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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240719BHJP
   G03B 21/60 20140101ALI20240719BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240719BHJP
   G02F 1/17 20190101ALI20240719BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/60
G02F1/13 505
G02F1/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211502
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098134
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文紀
(72)【発明者】
【氏名】太田 最実
(72)【発明者】
【氏名】島田 真紀
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 俊太
【審査官】西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0087826(US,A1)
【文献】特開2020-155811(JP,A)
【文献】特開2019-194643(JP,A)
【文献】特開2009-053533(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017591(WO,A1)
【文献】特開2019-194645(JP,A)
【文献】特開平11-030835(JP,A)
【文献】特開2012-173449(JP,A)
【文献】特表平10-508031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
G03B 21/60
G02F 1/13
G02F 1/17
G01D 11/00-13/28
G02B 1/00-1/08
G02B 3/00-5/136
G02B 5/20-5/28
G02B 27/00-30/60
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/30
G03B 21/56-21/64
G03B 33/00-33/16
G09F 9/00-9/46
H04N 9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学特性変化部材が透明基板で支持されて成る画像表示体と、
投光部材と、を備える表示装置であって、
上記光学特性変化部材が、光透過散乱層と、調光層と、紫外光を遮蔽する紫外光遮蔽層とが上記投光部材側からこの順で積層されて成り、
上記光透過散乱層が、可視光に対する光散乱性が変化して透明状態と白濁状態との間で変化する層であり、
上記調光層が、可視光に対する光吸収性が変化して明るさが変化する層であり、
上記投光部材が、上記画像表示体に対して、第1の紫外光と第2の紫外光とを投写し、上記第1の紫外光により上記光透過散乱層を変化させ、上記第1の紫外光のピーク波長とは異なるピーク波長の第2の紫外光により上記調光層を変化させて、上記画像表示体に画像を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記第2の紫外光のピーク波長が、上記光透過散乱層のモル吸光係数の最大吸収ピークの半値幅となる波長の範囲外であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記第2の紫外光のピーク波長が、315nmよりも長波長であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記投光部材が、さらに可視光を投写し、上記画像表示体に着色画像を表示することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載の表示装置。
【請求項5】
上記投光部材が、上記第1の紫外光の光源と上記第2の紫外光の光源、又は、これらの光源と可視光の光源とを有し、かつこれらの光源からの光を1組の投写レンズから投写する、一体化した部材であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の表示装置。
【請求項6】
さらに、制御装置を備え、
上記制御装置が、第1紫外光と第2紫外光とを同時、又はそれぞれ一方のみを投写するように制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係り、更に詳細には、自動車のフロントガラスや建物の窓ガラス等の透明ガラス上に画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学状態が光を透過する状態と散乱する状態との間で変化するスクリーンと、該スクリーンに可視光を投影して映像を表示するプロジェクタを有する表示装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、紫外光によって光散乱性が増加し透明から白濁に変化する光透過散乱層の背面に、紫外光によって明るさが変化する調光層を設け、該調光層を暗くすることで明るい環境下においても画像のコントラストが保持され、視認性を向上させた画像表示体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-185511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像表示体にあっては、光透過散乱層で紫外光が吸収され、充分な量の紫外光が調光層に届かないため、調光層を暗くなるまでに長時間を要して紫外光照射初期の視認性が低下する。また十分暗くすることが困難であり画像コントラストの低下が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、紫外光照射に対する応答性が速く、コントラストが高く視認性に優れる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、光透過散乱層での吸収が少ない波長の紫外光によって調光層を変化させることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の表示装置は、光学特性変化部材が透明基板で支持されて成る画像表示体と、投光部材と、を備える。
そして、上記光学特性変化部材が、光透過散乱層と、調光層と、紫外光を遮蔽する紫外光遮蔽層とが上記投光部材側からこの順で積層されて成り、
上記光透過散乱層が、可視光に対する光散乱性が変化して透明状態と白濁状態との間で変化する層であり、
上記調光層が、可視光に対する光吸収性が変化して明るさが変化する層であり、
上記投光部材が、上記画像表示体に対して、上記第1の紫外光と上記第2の紫外光とを投写し、上記第1の紫外光により上記光透過散乱層を変化させ、上記第1の紫外光のピーク波長とは異なるピーク波長の第2の紫外光により上記調光層を変化させて、上記画像表示体に画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の紫外光により上記光透過散乱層を変化させ、該第1の紫外光のピーク波長とは異なるピーク波長の第2の紫外光により上記調光層を変化させすることとしたため、紫外光照射に対する応答性が速く、コントラストが高く視認性に優れる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の表示装置の構成を示す概略図である。
図2】構造式(1)のアゾベンゼンの吸光特性を示すグラフである。
図3】構造式(2)のアゾベンゼンの吸光特性を示すグラフである。
図4】本発明で用いた青色ジアリールエテン誘導体の紫外光投写前後の写吸光特性を示すグラフである。
図5】本発明で用いた黄色ジアリールエテン誘導体の紫外光投写前後の吸光特性を示すグラフである。
図6】本発明で用いた混合ジアリールエテン誘導体の紫外光投写前後の吸光特性を示すグラフである。
図7】ダイクロイックミラーを用いて一体化した投光部材の一例を示す概略図である。
図8】画像表示体に紫外光を投写開始してからの経過時間と白色光の透過率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表示装置について詳細に説明する。
上記表示装置は、図1に示すように、画像表示体と投光部材とを備え、上記投光部材が画像表示体に対向して配置されて成る。
【0012】
<画像表示体>
本発明の画像表示体は、光透過散乱層と、調光層と、紫外光を遮蔽する紫外光遮蔽層とがこの順で積層された光学特性変化部材が透明基板で支持されて成る。
【0013】
(光透過散乱層)
上記光透過散乱層は、可視光に対する光散乱性が変化して透明状態と白濁状態との間で変化する層であり、液晶分子とアゾベンゼン分子とを含む液晶層を有する液晶フィルムである。
【0014】
上記液晶分子としては、ネマティック液晶を使用できる。
ネマティック液晶は、外部電圧をかけない自然の状態で棒状の液晶分子がほぼ一定な方向性を持って配列する。液晶分子を光透過散乱層の厚み方向に対して略垂直に配列させることで透明な光透過散乱層が得られる。
【0015】
上記アゾベンゼン分子は、紫外光を受光するとトランス体からシス体に構造が変化する性質を有する。
【0016】
アゾベンゼン分子のトランス体は平面構造をしているのに対し、シス体は平面ではなく屈曲した立体的な構造をしており、この分子構造変化により液晶分子の配列状態を変化させ、具体的には、バルクのダイレクタが面内で配向回転し光を散乱させて光透過散乱層を白濁させる。
【0017】
そして、アゾベンゼン分子のシス体はトランス体よりもエネルギー的に不安定であるので、可視光下に放置又は可視光に暴露することでトランス体に戻り、液晶も元の配列状態に戻って光透過散乱層が透明になる。
【0018】
上記アゾベンゼンとしては、下記構造式(1)又は下記構造式(2)で示すアゾベンゼンを使用できる。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
図2に構造式(1)のアゾベンゼンの吸光特性、図3に構造式(2)アゾベンゼンの吸光特性を示す。
【0022】
構造式(1)のアゾベンゼンの最大吸収ピークは365nmであり、その半値幅となる波長範囲は350~375nm、構造式(2)アゾベンゼンの最大吸収ピークは365nmであり、その半値幅となる波長範囲は350~380nmである。
【0023】
上記構造式(1)、(2)で示すアゾベンゼンは、紫外光の吸収域が狭く、上記調光層を変化させる第2の紫外光の吸収が少なく第2の紫外光を透過するため、後述する調光層を素早く暗くすることができ、コントラストの高い画像の表示が可能となる。
【0024】
光透過散乱層の厚さは、100~230μmであることが好ましく、また液晶層の厚さは10~30μmであることが好ましい。
【0025】
(調光層)
上記調光層は、紫外光により着色するフォトクロミック材料を含み、可視光に対する光吸収性が変化し、透過する光が減少することで明るさが変化するフィルムである。
【0026】
上記フォトクロミック材料としては、P型フォトクロミック材料を使用できる。
P型フォトクロミック材料は、紫外光照射によって分子構造が安定状態から準安定状態に変化して着色し、さらに別波長の光照射によって元の安定構造に戻り消色する材料である。
【0027】
これに対し、T型フォトクロミック材料は、紫外光照射によって着色し、熱により元の安定状態の分子構造に戻り消色するため、気温が高いと消色速度が速くなり、十分な光吸収特性が得られない、もしくはより高強度な紫外線照射が必要になる。逆に気温が低いと消色速度が低下することから十分な吸収特性を得やすいが、着色がなかなか戻らないといった問題があり、所望の光吸収特性、調光速度に制御することは極めて困難である。
【0028】
また、上記調光層のフォトクロミック材料がP型であることで、後述する紫外光遮蔽層が紫外線吸収剤を含んでいても、これにより調光層が変化することを防止できる。
【0029】
つまり、紫外線吸収剤は、紫外光を吸収して熱などのエネルギーに変換して放出する。
しかし、P型フォトクロミック材料は、T型フォトクロミック材料のように熱により消色するのではなく光照射によって消色するため、紫外線吸収剤が放出する熱によって消色することを防止できる。
【0030】
上記P型フォトクロミック材料としては、紫外光照射前は、400nm~700nmの可視光の範囲に吸収が少なく透明であり、380nm以下の紫外光照射によって可視光を吸収し着色する材料を使用できるが、紫外光照射前は360nm以上に吸収がないことが好ましい。
【0031】
例えば、ジアリールエテン誘導体は、紫外光により閉環して着色し、太陽光などの可視光によって徐々に元の開環化合物へ戻り消色するので好ましく使用できる。
【0032】
上記ジアリールエテン誘導体は、上記アゾベンゼンの吸収が少ない波長域に吸収ピークを有することが好ましい。
【0033】
ジアリールエテン誘導体の吸光特性は、官能基の付加や原子置換など、ジアリールエテン誘導体の分子構造により調節できる。
【0034】
本発明においては、青色P型フォトクロミック材料(ジアリールエテン誘導体:DAE-0016:山田化学工業株式会社製)5gと、黄色P型フォトクロミック材料(ジアリールエテン誘導体:DAE-0097:山田化学工業株式会社製)5gとをそれぞれ1Lの酢酸エチルに溶解し、これらを1:1の割合で混合して用いた。
青色P型フォトクロミック材料の紫外線照射前後の吸収特性を図4、黄色P型フォトクロミック材料の紫外線照射前後の吸収特性を図5、混合したP型フォトクロミック材料の紫外線照射前後の吸収特性を図6に示す。
【0035】
混合したP型フォトクロミック材料は、紫外線照射前は350nm以下の紫外部に吸収を有し、360nm以上には吸収がなかった。
また、紫外光照射後には、可視部の最大吸収ピークが480nmであり、420~620nmの範囲で吸光度が0.1以上、450~520nmの範囲で吸光度0.2以上を示し、赤味がかった黒色を呈していた。
【0036】
調光層の厚さは、必要とされる吸光度やフォトクロミック材料の濃度などにもよるが、10~100μmであることが好ましい。
【0037】
(紫外光遮蔽層)
上記紫外光遮蔽層は、画像表示体の背面側からの紫外光を遮蔽する層であり、紫外線吸収剤や、紫外光乱反射剤を含む透明フィルムである。
【0038】
上記紫外線吸収剤としては、波長400nm以下の紫外部の光を吸収し、可視部の光は吸収せず、着色性の少ない従来公知の紫外線吸収剤を使用でき、例えば、ベソゾフェノン誘導体、サリチル酸エステル誘導体、トリアゾール誘導体、アクリロニトリル誘導体を挙げることができる。
【0039】
紫外光乱反射剤としては、酸化チタンや酸化亜鉛などを挙げることができるが、紫外光遮蔽層と調光層とが近接しているため、紫外光の調光層側への影響に留意する必要がある。
【0040】
紫外光遮蔽層の厚さは、紫外線吸収剤の種類や濃度などにもよるが、50~150μmであることが好ましい。
【0041】
(透明基板)
上記透明基板としては、ガラスや樹脂等を使用できる。
【0042】
<投光部材>
投光部材は、光源と投写レンズとこれらを制御する制御装置とを有する。
上記光源は、第1紫外光源と第2紫外光源とを有し、必要に応じて可視光源を備えて成る。
【0043】
第1紫外光の光源は、上記光透過散乱層の光散乱性を変化させる第1の紫外光を発光する光源である。第1の紫外光は光透過散乱層のアゾベンゼンの吸収帯である350nm以上380nm以下にピーク波長を有すればよいが、アゾベンゼンの最大吸収ピークの±5nmの範囲内にピークを有する紫外光であることが好ましい。
【0044】
第2紫外光の光源は、上記調光層の明るさを変化させる第2の紫外光を発光する光源であり、第2の紫外光は320nm以上350nm未満にピーク波長を有すればよいが、光透過散乱層のモル吸光係数の最大吸収ピークの半値幅となる波長の範囲外にピーク波長を有することが好ましい。
【0045】
第2の紫外光のピーク波長が光透過散乱層のモル吸光係数の最大吸収ピークの半値幅となる波長の範囲外であることで、第2の紫外光が光透過散乱層で吸収されず、調光層まで届くので、調光層の応答性を向上させ、かつ調光層を暗くしてコントラストが高い画像の表示が可能になる。
【0046】
また、上記第2の紫外光のピーク波長は、315nmよりも長波長であることが好ましい。
紫外光は、その波長域によって、一般に、UV-A(400~315nm)、UV-B(280~315nm)、UV-C(280~190nm)に区分されており、波長の短い紫外光ほど生体の健康に及ぼす影響が大きいと言われている。
第2の紫外光のピーク波長が、315nmよりも長波長であることで生体への影響が小さく安全である。
【0047】
上記光源としては、LEDや半導体レーザー等を使用できる。
これらの光源は、高圧水銀ランプのように多数のスペクトルを放射するのではなく、放射スペクトルの幅が10nm~20nmと狭い。したがって、第1の紫外光と第2の紫外光の波長域の重なりを最小限にできるので、315nm~380nmの狭い波長域内で、光透過散乱層と調光層とを選択的に変化させることが可能である。
【0048】
投光部材は、さらに可視光の光源を備えることができる。
可視光源を備えることで、白濁化した光透過散乱層をスクリーンとして可視光の着色画像を表示することができる。また、調光層のジアリールエテン誘導体を開環化合物させる波長の可視光を照射するとで、調光層を素早く消色させることができる。
【0049】
調光層を消色させる可視光の波長としては、ジアリールエテン誘導体にもよるが、450~500nm、又は580nm~600nmにピーク波長を有する可視光を使用できる。
【0050】
上記投光部材は、上記第1の紫外光の光源と上記第2の紫外光の光源と可視光の光源とを別々に備える、複数の部材から成る別体の部材であってもよいが、上記第1の紫外光の光源と上記第2の紫外光の光源、又は、これらの光源と可視光の光源とを有し、1組の投写レンズから投写を行う一体化した投光部材であることが好ましい。
投光部材が一体化していることで小型化できる。
【0051】
複数の光源からの光を1組の投写レンズから投写する方法としては、ダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズム、波長変換フィルターを用いたカラーホイール、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit)などを用いる方法を挙げることができる。
【0052】
ダイクロイックミラーを用いて一体化した投光部材の例を図7に示す。
ダイクロイックミラーは、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する光学素材であるので、図7に示すように、第1紫外光の光源、第2紫外光の光源、及び可視光の光源それぞれからの光を1本の光に合成して1組の投写レンズから投写を行うことが可能である。
【0053】
ダイクロイックプリズムは、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する反射面を複数備えるプリズムであり、複数の反射面がクロスする構造のプリズムを用い、反射面それぞれに対し、対応する特定の波長の光を入射させることで、各反射面から入射した波長の光を合成することができる。
【0054】
波長変換フィルターを用いたカラーホイールを用いる方法は、入射光を所望の波長の光に変換する波長変換材(蛍光材)と透明部分とを有する波長変換フィルターのカラーホイールを回転させる。これに使用する光のうち、最も短波長の光をレーザーダイオードから照射し、該短波長の光を波長変換材で所望の波長の光に変換することで、照射した波長の光と変換された所望の波長の光とが交互に出射される。
【0055】
平面光波回路は、複数の導波路を近接させ、一方の導波路からの光を他方の導波路に乗り移らせて合波する方向性結合器を用いた回路である。
【0056】
本発明の表示装置は、例えば、自動車のフロントガラスやショーウィンドウに好適に使用できる。
【0057】
上記表示装置は、光透過散乱層と調光層とをそれぞれ単独に変化させることが可能であるので、以下のような動作が可能である。
【0058】
第1の紫外光のみを投写すると、光透過散乱層のみが白濁してすりガラスのようになるので、外部からの光が直接投光部材側(車内)に直接入射せずに散乱し、眩惑を防止することができる。
【0059】
第2の紫外光のみを投写すると、調光層のみが暗くなるので、外部からの光量を減少させ、サングラスのような光量を抑えたクリアな視界が得られる。
【0060】
第1の紫外光と第2の紫外光とを同時に投写すると、光透過散乱層が白濁し、調光層が暗くなるので、外部からの光を遮光することができる。
【0061】
また、第1の紫外光と第2の紫外光とで、同じ画像を同時に投写すると上記画像の部分のみが遮光され、遮光された部分によるモノクロ画像のメッセージ表示を表示できる。
【0062】
さらに、第1の紫外光と第2の紫外光とを同時に投写した状態では、光透過散乱層がスクリーンとして機能するので、ここに可視光の着色画像を表示することで、投光部材側(車内)に対するメッセージを表示できる。
【0063】
外部へのメッセージ表示も可能である。
第1の紫外光を投写して光透過散乱層をスクリーンとし、ここに可視光の着色画像を表示すると、可視光の着色画像が散乱すると共に外部にも透過するので、外部から着色画像のメッセージを確認できる。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0065】
透明ガラス上に、ネマティック液晶分子と構造式(2)で示すアゾベンゼン分子とを含有する厚さ20μmの液晶層を厚さ100μmのPETフィルムで挟んだ厚さ220μmの光透過散乱層、図6に示す吸収特性を有するジアリールエテン誘導体を含有する厚さ100μmの調光層、ベソゾフェノン誘導体を含有する厚さ100μmの紫外光遮蔽層を順に積層し、さらに透明ガラスを積層して画像表示体を得た。
【0066】
365nmにピークを有する第1の紫外光と、320nmにピークを有する第2の紫外光とを備える投光部材を上記画像表示体の光透過散乱層側に対向して配置し表示装置を得た。
【0067】
[実施例1]
320nmにピークを有する第2の紫外光を、10mW/cmの強度で画像表示体に投写し、投写開始からの経過時間(t)に対する画像表示体の白色光の透過率を測定した。測定結果を図8に示す。
【0068】
[比較例1]
第2の紫外光として、365nmにピークを有する第1の紫外光を10mW/cmの強度で画像表示体に投写し投写開始からの経過時間(t)に対する画像表示体の白色光の透過率を測定した。測定結果を図8に示す。
【0069】
320nmにピークを有する第2の紫外光を用いた実施例1は、画像表示体の白色光(可視光)の透過率が大きく低下した。
これに対し、365nmにピークを有する第1の紫外光を用いた比較例1は、光透過散乱層と調光層とを合わせても白色光の透過率が実施例1よりも大きかった。
【0070】
図8の結果から、本発明の表示装置は、第1の紫外光のピーク波長とは異なるピーク波長の第2の紫外光を投写することで、光強度を上げることなく調光層を暗くすることができ、コントラストの高い画像を表示できることがわかる。
【符号の説明】
【0071】
1 表示装置
2 画像表示体
21 透明基板
22 光学特性変化部材
221 光透過散乱層
222 調光層
223 紫外光遮蔽層
3 投光部材
31 第1の紫外光の光源
32 第2の紫外光の光源
33R 可視光の光源(赤)
33G 可視光の光源(緑)
33B 可視光の光源(青)
34 投写レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8