(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】エンジントルク制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20240719BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240719BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20240719BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20240719BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20240719BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240719BHJP
B60W 10/188 20120101ALI20240719BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60W30/09
B60T7/12 C
B60W30/095
B60W10/00 120
B60W10/06
B60W10/188
F02D29/02 301D
(21)【出願番号】P 2020109628
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩之
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-159763(JP,A)
【文献】特開2019-142266(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110871(WO,A1)
【文献】特開平09-240323(JP,A)
【文献】特開2007-076574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60T 7/12
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に向かう走行速度を取得可能に構成される車速取得部と、
車両及び前記車両の進行方向側に位置する障害物の間における障害物距離、並びに前記障害物に対する前記車両の相対速度を取得可能に構成され、かつ前記障害物に対応して前記車両にてブレーキを掛けることを要求するためのブレーキ要求を出力可能に構成される障害物情報取得部と、
前記車両のアクセル開度を取得可能に構成されるアクセル開度取得部と、
前記障害物に対応して前記車両のエンジントルクを抑制可能とするように構成されるエンジントルク制御部と、
前記車両にて自動ブレーキを掛けることができるように構成される自動ブレーキ制御部と
を備えるエンジントルク制御装置であって、
前記エンジントルク制御部は、前記車速取得部により取得された前記走行速度の取得値が、所定の走行速度閾値以下であり、前記障害物情報取得部により取得された前記障害物距離の取得値が、所定の障害物距離閾値以内であり、かつ前記アクセル開度取得部により取得されたアクセル開度の取得値が、所定のアクセル開度閾値以上である場合に、前記車両のエンジントルクを、前記車両が前記進行方向とは逆方向にずり下がることを防
止しながら抑制するエンジントルク抑制制御を実
行するように構成され、
前記自動ブレーキ制御部は、前記エンジントルク抑制制御が実行されている間に、前記走行速度の取得値を0km/hよりも大き
い一定値に維持しながら、前記障害物情報取得部から出力される前記ブレーキ要求に基づいて自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御を実行
するように構成されており、
前記減速ブレーキ制御が実行されている状態で、前記障害物情報取得部により取得される前記障害物距離の取得値及び前記相対速度の取得値に基づいて前記車両及び前記障害物の衝突が回避できないと判断された場合に、前記自動ブレーキ制御部が、前記車両を停止させるためにブレーキ力を増加させるように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実
行するように構成されているエンジントルク制御装置。
【請求項2】
前記エンジントルク制御部が前記エンジントルク抑制制御を開始すると同時に、前記自動ブレーキ制御部が前記減速ブレーキ制御を開始するように構成されている請求項1に記載のエンジントルク制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ力を衝突予測時間に応じて変更するように構成されている請求項1又は2に記載のエンジントルク制御装置。
【請求項4】
前記自動ブレーキ制御部は、前記減速ブレーキ制御にて、前記障害物距離の取得値が減少するに従って前記ブレーキ力を増加させるように構成されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載のエンジントルク制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進行方向側に位置する障害物に対応して車両のエンジントルクを抑制可能とするように構成されるエンジントルク制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車等の車両においては、車両の進行方向側の障害物との衝突を回避可能とする技術が用いられることが増えてきている。例えば、車両とその進行方向側の障害物との衝突を回避すべく車両のエンジントルクを抑制するエンジントルク制御技術が用いられることがある。
【0003】
エンジントルク制御技術の一例としては、車両及び障害物間の間隔を測定し、かつこの間隔に関連する関数として駆動ユニットの出力、車輪のブレーキに生じるブレーキ力、又はこれらの両方を調節する車両の障害物への接近の制御方法が挙げられ、この制御方法においては、障害物が車両に接近するときに、上記間隔を第1の間隔範囲内に維持するようにエンジン出力を制御し、さらに、上記間隔が第1の間隔範囲よりも小さな第2の間隔範囲内になったときに、ブレーキのブレーキ力を上昇させる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記エンジントルク制御技術の一例においては、車両と障害物との間隔がある一定長さよりも短くなるように車両が障害物に接近したときに、ドライバの意図に反した自動ブレーキが、車両を停止させる程度に大きな慣性力を作用させ、かつ急激な走行速度の変化をもたらすように自動的に掛けられることとなる。この場合、ドライバを含む車両の搭乗者に対しては、大きな慣性力によって身体的な負荷が掛かるおそれがあり、かつ搭乗者に対しては、急激な走行速度の変化によって精神的な負荷が掛かるおそれもある。さらに、自動ブレーキが頻繁に掛かると、搭乗者にとっての不快感が増加する。すなわち、ドライバ等の搭乗者にとっての快適性が損なわれるおそれがある。
【0006】
上記エンジントルク制御技術の一例においては、例えば、ドライバが誤ってアクセルペダルを必要以上に踏み込んでしまった場合であっても、上述のように自動ブレーキが掛けられる。しかしながら、このような場合において、搭乗者にとっての快適性を向上させるため、特に、ドライバへの精神的な負荷を減らすためには、ドライバが、誤りに気付いた後に、自らブレーキペダルを踏むことによって車両を停止させることが好ましい。
【0007】
このような実情を鑑みると、エンジントルク制御装置においては、車両のドライバ等の搭乗者にとっての快適性を向上させることが望まれる。さらに、エンジントルク制御装置においては、ドライバが、誤ってアクセルペダルを必要以上に踏み込んでしまった場合であっても、誤りに気付いた後に自らブレーキペダルを踏むことによって車両を停止させることができる猶予時間を増加させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係るエンジントルク制御装置は、車両の進行方向に向かう走行速度を取得可能に構成される車速取得部と、車両及び前記車両の進行方向側に位置する障害物の間における障害物距離、並びに前記障害物に対する前記車両の相対速度を取得可能に構成され、かつ前記障害物に対応して前記車両にてブレーキを掛けることを要求するためのブレーキ要求を出力可能に構成される障害物情報取得部と、前記車両のアクセル開度を取得可能に構成されるアクセル開度取得部と、前記障害物に対応して前記車両のエンジントルクを抑制可能とするように構成されるエンジントルク制御部と、前記車両にて自動ブレーキを掛けることができるように構成される自動ブレーキ制御部とを備えるエンジントルク制御装置であって、前記エンジントルク制御部は、前記車速取得部により取得された前記走行速度の取得値が、所定の走行速度閾値以下であり、前記障害物情報取得部により取得された前記障害物距離の取得値が、所定の障害物距離閾値以内であり、かつ前記アクセル開度取得部により取得されたアクセル開度の取得値が、所定のアクセル開度閾値以上である場合に、前記車両のエンジントルクを、前記車両が前記進行方向とは逆方向にずり下がることを防止しながら抑制するエンジントルク抑制制御を実行するように構成され、前記自動ブレーキ制御部は、前記エンジントルク抑制制御が実行されている間に、前記走行速度の取得値を0km/hよりも大きい一定値に維持しながら、前記障害物情報取得部から出力される前記ブレーキ要求に基づいて自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御を実行するように構成されており、前記減速ブレーキ制御が実行されている状態で、前記障害物情報取得部により取得される前記障害物距離の取得値及び前記相対速度の取得値に基づいて前記車両及び前記障害物の衝突が回避できないと判断された場合に、前記自動ブレーキ制御部が、前記車両を停止させるためにブレーキ力を増加させるように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係るエンジントルク制御装置においては、車両のドライバ等の搭乗者にとっての快適性を向上させることができる。さらに、一態様に係るエンジントルク制御装置においては、ドライバが、誤ってアクセルペダルを必要以上に踏み込んでしまった場合であっても、誤りに気付いた後に自らブレーキペダルを踏むことによって車両を停止させることができる猶予時間を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置を含む車両を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る車両を坂道にて停止している状態で模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るエンジントルク制御装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係るエンジントルク制御装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係るエンジントルク制御装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1~第4実施形態に係るエンジントルク制御装置を、それを搭載した車両と共に、以下に説明する。なお、各実施形態に係るエンジントルク制御装置を搭載した車両は、自動車となっている。しかしながら、かかる車両は、自動車以外の車両とすることもできる。なお、本明細書において、左方は、車両が前方を向いた状態での左手側を意味し、かつ右方は、車両が前方を向いた状態での右手側を意味するものとする。
【0012】
「第1実施形態」
第1実施形態に係るエンジントルク制御装置及び車両について説明する。
【0013】
「エンジントルク制御装置及び車両の概略」
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10及び車両1の概略について説明する。すなわち、エンジントルク制御装置10及び車両1は、概略的には次のように構成される。
図1に示すように、エンジントルク制御装置10は、車両1の進行方向(
図2にて片側矢印Aにより示す)に向かう走行速度を取得可能に構成される車速取得部11を有する。車両1の進行方向側に位置する障害物B(
図2に示す)の情報を取得可能に構成される障害物情報取得部12を有する。エンジントルク制御装置10は、車両1のアクセル開度を取得可能に構成されるアクセル開度取得部13を有する。
【0014】
図2に示すように、障害物情報取得部12は、車両1及び障害物B間の障害物距離を取得可能に構成される。障害物情報取得部12は、障害物Bに対する車両1の相対速度を取得可能に構成される。さらに
図1に示すように、障害物情報取得部12は、車両1にてブレーキを掛けることを要求するためのブレーキ要求を出力可能に構成される。
【0015】
エンジントルク制御装置10は、障害物Bに対応して車両1のエンジントルクを抑制可能とするように構成されるエンジントルク制御部14を有する。エンジントルク制御装置10は、車両1にて自動ブレーキを掛けることができるように構成される自動ブレーキ制御部15を有する。
【0016】
図1を参照すると、エンジントルク制御部14は、車速取得部11により取得された走行速度の取得値cが、所定の走行速度閾値c1以下であり、障害物情報取得部12により取得された障害物距離の取得値dが、所定の第1障害物距離閾値d1以内であり、かつアクセル開度取得部13により取得されたアクセル開度の取得値fが、所定のアクセル開度閾値f1以上である場合に、エンジントルク抑制制御を実行可能とするように構成される。
図2に示すように、エンジントルク抑制制御は、車両1のエンジントルクを、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制する制御である。
【0017】
図1を参照すると、自動ブレーキ制御部15は、上記エンジントルク抑制制御が実行されている間に、減速ブレーキ制御を実行できるように構成されている。
図2に示すように、減速ブレーキ制御は、走行速度の取得値cを約0km/hよりも大きく維持しながら、障害物情報取得部12から出力されるブレーキ要求に基づいて自動ブレーキを掛ける制御である。
【0018】
図1及び
図2を参照すると、エンジントルク制御装置10は、上記減速ブレーキ制御が実行されている状態で、障害物情報取得部12により取得される障害物距離の取得値d及び相対速度の取得値eに基づいて車両1及び障害物Bの衝突が回避できないと判断された場合に、自動ブレーキ制御部15が、車両1を停止させるためにブレーキ力gを増加させるように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行することができる。
【0019】
さらに、エンジントルク制御装置10及び車両1は、概略的には次のように構成することができる。エンジントルク制御装置10は、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に、自動ブレーキ制御部15が減速ブレーキ制御を開始するように構成されている。
【0020】
エンジントルク制御装置10は、ブレーキ力gをTTC(衝突予測時間)に応じて変更するように構成されている。自動ブレーキ制御部15は、減速ブレーキ制御にて、走行速度cの取得値を実質的に一定とするように構成されている。
【0021】
「エンジントルク制御装置及び車両の詳細」
図1及び
図2を参照すると、エンジントルク制御装置10及び車両1は、詳細には次のように構成することができる。
図1に示すように、車両1は、この車両1を制動可能とするように構成されるブレーキ装置20を含む。エンジントルク制御装置10がブレーキ装置20を含むこともできる。
【0022】
ここで、本実施形態のように車両1が自動車である場合においては、車両1は、典型的には4つの車輪2を有する。ブレーキ装置20は、各車輪2を制動可能とするように構成されるブレーキ21を有する。ブレーキ装置20は、各ブレーキ21を作動させるべくこのブレーキ21にブレーキ液圧を付加することができるように構成されるブレーキアクチュエータ22を有する。
図1に示すように、自動ブレーキ制御部15は、車両1が障害物Bと衝突する可能性がある場合に、車両1を停止させるように自動ブレーキを掛ける自動ブレーキ制御を実行すべく、このようなブレーキ装置20を直接的又は間接的に制御する。
【0023】
車両1は、障害物Bを検出可能に構成される障害物検出部30を有する。エンジントルク制御装置10が障害物検出部30を有することもできる。
図2を参照すると、障害物検出部30は、車両1から障害物Bまでの障害物距離を検出可能とする。障害物検出部30は、ソナーセンサとすることができる。しかしながら、障害物検出部は、これに限定されない。例えば、障害物検出部は、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、赤外線レーザ、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等とすることができる。さらに、障害物検出部は、カメラと、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、赤外線レーザ、又はソナーセンサとの組み合わせとすることもできる。
【0024】
車両1は、各車輪2の回転速度を検出可能とするように構成される車輪速度センサ40を有する。エンジントルク制御装置10が車輪速度センサ40を有することもできる。車両1は、ドライバの足によって操作されるアクセルペダル3を有する。車両1は、アクセルペダル3の踏み込み量に応じて変化するアクセル開度を検出可能に構成されるアクセル開度センサ50を有する。エンジントルク制御装置10がアクセル開度センサ50を有することもできる。車両1は、坂道上に位置する場合に、その坂道の傾斜角度を検出可能に構成される傾斜センサ60を有する。エンジントルク制御装置10が傾斜センサ60を有することもできる。
【0025】
エンジントルク制御装置10の車速取得部11、障害物情報取得部12、アクセル開度取得部13、エンジントルク制御部14、及び自動ブレーキ制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成することができる。ROMは、各種制御定数、各種マップ、各種制御を実行するためのプログラム等を記憶することができる。
【0026】
「車速取得部、障害物情報取得部、及びアクセル開度取得部の詳細」
図1及び
図2を参照すると、車速取得部11、障害物情報取得部12、及びアクセル開度取得部13は、詳細には次のように構成することができる。
図1に示すように、車速取得部11は、各車輪速度センサ40により検出される車輪2の回転速度の検出値に基づいて車両1の走行速度を算出するように構成される。しかしながら、車速取得部は、車速センサ等とすることもできる。
【0027】
図1に示すように、障害物情報取得部12は、障害物検出部30によって検出される障害物距離の検出値を取得する。
図2に示すように、障害物情報取得部12は、障害物検出部30によって検出される障害物距離の検出値の変化に基づいて、障害物Bに対する車両1の相対速度を算出することができる。障害物情報取得部12は、このように算出された相対速度の算出値を取得する。
【0028】
図1及び
図2を参照すると、障害物情報取得部12は、障害物距離の取得値d及び相対速度の取得値eに応じて、ブレーキ要求を出力するように構成される。障害物情報取得部12は、障害物距離の取得値d及び相対速度の取得値eに基づいて、エンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態で、車両1及び障害物Bの衝突が回避できるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行可能に構成される。なお、停止ブレーキ判定は、エンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行していない状態(以下、必要に応じて「非ずり下がり防止状態」という)でも、実行することができる。しかしながら、障害物情報取得部の代わりに、自動ブレーキ制御部を、停止ブレーキ判定を実行可能とするように構成することもできる。
【0029】
さらに、障害物情報取得部12は、障害物距離の取得値d及び相対速度の取得値eに基づいて、TTCを算出するように構成される。障害物情報取得部12は、このように算出されたTTCの算出値を取得する。しかしながら、障害物情報取得部の代わりに、自動ブレーキ制御部が、TTCを算出し、かつこのように算出されたTTCの算出値を取得することができる。
図1に示すように、アクセル開度取得部13は、アクセル開度センサ50により検出されるアクセル開度の検出値を取得する。
【0030】
「エンジントルク制御部の詳細」
図1及び
図2を参照すると、エンジントルク制御部14は、詳細には次のように構成することができる。エンジントルク制御部14は、走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下であるか否かを判定可能に構成される。エンジントルク制御部14は、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以内であるか否かを判定可能に構成される。エンジントルク制御部14は、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上であるか否かを判定可能に構成される。
【0031】
例えば、走行速度閾値c1、第1障害物距離閾値d1、及びアクセル開度閾値f1は、ドライバが、アクセルペダル3をブレーキペダル(図示せず)と誤って踏んだ場合であっても、車両1と障害物Bとの衝突を防ぐことができるように設定される。一例として、走行速度閾値c1は、約10km/hとすることができる。一例として、第1障害物距離閾値d1は、約3m(メートル)とすることができる。一例として、アクセル開度閾値f1は、約80%とすることができる。しかしながら、しかしながら、第1障害物距離閾値及びアクセル開度閾値は、これらに限定されない。
【0032】
エンジントルク制御部14は、傾斜センサ60により検出される傾斜角度の検出値jが所定の傾斜角度閾値j1以上であるか否かを判定可能に構成される。また、エンジントルク制御部14は、傾斜角度の検出値jに合わせてエンジントルクを調節することができる。例えば、傾斜角度閾値j1は、車両1が制動されていない状態で坂道の傾斜に起因して進行方向とは逆方向にずり下がり得る角度に設定される。一例として、傾斜角度閾値j1は、約10%とすることができる。しかしながら、傾斜角度閾値は、これに限定されない。
【0033】
エンジントルク制御部14は、傾斜角度の検出値jが傾斜角度閾値j1以上である場合に、車両1が坂道の傾斜に起因して進行方向とは逆方向にずり下がることを防止するようにエンジントルクを制御する。さらに、エンジントルク制御部14は、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以内であり、かつアクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上である場合に、エンジントルク抑制制御において、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら車両1と障害物Bとの衝突被害を軽減するように、エンジントルクを抑制する。
【0034】
「自動ブレーキ部の詳細」
図1及び
図2を参照すると、自動ブレーキ部14は、詳細には次のように構成することができる。自動ブレーキ部14は、いわゆる衝突被害軽減ブレーキ部(AEB部)とすることができる。しかしながら、自動ブレーキ部は、AEB部に限定されない。
【0035】
自動ブレーキ部14は、減速ブレーキ制御において、エンジントルク抑制制御が開始されると同時に、最初に、ブレーキ要求に基づいてブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける。しかしながら、自動ブレーキ部は、減速ブレーキ制御において、エンジントルク抑制制御の開始から所定の時間経過後に、最初に、ブレーキ要求に基づいてブレーキ力を第1減速ブレーキ値とするように自動ブレーキを掛けることもできる。
【0036】
第1減速ブレーキ値g1は、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能とし、かつ走行速度の取得値cを約0km/hよりも大きくかつ走行速度閾値c1以下に維持するように設定される。また、第1減速ブレーキ値g1は、車両1の走行速度を実質的に一定にするように設定される。
【0037】
自動ブレーキ部14は、上記停止ブレーキ判定において、エンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態で車両1及び障害物Bの衝突が回避できないと判断された場合に、停止ブレーキ制御を実行する。また、自動ブレーキ部14は、上記停止ブレーキ判定において、非ずり下がり防止状態で車両1及び障害物Bの衝突が回避できないと判断された場合においても、停止ブレーキ制御を実行することができる。
【0038】
停止ブレーキ制御は、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1よりも大きな停止ブレーキ値gsとするように自動ブレーキを掛ける。停止ブレーキ制御は、エンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1から停止ブレーキ値gsに変更することができる。停止ブレーキ値gsは、車両1及び障害物Bの衝突の被害を軽減するか、又は衝突を回避するために、第1減速ブレーキ値g1から停止ブレーキ値gsに変更された時点からできる限り早く車両1を停止可能とするように設定される。
【0039】
停止ブレーキ判定は、障害物情報取得部12により取得されるTTCの取得値tが、所定の停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定することによって実行される。停止ブレーキ判定においては、TTCの取得値tが停止TTC閾値tsよりも大きい場合、減速ブレーキ制御中に車両1及び障害物Bの衝突が回避できると判定され、その一方で、TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下である場合、減速ブレーキ制御中に車両1及び障害物Bの衝突が回避できないと判定される。
【0040】
一例として、第1減速ブレーキ値は、約0.2Gとすることができる。一例として、停止ブレーキ値は、約0.8Gとすることができる。なお、1Gは、約9.8m/s(秒)2である。一例として、停止TTC閾値は、約1sとすることができる。しかしながら、第1減速ブレーキ値、停止ブレーキ値、及び停止TTC閾値は、これらに限定されない。
【0041】
「エンジントルク制御装置の制御方法」
図3を参照して、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10の制御方法の一例について説明する。なお、以下に説明する制御方法は、エンジントルク制御装置10を用いて実施できる制御方法の一例である。そのため、エンジントルク制御装置の制御方法は、以下に限定されない。
【0042】
最初に、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下であるか否かを判定する(ステップS1)。車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下である場合(YES)、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下であるか否かを判定する(ステップS2)。障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下である場合(YES)、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上である場合(YES)、車両1のエンジントルクを、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制するエンジントルク抑制制御と、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御とを、同時に実行開始する(ステップS4)。
【0044】
次に、TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行する(ステップS5)。また、上記ステップS1の判定にて、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS5)。上記ステップS2の判定にて、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS5)。上記ステップS3の判定にて、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1よりも小さい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS5)。
【0045】
TTCの取得値tが停止TTC閾値tsよりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下である場合(YES)、ブレーキ力gを停止ブレーキ値gsとするように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行する(ステップS6)。車両1が停止する(ステップS7)。
【0046】
以上、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10は、車両1の進行方向に向かう走行速度を取得可能に構成される車速取得部11と、車両1及び前記車両1の進行方向側に位置する障害物Bの間における障害物距離、並びに前記障害物Bに対する前記車両1の相対速度を取得可能に構成され、かつ前記障害物Bに対応して前記車両1にてブレーキを掛けることを要求するためのブレーキ要求を出力可能に構成される障害物情報取得部12と、前記車両1のアクセル開度を取得可能に構成されるアクセル開度取得部13と、前記障害物Bに対応して前記車両1のエンジントルクを抑制可能とするように構成されるエンジントルク制御部14と、前記車両1にて自動ブレーキを掛けることができるように構成される自動ブレーキ制御部15とを有し、前記エンジントルク制御部14は、前記車速取得部11により取得された前記走行速度の取得値cが、所定の走行速度閾値c1以下であり、前記障害物情報取得部12により取得された前記障害物距離の取得値dが、所定の第1障害物距離閾値d1以内であり、かつ前記アクセル開度取得部13により取得されたアクセル開度の取得値fが、所定のアクセル開度閾値f1以上である場合に、前記車両1のエンジントルクを、前記車両1が前記進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制するエンジントルク抑制制御を実行可能とするように構成され、前記自動ブレーキ制御部15は、前記エンジントルク抑制制御が実行されている間に、前記走行速度の取得値cを約0km/hよりも大きく維持しながら、前記障害物情報取得部12から出力される前記ブレーキ要求に基づいて自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御を実行できるように構成されており、前記減速ブレーキ制御が実行されている状態で、前記障害物情報取得部12により取得される前記障害物距離の取得値d及び前記相対速度の取得値eに基づいて前記車両1及び前記障害物Bの衝突が回避できないと判断された場合に、前記自動ブレーキ制御部15が、前記車両1を停止させるためにブレーキ力gを増加させるように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行可能とする。
【0047】
このようなエンジントルク制御装置10においてエンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、車両1及び障害物Bの衝突を回避するために、ブレーキ力gを緩やかに増加させることができる。そのため、衝突を回避するための自動ブレーキによって車両1に作用する慣性力を低減することができるので、搭乗者に掛かる身体的な負荷を低減することができる。衝突を回避するための自動ブレーキによる車両1の走行速度の変化を緩やかにできるので、搭乗者に掛かる精神的な負荷を低減することができる。さらに、上記エンジントルク制御装置10においては、エンジントルク抑制制御を実行するときのみに、減速ブレーキ制御を実行することができるので、自動ブレーキが頻繁に掛かることを防止できる。その結果、搭乗者にとっての不快感を低減できる。よって、車両1のドライバ等の搭乗者にとっての快適性を向上させることができる。
【0048】
上記エンジントルク制御装置10においては、衝突を回避するための自動ブレーキによって車両1が停止するまでに掛かる時間を長くできる。よって、ドライバが、誤ってアクセルペダル3を必要以上に踏み込んでしまった場合であっても、誤りに気付いた後に自らブレーキペダル3を踏むことによって車両1を停止させることができる猶予時間を増加させることができる。
【0049】
本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、前記エンジントルク制御部14が前記エンジントルク抑制制御を開始すると同時に、前記自動ブレーキ制御部15が前記減速ブレーキ制御を開始するように構成されている。
【0050】
このようなエンジントルク制御装置10におけるエンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、車両1と障害物Bとの衝突を回避するために自動ブレーキを掛けた場合であっても、車両1に作用する慣性力を抑えることができ、かつ車両1の走行速度の変化を緩やかにすることができる。そのため、車両1の搭乗者に掛かる身体的な負荷及び精神的な負荷を低減することができる。
【0051】
本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、前記ブレーキ力gを衝突予測時間(TTC)に応じて変更するように構成されている。
【0052】
このようなエンジントルク制御装置10におけるエンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、車両1と障害物Bとの衝突を回避するために自動ブレーキを掛けた場合であっても、ブレーキ力gを緩やかかつ段階的に増加させることができる。
【0053】
本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、前記自動ブレーキ制御部15は、前記減速ブレーキ制御にて、前記走行速度の取得値cを実質的に一定とするように構成されている。
【0054】
このようなエンジントルク制御装置10におけるエンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、走行速度が変動せずに実質的に一定であるので、ドライバは冷静さを保つことができる。そのため、車両1のドライバに掛かる精神的な負荷を低減することができる。
【0055】
「第2実施形態」
第2実施形態に係るエンジントルク制御装置及び車両について説明する。
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10は、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に自動ブレーキ制御部15が減速ブレーキ制御を開始する構成の代わりに、次のような構成を有する点を除いて、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様に構成される。
【0056】
すなわち、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始した後、自動ブレーキ制御部15が、TTCの取得値tが所定の第1減速TTC閾値t1以下である場合に、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御を実行する。第1減速TTC閾値t1は、停止TTC閾値tsよりも大きい。一例として、第1減速TTC閾値t1は、約5sとすることができる。しかしながら、第1減速TTC閾値は、これに限定されない。
【0057】
かかるエンジントルク制御装置10において、障害物情報取得部12は、TTCの取得値tが所定の第1減速TTC閾値t1以下であるか否かを判定する第1減速ブレーキ判定を実行するように構成される。しかしながら、障害物情報取得部の代わりに、自動ブレーキ制御部が、第1減速ブレーキ判定を実行することもできる。
【0058】
「エンジントルク制御装置の制御方法」
図4を参照して、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10の制御方法の一例について説明する。なお、以下に説明する制御方法は、エンジントルク制御装置10を用いて実施できる制御方法の一例である。そのため、エンジントルク制御装置の制御方法は、以下に限定されない。
【0059】
最初に、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下であるか否かを判定する(ステップS11)。車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下である場合(YES)、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下であるか否かを判定する(ステップS12)。障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下である(YES)、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0060】
アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上である場合、車両1のエンジントルクを、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制するエンジントルク抑制制御を実行する(ステップS14)。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1以下であるか否かを判定する(ステップS15)。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1よりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1以下である場合、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける減速ブレーキ制御を実行する(ステップS16)。
【0061】
次に、TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行する(ステップS17)。また、上記ステップS11の判定にて、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS17)。上記ステップS12の判定にて、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS17)。上記ステップS13の判定にて、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1よりも小さい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS17)。
【0062】
TTCの取得値tが停止TTC閾値tsよりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下である場合(YES)、ブレーキ力gを停止ブレーキ値gsとするように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行する(ステップS18)。車両1が停止する(ステップS19)。
【0063】
以上、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に自動ブレーキ制御部15が減速ブレーキ制御を開始する構成に基づく効果を除いて、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様の効果を得ることができる。
【0064】
「第3実施形態」
第3実施形態に係るエンジントルク制御装置及び車両について説明する。
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10は、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に、自動ブレーキ制御部15が減速ブレーキ制御を開始する構成の代わりに、次のような構成を有する点を除いて、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様に構成される。
【0065】
すなわち、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始した後、自動ブレーキ制御部15が、TTCの取得値tが所定の第1減速TTC閾値t1以下である場合に、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行する。さらに、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、TTCの取得値tが所定の第2減速TTC閾値t2以下である場合に、ブレーキ力gを第2減速ブレーキ値g2とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行する。減速ブレーキ制御は、第1及び第2減速ブレーキ制御を含む。
【0066】
しかしながら、エンジントルク制御部がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に、自動ブレーキ制御部が、ブレーキ力を第1減速ブレーキ値とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行し、その後、TTCの取得値が所定の第2減速TTC閾値以下である場合に、ブレーキ力を第2減速ブレーキ値とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行することもできる。
【0067】
第2減速TTC閾値t2は、第1減速TTC閾値t1よりも小さい。第2減速TTC閾値t2は、停止TTC閾値tsよりも大きい。一例として、第2減速TTC閾値t2は、約3sとすることができる。しかしながら、第2減速TTC閾値は、これに限定されない。
【0068】
第2減速ブレーキ値g2は、第1減速ブレーキ値g1よりも大きい。第2減速ブレーキ値g2は、停止ブレーキ値gsよりも小さい。一例として、第2減速ブレーキ値g2は、約0.25Gとすることができる。しかしながら、第2減速ブレーキ値は、これに限定されない。
【0069】
かかるエンジントルク制御装置10において、障害物情報取得部12は、TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1以下であるか否かを判定する第1減速ブレーキ判定を実行するように構成される。障害物情報取得部12は、TTCの取得値tが第2減速TTC閾値t2以下であるか否かを判定する第2減速ブレーキ判定を実行するように構成される。しかしながら、障害物情報取得部の代わりに、自動ブレーキ制御部が、第1減速ブレーキ判定及び第2減速ブレーキ判定のすくなくとも一方を実行することもできる。
【0070】
「エンジントルク制御装置の制御方法」
図5を参照して、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10の制御方法の一例について説明する。なお、以下に説明する制御方法は、エンジントルク制御装置10を用いて実施できる制御方法の一例である。そのため、エンジントルク制御装置の制御方法は、以下に限定されない。
【0071】
最初に、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下であるか否かを判定する(ステップS21)。車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下である場合(YES)、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下であるか否かを判定する(ステップS22)。障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下である(YES)、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0072】
アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上である場合、車両1のエンジントルクを、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制するエンジントルク抑制制御を実行する(ステップS24)。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1以下であるか否かを判定する(ステップS25)。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1よりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが第1減速TTC閾値t1以下である場合、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行する(ステップS26)。
【0073】
次に、TTCの取得値tが第2減速TTC閾値t2以下であるか否かを判定する(ステップS27)。TTCの取得値tが第2減速TTC閾値t2よりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが第2減速TTC閾値t2以下である場合、ブレーキ力gを第2減速ブレーキ値g2とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行する(ステップS28)。
【0074】
次に、TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行する(ステップS29)。また、上記ステップS21の判定にて、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS29)。上記ステップS22の判定にて、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS29)。上記ステップS23の判定にて、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1よりも小さい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS29)。
【0075】
TTCの取得値tが停止TTC閾値tsよりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下である場合(YES)、ブレーキ力gを停止ブレーキ値gsとするように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行する(ステップS30)。車両1が停止する(ステップS31)。
【0076】
以上、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様の効果を得ることができる。
【0077】
「第4実施形態」
第4実施形態に係るエンジントルク制御装置及び車両について説明する。
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10は、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始すると同時に、自動ブレーキ制御部15が減速ブレーキ制御を開始する構成の代わりに、次のような構成を有する点を除いて、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様に構成される。
【0078】
すなわち、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、自動ブレーキ制御部15は、減速ブレーキ制御にて、すなわち、後述する第1及び第2減速ブレーキ制御にわたって、障害物距離の取得値dが減少するに従ってブレーキ力gを増加させるように構成されている。さらに、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始した後、自動ブレーキ制御部15が、障害物距離の取得値dが所定の第2障害物距離閾値d2よりも大きい場合に、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行することができる。
【0079】
また、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、エンジントルク制御部14がエンジントルク抑制制御を開始した後、障害物距離の取得値dが第2障害物距離閾値d2以下である場合に、ブレーキ力gを第2減速ブレーキ値g2とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行することができる。減速ブレーキ制御は、第1及び第2減速ブレーキ制御を含む。
【0080】
第2障害物距離閾値d2は、第1障害物距離閾値d1よりも小さい。一例として、第2障害物距離閾値d2は、約1mとすることができる。しかしながら、第2障害物距離閾値は、これに限定されない。
【0081】
しかしながら、エンジントルク制御装置おいては、エンジントルク制御部がエンジントルク抑制制御を開始したと同時に、自動ブレーキ制御部が、ブレーキ力を第1減速ブレーキ値とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行開始し、その後、障害物距離の取得値が第2障害物距離閾値よりも大きい場合に、当該制御を継続し、かつ障害物距離の取得値が第2障害物距離閾値以下である場合に、ブレーキ力を第2減速ブレーキ値とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行することもできる。
【0082】
かかるエンジントルク制御装置10において、障害物情報取得部12は、障害物距離の取得値dが第2障害物距離閾値d2以下である否かを判定するように構成される。しかしながら、障害物情報取得部の代わりに、自動ブレーキ制御部が、障害物距離の取得値が第2障害物距離閾値以下である否かを判定することもできる。
【0083】
「エンジントルク制御装置の制御方法」
図6を参照して、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10の制御方法の一例について説明する。なお、以下に説明する制御方法は、エンジントルク制御装置10を用いて実施できる制御方法の一例である。そのため、エンジントルク制御装置の制御方法は、以下に限定されない。
【0084】
最初に、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下であるか否かを判定する(ステップS41)。車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1以下である場合(YES)、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下であるか否かを判定する(ステップS42)。障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1以下である(YES)、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上であるか否かを判定する(ステップS43)。
【0085】
アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1以上である場合、車両1のエンジントルクを、車両1が進行方向とは逆方向にずり下がることを防止可能としながら抑制するエンジントルク抑制制御を実行する(ステップS44)。障害物距離の取得値dが第2障害物距離閾値d2以下であるか否かを判定する(ステップS45)。障害物距離の取得値dが第2障害物距離閾値d2よりも大きい場合(NO)、ブレーキ力gを第1減速ブレーキ値g1とするように自動ブレーキを掛ける第1減速ブレーキ制御を実行する(ステップS46)。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行する(ステップS47)。
【0086】
障害物距離の取得値dが第2障害物距離閾値d2以下である場合(YES)、ブレーキ力gを第2減速ブレーキ値g2とするように自動ブレーキを掛ける第2減速ブレーキ制御を実行する(ステップS48)。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下であるか否かを判定する停止ブレーキ判定を実行する(ステップS47)。
【0087】
さらに、上記ステップS41の判定にて、車両1の走行速度の取得値cが走行速度閾値c1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS47)。上記ステップS42の判定にて、障害物距離の取得値dが第1障害物距離閾値d1よりも大きい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS47)。上記ステップS43の判定にて、アクセル開度の取得値fがアクセル開度閾値f1よりも小さい場合(NO)、停止ブレーキ判定を実行する(ステップS47)。
【0088】
TTCの取得値tが停止TTC閾値tsよりも大きい場合(NO)、ステップS1に戻る。TTCの取得値tが停止TTC閾値ts以下である場合(YES)、ブレーキ力gを停止ブレーキ値gsとするように自動ブレーキを掛ける停止ブレーキ制御を実行する(ステップS49)。車両1が停止する(ステップS50)。
【0089】
以上、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、減速ブレーキ制御にて走行速度の取得値cを実質的に一定とする構成に基づく効果を除いて、第1実施形態に係るエンジントルク制御装置10と同様の効果を得ることができる。これに加えて、本実施形態に係るエンジントルク制御装置10においては、自動ブレーキ制御部15が、減速ブレーキ制御にて、障害物距離の取得値dが減少するに従ってブレーキ力gを増加させるように構成されている。
【0090】
このようなエンジントルク制御装置10におけるエンジントルク抑制制御及び減速ブレーキ制御を実行している状態では、車両1が障害物Bに接近するに従って車両1の走行速度が減少するので、ドライバは冷静さを保つことができる。そのため、車両1のドライバに掛かる精神的な負荷を低減することができる。
【0091】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…車両、10…エンジントルク制御装置、11…車速取得部、12…障害物情報取得部、13…アクセル開度取得部、14…エンジントルク制御部、15…自動ブレーキ制御部
B…障害物
c…走行速度の取得値、c1…走行速度閾値、d…障害物距離の取得値、d1…第1障害物距離閾値、e…相対速度の取得値、f…アクセル開度の取得値、f1…アクセル開度閾値、g…ブレーキ力