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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】部品装着装置および部品装着方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240719BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K13/08 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020132205
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029083
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 知博
(72)【発明者】
【氏名】白澤 友則
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-174817(JP,A)
【文献】特開2005-150234(JP,A)
【文献】特開2006-108457(JP,A)
【文献】特開2020-088244(JP,A)
【文献】特開2012-174816(JP,A)
【文献】特開2018-064045(JP,A)
【文献】特開2004-335940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送して作業位置に位置決めする基板搬送路と、
部品を供給する部品供給部と、
前記基板搬送路と前記部品供給部との間に設けられた部品認識カメラと、
前記部品供給部により供給される部品をノズルで吸着し、前記部品認識カメラに部品を撮像させるように移動した後、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて前記基板上に設定された目標装着座標に部品を装着する装着ヘッドと、を備え、
前記装着ヘッドは、前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路で移動し、あるいは前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に沿った横方向移動経路と前記斜め方向移動経路の中から選択された移動経路で移動するように動作して前記部品認識カメラに部品を撮像させ
前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて、前記ノズルによる部品の正規の吸着位置に対する部品の位置ずれである吸着ずれを計測する吸着ずれ計測部と、前記装着ヘッドが前記斜め方向移動経路で移動する場合に生じる前記吸着ずれの計測誤差および前記装着ヘッドが前記横方向移動経路で移動して部品を所定の標定座標に装着した場合に測定される前記部品の前記標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶された記憶部と、を備え、前記装着ヘッドは、前記横方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には前記吸着ずれおよび前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記斜め方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には、前記吸着ずれ、前記計測誤差および前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、
前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドを前記横方向移動経路および前記斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、前記装着ヘッドを前記横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと前記装着ヘッドを前記斜め方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を前記計測誤差として算出する、部品装着装置。
【請求項2】
基板に部品を装着する部品装着装置における部品装着方法であって、
基板搬送路により前記基板を搬送して作業位置に位置決めする基板位置決め工程と、
部品供給部により供給される部品を装着ヘッドがノズルで吸着する部品吸着工程と、
前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドが、前記基板搬送路と前記部品供給部との間に設けられた部品認識カメラに部品を撮像させるように移動した後、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて前記基板上に設定された目標装着座標に部品を装着する装着工程と、を含み、
前記装着ヘッドを前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路で移動させ、あるいは前記装着ヘッドを前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に沿った横方向移動経路と前記斜め方向移動経路の中から選択された移動経路で移動させることによって前記部品認識カメラに部品を撮像させ
前記部品装着装置が、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて、前記ノズルによる部品の正規の吸着位置に対する部品の位置ずれである吸着ずれを計測する吸着ずれ計測部と、前記装着ヘッドが前記斜め方向移動経路で移動する場合に生じる前記吸着ずれの計測誤差および前記装着ヘッドが前記横方向移動経路で移動して部品を所定の標定座標に装着した場合に測定される前記部品の前記標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶された記憶部と、を備え、前記装着工程において、装着ヘッドは、前記横方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には前記吸着ずれおよび前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記斜め方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には、前記吸着ずれ、前記計測誤差および前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、
前記計測誤差を、前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドを前記横方向移動経路および前記斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、前記装着ヘッドを前記横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと前記装着ヘッドを前記斜め方向各移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を求めることによって算出する、部品装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品供給部が供給する部品を装着ヘッドがノズルで吸着し、基板搬送路によって作業位置に位置決めされた基板に装着する部品装着装置および部品装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品装着装置は、基板搬送路によって基板を作業位置に位置決めしたうえで、部品供給部が供給する部品を装着ヘッドにより吸着して基板に設定された目標装着座標に装着するように構成されている。装着ヘッドはノズルの下端に部品を吸着した後、基板搬送路と部品供給部とを間に設けられた部品認識カメラの上方を横方向(基板搬送路による基板の搬送方向に沿った方向)に通過した後、基板の上方領域に移動するようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。部品認識カメラは装着ヘッドが上方を通過するとき、撮像視野を横切る部品を撮像し、得られた撮像結果(部品の画像)に基づいて、ノズルによる正規の部品の吸着位置に対する部品の位置ずれである吸着ずれが計測される。そして、装着ヘッドは、その計測された吸着ずれと、予め記憶されている装着ずれとによって補正された制御値で制御されて、部品を目標装着座標に装着する。ここで、装着ずれとは、部品装着装置の機械座標のずれ等に起因して生じる目標装着座標からの部品の位置ずれであり、所定の標定座標に部品が装着されて予め実測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4911099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の部品装着装置において、装着ヘッドが部品を部品認識カメラに撮像させるために基板搬送路による基板の搬送方向に沿った横移動方向に移動している間は、装着ヘッドは基板搬送路側へ向かう方向へ全く移動しない。このため、その分、タクトのロスが生じて生産性が低下するおそれがあるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、装着ヘッドがノズルで部品を吸着してから基板に装着するまでに要する時間を短縮化してより高い生産性を実現できる部品装着装置および部品装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品装着装置は、基板を搬送して作業位置に位置決めする基板搬送路と、部品を供給する部品供給部と、前記基板搬送路と前記部品供給部との間に設けられた部品認識カメラと、前記部品供給部により供給される部品をノズルで吸着し、前記部品認識カメラに部品を撮像させるように移動した後、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて前記基板上に設定された目標装着座標に部品を装着する装着ヘッドと、を備え、前記装着ヘッドは、前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路で移動し、あるいは前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に沿った横方向移動経路と前記斜め方向移動経路の中から選択された移動経路で移動するように動作して前記部品認識カメラに部品を撮像させ、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて、前記ノズルによる部品の正規の吸着位置に対する部品の位置ずれである吸着ずれを計測する吸着ずれ計測部と、前記装着ヘッドが前記斜め方向移動経路で移動する場合に生じる前記吸着ずれの計測誤差および前記装着ヘッドが前記横方向移動経路で移動して部品を所定の標定座標に装着した場合に測定される前記部品の前記標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶された記憶部と、を備え、前記装着ヘッドは、前記横方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には前記吸着ずれおよび前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記斜め方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には、前記吸着ずれ、前記計測誤差および前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドを前記横方向移動経路および前記斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、前記装着ヘッドを前記横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと前記装着ヘッドを前記斜め方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を前記計測誤差として算出する
【0007】
本発明の部品装着方法は、基板に部品を装着する部品装着装置における部品装着方法であって、基板搬送路により前記基板を搬送して作業位置に位置決めする基板位置決め工程と、部品供給部により供給される部品を装着ヘッドがノズルで吸着する部品吸着工程と、前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドが、前記基板搬送路と前記部品供給部との間に設けられた部品認識カメラに部品を撮像させるように移動した後、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて前記基板上に設定された目標装着座標に部品を装着する装着工程と、を含み、前記装着ヘッドを前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路で移動させ、あるいは前記装着ヘッドを前記基板搬送路による前記基板の搬送方向に沿った横方向移動経路と前記斜め方向移動経路の中から選択された移動経路で移動させることによって前記部品認識カメラに部品を撮像させ、前記部品装着装置が、前記部品認識カメラによる撮像結果に基づいて、前記ノズルによる部品の正規の吸着位置に対する部品の位置ずれである吸着ずれを計測する吸着ずれ計測部と、前記装着ヘッドが前記斜め方向移動経路で移動する場合に生じる前記吸着ずれの計測誤差および前記装着ヘッドが前記横方向移動経路で移動して部品を所定の標定座標に装着した場合に測定される前記部品の前記標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶された記憶部と、を備え、前記装着工程において、装着ヘッドは、前記横方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には前記吸着ずれおよび前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記斜め方向移動経路で移動して前記基板に部品を装着する場合には、前記吸着ずれ、前記計測誤差および前記装着ずれが補正された制御値で制御されて前記基板に部品を装着し、前記計測誤差を、前記ノズルで部品を吸着した前記装着ヘッドを前記横方向移動経路および前記斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、前記装着ヘッドを前記横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと前記装着ヘッドを前記斜め方向各移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を求めることによって算出する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装着ヘッドがノズルで部品を吸着してから基板に装着までに要する時間を短縮化してより高い生産性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態における部品装着装置の要部の側面図
図2】本発明の一実施の形態における部品装着装置の要部の平面図
図3】本発明の一実施の形態における部品装着装置の要部の拡大平面図
図4】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における部品装着装置が用意している装着ヘッドの4つの移動経路を示す平面図
図5】本発明の一実施の形態における部品装着装置の制御系統を示すブロック図
図6】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが横正方向移動経路で移動している様子を示す平面図
図7】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが横逆方向移動経路で移動している様子を示す平面図
図8】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め正方向移動経路で移動している様子を示す平面図
図9】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め逆方向移動経路で移動している様子を示す平面図
図10】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える部品認識カメラが部品を撮像した画像の一例を示す図
図11】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが横方向移動経路で移動した場合の一状況を示す平面図
図12】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが横方向移動経路で移動した場合に部品認識カメラが撮像して得られる画像の一例を示す図
図13】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め正方向移動経路で移動した場合の一状況を示す平面図
図14】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め正方向移動経路で移動した場合に部品認識カメラが撮像して得られる画像の一例を示す図
図15】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め逆方向移動経路で移動した場合の一状況を示す平面図
図16】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備える装着ヘッドが斜め逆方向移動経路で移動した場合に部品認識カメラが撮像して得られる画像の一例を示す図
図17】本発明の一実施の形態における部品装着装置において吸着ずれの計測誤差を算出する手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は本発明の一実施の形態における部品装着装置1を示している。部品装着装置1は上流工程側から搬入した基板KBに部品BHを装着して下流工程側に搬出する作業を繰り返し実行する装置である。ここでは説明の便宜上、部品装着装置1における基板KBの搬送方向(作業者OPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0011】
図1において、部品装着装置1は、基台11、基板搬送路12、部品供給ユニット13、装着ヘッド14、ヘッド移動機構15、基板認識カメラ16、部品認識カメラ17および制御装置18を備えている。図2にも示すように、基板搬送路12は一対のベルトコンベアを有して成り、基台11上をX軸方向に延びて設けられている。基板搬送路12は、上流工程側から送られてきた基板KBを搬入したうえで、その基板KBを所定の作業位置に位置決めする。
【0012】
図1および図2において、基台11の作業者OPから見た手前側の端部には、フィーダ台車21が連結されている。フィーダ台車21の上部にはフィーダベース22が設けられており、部品供給ユニット13はフィーダベース22に着脱自在に取り付けられている。フィーダベース22には複数の部品供給ユニット13をX軸方向に並べて取り付けることができる(図2参照)。作業者OPはフィーダ台車21を基台11に連結させることで、フィーダベース22に取り付けられている複数の部品供給ユニット13を一括して基台11に接続させることが可能である。
【0013】
部品供給ユニット13はここではテープフィーダであり、部品BHがテーピングされたキャリアテープ23を搬送することで部品供給口13Kに部品BHを供給する。キャリアテープ23はフィーダ台車21に保持されたリール24に巻き付けられており、部品供給ユニット13はリール24からキャリアテープ23を引き出して基板搬送路12側にピッチ送りする。なお、部品供給ユニット13はテープフィーダでなくてもよく、トレイフィーダやバルクフィーダ等であってもよい。
【0014】
図1において、装着ヘッド14は下方に延びた複数のノズル14Nを備えている(図2も参照)。各ノズル14Nは装着ヘッド14の内部に設けられたノズル駆動部14Aによって駆動されることで、装着ヘッド14に対する昇降動作とZ軸まわりの回転動作とを行う。また、各ノズル14Nには、装着ヘッド14に取り付けられたバルブユニット14Bの作動によって、図示しない真空源から供給される真空圧が供給される。これにより各ノズル14Nの下端に吸着力を発生させることができ、装着ヘッド14はノズル14Nで部品供給ユニット13が供給する部品BHを吸着することが可能である。
【0015】
図3において、装着ヘッド14は、横方向(X軸方向)に4本、縦方向(Y軸方向)に2本のマトリクス状に配置された8本のノズル14Nを有している。ここで、8本のノズル14Nを区別するため、装着ヘッド14の奥側を横方向に並んだ4本のノズル14Nを左側から順に14N(1),14N(2),14N(3),14N(4)とし、装着ヘッド14の手前側を横方向に並んだ4本のノズル14Nを左側から順に14N(5),14N(6),14N(7),14N(8)とする。装着ヘッド14はこれら8本のノズル14N(n)(n=1,2,・・・8)のそれぞれに部品BHを吸着させることができ、装着ヘッド14として最大で8個の部品BHを同時に吸着することが可能である。
【0016】
図2において、ヘッド移動機構15は、基台11上をY軸方向に延びて設けられた固定ビーム15aと、X軸方向に延びて一端が固定ビーム15aに支持された移動ビーム15bから構成されている。装着ヘッド14は移動ビーム15bに支持されている。
【0017】
移動ビーム15bは固定ビーム15aとの間に設けられた図示しないリニアモータによって駆動されてY軸方向に移動する。装着ヘッド14は移動ビーム15bとの間に設けられた図示しないリニアモータによって駆動されてX軸方向に移動する。このため装着ヘッド14は、固定ビーム15aに対する移動ビーム15bのY軸方向への移動と、移動ビーム15bに対する装着ヘッド14自身のX軸方向への移動とによって、基台11の上方の領域を、水平面内(XY面内)方向に移動する。
【0018】
図1および図2において、基板認識カメラ16は装着ヘッド14に取り付けられている。基板認識カメラ16は撮像光軸を下方に向けており、装着ヘッド14とともに基台11の上方領域を移動する。基板認識カメラ16は、基板KBの上面の隅部に設けられた2つの基板マークMK(図2)をそれぞれ上方から撮像する。
【0019】
図1図2および図3において、部品認識カメラ17は基台11上における基板搬送路12と部品供給ユニット13との間の領域に設けられている。部品認識カメラ17は撮像光軸を上方に向けており、その撮像視野SYは、図3に示すように、Y軸方向に長い長方形形状を有している。部品認識カメラ17は、ノズル14Nで部品BHを吸着した装着ヘッド14が上方を通過するときに、撮像視野SYを横切る各部品BHを撮像する。
【0020】
本実施の形態では、装着ヘッド14が部品認識カメラ17の上方を移動するときの移動経路として、基板搬送路12による基板KBの搬送方向(X軸方向)に沿った横方向移動経路として、横正方向移動経路(図4(a))と、横逆方向移動経路(図4(b))が用意されており、基板搬送路12による基板のKB搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路として、斜め正方向移動経路(図4(c))と、斜め逆方向移動経路(図4(d))が用意されている。装着ヘッド14は、基板KBに部品BHを装着する作業(部品装着作業)を行うにおいて、部品供給ユニット13により吸着される部品BHをノズル14Nにより吸着した後は、先ず、これら複数の移動経路の中から選択された移動経路で移動して、部品認識カメラ17に部品BHを撮像させるようになっている。
【0021】
装着ヘッド14は、部品認識カメラ17に部品BHを撮像させるように移動した後は、基板KBの上方領域に移動する。そして、部品BHごとに基板KB上に設定された目標装着座標のそれぞれに、設定された装着角度Θ(0°,90°,180°,270°のいずれか)で装着する。
【0022】
図5において、制御装置18は、部品装着装置1を構成する各部の動作を制御する。具体的には、制御装置18は、基板搬送路12による基板KBの搬送動作と作業位置への位置決め動作を制御し、各部品供給ユニット13による部品BHの供給動作を制御する。また制御装置18は、ノズル駆動部14Aを作動させることによって装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nそれぞれの昇降および回転動作を制御し、バルブユニット14Bを作動させることによって、各ノズル14Nの下端に部品BHの吸着力を発生させる制御を行う。また制御装置18は、ヘッド移動機構15を作動させて、装着ヘッド14を移動させる制御を行う。
【0023】
制御装置18はまた、基板認識カメラ16と部品認識カメラ17それぞれの撮像動作を制御する。制御装置18は基板位置算出部31を備えている。基板位置算出部31は、基板認識カメラ16によって撮像された2つの基板マークMKの画像が送られてくると、その画像に基づいて、基板搬送路12上における基板KBの位置を算出する。
【0024】
図5において、制御装置18は記憶部32と移動経路選択部33を備えている。記憶部32には部品装着作業の実行手順を定めた部品装着プログラムのほか、部品BHの種類や大きさ等のデータの種々のデータが記憶されている。また、この記憶部32には、部品装着作業の開始前あるいは部品装着作業の途中で、必要に応じてデータを記憶させることができるようになっている。
【0025】
また、記憶部32には、前述した複数の移動経路それぞれのデータが記憶されている。移動経路選択部33は、記憶部32に記憶された複数の移動経路の中から任意の移動経路を選択して設定する。移動経路選択部33は、装着ヘッド14がフィーダベース22上に取り付けられたどの部品供給ユニット13から部品BHを吸着するか等に応じ、装着ヘッド14の作業効率が最適となるように(例えば、装着ヘッド14が部品BHを吸着してから基板KB上に設定された目標装着座標に部品BHを装着するまでの移動距離が最短になるように)、移動経路を選択する。このため移動経路選択部33による移動経路の選択は、装着ヘッド14が部品供給ユニット13から部品BHを吸着するごとに選択(設定)される。
【0026】
次に、部品装着装置1が実行する部品装着作業の流れを説明する。部品装着作業では先ず、基板搬送路12を作動させて、上流工程側から送られてきた基板KBを受け取って搬送し、作業位置に位置決めする(基板位置決め工程)。
【0027】
基板KBを作業位置に位置決めした、ヘッド移動機構15を作動させて装着ヘッド14を基板KBの上方に移動させ、基板認識カメラ16に基板マークMKを撮像させる。これにより制御装置18の基板位置算出部31が基板搬送路12上の基板KBの位置を算出したら、ヘッド移動機構15を作動させて、装着ヘッド14を部品供給ユニット13の上方に移動させる。装着ヘッド14は、部品供給ユニット13の上方に移動したら、8本のノズル14Nによって、部品供給ユニット13により供給される部品BHを吸着する(部品吸着工程)。
【0028】
装着ヘッド14がノズル14Nで部品BHを吸着したら、移動経路選択部33において移動経路を設定する。そして、その設定した移動経路で装着ヘッド14を移動させ、部品認識カメラ17の上方を通過させる。これにより部品認識カメラ17は装着ヘッド14が8本のノズル14Nで吸着した8個(最大8個)の部品BHを撮像し、得られた画像のデータを制御装置18に送信する。
【0029】
図5において、制御装置18は吸着ずれ計測部34を備えている。吸着ずれ計測部34は、部品認識カメラ17から送信された画像を解析し、各ノズル14Nによる部品BHの正規の吸着位置(制御データ上での各ノズル14Nの中心位置)に対する部品BHの位置ずれをそのノズル14Nについての「吸着ずれ」として計測する。
【0030】
制御装置18は、吸着ずれ計測部34で各部品BHの吸着ずれを計測したら、その計測した吸着ずれを含む誤差分(詳細は後述)が補正された制御値で装着ヘッド14を作動させ、装着ヘッド14は、基板KB上に設定されている目標装着座標に部品BHを装着する(装着工程)。
【0031】
このように本実施の形態において、装着ヘッド14は、部品供給ユニット13により供給される部品BHをノズル14Nで吸着し、部品認識カメラ17に部品BHを撮像させるように移動した後、部品認識カメラ17による撮像結果に基づいて基板KB上に設定された目標装着座標に部品BHを装着するようになっている。そして、装着ヘッド14は、部品認識カメラ17に部品BHを撮像させるとき、基板搬送路12による基板KBの搬送方向に沿った横方向移動経路と、基板搬送路12による基板KBの搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路から成る複数の移動経路の中から、制御装置18の移動経路選択部33によって選択された移動経路で移動するようになっている。
【0032】
装着ヘッド14が上記の部品吸着工程と装着工程から成る装着ターンを繰り返し実行することによって、基板KBに装着するべき全ての部品BHを装着したら、基板搬送路12が作動して、基板KBを下流工程側に搬出する。これにより基板KBの1枚当たりの部被装着作業が終了する。
【0033】
部品装着装置1は、上述の手順によって、部品供給ユニット13が供給する部品BHをノズル14Nで吸着して基板KB上に設定された目標装着座標に装着するのであるが、本実施の形態では、装着ヘッド14が斜め方向移動経路で移動して部品認識カメラ17に部品BHを撮像させることができるようになっており、装着ヘッド14は、部品認識カメラ17に部品BHを撮像させている間にも、部品供給ユニット13側から基板搬送路12側(すなわち基板KB側)に向かう方向に移動するので、その分、タクトを向上させることができる。このため、装着ヘッド14が部品BHを吸着してから基板KBに装着するまでに要する時間を短縮化でき、高い生産性を実現できる。
【0034】
ところで、本実施の形態における部品装着装置1では、装着ヘッド14が部品認識カメラ17の上方を斜め方向移動経路(斜め正方向移動経路または斜め逆方向移動経路)で移動する場合に、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは部品認識カメラ17の撮像視野SYをX軸方向に対して斜めに横切って移動する。このため、これら8本のノズル14Nに吸着された各部品BHを撮像する撮像視野SY内の撮像部位は、撮像視野SY内をY軸方向に順次移動していくことになる。部品認識カメラ17のレンズには収差(主として球面収差)があるので、レンズの中央部に相当する撮像視野SYの中央部から手前側または奥側に離れた撮像部位において撮像された画像に基づいて計測される吸着ずれは、このような計測誤差(部品認識カメラ17に起因する計測誤差)を含んだものとなっている。
【0035】
前述したように、装着ヘッド14により部品BHを基板KBに装着するときには、吸着ずれ計測部34で計測された吸着ずれを含む誤差分が補正された制御値で装着ヘッド14が作動される。この誤差分を詳細に述べると、上記計測誤差と、装着ずれである。
【0036】
ここで、「装着ずれ」とは、部品装着装置1の機械座標のずれ等に起因して生じる目標装着座標からの部品BHの位置ずれである。この装着ずれは、計測された吸着ずれがキャンセルされるようにノズル14Nの位置(回転を含む)を行った場合であっても生じ得るいわゆる装置誤差であるので、基板生産作業に入る前に実測してその値を取得し、記憶させておく必要がある。具体的には、部品BHを装着ずれ測定用に用意した基板KB上に、8本のノズル14Nに対応して設定されている8つの目標装着座標(以下、「評定座標」と称する)のそれぞれに部品BHを装着したうえで、その部品BHを撮像手段(例えば基板認識カメラ16)で撮像することによって測定し、得られた値を装着ずれとして、記憶部32に記憶させる。
【0037】
このような装着ずれは本来、本実施の形態における部品装着装置1のように、装着ヘッド14を横方向移動経路とは異なる移動経路(斜め方向移動経路)で移動させるようになっている場合には、移動経路ごとに装着ずれを測定して移動経路ごとの装着ずれを取得するべきところである。しかし、これでは装着ずれの測定に多大な時間が必要となるので、本実施の形態では、このような不都合を改善する工夫を行っている。以下にそれを説明する。
【0038】
先ず、上述の計測誤差を求める手順を説明する。本実施の形態における部品装着装置1では、前述したように、装着ヘッド14が部品認識カメラ17の上方を移動するときの移動経路として、横性方向移動経路、横逆方向移動経路、斜め正方向移動経路および斜め逆方向移動経路の4つの経路が用意されている。
【0039】
横正方向移動経路は、図4(a)から分かるように、部品認識カメラ17の左側から基板搬送路12による基板KBの搬送方向(すなわちX軸)に沿って、部品認識カメラ17の撮像視野SYのY軸方向の中央部を右方に進む移動経路である。装着ヘッド14が横正方向移動経路で移動した場合、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは、装着ヘッド14の右側に位置するものから順に、同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nが撮像視野SYを順次通過していく(図6(a)→図6(b)→図6(c)→図6(d))。このため、部品認識カメラ17に対する装着ヘッド14の相対移動に伴って、部品認識カメラ17の撮像視野SYには部品BHが2個ずつ、4回にわたって順に映し出される。
【0040】
本実施の形態では、図3に示すように、部品認識カメラ17の撮像視野SY内の座標を表す局所的な座標系として、撮像視野SYの左下の隅を座標原点ORとしてその右方をX軸方向の正方向、奥方向をY軸方向の正方向とする座標系が設定されている。そして、部品認識カメラ17は、装着ヘッド14の移動に伴って移動する8本のノズル14Nのうちのいずれかの中心位置(制御データ上でのノズル14Nの中心位置)が、撮像視野SY内のX軸方向の中央の座標(X=X1)の位置に到達した瞬間に、撮像を行うようになっている。このため、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは、同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nに吸着された2個の部品BHの画像が同時に取得され、装着ヘッド14が部品認識カメラ17の上方を通過するまでの間にこれが4回繰り返される。これにより装着ヘッド14の1回の移動につき、8本のノズル14N(8個の部品BH)に対応する8つの画像が取得される。
【0041】
具体的には、装着ヘッド14が横正方向移動経路で移動するときは、最初にノズル14N(4)に吸着された部品BHとノズル14N(8)に吸着された部品BHの画像が取得され(図6(a))、次に、ノズル14N(3)に吸着された部品BHとノズル14N(7)に吸着された部品BHの画像が取得される(図6(b))。そして、続いて、ノズル14N(2)に吸着された部品BHとノズル14N(6)に吸着された部品BHの画像が取得され(図6(c))、最後に、ノズル14N(1)に吸着された部品BHとノズル14N(5)に吸着された部品BHの画像が取得される(図6(d))。
【0042】
この横正方向移動経路では、図6(a)~(d)から分かるように、X軸方向の並びが同じである4本のノズル14N、すなわち14N(1),14N(2),14(3),14N(4)の4本のノズル14Nと、14N(5),14N(6),14N(7),14N(8)の4本のノズル14Nは、それぞれ部品認識カメラ17の撮像視野SYの中央部の同じY座標(Y=Y1,Y2)の位置を通過する。このため、装着ヘッド14が横正方向移動経路で移動するときは、部品認識カメラ17が部品BHを撮像する撮像部位の座標は(X1,Y1)と(X1,Y2)の2箇所であり、部品認識カメラ17における撮像部位の移動はない。しかも、これら2箇所の撮像部位は撮像視野SYの中央部に位置しているので、部品認識カメラ17の収差(主として部品認識カメラ17のレンズの球面収差)の影響はほとんどないものとして扱うことができる。
【0043】
次に、横逆方向移動経路の場合を示す。横逆方向移動経路は、図4(b)から分かるように、部品認識カメラ17の右側からX軸に沿って、部品認識カメラ17の撮像視野SYのY軸方向の中央部を左方に進む移動経路である。装着ヘッド14が横逆方向移動経路で移動した場合、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは、装着ヘッド14の左側に位置するものから順に、同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nが撮像視野SYを順次通過していく(図7(a)→図7(b)→図7(c)→図7(d))。このため、横正方向移動経路の場合と同様、部品認識カメラ17に対する装着ヘッド14の相対移動に伴って、部品認識カメラ17の撮像視野SYには部品BHが2個ずつ、4回にわたって順に映し出される。
【0044】
このため、装着ヘッド14が横逆方向移動経路で移動する場合には、最初にノズル14N(1)に吸着された部品BHとノズル14N(5)に吸着された部品BHの画像が取得され(図7(a))、次に、ノズル14N(2)に吸着された部品BHとノズル14N(6)に吸着された部品BHの画像が取得される(図7(b))。そして、続いて、ノズル14N(3)に吸着された部品BHとノズル14N(7)に吸着された部品BHの画像が取得され(図7(c))、最後に、ノズル14N(4)に吸着された部品BHとノズル14N(8)に吸着された部品BHの画像が取得される(図7(d))。
【0045】
この横逆方向移動経路では、図7(a)~(d)から分かるように、X軸方向の並びが同じである4本のノズル14N、すなわち14N(1),14N(2),14(3),14N(4)の4本のノズル14Nと、14N(5),14N(6),14N(7),14N(8)の4本のノズル14Nは、それぞれ部品認識カメラ17の撮像視野SYの中央部の同じY座標(Y=Y1,Y2)の位置を通過する。このため、装着ヘッド14が横逆方向移動経路で移動するときは、部品認識カメラ17が部品BHを撮像する撮像部位の座標は、横正方向移動経路の場合と同様、(X1,Y1)と(X1,Y2)の2箇所であり、部品認識カメラ17における撮像部位の移動はない。しかも、これら2箇所の撮像座標は、横正方向移動経路の場合と同じであり、撮像視野SYの中央部に位置しているので、部品認識カメラ17の収差の影響はほとんどないものとして扱うことができる。
【0046】
次に、斜め正方向移動経路の場合を示す。斜め正方向移動経路は、図4(c)から分かるように、部品認識カメラ17の左手前側から右奥側に向かって進む移動経路である。装着ヘッド14が斜め正方向移動経路で移動した場合、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは、装着ヘッド14の右側に位置するものから順に、同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nが撮像視野SYを順次通過していく(図8(a)→図8(b)→図8(c)→図8(d))。このため、横正方向移動経路の場合と同様、部品認識カメラ17に対する装着ヘッド14の相対移動に伴って、部品認識カメラ17の撮像視野SYには部品BHが2個ずつ、4回にわたって順に映し出される。
【0047】
このため、装着ヘッド14が斜め正方向移動経路で移動する場合には、横正方向移動経路の場合と同様に、最初にノズル14N(4)に吸着された部品BHとノズル14N(8)に吸着された部品BHの画像が取得され(図8(a))、次に、ノズル14N(3)に吸着された部品BHとノズル14N(7)に吸着された部品BHの画像が取得される(図8(b))。そして、続いて、ノズル14N(2)に吸着された部品BHとノズル14N(6)に吸着された部品BHの画像が取得され(図8(c))、最後に、ノズル14N(1)に吸着された部品BHとノズル14N(5)に吸着された部品BHの画像が取得される(図8(d))。
【0048】
しかし、斜め正方向移動経路で装着ヘッド14を移動させた場合には、横正方向移動経路で装着ヘッド14を移動させた場合とは異なり、装着ヘッド14が進行するに従って、撮像視野SY内のX=X1に到達するときのノズル14NのY座標が手前側から奥側に移動する(図8(a)~(d))。このため、ノズル14N(4),ノズル14N(3),ノズル14N(2),ノズル14N(1)に対応する撮像部位と、ノズル14N(8),ノズル14N(7),ノズル14N(6),ノズル14N(5)に対応する撮像部位はそれぞれ互いに異なるものとなる。
【0049】
具体的には、図8(a)~(d)に示すように、ノズル14N(4)のY座標をY3、ノズル14N(3)のY座標をY5、ノズル14N(2)のY座標をY7、ノズル14N(1)のY座標をY9とすると、これらY座標の大小関係は、奥側のY座標ほど値が大きいとして、Y3<Y5<(Y1<)Y7<Y9となる。また、ノズル14N(8)のY座標をY4、ノズル14N(7)のY座標をY6、ノズル14N(6)のY座標をY8、ノズル14N(5)のY座標をY10とすると、これらY座標の大小関係は、Y4<Y6<(Y2<)Y8<Y10となる。これらY3~Y10の値は、横正方向移動経路や横逆方向移動経路の場合のY1,Y2とは異なり、必ずしも部品認識カメラ17の撮像視野SYのY軸方向の中央部の値ではないので、部品認識カメラ17の収差の影響を受け得る(よって、計測誤差が生じる)。
【0050】
次に、斜め逆方向移動経路の場合を示す。斜め逆方向移動経路は、図4(d)から分かるように、部品認識カメラ17の右手前側から左奥側に向かって進む移動経路である。装着ヘッド14が斜め逆方向移動経路で移動した場合、装着ヘッド14が備える8本のノズル14Nは、装着ヘッド14の左側に位置するものから順に、同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nが撮像視野SYを順次通過していく(図9(a)→図9(b)→図9(c)→図9(d))。このため、横逆方向移動経路の場合と同様、部品認識カメラ17に対する装着ヘッド14の相対移動に伴って、部品認識カメラ17の撮像視野SYには部品BHが2個ずつ、4回にわたって順に映し出される。
【0051】
このため、装着ヘッド14が斜め逆方向移動経路で移動する場合には、横逆方向移動経路の場合と同様に、最初にノズル14N(1)に吸着された部品BHとノズル14N(5)に吸着された部品BHの画像が取得され(図9(a))、次に、ノズル14N(2)に吸着された部品BHとノズル14N(6)に吸着された部品BHの画像が取得される(図9(b))。そして、続いて、ノズル14N(3)に吸着された部品BHとノズル14N(7)に吸着された部品BHの画像が取得され(図9(c))、最後に、ノズル14N(4)に吸着された部品BHとノズル14N(8)に吸着された部品BHの画像が取得される(図9(d))。
【0052】
しかし、斜め逆方向移動経路で装着ヘッド14を移動させた場合には、横逆方向移動経路で装着ヘッド14を移動させた場合とは異なり、装着ヘッド14が進行するに従って、撮像視野SY内のX=X1に到達するときのノズル14NのY座標が手前側から奥側に移動する(図9(a)~(d))。このため、ノズル14N(1),ノズル14N(2),ノズル14N(3),ノズル14N(4)に対応する撮像部位と、ノズル14N(5),ノズル14N(6),ノズル14N(7),ノズル14N(8)に対応する撮像部位はそれぞれ互いに異なるものとなる。
【0053】
具体的には、図9(a)~(d)に示すように、ノズル14N(1)のY座標をY11、ノズル14N(2)のY座標をY13、ノズル14(3)のY座標をY15、ノズル14N(4)のY座標をY17とすると、これらY座標の大小関係は、Y11<Y13<(Y1<)Y15<Y17となる。また、ノズル14N(5)のY座標をY12、ノズル14N(6)のY座標をY14、ノズル14N(7)のY座標をY16、ノズル14N(8)のY座標をY18とすると、これらY座標の大小関係は、Y12<Y14<(Y2<)Y16<Y18となる。これらY11~Y18の値は、斜め正方向移動経路の場合と同様、横正方向移動経路や横逆方向移動経路の場合のY1,Y2とは異なり、必ずしも部品認識カメラ17の撮像視野SYのY軸方向の中央部の値ではないので、部品認識カメラ17の収差の影響を受け得る(よって、計測誤差が生じる)。
【0054】
吸着ずれ計測部34は、上記のように、部品認識カメラ17によって同じY軸方向の並びに位置する2本のノズル14Nに吸着された2個の部品BHそれぞれについての2つの画像が取得されたら、各画像に基づいて、その画像に含まれる部品BHについての吸着ずれを、吸着ずれとして計測する。ここで、移動経路選択部33において選択される移動経路の番号を移動経路番号SKで表し、横方向移動経路(横正方移動経路もしくは横逆方向移動経路)についてはSK=1、斜め正方向移動経路についてはSK=2、斜め逆方向移動経路についてはSK=3であるとする。そして、各ノズル14N(n)(n=1,2,・・・,8)についての部品BHの吸着ずれをdp(SK、n)で表すと、
dp(SK、n)=(dpX(SK,n),dpY(SK,n))
となる。
【0055】
図10は、部品認識カメラ17が部品BHを撮像して得られた画像GZの一例を示している。図10に示すように、画像GZでは、撮像された部品BHに対応するノズル14Nの中心の位置(制御データ上でのノズル14Nの中心位置)を原点ZRとする座標系が設定され、吸着ずれdp(SK、n)のX軸成分は、その座標系でのX座標であるdpX(SK,n)に相当し、吸着ずれdp(SK、n)のY軸成分は、その座標系のY座標であるdpY(SK,n)に相当する。
【0056】
図11は、装着ヘッド14の移動経路として横方向移動経路(横正方向移動経路もしくは横逆方向移動経路)が選択された場合(SK=1の場合)であって、ノズル14N(4)とノズル14N(8)の2本のノズル14NがX=X1に到達した状態を映し出した画像GZ1,GZ2を示している。ここで、画像GZ1は装着ヘッド14の奥側の並びに位置するノズル14Nについての画像であり、画像GZ2は装着ヘッド14の手前側の並びに位置するノズル14Nについての画像である。この場合のノズル14N(4)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y1)であり、ノズル14N(8)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y2)である(前述の図6(a)または図7(d)参照)。
【0057】
図12(a)は図11における画像GZ1の拡大図であり、図12(b)は図11における画像GZ2の拡大図である。図12(a)において、画像GZ1内における部品BHの座標は(dpX(1,4),dpY(1,4))であるので、この場合(装着ヘッド14が横方向移動経路で移動した場合)におけるノズル14N(4)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(1、4)=(dpX(1,4),dpY(1,4))と計測される。また、図12(b)において、画像GZ2内における部品BHの座標は(dpX(1,8),dpY(1,8))であるので、この場合におけるノズル14N(8)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(1,8)=(dpX(1,8),dpY(1,8))と計測される。
【0058】
図13は、装着ヘッド14の移動経路として斜め正方向移動経路が選択された場合(S=2の場合)であって、ノズル14N(4)とノズル14N(8)の2本のノズル14NがX=X1に到達した状態の画像GZ1,GZ2を示している。この場合のノズル14N(4)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y3)であり、ノズル14N(8)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y4)である(前述の図8(a)参照)。
【0059】
図14(a)は図13における画像GZ1の拡大図であり、図14(b)は図13における画像GZ2の拡大図である。図14(a)において、画像GZ1内における部品BHの座標は(dpX(2,4),dpY(2,4))であるので、この場合(装着ヘッド14が斜め正方向移動経路で移動した場合)におけるノズル14N(4)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(2,4)=(dpX(2,4),dpY(2,4))と計測される。また、図14(b)において、画像GZ2内における部品BHの座標は(dpX(2,8),dpY(2,8))であるので、この場合におけるノズル14N(8)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(2,8)=(dpX(2,8),dpY(2,8))と計測される。
【0060】
図15は、装着ヘッド14の移動経路として斜め逆方向移動経路が選択された場合(S=3の場合)であって、ノズル14N(4)とノズル14N(8)の2本のノズル14NがX=X1に到達した状態の画像GZ1,GZ2を示している。この場合のノズル14N(4)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y17)であり、ノズル14N(8)の撮像視野SY内の座標は(X1,Y18)である(前述の図9(d)参照)。
【0061】
図16(a)は図15における画像GZ1の拡大図であり、図16(b)は図15における画像GZ2の拡大図である。図16(a)において、画像GZ1内における部品BHの座標は(dpX(3,4),dpY(3,4))であるので、この場合(装着ヘッド14が斜め逆方向移動経路で移動した場合)におけるノズル14N(4)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(3,4)=(dpX(3,4),dpY(3,4))と計測される。また、図16(b)において、画像GZ2内における部品BHの座標は(dpX(3,8),dpY(3,8))であるので、この場合におけるノズル14N(8)に対する部品BHの吸着ずれは、dp(3,8)=(dpX(3,8),dpY(3,8))となる。
【0062】
前述したように、部品認識カメラ17の撮像視野SYのY軸方向の中央部(Y=Y1,Y2)で測定される吸着ずれは、部品認識カメラ17の収差の影響はほとんど受けていないと考えられるので、横方向移動経路(横正方向移動経路および横逆方向移動経路)で装着ヘッド14が移動した場合に計測される吸着ずれは、そのまま実際の吸着ずれとして取り扱うことができる。ここで、仮に、部品認識カメラ17のレンズに収差がないのであれば、撮像視野SYのY軸方向の中央部から手前側または奥側に離れた撮像部位で撮像したとしても、同じ吸着ずれが計測されるはずである。すなわち、装着ヘッド14が斜め正方向移動経路もしくは斜め逆方向移動経路で移動した場合であっても、計測される吸着ずれは互いに等しくなるはずである。
【0063】
しかしながら、実際には部品認識カメラ17のレンズには収差があり、その収差の影響(特に、部品認識カメラ17のレンズの球面収差)によって、吸着ずれは、撮像視野SYの中央部(Y座標=Y1,Y2)側から手前側または奥側に離れると、計測される吸着ずれは中央部で計測される値(実際の値)よりも大きくなっていく。このため本実施の形態では、制御装置18が計測誤差算出部35(図5)を備えており、この計測誤差算出部35において、同じノズル14Nについての吸着ずれ同士の差分値を算出し、これを計測誤差として算出するようになっている。すなわち計測誤差算出部35は、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと装着ヘッド14を斜め方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を前記計測誤差として算出するようになっている。この計測誤差は斜め方向移動経路の種類ごとに求まるので、斜め正方向移動経路に対応する計測誤差と、斜め逆方向移動経路に対応する計測誤差とが算出される。
【0064】
制御装置18が計測誤差算出部35により計測誤差を求める手順を図17に示すフローチャートに基づいて説明すると、制御装置18は先ず、装着ヘッド14を部品供給ユニット13の上方に移動させて、8本のノズル14Nに8個の部品BHを吸着させる(ステップST1)。そして、移動経路番号SKをSK=2に設定し、装着ヘッド14を斜め正方向移動経路で移動させる(ステップST2)。そして、吸着ずれ計測部34により、各ノズル14N(n)(n=1,2,・・・,8)についての吸着ずれを計測したうえで、得られた吸着ずれの値dp(2,n)(n=1,2,・・・,8)を記憶部32に記憶させる(ステップST3)。
【0065】
制御装置18は、装着ヘッド14を斜め正方向移動経路で移動させて得られた吸着ずれの値dp(2,n)(n=1,2,・・・,8)を記憶部32に記憶させたら、移動経路番号SKをSK=3に設定し、装着ヘッド14を斜め逆方向移動経路で移動させる(ステップST4)。そして、吸着ずれ計測部34により、各ノズル14N(n)(n=1,2,・・・,8)についての吸着ずれを計測したうえで、得られた吸着ずれの値dp(3,n)(n=1,2,・・・,8)を記憶部32に記憶させる(ステップST5)。
【0066】
制御装置18は、装着ヘッド14を斜め逆方向移動経路で移動させて得られた吸着ずれの値dp(3,n)(n=1,2,・・・,8)の値を記憶部32に記憶させたら、移動経路番号SKをSK=1に設定し、装着ヘッド14を横正方向移動経路で移動させる(ステップST6)。そして、吸着ずれ計測部34により、各ノズル14N(n)(n=1,2,・・・,8)についての吸着ずれを計測したうえで、得られた吸着ずれの値dp(1,n)(n=1,2,・・・,8)を記憶部32に記憶させる(ステップST7)。
【0067】
制御装置18は、上記一連のステップST1~ST7を実行したら、8本のノズル14Nそれぞれについて、斜め正方向移動経路に対応する吸着ずれdp(2,n)から横正方向移動経路に対応する吸着ずれdp(1,n)を差し引き、これにより得られる差分値を、斜め正方向移動経路についての吸着ずれ差分値dr(2,n)(n=1,2,・・・,n)として算出する(ステップST8)。そして、その算出された吸着ずれ差分値dr(2,n)(n=1,2,・・・,n)を、斜め正方向移動経路(SK=2)についての計測誤差として、記憶部32に記憶させる(ステップST9)。ここで、斜め正方向移動経路についての計測誤差のX軸方向成分であるdrX(2,n)とY軸方向成分であるdrY(2,n)を詳細に記すと、n=1,2,・・・,8として、下記のようになる。
X軸方向成分:drX(2,n)=dpX(2,n)-dpX(1,n)
Y軸方向成分:drY(2,n)=dpY(2,n)-dpY(1,n)
【0068】
制御装置18は、ステップST9で斜め正方向移動経路についての吸着ずれの差分値を記憶部32に記憶させたら、続いて、8本のノズル14Nそれぞれについて、斜め逆方向移動経路に対応する吸着ずれdp(3,n)から横正方向移動経路に対応する吸着ずれdp(1,n)を差し引き、これにより得られる差分値を、斜め逆方向移動経路についての吸着ずれの差分値dr(3,n)(n=1,2,・・・,n)として算出する(ステップST10)。そして、その算出された吸着ずれ差分値dr(3,n)(n=1,2,・・・,n)を、斜め逆方向移動経路(SK=3)についての計測誤差として、記憶部32に記憶させる(ステップST11)。ここで、斜め逆方向移動経路についての計測誤差のX軸方向成分であるdrX(3,n)とY軸方向成分であるdrY(3,n)を詳細に記すと、n=1,2,・・・,8として、下記のようになる。
X軸方向成分:drX(3,n)=dpX(3,n)-dpX(1,n)
Y軸方向成分:drY(3,n)=dpY(3,n)-dpY(1,n)
【0069】
制御装置18は、上記のようにして斜め正方向移動経路についての計測誤差と斜め逆方向移動経路についての計測誤差を記憶部32に記憶させたら、計測誤差算出作業を終了する。
【0070】
このように、本実施の形態における部品装着装置1では、計測誤差を、ノズル14Nで部品BHを吸着した装着ヘッド14を横方向移動経路および斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと装着ヘッド14を斜め方向各移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を求めることによって算出するようになっている。
【0071】
次に、装着ずれの測定手順について説明する。装着ずれの測定は、装着ずれの測定用に用意した基板KB(ずれ測定用基板)を基板搬送路12によって作業位置に位置決めし、装着ヘッド14を横方向移動経路(SK=1)で移動させて、ずれ測定用基板上に設定された目標装着座標(標定座標と称する)に部品BHを装着する。部品BHの装着は4種の装着角度(0°、90°、180°および270°)のそれぞれについて行い、部品BHを標定座標に装着するときは、装着ヘッド14が横方向移動経路で部品認識カメラ17の上方を移動したときに吸着ずれ計測部34によって計測された吸着ずれがキャンセルされるように補正した制御値で装着ヘッド14を作動させるようにする。
【0072】
これにより4種の装着角度Θ(=0°,90°,180°,270°)のそれぞれに対応した8個の部品BH(総計で32個の部品BH)がずれ測定用基板に装着された状態となったら、基板認識カメラ16によって、基板KBに装着された32個の部品BHをそれぞれ撮像し、対応する目標装着座標からの位置ずれを測定する。これにより、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させた場合についての、4種の装着角度Θ(=0°,90°,180°,270°)それぞれに対応した、8本のノズル14Nそれぞれについての、装着ずれが測定される。そして、この測定された装着ずれの値は、記憶部32に記憶される。なお、各ノズル14Nにより各装着角度で複数点ずつ装着してそれぞれの装着ずれを測定し、得られた平均値をそのノズル14Nおよび装着角度についての装着ずれとするようにしてもよい。
【0073】
制御装置18は、部品装着作業における前述の装着工程で、装着ヘッド14を移動経路選択部33で選択された移動経路で移動させる場合には、装着ヘッド14が部品認識カメラ17の上方を通過したときに吸着ずれ計測部34で計測された吸着ずれ
dp(SK,n)=(dpX(SK,n),dpY(SK,n))
SK=1,2,3;n=1,2,・・・,8
のほか、記憶部32に記憶された吸着ずれ差分値
dr(SK,n)=(drX(SK,n),drY(SK,n))
SK=1,2,3;n=1,2,・・・,8
と、装着ずれ
dm(n,Θ)=dmX(n,Θ)+dmY(n,Θ)
n=1,2,・・・,8;Θ=0°,90°,180°,270°
を用いて、装着ヘッド14の制御値を補正する。
【0074】
ここで、装着ヘッド14の制御値を補正するための補正値を詳細に示すと、
横方向移動経路(SK=1)の場合
X軸方向の補正値=dpX(1,n)+dmX(n,Θ)
Y軸方向の補正値=dpY(1,n)+dmX(n,Θ)
斜め正方向移動経路(SK=2)の場合
X軸方向の補正値=dpX(2,n)+drX(2,n)+dmX(n,Θ)
Y軸方向の補正値=dpY(2、n)+drY(2,n)+dmY(n,Θ)
斜め逆方向移動経路(SK=3)の場合
X軸方向の補正値=dpX(3,n)+drX(3,n)+dmX(n,Θ)
Y軸方向の補正値=dpY(3,n)+drY(3,n)+dmY(n,Θ)
となる。
【0075】
制御装置18は、上記の制御値の補正値を算出したら、その補正着で装着ヘッド14の制御値を補正して装着ヘッド14を作動させ、基板KBに部品BHを装着させる。これにより各部品BHは、吸着ずれと装着ずれがキャンセルされた正確な姿勢でそれぞれの目標装着座標に装着される。
【0076】
このように、本実施の形態における部品装着装置1は、部品認識カメラ17による撮像結果に基づいて、ノズル14Nによる部品BHの正規の吸着位置に対する部品BHの位置ずれである吸着ずれを計測する吸着ずれ計測部34と、装着ヘッド14が斜め方向移動経路で移動する場合に生じる吸着ずれの計測誤差および装着ヘッド14が横方向移動経路で移動して部品BHを所定の標定座標に装着した場合に測定される部品BHの標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶された記憶部32とを備えた構成となっており、その上で、装着ヘッド14は、横方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には吸着ずれおよび装着ずれが補正された制御値で制御されて基板KBに部品を装着し、斜め方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には、吸着ずれ、計測誤差および装着ずれが補正された制御値で制御されて基板KBに部品BHを装着するようになっている。
【0077】
ここで、吸着ずれの計測誤差との装着ずれとの関係について説明する。前述したように、計測誤差は、装着ヘッド14が斜め方向移動経路で移動した場合の、装着ヘッド14が横方向移動経路で移動した場合に対する吸着ずれの差分値として求められるものである。この計測誤差は、仮に装着ヘッド14を斜め方向移動経路で移動させ、そのとき計測される吸着ずれがキャンセルされるように補正した制御値で部品BHをずれ測定用基板の標定座標に装着した場合に測定されるべき装着ずれと、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させ、そのとき計測される吸着ずれがキャンセルされるように補正した制御値で部品BHをずれ測定用基板の標定座標に装着した場合に測定される装着ずれdm(n,Θ)との間の差分値に相当する。
【0078】
従って、装着ヘッド14を斜め方向移動経路で移動させて装着ずれを測定しなくても、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させて測定された装着すれdm(n,Θ)に計測誤差を加味する(すなわち、横方向移動経路で測定された装着ずれを計測誤差分だけ補正する)ことで、計算によって求められることになる。すなわち、計測誤差は、横方向移動経路で測定された装着ずれを補正する装着ずれ補正値としての意味をもつものであり、計測誤差を加味した装着ヘッド14の制御値の補正は、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させて部品BHを目標装着座標に装着するときには不要であるが、装着ヘッド14を斜め方向移動経路(斜め正方向移動経路または斜め逆方向移動経路)で移動させて部品BHを目標装着座標に装着するときには必要となる。なお、計測誤差を加味した装着ヘッド14の制御値の補正は移動経路の如何によらず行うとしたうえで、装着ヘッド14を横方向移動経路で移動させる場合には計測誤差は「0」であるという取り扱いをしても構わない。
【0079】
本実施の形態における部品装着装置1(部品装着方法)では、装着ヘッド14が斜め方向移動経路(斜め正方向移動経路または斜め逆方向移動経路)で移動する場合に生じる吸着ずれの計測誤差と、装着ヘッド14が横方向移動経路で移動して部品BHを所定の標定座標に装着した場合に測定される部品BHの標定座標からの位置ずれである装着ずれが記憶部32に記憶されており、装着ヘッド14が横方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には、装着ヘッド14の制御値を補正するために必要な装着ずれを実測して記憶部に記憶されている値を読み出して用い、装着ヘッド14が斜め方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には、装着ずれを、横方向移動経路に対応して計測された装着ずれを計測誤差で補正した値で代用することに相当する。
【0080】
このため、本実施の形態では、装着ヘッド14が斜め方向移動経路(斜め正方向移動経路または斜め逆方向移動経路)で移動する場合に必要な装着ずれを、吸着ずれの計測誤差が生じない横方向移動経路で装着ヘッド14を移動させて測定した測定ずれの値を計測誤差で補正して処理することができる。よって、装着ヘッド14を斜め方向移動経路で移動させて装着ずれを測定する必要はなく、本来、実際に装着ヘッド14を斜め方向移動経路で移動させて装着ずれを測定すべき作業を省く(計算で求める)ことができるので、装着ずれの測定に要する時間を大幅に短縮することが可能である。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態における部品装着装置1(部品装着方法)では、装着ヘッド14が、基板搬送路12による基板KBの搬送方向に対して斜めに交差する斜め方向移動経路で移動して部品認識カメラ17に部品BHを撮像させることができるようになっており、装着ヘッド14は部品認識カメラ17に部品BHを撮像させている間にも部品供給部(部品供給ユニット13)側から基板搬送路12側に向かう方向に移動するので、その分、タクトを向上させることができる。このため、装着ヘッド14が部品BHを吸着してから基板KBに装着するまでに要する時間を短縮化でき、高い生産性を実現できる。
【0082】
また、本実施の形態における部品装着装置1(部品装着方法)では、装着ヘッド14が横方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には、装着ヘッド14の制御値を補正するために必要な装着ずれを実測して記憶部に記憶されている値を読み出して用い、装着ヘッド14が斜め方向移動経路で移動して基板KBに部品BHを装着する場合には、装着ずれを、横方向移動経路に対応して計測された装着ずれを計測誤差で補正した値として計算によって求めることができるようになっている。このため、装着ヘッド14が斜め方向移動経路(斜め正方向移動経路または斜め逆方向移動経路)で移動する場合に必要な装着ずれを、吸着ずれの計測誤差が生じない横方向移動経路で装着ヘッド14を移動させて測定した測定ずれの値を計測誤差で補正して処理することができ、装着ずれの取得作業に要する時間と労力を大きく低減できる。
【0083】
また、本実施の形態における部品装着装置1(部品装着方法)では、計測誤差の算出を、ノズルで部品を吸着した装着ヘッドを横方向移動経路および斜め方向移動経路それぞれで順次移動させ、装着ヘッドを横方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれと装着ヘッドを斜め方向移動経路で移動させた場合に計測される吸着ずれとの間の差分値を求めることによって算出するようになっている。このため計測誤差を極めて容易に取得することができる。
【0084】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、ノズル14Nの数は8本であったが、これは一例であり、ノズル14Nの数は特に限定されない。また、上述の実施の形態では、移動経路が横方向移動経路と斜め方向移動経路の中から選択できるようになっていたが、装着ヘッド14の移動経路が斜め方向移動経路に固定(限定)されている場合にも、本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
装着ヘッドがノズルで部品を吸着してから基板に装着するまでに要する時間を短縮化してより高い生産性を実現できる部品装着装置および部品装着方法を提供する。
【符号の説明】
【0086】
1 部品装着装置
12 基板搬送路
13 部品供給ユニット(部品供給部)
14 装着ヘッド
14N ノズル
17 部品認識カメラ
32 記憶部
34 吸着ずれ計測部
BH 部品
KB 基板
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