(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】防舷材用ゴム組成物とそれを用いた防舷材
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20240719BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240719BHJP
C08L 61/00 20060101ALI20240719BHJP
C08K 3/012 20180101ALI20240719BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02B3/26 Z
C08L21/00
C08L61/00
C08K3/012
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2020141177
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-053779(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101831089(CN,A)
【文献】特開2002-146751(JP,A)
【文献】特開2002-013121(JP,A)
【文献】特開2016-223199(JP,A)
【文献】特開2019-085526(JP,A)
【文献】特開2012-082323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
E02B 3/26
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性のゴム、
硫黄系架橋剤、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂を含む防舷材用ゴム組成物。
【請求項2】
架橋性のゴム、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂を含み、
前記フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂であ
る防舷材用ゴム組成物。
【請求項3】
架橋性のゴム、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂を含み、
前記ゴムは、少なくとも天然ゴムを含
む防舷材用ゴム組成物。
【請求項4】
架橋性のゴム、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂を含み、
前記フィラーは、前記ゴムの総量100質量部あたり60質量部以上、80質量部以下のカーボンブラックを含
む防舷材用ゴム組成物。
【請求項5】
架橋性のゴム、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂を含み、
ムーニー粘度ML(1+4)130℃が60以下であ
る防舷材用ゴム組成物。
【請求項6】
少なくとも一部が、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなり、前記架橋物は、タイプAデュロメータ硬さがA73以上、A85以下、引張強さTが16MPa以上、切断時伸びE
bが350%以上で、かつ圧縮永久ひずみCSが30%以下である防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば岸壁等に設置されて、船舶等の接舷のエネルギーを吸収する防舷材を形成するための防舷材用ゴム組成物と、少なくとも一部、たとえば支承脚部等が当該防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防舷材は、防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる上記支承脚部等を、船舶等の接舷によって弾性変形させて、当該接舷時のエネルギーを吸収させるために、上記架橋物のゴム硬さが小さく、柔軟であることが求められるのが一般的である(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-013120号公報
【文献】特開2016-222830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし一部の防舷材には、架橋物のゴム硬さが大きいことが求められる場合がある。
架橋物のゴム硬さを大きくすると、防舷材に、近年の船舶等の大型化に対応できる高い緩衝性能を付与することができる。
また防舷材を小型化して、設置場所でスペースを取らずに良好な緩衝性能を確保したり、使用材料を少なくして、生産コストを低減したりすることもできる。
【0005】
防舷材を形成する架橋物のゴム硬さを大きくするためには、ゴムに、当該ゴムを架橋させるための架橋成分やフィラー等を配合して調製される防舷材用ゴム組成物における上記フィラー、とくにカーボンブラックの割合を多くするのが一般的である。
しかし、カーボンブラック等のフィラーの割合を単純に多くした場合には、架橋前の防舷材用ゴム組成物の粘度が高くなって、加工性が低下する場合がある。
【0006】
そして、防舷材用ゴム組成物を調製するために各成分を混練したり、防舷材を製造するために防舷材用ゴム組成物を混練したり任意の立体形状に成形加工したりするのが容易でなくなる場合がある。
たとえば特許文献2では、フィラーとして、ゴム100質量部あたり60質量部以上のカーボンブラックを配合することで、防舷材用ゴム組成物の架橋物のゴム硬さを大きくすることが検討されている。
【0007】
そして架橋物のゴム硬さが、タイプAデュロメータ硬さで表してA77である実施例などが示されている。
しかし特許文献2では、防舷材用ゴム組成物の加工性については論じられておらず、とくに上記実施例などでは防舷材用ゴム組成物、そして防舷材を効率的に製造できないことが懸念される。
【0008】
また、防舷材用ゴム組成物においては、架橋物のゴム硬さに加えて、当該架橋物の伸びや引張強さ、さらには圧縮永久ひずみ等のゴムとしての物性(ゴム物性)を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与することが肝要である。
しかしゴム硬さを高めるべくフィラーの量のみを多くすると、とくに架橋物の伸びが小さくなって、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない、つまり求められている防舷材を実現できないことも懸念される。
【0009】
本発明の目的は、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても緩衝性能に優れた防舷材を形成できる上、加工性にも優れた防舷材用ゴム組成物と、少なくとも一部が当該防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、架橋性のゴム、
フィラー、および
前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂
を含む防舷材用ゴム組成物である。
また本発明は、少なくとも一部が、前記本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなり、前記架橋物は、タイプAデュロメータ硬さがA73以上、A85以下、引張強さTが16MPa以上、切断時伸びEbが350%以上で、かつ圧縮永久ひずみCSが30%以下である防舷材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても緩衝性能に優れた防舷材を形成できる上、加工性にも優れた防舷材用ゴム組成物と、少なくとも一部が当該防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《防舷材用ゴム組成物》
上記のように本発明の防舷材用ゴム組成物は、架橋性のゴム、
フィラー、および
ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下のフェノール樹脂
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、架橋性のゴム、およびフィラーに、さらに上記所定の割合でフェノール樹脂を含むことにより、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下するのを抑制することができる。
また、上記所定の割合でフェノール樹脂を含むことにより、フィラーの割合を多くしても架橋物のゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与することもできる。
【0014】
したがって本発明によれば、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても緩衝性能に優れた防舷材を形成できる上、加工性にも優れた防舷材用ゴム組成物を提供することができる。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
【0015】
〈フェノール樹脂〉
フェノール樹脂としては、たとえばフェノール、クレゾール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類とを酸触媒またはアルカリ触媒の存在下で反応させて得られる種々のフェノール樹脂を用いることができる。
【0016】
とくに、上述したフェノール樹脂を配合することによる効果をさらに向上することを考慮すると、フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
またノボラック型フェノール樹脂としては、無変性のものを用いることができる他、ゴムとの相溶性改善等を目的とした変性ノボラック型フェノール樹脂を用いることもできる。
【0017】
変性ノボラック型フェノール樹脂としては、たとえばカシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミン等で変性した変性ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
またノボラック型フェノール樹脂は、通常は熱可塑性樹脂であって、そのまま未硬化の状態で、防舷材用ゴム組成物に配合してもよい。
【0018】
また、たとえばヘキサメチレンテトラミンなどの硬化剤をあらかじめ添加した硬化前の状態で、防舷材用ゴム組成物に配合してもよい。
後者の、硬化剤を添加したノボラック型フェノール樹脂は、ゴムの架橋とともに硬化反応させることができる。
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、これに限定されないが、たとえば下記の各種ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
【0019】
住友ベークライト(株)製のスミライトレジン(登録商標)シリーズのうちPR-12686F〔固形ノボラックレジン、カシュー変性、融点:75℃〕、PR-NR-1〔固形ノボラックレジン、カシュー変性、軟化点:94℃〕、PR-13349〔固形ノボラックレジン、オイル変性、融点:73℃〕、PR-50731〔固形ノボラックレジン、ストレート(無変性)、融点:95℃、軟化点:122℃〕、Durez(登録商標)19900〔固形ノボラックレジン、非熱反応性アルキルフェノール、融点:72℃、軟化点:90℃〕、PR-217〔粉末ノボラックレジン、ストレート(無変性)、融点:95℃、ヘキサメチレンテトラミン含有〕、PR-7031A〔粉末ノボラックレジン、ストレート(無変性)、融点:95℃、ヘキサメチレンテトラミン含有〕、PR-12687〔粉末ノボラックレジン、カシュー変性、融点:78℃、ヘキサメチレンテトラミン含有〕、PR-13355〔粉末ノボラックレジン、オイル変性、融点:80℃、ヘキサメチレンテトラミン含有〕。
【0020】
これらノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂の、1種または2種以上を用いることができる。
フェノール樹脂の割合は、前述したように、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、12質量部以下である必要がある。
フェノール樹脂の割合がこの範囲未満では、当該フェノール樹脂を配合することによる前述した効果が得られない場合がある。
【0021】
すなわち、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くした際に、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下する場合がある。
また、とくに架橋物の伸びが小さくなって、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合もある。
一方、フェノール樹脂の割合が上記の範囲を超える場合には、架橋物の引張強さが低下したり、圧縮永久ひずみが大きくなったりして、却って、防舷材の緩衝性能が低下する場合がある。
【0022】
これに対し、フェノール樹脂の割合を上記の範囲とすることにより、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても、緩衝性能に優れた防舷材を形成できる上、加工性にも優れた防舷材用ゴム組成物を得ることができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、フェノール樹脂の割合は、上記の範囲でも2質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下であるのが好ましい。
【0023】
ちなみに特許文献1には、防舷材用ゴム組成物の補強剤として、カーボンブラック等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、ハイスチレン樹脂等の有機補強剤とともにフェノール樹脂が例示されている。
しかし、ここでいうフェノール樹脂とは、上記のようにカーボンブラック等と並列的に記載されていることからも判るように、当該カーボンブラック等と同等の、フィラーとしてのみ機能するフェノール樹脂の硬い硬化物の、たとえば粉末等であると推測される。
【0024】
かかるフェノール樹脂の粉末等は、ゴム中に配合しても形状を維持して分散するだけであって、本発明と同等の効果を得ることはできない。
しかも特許文献1には、上記粉末状等のフェノール樹脂を配合することで、フィラー(補強剤)としての効果以外に、本発明と同等の効果が得られることや、その割合を前述した特定の範囲とすることについては一切記載されていない。
よって、特許文献1のフェノール樹脂の記載は、本発明を教示したり示唆したりするものではない。
【0025】
〈ゴム〉
ゴムとしては、架橋性を有する種々のゴムを用いることができるが、とくに架橋物のゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与するために、あるいは入手のしやすさ等の観点から、天然ゴムが好適に用いられる。
【0026】
天然ゴムとしては、たとえばTSR-20、RSS#3等の各種グレードの天然ゴムが挙げられる他、脱蛋白天然ゴム等を用いることもできる。
これら天然ゴムの1種または2種以上を用いることができる。
ゴムとしては、天然ゴムを単独(2種以上の天然ゴムを併用する場合を含む。)で用いてもよいし、天然ゴムと他のゴムとを併用してもよい。
【0027】
他のゴムとしては、たとえばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水添アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムの1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
中でも、架橋物のゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与することを考慮すると、他のゴムとしてはSBRが好ましい。
SBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、このいずれのタイプのSBRを用いることもできる。
【0029】
非油展タイプのSBRとしては、これに限定されないが、たとえばJSR(株)製のJSR(登録商標)1500〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1502〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1503〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1507〔結合スチレン量:23.5%〕等が挙げられる。
また、油展タイプのSBRとしては、これに限定されないが、たとえばJSR(株)製のJSR1732〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕、JSR0122〔結合スチレン量:37%、油量:25.4%〕、JSR1778〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕、JSR1778N〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕等が挙げられる。
【0030】
これら非油展タイプおよび/または油展タイプのSBRの1種または2種以上を用いることができる。
天然ゴムとSBRとを併用する場合、ゴムの総量100質量部中に占めるSBRの割合は10質量部以上、とくに15質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、とくに35質量部以下であるのが好ましい。
【0031】
この範囲よりSBRが少ない場合には、当該SBRを併用することによる、防舷材に良好な緩衝性能を付与する効果が十分に得られない場合がある。
また耐摩耗性が小さくなって、防舷材を繰り返し船舶等の接舷に使用した際に損耗しやすくなるなど、防舷材の耐久性が不十分になる場合もある。
一方、上記の範囲よりSBRが多い場合には、引裂き強度が小さくなって、たとえば微小な傷などを生じた状態で防舷材を繰り返し船舶等の接舷に使用した際などにクラックを生じやすくなる場合がある。
これに対し、SBRの割合を上記の範囲とすることにより、当該SBRを併用することによる効果をさらに向上することができる。
なお油展タイプのSBRを用いる場合、SBRの割合は、油展タイプのSBR中に含まれる固形分(ゴム)としてのSBR自体の割合とする。
【0032】
〈フィラー〉
フィラーとしては、カーボンブラックを用いるのが好ましい。
【0033】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、たとえばファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の、ゴムのフィラー(充填剤、補強剤)として機能しうる種々のカーボンブラックが使用可能である。
カーボンブラックの具体例としては、これに限定されないが、たとえば下記の各種カーボンブラックが挙げられる。
【0034】
東海カーボン(株)製のシースト(登録商標)シリーズのうちシースト9H〔SAF-HS、窒素吸着比表面積:142m2/g〕、シースト9〔SAF、窒素吸着比表面積:142m2/g〕、シースト7HM〔N234、窒素吸着比表面積:126m2/g〕、シースト6〔ISAF、窒素吸着比表面積:119m2/g〕、シースト600〔ISAF-LS、窒素吸着比表面積:106m2/g〕、シースト5H〔IISAF、窒素吸着比表面積:99m2/g〕、シーストKH〔N399、窒素吸着比表面積:93m2/g〕、シースト3H〔HAF-HS、窒素吸着比表面積:82m2/g〕、シーストNH〔N351、窒素吸着比表面積:74m2/g〕、シースト3〔HAF、窒素吸着比表面積:79m2/g〕、シーストN〔LI-HAF、窒素吸着比表面積:74m2/g〕、シースト300〔HAF-LS、窒素吸着比表面積:84m2/g〕、シースト116HM〔MAF-HS、窒素吸着比表面積:56m2/g〕、シースト116〔MAF、窒素吸着比表面積:49m2/g〕、シーストSO〔FEF、窒素吸着比表面積:42m2/g〕、シーストV〔GPF、窒素吸着比表面積:27m2/g〕、シーストSVH〔SRF-HS、窒素吸着比表面積:32m2/g〕、シーストFY〔SRF-HS、窒素吸着比表面積:29m2/g〕、シーストS〔SRF、窒素吸着比表面積:27m2/g〕、シーストSP〔SRF-LS、窒素吸着比表面積:23m2/g〕、シーストTA〔FT級、窒素吸着比表面積:19m2/g〕。
【0035】
旭カーボン(株)製の旭#95〔窒素吸着比表面積:147m2/g〕、旭#80〔ISAF、窒素吸着比表面積:115m2/g〕、旭#70〔HAF、窒素吸着比表面積:77m2/g〕、旭#70L〔窒素吸着比表面積:84m2/g〕、旭AX-015〔窒素吸着比表面積:145m2/g〕、旭F-200GS〔窒素吸着比表面積:51m2/g〕、旭#65〔窒素吸着比表面積:42m2/g〕、旭#60HN〔窒素吸着比表面積:48m2/g〕、旭#60U〔窒素吸着比表面積:43m2/g〕、旭#55〔窒素吸着比表面積:26m2/g〕、旭#50HG〔窒素吸着比表面積:20m2/g〕、旭#52〔窒素吸着比表面積:28m2/g〕、旭#51〔窒素吸着比表面積:20m2/g〕、旭#50U〔窒素吸着比表面積:27m2/g〕、旭#50〔窒素吸着比表面積:23m2/g〕、旭#35〔窒素吸着比表面積:24m2/g〕、旭#22K〔窒素吸着比表面積:21m2/g〕、旭#15HS〔窒素吸着比表面積:14m2/g〕、旭#15〔窒素吸着比表面積:12m2/g〕、旭#8〔窒素吸着比表面積:12m2/g〕、アサヒサーマル〔窒素吸着比表面積:24m2/g〕。
【0036】
これらカーボンブラックの、1種または2種以上を用いることができる。
とくにカーボンブラックとしては、たとえばSAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF等のファーネスブラックを用いるが好ましい。
またカーボンブラックとしては、ゴムに対する補強性が比較的強い、窒素吸着比表面積が70m2/g以上であるカーボンブラックを用いるのが、架橋物のゴム硬さを大きくするためには好ましい。
【0037】
ただしその場合には、とくにカーボンブラックの割合を多くするほど、前述した所定の割合でフェノール樹脂を配合しているにも拘らず、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下しやすくなる傾向がある。
また、とくに架橋物の伸びが小さくなって、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合も生じる。
【0038】
カーボンブラックの割合を多くして架橋物のゴム硬さを大きくしながら、なおかつ防舷材用ゴム組成物の加工性の低下を抑制したり、防舷材に良好な緩衝性能を付与したりするためには、カーボンブラックとして、下記の2種を併用するのが好ましい。
(A) 窒素吸着比表面積が70m2/g以上であるカーボンブラック(以下「カーボンブラック(A)」と略記する場合がある。)
(B) 窒素吸着比表面積が70m2/g未満であるカーボンブラック(以下「カーボンブラック(B)」と略記する場合がある。)
カーボンブラック(B)はカーボンブラック(A)よりも、ゴムに対する補強性が比較的弱い。
【0039】
そのため両者を併用することで、全体としてのカーボンブラックの割合を多くして架橋物のゴム硬さを大きくしながら、なおかつ防舷材用ゴム組成物の加工性の低下を抑制したり、防舷材に良好な緩衝性能を付与したりすることができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、カーボンブラック(B)としては、窒素吸着比表面積が10m2/g以上、50m2/g以下であるものを用いるのが好ましい。
【0040】
上記2種のカーボンブラックを併用する場合(それぞれのカーボンブラックについて2種以上を併用する場合を含む。)、両者の割合は、ゴムに対する補強性の強さや、防舷材用ゴム組成物の加工性、あるいは防舷材に求められる緩衝性能に応じて任意に設定できる。
ただし両者の割合は、質量比(B)/(A)で表して0.6以上、とくに0.65以上であるのが好ましく、1未満、とくに0.7以下であるのが好ましい。
【0041】
ゴムの総量100質量部あたりの、フィラーとしてのカーボンブラックの割合は60質量部以上、80質量部以下であるのが好ましい。
上述した(A)(B)の2種などの、2種以上のカーボンブラックを併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
カーボンブラックの割合がこの範囲未満では、防舷材を形成する架橋物のゴム硬さを十分に大きくすることができず、船舶等の大型化に対応したり、防舷材を小型化した際に良好な緩衝性能を確保したりできない場合がある。
【0042】
一方、カーボンブラックの割合が上記の範囲を超える場合には、前述した所定の割合でフェノール樹脂を配合しているにも拘らず、架橋前の防舷材用ゴム組成物の粘度が高くなって、加工性が低下する場合がある。
また、とくに架橋物の伸びが小さくなって、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合もある。
【0043】
これに対し、カーボンブラックの割合を上述した範囲とすることで、さらにゴム硬さの大きい架橋物からなり、しかも緩衝性能にも優れた防舷材を形成できる上、より一層加工性にも優れた防舷材用ゴム組成物を得ることができる。
〈架橋成分〉
防舷材用ゴム組成物には、ゴムを架橋させるため、従来同様に架橋成分を配合する。
【0044】
架橋成分としては架橋剤、架橋促進剤等が挙げられる。
(架橋剤)
架橋剤としては、たとえば硫黄系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられ、とくに硫黄系架橋剤が好ましい。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、オイル入り粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
【0045】
硫黄の割合は任意に設定できるものの、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
硫黄の割合がこの範囲未満では、防舷材用ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって、防舷材の生産性が低下する場合がある。
また、硫黄の割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が防舷材の表面にブルームしたりする場合がある。
【0046】
なお硫黄として、たとえばオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を用いる場合、上記の割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
また、架橋剤として有機含硫黄化合物を使用する場合、その割合は、分子中に含まれる硫黄の、ゴムの総量100質量部あたりの割合が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
【0047】
(架橋促進剤)
架橋促進剤としては、たとえば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の各種の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤。
【0048】
2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤。
N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤。
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤。
【0049】
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系促進剤。
N,N′-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N′-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系促進剤。
架橋促進剤の割合は、その種類によって任意に設定できるが、通常は、ゴムの総量100質量部あたり、個別に、0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
〈その他〉
防舷材用ゴム組成物には、さらに必要に応じて、カーボンブラック以外の他のフィラー、老化防止剤、架橋助剤、可塑剤、ワックス、着色剤、粘着付与剤等を、任意の割合で配合してもよい。
【0051】
(他のフィラー)
カーボンブラック以外の他のフィラーとしては、たとえばシリカ等が挙げられる。
【0052】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、耐候性老化防止剤、耐熱老化防止剤等の、主な機能によって分類される種々の老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。
老化防止剤としては、たとえばN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体等が挙げられる。
【0053】
とくに、日光亀裂、オゾン亀裂、および屈曲亀裂などの防止効果に優れたN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが好ましい。
老化防止剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
(架橋助剤)
架橋助剤としては、たとえば酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
【0054】
(可塑剤)
可塑剤としては、たとえばオイルや液状ゴムが挙げられる。
このうちオイルとしては、これに限定されないが、たとえば出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW、NP、NS、NR、NM、AC、AH等の各種グレードのオイルの1種または2種以上が挙げられる。
【0055】
また液状ゴムとしては、たとえば液状イソプレンゴム、水添液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、あるいはこれらの末端変性物等の1種または2種以上が挙げられる。
可塑剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
(ワックス)
ワックスとしては、これに限定されないが、たとえば日本精蝋(株)製のオゾエース(登録商標)0355、大内新興化学工業(株)製のサンノック(登録商標)、サンノックN、サンノックP等が挙げられる。
これらのワックスは、老化防止剤との併用によって日光亀裂、オゾン亀裂を防止するために機能する。
【0057】
ワックスの割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
防舷材用ゴム組成物は、たとえば上記各成分のうち架橋成分以外の各成分を、まずニーダー、バンバリミキサ等を用いて混練したのち、さらに架橋成分を加えて混練する等して調製できる。
【0058】
調製された防舷材用ゴム組成物は、日本産業規格JIS K6300-1:2013「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」において規定されたムーニー粘度ML(1+4)130℃が60以下、とくに50以下であるのが好ましい。
ムーニー粘度が上記の範囲を超える場合には加工性が低下して、防舷材用ゴム組成物を調製するために各成分を混練したり、調製した防舷材用ゴム組成物を混練したり成形したりしにくくなる場合がある。
【0059】
とくに、防舷材用ゴム組成物の粘度が高くなり、成形時の発熱が大きくなってスコーチを生じやすくなるといった不具合を生じる場合がある。
これに対し、ムーニー粘度を上記の範囲とすることにより、防舷材用ゴム組成物を調製するために各成分を混練したり、調製した防舷材用ゴム組成物を混練したり成形したりしやすい状態を維持して、当該防舷材用ゴム組成物の加工性を向上することができる。
【0060】
なお、ムーニー粘度を上記の範囲で微調整するためには、たとえばフェノール樹脂、カーボンブラック、あるいはオイルなどの種類や量を調節すればよい。
調製された防舷材用ゴム組成物を用いて防舷材を製造する工程は、従来同様でよい。すなわち、製造する防舷材の大きさや形状に応じて成形、シート成形、組み立て、および架橋等の任意の工程を組み合わせて、防舷材を製造することができる。
【0061】
《防舷材》
本発明の防舷材は、少なくともその一部、たとえば岸壁等に固定されて、船舶等の接舷によって弾性変形する支承脚部等が、上記本発明の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなるものである。
本発明の防舷材の具体例としては、たとえば下記の各種防舷材が挙げられる。
・ 船舶等が接舷される平面状の受衝面を構成する頭部と、当該頭部から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部とを、防舷材用ゴム組成物の架橋物によって一体に形成したアーチ型〔いわゆる逆V字型、ラムダ(λ)型、ベータ(β)型を含む)の防舷材。
・ 円盤状の頭部と、当該頭部から径方向に拡開しながら垂下する裁頭円錐状の支承脚部とを、防舷材用ゴム組成物の架橋物によって一体に形成した、いわゆるカッパ(κ)型の防舷材。
・ 鋼材等からなる頭部と、防舷材用ゴム組成物の架橋物からなり、当該頭部から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部とを含む、いわゆるπ型の防舷材。
【0062】
これらの防舷材のいずれにおいても、支承脚部等を形成する、防舷材用ゴム組成物の架橋物が、下記の各ゴム物性を満足していることが好ましい。
・ 日本産業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」において規定されたタイプAデュロメータ硬さがA73以上、A85以下。
・ 日本産業規格JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」において規定された引張強さTが16MPa以上、とくに20MPa以上。
・ 上記JIS K6251:2017において規定された切断時伸びEbが350%以上、とくに400%以上。
・ 日本産業規格JIS K6262:2013「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」において規定された圧縮永久ひずみCSが30%以下、とくに20%以下。
【0063】
これにより、上記各ゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与することができる。
【実施例】
【0064】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(防舷材用ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)70質量部と、非油展タイプのSBR〔前出のJSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕30質量部とを併用した。
【0065】
両ゴムの総量100質量部を、フェノール樹脂〔ノボラック型フェノール樹脂、前出の住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR-12686F、固形ノボラックレジン、カシュー変性、融点:75℃、以下「フェノール樹脂(1)」と略記する場合がある。〕10質量部、および下記表1に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0066】
【0067】
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
カーボンブラック(A):HAF、前出の東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積:79m2/g
カーボンブラック(B):GPF、前出の東海カーボン(株)製のシーストV、窒素吸着比表面積:27m2/g
架橋助剤(I):酸化亜鉛2種、三井金属鉱業(株)製
架橋助剤(II):ステアリン酸、日油(株)製の商品名つばき
老化防止剤:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)6C
ワックス:前出の大内新興化学工業(株)製のサンノック
オイル:前出の出光興産(株)製のダイアナ プロセスオイルNR26
次いで、下記表2に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0068】
【0069】
表2中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
架橋剤:鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、スルフェンアミド系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS
【0070】
〈実施例2〉
ゴムの総量100質量部あたりの、フェノール樹脂(1)の量を2質量部、カーボンブラック(A)の量を45質量部としたこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0071】
〈実施例3〉
フェノール樹脂として、前出の住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR-12687〔粉末ノボラックレジン、カシュー変性、融点:78℃、ヘキサメチレンテトラミン含有、以下「フェノール樹脂(2)」と略記する場合がある。〕を同量配合するとともに、オイルの量を、ゴムの総量100質量部あたり7質量部としたこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0072】
〈実施例4〉
フェノール樹脂として、前出の住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR-13349〔固形ノボラックレジン、オイル変性、融点:73℃、以下「フェノール樹脂(3)」と略記する場合がある。〕を、ゴムの総量100質量部あたり6質量部配合するとともに、カーボンブラック(A)の量を、ゴムの総量100質量部あたり60質量部としてカーボンブラック(B)を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0073】
〈実施例5〉
フェノール樹脂として、前出の住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR-13355〔粉末ノボラックレジン、オイル変性、融点:80℃、ヘキサメチレンテトラミン含有、以下「フェノール樹脂(4)」と略記する場合がある。〕を、ゴムの総量100質量部あたり8質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0074】
〈比較例1〉
フェノール樹脂(1)を配合せず、またカーボンブラック(A)の量を、ゴムの総量100質量部あたり90質量部としてカーボンブラック(B)を配合せず、かつオイルの量を、ゴムの総量100質量部あたり10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0075】
〈比較例2〉
フェノール樹脂(1)の量を、ゴムの総量100質量部あたり20質量部とし、かつオイルの量を、ゴムの総量100質量部あたり7質量部としたこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0076】
〈比較例3〉
フェノール樹脂としてフェノール樹脂(4)を、ゴムの総量100質量部あたり30質量部配合し、カーボンブラック(B)を配合せず、かつオイルの量を、ゴムの総量100質量部あたり7質量部としたこと以外は実施例1と同様にして防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0077】
〈ムーニー粘度試験〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物のムーニー粘度ML(1+4)130℃を、日本産業規格JIS K6300-1:2013「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に規定された測定方法によって測定した。
【0078】
ムーニー粘度ML(1+4)130℃は、60を超えるものを「×」、50を超え、60以下を「○」、50以下を「◎」と評価した。
【0079】
〈サンプルの作製〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を140℃で60分間プレス成形し、架橋させて、厚み2mmのシート状のサンプルを作製した。
【0080】
〈ゴム硬さ試験〉
作製したシート状のサンプルを3枚重ねて、日本産業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に規定された試験片を作製し、標準試験温度下で、同規格に規定された測定方法に則って3秒後の数値を読み取ってタイプAデュロメータ硬さとした。
タイプAデュロメータ硬さは、A73以上、A85以下を「○」、それ以外を「×」と評価した。
【0081】
〈引張試験〉
作製したシート状のサンプルを打ち抜いて、日本産業規格JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されたダンベル状3号形試験片を作製し、標準試験温度下で、同規格に規定された引張試験をして引張強さT(MPa)、および切断時伸びEb(%)を求めた。
【0082】
引張強さTは、16MPa未満を「×」、16MPa以上、20MPa未満を「○」、20MPa以上を「◎」と評価した。
また切断時伸びEbは、350%未満を「×」、350%以上、400%未満を「○」、400%以上を「◎」と評価した。
【0083】
〈圧縮永久ひずみ試験〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を型加硫して、日本産業規格JIS K6262:2013「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」に規定された大型試験片を作製し、同規格に規定された圧縮永久ひずみ試験をして、70℃×24時間後の圧縮永久ひずみCS(%)を求めた。
圧縮永久ひずみCS(%)は、30%を超えるものを「×」、20%を超え、30%以下を「○」、20%以下を「◎」と評価した。
以上の結果を表3、表4に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
表3、表4の実施例1~5、比較例1~3の結果より、架橋性のゴム、およびフィラーに、さらにゴムの総量100質量部あたり1~12質量部のフェノール樹脂を含むことにより、架橋物のゴム硬さを大きくするべくフィラーの割合を多くしても、防舷材用ゴム組成物の加工性が低下するのを抑制できることが判った。
また、上記所定の割合でフェノール樹脂を含むことにより、フィラーの割合を多くしても架橋物のゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できることも判った。
【0087】
また実施例1~5の結果より、フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂であるのが好ましいこと、ゴムは、少なくとも天然ゴムを含むのが好ましいことが判った。
さらにフィラーは、ゴムの総量100質量部あたり60質量部以上、80質量部以下のカーボンブラックを含むのが好ましいこと、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積が70m2/g以上であるカーボンブラック(A)と、70m2/g未満であるカーボンブラック(B)とを併用するのが好ましいことが判った。