(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両外装品
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240719BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20240719BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20240719BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S7/40 147
H05B3/02 B
B60R13/00
(21)【出願番号】P 2021155658
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 幸蔵
(72)【発明者】
【氏名】飯村 公浩
(72)【発明者】
【氏名】高尾 和希
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 明弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕之
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-021591(JP,A)
【文献】特開2018-066706(JP,A)
【文献】特開2020-095900(JP,A)
【文献】特開2004-039858(JP,A)
【文献】中国実用新案第210692754(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
H01Q 1/42
H05B 3/02 - 3/18
3/40 - 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ線が配置された本体部と、その本体部に一体形成されて同本体部から突出するソケットと、そのソケットに一部が埋め込まれたコネクタピンとを備え、前記ヒータ線は前記ソケットの内部まで延びて前記コネクタピンと接合されており、前記ソケットには電源プラグを差し込むことが可能となっており、その電源プラグ及び前記コネクタピンを介して前記ヒータ線に対する通電が行われる車両外装品において、
前記ソケットは肉盗み部を有している車両外装品。
【請求項2】
前記コネクタピンと前記ヒータ線とは接合部によって接合されており、
前記ソケットは、前記接合部を外部に露出させるための窓部と、その窓部及び前記接合部を埋めるための止水部と、を備えており、
前記肉盗み部は、前記ソケットの外部と前記窓部の内部とを繋ぐように延びている請求項1に記載の車両外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車外の物体を検出するためのミリ波等の電磁波を送受信するセンサが搭載されている。こうしたセンサは、上記電磁波を車外に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記電磁波(反射波)を受信する。上記センサは、そうした電磁波の送受信を通じて車外の物体を検出する。車両における上記センサからの電磁波の送信方向の前方には、電磁波を透過させることが可能な樹脂製の車両外装品、例えばエンブレム、オーナメント、及びマークといったものが設けられる。これによりセンサが車外からを見えにくくなる。
【0003】
ただし、車両外装品に氷雪が付着すると、それに伴って車両外装品における電磁波の透過性が低下する。このため、特許文献1に示されるように、車両外装品の本体部にヒータ線を配置することが考えられる。ヒータ線は、フレキシブルプリント基板(FPC)を介して電源と接続することが可能となっている。そして、FPCを介してヒータ線の通電を行うことにより、ヒータ線が発熱して車両外装品に付着した氷雪が融解する。これにより、氷雪の付着によって車両外装品の電磁波の透過性が低下することを抑制できる。
【0004】
また、ヒータ線をより簡単に電源に接続するため、コネクタピンを用いることも考えられる。この場合、車両外装品の本体部には、同本体部から突出するソケットが一体に形成される。コネクタピンの一部は、ソケットに埋め込まれる。ヒータ線は、ソケットの内部まで延び、上記コネクタピンに接続される。ソケットには、電源プラグを差し込むことが可能となっている。その電源プラグ及びコネクタピンを介して上記ヒータ線が電源に接続される。これによりヒータ線に対する通電を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記車両外装品のヒータ線がコネクタピンを用いて電源に接続される場合、車両外装品の本体部に対して、コネクタピンを配置するためのソケットを一体に形成しなければならない。このように本体部にソケットを形成しなければならない分、車両外装品の重量が増すことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両外装品は、ヒータ線が配置された本体部と、その本体部に一体形成されて同本体部から突出するソケットと、そのソケットに一部が埋め込まれたコネクタピンとを備える。ヒータ線は、ソケットの内部まで延びてコネクタピンと接合されている。ソケットには電源プラグを差し込むことが可能となっている。その電源プラグ及びコネクタピンを介してヒータ線に対する通電が行われる。上記ソケットは肉盗み部を有している。
【0008】
上記構成によれば、ソケットに電源プラグを差し込むことにより、電源プラグ及びコネクタピンを介してヒータ線が電源と接続され、そのヒータ線に対する通電を行うことが可能になる。このため、ヒータ線と電源との接続が簡単になる。また、ソケットは、肉盗み部を有している分、軽量化する。従って、コネクタピンを用いたヒータ線と電源との接続を可能としながら、同ソケットの重量が増すことを抑制できる。
【0009】
上記車両外装品においては、コネクタピンとヒータ線とが接合部によって接合されるものとすることが考えられる。更に、ソケットは、接合部を外部に露出させるための窓部と、その窓部及び接合部を埋めるための止水部と、を備えるものとされる。上記肉盗み部は、ソケットの外部と窓部の内部とを繋ぐように延びているものとされる。
【0010】
上記構成によれば、肉盗み部に高圧の検査用流体を流すことにより、窓部と止水部との間の気密性を確認するための気密性試験を行うことができる。言い換えれば、肉盗み部を上記気密性試験のための穴として利用することができる。従って、そうした穴を別途用意する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】エンブレムにおける本体部の下端部及びソケットを示す断面図。
【
図3】本体部の加飾層及び透明層を
図2の右側から見た状態を示す正面図。
【
図4】ヒータシートを
図2の右側から見た状態を示す正面図。
【
図5】ソケットにおけるコネクタピン及びその周辺を
図2の矢印A-A方向から見た状態を示す断面図。
【
図6】板部とヒータ線との接合前のソケットを
図5の下方から見た状態を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両外装品の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1及び
図2はそれぞれ、車両外装品としてのエンブレム1、及び、エンブレム1の下端部を示している。車両の前部には、
図1に示すようにセンサ2が配置されている。センサ2は、車外の物体を検出するためのミリ波等の電磁波を車両の前方に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記電磁波(反射波)を受信する。上記センサ2は、そうした電磁波の送受信を通じて車外の物体を検出する。
【0013】
エンブレム1は、複数の爪1aを備えている。エンブレム1は、複数の爪1aによって車両の前部に取り付けられている。エンブレム1は、センサ2からの上記電磁波の送信方向の前方に位置しており、電磁波を透過させることが可能となっている。エンブレム1をセンサ2の前方に配置することにより、そのエンブレム1によってセンサ2を車外から見えにくくすることができる。
【0014】
図2に示すように、エンブレム1は、本体部3、ソケット4、コネクタピン5、及びヒータシート6を備えている。以下、本体部3、ソケット4、コネクタピン5、及びヒータシート6の概要について個別に説明する。
【0015】
[本体部3]
本体部3は、基材7、加飾層8、透明層9、及び枠部16を備えている。基材7は、樹脂により板状に形成され、ミリ波を透過させることが可能となっている。基材7は、車両に取り付けられるものであって、上記爪1a(
図1)が一体に形成されている。基材7の前面(
図2の右面)には、加飾層8及び透明層9がセンサ2からのミリ波の送信方向(
図2の右方向)に沿って順に配置されている。
【0016】
図3は、加飾層8及び透明層9を、
図2の右側から見た状態を示している。透明層9は、無色透明もしくは有色透明な樹脂によって形成され、ミリ波を透過させることが可能となっている。加飾層8は、模様領域8a及び背景領域8bを有しており、ミリ波を透過させることが可能となっている。模様領域8a及び背景領域8bはそれぞれ、エンブレム1に対して、例えば
図3に示すように位置している。これら模様領域8a及び背景領域8bは、エンブレム1に意匠性を持たせるためのものである。
【0017】
枠部16(
図2)は、樹脂によって形成されている。枠部16は、基材7の外縁に沿って環状に延びている。枠部16は、基材7及び透明層9に対し溶着されている。これにより、基材7と透明層9とが枠部16によって連結されている。
【0018】
[ヒータシート6]
図2に示すように、ヒータシート6は、透明層9の前面(
図2の右面)に配置されている。ヒータシート6は、シート本体10とヒータ線11,12とを備えている。シート本体10は、透明な樹脂によって形成され、電磁波を透過させることが可能となっている。ヒータ線11,12は、シート本体10の後面(
図2の左面)に配置されている。ヒータ線11、12は、通電によって発熱する金属材料によって形成されている。
【0019】
図4は、ヒータシート6を
図2の右側から見た状態を示している。
図4に示すように、ヒータ線11,12は、互いに異なる配線パターンで配線されている。ヒータ線11,12の端部は、エンブレム1の下端部に集まっている。ヒータ線11,12を通電により発熱させると、エンブレム1に付着した氷雪が融解する。これにより、氷雪の付着によってエンブレム1における電磁波の透過性が低下することを抑制できる。
【0020】
[ソケット4]
図2に示すように、ソケット4は、本体部3における基材7の下端部に位置しており、その基材7(本体部3)に対し一体に形成されている。ソケット4は、基材7の外縁の下端部から車内に向かう方向、すなわち
図2の左方向に突出している。ソケット4における突出方向の先端部4aには凹部13が形成されている。この凹部13には電源プラグ14を差し込むことが可能となっている。電源プラグ14は電源15に繋がっている。
【0021】
ソケット4の基端部4b、すなわちソケット4における凹部13よりも基材7寄りの箇所には、枠部16が埋め込まれている。ヒータシート6におけるシート本体10及びヒータ線11,12は、ソケット4の基端部4bまで延びており、枠部16に沿った状態で基端部4bに埋め込まれている。ソケット4の基端部4bには、肉盗み部17が形成されている。肉盗み部17は、凹部13の底から枠部16に向かって延びている。
【0022】
ソケット4は、窓部18及び止水部19を備えている。窓部18は、ソケット4の基端部4bに位置している。窓部18は、ソケット4の外部であって
図2の下方に向けて開放されているとともに、上記肉盗み部17と繋がっている。ヒータシート6のヒータ線11,12は、ソケット4における基端部4bの内部を通って窓部18まで延びている。止水部19は、窓部18を埋めるためのものであって、ソケット4よりも軟質の樹脂によって形成されている。
【0023】
[コネクタピン5]
コネクタピン5は、ソケット4に配置されている。コネクタピン5は、板部5a及び端子5bを備えている。コネクタピン5の一部である板部5aは、ソケット4の基端部4bに埋め込まれており、肉盗み部17と窓部18とを隔てている。板部5aには、肉盗み部17と窓部18とを繋ぐための孔20が形成されている。板部5aにはヒータ線11,12の端部が接合部21によって接合されている。接合部21は、窓部18に対応して位置している。
【0024】
図5は、ソケット4におけるコネクタピン5及びその周辺を、
図2の矢印A-A方向から見た状態を示している。
図5に示すように、接合部21は、窓部18を止水部19で埋める前であって、ヒータ線11,12の端部及び板部5aが窓部18を介して露出した状態のもと、板部5aに対しヒータ線11,12の端部をはんだ付けすることによって形成されている。なお、コネクタピン5の板部5aとヒータ線11,12との接合は、上記はんだ付け以外、例えば導電性接着剤による接着、あるいは溶接等によって行うことも可能である。
【0025】
図6は、上述した板部5aとヒータ線11,12との接合部21による接合前のソケット4を、
図5の下方から見た状態を示している。
図6に示すように、このときには窓部18が開放されているため、その窓部18から板部5aとヒータ線11,12との接合を行うことが可能になる。そして、板部5aとヒータ線11,12との接合が行われた後、窓部18が
図5に二点鎖線で示すように止水部19によって埋められる。このとき、接合部21は止水部19によって覆われた状態になる。
【0026】
図2に示すように、コネクタピン5の端子5bは、板部5aからソケット4の凹部13内に突出している。ソケット4の凹部13に上記電源プラグ14を差し込むと、その電源プラグ14に対しコネクタピン5の端子5bが接続される。これにより、ヒータシート6のヒータ線11,12がコネクタピン5及び電源プラグ14を介して電源15に接続され、ヒータ線11,12に対する通電を行うことが可能になる。
【0027】
次に、ソケット4の肉盗み部17について詳しく説明する。
肉盗み部17は、ソケット4における凹部13の底から枠部16に向かって延びており、コネクタピン5の孔20を介して窓部18と繋がっている。言い換えれば、肉盗み部17は、凹部13に対し電源プラグ14が差し込まれていない状態のもとでは、ソケット4の外部と窓部18の内部とを繋ぐように、より詳しくは両者をソケット4の凹部13及びコネクタピン5の孔20を介して繋ぐように延びている。このため、上記肉盗み部17を窓部18と止水部19との気密性試験に用いることができる。
【0028】
上記気密性試験では、肉盗み部17の内部に高圧の検査用流体を流すことにより、窓部18と止水部19との間の気密性が確保されているか否かを検査する。窓部18と止水部19との間の気密性が確保されている場合には、窓部18と止水部19との間から検査用流体が漏れない。一方、窓部18と止水部19との間の気密性が確保されていない場合には、窓部18と止水部19との間から検査用流体が漏れる。このように肉盗み部17に高圧の検査用流体を流すことによって気密性試験を行うことができる。そうした気密性試験のための穴として肉盗み部17を利用することができる。
【0029】
次に、本実施形態の車両外装品(エンブレム1)の作用効果について説明する。
(1)ソケット4に電源プラグ14を差し込むことにより、電源プラグ14及びコネクタピン5を介してヒータ線11,12が電源15と接続され、そのヒータ線11,12に対する通電を行うことが可能になる。このため、ヒータ線11,12と電源15との接続が簡単になる。また、ソケット4は、肉盗み部17を有している分、軽量化する。従って、コネクタピン5を用いたヒータ線11,12と電源15との接続を可能としながら、同ソケット4の重量が増すことを抑制できる。
【0030】
(2)肉盗み部17を有する分、ソケット4が薄肉になる。このため、射出成形等によってソケット4を有する基材7を形成する場合において、ソケット4における肉盗み部17周りに、成形後の収縮(いわゆるひけ)が発生しにくくなる。
【0031】
(3)コネクタピン5が通電に伴う発熱によって温度上昇し、その後の通電停止に伴って温度低下することが繰り返されると、コネクタピン5の温度変化に伴う変形によって板部5aとヒータ線11,12との接合が外れるおそれがある。しかし、ソケット4に形成された肉盗み部17はコネクタピン5と隣接しているため、コネクタピン5が肉盗み部17に対して露出している。従って、コネクタピン5が発熱したとき、コネクタピン5から肉盗み部17への放熱がされやすくなる。このため、コネクタピン5の通電による発熱時の温度上昇が生じにくくなり、通電と通電停止の繰り返しによるコネクタピン5の温度変化も小さくなる。その結果、そうした温度変化に伴うコネクタピン5の変形が小さく抑えられ、その変形に伴って板部5aとヒータ線11,12との接合が外れることを抑制できる。
【0032】
(4)肉盗み部17に高圧の検査用流体を流すことにより、窓部18と止水部19との間の気密性を確認するための気密性試験を行うことができる。言い換えれば、肉盗み部17を上記気密性試験のための穴として利用することができる。従って、そうした穴を別途用意する必要がなくなる。
【0033】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ソケット4は、必ずしも本体部3の下端部、より詳しくは基材7の下端部に配置されている必要はない。
【0034】
・肉盗み部17は、気密性試験のための検査用流体を流す穴として機能しないものであってもよい。この場合、肉盗み部17を窓部18に繋ぐ必要はなく、肉盗み部17の位置をソケット4の他の箇所に変更してもよい。
【0035】
・ヒータシート6に配置されるヒータ線は、一つあるいは三つ以上であってもよい。
・センサ2におけるミリ波の送信方向は、必ずしも車両の前方である必要はなく、車両の側方、あるいは車両の後方などの他の方向であってもよい。
【0036】
・センサ2は、ミリ波以外の電磁波、例えば赤外線やレーザーを送受信するものであってもよい。
・車両外装品としてエンブレム1を例示したが、例えばオーナメント及びマークといった他の車両外装品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…エンブレム
1a…爪
2…センサ
3…本体部
4…ソケット
4a…先端部
4b…基端部
5…コネクタピン
5a…板部
5b…端子
6…ヒータシート
7…基材
8…加飾層
9…透明層
11,12…ヒータ線
14…電源プラグ
17…肉盗み部
18…窓部
19…止水部
20…孔
21…接合部