(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】粉粒体ホッパ、粉粒体ホッパの運転方法
(51)【国際特許分類】
B65G 65/42 20060101AFI20240719BHJP
B65G 11/00 20060101ALI20240719BHJP
B65G 65/40 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B65G65/42 C
B65G11/00 A
B65G11/00 B
B65G65/40 C
(21)【出願番号】P 2021003364
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】原田 卓
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-025982(JP,A)
【文献】実開昭55-156088(JP,U)
【文献】特開2006-298629(JP,A)
【文献】中国実用新案第207030070(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109733887(CN,A)
【文献】特開2015-045463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/42
B65G 11/00
B65G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベア上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物を前記ベルトコンベア上方に払い出すホッパ本体
の側面の開口を覆う可撓性プレートと、前記可撓性プレートの高さ方向に沿って取り付けた複数の歪みゲージと、前記歪みゲージを覆う保護カバーを備え、前記ホッパ本体の外部から取り付けて前記ホッパ本体の内部で堆積した前記搬送物によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を測定する層厚測定部と、
前記層厚測定部の測定値に基づいて前記搬送物の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする粉粒体ホッパ。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒体ホッパにおいて、
前記制御部は、前記層厚測定部の測定値に基づいて前記ホッパ本体の内壁面の高さ方向の複数個所の層厚、単位時間当たりの層厚変化から堆積時間の予測、層厚変動から前記ホッパ本体の排出又は投入のバランスのいずれか1つ以上を求めることを特徴とする粉粒体ホッパ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉粒体ホッパにおいて、
前記制御部は、前記ホッパ本体の投入量調整、前記ホッパ本体の下部に設けたゲートによる開口面積の拡大、前記ゲートによる急傾斜の形成、前記ホッパ本体への振動付与のいずれか1つ以上の制御により前記異常層厚を回避することを特徴とする粉粒体ホッパ。
【請求項4】
ベルトコンベア上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物を前記ベルトコンベア上方に払い出すホッパ本体
の側面の開口を覆う可撓性プレートと、前記可撓性プレートの高さ方向に沿って取り付けた複数の歪みゲージと、前記歪みゲージを覆う保護カバーを備え、前記ホッパ本体の外部から取り付けた層厚測定部で前記ホッパ本体の内部で堆積した前記搬送物によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を測定する工程と、
前記層厚測定部の測定値に基づいて前記搬送物の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う工程と、
を有することを特徴とする粉粒体ホッパの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア上に粉粒体を連続的に払い出す粉粒体ホッパ、粉粒体ホッパの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所において、燃料用の石炭や木質ペレットなどの粉粒体を搬送するときにベルトコンベアが利用されている。近年、植物から得られるバイオマス燃料が使用されるようになっている。この際、コンベア設備のコストを抑えることを目的として種類の異なる燃料を同じコンベア設備を用いて搬送している。木質ペレットを石炭の燃料と同じコンベア設備で搬送する場合、物性の違いによって搬送作業に支障が生じることがある。特に、各燃料の水分と粒径の違いから、ベルトやホッパへ付着し、ペレット燃料がホッパ内に流動しないで詰まってしまい、円滑な搬送作業が行えないことがある。
【0003】
また各コンベアの乗り継ぎ部のホッパにおいて、供給側と払い出し側のコンベア搬送量にバラつきがある場合、一時的にホッパ内に堆積することがある。このとき、搬送物自身の層厚重量が下層の粉粒体とホッパ内壁に作用、換言すると突っ張りを入れたように力がバランスして、粉粒体下面がブリッジのようになってしまい、コンベアベルトの搬送力が粉粒体に伝わらずに空回り(スリップ)してしまう。さらに粉粒体内部も圧縮され流動できない場合には、粉粒体と払い出し側のコンベアの間でスリップして排出できない。特に、円柱形状の木質ペレットは堆積層内の流動性が良くないため、この不都合が発生しやすい。
【0004】
従来、ホッパ(シュートともいう)内の堆積を防止する種々の対策が講じられている。特許文献1に開示のシュートは、シュート本体の荷重を検知するロードセルを備え、シュート本体内部で搬送物が堆積して本体が加重されたときに警告、停止している。
特許文献2に開示の詰まり検出装置は、シュート内部の詰まり検出用空間に石炭流入穴と回動本体を備え、石炭流入穴を介して回動本体に溜まった石炭が所定重量に達したときにスイッチが入り、詰まりを検出できる。
しかしながら、特許文献1、2に開示の技術はいずれもシュート内部の搬送物詰まりを検出することはできるものの、詰まりが発生した時点では既にこの詰まりを解消することはできない。従って目詰まり検出後は、コンベアを停止してメンテナンスしなければならず、非生産時間となり稼働効率が悪い。
【0005】
また木質ペレットのような搬送物は比重が小さく、内部係数が小さいためベルト面で加速せずに排出口を塞ぐことがある。特にコンベアの傾斜が大きく、かつベルト速度が速い場合は、ホッパ下のスカート内での滞留が生じやすく、コンベアベルト表面と搬送物がスリップして搬送不良の原因となる。ホッパ内から排出されず、ホッパ内の搬送物の堆積量が増加すると、層厚が高くなり摩擦、付着によって、ある層に達するとそれより上の圧力とつり合う支持力が発生して閉塞してしまい、ホッパ内からコンベアへの排出が不能となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-96939号公報
【文献】特開2000-53219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、ホッパ本体内で落下してベルトコンベア上に堆積する搬送物を適正層厚に維持して安定した払い出しができる粉粒体ホッパ、粉粒体ホッパの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、ベルトコンベア上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物を前記ベルトコンベア上方に払い出すホッパ本体の側面の開口を覆う可撓性プレートと、前記可撓性プレートの高さ方向に沿って取り付けた複数の歪みゲージと、前記歪みゲージを覆う保護カバーを備え、前記ホッパ本体の外部から取り付けて前記ホッパ本体の内部で堆積した前記搬送物によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を測定する層厚測定部と、
前記層厚測定部の測定値に基づいて前記搬送物の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする粉粒体ホッパを提供することにある。
上記第1の手段によれば、ホッパ本体内での搬送物の堆積途中で過度の堆積を原因とする運転不良(異常堆積)を回避できる運転制御が行える。
また簡易構成により、ホッパ本体の外部からの着脱が可能であり、点検、交換作業を容易に行える。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記制御部は、前記層厚測定部の測定値に基づいて前記ホッパ本体の内壁面の高さ方向の複数個所の層厚、単位時間当たりの層厚変化から堆積時間の予測、層厚変動から前記ホッパ本体の排出又は投入のバランスのいずれか1つ以上を求めることを特徴とする粉粒体ホッパを提供することにある。
上記第2の手段によれば、内壁面の高さ方向の複数個所の測定値(層厚)から堆積速度、堆積時間の予測、ホッパ本体の排出又は投入のバランスなどの異常堆積を回避する判断基準が得られる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記制御部は、前記ホッパ本体の投入量調整、前記ホッパ本体の下部に設けたゲートによる開口面積の拡大、前記ゲートによる急傾斜の形成、前記ホッパへの振動付与のいずれか1つ以上の制御により前記異常層厚を回避することを特徴とする粉粒体ホッパを提供することにある。
上記第3の手段によれば、異常堆積を回避して、稼働時間のロスを低減できる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、ベルトコンベア上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物を前記ベルトコンベア上方に払い出すホッパ本体の側面の開口を覆う可撓性プレートと、前記可撓性プレートの高さ方向に沿って取り付けた複数の歪みゲージと、前記歪みゲージを覆う保護カバーを備え、前記ホッパ本体の外部から取り付けた層厚測定部で前記ホッパ本体の内部で堆積した前記搬送物によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を測定する工程と、
前記層厚測定部の測定値に基づいて前記搬送物の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う工程と、
を有することを特徴とする粉粒体ホッパの運転方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、ホッパ本体内での搬送物の堆積途中で過度の堆積を原因とする運転不良(異常堆積)を回避できる運転制御が行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホッパ本体内での搬送物の堆積途中で過度の堆積を原因とする運転不良(異常堆積)を回避できる運転制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の粉粒体ホッパ、粉粒体ホッパの運転方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0016】
[粉粒体ホッパ10]
図1は、本発明の粉粒体ホッパの構成概略図である。図示のように本発明の粉粒体ホッパ10は、ベルトコンベア12上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物14を前記ベルトコンベア12上に払い出すホッパ本体16の内部で堆積した前記搬送物14によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を測定する層厚測定部20と、前記層厚測定部20の測定値に基づいて前記搬送物14の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う制御部30を備えている。
【0017】
ホッパ本体16は、上面に開口を有する箱状容器である。ベルトコンベア12は、搬送面をホッパ本体16の下部開口と対向するように所定間隔を開けて取り付けて、ホッパ本体16から落下する搬送物14を後工程の所定箇所へ搬送するものである。本発明の搬送物14は、一例として火力発電所の燃料用の石炭や木質ペレットなどの粉粒体を用いて以下説明する。
【0018】
ゲート18は、ホッパ本体16の搬送方向下流側の側面に取り付けて、搬送物14の払い出し量を調整するものである。ゲート18は主面をベルトコンベア12の搬送方向に沿って(向かって)形成している。
このゲート18はホッパ本体16の搬送方向下流側の側面に回転支持部18aを介して取り付けている。回転支持部18aはベルトコンベア12の搬送方向と直交する方向に軸心を配置して、ゲート18を扇状、換言するとコンベア上に接近又は離間する方向に回転自在となるように配置している。またゲート18はピストンが接続し、ロッドをホッパ本体16の周囲に取り付けた駆動シリンダ18bを有している。
このようなゲート18の構成によりゲート18による開口面積の拡大、ゲート18による急傾斜を形成して、ベルトコンベア12上の搬送物14とコンベア面の摩擦係数が小さい場合に、例えば、圧密性の小さい搬送物をゲート18で圧密して、層厚を形成した搬送物14の重量を大きくすることで搬送に十分なベルト搬送速度を確保できる。
【0019】
(層厚測定部20)
図2は層厚測定部の説明図である。ホッパ本体16は、搬送物14の層厚が形成されたときに、側圧を測定する層厚測定部20を設置している。
層厚測定部20は、ホッパ本体16の内壁面に設けた開口を覆う可撓性プレート22と、可撓性プレート22の高さ方向に沿って取り付けた複数の歪みゲージ24と、歪みゲージ24を覆う保護カバー26を備えている。
可撓性プレート22は、ホッパ本体16の側面に設けた開口を覆う可撓性、耐摩耗性を備えた金属板である。
歪みゲージ24は、可撓性プレート22の外面の高さ方向に沿って複数並べたセンサである。
保護カバー26は、歪みゲージを覆うカバーであり、防塵、防水機能を備えている。
このような構成の層厚測定部20は、ホッパ本体16に搬送物が堆積して行くと、下方の可撓性プレートから順に搬送物14の圧力によって撓んで行く。この撓みを歪みゲージ24で検出する。測定値は後述する制御部30へ送信可能に構成している。また、層厚測定部20は、可撓性プレート22と歪みゲージ24と保護カバー26を一体構造とするユニット化し、ホッパ本体16の側面開口に締結ボルト等を用いて着脱可能とし、点検、交換作業を容易な構成としている。
【0020】
(制御部30)
制御部30は、層厚測定部20と電気的に接続し、層厚測定部20の測定値に基づいて搬送物14の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行っている。
図3は層厚と時間の関係を示すグラフである。同図は縦軸が層厚、横軸が時間を示し、層厚測定部20の歪みゲージ24a~eとし、搬送物14を一定量、一定速で投入した場合の各ゲージの測定値をプロットしたものである。
歪みゲージ24a~eの測定値により、個々の層厚(負荷)、搬送物14の堆積によってホッパ本体16の下方から上方の歪みゲージで層厚が検出できる。
各歪みゲージ24a~eの層厚の測定時間、換言すると負荷発生時間から堆積速度が得られる。
各歪みゲージ24a~eの傾き(負荷勾配ΔH/Δt)から層厚と堆積速度を推定し単位時間当たりの層厚変化から堆積時間を予測できる。
歪みゲージ24a~eの測定値が一定となる負荷平衡値になった状態で、層厚変動からホッパ本体16の排出と投入のバランスが判断でき、また歪みゲージ24a-b間のH1、歪みゲージ24a-c間のH2、歪みゲージ24a-d間のH3、歪みゲージ24a-e間のH4の値から圧力を推定できる。
制御部30は、堆積途中の測定値から堆積速度、圧力を求め、異常層厚が発生する可能性がある場合、以下のような回避方法を実行する。
制御部30による具体的な異常層厚の回避方法は、ホッパ本体16の搬送物14を投入する投入コンベア11と電気的に接続しており、搬送物14の供給量を低減する制御を行える。また制御部30は、駆動シリンダ18bと電気的に接続しており、ホッパ本体16の下部開口の開口面積を(拡大するなど)調整する制御を行える。また制御部30は、駆動シリンダ18bの進退移動によってゲート18に急傾斜を形成して過度に堆積した搬送物14の排出を促進させる制御を行える。さらに制御部30は、ホッパ本体16への振動付与(槌打手段(不図示)によってホッパ本体を振動するなど)によって堆積した搬送物14の排出を促進させる制御を行える。
【0021】
[粉粒体ホッパの運転方法]
本発明の粉粒体ホッパの運転方法は、ベルトコンベア12上方に配置して内部で所定層厚を形成した搬送物14をベルトコンベア12上方に排出するホッパ本体16の内部で堆積した搬送物14によって内壁面の高さ方向の複数個所にかかる側圧を層厚測定部20で測定する。
層厚測定部20の測定値に基づいて、制御部30により搬送物14の堆積速度を算出して異常層厚を回避する制御を行う。
制御部30は、層厚測定部20の測定値から、各歪みゲージ24a~eの層厚(負荷)、堆積速度、堆積時間の予測、ホッパ本体16の排出と投入のバランスを求める。この層厚などの1つ以上の情報から、異常堆積が発生する可能性がある場合、投入コンベア11による搬送物14の投入量を調整(減少など)、駆動シリンダ18bによりゲート18の急傾斜の形成、ホッパ本体への振動付与のいずれか1つ以上の制御を行い異常な堆積を回避する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 粉粒体ホッパ
11 投入コンベア
12 ベルトコンベア
14 搬送物
16 ホッパ本体
18 ゲート
18a 回転支持部
18b 駆動シリンダ
20 層厚測定部
22 可撓性プレート
24 歪みゲージ
26 保護カバー
30 制御部