(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】会計システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20240719BHJP
【FI】
G06Q40/12
(21)【出願番号】P 2023113748
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-08-09
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019681
【氏名又は名称】株式会社コムテック
(73)【特許権者】
【識別番号】323004916
【氏名又は名称】株式会社samurai cloud
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 剛
【審査官】橋沼 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164604(JP,A)
【文献】特開2018-073323(JP,A)
【文献】特開2001-076064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを備えた会計システムであって、
前記コンピュータは、
予め定められた
貸借対照表に係る勘定科目
ごとの金額算定の要素情報を管理するデータに基づき、前記金額算定の要素情報を予め定められた財務諸表に係る勘定科目の借方又は貸方に対応付けた対応関係に基づいて、経済的取引事象を構成する数値であって前記
財務諸表に係る勘定科目の借方合計と貸方合計の期首から期末における合計残高試算表を作成するための数値を入力部によって入力することで得られた金額であり、かつ、各々の前記
財務諸表に係る勘定科目の残高を算出するための金額算定の要素に基づいて計算した金額の仕訳を行い、
前記仕訳によって得られたデータから
前記財務諸表を作成
し、
前記財務諸表は、前記貸借対照表及び損益計算書を含み、
前記対応関係は、
前記借方に分類される資産、前記貸方に分類される負債、及び前記貸方に分類される純資産に、前記貸借対照表に係る勘定科目を対応付けた関係と、
前記借方に分類される費用、及び前記貸方に分類される収益に、前記損益計算書に係る勘定科目を対応付けており、かつ、前記貸借対照表に係る勘定科目に前記損益計算書に係る勘定科目を対応付けた関係と、を含み、
前記コンピュータは、前記貸借対照表に係る勘定科目の金額を当該勘定科目に対応する前記損益計算書に係る勘定科目に計上することで、前記損益計算書を作成する、会計システム。
【請求項2】
前記財務諸表は、キャッシュフロー計算書を含み、
前記対応関係は、前記借方に分類される資産、前記貸方に分類される負債、及び前記貸方に分類される純資産に、前記
貸借対照表に係る勘定科目を対応付けており、
前記コンピュータは、前記仕訳によって得られたデータから前記キャッシュフロー計算書を作成する、請求項1に記載の会計システム。
【請求項3】
表示部を備え、
前記コンピュータは、業務に応じて前記金額の入力が行われる入力画像を前記表示部に表示する、請求項1
又は請求項
2に記載の会計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、会計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
会計システムを用いて財務諸表を作成する場合、ユーザは会計システムにデータを入力する。会計システムは、ユーザが入力したデータに基づいて財務諸表を作成する。ユーザが入力したデータは、勘定科目に対応付けられた金額を仕訳したデータである。この種の会計システムとしては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の会計システムは、財務諸表の1つである貸借対照表を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
財務諸表を作成するためには、ユーザが仕訳を行う必要がある。仕訳は、企業が行う取引の性質に応じて適切な勘定科目を借方、及び貸方に分類することである。仕訳が持つ情報は、日付、勘定科目(借方・貸方)、部門(借方・貸方)、税区分(借方・貸方)及び摘要(取引の内容を簡潔に明示した情報)を含んでいる。勘定科目の選択及びその勘定科目が借方に属するか、貸方に属するかを判定するためには、会計に関する知識を要する。このため、ユーザが会計の知識を有さない場合、財務諸表を作成できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する会計システムは、コンピュータを備えた会計システムであって、前記コンピュータは、予め定められた勘定科目を借方又は貸方に対応付けた対応関係に基づいて、入力部によって入力された金額の仕訳を行い、前記仕訳によって得られたデータから財務諸表を作成する。
【0006】
勘定科目を借方又は貸方に対応付けた対応関係に基づいて、コンピュータは、勘定科目に対応付けられて入力された金額を借方又は貸方に分類することができる。勘定科目を借方又は貸方に対応付けておくことで、ユーザ自身が仕訳を行う必要がない。このため、ユーザが会計に関する知識を有していなくても、入力部によって勘定科目に対応付けて金額を入力することで、財務諸表を作成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、財務諸表を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は会計システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は役員退職金に関する表示画像の一例を示す図である。
【
図3】
図3は役員退職金に関する入力画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は売上債権管理に関する入力画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は売掛金の滞留状況に関する表示画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は会員権に関する入力画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は賃貸物件に関する入力画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は貸借対照表を作成する際に会計システムが行う処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は貸借対照表に対応する合計残高試算表の一例を示す図である。
【
図14】
図14(a)は損益計算書に対応する合計残高試算表の一例を示す図、
図14(b)は一部の細目を非表示にした合計残高試表の一例を示す図である。
【
図15】
図15はキャッシュフロー計算書の一例を示す図である。
【
図16】
図16はキャッシュフロー計算書に対応する表示画像の一例を示す図である。
【
図17】
図17はキャッシュフロー計算書に対応する各勘定科目金額の増減の内訳を入力するための入力画像の一例を示す図である。
【
図18】
図18は株主資本等変動計算書の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
会計システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、会計システム10は、コンピュータ11を備える。コンピュータ11は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレット端末である。コンピュータ11は、プロセッサ12、及び記憶部13を備える。プロセッサ12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。
【0010】
会計システム10は、コンピュータ11に接続された補助記憶装置14を備える。補助記憶装置14は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、又はソリッドステートドライブである。補助記憶装置14は、会計プログラムPGを記憶している。
【0011】
会計システム10は、コンピュータ11に接続された入力部15を備える。入力部15は、ユーザの操作を受け付ける。入力部15は、ユーザの操作を入力信号としてコンピュータ11に入力する。入力部15は、例えば、マウス、キーボード、マイク、又はタッチパネルである。
【0012】
会計システム10は、コンピュータ11に接続された表示部16を備える。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。表示部16の表示内容は、コンピュータ11によって更新される。
【0013】
会計システム10は、コンピュータ11が会計プログラムPGを実行することによって機能する。本実施形態の会計システム10は、ユーザが所持するコンピュータ11に会計プログラムPGを実行させるものである。会計システム10は、コンピュータ11をサーバとして用いてWebサービスとして提供されてもよい。ユーザは、例えば、企業である。
【0014】
<入力画面>
ユーザは、入力部15を用いて種々のデータを会計システム10に入力する。例えば、ユーザの操作によって、会計システム10は、表示部16にグラフィカルユーザインタフェースとして入力画像を表示する。ユーザは、入力画像に従って金額等のデータの入力を行う。入力画像は、例えば、業務に応じて分類されている。ユーザは、自身が入力を行う業務をメニューから選択する。これにより、表示部16には、ユーザが入力を行う業務に対応した入力画像が表示される。業務は、例えば、役員退職金管理、売上債権管理、会員権管理、賃貸管理といったユーザが金額を入力する際に行う作業である。入力画像に従って入力されたデータは、入力データD1として補助記憶装置14に記憶される。以下、入力画像の一例について説明を行う。
【0015】
図2に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて役員退職金に関する表示画像I1が表示される。この表示画像I1は、例えば、メニューから役員退職金管理を選択することで表示される画像である。表示画像I1には、役員に対応付けて役員退職金の算定に関する項目が表示される。
図2に示す例では、役員に対応付けて、役職、就任日、退任日、及び任期が表示される。役職、就任日、退任日、及び任期は、金額算定の要素である。これらの金額算定の要素から、役員退職慰労引当金が算出される。そして、算出結果である役員退職慰労引当金が表示画像I1に表示される。コンピュータ11は、基礎額に倍率を乗算した金額及び任期に応じて役員退職慰労引当金を算出する。倍率は、例えば、役職によって異なる値であってもよい。任期は、就任日及び役職変更日から算出できてもよい。表示画像I1には、役員に対応付けて報酬月額等の項目が表示されてもよい。役員退職慰労引当金は、役員の将来における退職慰労金の支払に備えて設定される引当金である。
【0016】
表示画像I1は、入力画像表示領域A1を備える。入力画像表示領域A1は、表示画像I1に表示される項目に対応した内容を入力する際に操作される領域である。例えば、入力画像表示領域A1は、マウスによるクリック操作、又はタップ操作される。
【0017】
図3に示すように、入力画像表示領域A1が操作されることによって表示部16には入力画像I2が表示される。入力画像I2は、表示画像I1に表示される項目に対応した入力領域A2を備える。詳細にいえば、入力画像I2は、少なくとも金額算定の要素となる項目を入力可能な入力領域A2を備える。入力画像I2は、セグメント及び部門を入力可能な入力領域A2を含んでいてもよい。セグメントは、同一企業内を任意の分類した区分である。例えば、企業が複数の事業を営んでいる場合、事業によってセグメントが分類されている。部門は、例えば、セグメントを細分化した区分である。ユーザは、入力領域A2を操作することによって入力画像表示領域A1に対応する項目を入力することができる。これにより、コンピュータ11は、入力された金額算定の要素に応じて、表示画像I1に役員退職慰労引当金を表示することができる。入力画像I2は、基礎額に乗算される倍率を入力する入力領域A2を備えていてもよい。役員退職慰労引当金は、勘定科目の一例である。
【0018】
図4に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて売上債権に対応する金額を入力する入力画像I3が表示される。この入力画像I3は、例えば、メニューから売上債権管理を選択することで表示される画像である。ユーザは、入力部15を操作することで請求先毎に請求額を入力することができる。請求額は、月毎に区分して入力される。請求額は、請求先に対して支払いを要求した金額の合計である。請求額は、ユーザ自身が入力してもよい。請求額は、取引管理システムと会計システム10を連携させることによって自動で入力されるようにしてもよい。取引管理システムは、例えば、取引の内容をデータベース化するシステムであって取引の内容には当該取引での請求額、及び請求日が含まれる。
【0019】
ユーザは、入力部15を操作することで請求額に対する回収額、及び減算額を入力する。回収額は、請求額に対して回収した金額である。回収額は、現金回収額、預金回収額、受取手形回収額、及び電子記録債権を含む。現金回収額は、現金で回収した金額である。預金回収額は、普通預金回収額及び当座預金回収額を含む。預金回収額は、銀行振込で回収した金額である。受取手形回収額は、手形で回収した金額である。電子記録債権回収額は、電子記録債権で回収した金額である。
【0020】
減算額は、値引額、返品額、振込手数料、相殺額、前受金充当、貸倒引当金、及び貸倒損失額を含む。減算額は、回収とは異なる要因によって請求額から減算される金額である。減算額は、例えば、入力画像I3では、「その他」と表記される。値引額は、請求額から控除する金額である。返品額は、請求先から返品されたことに伴い請求額から控除する金額である。振込手数料は、銀行振込の際に負担することとなる手数料である。相殺額は、請求先に対して債務を負っている場合に当該債務との相殺によって請求額から控除する金額である。前受金充当は、前受金を受領している場合に当該前受金から充当する金額である。貸倒引当金は、請求額を回収できなかった場合に備えて設定される引当金を充当した金額である。貸倒損失は、請求額のうち回収できなかった金額である。
【0021】
コンピュータ11は、請求額から回収額及び減算額を減算した金額を未回収額として算出する。例えば、20XX年の5月末時点での未回収額が100であり、20XX年6月に現金として60を回収できたとする。この場合、未回収額として40が算出される。未回収額は、月毎に算出される。コンピュータ11は、月毎の請求額、月毎の回収額、月毎の減算額、及び月毎の未回収額から、請求額の合計、回収額の合計、減算額の合計、及び未回収額の合計を算出する。請求額の合計、回収額の合計、減算額の合計、及び未回収額の合計は、所定期間の間の合計である。所定期間は、例えば、事業年度である。所定期間は、ユーザが任意に設定可能であってもよい。請求額から回収額及び減算額を控除した未回収額は、売掛金の残高である。売掛金は、勘定科目の一例である。
【0022】
図5に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて売掛金の滞留状況に関する表示画像I4が表示される。コンピュータ11は、入力画像I3を用いて入力された金額から売掛金の滞留状況に関するデータを作成し、このデータに従って表示画像I4の表示を行う。滞留状況は、残高内訳として所定の滞留期間毎に分類されている。滞留期間の分類は、例えば、当月、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月~1年未満、及び1年超である。コンピュータ11は、請求額に対応する月からの経過期間に応じて請求額の分類を行う。例えば、20XX年5月の請求額が20XX年6月に未回収の場合、請求額が1ヶ月前に分類されて表示画像I4として表示される。
【0023】
図6に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて会員権に対応する金額を入力する入力画像I5が表示される。この入力画像I5は、例えば、メニューから会員権管理を選択することで表示される画像である。
図6に示す例では、会員権の内容、取得価額、取得価額の内訳、過年度評価減株券、評価後BS価額、評価後BS価額の内訳、時価、及び貸倒引当金が表示される。内容は、株券形式、預託金形式、及びハイブリッド形式から選択することができる。例えば、ユーザは、ドロップダウンメニューから株券形式、預託金形式、及びハイブリッド形式のいずれかを選択することができる。ハイブリッド形式は、株券形式、及び預託金形式の両方の性質を併せ持つ形式である。
【0024】
ユーザは、取得価額、取得価額の内訳、過年度評価減株券、及び時価に金額を入力する。取得価額は、会員権の取得に要した価額である。取得価額の内訳は、株券及び預託保証金である。株券形式の場合、株券に対応する取得価額を入力する。預託形式の場合、預託保証金に対応する取得価額を入力する。ハイブリッド形式の場合、株券、又は預託保証金に対応する取得価額を入力する。ハイブリッド形式の場合、株券、又は預託保証金に対応する取得価額の一方を入力することで、入力された一方の内訳と取得価額との差分がもう一方の内訳に入力される。例えば、株券に価額を入力すると、取得価額と株券に対応する価額との差分が預託保証金に入力される。過年度評価減株券は、過去に低下した会員権の評価額である。時価は、現時点での会員権としての評価額である。
【0025】
コンピュータ11は、入力された金額から評価後BS価額、及び貸倒引当金を算出する。コンピュータ11は、取得価額に入力された金額から過年度評価減株券に入力された金額を減算した値を評価後BS価額として算出する。コンピュータ11は、評価後BS価額より時価が低い場合、評価後BS価額の内訳のうち預託保証金と時価との差額を貸倒引当金として算出する。
【0026】
図7に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて賃貸物件に関する入力画像I6が表示される。この入力画像I6は、例えば、メニューから賃貸管理を選択することで表示される画像である。
図7に示す例では、物件情報項目、契約期間項目、及び資産除去債務算定項目が表示される。物件情報項目は、物件名などの賃貸物件に関する情報を入力するための項目である。契約期間は、賃貸契約の期間を入力するための項目である。資産除去債務算定項目は、資産除去債務を算定するための情報を入力する項目である。資産除去債務は、不動産の賃貸契約終了時の原状回復費用の見積額を含む。
【0027】
資産除去債務算定項目は、除去費用見積額と、割引率と、を含む。除去費用見積額は、将来発生する除去費用の見積額である。除去費用見積額は、例えば、業者などから金額を取得可能な場合、業者から取得した金額を入力してもよい。1坪当たりの除去費用を把握できる場合、不動産の坪数と1坪当たりの除去費用から除去費用見積額を算出してもよい。割引率は、将来の金額の現在における価値を定めるために用いる。
【0028】
コンピュータ11は、入力画像I6に入力された金額に基づいて資産除去債務の金額を算出する。詳細にいえば、コンピュータ11は、除去費用見積額に入力された金額を、割引率を用いて現在における金額として算出するとともに、算出された金額を資産除去債務とする。また、同額が当該資産除去債務に関連する有形固定資産の帳簿価額(以下、「増加分帳簿価額」という。)に加算される。
【0029】
資産除去債務は、時間の経過に伴い毎期割引率を乗じた金額(利息費用)が加算され、不動産の賃貸契約終了時(除去費用発生時)に精算される。増加分帳簿価額は、減価償却を通じて、契約期間にわたり各期に費用分配される。コンピュータ11は、会計基準に則り、利息費用及び減価償却費を算出する。例えば、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」では、「資産計上された資産除去債務に対応する除去費用(増加分帳簿価額)は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する。」と定められている。コンピュータ11は、契約期間に応じて月毎の資産除去債務を算出するとともに、割引率に応じて当該資産除去債務を月毎に増加させていく。さらに、減価償却を通じて、増加分帳簿価額を各期に費用配分していく。
【0030】
<貸借対照表>
図8に示すように、コンピュータ11は、入力部15によって入力された金額から貸借対照表BSを作成する。貸借対照表BSは、勘定科目と金額とが対応付けられた財務諸表の1つである。コンピュータ11は、会計基準に則って財務諸表を作成する。会計基準は、例えば、会社法や金融商品取引法等の法規、会計基準を定める団体により策定された基準に準拠したものである。
【0031】
貸借対照表BSの項目は、資産と、負債と、純資産と、を備える。資産は、借方に分類される。負債及び純資産は、貸方に分類される。資産、負債、及び純資産のそれぞれには、勘定科目が属する。
図8には、資産、負債、及び純資産のそれぞれに対応する勘定科目の一例を示す。
【0032】
コンピュータ11が貸借対照表BSを作成する際に行う処理について説明する。貸借対照表BSの作成は、例えば、ユーザが特定の操作を行うことによって開始される。例えば、ユーザが、月を指定することによって、指定された月時点での貸借対照表BSが作成される。
【0033】
図9に示すように、ステップS1において、コンピュータ11は、入力画像に従って入力された金額・情報を入力データD1から取得する。情報は、金額に対応付けられている。例えば、入力画像I2を用いて入力された金額には、役員退職慰労引当金が対応付けられているため、金額に対応付けられた情報として、当該金額が役員退職慰労引当金である旨を示す情報が取得される。情報は、セグメント、及び部門を含んでいてもよい。
【0034】
次に、ステップS2において、コンピュータ11は、入力データD1から取得した金額・情報に基づき自動で仕訳の生成を行う。仕訳は、入力された金額を借方又は貸方に分類し、日付を付することである。仕訳は、入力された金額に勘定科目、部門、セグメント、税区分、及び摘要を付することを含んでいてもよい。税区分は、消費税の対象か否か、消費税の対象となる場合の消費税の税率の区分である。コンピュータ11は、マスターデータを用いて仕訳を行う。コンピュータ11の仕訳により、入力された金額を借方又は貸方に分類したデータを得ることができる。
【0035】
図10に示すように、マスターデータDB1は、予め定められた勘定科目を借方又は貸方に分類した対応関係をデータベース化したものである。データベース化されている勘定科目は、金融庁が公開しているタクソノミに基づいて作成されている。例えば、タクソノミのうち類似する勘定科目については1つの勘定科目に集約している。また、タクソノミに含まれていない勘定科目であっても商慣習で使用されている勘定科目などがマスターデータDB1には含まれる。
【0036】
勘定科目には、貸借区分、種別、税区分、補助項目、部門区別要否及びセグメント区別要否が対応付けられている。貸借区分は、勘定科目が貸借対照表BSの借方及び貸方のいずれに属するかを区分する項目である。種別は、勘定科目が貸借対照表BSの資産、負債、及び純資産のいずれに属するかを区分する項目である。勘定科目には、貸借区分に応じて借方又は貸方が対応付けられている。勘定科目には、種別に応じて資産、負債、又は純資産が対応付けられている。
【0037】
補助項目は、ユーザが入力可能な項目である。勘定科目は、補助項目に応じて細分化される。例えば、売掛金を請求先毎に個別に管理したい場合、補助項目に請求先を入力する。これにより、請求先毎に売掛金の内訳を貸借対照表BSに表示することができる。
【0038】
部門区別要否は、部門毎に会計の管理を行う場合に入力される項目である。ユーザは、部門毎に会計の管理を行うか否かを選択することができる。部門毎に会計を行う場合、部門区別要否の項目に、部門名が入力される。例えば、現金の管理について経理部が行う場合には、現金に対応する部門区別要否の項目に、経理部を入力すればよい。部門区別要否は、ユーザが任意に設定できてもよいし、デフォルトの部門が設定されていてもよい。
【0039】
セグメント区別要否は、セグメント毎に会計の管理を行う場合に入力される項目である。ユーザは、セグメント毎に会計の管理を行うか否かを選択することができる。セグメント毎に会計を行う場合、セグメント区別要否の項目に、セグメント名が入力される。例えば、現金の管理について経理部が行う場合には、経理部に対応するセグメントとして共通が入力される。この場合、経理部は全てのセグメントで共通の部門であることを意味する。部門区別要否は、ユーザが任意に設定できてもよいし、デフォルトのセグメントが設定されていてもよい。
【0040】
コンピュータ11は、入力データD1から取得した金額・情報とマスターデータDB1との照合を行うことで、金額を借方又は貸方に分類する。入力画像I2を用いて入力された役員退職慰労引当金であれば、貸方に分類される負債に属すると判定することができる。入力画像I3を用いて入力された現金回収額であれば、借方に分類される現金に属すると判定することができる。同様に、未回収額は、借方に分類される売掛金に属すると判定することができる。入力画像I6を用いて算出された資産除去債務であれば、貸方に属すると判定することができる。マスターデータDB1は、例えば、補助記憶装置14に記憶される。
【0041】
次に、ステップS3において、コンピュータ11は、入力された金額を借方又は貸方に分類したデータから貸借対照表BSを作成する。コンピュータ11は、ステップS2で仕訳を行った分類毎に金額を計算するとともに、計算によって得られた合計を貸借対照表BSの該当欄に反映する。役員退職慰労引当金であれば、事業年度における各役員への役員退職慰労引当金の合計を貸借対照表BSの役員退職慰労引当金欄に反映する。現金・預金であれば、事業年度における現金、小口現金、当座預金等の合計を貸借対照表BSの現金・預金欄に反映する。売掛金であれば、事業年度における未回収額の合計を貸借対照表BSの売掛金欄に反映する。このようにして、入力データD1から取得した金額・情報をマスターデータDB1に基づいて仕訳をして、貸借対照表BSの各欄に反映することで、貸借対照表BSを作成することができる。作成された貸借対照表BSは、表示部16に表示されてもよい。
【0042】
コンピュータ11は、部門毎に貸借対照表BSを作成してもよい。例えば、コンピュータ11は、部門区別要否に入力された部門に応じた貸借対照表BSを作成してもよい。コンピュータ11は、セグメント毎に貸借対照表BSを作成してもよい。例えば、コンピュータ11は、セグメント要否に入力されたセグメントに応じた貸借対照表BSを作成してもよい。企業単位、部門単位、又はセグメント単位のいずれで貸借対照表BSを作成するかは、ユーザが任意に選択可能である。
【0043】
<損益計算書>
図11に示すように、コンピュータ11は、入力部15によって入力された金額から損益計算書PLを作成する。損益計算書PLは、勘定科目と金額とが対応付けられた財務諸表の1つである。損益計算書PLの項目は、例えば、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、及び当期純利益を含む。損益計算書PLの項目は、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失、売上高、営業外収益、及び特別利益を含んでいてもよい。売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、及び特別損失は、借方に分類される費用の細目である。売上高、営業外収益、及び特別利益は、貸方に分類される収益の細目である。
【0044】
売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、及び特別損失のそれぞれには、借方に分類される勘定科目が属する。売上原価として計上される勘定科目は、例えば、仕入高、期首商品棚卸高、仕入返品、及び期末商品棚卸高である。販売費及び一般管理費として計上される勘定科目は、例えば、給与、役員報酬、役員退職金、貸倒損失、及び通信費である。営業外費用として計上される勘定科目は、例えば、支払利息、及び為替差損である。特別損失として計上される勘定科目は、例えば、固定資産売却損、及び災害損失である。このように、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、及び特別損失には、複数の勘定科目が属する。損益計算書PLの項目は、これらの勘定科目を含んでいてもよい。
【0045】
売上高、営業外収益、及び特別利益のそれぞれには、貸方に分類される勘定科目が属する。売上高として計上される勘定科目は、例えば、売上高、売上値引き、及び売上戻しである。営業外収益として計上される勘定科目は、例えば、受取利息、受取配当金、及び仕入割引である。特別利益として計上される勘定科目は、例えば、固定資産売却益、及び投資有価証券売却益である。このように、売上高、営業外収益、及び特別利益には、複数の勘定科目が属する。損益計算書PLの項目は、これらの勘定科目を含んでいてもよい。
【0046】
コンピュータ11が損益計算書PLを作成する際に行う処理について説明する。
コンピュータ11は、入力画像に従って入力された金額・情報を入力データD1から取得する。本実施形態において、コンピュータ11は、入力画像に従って入力された入力データD1であって貸借対照表BSの勘定科目に対して紐付けられた金額・情報を表す入力データD1を取得する。
【0047】
図12に示すように、コンピュータ11は、入力データD1から取得した金額・情報に基づき自動で仕訳の作成を行う。コンピュータ11は、マスターデータDB2に従って仕訳する。
【0048】
マスターデータDB2は、貸借対照表BSの勘定科目に対して損益計算書PLの勘定科目を対応付けたものである。また、損益計算書PLの勘定科目には、貸借区分、及び種別が対応付けられている。貸借区分は、損益計算書PLの勘定科目が損益計算書PLの貸方及び借方のいずれに属するかを区分する項目である。種別は、損益計算書PLの勘定科目が損益計算書PLの費用、及び収益のいずれに属するかを区分する項目である。マスターデータDB2は、予め定められた勘定科目を借方に分類される費用、及び貸方に分類される収益に対応付けた対応関係を規定している。このマスターデータDB2を用いて、貸借対照表BSの勘定科目に対応付けられた金額が、損益計算書PLの勘定科目のいずれに対応するかを把握することができる。例えば、貸借対照表BSの勘定科目である役員退職慰労引当金には、損益計算書PLの勘定科目として役員退職慰労引当金繰入額が対応付けられている。貸借対照表BSの勘定科目である貸倒引当金には、損益計算書PLの勘定科目として貸倒引当金繰入額が対応付けられている。損益計算書PLの勘定科目である支払利息には、貸借対照表BSの勘定科目として現金・預金が対応付けられている。例えば、役員退職慰労引当金繰入額は、販売費及び一般管理費として計上される。貸借対照表BSの勘定科目のうち損益計算書PLの作成に必要となる勘定科目の全ては、損益計算書PLの勘定科目に対応付けられている。貸借対照表BSの勘定科目のうち損益計算書PLとの関連がない勘定科目については、損益計算書PLとの対応付けが行われていない。例えば、貸借対照表BSの勘定科目である評価・換算差額等は、損益計算書PLには反映されないため、損益計算書PLの勘定科目との対応付けは行われていない。
【0049】
コンピュータ11は、貸借対照表BSの勘定科目に対応付けられた金額を損益計算書PLの勘定科目として計上する。そして、コンピュータ11は、損益計算書PLの勘定科目毎に金額を算出することによって損益計算書PLを作成する。例えば、販売費及び一般管理費であれば、役員退職慰労引当金繰入額など、販売費及び一般管理費として計上される勘定科目の合計金額が損益計算書PLの販売費及び一般管理費欄に反映される。このように、貸借対照表BSの勘定科目に損益計算書PLの勘定科目を対応付けることで、貸借対照表BSから損益計算書PLを作成できるようにしている。
【0050】
詳細にいえば、コンピュータ11は、売上原価に属する勘定科目の合計の金額を算出する。同様に、コンピュータ11は、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失、売上高、営業外収益、特別利益、売上高、営業外収益、及び特別利益のそれぞれに属する勘定科目の合計の金額を算出する。コンピュータ11は、売上高-売上原価を売上総利益として算出する。コンピュータ11は、売上総利益-販売費及び一般管理費を営業利益として算出する。コンピュータ11は、営業利益+営業外収益-営業外費用を経常利益として算出する。コンピュータ11は、経常利益+特別利益-特別損失を税引前当期純利益として算出する。コンピュータ11は、税引前当期純利益-法人税等-法人税等調整額を当期純利益として算出する。そして、コンピュータ11は、算出した金額を損益計算書PLの各項目に反映することで損益計算書PLを作成する。
【0051】
<合計残高試算表>
コンピュータ11は、合計残高試算表を作成してもよい。合計残高試算表は、勘定科目の借方合計と貸方合計を所定期間毎にまとめたものである。所定期間は、ユーザが任意に選択することができる。例えば、合計残高試算表は、月単位で作成される。合計残高試算表は、貸借対照表BS及び損益計算書PLのそれぞれに対応して作成される。
【0052】
図13に示すように、貸借対照表BSに対応して作成される合計残高試算表TB1は、合計項目IT1と、細目IT2と、を備える。合計項目IT1、及び細目IT2のそれぞれに繰越残高、借方、貸方、及び残高が対応付けられている。合計項目IT1は、当該合計項目IT1に含まれる細目IT2の金額の合計金額が入力される項目である。例えば、
図13に示す例では、現金計、及び預金計が合計項目IT1である。現金計は、細目IT2として現金を含む。預金計は、細目IT2として当座預金、普通預金、定期預金、定期積立金、及び別段預金を含む。コンピュータ11は、入力データD1から合計残高試算表TB1の細目IT2に対応する金額を算出するとともに、細目IT2を合計することによって合計項目IT1の金額を算出する。これにより、コンピュータ11は、合計残高試算表TB1を作成することができる。
【0053】
図14(a)に示すように、損益計算書PLに対応して作成される合計残高試算表TB2は、合計項目IT3と、細目IT4と、を備える。合計項目IT3、及び細目IT4のそれぞれに繰越残高、借方、貸方、及び残高が対応付けられている。合計項目IT3は、当該合計項目IT3に含まれる細目IT4の金額の合計金額が入力される項目である。例えば、
図14(a)に示す例では、総売上高、及び売上原価が合計項目IT3である。総売上高は、細目IT4として売上、売上値引、及び売上割戻を含む。売上原価は、細目IT4として期首商品棚卸高、及び期首製品棚卸高等を含む。コンピュータ11は、入力データD1から合計残高試算表TB2の細目IT4に対応する金額を算出するとともに、細目IT4を合計することによって合計項目IT3の金額を算出する。これにより、コンピュータ11は、合計残高試算表TB2を作成することができる。
【0054】
コンピュータ11は、細目IT2,IT4のうち対応付けられる全ての金額が0のものを非表示にした合計残高試算表TB1,TB2を作成してもよい。例えば、
図14(a)に示す例では、期首製品棚卸高に対応付けられる金額が0である。この場合、
図14(b)に示すように、コンピュータ11は、期首製品棚卸高を非表示にした合計残高試算表TB2を作成してもよい。細目IT2,IT4のうち対応付けられる全ての金額が0のものを非表示にするか否かは、ユーザが選択可能であってもよい。
【0055】
<キャッシュフロー計算書>
図15に示すように、コンピュータ11は、キャッシュフロー計算書CFを作成する。キャッシュフロー計算書CFは、財務諸表の1つである。キャッシュフロー計算書CFの項目は、営業活動によるキャッシュフローと、投資活動によるキャッシュフローと、財務活動によるキャッシュフローと、現金及び現金同等物の増減額と、現金及び現金同等物の期首残高と、現金及び現金同等物の期末残高と、を備える。
【0056】
営業活動によるキャッシュフローは、営業活動による現金収支を示す。営業活動によるキャッシュフローは、例えば、当期純利益、減価償却費、研究開発費等の収支項目を含む。そして、これらの収支項目に対応する金額の合計額が、営業活動によるキャッシュフローに対応する金額として表示される。
【0057】
投資活動によるキャッシュフローは、投資活動による現金収支を示す。投資活動によるキャッシュフローは、例えば、有形固定資産の取得による支出、有形固定資産の売却による収入、及び無形固定資産の取得による支出等の収支項目を含む。そして、これらの収支項目に対応する金額の合計額が、投資活動によるキャッシュフローに対応する金額として表示される。
【0058】
財務活動によるキャッシュフローは、財務活動による現金収支を示す。財務活動によるキャッシュフローは、例えば、短期借入金の純増減額、社債の発行による収入、及び社債の償還による支出等の収支項目を含む。そして、これらの収支項目に対応する金額の合計額が、財務活動によるキャッシュフローに対応する金額として表示される。
【0059】
図16に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じてキャッシュフロー計算書CFに対応する表示画像I7が表示される。表示画像I7には、勘定科目に対応付けて、前期、当期、増減額、及び内訳が表示される。勘定科目は、貸借対照表BSの勘定科目である。前期には、勘定科目に対応して前期の金額が表示される。当期には、勘定科目に対応して当期の金額が表示される。増減額には、前期の金額と当期の金額との差分が表示される。前期、当期、及び増減額は、前期の貸借対照表BSと当期の貸借対照表BSに基づいてコンピュータ11が自動で入力することができるし、ユーザが手動で入力してもよい。内訳は、増減額の内訳である。
図16には、内訳の一例として、営業活動以外の(支出を伴う)増減、営業活動による増減、及び営業活動以外のPL項目による増減を図示する。内訳は、例えば、ユーザが入力する。
【0060】
図17に示すように、表示部16には、ユーザの操作に応じて上記した内訳を入力するための入力画像I8が表示される。入力画像I8は、例えば、表示画像I7の勘定科目をクリック操作、又はタップ操作すると表示される。入力画像I8は、勘定科目に対応して内訳を入力する画面である。入力画像I8は、例えば、車両運搬具の勘定科目に対応している。ユーザは、車両運搬具を取得した場合、取得に要した金額を取得に対応する項目に入力する。この金額は、営業活動以外の(支出を伴う)増減の項目のうち増加の項目に反映される。ユーザは、車両運搬具を売却した場合、売却により得た金額を売却に対応する項目に入力する。この金額は、営業活動以外の(支出を伴う)増減の項目のうち減少の項目に反映される。そして、入力画像I8によって入力された金額は、表示画像I7に反映される。このように、貸借対照表BSの勘定科目に対応して、金額の増減の内訳を入力することができる。
【0061】
コンピュータ11は、金額の増減の内訳からキャッシュフロー計算書CFを作成する。金額の増減の内訳には、それぞれキャッシュフロー計算書CFの収支項目が対応付けられている。これにより、コンピュータ11は、キャッシュフロー計算書CFの収支項目毎に金額の増減を把握することができる。コンピュータ11は、キャッシュフロー計算書CFの収支項目毎に金額を合計することによって、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、及び財務活動によるキャッシュフローの金額を算出する。コンピュータ11は、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、及び財務活動によるキャッシュフローの金額の合計を現金及び現金同等物の増減額として算出する。コンピュータ11は、前期のキャッシュフロー計算書CFから現金及び現金同等物の当期の期首残高を取得する。コンピュータ11は、現金及び現金同等物の増減額と現金及び現金同等物の期首残高との合計を現金及び現金同等物の期末残高として算出する。そして、コンピュータ11は、算出した金額をキャッシュフロー計算書CFに反映させることによってキャッシュフロー計算書CFを作成する。上記したように、コンピュータ11は、貸借対照表BSの勘定科目に対応して、金額を増減させることでキャッシュフロー計算書CFを作成する。
【0062】
<株主資本等変動計算書>
図18に示すように、コンピュータ11は、株主資本等変動計算書SSを作成する。株主資本等変動計算書SSは、財務諸表の1つである。株主資本等変動計算書SSの項目は、当期首残高、当期変動額、当期変動額合計、及び当期末残高を含む。これらの項目に対して、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権などの純資産の項目が対応付けられている。株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、及び株主資本合計を含む。資本剰余金は、資本準備金、その他資本剰余金、及び資本剰余金合計を含む。利益剰余金は、利益準備金、その他利益剰余金、及び利益剰余金合計を含む。その他利益剰余金は、積立金、及び繰越利益剰余金などを含む。評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金、及び評価・換算差額等合計などを含む。資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、株主資本合計、資本準備金、その他資本剰余金、資本剰余金合計、利益準備金、その他利益剰余金、利益剰余金合計、積立金、繰越利益剰余金、その他有価証券評価差額金、及び評価・換算差額等合計は勘定科目の一例である。
【0063】
コンピュータ11は、項目毎に金額を入力する。コンピュータ11は、前期の貸借対照表BSの純資産に基づき、当期首残高に金額を入力する。例えば、コンピュータ11は、前期の貸借対照表BSの純資産のうち資本剰余金を算出する際に、資本準備金とその他資本剰余金とを合計することで資本剰余金を算出している。コンピュータ11は、これらの金額を当期首残高に対応する資本準備金、その他資本剰余金、及び資本剰余金に入力すればよい。当期首残高に対応付けられたその他の項目についても同様である。
【0064】
コンピュータ11は、入力データD1を取得するとともに、入力データD1に基づいて当期の純資産に変動があったか否かを判定する。当期の純資産に変動があった場合、当期変動額に金額を入力する。当期変動額は、新株の発行、剰余金の配当、剰余金の配当に伴う利益準備金の積立て、当期純利益、自己株式の処分、及び株主資本以外の項目の当期変動額を含む。コンピュータ11は、当期の純資産に変動があった場合、これらの項目に対応する金額を入力する。
【0065】
コンピュータ11は、当期変動額の項目毎の合計の金額を算出するとともに、算出した金額を当期変動額合計に入力する。コンピュータ11は、当期首残高と当期変動額合計を合計した金額を当期末残高に入力する。これにより、コンピュータ11は、株主資本等変動計算書SSを作成する。
【0066】
[本実施形態の作用]
ユーザが入力画像を用いて金額を入力すると、入力データD1が蓄積されていく。コンピュータ11は、財務諸表を作成する際には、勘定科目を借方又は貸方に対応付けた対応関係に基づいて、入力された金額を借方又は貸方に分類する。この対応関係は、マスターデータDB1,DB2として補助記憶装置14に記憶されている。
【0067】
[本実施形態の効果]
(1)勘定科目を借方又は貸方に対応付けておくことで、ユーザ自身が仕訳を行う必要がない。このため、ユーザが会計に関する知識を有していなくても、入力部15によって金額を入力することで、財務諸表を作成することができる。
【0068】
(2)マスターデータDB1によって貸借対照表BSの勘定科目を借方、又は貸方に対応付けている。これにより、コンピュータ11は、仕訳によって得られたデータから貸借対照表BSを作成することができる。
【0069】
(3)マスターデータDB2によって損益計算書PLの勘定科目を借方、又は貸方に対応付けている。これにより、コンピュータ11は、仕訳によって得られたデータから損益計算書PLを作成することができる。
【0070】
(4)コンピュータ11は、業務に応じて金額の入力が行われる入力画像を表示部16に表示する。ユーザは、業務に応じて金額を入力すればよいため、金額を入力する際に、当該金額が対応する勘定科目を把握する必要がない。このため、ユーザが会計に関する知識を有していなくても、金額を勘定科目に対応付けることができる。
【0071】
(5)コンピュータ11は、入力画像I3を用いて入力された金額から売掛金の滞留状況に関するデータを作成する。会計基準では、将来の貸倒損失に備えるために貸倒引当金の計上が求められており、そのためには要素の1つである売掛金の滞留状況を記録することが必要となる。コンピュータ11が自動で売掛金の滞留状況に関するデータを作成することで、ユーザが会計に関する知識を有していなくても、売掛金の滞留状況を記録することができる。
【0072】
また、表示部16には、ユーザの操作に応じて売掛金の滞留状況に関する表示画像I4が表示される。ユーザは、売掛金の滞留状況を把握することができる。売掛金の滞留状況は、貸倒引当金を算出する際の1つの要素になる。売掛金の滞留状況を把握することで、貸倒引当金を適切に算出することができる。
【0073】
(6)コンピュータ11は、合計残高試算表TB1,TB2を作成する。ユーザは、勘定科目の借方合計と貸方合計を把握することができる。
(7)コンピュータ11は、キャッシュフロー計算書CFを作成する。キャッシュフロー計算書CFを作成するためには、会計の知識を要する。会計システム10では、入力画像I8を用いて金額を入力することでキャッシュフロー計算書CFが作成される。ユーザが会計に関する知識を有していなくても、キャッシュフロー計算書CFを作成することができる。
【0074】
(8)コンピュータ11は、株主資本等変動計算書SSを作成する。株主資本等変動計算書SSを作成するためには、会計の知識を要する。会計システム10では、入力データD1に基づいて株主資本等変動計算書SSが作成される。ユーザが会計に関する知識を有していなくても、株主資本等変動計算書SSを作成することができる。
【0075】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0076】
・コンピュータ11は、損益計算書PLから貸借対照表BSを作成できるようにしてもよい。例えば、入力データD1から取得した金額を損益計算書PLの勘定科目に対応付けられるようなマスターデータを構築して、入力データD1から損益計算書PLを作成できるようにしてもよい。そして、損益計算書PLの勘定科目に貸借対照表BSの勘定科目を対応付けることによって、損益計算書PLの勘定科目に対応付けられた金額を貸借対照表BSの勘定科目に対応する金額に変換できるようにしてもよい。
【0077】
・コンピュータ11は、貸借対照表BS及び損益計算書PLのいずれか1つを作成するものであってもよい。
・コンピュータ11は、財務諸表のうちキャッシュフロー計算書CFのみを作成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…会計システム、11…コンピュータ、15…入力部。
【要約】
【課題】財務諸表を作成すること。
【解決手段】会計システムは、勘定科目と金額とが対応付けられた財務諸表を作成する。会計システムは、コンピュータを備える。コンピュータは、予め定められた勘定科目を借方又は貸方に対応付けた対応関係に基づいて、入力部によって入力された金額の仕訳を行う。コンピュータは、仕訳によって得られたデータから財務諸表を作成する。
【選択図】
図9