(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20240719BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240719BHJP
E05B 83/34 20140101ALI20240719BHJP
E05F 15/63 20150101ALI20240719BHJP
E05D 15/46 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
E05B83/34
E05F15/63
E05D15/46
(21)【出願番号】P 2021123733
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0292830(US,A1)
【文献】特開2013-159287(JP,A)
【文献】特開昭63-201943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04 - 15/05
B60K 1/04
E05B 83/34
E05F 15/63
E05D 15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部材に対して移動可能に支持され、車体側開口を開閉する開閉リッドと、
前記開閉リッドに連結され、前記車体側部材に対して回転可能に支持された駆動軸部材と、
前記駆動軸部材に連結された電動アクチュエータと、
前記開閉リッドが前記車体側開口を閉じる所定閉位置から車体内方向へ押込み操作された際に前記駆動軸部材の回転により前記電動アクチュエータに発生する逆起電流を検出する検出部と、
前記逆起電流が検出された場合に、前記電動アクチュエータを、前記開閉リッドが前記車体側開口を開放する所定開位置に移動するまで前記駆動軸部材が回転するように駆動させる制御部と、
を備え
、
前記開閉リッドは、前記車体側部材に対して第一軸を中心にして回動可能に支持され、
前記駆動軸部材は、前記車体側部材に対して第二軸を中心にして回転可能に支持され、
一端部が前記第一軸を中心にして回動可能に支持されかつ他端部が前記第二軸を中心にして回動可能に支持されたリンク機構を備え、
前記リンク機構は、
一端部が前記車体側部材に対して前記第一軸を中心にして回動可能に支持されつつ前記開閉リッドに連結され、前記開閉リッドと一体で前記第一軸を中心にして回動する第一アームと、
一端部が前記車体側部材に対して前記第二軸を中心にして回動可能に支持されつつ前記駆動軸部材に連結され、前記駆動軸部材と一体で前記第二軸を中心にして回動する第二アームと、
前記第一アームの他端部と前記第二アームの他端部との間に介在し、一端部が前記第一アームの他端部に対して回動可能に支持されかつ他端部が前記第二アームの他端部に対して回動可能に支持された第三アームと、
を有する、車両用リッド開閉装置。
【請求項2】
前記駆動軸部材は、前記開閉リッドが前記所定閉位置から車体内方向へ押込み操作された際に基準位置から前記第二軸回りのθ+方向へ回転すると共に、前記逆起電流の検出に伴う前記電動アクチュエータの駆動により前記θ+方向へ更に回転する、請求項
1に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記開閉リッドが前記所定開位置に達した後、所定条件が成立した場合に、前記電動アクチュエータを、前記開閉リッドが前記所定開位置から前記所定閉位置に移動するまで前記駆動軸部材が前記第二軸回りのθ-方向へ回転するように駆動させる、請求項
2に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項4】
前記駆動軸部材が前記基準位置を超えて更に前記θ-方向へ回転するのを規制する閉側ストッパを備える、請求項
3に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項5】
前記開閉リッドは、前記所定閉位置からの押込み操作により前記第一軸回りのω+方向へ回動可能であると共に、前記電動アクチュエータの駆動による前記駆動軸部材の前記θ+方向への回転が前記リンク機構を介して伝達されることにより前記第一軸回りのω-方向へ回動可能であり、
前記リンク機構は、前記開閉リッドが前記ω+方向へ回動したときに前記駆動軸部材を前記基準位置から前記θ+方向へ回転させると共に、前記駆動軸部材が前記電動アクチュエータの駆動により前記θ+方向へ回転したときに前記開閉リッドを前記ω-方向へ回動させる、請求項
2に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項6】
前記開閉リッドは、
前記車体側開口に合わせて板状に形成されたリッド本体部と、
一端部が前記リッド本体部の裏面に連結されかつ他端部が前記車体側部材に対して前記第一軸を中心にして回動可能に支持されたリッドアーム部と、
を有する、請求項
1に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項7】
前記リッドアーム部の一端部は、前記リッド本体部に回動自在に連結され、
前記開閉リッドは、前記リッドアーム部とは別に設けられた、一端部が前記リッド本体部の裏面に連結されかつ他端部が前記車体側部材に対して第三軸を中心にして回動可能に支持された補助アーム部を有し、
前記開閉リッドは、前記リッド本体部が前記リッドアーム部と前記補助アーム部との協働により前記車体側開口に対して平行な状態に維持されるように前記第一軸及び前記第三軸を中心にして回動する、請求項
6に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項8】
前記開閉リッドが前記車体内方向へ過剰に押込み操作されるのを規制する押込みストッパを備える、請求項
1乃至7の何れか一項に記載された車両用リッド開閉装置。
【請求項9】
前記開閉リッドが前記所定開位置を超えて更に移動するのを規制する開側ストッパを備える、請求項1乃至
8の何れか一項に記載された車両用リッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の給油口や充電口などが車体奥側に配置される車体側開口を開閉リッドを用いて開閉する車両用リッド開閉装置が知られている(例えば、特許文献1)。この車両用リッド開閉装置は、開閉リッドを開閉動作させる開閉機構を備えている。この開閉機構は、後退位置と前進位置との間で進退して開閉リッドを開閉動作させる進退部材と、進退部材の進退を制限及び制限解除するように移動する制限部材と、制限部材を移動させる駆動力を発生するモータなどの駆動装置と、を有している。進退部材の後退位置では、開閉リッドが所定閉位置に保持される。進退部材が前進位置まで前進すると、開閉リッドが所定閉位置と所定開位置(すなわち、全開位置)との間の中途の開状態となる。進退部材は、バネ部材により前進方向へ付勢されている。
【0003】
上記の車両用リッド開閉装置において、開閉リッドが中途の開状態又は所定開位置で操作者により車体内方向へ押し込まれると、進退部材が後退し後退位置に達した際に開閉リッドが所定閉位置に係止されると共に、駆動装置が制限部材を前進移動させることにより進退部材の進退が制限される。これにより、開閉リッドが所定閉位置にロックされる。また、開閉リッドの所定閉位置で駆動装置が制限部材を後退移動させることにより或いはケーブルワイヤが操作されることにより進退部材の進退制限が解除される。進退部材の進退制限が解除された状態で、開閉リッドが操作者により車体内方向へ押し込まれて進退部材が後退すると、開閉リッドの所定閉位置での係止が解除される。そして、進退部材を後退させる開閉リッドへの押込み力が解除されると、バネ部材の付勢力により進退部材が前進位置まで前進する。これにより、開閉リッドが所定閉位置と所定開位置との間の中途位置で開状態になり、開閉リッドがその後の操作者の操作により所定開位置まで回動されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車両用リッド開閉装置においては、開閉リッド自体が所定閉位置で操作者により車体内方向へ押込み操作されることにより、その開閉リッドが所定開位置に向けて開動作する。すなわち、開閉リッドを所定閉位置から所定開位置に向けて開動作させるうえでは、操作者にその開閉リッド自体を車体内方向へ押込み操作させれば十分である。このため、車体表面に開閉リッドとは別に開閉リッドを開動作させるための専用のスイッチを設けることなく、開閉リッド自体の押込み操作により開閉リッドを所定閉位置から所定開位置に向けて回動させることは可能である。
【0006】
しかしながら、上記の車両用リッド開閉装置では、開閉リッドを所定閉位置から回動させる力は、バネ部材の発生する付勢力である。そして、バネ部材は、開閉リッドを所定閉位置と所定開位置との間の中途の開状態となる位置までしか付勢しない。従って、上記の車両用リッド開閉装置において、開閉リッドを所定開位置まで回動させるうえでは、バネ部材による付勢力の消滅後、開閉リッドを所定開位置まで手動操作により移動させることが必要となるので、操作者による手動操作なく開閉リッドを所定閉位置から所定開位置まで回動させることはできない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、開閉リッドへの押込み操作により開閉リッドの開動作を開始しつつ、その開動作開始後における開閉リッドの所定開位置までの移動を操作者による手動操作を伴うことなく実現することが可能な車両用リッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車体側部材に対して移動可能に支持され、車体側開口を開閉する開閉リッドと、前記開閉リッドに連結され、前記車体側部材に対して回転可能に支持された駆動軸部材と、前記駆動軸部材に連結された電動アクチュエータと、前記開閉リッドが前記車体側開口を閉じる所定閉位置から車体内方向へ押込み操作された際に前記駆動軸部材の回転により前記電動アクチュエータに発生する逆起電流を検出する検出部と、前記逆起電流が検出された場合に、前記電動アクチュエータを、前記開閉リッドが前記車体側開口を開放する所定開位置に移動するまで前記駆動軸部材が回転するように駆動させる制御部と、を備える、車両用リッド開閉装置である。
【0009】
この構成によれば、開閉リッドへの押込み操作により電動アクチュエータに逆起電流が発生し、その逆起電流の検出に伴う電動アクチュエータの駆動により開閉リッドが所定開位置に移動するまで駆動軸部材が回転する。この場合、開閉リッドは、所定開位置まで移動する。従って、開閉リッドへの押込み操作により開閉リッドの開動作を開始しつつ、開動作開始後における開閉リッドの所定開位置までの移動を操作者による手動操作を伴うことなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用リッド開閉装置におけるリッド開位置での斜視図である。
【
図2】実施形態の車両用リッド開閉装置におけるリッド閉位置での斜視図である。
【
図3】実施形態の車両用リッド開閉装置の要部構成図である。
【
図4】実施形態の車両用リッド開閉装置を開閉リッドの所定閉位置で横方向から見た図である。
【
図5】
図4に示すリッド位置での車両用リッド開閉装置が備えるリンク機構及び開閉リッドの動作位置を説明するための図である。
【
図6】実施形態の車両用リッド開閉装置を開閉リッドの所定押込み位置で横方向から見た図である。
【
図7】
図6に示すリッド位置での車両用リッド開閉装置が備えるリンク機構及び開閉リッドの動作位置を説明するための図である。
【
図8】実施形態の車両用リッド開閉装置を開閉リッドの所定閉位置と所定開位置との間の中途位置で横方向から見た図である。
【
図9】
図8に示すリッド位置での車両用リッド開閉装置が備えるリンク機構及び開閉リッドの動作位置を説明するための図である。
【
図10】実施形態の車両用リッド開閉装置を開閉リッドの所定開位置で横方向から見た図である。
【
図11】
図10に示すリッド位置での車両用リッド開閉装置が備えるリンク機構及び開閉リッドの動作位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係る車両用リッド開閉装置の具体的な実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の車両用リッド開閉装置1は、
図1及び
図2に示す如く、車体2側に設けられた開口(以下、車体側開口と称す。)を開閉するための装置である。車両用リッド開閉装置1は、特に、操作者による車体側開口を開閉する開閉リッドへの押込み操作によりその開閉リッドを自動的に所定開位置まで回動させることが可能である。車両用リッド開閉装置1は、例えばガソリン車やディーゼル車,電気自動車,ハイブリッド自動車などの車両に搭載される。
【0013】
車体側開口は、車両への給油やバッテリ充電などのエネルギ供給のために車体側面や車体前面などに設けられた車体2の内外を貫く開口である。車両用リッド開閉装置1は、車体側開口を、エネルギ供給が可能になるように開放することが可能であると共に、エネルギ供給が不可能になるように閉じることが可能である。車体側開口は、車体2自体に設けられた開口であってもよいし、或いは、車体2自体に設けられた開口に取り付けられたボックス体の開口であってもよい。本実施例において、車体側開口は、後述するインレットボックス10のボックス開口13であるものとする。
【0014】
車両用リッド開閉装置1は、
図1及び
図2に示す如く、インレットボックス10と、開閉リッド20と、を備えている。
【0015】
インレットボックス10は、
図2に示す如く、エネルギ供給のための供給部3を収容する箱状の車体側部材である。インレットボックス10は、車体2に設けられた車体開口2aに嵌るように車体2に取り付けられている。インレットボックス10は、車体開口2aに合わせて車体内側(すなわち、車体奥側)に配置されている。供給部3には、車体側開口の開放時にエネルギ供給のためのガン(図示せず)が挿入可能である。このガンは、ガソリンスタンドなどに設置された給油ガンや充電スタンドなどに設置された充電ガンなどである。
【0016】
インレットボックス10は、底壁部11と、側壁部12と、ボックス開口13と、を有している。底壁部11と側壁部12とは、供給部3を収容する収容空間14を形成している。底壁部11は、例えば四角板状の部位である。側壁部12は、底壁部11の周縁を取り囲むように底壁部11の縁部から立設した壁部位である。
【0017】
底壁部11には、第一貫通孔11aが設けられている。第一貫通孔11aは、一端が車体奥側にある給油タンクやバッテリなどに接続しかつ他端が収容空間14に収容される管部や電線が貫通する孔である。供給部3は、管部や電線の他端に形成されたコネクタ部であって、収容空間14に収容されるように配置されている。供給部3は、車体側開口の開放時(具体的には、ボックス開口13の開放時)に車両外方に露出可能にインレットボックス10に取り付けられている。
【0018】
ボックス開口13は、インレットボックス10に収容空間14を挟んで底壁部11と対向するように設けられた開口である。ボックス開口13は、開閉リッド20の所定閉位置で閉じられ、開閉リッド20の所定閉位置からの開動作により開放される。ボックス開口13の開放時は、収容空間14内の供給部3が車両外方に露出される。インレットボックス10は、例えば、ボックス開口13の法線が水平方向に一致する方向に延び或いは車体内側から車体外側にかけて水平方向よりも上方に傾いて延びるように車体2に取り付けられている。
【0019】
インレットボックス10は、枠部15を有している。枠部15は、ボックス開口13の周縁部に沿って環状に形成されている。枠部15は、ボックス開口13の周縁部から枠外方向に向けて延出するようにフランジ状に形成されている。インレットボックス10は、枠部15の裏面が車体開口2a周縁の表面などに当接することにより車体2に位置決めされる。
【0020】
開閉リッド20は、開閉動作によりボックス開口13を開閉する蓋部材である。開閉リッド20は、インレットボックス10に対して移動可能に支持され、具体的には、インレットボックス10に対して第一軸Z1を中心にして回動可能である。開閉リッド20は、ボックス開口13を閉じる所定閉位置とボックス開口13を開放する所定開位置(以下、全開位置と称す。)との間で回動可能であると共に、所定閉位置とその所定閉位置よりも開閉リッド20が車体奥側に位置する所定押込み位置との間でも回動可能である。開閉リッド20は、操作者の手動操作によることなく後述の如く駆動装置の駆動力を用いて回動することが可能である。
【0021】
尚、以下、第一軸Z1回りの両方向のうち開閉リッド20が所定閉位置から所定押込み位置まで回動する方向をω+方向と称し、開閉リッド20が所定押込み位置から全開位置まで回動する方向をω-方向と称す。
【0022】
開閉リッド20は、
図5、
図7、
図9、及び
図11に示す如く、リッド本体部21と、リッドアーム部22と、補助アーム部23(
図8及び
図10参照)と、を有している。
【0023】
リッド本体部21は、板状に形成されており、ボックス開口13に合わせた形状(例えば長方形状)及び大きさに形成されている。リッド本体部21は、開閉リッド20の所定閉位置でボックス開口13の周縁における枠部15や車体表面に面一になってボックス開口13を閉じるように位置する。尚、リッド本体部21の表面は、車体2表面に合わせて湾曲していてもよい。
【0024】
リッドアーム部22は、一端部がリッド本体部21に連結される、アーム状に延びる部位である。リッドアーム部22の一端部は、リッド本体部21に回動自在に連結されている。リッドアーム部22の他端部は、インレットボックス10に対して第一軸Z1を中心にして回動可能に支持されている。第一軸Z1は、水平に延びる軸である。例えば車体開口2aが車体側面に設けられている場合は、第一軸Z1は、車両前後方向に延びる。
【0025】
第一軸Z1上には、
図3に示す如く、第一軸体31が設けられている。第一軸体31は、第一軸Z1に沿って水平に延びている。第一軸体31は、インレットボックス10に対して第一軸Z1を中心にして回動可能に支持されている。第一軸体31は、断面が例えば円形や方形になるように形成されている。リッドアーム部22の他端部は、第一軸体31に回動不能に取り付け固定されている。リッドアーム部22の他端部は、第一軸体31と一体で第一軸Z1を中心にして回動する。
【0026】
リッドアーム部22は、一対設けられており、一対のリッドアーム部22は、第一軸体31の延びる方向に離れて配置されている。一対のリッドアーム部22は、互いに同期して回動する。
【0027】
補助アーム部23は、一端部がリッド本体部21に連結される、アーム状に延びる部位である。補助アーム部23の一端部は、リッド本体部21に回動自在に連結されている。補助アーム部23の一端部がリッド本体部21に連結される部位は、リッドアーム部22の一端部がリッド本体部21に連結される部位とは異なっている。補助アーム部23の他端部は、インレットボックス10に対して第三軸(図示せず)を中心にして回動可能に支持されている。この第三軸は、第一軸Z1とは異なる水平に延びる軸であり、第一軸Z1に平行に延びている。
【0028】
補助アーム部23は、一対設けられており、一対の補助アーム部23は、第三軸の延びる方向に離れて配置されている。一対の補助アーム部23は、互いに同期して回動する。
【0029】
補助アーム部23の第三軸を中心にした回動は、リッドアーム部22の第一軸Z1を中心にした回動と連動して、リッド本体部21が車体開口2aに対して平行な状態に維持されるように行われる。すなわち、開閉リッド20は、リッド本体部21がリッドアーム部22と補助アーム部23との協働により車体開口2aに対して平行な状態に維持されるように第一軸Z1及び第三軸を中心にして回動する開閉動作を行う。
【0030】
開閉リッド20は、所定閉位置から全開位置への開動作中、ボックス開口13に対して平行移動しながら車体外側に飛び出して旋回する。そして、開閉リッド20は、全開位置で車体2におけるボックス開口13よりも下方の面に対向する。尚、インレットボックス10とリッドアーム部22と補助アーム部23との連結の仕方を上記の実施形態とは異なるものにして、開閉リッド20の開閉動作を、開閉リッド20が全開位置で車体2におけるボックス開口13よりも上方の面に対向するように設定することとしてもよい。
【0031】
リッドアーム部22及び補助アーム部23は、インレットボックス10の底壁部11に設けられた第二貫通孔11bを通して貫通している。リッドアーム部22の一端部及び補助アーム部23の一端部は、第二貫通孔11bよりも車両外方側でリッド本体部21に連結する。また、リッドアーム部22の他端部及び補助アーム部23の他端部は、第二貫通孔11bよりも車両内方側でインレットボックス10に対して回動可能に支持される。
【0032】
車両用リッド開閉装置1は、また、
図3~
図11に示す如く、駆動軸部材32と、リンク機構40と、駆動装置50と、を備えている。
【0033】
駆動軸部材32は、インレットボックス10に対して第二軸Z2を中心にして回転可能に支持された第二軸体である。駆動軸部材32は、リンク機構40を介して開閉リッド20に連結されている。第二軸Z2は、第一軸Z1及び第三軸とは異なる水平に延びる軸であり、第一軸Z1及び第三軸に平行に延びている。駆動軸部材32は、第二軸Z2に沿って水平に延びている。駆動軸部材32は、断面が例えば円形や方形になるように形成されている。尚、駆動軸部材32は、後述の駆動装置50の電動アクチュエータ51の筐体に対して第二軸Z2を中心にして回転可能に支持されていてもよい。
【0034】
リンク機構40は、開閉リッド20と駆動軸部材32との間で相互に力を伝達する機構である。リンク機構40は、一端部が第一軸Z1を中心にして回動可能に支持されかつ他端部が第二軸Z2を中心にして回動可能に支持されている。リンク機構40は、第一アーム41と、第二アーム42と、第三アーム43と、を有している。
【0035】
第一アーム41は、開閉リッド20と一体で第一軸Z1を中心にして回動する部材である。第一アーム41は、アーム状に延びている。第一アーム41の一端部は、インレットボックス10に対して第一軸Z1を中心にして回動可能に支持されていると共に、開閉リッド20のリッドアーム部22の他端部に連結されている。第一アーム41の回動停止中に開閉リッド20が回動すると、その開閉リッド20と一体で第一アーム41が第一軸Z1回りに回動する。また、開閉リッド20の回動停止中に第一アーム41が第一軸Z1回りに回動すると、その第一アーム41と一体で開閉リッド20が第一軸Z1回りに回動する。
【0036】
第二アーム42は、駆動軸部材32と一体で第二軸Z2を中心にして回動する部材である。第二アーム42は、アーム状に延びている。第二アーム42の一端部は、インレットボックス10に対して第二軸Z2を中心にして回動可能に支持されていると共に、駆動軸部材32に連結されている。第二アーム42における第二軸Z2の中心から他端部の先端までの長さは、第一軸Z1の中心と第二軸Z2の中心との距離に比して小さい。第二アーム42の回動停止中に駆動軸部材32が回転すると、その駆動軸部材32と一体で第二アーム42が第二軸Z2回りに回動する。また、駆動軸部材32の回転停止中に第二アーム42が第二軸Z2回りに回動すると、その第二アーム42と一体で駆動軸部材32が第二軸Z2回りに回転する。
【0037】
第三アーム43は、第一アーム41の他端部と第二アーム42の他端部との間に介在する部材である。第三アーム43は、アーム状に延びている。
【0038】
第三アーム43の一端部は、第一アーム41の他端部に対して第四軸Z4を中心にして回動可能に支持されている。第一アーム41と第三アーム43とは、第四軸Z4を中心にして相対的に回動可能である。第四軸Z4上には、第四軸体34が設けられている。第四軸Z4すなわち第四軸体34は、第一アーム41と第三アーム43との相対回動に従って位置移動する。
【0039】
また、第三アーム43の他端部は、第二アーム42の他端部に対して第五軸Z5を中心にして回動可能に支持されている。第二アーム42と第三アーム43とは、第五軸Z5を中心にして相対的に回動可能である。第五軸Z5上には、第五軸体35が設けられている。第五軸Z5すなわち第五軸体35は、第二アーム42と第三アーム43との相対回動に従って位置移動する。
【0040】
第三アーム43は、
図9及び
図11に示す如く、第一肉抜き部43aと、第二肉抜き部43bと、を有している。第一肉抜き部43a及び第二肉抜き部43bはそれぞれ、第四軸Z4側の一端部と第五軸Z5側の他端部との間において肉抜きされた部位である。第一肉抜き部43a及び第二肉抜き部43bはそれぞれ、半円状に切り抜かれて凹状に湾曲した面を有している。第一肉抜き部43aは、第一アーム41と第三アーム43とが第四軸Z4を中心にして相対的に回動できる角度を、第一肉抜き部43aが無いものとした場合に比べて広くするために設けられている。第二肉抜き部43bは、第二アーム42と第三アーム43とが第五軸Z5を中心にして相対的に回動できる角度を、第二肉抜き部43bが無いものとした場合に比べて広くするために設けられている。
【0041】
駆動軸部材32は、開閉リッド20が所定閉位置から所定押込み位置を経て全開位置まで回動する過程(以下、開動作過程と称す。)で第二軸Z2回りの両方向のうちの一方(以下、θ+方向と称す。)に回転すると共に、開閉リッド20が全開位置から所定閉位置まで回動する過程(以下、閉動作過程と称す。)で第二軸Z2回りの両方向のうちの他方(以下、θ-方向と称す。)に回転する。
【0042】
駆動装置50は、開閉リッド20が所定閉位置から車体内方向の所定押込み位置まで押込み操作されたことを検出することが可能であると共に、開閉リッド20を開動作させかつ閉動作させるために必要な駆動力を発生させることが可能である。駆動装置50は、特に、駆動力を発生させていない状態で駆動軸部材32が第二軸Z2回りのθ+方向へ回転したことを検知して開閉リッド20の上記押込み操作を検出する。また、駆動装置50は、開閉リッド20の上記押込み操作を検出した場合に、駆動軸部材32に第二軸Z2回りのθ+方向へ更に回転させる駆動力を付与する。駆動装置50は、電動アクチュエータ51と、検出部52と、制御部53と、を有している。
【0043】
電動アクチュエータ51は、電力供給により駆動力を発生する電気モータである。電動アクチュエータ51は、筐体に内蔵されている。電動アクチュエータ51は、駆動軸部材32に連結されている。電動アクチュエータ51と駆動軸部材32とは、互いに連動して回転する。電動アクチュエータ51の巻線に正方向の電流が流れると、駆動軸部材32を第二軸Z2回りのθ+方向へ回転させる駆動力が発生する。電動アクチュエータ51の巻線に電流が流れていない状態で駆動軸部材32が第二軸Z2回りのθ+方向へ回転すると、電動アクチュエータ51の巻線に上記正方向とは逆方向の電流(逆起電流)が流れる。
【0044】
検出部52及び制御部53は、電動アクチュエータ51を制御する制御装置に含まれている。検出部52は、電動アクチュエータ51の巻線に流れる逆起電流を検出する部位である。制御部53は、電動アクチュエータ51の巻線に供給する電流を制御する部位である。制御部53は、特に、検出部52により電動アクチュエータ51に発生した逆起電流が検出された場合に、電動アクチュエータ51の巻線に正方向の電流を流して電力供給を行うことにより、駆動軸部材32をθ+方向へ回転させる駆動力を発生させ、駆動軸部材32にその駆動力を付与する。
【0045】
リンク機構40は、開閉リッド20が所定閉位置から所定押込み位置まで第一軸Z1回りのω+方向へ回動したときは、駆動軸部材32を基準位置S(
図5参照)から第二軸Z2回りのθ+方向へ回転させるように作動する。また、リンク機構40は、駆動軸部材32が駆動装置50からの駆動力の付与により第二軸Z2回りのθ+方向へ更に回転したときは、開閉リッド20を所定押込み位置から全開位置まで第一軸Z1回りのω-方向へ回動させるように作動する。
【0046】
更に、リンク機構40は、開閉リッド20が全開位置から所定閉位置まで第一軸Z1回りのω+方向へ回動したときは、駆動軸部材32を第二軸Z2回りのθ-方向へ回転させるように作動し、駆動軸部材32が駆動装置50からの駆動力の付与により基準位置Sまで第二軸Z2回りのθ-方向へ回転したときは、開閉リッド20を全開位置から所定閉位置まで第一軸Z1回りのω+方向へ回動させるように作動する。
【0047】
車両用リッド開閉装置1は、押込みストッパ60と、開側ストッパ70と、閉側ストッパ80と、を備えている。押込みストッパ60、開側ストッパ70、及び閉側ストッパ80はそれぞれ、ブロック状に形成されており、インレットボックス10に取り付け固定されている。
【0048】
押込みストッパ60は、開閉リッド20が所定押込み位置を超えて第一軸Z1回りのω+方向へ回動することすなわち過剰に押込み操作されることを規制する部材である。押込みストッパ60は、押込み操作される開閉リッド20のリッド本体部21の裏面が当接し得る位置に配置されている。開閉リッド20が操作者による押込み操作により所定押込み位置を超えて回動しようとする際にリッド本体部21の裏面が当接(面接触)することにより、開閉リッド20の上記回動を規制する。
【0049】
開側ストッパ70は、開閉リッド20が全開位置を超えて第一軸Z1回りのω-方向へ回動することすなわち全開位置を超えて更に移動することを規制する部材である。開側ストッパ70は、駆動軸部材32に連結する第二アーム42のθ+方向側の側面が当接(面接触)し得る位置に配置されている。開側ストッパ70は、開閉リッド20が全開位置を超えて回動しようとする際に、その駆動軸部材32に連結する第二アーム42のθ+方向側の側面が当接(面接触)することにより、開閉リッド20の上記回動を規制する。
【0050】
閉側ストッパ80は、駆動軸部材32が上記基準位置Sを超えて更に第二軸Z2回りのθ-方向へ回転するのを規制する部材である。閉側ストッパ80は、駆動軸部材32が上記基準位置Sを超えて回転しようとする際に、その駆動軸部材32に連結する第二アーム42のθ-方向側の側面が当接(面接触)することにより、駆動軸部材32の上記回転を規制する。
【0051】
次に、車両用リッド開閉装置1の動作について説明する。
車両用リッド開閉装置1において、車両走行中などは、開閉リッド20は、リッド本体部21がインレットボックス10のボックス開口13を閉じた所定閉位置にある。この開閉リッド20の所定閉位置では、供給部3が開閉リッド20により閉じられており、供給部3へのガンの接続は不可能である。
【0052】
車両運転者や車両使用者などの操作者は、開閉リッド20が所定閉位置にある状態で車両の給油やバッテリ充電を希望する場合は、車両を停車させたうえで、車両に対して開閉リッド20を全開位置まで回動させるために必要な準備作業を行う。この準備作業は、開閉リッド20の全開位置でのロックを解除する作業を含み、例えば、車室内に設けられた開スイッチボタンの押下操作や開レバーの引っ張り操作、或いは、車両に対応するスマートキーを携帯した状態でその車両に接近して車両と携帯機との間の通信により車両に照合を行わせること,スマートフォンのアプリによる開指示などである。
【0053】
車両用リッド開閉装置1は、車両において車両停車中に上記の準備作業が行われたことが検知されると、開閉リッド20を所定閉位置から全開位置まで回動させるための準備が完了した状態になる。
【0054】
開閉リッド20の所定閉位置において、駆動軸部材32は、基準位置Sに位置していると共に、リンク機構40は、次の条件(1)及び(2)を満たすように構成されている。
(1)第二アーム42の他端部及び第三アーム43の他端部が支持される第五軸Z5の中心C5(
図5参照)が、第二軸Z2と第一アーム41の他端部及び第三アーム43の一端部が支持される第四軸Z4とを結ぶ直線(具体的には線分)L(
図5参照)に対してθ-方向側の領域に位置すること。
(2)その開閉リッド20の所定閉位置から第一アーム41の第一軸Z1回りのω+方向への回動が生じるものとしたときに、第二軸Z2と第四軸Z4との距離が長くなることができること(すなわち、第一アーム41の第一軸Z1回りのω+方向への回動が生じるまでは、第二軸Z2と第四軸Z4との距離が到達可能な最長距離よりも短くなっていること)。
【0055】
上記の如く開閉リッド20を所定閉位置から全開位置まで回動させるための準備が完了した状態で、操作者は、
図6に示す如く、開閉リッド20を開動作させるために車外で開閉リッド20を押込み操作する。かかる開閉リッド20の押込み操作が行われると、開動作が開始される。開動作過程では、まず、
図7に示す如く、開閉リッド20が所定閉位置から所定押込み位置で押込みストッパ60に当接するまで第一軸Z1回りのω+方向へ回動し、その開閉リッド20のω+方向への回動に同期してその開閉リッド20と一体で第一アーム41が第一軸Z1回りのω+方向へ回動する。
【0056】
第一アーム41が第一軸Z1回りのω+方向へ回動すると、その回動に伴って第二軸Z2と第四軸Z4との距離が長くなり、第二アーム42と第三アーム43とが第五軸Z5を経て屈曲した状態から直線的な状態になるようにすなわち第五軸Z5の中心C5が上記の直線Lに対してθ-方向側の領域からθ+方向側の領域へ向けて移動するように姿勢変化する。この場合には、第二アーム42が第二軸Z2回りのθ+方向へ回動し、その第二アーム42の第二軸Z2回りのθ+方向への回動に同期してその第二アーム42と一体で駆動軸部材32が基準位置Sから第二軸Z2回りのθ+方向へ回転する。
【0057】
駆動軸部材32が基準位置Sから第二軸Z2回りのθ+方向へ回転すると、駆動装置50の電動アクチュエータ51に逆起電流が発生する。検出部52は、この電動アクチュエータ51に発生する逆起電流を検出する。検出部52が電動アクチュエータ51の逆起電流を検出すると、制御部53が電動アクチュエータ51の巻線に正方向の電流を流して電力供給を行う。かかる電流供給が電動アクチュエータ51に対して行われると、駆動軸部材32をθ+方向へ更に回転させる駆動力が発生する。かかる駆動力は、駆動軸部材32に付与される。
【0058】
駆動軸部材32に上記の駆動力が付与されると、駆動軸部材32が第二軸Z2回りのθ+方向へ回転する。この場合には、第二アーム42が第二軸Z2回りのθ+方向へ更に回動し、その第二アーム42の回動に伴って第三アーム43が姿勢変化して第一アーム41が第一軸Z1回りを反転してω-方向へ回動する。第一アーム41がω-方向へ回動すると、その第一アーム41の回動に同期してその第一アームと一体で開閉リッド20が第一軸Z1回りのω-方向へ回動する。この開閉リッド20のω-方向への回動は、開閉リッド20が所定押込み位置から所定閉位置を経て全開位置に達するまで行われる。
【0059】
駆動軸部材32ひいては第二アーム42の第二軸Z2回りのθ+方向への回転乃至回動は、第二アーム42が開側ストッパ70に当接するまで行われる。第二アーム42が開側ストッパ70に当接した場合、開閉リッド20が全開位置に到達する。
【0060】
このように、車両用リッド開閉装置1において、開閉リッド20は、所定閉位置から所定押込み位置まで操作者による押込み操作が行われることにより第一軸Z1回りのω+方向へ回動可能であると共に、所定押込み位置から全開位置まで駆動装置50による駆動力が駆動軸部材32及びリンク機構40を介して伝達されることにより第一軸Z1回りのω-方向へ回動可能である。
【0061】
車両用リッド開閉装置1においては、開閉リッド20が操作者により所定閉位置から車体内方向へ押込み操作されることにより、リンク機構40の作動によって駆動軸部材32が基準位置Sから第二軸Z2回りのθ+方向へ回転して電動アクチュエータ51に逆起電流が発生する。そして、その逆起電流が検出されて電動アクチュエータ51が駆動軸部材32をθ+方向へ更に回転させる駆動力を発生することにより、駆動軸部材32が第二軸Z2回りのθ+方向へ回転し、その回転がリンク機構40を介して開閉リッド20に伝達され、開閉リッド20が全開位置に達するまで第一軸Z1回りのω-方向へ回動する。
【0062】
かかる車両用リッド開閉装置1によれば、開閉リッド20を所定閉位置から全開位置まで回動させるうえで、操作者が開閉リッド20自体を所定閉位置から車両内方へ押込み操作すれば十分である。すなわち、開閉リッド20への押込み操作により開閉リッド20の開動作が開始される。
【0063】
このため、車体表面に開閉リッド20とは別に開閉リッド20を開動作させるための専用のスイッチを設けることは不要であるので、開閉リッド20を開動作させるための構造が専用スイッチの存在に起因して複雑化するのを回避することができ、その構造を簡素化することができると共に、車体表面の外観が専用スイッチの存在に起因して損なわれるのを回避することができる。また、開閉リッド20を開動作させる構造が、開閉リッド20を所定閉位置での押込み操作により全開位置に向けて回動させるいわゆるプッシュアップ式の構造であるので、簡易な操作で開閉リッド20を全開位置に向けて開動作させることができる。
【0064】
また、車両用リッド開閉装置1によれば、開閉リッド20が操作者により所定閉位置から車体内方向へ押込み操作された場合に、その開閉リッド20を所定押込み位置から全開位置まで電動アクチュエータ51による駆動力を用いて自動的に回動させることができる。このため、操作者による開閉リッド20の押込み操作後は、開閉リッド20を全開位置まで回動させるうえで操作者が開閉リッド20を手動操作することは不要であるので、開閉リッド20を操作者による手動操作を伴うことなく全開位置まで回動させることができる。
【0065】
従って、車両用リッド開閉装置1によれば、開閉リッド20への押込み操作によりその開閉リッド20の開動作を開始しつつ、その開動作開始後における開閉リッド20の全開位置までの移動を操作者による手動操作を伴うことなく実現することができる。
【0066】
また、車両用リッド開閉装置1において、開閉リッド20の所定閉位置からの押込み操作は、開閉リッド20が押込みストッパ60に当接する所定押込み位置まで行われ、その所定押込み位置を超えて行われることは無い。すなわち、開閉リッド20の所定押込み位置を超えた第一軸Z1回りのω+方向への回動は、押込みストッパ60により規制される。このため、開閉リッド20の所定閉位置からの押込み操作が過大に行われるのを防止することができ、開閉リッド20が車体内方向へ過剰に押込み操作されることに起因して車両用リッド開閉装置1のボックス開口13付近の部材が損傷するのを防止することができる。
【0067】
また、車両用リッド開閉装置1において、開閉リッド20の全開位置への回動は、第二アーム42の側面が開側ストッパ70に当接するまで行われ、全開位置を超えて行われることは無い。すなわち、開閉リッド20の全開位置を超えた第一軸Z1回りのω-方向への回動は、開側ストッパ70により規制される。このため、開閉リッド20の全開位置を超えた回動が行われるのを防止することができ、開閉リッド20が全開位置を超えて更に回動することに起因して車両用リッド開閉装置1の開閉リッド20やボックス開口13付近の部材が損傷するのを防止することができる。
【0068】
操作者は、開閉リッド20の全開位置でその開閉リッド20を所定閉位置へ移行させることを希望する場合は、車両に対して開閉リッド20を所定閉位置まで回動させる作業を行う。この作業は、例えば、車室内に設けられた閉スイッチボタンの押下操作やスマートフォンのアプリによる閉指示などである。車両用リッド開閉装置1は、かかる作業が行われたことが検知されると、駆動装置50を用いて開閉リッド20を全開位置から所定閉位置まで回動させる。
【0069】
この場合、駆動装置50は、電動アクチュエータ51に駆動軸部材32を第二軸Z2回りのθ-方向へ回転させる力を発生させる。駆動軸部材32が第二軸Z2回りのθ-方向へ回転すると、リンク機構40の作動により開閉リッド20が第一軸Z1回りのω+方向へ回動する。駆動軸部材32のθ-方向への回転は、第二アームの側面が閉側ストッパ80に当接するまで行われ、基準位置Sを超えて行われることは無い。すなわち、駆動軸部材32の基準位置Sを超えた第二軸Z2回りのθ-方向への回転は、閉側ストッパ80により規制される。このため、駆動軸部材32の基準位置Sを超えた回転が行われるのを防止することができ、駆動軸部材32が基準位置Sを超えて更にθ-方向へ回転することに起因して車両用リッド開閉装置1のリンク機構40などの部材が損傷するのを防止することができる。
【0070】
また、開閉リッド20の所定閉位置では、第五軸Z5の中心C5が直線Lに対してθ-方向側の領域に位置している。このため、開閉リッド20の所定閉位置でリッド本体部21の端縁部分に指などが引っ掛けられてリッド本体部21を車体外側に引き出す作業が行われると、第一アーム41がリッドアーム部22の回転により第一軸Z1回りのω-方向へ回動して、第二アーム42が第二軸Z2回りのθ-方向へ回動しようとする。しかし、この際、第二アーム42の側面が閉側ストッパ80に当接するので、第二アーム42の回転が抑制される。従って、開閉リッド20の所定閉位置で所定押込み位置を経ることなくリッド本体部21が車両外方に移動するのを回避することができる。
【0071】
尚、上記の実施形態においては、ボックス開口13が特許請求の範囲に記載した「車体側開口」に相当している。
【0072】
ところで、上記の実施形態においては、押込みストッパ60が、開閉リッド20のリッド本体部21の裏面が当接し得る位置に配置され、その当接により開閉リッド20が所定押込み位置を超えて第一軸Z1回りのω+方向へ回動するのを規制する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、押込みストッパ60が、開閉リッド20のリッドアーム部22の側面に当接し得る位置に配置され、その当接により開閉リッド20が所定押込み位置を超えて第一軸Z1回りのω+方向へ回動するのを規制するものであってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態においては、開側ストッパ70が、駆動軸部材32に連結する第二アーム42の側面が当接し得る位置に配置され、その当接により開閉リッド20が全開位置を超えて第一軸Z1回りのω-方向へ回動するのを規制する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、開側ストッパ70が、開閉リッド20のリッド本体部21やリッドアーム部22が当接し得る位置に配置され、その当接により開閉リッド20が全開位置を超えて第一軸Z1回りのω-方向へ回動するのを規制するものであってもよい。
【0074】
また、上記の実施形態においては、閉側ストッパ80が、駆動軸部材32に連結する第二アーム42の側面が当接し得る位置に配置され、その当接により駆動軸部材32が基準位置Sを超えて第二軸Z2回りのθ-方向へ回転するのを規制する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、閉側ストッパ80が、駆動軸部材32や開閉リッド20のリッド本体部21或いはリッドアーム部22が当接し得る位置に配置され、その当接により駆動軸部材32が基準位置Sを超えて第二軸Z2回りのθ-方向へ回転するのを規制するものであってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態においては、閉側ストッパ80を、駆動軸部材32が基準位置Sを超えて第二軸Z2回りのθ-方向へ回転するのを規制するロック機構として用いている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動軸部材32が基準位置Sを超えて第二軸Z2回りのθ-方向へ回転するのを規制するうえで別付けのロック機構を用いることとしてもよい。また、この変形形態においては、開閉リッド20の所定閉位置で第五軸Z5の中心C5を直線Lに対してθ-方向側の領域に位置させることなくθ+方向側の領域に位置させるものとしてもよく、この場合は、開閉リッド20の押し込み操作時に開閉リッド20が第一軸Z1回りのω-方向に回動するようにリンク機構40やリッドアーム部22の連結位置を設定することが必要である。
【0076】
更に、上記の実施形態においては、開閉リッド20が開閉する車体側開口が、インレットボックス10のボックス開口13であるものとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、開閉リッド20が開閉する車体側開口が、車体2に設けられた車体開口2aである構成に適用することとしてもよい。
【0077】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:車両用リッド開閉装置、2:車体、2a:車体開口、3:供給部、10:インレットボックス、13:ボックス開口、14:収容空間、20:開閉リッド、21:リッド本体部、22:リッドアーム部、23:補助アーム部、31:第一軸体、32:駆動軸部材、40:リンク機構、41:第一アーム、42:第二アーム、43:第三アーム、50:駆動装置、51:電動アクチュエータ、52:検出部、53:制御部、60:押込みストッパ、70:開側ストッパ、80:閉側ストッパ、Z1:第一軸、Z2:第二軸、Z3:第三軸、Z4:第四軸、Z5:第五軸。