接空調用の吹出口に適切な量の空調空気を供給できると考えられる。また、空調空気の流路に直交する方向に近接空調用の吹出口が延びるように、ダクトの延びる方向と近接空調用の吹出口との位置関係を設定すれば、近接空調用の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りを低減できると考えられる。
【0011】
しかし、一般空調用の流路と近接空調用の流路とにダクトを分岐させると、ダクトが嵩高くなり、ダクトの配策の自由度が低下するとともに、ダクトに要するコストも高くなる問題が生じる。また、近接空調用の吹出口を、空調空気の流路に直交する方向に延びるように設けると、ダクトはさらに嵩高くなり、ダクトの配策の自由度もさらに低下する問題も生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一般空調と近接空調とを同時に行うことができ、分岐しないダクトを用いつつ、近接空調用の吹出口から吹き出す空調用空気の量の偏りを低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の空調機能付コンソール装置は、
内部空間を有し車両の座席の側方に配置される筐体と、前記筐体に組付けられて前記内部空間に配置されるダクトと、を有し、
前記ダクトは、ダクト本体と、複数のフィン体を有し前記ダクト本体の内部に配置されているフィン部材と、を有し、
前記ダクト本体は、その一端部であり車両進行方向の前側に配置され車両用空調装置に連絡する流入口と、その他端部であり車両進行方向の後側に配置され車両後方を向くリヤ吹出口とを有する直管状をなし、かつ、前記流入口と前記リヤ吹出口との間に設けられ前記ダクト本体の軸線方向に延びるフロント吹出口を有し、
前記フィン部材は、前記フロント吹出口に対面し、
各々の前記フィン体は、前記軸線方向に配列し、
各々の前記フィン体を前記軸線方向に投影した投影面積は、前記流入口側の前記フィン体から前記リヤ吹出口側のフィン体にかけて増大する、空調機能付コンソール装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空調機能付コンソール装置は、一般空調と近接空調とを同時に行うことができ、分岐しないダクトを用いつつ、近接空調用の吹出口から吹き出す空調用空気の量の偏りを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車室内における実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の空調機能付コンソール装置を側面視した様子を模式的に表す説明図である。
図3】フィン体が第2位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図である。
図4】フィン体が第1位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1の空調機能付コンソール装置の断面を模式的に表す説明図である。
図6】フィン体が第2位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置におけるダクトを模式的に表す説明図である。
図7】フィン体が第1位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置におけるダクトを模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0016】
本発明の空調機能付コンソール装置は、
内部空間を有し車両の座席の側方に配置される筐体と、前記筐体に組付けられて前記内部空間に配置されるダクトと、を有し、
前記ダクトは、ダクト本体と、複数のフィン体を有し前記ダクト本体の内部に配置されているフィン部材と、を有し、
前記ダクト本体は、その一端部であり車両進行方向の前側に配置され車両用空調装置に連絡する流入口と、その他端部であり車両進行方向の後側に配置され車両後方を向くリヤ吹出口とを有する直管状をなし、かつ、前記流入口と前記リヤ吹出口との間に設けられ前記ダクト本体の軸線方向に延びるフロント吹出口を有し、
前記フィン部材は、前記フロント吹出口に対面し、
各々の前記フィン体は、前記軸線方向に配列し、
各々の前記フィン体を前記軸線方向に投影した投影面積は、前記流入口側の前記フィン体から前記リヤ吹出口側のフィン体にかけて増大する、空調機能付コンソール装置である。
【0017】
本発明の空調機能付コンソール装置は、分岐せず直管状をなすダクト本体を有する。当該ダクト本体は、流入口とリヤ吹出口とを有する直管状をなし、さらに、流入口とリヤ吹出口との間に設けられているフロント吹出口を有する。このうちリヤ流出口は、車両後方に向けて空調空気を吹き出す、一般空調用の吹出口である。また、フロント吹出口は、座席に向けて空調空気を吹き出す、近接空調用の吹出口である。
【0018】
本発明の空調機能付コンソール装置において、ダクト本体の内部にはフィン部材が配置されている。当該フィン部材は、複数のフィン体を有しフロント吹出口に対面する。ダクト本体のうちフィン体近傍に流通する空調空気は、フィン体に沿ってフロント吹出口に案内される。つまり、本発明の空調機能付コンソール装置において、ダクト本体を流通する空調空気は、その内部に設けられたフィン部材によって、リヤ吹出口とフロント吹出口とに分配される。このため、本発明の空調機能付コンソール装置は、直管状をなすダクト本体を有するにも拘らず、一般空調と近接空調との両方に空調空気を好適に分配することができる。
つまり、本発明の空調機能付コンソール装置におけるダクト本体は、嵩張らず、配策の自由度に優れるとともに低コストである。
【0019】
また、本発明の空調機能付コンソール装置において、フィン部材における各々のフィン体はダクト本体の軸線方向に配列し、かつ、各々のフィン体を当該軸線方向に投影した投影面積は、流入口側のフィン体からリヤ吹出口側のフィン体にかけて増大する。つまり、複数のフィン体のうち、リヤ吹出口側にあるものほど、空調空気と大きな面積で接する。
【0020】
フィン体を考慮しない場合、フロント吹出口のうちリヤ吹出口側の領域は、流入口側の領域に比べて、空調空気の供給量が少ないと考えられる。しかし、本発明の空調機能付コンソール装置においては、フィン体が空調空気と大きな面積で接することにより、フロント吹出口のうちリヤ吹出口側の領域にも、十分な量の空調空気が供給される。これにより、フロント吹出口がダクト本体の軸線方向、すなわち空調空気の流路に沿って延びる形状であっても、当該フロント吹出口に供給される空調空気の量には偏りが少ない。
よって、本発明の空調機能付コンソール装置によると、フロント吹出口すなわち近接空調用の吹出口から吹き出す空調用空気の量の偏りを低減することが可能である。
【0021】
以下、本発明の空調機能付コンソール装置をその構成要素ごとに説明する。
【0022】
本発明の空調機能付コンソール装置は、内部空間を有し車両の座席の側方に配置される筐体と、前記筐体に組付けられて前記内部空間に配置されるダクトと、を有する。
【0023】
このうち筐体は、運転席と助手席との間に配置されても良いし、2つの後部座席の間に配置されても良い。場合によっては、筐体は、何れか一つの座席のみの側方、例えば座席とドアとの間等に配置されても良い。
【0024】
筐体の内部空間にはダクトが配置される。ダクトは、その全体が当該内部空間に収納されても良いし、その一部が内部空間の外部、すなわち筐体の外部に露出しても良い。特に、ダクトにおける流入口は、車両用空調装置に連絡される部分である。このため、流入口と車両用空調装置とを接続する作業の効率を考慮すると、当該流入口における車両用空調装置側の端部は筐体の外部に露出するのが好ましいといえる。ダクトにおけるその他の部分は、内部空間に収納され筐体の外部には露出しないのが好ましい。
【0025】
筐体の内部空間には、ダクトのみが配置されても良いし、ダクトに加えてダクト以外の車両搭載機器が配置されても良い。当該車両搭載機器としては、例えば、ドリンクホルダ、テーブル、オーディオ機器、カーナビゲーションシステムまたはそのモニタ、各種の機器を操作するためのタッチパネル等が例示される。これらの車両搭載機器は、本発明の空調機能付コンソール装置の一部とみなしても良いし、本発明の空調機能付コンソール装置とは別の装置とみなしても良い。筐体は、例えば、センターコンソールボックスやテーブル等と兼用であっても良い。
【0026】
筐体の内部に配置されるダクトは、筐体の外部から空調空気を導入し、かつ筐体の外部に空調空気を吹き出す機能を有する。このため筐体は、ダクトの3つの開口、すなわち、ダクト本体に設けられている流入口、フロント吹出口およびリヤ吹出口に各々対応する位置に開口を有する。各開口は、流入口、フロント吹出口およびリヤ吹出口に対応する形状をなせば良い。
【0027】
ダクトは、ダクト本体とフィン部材とを有する。ダクト本体は、既述したように、流入口、フロント吹出口およびリヤ吹出口を有する。ダクト本体は、流入口を車両進行方向の前側に向け、リヤ吹出口を車両進行方向の後側に向ける直管状をなす。なお、本発明でいう直管状とは分岐していない形状を意味する。したがってダクト本体は湾曲していても良いし屈曲していても良い。
【0028】
ダクト本体のうち流入口は、車両用空調装置に連絡する部分であり、車両進行方向の前側に配置されれば良い。つまり流入口の向きは、車両用空調装置に対応して適宜適切に設定すれば良い。
【0029】
リヤ吹出口は、ダクト本体のうち車両進行方向の後側に配置されて車両進行方向の後側を向く。つまりリヤ吹出口は、空調空気を車両後部に向けて吹き出す。当該リヤ吹出口は、車両後部を空調するための、一般空調用の吹出口として機能する。
リヤ吹出口の形状は特に限定しない。また、リヤ吹出口の向きは、車両後部を空調すべく車両進行方向の後側を向けば良く、例えば車両進行方向の後側かつ上側や、後側かつ下側等を向いても良い。
【0030】
フロント吹出口は、流入口とリヤ吹出口との間に設けられ、ダクト本体の軸線方向に延びる。既述したように、フロント吹出口は近接空調用の吹出口として機能する。このためフロント吹出口は座席側を向くということもできる。当該座席とは、筐体がその側方に配置される車両の座席を意味し、例えば筐体が運転席と助手席との間に配置される場合、フロント吹出口は運転席側および/または助手席側を向くといい得る。なお、本発明の空調機能付きコンソール装置は、2以上のダクトを有しても良く、この場合には、例えば、一方のダクトにおけるフロント吹出口は運転席側を向き、他方のダクトにおけるフロント吹出口は助手席側を向けば良い。
【0031】
既述したように、フロント吹出口はダクト本体の軸線方向に延びる。換言すると、フロント吹出口はその長手方向をダクト本体の軸線方向に向けるスリット状をなす。座席に着座した乗員の近傍を近接空調することを考慮すると、フロント吹出口は、座席に着座した乗員に沿って延びるのが好ましい。
具体的には、当該フロント吹出口の延びる方向は、当該フロント吹出口から吹き出す空調空気を乗員の脚部に吹きつけ得るように、座席の前後方向に沿うのが好ましい。なお、ダクト本体の配策方向によっては、フロント吹出口は座席の上下方向に沿って延びても良い。この場合には、フロント吹出口は座席に着座した乗員の胴体に向けて空調空気を吹き付け得る。
【0032】
なお、本明細書において、「ダクト本体の軸線方向に延びる」とは、「フロント吹出口の長手方向をダクト本体の軸線方向と概略同じ方向に向ける」ことを意味する。フロント吹出口の長手方向は当該軸線方向と一致しなくて良いが、両者のなす角は90°以下であるのが好ましく、45°以下であるのがより好ましく、30°以下であるのがさらに好ましく、15°以下であるのが特に好ましい。
【0033】
吹出口の長手方向を座席の前後方向と概略同じ方向に向けることで、吹出口から流出した空調空気を、乗員の臀部と膝との間にある大腿部の全体にわたって吹きつけることができ、乗員の大腿部を効率良く暖めることができる。
【0034】
ここで、寒冷下においては人体の背中や大腿部を暖めるのが良いとされているため、より小さい熱量によって乗員に暖かさを知覚させるためには、乗員の背中や大腿部を集中的に暖めるのが合理的である。
背中に関しては、座席の背もたれに覆われ、場合によってはシートヒータで暖められる。このため乗員は、背中よりも大腿部において、より寒さや暖かさを知覚し易いと考えられる。
【0035】
本発明の空調機能付コンソール装置において、フロント吹出口の形状を座席の前後方向に沿って延びるスリット状とする場合には、空調空気を乗員の大腿部に集中して、かつ、当該大腿部の全体にわたって吹き付けることができる。このことにより、乗員が快適な温度であると知覚するように、効率の良い空調を行うことが可能である。
【0036】
乗員の大腿部を充分な範囲で暖めるまたは冷やすためには、フロント吹出口の長手方向の長さをある程度長くするのが好ましい。具体的には、当該フロント吹出口の長手方向の長さは、座席における座面の前後方向の長さの50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましい。
フロント吹出口の長手方向の実際の長さは、150mm以上であるのが好ましく、170mm以上であるのがより好ましく、200mm以上であるのが特に好ましい。
【0037】
なお、フロント吹出口は、長手方向を有する都合上、短手方向も有する。本明細書においては、長手方向に直交する方向を短手方向と称する。フロント吹出口のアスペクト比、すなわち、フロント吹出口における長手方向の長さと短手方向の長さとの比率は特に問わないが、省エネルギの観点からは、フロント吹出口の流路断面積は過大でないのが好ましい。したがって、フロント吹出口における短手方向の長さは短い方が好ましい。具体的には、フロント吹出口の長手方向の長さは短手方向の長さの2倍以上であるのが好ましく、3倍以上であるのがより好ましく、5倍以上であるのがさらに好ましく、10倍以上であるのが特に好ましい。
【0038】
また、乗員の大腿部をより効率的に暖めるまたは冷やすためには、空調空気が乗員の大腿部の上を流通するのが良い。このため、フロント吹出口は座席の座面よりもさらに上側に位置するのが好ましい。好ましくは、フロント吹出口の上端は、座席の座面よりも上側にあり、かつ、フロント吹出口の上端と座面との上下方向の距離は50mm以上であるのが好ましい。また、この場合、フロント吹出口の下端もまた座面よりも上側にあり、かつフロント吹出口の下端と座面との上下方向の距離は10mm以上であるのがより好ましい。
上記したフロント吹出口の上端と座面との上下方向の距離のより好ましい範囲として、70mm以上、100mm以上、150mm以上の各範囲を挙げることができる。当該フロント吹出口の上端と座面との上下方向の距離に特に上限はないが、好ましい範囲として、250mm以下、230mm以下、200mm以下の各範囲を挙げることができる。
【0039】
また、上記したフロント吹出口の下端と座面との上下方向の距離のより好ましい範囲として、20mm以上、40mm以上、80mm以上の各範囲を挙げることができる。当該第1吹出口の下端と座面との上下方向の距離に特に上限はないが、好ましい範囲として、170mm以下、150mm以下、140mm以下の各範囲を挙げることができる。
【0040】
ダクト本体は、流入口、フロント吹出口およびリヤ吹出口を有する直管状をなし、その内部に空調空気の流路を有すれば良く、その形状や材料は特に限定しない。車両に搭載する都合上、ダクト本体は軽量であるのが好ましく、ダクト本体の材料としては樹脂やゴムを選択するのが好ましい。ダクト本体は、ブロー成形、射出ブロー成形、ウォーターアシスト成形等の方法でその全体が一体に成形されたものであっても良いし、或いは複数の分体として成形され当該分体が互いに組付けられて一体化されたものであっても良い。
【0041】
本発明の空調機能付コンソール装置において、ダクト本体の内部にはフィン部材が設けられる。当該フィン部材は、複数のフィン体を有しフロント吹出口に対面する。換言すると、各フィン体は、ダクト本体の内部において、フロント吹出口に至る空調空気の流路に干渉し、空調空気をフロント吹出口に案内する機能を有する。
【0042】
ダクト本体の内部を流通する空調空気のうち、流入口側にあるフィン体の近傍を流通する空調空気は、当該フィン体に案内されて、フロント吹出口からダクト外部に吹き出す。ダクト本体の内部を流通する空調空気の残部は、さらに流路下流側に流れる。ここで、本発明の空調機能付コンソール装置においては、各々のフィン体はダクト本体の軸線方向に配列し、各々の当該フィン体をダクト本体の軸線方向に投影した投影面積は、流入口側のフィン体からリヤ吹出口側のフィン体にかけて増大する。したがって、流入口側、すなわち流路上流側に位置するフィン体から離れた位置を流通する空調空気の一部は、当該フィン体よりも流路下流側において、他のフィン体の近傍を流通し、当該他のフィン体に案内されてフロント吹出口からダクト外部に吹き出す。このため、本発明の空調機能付コンソール装置によると、フロント吹出口におけるリヤ吹出口側すなわち流路下流側の領域にも、十分な量の空調空気が供給される。したがって本発明の空調機能付コンソール装置によると、フロント吹出口すなわち近接空調用の吹出口から吹き出す空調空気の量の偏りを低減することが可能である。
【0043】
ここで、フィン体をダクト本体の軸線方向に投影した投影面積は、フィン体のうちダクト本体の内部にある部分の投影面積を意味する。また、当該投影面積は、ダクト本体の内部におけるフィン体の突出長さと言い換えることができ、当該フィン体の突出長さは流入口側に位置するものからリヤ吹出口側に位置するものにかけて増大するといい得る。または、当該フィン体の投影面積は、ダクトの流路断面積で表現することも可能である。具体的には、上記したフィン体の投影面積が大きくなる程、ダクト本体の内部に突出するフィン体の面積が大きくなり、軸線方向に直交する方向のダクトの流路断面積は小さくなる。したがって、当該ダクトの流路断面積は、フロント吹出口の奥側において、流入口側からリヤ吹出口側に向けて減少するといい得る。以下、必要に応じて、「フィン体をダクト本体の軸線方向に投影した投影面積」を、単にフィン体の投影面積と称する場合がある。また、必要に応じて、「軸線方向に直交する方向のダクトの流路断面積」を単にダクトの流路断面積と称する場合がある。
【0044】
各フィン体は回動可能であっても良い。フィン体が回動可能であれば、その回動角度に応じて、フロント吹出口から吹き出す空調空気を種々の方向に案内できる。この場合、各フィン体は同期して回動するのが好ましい。
フィン体が回動すると、その投影面積は変化し、ダクトの流路断面積もまた変化する。各フィン体は、フィン体の投影面積が最小となりダクトの流路断面積が最大となる第1位置と、フィン体の投影面積が最大となりダクトの流路断面積が最小となる第2位置と、の間を回動する。各フィン体は、さらに、回動してフロント吹出口を閉じる、所謂フィンシャット機能を有しても良い。各フィン体がフロント吹出口を閉じる位置にまで回動した場合、各フィン体の投影面積は略同じとなる。したがって、本明細書においては「各フィン体の投影面積が流入口側のフィン体からリヤ吹出口側のフィン体にかけて増大する」という場合のフィン体の投影面積は、フロント吹出口が開いた状態、より具体的にはフィン体が上記した第2位置にあるときのフィン体の投影面積を意味するものとする。
【0045】
本発明の空調機能付コンソール装置において、一般空調を好適に行うためには、フィン体が上記した第2位置にあるときにも、ダクトには空調空気の流路が残されているのが好ましい。換言すると、フィン体は第2位置にあるときにもダクトを閉塞しないのが好ましい。具体的には、フィン体が第2位置にあるときのフロント吹出口の奥側におけるダクトの流路断面積の好ましい範囲として、フィン体が第1位置にあるときの5面積%以上、10面積%以上、20面積%以上、30面積%以上の各範囲を例示できる。特に、当該ダクトの流路断面積は、フィン体が第2位置にあるときに、フィン体が第1位置にあるときの20面積%以上であるのが好ましい。換言すると、フィン体が第2位置にあるときのダクトの流路断面積は、フィン体が第1位置にあるときのダクトの流路断面積の、20%以上であるのが好ましい。
このときのダクトの流路断面積に上限はないが、近接空調用の空調空気の量を十分に確保するためには、フィン体が第2位置にあるときのダクトの流路断面積の好ましい範囲として、フィン体が第1位置にあるときの90面積%以下、85面積%以下、80面積%以下、75面積%以下、70面積%以下の各範囲を例示できる。
なお、ここでいう流路断面積は、フロント吹出口の奥側におけるダクトの流路断面積を、フロント吹出口の長手方向、すなわちダクトの軸線方向に累積した値を意味する。
【0046】
本発明の空調機能付コンソール装置は、フィン部材以外にも、ダクトを開閉するためのダンパ部材を有しても良い。当該ダンパ部材は、フロント吹出口とリヤ吹出口との間に配置するのが好ましい。
以下、具体例を挙げて本発明の空調機能付コンソール装置を説明する。
【0047】
(実施例1)
車室内における実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例1の空調機能付コンソール装置を側面視した様子を模式的に表す説明図を図2に示す。フィン体が第2位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図を図3に示す。フィン体が第1位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置を模式的に表す説明図を図4に示す。実施例1の空調機能付コンソール装置の断面を模式的に表す説明図を図5に示す。フィン体が第2位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置におけるダクトを模式的に表す説明図を図6に示す。フィン体が第1位置にある実施例1の空調機能付コンソール装置におけるダクトを模式的に表す説明図を図7に示す。以下、上、下とは鉛直方向における上、下を指し、前、後、左、右とは車両進行方向における前、後、左、右を意味するものとする。左右方向は車幅方向と一致し、前後方向は車両進行方向と一致する。
【0048】
図1に示すように、実施例1の空調機能付コンソール装置1は、車室95に配置され、筐体2、ダクト3、荷室91、および、リッド92を有する。図1に示すように、筐体2は車両のセンターコンソールボックスである。筐体2は前部座席である助手席98(図2参照)と図略の運転席との間に配置されている。
【0049】
筐体2は、その長手方向を前後に向けている。図1図3および図4に示すように、筐体2には二つのフロント開口23、二つのリヤ開口22、および二つの流入開口21(図6、7参照)が設けられている。図1および図2に示すように、一方のフロント開口23Lは、筐体2の左側壁における前側かつ上側部分に設けられている。図3に示すように、フロント開口23Lは助手席98に向けて開口する。他方のフロント開口23Rは、筐体2の右側壁における前側かつ上側部分に設けられ、図略の運転席に向けて開口する。
【0050】
図1に示すように、二つのリヤ開口22は、筐体2の後側壁における上側部分に設けられ、後方に向けて開口する。一方のリヤ開口22Lは左側に配置され、他方のリヤ開口22Rは右側に配置されている。
【0051】
図5に示すように、筐体2は、内部空間29を有する箱状をなす。筐体2の内部空間29には、ダクト3が配置されている。図示しないが、筐体2の内部において、二つのダクト3は左右に配列する。図示しないが、荷室91は、上方に開口する箱状をなし、二つのダクト3の間に配置されている。荷室91の上部はリッド92で覆われている。
筐体2およびダクト3は樹脂製であり、ダクト3は筐体2と別体で成形され、筐体2に組付けられている。
【0052】
図5~7に示すように、ダクト3は、ダクト本体30とフィン部材35とを有する。このうちダクト本体30は、概略前後方向に延びる直筒状をなす。より具体的には、ダクト3は軸線方向の一端である流入口31を前側に向け、軸線方向の他端であるリヤ吹出口32を後側に向けている。図6、7に示すように、流入口31は前方に開口し、流入開口21を経て筐体2の前側に露出し、車両前部に配設されている車両用空調装置97に連絡する。ダクト本体30の流入口31が車両用空調装置97に連絡するため、車両用空調装置97からダクト本体30に供給された空調空気は、ダクト本体30の内部を前方から後方に向けて、すなわち流入口31側からリヤ吹出口32側に向けて流通する。
【0053】
なお、当該車両用空調装置97は、暖房換気空調(HVAC:heating ventilating air conditioning)システムとも称されるものであり、車室95を冷暖房するための図略のヒートポンプシステムおよび図略のブロワを有する。
【0054】
図3、4に示すように、リヤ吹出口32は、車室後部に向けて開口している。リヤ吹出口32にはリヤレジスタ40が取り付けられている。リヤレジスタ40は、ダクト本体30の内部に配置されるリヤフィン部材45を有する。リヤフィン部材45は、互いに同期して回動する複数のリヤフィン体46を有し、リヤ吹出口32から車室後部に吹き出す空調空気の方向を調整する。
【0055】
図5に示すように、ダクト本体30は、その側壁にフロント吹出口33を有する。フロント吹出口33は、ダクト本体30の軸線方向に沿って延び、側方すなわち座席を向く。実施例1の空調機能付コンソール装置においては、一方のダクト3のフロント吹出口33(図略)が運転席(図略)を向き、他方のダクト3のフロント吹出口33が助手席98を向く。
フロント吹出口33は、筐体2のフロント開口23に連絡している。
【0056】
フロント吹出口33にはフロントレジスタ50が取り付けられている。フロントレジスタ50は、ダクト本体30の内部に配置されてるフィン部材35を有する。各々のフィン部材35は、軸線方向に配列するフィン体36を有する。各フィン体36は図略のリンク機構により連結され、図3図5図6に示す第2位置と、図4図7に示す第1位置との間を同期して回動する。
【0057】
図5図6に示すように、各フィン体36の長さ、すなわちフィン体36のダクト本体30内部に向けた長さは、前側すなわち流入口31側から後側すなわちリヤ吹出口32側に向けて長くなり、各フィン体36は左端を揃えて配列している。したがって、ダクト本体30の内部におけるフィン体36の突出長さは、流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて増大している。
したがって、各々のフィン体36を軸線方向に投影した投影面積は、流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて増大しているといい得る。
当該投影面積は、各フィン体36を前方から後方に向けて投影した面積ともいい得る。または、当該投影面積は、各フィン体36を後方から前方に向けて投影した面積ともいい得る。
【0058】
なお、図2に示すように、各フィン体36は、フロント吹出口33を高さ方向の全体にわたってカバーしている。実施例1の空調機能付コンソール装置1において、フィン体36の高さ、すなわちフィン体36の上下方向の長さは、どのフィン体36においても略同じである。さらに、同一のフィン体において、その上下方向の長さは略一定である。なお、本発明の空調機能付コンソール装置において、フィン体36の形状はこれに限定されず、ダクト本体30の形状やフロント吹出口33の形状等に応じて適宜設定すれば良い。
【0059】
図6に示す第2位置において、前後方向すなわち軸線方向と直交する方向における各々のフィン体36の投影面積は最大となる。
【0060】
図7に示す第1位置において、軸線方向と直交する方向におけるフィン体36の投影面積は最小となる。実施例1の空調機能付コンソール装置において、フロントレジスタ50は所謂フィンシャットレジスタであり、第1位置において各フィン体36は重なり合い、フロント吹出口33を閉じる。
【0061】
以下、実施例1の空調機能付コンソール装置の動作を説明する。
【0062】
図6、7に示すように、車両用空調装置を経た空調空気AAは、流入口31を経てダクト本体30に流入しリヤ流出口に向けて流通する。図7に示すように、各フィン体36が第1位置にあるときには、フロント吹出口33は各フィン体36によって閉じられ、ダクト本体30に流入した空調空気Aのほぼ全量がリヤ流出口に供給され、当該リヤ流出口を経て車室後部に向けて吹き出す。
【0063】
各フィン体36が第1位置以外の位置にあるとき、例えば、図6に示すように各フィン体が第2位置にあるときには、フロント吹出口33が開かれる。このとき、ダクト本体30内において、各フィン体36の突出長さは増大し、各フィン体36は空調空気Aの流路に干渉する。
【0064】
ここで、図6に示すように、ダクト本体30の内部における各フィン体36の突出長さは、流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて徐々に増大する。換言すると、各フィン体36の投影面積は流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて徐々に増大する。これにより、ダクト本体30の軸線方向と直交する方向におけるダクト3の流路断面積は、フロント吹出口33の奥側において、流入口31側からリヤ吹出口32側にかけて徐々に減少する。
【0065】
フィン体36が上記のように配列することにより、ダクト本体30の内部を流通する空調空気Aのうちダクト本体30の左側、すなわち、フロント吹出口33側を流通するものは、各フィン体36のうち最も流入口31側に位置するフィン体36f1に当接する。そして、当該空調空気Aは、フィン体36f1に案内されて流路を変え、フロント吹出口33に供給され、当該フロント吹出口33から助手席に向けて吹き出す。
【0066】
空調空気Aの残部、すなわち、フィン体36f1に当接しなかった空調空気Aは、リヤ吹出口32側に向けて進む。そしてフィン体36f1に当接しなかった空調空気Aのうち、ダクト本体30のフロント吹出口33側を流通するものは、フィン体36f1の後側に隣接しフィン体36f1よりも突出長さの長いフィン体36f2に当接し、当該フィン体36f2に案内されてフロント吹出口33に供給され、フロント吹出口33から助手席に向けて吹き出す。
【0067】
このように、ダクト本体30内部を流通する空調空気Aは、軸線方向に配列する各フィン体36によって、順々にフロント吹出口33に案内される。一方、ダクト本体30の内部を流通する空調空気Aのうちダクト本体30の右側、すなわち、フロント吹出口33とは逆側を流通するものは、フィン体36に当接せず、そのままリヤ吹出口32側に向けて進み、リヤ吹出口32を経て車室後部に向けて吹き出す。これにより、ダクト本体30を流通する空調空気Aは、その内部に設けられたフィン部材35によって、リヤ吹出口32とフロント吹出口33とに分配される。したがって実施例1の空調機能付コンソール装置は、直管状をなすダクト本体30を有するにも拘らず、一般空調すなわちリヤ吹出口32を経る流通経路と、近接空調すなわちフロント吹出口33を経る流通経路との両方に、空調空気Aを好適に分配することができる。
【0068】
既述したように、ダクト本体30の内部における各フィン体36の突出長さは、流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて徐々に増大し、各フィン体36の投影面積もまた流入口31側のフィン体36からリヤ吹出口32側のフィン体36にかけて徐々に増大する。このため、フィン体36のうちリヤ吹出口32側にあるものは、ダクト本体30の内部においてフロント吹出口33から離れた領域を流通する空調空気Aと接し得る。
【0069】
当該リヤ吹出口32側にあるフィン体36に接した空調空気Aは、フロント吹出口33のうち、十分な量の空調空気Aが供給され難いリヤ吹出口32側の領域に供給される。したがって、実施例1の空調機能付コンソール装置によると、フロント吹出口33の全域にわたって十分な量の空調空気Aを供給することが可能になる。このため、フロント吹出口33がダクト本体30の軸線方向、すなわち空調空気Aの流路に沿って延びる形状であるにも拘わらず、当該フロント吹出口33に供給される空調空気Aの量の偏りを低減でき、ひいては、フロント吹出口33から吹き出す空調用空気の量の偏りを低減できる。
【0070】
実施例1の空調機能付コンソール装置において、軸線方向と直交する方向におけるダクト3の流路断面積は、フロント吹出口33の奥側において、フィン体36が第2位置にあるとき(図6参照)に、フィン体36が第1位置にあるとき(図7参照)の約50面積%である。このため、実施例1の空調機能付コンソール装置においては、フィン体36がフロント吹出口33を開いている場合にも、リヤ吹出口32にも十分な量の空調空気Aを供給でき、近接空調と一般空調とを両立できる利点がある。
【0071】
なお、実施例1の空調機能付コンソール装置において、フロント吹出口33の前後方向の長さは座席における座面の前後方向の長さの50%程度であり、フロント吹出口33の前後方向の長さは上下方向の長さの10倍程度である。また、フロント吹出口33の上端と座面との上下方向の距離は150mm程度である。これにより、実施例1の空調機能付コンソール装置によると、近接空調を好適に行い得る。
【0072】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1:空調機能付コンソール装置 2:筐体
29:内部空間 3:ダクト
30:ダクト本体 31:流入口
32:リヤ吹出口 33:フロント吹出口
35:フィン部材 36:フィン体
97:車両用空調装置 98:座席(助手席)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7