(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】蓄電素子の製造方法、及び蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240719BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240719BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240719BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240719BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240719BHJP
H01M 6/02 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/0585
H01G11/78
H01G11/84
H01M50/477
H01M50/489
H01M6/02 Z
(21)【出願番号】P 2020082650
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本田 佳之
(72)【発明者】
【氏名】河合 章雄
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-011895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/497
H01M 4/00- 4/62
H01M 6/00- 6/22
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が積層された電極体の表面にシート状の絶縁部材を沿わせた状態で該電極体をケースに挿入すること、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面と対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面と対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面と対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前記第一部位の端部から延び、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、前記絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位を前記電極体の対応する面に沿わせると共に、前記第一延伸部位を、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に対向するように該電極体に巻き付け、且つ、該第一延伸部位によって該電極体を締め付けた状態で挿入され
、
該電極体の表面に前記絶縁部材を沿わせた状態のときに、
前記第一部位と前記第一延伸部位との境界が、前記第三方向において、前記電極体の前記一方の面と前記第二端面との境界位置と対応する位置にあり、
前記第一延伸部位における前記第一部位との隣接部位が該第一部位に対して前記電極体の前記他方の面側に屈曲することによって前記第二端面と対向すると共に、該第一延伸部位の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって前記電極体に沿っており、
前記電極体に沿って巻き付けられた前記第一延伸部位における前記第一方向の両隅部のうち、前記第一部位と該第一延伸部位とによって構成される隅部のみで前記絶縁部材が屈曲している、蓄電素子の製造方法。
【請求項2】
電極が積層された電極体の表面にシート状の絶縁部材を沿わせた状態で該電極体をケースに挿入すること、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面と対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面と対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面と対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前記第一部位の端部から延び、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、前記絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位を前記電極体の対応する面に沿わせると共に、前記第一延伸部位を、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に対向する
と共に、該第一延伸部位における該他方の面と対向する部位が前記第三部位の外側に位置するように該電極体に巻き付け、且つ、該第一延伸部位によって該電極体を締め付けた状態で挿入される、蓄電素子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記第一部位における前記第一延伸部位が延びている端部と反対側の端部から延びる第二延伸部位を有し、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、前記第二延伸部位を、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第三方向における前記電極体の前記第二端面と反対側の端面である第三端面と前記他方の面とに順に対向するように該電極体に巻き付け、且つ、該第二延伸部位によって該電極体を締め付けた状態で挿入される、請求項1又は2に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極体の前記ケースへの挿入では、該電極体の表面に前記絶縁部材を沿わせた状態のときに、
前記第一部位と前記第二延伸部位との境界が、前記第三方向において、前記電極体の前記一方の面と前記第三端面との境界位置と対応する位置にあり、
前記第二延伸部位における前記第一部位との隣接部位が該第一部位に対して前記電極体の前記他方の面側に屈曲することによって前記第三端面と対向すると共に、該第二延伸部位の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって前記電極体に沿っている、請求項3に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項5】
電極が積層された電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体の表面に沿った状態で該電極体と前記ケースとの間に配置されるシート状の絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面に対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面に対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面に対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前前記第一部位の端部から延び、
前記絶縁部材が前記電極体の表面に沿った状態では、該絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位が前記電極体の対応する面に沿うと共に、前記第一延伸部位が、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に沿うように該電極体に巻き付けられており、且つ、該第一延伸部位によって該電極が締め付けられた状態であ
り、
且つ、該絶縁部材が前記電極体の表面に沿った状態において、
前記第一部位と前記第一延伸部位との境界が、前記第三方向において、前記電極体の前記一方の面と前記第二端面との境界位置と対応する位置にあり、
前記第一延伸部位における前記第一部位との隣接部位が該第一部位に対して前記電極体の前記他方の面側に屈曲することによって前記第二端面と対向すると共に、該第一延伸部位の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって前記電極体に沿っており、
前記電極体に沿って巻き付けられた前記第一延伸部位における前記第一方向の両隅部のうち、前記第一部位と該第一延伸部位とによって構成される隅部のみで前記絶縁部材が屈曲している、蓄電素子。
【請求項6】
電極が積層された電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体の表面に沿った状態で該電極体と前記ケースとの間に配置されるシート状の絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面に対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面に対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面に対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前前記第一部位の端部から延び、
前記絶縁部材が前記電極体の表面に沿った状態では、該絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位が前記電極体の対応する面に沿うと共に、前記第一延伸部位が、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に沿う
と共に、該第一延伸部位における該他方の面と沿う部位が前記第三部位の外側に位置するように該電極体に巻き付けられており、且つ、該第一延伸部位によって該電極が締め付けられた状態である、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体とケースとの間に配置される絶縁部材を備える蓄電素子の製造方法、及び蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、角形非水電解質二次電池が知られている(特許文献1参照)。この角形非水電解質二次電池は、扁平状の巻回電極体を絶縁樹脂製シートによって被覆した後、角形の電池外装缶の内部に収容し、封口板によって電池外装缶を密閉したものである。
【0003】
具体的に、角形非水電解質二次電池において、絶縁樹脂製シートは、
図13に示すように、扁平状の巻回電極体110の正面及び背面に対応する大きさの正面部分101及び背面部分103と、扁平状の巻回電極体110の厚さに対応する大きさの底部分102及び二対の側幅部分104と、二対の折り返し部105と、底部分102から延在された一対の小舌片状の折り返し辺106と、を備えている。
【0004】
この絶縁樹脂製シート100を平面状に広げた状態では、
図14にも示すように、正面部分101と底部分102と背面部分103とが順に一方向(第一方向:
図14における左右方向)に並ぶように連続している。そして、正面部分101と背面部分103の第一方向と直交する第二方向(
図14における上下方向)の一方の端からは、側幅部分104と折り返し部105とが第二方向に順に延びると共に、第二方向の他方の端からも、側幅部分104と折り返し部105とが第二方向に順に延びている。また、底部分102の第二方向の両端からは、折り返し辺106が第二方向にそれぞれ延びている。
【0005】
上記の角形非水電解質二次電池が製造される際には、この絶縁樹脂製シート100が折り曲げられ、この折り曲げた絶縁樹脂製シート100によって形成される空間内に偏平状の巻回電極体110が挿入され、この絶縁樹脂製シート100によって被覆された状態の巻回電極体110が電池外装缶の内部に挿入される。このとき、絶縁樹脂製シート100では、各側幅部分104が隣り合う正面部分101又は背面部分103に対して屈曲する(即ち、折り目が付く)ように折り曲げられると共に、各折り返し部105が隣り合う側幅部分104に対して屈曲するように折り曲げられている。
【0006】
このように、巻回電極体110を被覆した状態の絶縁樹脂製シート100では、巻回電極体110の厚さ方向の両角部(詳しくは、正面部分101又は背面部分103と側幅部分104とによって構成される角部と、側幅部分104と折り返し部105とによって構成される角部)のそれぞれにおいて絶縁樹脂製シート100が屈曲している。このため、製造誤差等によって巻回電極体110の厚さが正面部分101又は背面部分103と折り返し部105との間隔より小さい場合には、正面部分101又は背面部分103と巻回電極体110との間に隙間が生じ易い。
【0007】
このように、巻回電極体110と絶縁樹脂製シート100の正面部分101又は背面部分103との間に隙間が生じると、角形非水電解質二次電池において、巻回電極体110を構成する極板同士(即ち、正極極板と負極極板)の間隔が変化し易く、この極板同士の間隔が変化すると電池性能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本実施形態は、電極体を構成する電極間の間隔が変化し難い蓄電素子の製造方法、及び前記間隔が変化し難い蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、
電極が積層された電極体の表面にシート状の絶縁部材を沿わせた状態で該電極体をケースに挿入すること、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面と対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面と対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面と対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前記第一部位の端部から延び、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、前記絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位を前記電極体の対応する面に沿わせると共に、前記第一延伸部位を、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に対向するように該電極体に巻き付け、且つ、該第一延伸部位によって該電極体を締め付けた状態で挿入される。
【0011】
このように、電極体が第一延伸部位によって締め付けられた状態でケースに挿入されることで、完成した蓄電素子において、電極体を構成する電極間の間隔が変化し難い。
【0012】
前記蓄電素子の製造方法では、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、該電極体の表面に前記絶縁部材を沿わせた状態のときに、
前記第一部位と前記第一延伸部位との境界が、前記第三方向において、前記電極体の前記一方の面と前記第二端面との境界位置と対応する位置にあり、
前記第一延伸部位における前記第一部位との隣接部位が該第一部位に対して前記電極体の前記他方の面側に屈曲することによって前記第二端面と対向すると共に、該第一延伸部位の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって前記電極体に沿っていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、電極体に巻き付けられた第一延伸部位における電極体の厚さ方向(第一方向)の両隅部において、一方の隅部(第一部位と第一延伸部位とによって構成される隅部)しか絶縁部材が屈曲していないため、第一延伸部位が電極体に巻き付けられたときに該電極体により沿い易く、これにより、電極体を十分に締め付けることができる。その結果、完成した蓄電素子の電極体において電極間の間隔がより変化し難くなる。
【0014】
また、前記蓄電素子の製造方法では、
前記絶縁部材は、前記第一部位における前記第一延伸部位が延びている端部と反対側の端部から延びる第二延伸部位を有し、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、前記第二延伸部位を、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第三方向における前記電極体の前記第二端面と反対側の端面である第三端面と前記他方の面とに順に対向するように該電極体に巻き付け、且つ、該第二延伸部位によって該電極体を締め付けた状態で挿入されてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、第一部位の第三方向の両端から延びる第一延伸部位及び第二延伸部位によって電極体が締め付けられるため、完成した蓄電素子の電極体において電極間の間隔がより変化し難くなる。
【0016】
また、前記蓄電素子の製造方法では、
前記電極体の前記ケースへの挿入では、該電極体の表面に前記絶縁部材を沿わせた状態のときに、
前記第一部位と前記第二延伸部位との境界が、前記第三方向において、前記電極体の前記一方の面と前記第三端面との境界位置と対応する位置にあり、
前記第二延伸部位における前記第一部位との隣接部位が該第一部位に対して前記電極体の前記他方の面側に屈曲することによって前記第三端面と対向すると共に、該第二延伸部位の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって前記電極体に沿っていてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、電極体に巻き付けられた第二延伸部位における電極体の厚さ方向(第一方向)の両隅部において、一方の隅部(第一部位と第二延伸部位とによって構成される隅部)しか絶縁部材が屈曲していないため、第二延伸部位が電極体に巻き付けられたときに該電極体により沿い易く、これにより、第二延伸部位によっても電極体を十分に締め付けることができる。その結果、完成した蓄電素子の電極体において電極間の間隔がさらに変化し難くなる。
【0018】
また、本実施形態に係る蓄電素子は、
電極が積層された電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体の表面に沿った状態で該電極体と前記ケースとの間に配置されるシート状の絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、前記電極体の厚さ方向である第一方向における該電極体の一方の面に対応する第一部位と、前記第一方向と直交する第二方向における前記電極体の端面である第一端面に対応する第二部位と、前記第一方向における前記電極体の他方の面に対応する第三部位と、前記第一部位から延びる第一延伸部位と、を有し、
該絶縁部材が平面状に広げられた状態において、前記第一部位と前記第二部位と前記第三部位とが順に連続して並ぶと共に、記第一部位と前記第二部位と前記第三部位との並び方向と直交する方向において前記第一延伸部位が前前記第一部位の端部から延び、
前記絶縁部材が前記電極体の表面に沿った状態では、該絶縁部材の前記第一部位、前記第二部位、及び前記第三部位が前記電極体の対応する面に沿うと共に、前記第一延伸部位が、前記第一部位と隣接する部位から先端側に向けて、前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向における前記電極体の端面である第二端面と前記他方の面とに順に沿うように該電極体に巻き付けられており、且つ、該第一延伸部位によって該電極が締め付けられた状態である。
【0019】
かかる構成によれば、電極体が第一延伸部位によって締め付けられているため、電極体を構成する電極間の間隔が変化し難い。
【発明の効果】
【0020】
以上より、本実施形態によれば、電極体を構成する電極間の間隔が変化し難い蓄電素子の製造方法、及び前記間隔が変化し難い蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、前記蓄電素子が備える電極体の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、蓋板に外部端子と集電体と電極体とが組付けられた状態の図である。
【
図6】
図6は、前記蓄電素子が備える絶縁部材の展開図である。
【
図7】
図7は、蓋板に組付けられた電極体が絶縁部材上に配置された状態の図である。
【
図8】
図8は、前記蓄電素子の製造方法における前記電極体の表面に絶縁部材の第一部位~第三部位を沿わせる工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、前記製造方法における第一延伸部位及び第二延伸部位を電極体に巻き付ける工程を説明するための図である。
【
図11】
図11は、前記製造方法における表面にシート状の絶縁部材を沿わせた状態の電極体をケースに挿入する工程を説明するための図である。
【
図12】
図12は、前記蓄電素子を備える蓄電装置を示す模式図である。
【
図13】
図13は、従来の角形非水電解質二次電池の巻回電極体と絶縁樹脂製シートとを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る蓄電素子及び該蓄電素子の製造方法の一実施形態について、
図1~
図11を参照しつつ説明する。以下では、先ず、蓄電素子について説明し、その後、蓄電素子の製造方法について説明する。
【0023】
蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0024】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0025】
蓄電素子は、
図1~
図3に示すように、電極22が積層され且つ扁平な電極体2と、電極体2を収容するケース3と、電極体2の表面に沿った状態で該電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部を露出させた状態でケース3に取り付けられる、又はケース3の少なくとも一部によって構成される外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5と、集電体5と共に電極体2を挟み込む板状部材7等も、備える。本実施形態の外部端子4は、ケース3に取り付けられている。
【0026】
電極体2は、電極22が扁平に巻回されている、いわゆる巻回型の電極体である。具体的に、電極体2は、巻芯20と、巻芯20の周囲に巻回された電極22とセパレータ25とによって構成される積層体21と、を有する。本実施形態の電極22は、正極23と負極24とを含む。尚、以下では、電極体2の厚さ方向(第一方向)を直交座標系のX軸方向とし、電極体2の巻回軸Cの延びる方向(第三方向)を直交座標系のY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とのそれぞれと直交する方向(第二方向)を直交座標系のZ軸方向とする。
【0027】
積層体21では、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層されている。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0028】
正極23は、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0029】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0030】
本実施形態の電極体2では、正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回されている。即ち、本実施形態の積層体21では、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層されている。
【0031】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体21)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0032】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、多孔質膜によって形成された基材と、該基材の上に設けられた無機層と、を有する。この無機層は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含む。また、基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0033】
セパレータ25の幅方向の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部と、負極24の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。このような積層状態(相対位置)となるように、正極23、負極24、及びセパレータ25が巻芯20の周囲に巻回されることによって、電極体2が形成される。また、本実施形態の電極体2では、正極23の非被覆部又は負極24の非被覆部のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0034】
非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0035】
ケース3は、電極体2と共に電解液を収容する。具体的に、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって形成される。
【0036】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
【0037】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0038】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0039】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0040】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0041】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。本実施形態の蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。
【0042】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。この外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0043】
具体的に、外部端子4は、バスバ等が溶接可能な面41Aを有する端子本体41と、ケース3を貫通する貫通部と、を備える。
【0044】
端子本体41は、蓋板32に沿って拡がる板状の部位である。本実施形態の端子本体41は、Z軸方向視において矩形状である。
【0045】
貫通部は、ケース3の内部に配置される集電体5と、ケース3の外部に配置される端子本体41とを通電させる。本実施形態の貫通部は、導電性を有する金属によって構成され、端子本体41と一体に形成されている。この貫通部は、端子本体41から蓋板32を貫通してケース3内に延びている。詳しくは、貫通部は、端子本体41からケース3内に延び、端子本体41と共同して、蓋板32や集電体5等をZ軸方向に挟み込む。これにより、外部端子4及び集電体5が蓋板32に固定されると共に、外部端子4と集電体5とが導通する。
【0046】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、
図4及び
図5にも示すように、矩形状の板状部材7と共に電極体2の非被覆積層部26を挟み込んだ状態で電極体2(詳しくは、非被覆積層部26)に接続されている。
【0047】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。これにより、集電体5は、外部端子4の貫通部と電極体2の非被覆積層部26とを導通可能に接続する。この集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。
【0048】
具体的に、集電体5は、外部端子4の貫通部と通電可能に接続される第一接続部51と、第一接続部51から延び且つ電極体2と通電可能に接続される第二接続部52と、を有する。この集電体5では、第一接続部51が外部端子4の貫通部から蓋板32に沿って短壁部314へ向けて延びると共に、第二接続部52が第一接続部51の短壁部314側の端部から長壁部313に沿って閉塞部311に向けて延びている。
【0049】
第一接続部51は、矩形板状の部位である。また、第二接続部52は、帯板状の部位であり、長壁部313に沿ってZ軸方向に延びる基部521と、基部521から該基部521に対して傾斜方向に延びる傾斜部522と、傾斜部522からZ軸方向に延びる接合部523と、を有する。
【0050】
このように構成される集電体5は、所定形状に裁断された板状の金属材料が曲げ加工されることによって形成されている。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5の接合部523と板状部材7とが電極体2の非被覆積層部26を挟み込んだ状態で超音波接合されている。即ち、集電体5の接合部523と電極体2の非被覆積層部26と板状部材7とが重ね合わされた状態で互いに超音波接合されている。
【0051】
絶縁部材6は、絶縁性を有する部材によって形成される。絶縁部材6は、
図6に示すように、シート状の部材によって構成される。本実施形態の絶縁部材6は、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂によって形成される。この絶縁部材6の厚さ寸法は、0.13mm~0.19mmである。本実施形態の絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成される(
図2参照)。
【0052】
具体的に、絶縁部材6は、
図2~
図5にも示すように、X軸方向における電極体2の一方の面2Aに対応する第一部位61と、Z軸方向における電極体2の端面である第一端面2Bに対応する第二部位62と、X軸方向における電極体2の他方の面2Cに対応する第三部位63と、第一部位61から延びる第一延伸部位64及び第二延伸部位65と、を有する。また、本実施形態の絶縁部材6は、第三部位63から延びる一対の折り返し部66と、第二部位62から延びる一対の片部67と、を有する。
【0053】
この絶縁部材6は、平面状に広げられた状態(展開状態:
図6参照)において、第一部位61と第二部位62と第三部位63とが順に連続して一方向(以下、「並び方向」とも称する。:
図6における上下方向)に並ぶ。そして、第一延伸部位64は、並び方向と直交する方向(以下、「直交方向」とも称する。:
図6における左右方向)における第一部位61の一方の端部から延び、第二延伸部位65は、直交方向における第一部位61の他方の端部から延びている。また、一対の折り返し部66は、直交方向における第三部位63の両端部から延びている。また、一対の片部67は、直交方向における第二部位62の両端部から延びている。
【0054】
第一部位61及び第三部位63のそれぞれは、各部位61、63の法線方向から見て矩形状であり、電極体2の一方の面2A又は他方の面2Cと対応する大きさである。本実施形態の第一部位61及び第三部位63は、同じ形状及び大きさである。具体的に、第一部位61及び第三部位63は、直交方向に長尺な矩形状である。
【0055】
第二部位62は、第一部位61と第三部位63とを接続する部位であり、該部位63の法線方向から見て帯状の部位である。この第二部位62は、電極体2の第一端面2Bと対応する大きさである。本実施形態の第二部位62における直交方向の長さ寸法は、第一部位61及び第三部位63の直交方向の長さ寸法と同じである。また、第二部位62の並び方向の長さ寸法は、電極体2のX軸方向の寸法(厚さ寸法)と同じ又は僅かに小さい。具体的に、第二部位62は、直交方向に長尺な帯状である。また、第二部位62の四隅は、円弧状に切り欠かれている。即ち、第二部位62は、四隅に切欠き部621を有する。尚、電極体2の第一端面2Bは、電極体2の湾曲部位の表面であり、電極体2の第一端面2Bと対応する大きさとは、Z軸方向に第一端面2Bを投影したものと同じ又は略同じ大きさである。
【0056】
第一延伸部位64及び第二延伸部位65は、第一部位61の直交方向の両端部から互いに反対方向に延び、直交方向における電極体2の一方の端面である第二端面2D又は他方の端面である第三端面2Eと他方の面2Cとに順に対向するように該電極体2に巻き付けられる部位である。尚、本実施形態における電極体2の第二端面2D及び第三端面2Eは、巻回軸C方向における電極体2の端面であり、集電体5と板状部材7とによって挟まれた(束ねられた)多数の電極22(非被覆部)の端縁によって規定される面(仮想面)である。
【0057】
これら第一延伸部位64及び第二延伸部位65の直交方向における長さ寸法は、電極体2に巻き付けられた状態で、先端縁(第二辺部)642、652が電極体2の他方の面2Cにおいて集電体5(第一接続部51)より直交方向における電極体2の中心側に位置するように設定されている(
図9参照)。
【0058】
本実施形態の第一延伸部位64及び第二延伸部位65は、該部位64、65の法線方向から見て略台形状の部位である。具体的に、第一延伸部位64及び第二延伸部位65の外縁640、650は、第一部位61における第二部位62側の端部から直交方向に延びる第一辺部641、651と、該第一延伸部位64又は該第二延伸部位65の先端縁を構成し且つ並び方向に延びる第二辺部642、652と、第一辺部641、651と第二辺部642、652との間において、該第一辺部641、651及び該第二辺部642、652の両辺部に対して傾斜する方向に延びる第三辺部643、653と、を含む。また、第一延伸部位64及び第二延伸部位65の外縁640、650は、第一部位61における第二部位62と反対側の端部から直交方向に延びる第四辺部644、654を含む。本実施形態の第一延伸部位64及び第二延伸部位65では、第二辺部642、652と第四辺部644、654との境界部、及び、第一辺部641、651と第三辺部643、653との境界部は、それぞれ外側に凸となる円弧状である。
【0059】
一対の折り返し部66のそれぞれは、第三部位63の直交方向の両端部から互いに反対方向に延び、該部位66の法線方向から見て帯状である。本実施形態の各折り返し部66では、並び方向における長さ寸法が第三部位63の長さ寸法と同じであり、直交方向の長さ寸法が電極体2のX軸方向の寸法(厚さ寸法)より小さい。また、各折り返し部66における第三部位63と反対側の各隅部は、外側に凸となる円弧状である。
【0060】
一対の片部67のそれぞれは、第二部位62の直交方向の両端部から互いに反対方向に延び、各片部67の先端は、円弧状である。
【0061】
展開状態が以上のように構成される絶縁部材6では、電極体2の表面を覆うように各部位61~67が折り曲げられ又は巻き付けられ状態で第一延伸部位64及び第二延伸部位65の先端部と第三部位63とが溶着されることによって、袋状(袋形状)が維持される。
【0062】
この袋状の状態、即ち、電極体2の表面を覆った状態では、絶縁部材6は、第一部位61と第二部位62との境界位置と、第一部位61と第一延伸部位64との境界位置と、第一部位61と第二延伸部位65との境界位置と、第二部位62と第三部位63との境界位置と、第二部位62と各折り返し部66との境界位置と、第二部位62と各片部67との境界位置と、に折り目がつくように屈曲している。
【0063】
次に、上述のように構成される蓄電素子1の製造方法について説明する。
【0064】
先ず、電極体2、集電体5、板状部材7、外部端子4が蓋板32に組付けられる。
【0065】
次に、
図7及び
図8に示すように、絶縁部材6の第一部位61、第二部位62、及び第三部位63が電極体2の対応する面(一方の面2A、第一端面2B、他方の面2C)に沿わせられる。
【0066】
続いて、
図9及び
図10にも示すように、第一延伸部位64が、第一部位61と隣接する部位(基部)から先端側に向けて、電極体2の第二端面2Dと他方の面2Cとに順に対向するように該電極体2に巻き付けられると共に、第二延伸部位65が、第一部位61と隣接する部位(基部)から先端側に向けて、電極体2の第三端面2Eと他方の面2Cとに順に対向するように該電極体2に巻き付けられる。このとき、第一延伸部位64と第二延伸部位65とは、第三部位63の外側に重なるように電極体2に巻き付けられている。
【0067】
この状態で、第一延伸部位64と第二延伸部位65とが互いの先端が接近する方向に引っ張られることで、第一延伸部位64と第一部位61と第二延伸部位65とによって電極体2が締め付けられる。本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、電極体2の外部端子4側(即ち、組付けられた蓋板32側)の端部が第一延伸部位64と第一部位61と第二延伸部位65とにおける外部端子4側の端部によって締め付けられるように、第一延伸部位64と第二延伸部位65とが互いに接近する方向に引っ張られる。
【0068】
続いて、上記のように第一延伸部位64と第二延伸部位65とが引っ張られた状態で、集電体5の第二接続部52の基部521と重なる位置において第一延伸部位64と第三部位63とが溶着されると共に、第二延伸部位65と第三部位63とが溶着される(
図9において符号αで示す溶着部位参照)。
【0069】
この状態では、第一延伸部位64における第一部位61との隣接部位(即ち、第一部位61との境界部)64aが該第一部位61に対して電極体2の他方の面2C側に屈曲することによって第二端面2Dと対向すると共に、該第一延伸部位64の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって電極体2に沿っている(
図6及び
図10参照)。また、第二延伸部位65における第一部位61との隣接部位(即ち、第一部位61との境界部)65aが該第一部位61に対して電極体2の他方の面2C側に屈曲することによって第三端面2Eと対向すると共に、該第二延伸部位65の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって電極体2に沿っている(
図6及び
図10参照)。
【0070】
続いて、
図11に示すように、絶縁部材6が電極体2の表面に沿った状態で、該電極体2がケース本体31に挿入される。このとき、電極体2は、上述のように外部端子4側の端部を第一延伸部位64と第一部位61と第二延伸部位65とによって締め付けられた状態でケース本体31に挿入される。
【0071】
また、電極体2がケース本体31に挿入される際に、第一延伸部位64と第二延伸部位65とのケース本体31への挿入方向側の隅部が、電極体2のケース本体31への挿入方向に対して傾斜する第三辺部643、653によって構成されているため、第一延伸部位64及び第二延伸部位65のケース本体31の開口周縁部34への引っ掛かりが抑えられ、これにより、前記引っ掛かりに起因する絶縁部材6の損傷が防がれる。
【0072】
電極体のケース本体への挿入が続けられ、蓋板32がケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられると、この開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。本実施形態の蓋板32とケース本体31との溶接は、レーザー溶接によって行われる。
【0073】
このケース本体31と蓋板32とが溶接された後、ケース3内に電解液が注入されることで、蓄電素子1が完成する。
【0074】
以上の蓄電素子1の製造方法によれば、電極体2が第一延伸部位64及び第二延伸部位65によって締め付けられた状態でケース3(詳しくは、ケース本体31)に挿入されるため、完成した蓄電素子1において、電極体2を構成する電極22間の間隔が変化し難い。これにより、上記製造方法によって製造された蓄電素子1において、電極体2の電極22間の変化に起因する電池性能の低下(劣化)が抑えられる。
【0075】
また、本実施形態の蓄電素子の製造方法では、電極体2のケース3への挿入の際に、
図10に示すように、第一延伸部位64における第一部位61との隣接部位64aが該第一部位61に対して電極体2の他方の面2C側に屈曲することによって第二端面2Dと対向すると共に、該第一延伸部位64の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって電極体2に沿っている。また、第二延伸部位65における第一部位61との隣接部位65aが該第一部位61に対して電極体2の他方の面2C側に屈曲することによって第三端面2Eと対向すると共に、該第二延伸部位65の残りの部位の少なくとも一部が湾曲することによって電極体2に沿っている。
【0076】
このように、電極体2に巻き付けられた第一延伸部位64における電極体2の厚さ方向(X軸方向)の両隅部において、一方の隅部(第一部位61と第一延伸部位64とによって構成される隅部)しか絶縁部材6が屈曲していない。このため、第一延伸部位64が電極体2に巻き付けられたときに該電極体2により沿い易く、これにより、電極体2が第一延伸部位64によって十分に締め付けられる。また、電極体2に巻き付けられた第二延伸部位65における電極体2の厚さ方向(X軸方向)の両隅部において、一方の隅部(第一部位61と第二延伸部位65とによって構成される隅部)しか絶縁部材6が屈曲していない。このため、第二延伸部位65が電極体2に巻き付けられたときに該電極体2により沿い易く、これにより、電極体2が第二延伸部位65によっても十分に締め付けられる。その結果、完成した蓄電素子1の電極体2において電極22間の間隔がより変化し難くなる。
【0077】
尚、本発明の蓄電素子及び蓄電素子の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0078】
上記実施形態の絶縁部材6は、二つの延伸部位(第一延伸部位64及び第二延伸部位65)を有しているが、この構成に限定されない。絶縁部材6は、一つの延伸部位(第一延伸部位64又は第二延伸部位65)を有する構成でもよい。
【0079】
上記実施形態の絶縁部材6では、第一延伸部位64及び第二延伸部位65における第一部位61から延びる方向(展開状態における直交方向)の寸法は、電極体2を締め付けるために該電極体2に巻き付けられたときに、他方の面2Cに先端(第二辺部)が位置する寸法であるが、この構成に限定されない。第一延伸部位64及び第二延伸部位65の前記寸法は、電極体2の全周に亘って第一延伸部位64又は第二延伸部位65が巻き付けられる寸法でもよい。
【0080】
絶縁部材6の第一延伸部位64及び第二延伸部位65の具体的な形状(輪郭形状)は限定されない。上記実施形態の第一延伸部位64及び第二延伸部位65の各外縁640、650は、第一辺部641、651と第二辺部との間に、該第一辺部641、651及び該第二辺部642、652の両辺部641、651、642、652に対して傾斜する方向に延びる第三辺部643、653を含んでいるが、例えば、第三辺部643、653がなく、第一辺部641、651と第二辺部642、652とが接続されている構成でもよい。
【0081】
また、上記実施形態の蓄電素子1の電極体2は、長尺帯状の電極22が巻回されている、いわゆる巻回型の電極体であるが、この構成に限定されない。電極体2は、枚葉状の複数の電極22が積層された、いわゆるスタック型の電極体でもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0083】
蓄電素子(例えば電池)1は、
図12に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0084】
1…蓄電素子、2…電極体、2A…一方の面、2B…第一端面、2C…他方の面、2D…第二端面、2E…第三端面、20…巻芯、21…積層体、22…電極、23…正極、231…金属箔、232…正極活物質層、24…負極、241…金属箔、242…負極活物質層、25…セパレータ、26…非被覆積層部、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、41…端子本体、41A…面、5…集電体、51…第一接続部、52…第二接続部、521…基部、522…傾斜部、523…接合部、6…絶縁部材、61…第一部位、62…第二部位、621…切欠き部、63…第三部位、64…第一延伸部位、64…第一延伸部位、64a…隣接部位、640…外縁、641…第一辺部、642…第二辺部、643…第三辺部、644…第四辺部、65…第二延伸部位、65a…隣接部位、66…折り返し部、67…片部、7…板状部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、100…絶縁樹脂製シート、101…正面部分、102…底部分、103…背面部分、104…側幅部分、105…折り返し部、106…折り返し辺、110…巻回電極体、C…巻回軸、α…溶着部位