(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240719BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/26 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/27 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/275 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/365 20180101ALI20240719BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20240719BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240719BHJP
F21S 43/27 20180101ALI20240719BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20240719BHJP
F21S 43/40 20180101ALI20240719BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240719BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20240719BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20240719BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240719BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240719BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S41/148
F21S41/16
F21S41/26
F21S41/27
F21S41/275
F21S41/32
F21S41/365
F21S41/43
F21S43/14
F21S43/27
F21S43/31
F21S43/40
F21V5/00 320
F21V5/00 610
F21W102:135
F21W103:10
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021105935
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三菅 大
(72)【発明者】
【氏名】崎野 克郎
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-080521(JP,A)
【文献】特開2003-281906(JP,A)
【文献】特開2016-177994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21S 41/16
F21S 41/26
F21S 41/27
F21S 41/32
F21S 41/148
F21S 41/43
F21S 41/365
F21S 43/14
F21S 43/27
F21S 43/31
F21S 43/40
F21V 5/00
F21S 41/275
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 102/135
F21W 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から放射される放射光に含まれる第1光束が入射する主レンズと、前記主レンズに隣接して設けられた付加レンズと、前記放射光に含まれる第2光束を前記付加レンズに案内するべく設けられた第1及び第2リフレクタにして、前記第2光束が、前記第1リフレクタにより反射され、次に前記第2リフレクタにより反射される第1及び第2リフレクタを備える車両用灯具であって、
前記第2光束のための前記第1リフレクタの反射面は、前記第2光束のための前記第2リフレクタの反射面よりも狭く、
前記第1リフレクタの反射面と前記第2リフレクタの反射面の間には透光部が設けられ、前記透光部は、前記第2リフレクタの反射面に向けて前記第2光束を拡散して放射するように構成される、車両用灯具。
【請求項2】
前記透光部は、前記主レンズ及び前記付加レンズの少なくとも一方の脚部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記透光部は、前記付加レンズの脚部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記透光部は、拡散レンズ素子のレンズアレイが設けられた光入射面及び/又は光出射面を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記レンズアレイの面積は、前記第1リフレクタの反射面よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第1光束を前記主レンズに向かうように反射する主リフレクタを更に備え、
前記レンズアレイは、前記光源が設置された基準面に関して前記第1リフレクタと比較して上方又は下方にオフセットして設けられることを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第2リフレクタは、前記光源が設置された基準面に関して前記第1リフレクタと比べて上方又は下方にオフセットして設けられることを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第1光束を前記主レンズに向かうように反射する主リフレクタを更に備え、前記第2光束は、前記主リフレクタにより反射されることなく前記光源から前記第1リフレクタに伝播することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記主リフレクタと前記主レンズの間に設けられたシェードを更に備え、前記第2光束は、前記シェードにより阻止されずに前記光源から前記第1リフレクタに伝播することを特徴とする請求項8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記第1リフレクタは、前記第1光束の伝播を妨げない位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記第1光束を前記主レンズに向かうように反射する主リフレクタを更に備え、前記主リフレクタがハウジングパーツの内面に形成され、前記第1及び第2リフレクタは、各々、前記ハウジングパーツの開口の両側の第1及び第2壁部に設けられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、第1及び第2付加リフレクタを用いて付加レンズを発光させることが知られている。特許文献2に開示のように、光拡散素子が設けられた透光部材を隣接する灯具ユニット間に配置することが知られている(同文献の段落0045参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6199104号公報
【文献】特開2018-137144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用灯具の発光領域の拡張のために主レンズに加えて付加レンズを設け、主レンズ用の光源の放射光を第1及び第2リフレクタを介して付加レンズに案内する場合、第1リフレクタによって光源から主レンズに到達する光量が低下してしまうおそれがある。本願発明者は、光源から主レンズへの光束の伝播に対する影響を抑えつつ付加レンズをより十分な発光面積又は所望の輝度分布で発光させるという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、光源と、光源から放射される放射光に含まれる第1光束が入射する主レンズと、主レンズに隣接して設けられた付加レンズと、放射光に含まれる第2光束を付加レンズに案内するべく設けられた第1及び第2リフレクタにして、第2光束が、第1リフレクタにより反射され、次に第2リフレクタにより反射される第1及び第2リフレクタを含む。第2光束のための第1リフレクタの反射面は、第2光束のための第2リフレクタの反射面よりも狭い。更には、第1リフレクタの反射面と第2リフレクタの反射面の間には透光部が設けられる。透光部は、第2リフレクタの反射面に向けて第2光束を拡散して放射するように構成される。なお、第1光束と第2光束は、お互いに異なる方向に伝播する光束である。
【0006】
幾つかの実施形態においては、透光部は、主レンズ及び付加レンズの少なくとも一方の脚部に設けられる。幾つかの場合、透光部は、付加レンズの脚部に設けられる。
【0007】
幾つかの実施形態では、透光部は、拡散レンズ素子のレンズアレイが設けられた光入射面及び/又は光出射面を有する。
【0008】
幾つかの実施形態では、レンズアレイの面積は、第1リフレクタの反射面よりも大きい。
【0009】
幾つかの実施形態では、車両用灯具は、第1光束を主レンズに向かうように反射する主リフレクタを更に有する。レンズアレイは、光源が設置された基準面に関して第1リフレクタと比較して上方又は下方にオフセットして設けられ得る。第2リフレクタは、光源が設置された基準面に関して第1リフレクタと比べて上方又は下方にオフセットして設けられ得る。
第2光束は、主リフレクタにより反射されることなく光源から第1リフレクタに伝播し得る。
【0010】
幾つかの実施形態では、車両用灯具は、主リフレクタと主レンズの間に設けられたシェードを更に有する。第2光束は、シェードにより阻止されずに光源から第1リフレクタに伝播し得る。
【0011】
幾つかの実施形態では、第1リフレクタは、第1光束の伝播を妨げない位置に設けられる。
【0012】
幾つかの実施形態では、主リフレクタがハウジングパーツの内面に形成され、第1及び第2リフレクタは、各々、ハウジングパーツの開口の両側の第1及び第2壁部に設けられる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、光源から主レンズへの光束の伝播に対する影響を抑えつつ付加レンズをより十分な発光面積又は所望の輝度分布で発光させることが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一態様に係る灯具ユニットの概略的な分解斜視図である。
【
図2】灯具ユニットの前面図であり、主レンズと付加レンズが隣接して配置された状態を示す(ハウジングパーツ等の図示は省略)。
【
図3】本開示の一態様に係る灯具ユニットの概略的な上面模式図である。
【
図4】本開示の一態様に係る灯具ユニットの概略的な模式図であり、
図3の一点鎖線X3-X3に対応する。
【
図5】本開示の一態様に係る灯具ユニットの概略的な模式図であり、
図4と比較して付加レンズ(及び付加レンズの脚部に設けられた拡散レンズ素子のレンズアレイ)が追加的に示される。
【
図6】付加レンズの脚部の部分断面模式図であり、その光出射面に設けられた拡散レンズ素子のレンズアレイを示す。
【
図7】灯具ユニットの前面図であり、
図2とは異なる態様で主レンズと付加レンズが隣接して配置された状態を示す。
【
図8】光路設計のバリエーションを示す模式図である。
【
図9】光路設計のバリエーションを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された灯具ユニットにのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な灯具ユニットにも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0016】
本明細書においては、車両内方、車両外方、及び車幅方向は、車両用灯具が取り付けられる車両を基準として把握される。前後方向、左右方向、及び上下方向についても同様である。なお、車両内方は、車両外の任意の位置から車両内の任意の位置に向かう方向である。車両外方は、車両内の任意の位置から車両外の任意の位置に向かう方向である。車両内方及び外方は、上下方向に交差又は直交する任意の平面に含まれ得る。前後方向及び車幅方向それぞれにおいて車両内方及び外方も理解可能である。上下方向は、典型的には、鉛直方向に一致する。
【0017】
車両用灯具は、
図1に示す灯具ユニット1を有する。例えば、車両用灯具が車両(例えば、自動車)の前照灯であり、そこに灯具ユニット1が収容される。典型的には、灯具ユニット1が(車両前方に開口した)灯具ハウジングとアウターレンズにより画定される灯室内に配置される。
【0018】
灯具ユニット1は、ロービーム用配光パターン(又はその一部)及び/又はハイビーム用配光パターン(又はその一部)を形成するべく構成され、本願に図示の例では、ロービーム用配光パターンを形成するべく構成される。
【0019】
灯具ユニット1は、プロジェクタ型の灯具ユニットであり、光源2、主レンズ3、主レンズ3に隣接して設けられた付加レンズ4と、第1リフレクタ5、第2リフレクタ6、シェード7、主リフレクタ8が設けられたハウジングパーツ9、ヒートシンク11、枠部材12、及び透光部13を有する。
【0020】
光源2は、ロービーム用配光パターン及び/又はハイビーム用配光パターンを形成するための光源である。光源2は、不図示のドライバにより駆動(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)駆動)されて点灯するLED(Light Emitting Diode),LD(Laser Diode)といった1以上又は複数の半導体発光素子を含む。光源2は、典型的には、複数のLED(典型的には、LEDアレイ)と、これらのLEDが実装された基板を含む。
【0021】
LED,LDといった半導体発光素子の駆動により光源2から光束が放射される。後述の説明から分かるように、光源2から放射される放射光の第1光束が(主リフレクタ8により反射されて)主レンズ3に入射し、光源2から放射される放射光の第2光束が(例えば、主リフレクタ8により反射されることなく)第1リフレクタ5に入射する。第2光束は、第1リフレクタ5への直射光である。光源2は、第1リフレクタ5への光束の直射が生じる程度の発散角を有する。
【0022】
光源2は、ヒートシンク11に熱的に接続され、ヒートシンク11を介して放熱される。ヒートシンク11には電動ファンといった空冷機構が取り付けられ、その作動によりヒートシンク11から空気への放熱が促進される。
【0023】
蛍光体、レンズ、波長変換板、偏光板等が光源2に組み込まれ得る。例えば、LEDから放射される特定波長(又は特定波長帯)の光により励起されて広帯域幅の光(例えば、白色光)を放射する蛍光板が光源2に組み込まれる。
【0024】
主レンズ3は、像を反転して前方に投影する非球面レンズであり、ここでは、シェード7により造形された光像(即ち、カットオフラインを有するロービーム用配光パターン)を反転して前方に投影する。主レンズ3には、光源2からの放射光に含まれる第1光束が入射する。主リフレクタ8が設けられる場合、主レンズ3には、光源2から上方に放射され、主リフレクタ8により前方に反射された光束が主レンズ3に入射する。
【0025】
主レンズ3は、光入射面33と光出射面34を有するレンズ部31と、主レンズ3の取付のための複数の(例えば、上下一対の)フランジ部32a,32b(単にフランジ部32と示す場合もある)を有する。主レンズ3は、樹脂又はガラス製である。主レンズ3の光入射面33及び光出射面34の一方又は両方が非球面であり得る。なお、灯具ユニット1にハイビーム用配光パターン用の追加の光源が設けられる場合、又は、ハイビームとロービームを切り替えるためにシェード位置が切り替えられる場合、主レンズ3がハイビーム用配光パターンも投影する。
【0026】
付加レンズ4は、主レンズ3に車幅方向で隣接して設けられる(
図2参照)。付加レンズ4は、車両用灯具の点灯時の被視認性を高めるために主レンズ3の発光領域に対して付加的な発光領域を加える。付加レンズ4は、その目的を満足すれば十分であり、主レンズ3により形成されるロービーム用配光パターン又はハイビーム用配光パターンに対する付加的な配光パターンを形成する必要はない(勿論、そのようにしても良い)。主レンズ3用の光源2の放射光の一部(即ち、第2光束)を付加レンズ4の発光のために用いることで付加レンズ4のための追加の光源無しで車両用灯具の点灯時の被視認性が高められる(即ち、車両の周囲の観察者により視認され易くなる)。付加レンズ4に対して追加的な役割(例えば、クリアランスランプとしての役割)を担わせても良い。
【0027】
付加レンズ4は、レンズ主部41と、レンズ主部41から車両内方(例えば、後方)に延びる脚部42を有する(
図1,3参照)。レンズ主部41は、光源2の点灯時に発光部として機能する。レンズ主部41は、灯具正面視して三角形であるが(
図2参照)、この形状に限られず、他の多角形(例えば、四角形)であっても良い。レンズ主部41は、第2光束の光線を屈折させるように機能する。脚部42は、第1リフレクタ5の反射面と第2リフレクタ6の反射面の間に位置する。
【0028】
付加レンズ4のレンズ主部41は、主レンズ3よりも前方に配置され得る。この場合、主レンズ3側の付加レンズ4の側面に傾斜面49を設け、主レンズ3から車両前方に放射された第1光束が付加レンズ4により妨げられないようにすると良い。傾斜面49は、付加レンズ4のレンズ主部41の前面と脚部42の側面を接続するように主レンズ3の光軸AXに沿って(具体的には、鋭角をなすように)斜めに傾斜する。
【0029】
脚部42は、付加レンズ4のレンズ主部41と同一の透明材料から成り、典型的には、付加レンズ4のレンズ主部41と同一の射出成形金型を用いて一体的に射出成形される。脚部42は、車幅方向に交差(例えば、直交する)ように設けられた平板部であり、光入射面43と光出射面44を有する。脚部42の光入射面43及び光出射面44は、車幅方向に直交するように設けられるが、斜めに傾斜して設けることもできる。脚部42の光入射面43及び光出射面44の一方又は両方に拡散レンズ素子45のレンズアレイ46を設けることができる(
図5,6参照)。
【0030】
第1及び第2リフレクタ5,6は、光源2からの放射光に含まれる第2光束を付加レンズ4に案内するべく設けられる。第2光束は、第1リフレクタ5により反射され、次に第2リフレクタ6により反射される。第1リフレクタ5は、上述の主レンズ3に入射する第1光束の伝播を大きく又は完全に妨げない位置に設けられる。この場合、第1リフレクタ5に入射する第2光束が主レンズ3に関する不要光と見なされる。第1リフレクタ5及び第2リフレクタ6を用いてそのような第2光束を付加レンズ4に案内することにより、灯具ユニット1全体としての光利用効率が高められ、及び/又は、第2光束が迷光となってグレアといった望まない現象が発生してしまうことが抑制される。
【0031】
第1リフレクタ5は、主リフレクタ8を介することなく光源2から光束が直接的に入射する位置に設けられる。追加又は代替として、第1リフレクタ5は、シェード7により阻止されずに光源2から光束が直接的に入射する位置に設けられる。第2光束は、(主リフレクタ8により反射されることなく、及び/又は、シェード7により遮光されることなく)光源2から第1リフレクタ5に直接的に入射する。上述の点を満足するため又は別の目的のため、第1リフレクタ5は、光源2が設置された基準面PLよりも高い位置に設けられる(
図2,4,5参照)。他方、第2リフレクタ6は、光源2が設置された基準面PLに関して第1リフレクタ5と比べて下方にオフセットして設けられる(
図2参照)。このように高低差を付けて第1リフレクタ5と第2リフレクタ6を配置することにより第1リフレクタ5と第2リフレクタ6の離間距離を増加することができ、両者の反射面の相対的な配向の自由度が高められ、場合によっては、付加レンズ4の発光面積を拡大し易くなる。
【0032】
本実施形態においては、(第2光束のための)第1リフレクタ5の反射面は、(第2光束のための)第2リフレクタ6の反射面よりも狭い。更には、第1リフレクタ5の反射面と第2リフレクタ6の反射面の間には透光部13が設けられ、透光部13が第2リフレクタ6の反射面に向けて第2光束を拡散して放射するように構成される。かかる構成によれば、光源2から主レンズ3への光束の伝播に対する影響を抑えつつ付加レンズ4をより十分な発光面積又は所望の輝度分布で発光させることが促進される。
【0033】
具体的には、(少なくとも反射面に関して)第2リフレクタ6と比べて第1リフレクタ5を小型化することが促進される。第1リフレクタ5の反射面と第2リフレクタ6の反射面の間の透光部13による光拡散により第2リフレクタ6の反射面を大きくすることができ、同様に付加レンズ4の発光面積を大きくすることができる。第2リフレクタ6に入射する前に第2光束が透光部13により予め拡散されるため、付加レンズ4における所望の輝度分布(例えば、より一様な輝度分布)も得られやすい。また、第2光束の影響が低減し、車両外方から見てレンズ主部41がより均一に発光することも促進される。
【0034】
第1リフレクタ5の反射面は、そこでの光束の全反射のために平坦面、湾曲面、又は放物面であり得る。第1リフレクタ5の反射面と第2リフレクタ6の反射面の間での第2光束L2の適切な光路設計のために、それらの各反射面を適切に形状付けることができる。
【0035】
主レンズ3及び付加レンズ4とは別の独立した部材として透光部13を設けることもできるが、主レンズ3及び付加レンズ4の少なくとも一方の脚部に設けることもでき、これにより灯具ユニット1の組立効率が高められ、灯具ユニット1の低コスト化も促進できる。主レンズ3に脚部を設けると、別の灯具ユニットへのその流用が困難になるおそれがある。他方、付加レンズ4についてはそのような問題はない。
【0036】
図2に示す場合、透光部13は、付加レンズ4の脚部42に設けられ、付加レンズ4の脚部42に光拡散機能が付与される。第2リフレクタ6により反射される前での透光部13による第2光束の光拡散により付加レンズ4のレンズ主部41がより一様な輝度分布で発光することが促進される。
【0037】
付加レンズ4の脚部42は、主レンズ3の光軸AXから所定距離だけ離れた位置で光軸AXに沿って(例えば、平行に)延びる。脚部42は、主レンズ3の光入射面33と光出射面34を接続する側面35に近接して配置され、光源2から主リフレクタ8を介して主レンズ3に入射する第1光束の伝播を妨げない。なお、本段落で述べた点は、付加レンズ4の脚部42に透光部13が設けられない形態(例えば、透光部13が付加レンズ4とは別の独立した部材として設けられる形態)にも通用する。
【0038】
透光部13は、拡散レンズ素子45のレンズアレイ46が設けられた光入射面及び/又は光出射面を有し得る(
図5,6参照)。レンズアレイ46において拡散レンズ素子45は様々な態様で2次元状に配置される。図示例では、レンズアレイ46において拡散レンズ素子45をマトリクス状に配置される。拡散レンズ素子45を上下又に前後に長尺なロッド形状とし、これらを隣接配置することでレンズアレイを縞状としても良い。各拡散レンズ素子45は、凸型レンズであるが、凹型レンズであっても良い。拡散レンズ素子45は、レンズ面での光束の屈折に基づいて光束を拡散するものであり、適切な拡散角が得られるように構成される。拡散レンズ素子45は、他のレンズと同様、光束に対して実質的に透明であり、そこでの光損失は無視可能である。なお、透光部13に光拡散機能を付与するために拡散レンズ素子以外の拡散手段(各種成膜技術により形成した拡散層、シボ加工、フロスト加工等)を設けることもできる。
【0039】
レンズアレイ46の面積(即ち、拡散レンズ素子の合計の設置面積)は、第1リフレクタ5の反射面よりも大きく(
図5参照)、第1リフレクタ5から到来する第2光束を漏れなく拡散することが促進される。換言すれば、第1リフレクタ5の反射面を小さくすることができ、主レンズ3に入射するべき第1光束の伝播が第1リフレクタ5により妨げられることが回避又は抑制される。
【0040】
レンズアレイ46は、光源2が設置された基準面PLに関して第1リフレクタ5と比較して下方にオフセットして設けられる(
図5参照)。このように高低差を付けて第1リフレクタ5とレンズアレイ46を配置することにより両者の離間距離を増加することができる。離間距離の増加により両者の相対的な配光の自由度が高められ、場合によっては、付加レンズ4の発光面積を拡大し易くなる。
【0041】
第1リフレクタ5、第2リフレクタ6、及び主リフレクタ8は、蒸着等で形成された金属膜として設けることかでき、例えば、ハウジングパーツ9の所定面に蒸着等で形成された金属膜として設けられる。なお、第1リフレクタ5、第2リフレクタ6、及び主リフレクタ8の各反射面において光束が全反射される。第2リフレクタの反射面を拡散反射面としても構わない。
【0042】
ハウジングパーツ9は、ドーム部91と、ドーム部91の開口(図示例では、前口)92の左右に設けられた第1壁部93及び第2壁部94を有する。ドーム部91は、放物状の反射面をその内面として画定するように設けられ、前方及び下方で開口する。ドーム部91の開口92の上下には主レンズ3のフランジ部32a,32bが横付けされるフランジ部95a,95bが設けられる。
【0043】
ハウジングパーツ9のドーム部91の内面に主リフレクタ8が設けられ、又はそこに金属膜として形成される。ハウジングパーツ9の第1壁部93に第1リフレクタ5が設けられ、又はそこに金属膜として形成される。ハウジングパーツ9の第2壁部94に第2リフレクタ6が設けられ、又はそこに金属膜として形成される。主リフレクタ8は、ハウジングパーツ9に一体的に、即ち、分離不可能に設けられ得る。第2壁部94は、ハウジングパーツ9の一部ではなく別体として設けられ得る。付加レンズ4の発光面積を増加するために主レンズ3の光軸AXに対する第2壁部94のなす角が100°以上になるように第2壁部94を配向することもできる。
【0044】
シェード7は、主リフレクタ8と主レンズ3の間に設けられ、主リフレクタ8により反射された第1光束の一部の伝播を阻止する。主リフレクタ8により反射された第1光束の残部は、シェード7の上方の空間を介して主レンズ3に到達する。シェード7は、鋼板等の可視光の伝播を阻止可能な任意の材料から成る。実施形態によっては、シェード7が省略され、又は追加又は代替のシェードが設けられる。
【0045】
灯具ユニット1の組み立てについては
図1から理解されるとおりであり、詳細な説明は省略する。ハウジングパーツ9及びシェード7は、ネジ等によりヒートシンク11又はこれに実装された基板に対して固定されるが、必ずしもこの限りではない。
【0046】
灯具ユニット1の動作について述べる。光源2が点灯すると、光源2から放射光が放射される。この光源2の放射光に含まれる第1光束L1が上方に向かい、主リフレクタ8の反射面で全反射され、続いて、主レンズ3の光軸AXに沿って車両外方に向かって伝播して主レンズ3に到達する(
図4参照)。主リフレクタ8と主レンズ3の間にシェード7が設けられ、これにより第1光束L1の一部の主レンズ3に向かう伝播が阻止される。結果として、シェード7を越えて主レンズ3に到来する光像は、ロービーム用配光パターンのためのカットオフラインを有することになる。この光像は、主レンズ3により反転されて車両前方に投射される。
【0047】
光源2の放射光に含まれる第2光束L2は、第1リフレクタ5に向けて斜め右上方に伝播して第1リフレクタ5の反射面で全反射され、主レンズ3の光軸AXに交差して車幅方向(左側)に伝播し、脚部42(透光部13)に入射する(
図3,4参照)。第2光束L2は、脚部42(透光部13)の光出射面44の各拡散レンズ素子45より脚部42(透光部13)から拡散して放射されるように光学的に制御される。続いて、第2光束L2は、第2リフレクタ6の反射面に向けて拡散しながら伝播し、第2リフレクタ6の反射面により全反射される。続いて、第2光束L2は、主レンズ3の光軸AXに沿って車両外方に向かって伝播して付加レンズ4のレンズ主部41に到達する。付加レンズ4には拡散性の光束が入射し、この光束が付加レンズ4を透過して車両前方に投射される。付加レンズ4により主レンズ3の発光領域に対して付加的な発光領域が加えられ、車両用灯具の発光領域が拡張されて車両用灯具の点灯時の被視認性が高められる。なお、透光部13の拡散レンズ素子に加えて、付加レンズ4に付加的な拡散レンズ素子を設けることもできる。
【0048】
図7に示すように第1リフレクタ5と第2リフレクタ6の配置を車幅方向において反転しても構わない。この場合、第2光束は、光源2から第1リフレクタ5に向けて斜め左上に向けて伝播し、第1リフレクタ5で反射されて右側に伝播する。第1リフレクタ5の反射面と第2リフレクタ6の反射面の間には、上述と同様に付加レンズ4の脚部42(即ち、透光部13)が設けられている。
【0049】
図8の場合、第2リフレクタ6の反射面が湾曲面又は放物面に設定され、上述のものとは異なる光路が設定される。このような場合においても上述の開示と矛盾しない範囲で同様の効果が達成される。なお、透光部13の前側領域に入射した第2光束が、主レンズ3の光軸AXにより近い付加レンズ4の近接領域から前方に放射され、透光部13の後側領域に入射した第2光束が、主レンズ3の光軸AXからより離れた付加レンズ4の離間領域から前方に放射される。
【0050】
図9の場合、第1リフレクタ5の反射面が湾曲面又は放物面に設定され、上述のものとは異なる光路が設定される。このような場合においても上述の開示と矛盾しない範囲で同様の効果が達成される。なお、第2光束L2は、主レンズ3の後方の所定位置に向かって収束し、続いて発散するように伝播する。
【0051】
上述の様々な形態又は特徴に関して、様々な設計変更が可能であり、これらも本開示の範囲内である。
図7乃至
図9は、本開示のバリエーションとして理解されるが、当業者にとっては他の更なる設計変更も自明である。拡散レンズ素子を凹型レンズとし、透光部の光入射面に設けても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 :灯具ユニット
2 :光源
3 :主レンズ
4 :付加レンズ
5 :第1リフレクタ
6 :第2リフレクタ
7 :シェード
8 :主リフレクタ
9 :ハウジングパーツ
13 :透光部
42 :脚部
45 :拡散レンズ素子