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特許7522970車両用外装カバー及び車両用外装カバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用外装カバー及び車両用外装カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20240719BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240719BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
B32B15/01 J
B29C45/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021181288
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069443
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】前田 周之
(72)【発明者】
【氏名】木村 優太
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-66022(JP,A)
【文献】特開2020-44869(JP,A)
【文献】特開2021-162720(JP,A)
【文献】特開2004-251868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0153093(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第115195626(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
B32B 15/01
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波透過性及び可視光透過性を有する車両用外装カバーであって、
透明基材と、
複数のフィルムが互いに接着剤を介して積層されたラミネートフィルムにより構成され、前記透明基材の裏面に接合されたフィルム積層体と、を備える車両用外装カバーであって、
前記フィルム積層体は、
透明樹脂製の第1フィルム基材及びインジウム製の光輝層を含む光輝フィルムと、
前記光輝フィルムよりも裏側に配置され、透明樹脂製の第2フィルム基材及び可視光を拡散させる拡散材を含む透明樹脂製の拡散フィルムと、を有しており、
前記拡散フィルムよりも裏側には、通電により発熱する発熱体が配置されている、
車両用外装カバー。
【請求項2】
前記フィルム積層体は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材、前記光輝フィルム、及び前記拡散フィルムを有しており、
前記発熱体は、前記拡散フィルムの裏面に配置されている、
請求項1に記載の車両用外装カバー。
【請求項3】
前記フィルム積層体は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材、前記光輝フィルム、前記拡散フィルム、及び透明樹脂製の裏側フィルム基材を有しており、
前記発熱体は、前記裏側フィルム基材の裏面に配置されている、
請求項1に記載の車両用外装カバー。
【請求項4】
前記裏側フィルム基材の裏面には、前記発熱体を覆う透明樹脂製の被覆層が設けられている、
請求項3に記載の車両用外装カバー。
【請求項5】
前記表側フィルム基材上の一部には、有色の加飾層が設けられている、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の車両用外装カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用外装カバーの製造方法であって、
前記フィルム積層体を成形型にインサートして前記フィルム積層体の表面に前記透明基材を一体成形する成形工程を備える、
車両用外装カバーの製造方法。
【請求項7】
前記成形工程の後に、前記フィルム積層体の裏面に前記発熱体としてのヒータ線を形成するヒータ線形成工程を備える、
請求項6に記載の車両用外装カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外装カバー及び車両用外装カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用装飾部品としてのガーニッシュが記載されている。ガーニッシュは、車両において、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向の前方に取り付けられる。ガーニッシュは、黒色基材、黒色基材の前面に設けられた加飾層、加飾層の前面に設けられた透明基材、及び透明基材の前面に設けられた発熱体を備えている。発熱体は、ヒータ線及びヒータ線を被覆する樹脂シートを有している。
【0003】
こうしたガーニッシュによれば、通電によってヒータ線が発熱することでガーニッシュの表面に付着した雪を融かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-168265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のガーニッシュなどの車両用外装カバー(以下、外装カバー)においては、ヒータ線が外装カバーの表側に配置されているため、ヒータ線が視認されやすい。その結果、外装カバーの意匠性が損なわれるという問題がある。
【0006】
これに対して、ヒータ線を外装カバーの裏面に配置すると、以下の不都合が生じる。すなわち、従来の外装カバーは、透明基材、加飾層、及び黒色基材を有している。透明基材及び黒色基材は、それぞれ成形型によって成形されるものであるため、これら透明基材及び黒色基材の厚さを小さくすることには自ずと限界がある。そのため、外装カバーの裏面にヒータ線を配置した場合には、外装カバーの厚さが大きいために、ヒータ線の熱が外装カバーの表面まで到達しにくくなる。その結果、外装カバーの表面に付着した雪を融かすことが難しい。
【0007】
また近年、こうした外装カバーにおいては、外装カバーの裏側に光源を配置するとともに、光源から出射される光によって外装カバーの意匠面を発光させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両用外装カバーは、電波透過性及び可視光透過性を有する車両用外装カバーであって、透明基材と、複数のフィルムが互いに接着剤を介して積層されたラミネートフィルムにより構成され、前記透明基材の裏面に接合されたフィルム積層体と、を備える。前記フィルム積層体は、透明樹脂製の第1フィルム基材及びインジウム製の光輝層を含む光輝フィルムと、前記光輝フィルムよりも裏側に配置され、透明樹脂製の第2フィルム基材及び可視光を拡散させる拡散材を含む拡散フィルムと、を有しており、前記拡散フィルムよりも裏側には、通電により発熱する発熱体が配置されている。
【0009】
同構成によれば、透明基材の裏面にフィルム積層体が接合されている。また、フィルム積層体を構成する光輝フィルムによって外装カバーが光輝加飾されている。さらに、光輝フィルムが、電波透過性を有するインジウム製の光輝層により構成されている。これらのことから、外装カバーの光輝加飾と電波透過性とを両立できる。
【0010】
ここで、上記構成によれば、フィルム積層体がラミネートフィルムにより構成されているため、従来に比べて外装カバーの厚さを小さくできる。このため、拡散フィルムよりも裏側に配置された発熱体において発生する熱が外装カバーの表面まで到達しやすくなる。これにより、外装カバーの表面に付着した雪を好適に融かすことができる。
【0011】
また、上記構成によれば、発熱体が拡散フィルムよりも裏側に配置されることによって、外装カバーの表側から発熱体が視認されにくくなる。これにより、発熱体によって外装カバーの意匠性が損なわれることを抑制できる。
【0012】
また、上記構成によれば、外装カバーの裏側に配置される光源から出射される可視光(以下、光)によって外装カバーの意匠面を発光させることができる。
ところで、光源から出射される光によって発熱体が光輝層に投影されることで、外装カバーの意匠性が損なわれるおそれがある。
【0013】
この点、上記構成によれば、発熱体と光輝フィルムとの間に拡散フィルムが設けられている。このため、光源からの光が拡散フィルムによって拡散されるようになる。これにより、発熱体が光輝層に投影されることが抑制される。
【0014】
したがって、融雪機能の向上と意匠性の向上とを両立することができる。
なお、本願明細書において、「透明」とは、可視光に対して透明であることを意味する。
【0015】
上記車両用外装カバーにおいて、前記フィルム積層体は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材、前記光輝フィルム、及び前記拡散フィルムを有しており、前記発熱体は、前記拡散フィルムの裏面に配置されていることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、表側フィルム基材によって光輝フィルムを保護することができる。また、光輝層を含む光輝フィルム及び拡散フィルムの各々を薄くしつつも、表側フィルム基材によってフィルム積層体の剛性を高めることができる。これにより、例えばフィルム積層体を成形型にインサートして透明基材を成形する場合に溶融樹脂の流動圧によってフィルム積層体が変形することを抑制できる。
【0017】
上記車両用外装カバーにおいて、前記フィルム積層体は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材、前記光輝フィルム、前記拡散フィルム、及び透明樹脂製の裏側フィルム基材を有しており、前記発熱体は、前記裏側フィルム基材の裏面に配置されていることが好ましい。
【0018】
同構成によれば、表側フィルム基材及び裏側フィルム基材によって光輝フィルム及び拡散フィルムを保護することができる。また、光輝層を含む光輝フィルム及び拡散フィルムの各々を薄くしつつも、これらを挟む表側フィルム基材及び裏側フィルム基材によってフィルム積層体の剛性を高めることができる。これにより、例えばフィルム積層体を成形型にインサートして透明基材を成形する場合に溶融樹脂の流動圧によってフィルム積層体が変形することを抑制できる。
【0019】
上記車両用外装カバーにおいて、前記裏側フィルム基材の裏面には、前記発熱体を覆う透明樹脂製の被覆層が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、発熱体が透明樹脂製の被覆層によって覆われることで発熱体が保護される。このため、外装カバーの電波透過性及び可視光透過性を満たしつつ、発熱体の劣化等を抑制することができる。
【0020】
上記車両用外装カバーにおいて、前記表側フィルム基材上の一部には、有色の加飾層が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、外装カバーの裏側に配置された光源から出射された可視光は、表側フィルム基材のうち有色の加飾層が設けられていない部分を透過する一方、加飾層に入射した可視光の一部または全部は、加飾層によって吸収されるようになる。これにより、外装カバーの表面のうち加飾層が設けられていない部分が光って見えるようになる一方、加飾層が設けられている部分は、加飾層が設けられていない部分に比べて暗く見えるようになる。このように外装カバーの発光の態様を外装カバーの位置によって異ならせることができる。したがって、外装カバーの意匠性を一層向上できる。
【0021】
上記車両用外装カバーの製造方法であって、前記フィルム積層体を成形型にインサートして前記フィルム積層体の表面に前記透明基材を一体成形する成形工程を備える。
同方法によれば、予めラミネート加工により形成されたフィルム積層体を成形型にインサートしてフィルム積層体の表面に透明基材が一体成形される。このため、透明基材の裏面に複数のフィルムを順に貼り付ける方法に比べて、上記外装カバーを容易に製造することができる。
【0022】
車両用外装カバーの製造方法において、前記成形工程の後に、前記フィルム積層体の裏面に前記発熱体としてのヒータ線を形成するヒータ線形成工程を備えることが好ましい。
例えば成形工程の前に、フィルム積層体の裏面に発熱体としてのヒータ線を予め形成しておく方法が考えられる。この場合、成形型にフィルム積層体をインサートして透明基材を成形する際に、フィルム積層体の表面に対して溶融樹脂の流動圧が作用してフィルム積層体が変形することで、光輝フィルムの表面にヒータ線の凸部に対応した凸部が転写されるおそれがある。その結果、外装カバーの意匠性が損なわれるおそれがある。
【0023】
この点、上記方法によれば、成形工程の後に、フィルム積層体の裏面にヒータ線が形成されるため、上述した不都合が生じない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、融雪機能の向上と意匠性の向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、一実施形態の車両用外装カバーを備える外装部品の断面図である。
図2図2は、図1の外装カバーの断面図である。
図3図3(a)~図3(c)は、図1の外装カバーの製造工程を順に示す断面図である。
図4図4(a)~図4(c)は、図1の外装カバーの製造工程を順に示す断面図である。
図5図5は、変更例の外装カバーの断面図である。
図6図6(a)~図6(c)は、図5の外装カバーの製造工程を順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図4を参照して、車両用外装カバー及びその製造方法について説明する。
なお、以降において、車両の前後方向の前側及び後側をそれぞれ単に前側及び後側として説明する。
【0027】
図1に二点鎖線にて示すように、車両には、周知のミリ波レーダ装置90が搭載されている。ミリ波レーダ装置90は、例えば車両の前部に設けられるとともに、前方に向けてミリ波(以下、電波)を出射する。
【0028】
車両においてミリ波レーダ装置90の前方には、ミリ波レーダ装置90を覆う外装部品10が設けられている。外装部品10は、例えば車両のエンブレムである。
外装部品10は、外装カバー11、ハウジング12、及び光源13を備えている。
【0029】
ハウジング12は、前方に向かって開口する開口部12aを有している。
外装カバー11は、開口部12a全体を覆うとともに開口部12aの周縁部に接合されている。
【0030】
ハウジング12の内部には、可視光を発生させる光源13が設けられている。光源13は、例えば発光ダイオード(LED,Light Emitting Diode)である。
外装カバー11は、電波透過性及び可視光透過性を有している。
【0031】
ハウジング12は、電波透過性を有している。
次に、外装カバー11の断面構造について説明する。
図2に示すように、外装カバー11は、表側(図2の上側)から順に、ハードコート21、透明基材20、フィルム積層体30、ヒータ線80、及び被覆フィルム基材81を備えている。
【0032】
<透明基材20>
透明基材20は、透明樹脂製である。本実施形態の透明基材20は、例えばポリカーボネートにより構成されている。
【0033】
透明基材20の表面には、周知のハードコート21が設けられている。
<フィルム積層体30>
フィルム積層体30は、複数のフィルムが互いに接着剤31を介して積層されたラミネートフィルムにより構成されている。フィルム積層体30は、透明基材20の裏面に接合されている。
【0034】
本実施形態のフィルム積層体30は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材60、光輝フィルム40、拡散フィルム50、及び透明樹脂製の裏側フィルム基材70を有している。
【0035】
(表側フィルム基材60)
表側フィルム基材60は、透明樹脂製である。本実施形態の表側フィルム基材60は、ポリカーボネートにより構成されている。表側フィルム基材60の厚さは、例えば50~300μmであることが好ましい。本実施形態の表側フィルム基材60の厚さは、120μmである。
【0036】
表側フィルム基材60の表面には、有色の加飾層61が設けられている。加飾層61は、外装カバー11の意匠を構成している。加飾層61は、例えばスクリーン印刷によって形成されている。
【0037】
加飾層61の表面には、透明な保護層62が設けられている。保護層62は、例えば印刷によって形成されている。
(光輝フィルム40)
光輝フィルム40は、第1フィルム基材41及び光輝層42を有している。
【0038】
第1フィルム基材41は、透明樹脂製である。本実施形態の第1フィルム基材41は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により構成されている。第1フィルム基材41の厚さは、例えば20~30μmであることが好ましい。本実施形態の第1フィルム基材41の厚さは、25μmである。
【0039】
光輝層42は、第1フィルム基材41の表面に設けられている。光輝層42は、インジウム製である。光輝層42は、第1フィルム基材41の表面に蒸着されている。光輝層42の厚さは、例えば0.05~0.10μmであることが好ましい。本実施形態の光輝層42の厚さは、0.07μmである。
【0040】
(拡散フィルム50)
拡散フィルム50は、第2フィルム基材51及び拡散材52を有している。
第2フィルム基材51は、透明樹脂製である。本実施形態の第2フィルム基材51は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により構成されている。第2フィルム基材51の厚さは、例えば80~120μmである。本実施形態の第1フィルム基材41の厚さは、100μmである。
【0041】
拡散材52は、第2フィルム基材51の裏面に設けられている。拡散材52は、マトリクス樹脂と、可視光を拡散させる光拡散剤とを有する周知の構成である。拡散材52の厚さは、例えば10~30μmであることが好ましい。本実施形態の拡散材52の厚さは、20μmである。
【0042】
(裏側フィルム基材70)
裏側フィルム基材70は、透明樹脂製である。本実施形態の裏側フィルム基材70は、ポリカーボネートにより構成されている。裏側フィルム基材70の厚さは、例えば200~300μmであることが好ましい。本実施形態の裏側フィルム基材70の厚さは、250μmである。
【0043】
フィルム積層体30全体の厚さは、例えば400~650μmであることが好ましい。
<ヒータ線80及び被覆フィルム基材81>
ヒータ線80は、裏側フィルム基材70の裏面に配置されている。
【0044】
ヒータ線80は、例えば銅線により構成されており、通電により発熱する。
被覆フィルム基材81は、裏側フィルム基材70の裏面に設けられるとともに、ヒータ線80を被覆している。
【0045】
被覆フィルム基材81は、透明樹脂製である。本実施形態の被覆フィルム基材81は、ポリカーボネートにより構成されている。
被覆フィルム基材81が、本発明に係る被覆層に相当する。
【0046】
次に、図3及び図4を参照して、外装カバー11の製造方法について説明する。
まず、図3を参照して、フィルム積層体30の形成工程を説明する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、表側フィルム基材60の裏面と光輝フィルム40の表面とを接着剤31を介して固定する。また、光輝フィルム40の裏面と拡散フィルム50の表面とを接着剤31を介して固定する。また、拡散フィルム50の裏面と裏側フィルム基材70とを接着剤31を介して固定する。
【0047】
次に、図3(c)に示すように、表側フィルム基材60の表面に対してスクリーン印刷によって加飾層61を形成する。続いて、加飾層61の表面に対して印刷によって保護層62を形成する。このようにして、フィルム積層体30が形成される。
【0048】
次に、図4を参照して、透明基材20などの形成工程を説明する。
次に、図4(a)に示すように、フィルム積層体30を成形型にインサートするとともにキャビティ(いずれも図示略)に溶融樹脂を射出することによって、フィルム積層体30の表面に透明基材20を一体成形する(以上、成形工程)。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、透明基材20の表面にハードコート21を形成する。
次に、図4(c)に示すように、成形工程の後に、フィルム積層体30の裏面に、ヒータ線80を形成する(以上、ヒータ線形成工程)。ここでは、ヒータ線80が一体化された被覆フィルム基材81を、裏側フィルム基材70の裏面に接着材を介して貼り付ける。
【0050】
このようにして、外装カバー11が製造される。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)車両用外装カバー11は、透明基材20と、ラミネートフィルムにより構成され、透明基材20の裏面に接合されたフィルム積層体30とを備える。フィルム積層体30は、光輝フィルム40と、光輝フィルム40よりも裏側に配置された拡散フィルム50とを有している。拡散フィルム50よりも裏側には、通電により発熱するヒータ線80が配置されている。
【0051】
こうした構成によれば、外装カバー11においては、透明基材20の裏面にフィルム積層体30が接合されている。また、フィルム積層体30を構成する光輝フィルム40によって外装カバー11が光輝加飾されている。さらに、光輝フィルム40が、電波透過性を有するインジウム製の光輝層42により構成されている。これらのことから、外装カバー11の光輝加飾と電波透過性とを両立できる。
【0052】
ここで、上記構成によれば、フィルム積層体30がラミネートフィルムにより構成されているため、従来に比べて外装カバー11の厚さを小さくできる。このため、拡散フィルム50よりも裏側に配置されたヒータ線80において発生する熱が外装カバー11の表面まで到達しやすくなる。これにより、外装カバー11の表面に付着した雪を好適に融かすことができる。
【0053】
また、上記構成によれば、ヒータ線80が拡散フィルム50よりも裏側に配置されることによって、外装カバー11の表側からヒータ線80が視認されにくくなる。これにより、ヒータ線80によって外装カバー11の意匠性が損なわれることを抑制できる。
【0054】
また、上記構成によれば、外装カバー11の裏側に配置される光源13から出射される可視光(以下、光)によって外装カバー11の意匠面を発光させることができる。
ところで、光源13から出射される光によってヒータ線80が光輝層42に投影されることで、外装カバー11の意匠性が損なわれるおそれがある。
【0055】
この点、上記構成によれば、ヒータ線80と光輝フィルム40との間に拡散フィルム50が設けられている。このため、光源13からの光が拡散フィルム50によって拡散されるようになる。これにより、ヒータ線80が光輝層42に投影されることが抑制される。
【0056】
したがって、融雪機能の向上と意匠性の向上とを両立することができる。
(2)フィルム積層体30は、表側から順に、透明樹脂製の表側フィルム基材60、光輝フィルム40、拡散フィルム50、及び透明樹脂製の裏側フィルム基材70を有している。ヒータ線80は、裏側フィルム基材70の裏面に配置されている。
【0057】
こうした構成によれば、表側フィルム基材60及び裏側フィルム基材70によって光輝フィルム40及び拡散フィルム50を保護することができる。また、光輝層42を含む光輝フィルム40及び拡散フィルム50の各々を薄くしつつも、これらを挟む表側フィルム基材60及び裏側フィルム基材70によってフィルム積層体30の剛性を高めることができる。これにより、例えばフィルム積層体30を成形型にインサートして透明基材20を成形する場合に溶融樹脂の流動圧によってフィルム積層体30が変形することを抑制できる。
【0058】
(3)裏側フィルム基材70の裏面には、ヒータ線80を覆う透明樹脂製の被覆フィルム基材81が設けられている。
こうした構成によれば、ヒータ線80が透明樹脂製の被覆フィルム基材81によって覆われることでヒータ線80が保護される。このため、外装カバー11の電波透過性及び可視光透過性を満たしつつ、ヒータ線80の劣化等を抑制することができる。
【0059】
(4)表側フィルム基材60上の一部には、有色の加飾層61が設けられている。
こうした構成によれば、外装カバー11の裏側に配置された光源13から出射された可視光は、表側フィルム基材60のうち有色の加飾層61が設けられていない部分を透過する。一方、加飾層61に入射した可視光の一部または全部は、加飾層61によって吸収されるようになる。これにより、外装カバー11の表面のうち加飾層61が設けられていない部分が光って見えるようになる一方、加飾層61が設けられている部分は、加飾層61が設けられていない部分に比べて暗く見えるようになる。このように外装カバー11の発光の態様を外装カバー11の位置によって異ならせることができる。したがって、外装カバー11の意匠性を一層向上できる。
【0060】
(5)外装カバー11の製造方法は、フィルム積層体30を成形型にインサートしてフィルム積層体30の表面に透明基材20を一体成形する成形工程を備える。
こうした方法によれば、予めラミネート加工により形成されたフィルム積層体30を成形型にインサートしてフィルム積層体30の表面に透明基材20が一体成形される。このため、透明基材20の裏面に複数のフィルムを順に貼り付ける方法に比べて、外装カバー11を容易に製造することができる。
【0061】
(6)成形工程の後に、フィルム積層体30の裏面にヒータ線80を形成するヒータ線形成工程を備える。
例えば成形工程の前に、フィルム積層体30の裏面にヒータ線80を予め形成しておく方法が考えられる。この場合、成形型にフィルム積層体30をインサートして透明基材20を成形する際に、フィルム積層体30の表面に対して溶融樹脂の流動圧が作用してフィルム積層体30が変形するおそれがある。こうしたフィルム積層体30の変形に伴って、光輝フィルム40の表面にヒータ線80の凸部に対応した凸部が転写されるおそれがある。その結果、外装カバー11の意匠性が損なわれるおそれがある。
【0062】
この点、上記方法によれば、成形工程の後に、フィルム積層体30の裏面にヒータ線80が形成されるため、上述した不都合が生じない。
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・上記実施形態では、ヒータ線80を被覆する被覆層として、透明樹脂製の被覆フィルム基材81について例示した。これに代えて、図5に示すように、透明樹脂製の塗料により構成された被覆膜82を設けるようにしてもよい。この場合、被覆膜82の厚さは、例えば10~30μmである。本変更例の被覆膜82の厚さは、15μmである。
【0064】
また、上記実施形態では、フィルム積層体30の表面に透明基材20を一体成形する成形工程の後に、フィルム積層体30の裏面に、ヒータ線80を形成するヒータ線形成工程を行う製造方法について例示した。これに代えて、成形工程の前に、ヒータ線形成工程を行うようにしてもよい。この場合、まず、図6(a)に示すように、フィルム積層体30の裏面にヒータ線80を形成する。次に、図6(b)に示すように、フィルム積層体30を成形型にインサートするとともにキャビティ(いずれも図示略)に溶融樹脂を射出することによって、フィルム積層体30の表面に透明基材20を一体成形する。次に、図6(c)に示すように、フィルム積層体30の裏面に被覆膜82を形成する。また、透明基材20の表面にハードコート21を形成する。
【0065】
・発熱体は、ヒータ線80に限定されず、金属箔によって構成することもできる。この場合、予め透明フィルム上に積層した銅箔などの金属箔をエッチングすることによってヒータフィルムを形成する。そして、このヒータフィルムをフィルム積層体30の裏面に対して貼り合わせるようにしてもよい。
【0066】
・透明基材20は、フィルム積層体30を成形型にインサートしてフィルム積層体30の表面に一体成形されるものに限定されない。予め成形された透明基材20の裏面にフィルム積層体30を接合するようにしてもよい。
【0067】
・加飾層61を省略することもできる。この場合、保護層62も省略できる。
・透明基材20を成形する成形工程において加飾層61が耐えられるのであれば、保護層62を省略することもできる。
【0068】
・表側フィルム基材60及び裏側フィルム基材70は、ポリカーボネートに限定されず、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などの他の透明樹脂によって構成することもできる。
【0069】
・第1フィルム基材41及び第2フィルム基材51は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に限定されない。第1フィルム基材41及び第2フィルム基材51は、他の透明樹脂によって構成することもできる。
【0070】
例えば第2フィルム基材51をポリカーボネートによって構成することもできる。この場合、第2フィルム基材51の表面に拡散材52を配置するとともに、第2フィルム基材51の裏面にヒータ線80などの発熱体を配置することができる。これにより、裏側フィルム基材70を省略することができる。また、第2フィルム基材51の裏面に発熱体を覆う透明樹脂製の被覆層を設けることもできる。
【0071】
この場合であっても、表側フィルム基材60によって光輝フィルム40を保護することができる。また、光輝層42を含む光輝フィルム40及び拡散フィルム50の各々を薄くしつつも、表側フィルム基材60によってフィルム積層体30の剛性を高めることができる。これにより、例えばフィルム積層体30を成形型にインサートして透明基材20を成形する場合に溶融樹脂の流動圧によってフィルム積層体30が変形することを抑制できる。
【0072】
・透明基材20は、ポリカーボネートに限定されず、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などの他の透明樹脂によって構成することもできる。
・ハードコート21は、省略することもできる。
【0073】
・車両用外装カバーは、エンブレムに限定されず、ラジエータグリルなどとして具体化することもできる。また、車両用外装カバーは、車両の前部に設けられるミリ波レーダ装置90を覆うものに限定されず、車両の後部に設けられるミリ波レーダ装置90を覆うものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…外装部品
11…外装カバー
12…ハウジング
12a…開口部
13…光源
20…透明基材
21…ハードコート
30…フィルム積層体
31…接着剤
40…光輝フィルム
41…第1フィルム基材
42…光輝層
50…拡散フィルム
51…第2フィルム基材
52…拡散材
60…表側フィルム基材
61…加飾層
62…保護層
70…裏側フィルム基材
80…ヒータ線(発熱体)
81…被覆フィルム基材(被覆層)
82…被覆膜(被覆層)
90…ミリ波レーダ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6