IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7523075化合物及びその製造方法、樹脂、組成物、レジスト膜、パターン形成方法、リソグラフィー用下層膜、光学部品、並びに化合物又は樹脂の精製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法、樹脂、組成物、レジスト膜、パターン形成方法、リソグラフィー用下層膜、光学部品、並びに化合物又は樹脂の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 345/00 20060101AFI20240719BHJP
   C07D 329/00 20060101ALI20240719BHJP
   C07D 343/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08L 85/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 79/00 20060101ALI20240719BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240719BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20240719BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240719BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D345/00 CSP
C07D329/00
C07D343/00
C08L85/00
C08K5/23
C08K5/54
C08G79/00
G03F7/11 503
G03F7/023
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021518391
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018481
(87)【国際公開番号】W WO2020226150
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019088273
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏人
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033943(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188450(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188451(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188452(WO,A1)
【文献】特開2019-099563(JP,A)
【文献】DREW, Harry Dugald Keith,XXXIII.-Cyclic organo-metallic compounds. Part I. Compounds of Tellurium.,Journal of the Chemical Society,1926年,223-231
【文献】HELLWINKEL, Dieter et al,Bis-biphenylen-tellur,Tetrahedron Letters,1965年,(23),1823-1827
【文献】PETRAGNANI,N.,Aryl Tellurium trihalides--I,Tetrahedron,1960年,11,15-21
【文献】SATO, Soichi,First detection of 2,2'-Biphenylylenediphenylsulfurane and -Selenurane [10-M-4(C4), M=S,Se] by low t,Tetrahedron Letters,1995年,36(16),2803-2806
【文献】ENGMAN,Lars,Synthesis of 2,3,7,8-tetramethoxydibenzotellurophene and its thio and seleno analogues,Journal of the Heterocyclic Chemistry,1984年,21(Mar-Apr),413-416
【文献】FELL, Valentin H.K.,Synthesis and optical characterization of hybrid organic-inorganic heterofluorene polymers,Macromolecules,2017年,50,2338-2343
【文献】MATEESCU, Maria,Relations entre la structure chimique et l'activite antibacterienne de certains composes appartenant,Archives Roumaines de Pathologie Experimentale et de Microbiologie,1978年,37(1),13-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08L
C08K
C08G
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(X)で示される化合物。
【化1】
(式(X)中、Xは、下記式(1A)で示される基であり、Yは、単結合、酸素原子又は硫黄原子であり、Pは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。)
【化4】
(式(1A)中、pは各々独立して0~3の整数であり、R は、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;或いはエーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基であり、R は、各々独立して、水素原子、架橋性反応基又は解離性反応基であり、n は各々独立して、0~(5+2×p)の整数であり、n は各々独立して、0~(5+2×p)の整数である。但し、少なくとも一つのn は1~(5+2×p)の整数である。*はTeに接続していることを表す。前記架橋性反応基は、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アルコキシメチル基、又はシアノ基である。前記解離性反応基は、酸により解離する性質を有する、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、又はアルコキシカルボニルアルキル基である。)
【請求項2】
前記式(1A)において、Rは、各々独立して、アルキル基、アリール基又はアルケニル基である前記炭化水素基、或いは前記ハロゲン原子である請求項に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1A)において、pは0である請求項又はに記載の化合物。
【請求項4】
前記式(1A)において、n及びnは1である請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記式(1A)において、少なくとも一つのRは解離性反応基である請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記式(1A)において、前記Rは全て水素原子である請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
下記式(B1-M)で示される構成単位を含む樹脂。
【化6】
(式(B1-M)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Yは、単結合、酸素原子又は硫黄原子であり、P は、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。、下記式(5)で示される基である。)
【化7】
(式(5)中、Rは、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキレン基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、R5’は各々独立して、下記式(5’)のいずれかの基である。)
【化8】
(式(5’)中、*はRに接続していることを表す。)
【請求項8】
下記式(B2-M’)で示される構成単位を含む樹脂。
【化9】
(式(B2-M’)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Yは、単結合、酸素原子又は硫黄原子であり、P は、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。は、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状の3価の脂肪族基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20の3価の芳香族基であり、R6’は各々独立して、下記式(6’)のいずれかの基である。)
【化10】
(式(6’)中、*はRに接続していることを表す。)
【請求項9】
下記式(C1)で示される構成単位を含む樹脂。
【化11】
(式(C1)中、Rは、各々独立して酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、rは0~3の整数であり、nは2~(4+2×r)である。Yは、単結合、酸素原子又は硫黄原子であり、P は、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物又は請求項のいずれか一項に記載の樹脂を含有する組成物。
【請求項11】
溶媒を更に含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酸発生剤を更に含有する、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
酸架橋剤を更に含有する、請求項1012のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ジアゾナフトキノン光活性化合物を更に含有する、請求項1013のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1014のいずれか一項に記載の組成物から形成されたレジスト膜。
【請求項16】
請求項1014のいずれか一項に記載の組成物を用いて基板上に膜を形成する膜形成工程と、
前記膜を露光する露光工程と、
前記露光工程において露光された膜を現像してパターンを形成する現像工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項17】
ケイ素含有化合物を更に含有する、請求項1014のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ケイ素含有化合物が、加水分解性オルガノシラン、その加水分解物又はその加水分解縮合物である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項101417及び18のいずれか一項に記載の組成物を用いて形成されたリソグラフィー用下層膜。
【請求項20】
請求項1014のいずれか一項に記載の組成物を用いて形成された光学部品。
【請求項21】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物又は請求項のいずれか一項に記載の樹脂を、水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶媒に溶解させて溶液(A)を得る工程と、
得られた溶液(A)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する第一抽出工程と、
を含む化合物又は樹脂の精製方法。
【請求項22】
前記酸性の水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液;又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液である請求項21に記載の化合物又は樹脂の精製方法。
【請求項23】
前記水と任意に混和しない有機溶媒が、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒である請求項21又は22に記載の化合物或いは樹脂の精製方法。
【請求項24】
前記第一抽出工程後、前記化合物又は前記樹脂を含む溶液相を更に水に接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する第二抽出工程を含む請求項2123のいずれか一項に記載の化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法、樹脂、組成物、レジスト膜、パターン形成方法、リソグラフィー用下層膜、光学部品、並びに化合物又は樹脂の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの一般的なレジスト材料は、アモルファス薄膜を形成可能な高分子系レジスト材料である。例えば、ポリメチルメタクリレートや、解離性反応基を有するポリヒドロキシスチレン又はポリアルキルメタクリレート等の高分子系レジスト材料が挙げられる。そして、このような高分子系レジスト材料の溶液を基板上に塗布することにより作製したレジスト薄膜に紫外線、遠紫外線、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などを照射することにより、45~100nm程度のラインパターンを形成している。
【0003】
しかしながら、高分子系レジスト材料は分子量が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広い。このため、高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、微細パターン表面にラフネスが生じ、パターン寸法を制御することが困難となり、歩留まりが低下する。従って、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは微細化に限界がある。より微細なパターンを作製するために、種々の低分子量レジスト材料が提案されている。
【0004】
例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1及び2参照)が提案されている。また、高耐熱性を有する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3及び非特許文献1参照)も提案されている。更に、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノール化合物が低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネスの改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
また、電子線又は極端紫外線(Extreme UltraViolet:以下、適宜“EUV”と称する。)によるリソグラフィーは、反応メカニズムが通常の光リソグラフィーと異なる。更に、電子線又はEUVによるリソグラフィーにおいては、数十nmの微細なパターン形成を目標としている。このようにレジストパターン寸法が小さくなるほど、露光光源に対して高感度であるレジスト材料が求められる。特にEUVによるリソグラフィーでは、スループットの点で、レジスト組成物の高感度化を図る必要がある。
これらの問題を改善するレジスト材料として、チタン、ハフニウムやジルコニウムを有する無機レジスト材料が提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-326838号公報
【文献】特開2008-145539号公報
【文献】特開2009-173623号公報
【文献】特開2015-75500号公報
【文献】特開2015-108781号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【文献】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に記載の組成物は耐熱性が十分では無く、得られるレジストパターンの形状が悪くなるおそれがある。前記特許文献3や非特許文献1に記載の組成物は、半導体製造プロセスに用いられる安全溶媒に対する溶解性が十分でない。また、前記特許文献3や非特許文献1に記載の組成物は、感度も十分でなく、得られるレジストパターン形状が悪くなる場合があり、低分子量レジスト材料のさらなる改良が望まれている。前記非特許文献2には溶解性について記載がなく、記載された化合物の耐熱性はいまだ十分ではなく、耐熱性の一段の向上が求められている。また、前記特許文献4~5に記載のレジスト材料は、比較的高感度であるもののいまだ十分な感度では無かった。更に、当該レジスト材料は、安全溶媒に対する溶解性が低く、保存安定性が悪く、膜に欠陥が多い等の欠点があった。
【0009】
本発明の目的は、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、安全溶媒に対する溶解性の高い化合物及びその製造方法、並びに樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定構造を有する化合物が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は次のとおりである。
【0012】
[1]下記式(X)で示される化合物。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(X)中、Xは、下記式(A-1)で示される基又はハロゲン原子であり、Yは、単結合、ヘテロ原子又は2価の基であり、Pは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。2つのX同士が結合して下記式(A-1-1)で示される基を形成していてもよい。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式(A-1)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、pは、各々独立して0~3の整数であり、nは、各々独立して0~(5+2×p)の整数である。*はTeに接続していることを表す。)
【0017】
【化3】
【0018】
(式(A-1-1)中、R、p、nは前記式(A-1)と同義であり、Zは、酸素原子、硫黄原子又は単結合である。*はTeに接続していることを表す。)
【0019】
[2]前記式(A-1)及び前記式(A-1-1)において、Rは、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基;或いは水酸基又は水酸基の水素原子が架橋性反応基又は解離性反応基で置換された基である[1]に記載の化合物。
【0020】
[3]前記式(A-1)で示される基が下記式(1A)で示される基であり、前記式(A-1-1)で示される基が下記式(1A-1)で示される基である[1]に記載の化合物。
【0021】
【化4】
【0022】
(式(1A)中、pは前記式(A-1)と同義であり、Rは、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;或いはエーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基であり、Rは、各々独立して、水素原子、架橋性反応基又は解離性反応基であり、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数であり、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数である。但し、少なくとも一つのnは1~(5+2×p)の整数である。*はTeに接続していることを表す。)
【0023】
【化5】
【0024】
(式(1A-1)中、p、R、n、R及びnは前記式(1A)と同義であり、Zは、酸素原子、硫黄原子又は単結合である。*はTeに接続していることを表す。)
【0025】
[4]前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、Rは、各々独立して、アルキル基、アリール基又はアルケニル基である前記炭化水素基、或いは前記ハロゲン原子である[3]に記載の化合物。
【0026】
[5]前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、pは0である[3]又は[4]に記載の化合物。
【0027】
[6]前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、n及びnは1である[3]~[5]のいずれかに記載の化合物。
【0028】
[7]前記式(1A)及び前記式(1A-1)の各々において、少なくとも一つのRは解離性反応基である[3]~[6]のいずれかに記載の化合物。
【0029】
[8]前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、前記Rは全て水素原子である[3]~[6]のいずれかに記載の化合物。
【0030】
[9][1]~[8]のいずれかに記載の化合物に由来する構成単位を含む樹脂。
【0031】
[10]下記式(B1-M)で示される構成単位を含む[9]に記載の樹脂。
【0032】
【化6】
【0033】
(式(B1-M)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。Rは、単結合又は下記式(5)で示される基である。)
【0034】
【化7】
【0035】
(式(5)中、Rは、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキレン基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、R5’は各々独立して、下記式(5’)のいずれかの基である。)
【0036】
【化8】
【0037】
(式(5’)中、*はRに接続していることを表す。)
【0038】
[11]前記Rは、前記式(5)で示される基である[10]に記載の樹脂。
【0039】
[12]下記式(B2-M’)で示される構成単位を含む[9]に記載の樹脂。
【0040】
【化9】
【0041】
(式(B2-M’)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。Rは、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状の3価の脂肪族基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20の3価の芳香族基であり、R6’は各々独立して、下記式(6’)のいずれかの基である。)
【0042】
【化10】
【0043】
(式(6’)中、*はRに接続していることを表す。)
【0044】
[13]下記式(C1)で示される構成単位を含む[9]に記載の樹脂。
【0045】
【化11】
【0046】
(式(C1)中、Rは、各々独立して酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、rは0~3の整数であり、nは2~(4+2×r)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。)
【0047】
[14]前記式(X)中Xがハロゲン原子である、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
ハロゲン化テルルと、下記式(Y-1)で示される化合物とを反応させる工程を含む、化合物の製造方法。
【0048】
【化12】
【0049】
(式(Y-1)中、Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。)
【0050】
[15]前記式(X)中、Xが前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基である、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
前記式(X)中Xがハロゲン原子である前記化合物と、下記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物とを反応させる工程を含む、化合物の製造方法。
【0051】
【化13】
【0052】
(式(B-1)中、R、n及びpは前記式(A-1)と同義である。)
【0053】
【化14】
【0054】
(式(B-1-1)中、Z、R、n及びpは前記式(A-1-1)と同義である。)
【0055】
[16][1]~[8]のいずれかに記載の化合物又は[9]~[13]のいずれかに記載の樹脂を含有する組成物。
【0056】
[17]溶媒を更に含有する、[16]に記載の組成物。
【0057】
[18]酸発生剤を更に含有する、[16]又は[17]に記載の組成物。
【0058】
[19]酸架橋剤を更に含有する、[16]~[18]のいずれかに記載の組成物。
【0059】
[20]ジアゾナフトキノン光活性化合物を更に含有する、[16]~[19]のいずれかに記載の組成物。
【0060】
[21][16]~[20]のいずれかに記載の組成物から形成されたレジスト膜。
【0061】
[22][16]~[20]のいずれかに記載の組成物を用いて基板上に膜を形成する膜形成工程と、
前記膜を露光する露光工程と、
前記露光工程において露光された膜を現像してパターンを形成する現像工程と、
を含むパターン形成方法。
【0062】
[23]ケイ素含有化合物を更に含有する、[16]~[20]のいずれかに記載の組成物。
【0063】
[24]前記ケイ素含有化合物が、加水分解性オルガノシラン、その加水分解物又はその加水分解縮合物である[23]に記載の組成物。
【0064】
[25][16]~[20]、[23]及び[24]のいずれかに記載の組成物を用いて形成されたリソグラフィー用下層膜。
【0065】
[26][16]~[20]のいずれかに記載の組成物を用いて形成された光学部品。
【0066】
[27][1]~[8]のいずれかに記載の化合物又は[9]~[13]のいずれかに記載の樹脂を、水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶媒に溶解させて溶液(A)を得る工程と、
得られた溶液(A)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する第一抽出工程と、
を含む化合物の精製方法。
【0067】
[28]前記酸性の水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液;又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液である[27]に記載の化合物又は樹脂の精製方法。
【0068】
[29]前記水と任意に混和しない有機溶媒が、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒である[27]又は[28]に記載の化合物或いは樹脂の精製方法。
【0069】
[30]前記第一抽出工程後、前記化合物又は前記樹脂を含む溶液相を更に水に接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する第二抽出工程を含む[27]~[29]のいずれかに記載の化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、安全溶媒に対する溶解性の高い化合物及びその製造方法、並びに樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明の実施の形態について説明する(以下、「本実施形態」と称する場合がある)。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0072】
[化合物]
本実施形態に係る化合物は、下記式(X)で示される。
【0073】
【化15】
【0074】
(式(X)中、Xは、下記式(A-1)で示される基又はハロゲン原子であり、Yは、単結合、ヘテロ原子又は2価の基であり、Pは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子であり、qは、各々独立して0~3の整数であり、vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。2つのX同士が結合して下記式(A-1-1)で示される基を形成していてもよい。)
【0075】
【化16】
【0076】
(式(A-1)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、pは、各々独立して0~3の整数であり、nは、各々独立して0~(5+2×p)の整数である。*はTeに接続していることを表す。)
【0077】
【化17】
【0078】
(式(A-1-1)中、R、p、nは前記式(A-1)と同義であり、Zは、酸素原子、硫黄原子又は単結合である。*はTeに接続していることを表す。)
【0079】
本実施形態に係る化合物の化学構造は、H-NMR分析により決定できる。本実施形態に係る化合物は、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、安全溶媒に対する溶解性の高い。また、本実施形態に係る化合物は、前記式(X)のとおり、テルルを含むため、特にEUVによるリソグラフィーにおいて増感効果が期待できる。またベンゼン骨格又はナフタレン骨格等を有するため、耐熱性に優れる。
【0080】
前記式(X)中、Xは、前記式(A-1)で示される基又はハロゲン原子である。2つのX同士が結合して前記式(A-1-1)で示される基を形成していてもよい。前記式(A-1-1)で示される基は、2つの前記式(A-1)で示される基がZにより結合した2価の基であり、2つの*はTeにそれぞれ接続している。前記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0081】
前記式(A-1)中、pは、各々独立して0~3の整数であり、(縮合)環構造(以下、該環構造を“環構造A”と称することがある。))の構造を決定する値である。即ち、下記に示すように、式(A-1)において、p=0の場合には環構造Aはベンゼン構造を示し、p=1の場合には環構造Aはナフタレン構造を示し、p=2の場合には環構造Aはアントラセン又はフェナントレン等の三環構造を示し、p=3の場合には環構造Aはピレン等の四環構造を示す。特に限定されるものではないが、前記環構造Aとしては、溶解性の観点からベンゼン構造又はナフタレン構造(p=0又は1)が好ましい。式(A-1)において、R及びTe(*)は環構造A上の任意の結合可能部位に結合される。
【0082】
【化18】
【0083】
前記式(A-1)中、Rは、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子である。
【0084】
ここで、酸素原子を含む1価の基としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数1~20のアシル基、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素数1~6の直鎖状アルキルオキシ基、炭素数3~20の分岐状アルキルオキシ基、炭素数3~20の環状アルキルオキシ基、炭素数2~6の直鎖状アルケニルオキシ基、炭素数3~6の分岐状アルケニルオキシ基、炭素数3~10の環状アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数1~20のアシルオキシ基、炭素数2~20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数2~20の1-置換アルコキシメチル基、炭素数2~20の環状エーテルオキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基、アリルオキシ基、(メタ)アクリル基、グリシジルアクリレート基、グリシジルメタクリレート基及び水酸基等が挙げられる。
【0085】
炭素数1~20のアシル基としては、以下に限定されないが、例えば、メタノイル基(ホルミル基)、エタノイル基(アセチル基)、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0086】
炭素数2~20のアルコキシカルボニル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0087】
炭素数1~6の直鎖状アルキルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0088】
炭素数3~20の分岐状アルキルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0089】
炭素数3~20の環状アルキルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロデシルオキシ基等が挙げられる。
【0090】
炭素数2~6の直鎖状アルケニルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基等が挙げられる。
【0091】
炭素数3~6の分岐状アルケニルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、イソペンテニルオキシ基、イソヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0092】
炭素数3~10の環状アルケニルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロペニルオキシ基、シクロブテニルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基、シクロオクテニルオキシ基、シクロデシニルオキシ基等が挙げられる。
【0093】
炭素数6~10のアリールオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0094】
炭素数1~20のアシルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0095】
炭素数2~20のアルコキシカルボニルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、プロポキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基、オクチルオキシカルボニルオキシ基、デシルオキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0096】
炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n-プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、n-ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0097】
炭素数2~20の1-置換アルコキシメチル基としては、以下に限定されないが、例えば、1-シクロペンチルメトキシメチル基、1-シクロペンチルエトキシメチル基、1-シクロヘキシルメトキシメチル基、1-シクロヘキシルエトキシメチル基、1-シクロオクチルメトキシメチル基及び1-アダマンチルメトキシメチル基等が挙げられる。
【0098】
炭素数2~20の環状エーテルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、テトラヒドロピラニルオキシ基、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロチオピラニルオキシ基、テトラヒドロチオフラニルオキシ基、4-メトキシテトラヒドロピラニルオキシ基及び4-メトキシテトラヒドロチオピラニルオキシ基等が挙げられる。
【0099】
炭素数2~20のアルコキシアルキルオキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシエトキシ基、フェノキシメトキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。
【0100】
(メタ)アクリル基としては、以下に限定されないが、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。また、グリシジルアクリレート基は、グリシジルオキシ基にアクリル酸を反応させて得ることができるものであれば特に限定されない。更に、グリシジルメタクリレート基としては、グリシジルオキシ基にメタクリル酸を反応させて得ることができるものであれば特に限定されない。
【0101】
硫黄原子を含む1価の基としては、以下に限定されないが、例えば、チオール基等が挙げられる。硫黄原子を含む1価の基としては、式(A-1)における環構造Aを構成する炭素原子に硫黄原子が直接結合した基であることが好ましい。
【0102】
窒素原子を含む1価の基としては、以下に限定されないが、例えば、ニトロ基、アミノ基、ジアゾ基等が挙げられる。窒素原子を含む1価の基としては、式(A-1)における環構造Aを構成する炭素原子に窒素原子が直接結合した基であることが好ましい。
【0103】
炭化水素基としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数2~20の直鎖状アルケニル基、炭素数3~20の分岐状アルケニル基、炭素数3~20の環状アルケニル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0104】
炭素数1~20の直鎖状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0105】
炭素数3~20の分岐状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2-ヘキシル基、2-デシル基、2-ドデシル基等が挙げられる。
【0106】
炭素数3~20の環状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、アダマンチル基、ビシクロヘキシル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
【0107】
炭素数2~20の直鎖状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、2-デシリニル基、2-ドデシリニル基等が挙げられる。
【0108】
炭素数3~20の分岐状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソデシル基、イソドデシル基等が挙げられる。
【0109】
炭素数3~20の環状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプタニル基、シクロオクテニル基、シクロデシニル基、シクロドデシニル基等が挙げられる。
【0110】
炭素数6~20のアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0111】
ハロゲン原子としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0112】
前記式(A-1)中、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数である。本実施形態においては、溶媒に対する溶解性の観点から、前記式(A-1)中のnの少なくとも1つが、1~4の整数であることが好ましい。
【0113】
本実施形態において、溶媒に対する溶解性と架橋性の導入との観点から、前記式(A-1)中のRの少なくとも1つが、酸素原子を含む1価の基であることが好ましい。
【0114】
前記式(A-1-1)中、Zは、酸素原子、硫黄原子又は単結合である。特に限定されるものではないが、Zとしては、耐熱性の観点から酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。式(A-1-1)において、Zは環構造上の任意の結合可能部位に結合される。
【0115】
前記式(A-1)及び前記式(A-1-1)において、Rは、硬化性の観点から、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基;或いは水酸基又は水酸基の水素原子が架橋性反応基又は解離性反応基で置換された基であることが好ましい。
【0116】
前記炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基が挙げられる。また、前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられ、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~40のアリール基等が挙げられる。
【0117】
直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数1~30の直鎖状アルキル基、炭素数3~30の分岐状アルキル基、炭素数3~30の環状アルキル基が挙げられる。
【0118】
炭素数1~30の直鎖状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0119】
炭素数3~30の分岐状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2-ヘキシル基等が挙げられる。
【0120】
炭素数3~30の環状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0121】
アリール基としては、以下に限定されないが、炭素数6~40のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0122】
アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数2~30の直鎖状アルケニル基、炭素数3~30の分岐状アルケニル基、炭素数3~30の環状アルケニル基が挙げられる。
【0123】
炭素数2~30の直鎖状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基等が挙げられる。
【0124】
炭素数3~30の分岐状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基等が挙げられる。
【0125】
炭素数3~30の環状アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプタニル基、シクロオクテニル基、シクロデシニル基等が挙げられる。
【0126】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0127】
エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基としては、メチルオキシメチル基、エチルオキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、n-ペンチルオキシメチル基、n-ヘキシルオキシメチル基、イソプロピルオキシメチル基、イソブチルオキシメチル基、tert-ブチルオキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基、2-ヘキシルオキシメチル基、シクロプロピルオキシメチル基、シクロブチルオキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、シクロオクチルオキシメチル基、シクロデシルオキシメチル基、メチルカルボニルメチル基、エチルカルボニルメチル基、n-プロピルカルボニルメチル基、n-ブチルカルボニルメチル基、n-ペンチルカルボニルメチル基、n-ヘキシルカルボニルメチル基、イソプロピルカルボニルメチル基、イソブチルカルボニルメチル基、tert-ブチルカルボニルメチル基、ネオペンチルカルボニルメチル基、2-ヘキシルカルボニルメチル基、シクロプロピルカルボニルメチル基、シクロブチルカルボニルメチル基、シクロペンチルカルボニルメチル基、シクロヘキシルカルボニルメチル基、シクロオクチルカルボニルメチル基、シクロデシルカルボニルメチル基、メチルオキシカルボニルメチル基、エチルオキシカルボニルメチル基、n-プロピルオキシカルボニルメチル基、n-ブチルオキシカルボニルメチル基、n-ペンチルオキシカルボニルメチル基、n-ヘキシルオキシカルボニルメチル基、イソプロピルオキシカルボニルメチル基、イソブチルオキシカルボニルメチル基、tert-ブチルオキシカルボニルメチル基、ネオペンチルオキシカルボニルメチル基、2-ヘキシルオキシカルボニルメチル基、シクロプロピルオキシカルボニルメチル基、シクロブチルオキシカルボニルメチル基、シクロペンチルオキシカルボニルメチル基、シクロヘキシルオキシカルボニルメチル基、シクロオクチルオキシカルボニルメチル基、シクロデシルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0128】
エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニルオキシメチル基、1-プロペニルオキシメチル基、2-プロペニルオキシメチル基(アリルオキシメチル基)、1-ブテニルオキシメチル基、2-ブテニルオキシメチル基、2-ペンテニルオキシメチル基、2-ヘキセニルオキシメチル基、イソプロペニルオキシメチル基、イソブテニルオキシメチル基、イソペンテニルオキシメチル基、イソヘキセニルオキシメチル基、シクロプロペニルオキシメチル基、シクロブテニルオキシメチル基、シクロペンテニルオキシメチル基、シクロヘキセニルオキシメチル基、シクロヘプタニルオキシメチル基、シクロオクテニルオキシメチル基、シクロデシニルオキシメチル基、ビニルカルボニルメチル基、1-プロペニルカルボニルメチル基、2-プロペニルカルボニルメチル基(アリルカルボニルメチル基)、1-ブテニルカルボニルメチル基、2-ブテニルカルボニルメチル基、2-ペンテニルカルボニルメチル基、2-ヘキセニルカルボニルメチル基、イソプロペニルカルボニルメチル基、イソブテニルカルボニルメチル基、イソペンテニルカルボニルメチル基、イソヘキセニルカルボニルメチル基、シクロプロペニルカルボニルメチル基、シクロブテニルカルボニルメチル基、シクロペンテニルカルボニルメチル基、シクロヘキセニルカルボニルメチル基、シクロヘプタニルカルボニルメチル基、シクロオクテニルカルボニルメチル基、シクロデシニルカルボニルメチル基、ビニルオキシカルボニルメチル基、1-プロペニルオキシカルボニルメチル基、2-プロペニルオキシカルボニルメチル基(アリルオキシカルボニルメチル基)、1-ブテニルオキシカルボニルメチル基、2-ブテニルオキシカルボニルメチル基、2-ペンテニルオキシカルボニルメチル基、2-ヘキセニルオキシカルボニルメチル基、イソプロペニルオキシカルボニルメチル基、イソブテニルオキシカルボニルメチル基、イソペンテニルオキシカルボニルメチル基、イソヘキセニルオキシカルボニルメチル基、シクロプロペニルオキシカルボニルメチル基、シクロブテニルオキシカルボニルメチル基、シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、シクロヘキセニルオキシカルボニルメチル基、シクロヘプタニルオキシカルボニルメチル基、シクロオクテニルオキシカルボニルメチル基、シクロデシニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0129】
エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基としては、フェニルオキシメチル基、ナフチルオキシメチル基、フェニルカルボニルメチル基、ナフチルカルボニルメチル基、フェニル基オキシカルボニルメチル、ナフチル基オキシカルボニルメチル等が挙げられる。架橋性反応基及び解離性反応基については後述する。
【0130】
前記式(A-1)で示される基は下記式(1A)で示される基であり、前記式(A-1-1)で示される基は下記式(1A-1)で示される基であることが好ましい。
【0131】
【化19】
【0132】
(式(1A)中、pは前記式(A-1)と同義であり、Rは、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;或いはエーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基であり、Rは、各々独立して、水素原子、架橋性反応基又は解離性反応基であり、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数であり、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数である。但し、少なくとも一つのnは1~(5+2×p)の整数である。*はTeに接続していることを表す。)
【0133】
【化20】
【0134】
(式(1A-1)中、p、R、n、R及びnは前記式(1A)と同義であり、Zは、酸素原子、硫黄原子又は単結合である。*はTeに接続していることを表す。)
【0135】
式(1A)において、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数であり、nは各々独立して、0~(5+2×p)の整数である。また、少なくとも一つのnは1~(5+2×p)の整数である。即ち、式(1A)で示される基は、環構造Aに対して少なくとも一つの「-OR」を有する。式(1A)及び式(1A-1)において、Z、R、-OR、Te(*)は環構造A上の任意の結合可能部位に結合される。このため、一つの環構造Aにおけるn+nの上限は、Te(*)(及びZ)と結合部位を考慮に入れた後の環構造Aの結合可能部位数の上限と一致する。なお、n+nは前記式(A-1)におけるnと一致する。
【0136】
は、各々独立して、炭化水素基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数1~30のアルキル基;エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数2~30のアルケニル基;或いはエーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含む炭素数6~40のアリール基である。Rは、前述した前記式(A-1)及び前記式(A-1-1)におけるRと同様であることができる。
【0137】
式(1A)において、Rは、各々独立して、水素原子、架橋性反応基又は解離性反応基である。
【0138】
本実施形態において「架橋性反応基」とは、ラジカル又は酸/アルカリの存在下で反応し、塗布溶媒や現像液に使用される酸、アルカリ又は有機溶媒に対する溶解性が変化する基をいう。架橋性反応基としては、例えば、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アルコキシメチル基、シアノ基が挙げられるが、ラジカル又は酸/アルカリの存在下で反応すれば、これらに限定されない。架橋性反応基は、生産性を向上させる観点から、酸の存在下で連鎖的に開裂反応を起こす性質を有することが好ましい。
【0139】
本実施形態において「解離性反応基」とは、開裂してアルカリ可溶性基を生成しうる基をいう。アルカリ可溶性基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヘキサフルオロイソプロパノール基などが挙げられ、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。前記解離性反応基としては、特に限定されないが、例えば、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂等において提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。
【0140】
前記解離性反応基の好ましい例としては、酸により解離する性質を有する、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基等が挙げられる。なお、前記解離性反応基は、架橋性官能基を有さないことが好ましい。
【0141】
置換メチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の置換メチル基とすることができ、炭素数4~18の置換メチル基が好ましく、炭素数6~16の置換メチル基がより好ましい。置換メチル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、2-メチルプロポキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、フェニルオキシメチル基、1-シクロペンチルオキシメチル基、1-シクロヘキシルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、4-ブロモフェナシル基、4-メトキシフェナシル基、ピペロニル基、及び下記式(13-1)で表される置換基群等を挙げることができる。なお、下記式(13-1)中のR2Aの具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0142】
【化21】
【0143】
前記式(13-1)中、R2Aは、炭素数1~4のアルキル基である。
【0144】
1-置換エチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数3~20の1-置換エチル基とすることができ、炭素数5~18の1-置換エチル基が好ましく、炭素数7~16の置換エチル基がより好ましい。1-置換エチル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-メトキシエチル基、1-メチルチオエチル基、1,1-ジメトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-エチルチオエチル基、1,1-ジエトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、t-ブトキシエチル基、2-メチルプロポキシエチル基、1-フェノキシエチル基、1-フェニルチオエチル基、1,1-ジフェノキシエチル基、1-シクロペンチルオキシエチル基、1-シクロヘキシルオキシエチル基、1-フェニルエチル基、1,1-ジフェニルエチル基、及び下記式(13-2)で表される置換基群等を挙げることができる。
【0145】
【化22】
【0146】
前記式(13-2)中、R2Aは、前記式(13-1)と同義である。
【0147】
1-置換-n-プロピル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数4~20の1-置換-n-プロピル基とすることができ、炭素数6~18の1-置換-n-プロピル基が好ましく、炭素数8~16の1-置換-n-プロピル基がより好ましい。1-置換-n-プロピル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-メトキシ-n-プロピル基及び1-エトキシ-n-プロピル基等を挙げることができる。
【0148】
1-分岐アルキル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数3~20の1-分岐アルキル基とすることができ、炭素数5~18の1-分岐アルキル基が好ましく、炭素数7~16の分岐アルキル基がより好ましい。1-分岐アルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2-メチルアダマンチル基、及び2-エチルアダマンチル基等を挙げることができる。
【0149】
シリル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数1~20のシリル基とすることができ、炭素数3~18のシリル基が好ましく、炭素数5~16のシリル基がより好ましい。シリル基の具体例としては、以下に限定されないが、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジエチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリ-tert-ブチルシリル基及びトリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0150】
アシル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20のアシル基とすることができ、炭素数4~18のアシル基が好ましく、炭素数6~16のアシル基がより好ましい。アシル基の具体例としては、以下に限定されないが、アセチル基、フェノキシアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、アダマンチルカルボニル基、ベンゾイル基及びナフトイル基等を挙げることができる。
【0151】
1-置換アルコキシメチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の1-置換アルコキシメチル基とすることができ、炭素数4~18の1-置換アルコキシメチル基が好ましく、炭素数6~16の1-置換アルコキシメチル基がより好ましい。1-置換アルコキシメチル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-シクロペンチルメトキシメチル基、1-シクロペンチルエトキシメチル基、1-シクロヘキシルメトキシメチル基、1-シクロヘキシルエトキシメチル基、1-シクロオクチルメトキシメチル基及び1-アダマンチルメトキシメチル基等を挙げることができる。
【0152】
環状エーテル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の環状エーテル基とすることができ、炭素数4~18の環状エーテル基が好ましく、炭素数6~16の環状エーテル基がより好ましい。環状エーテル基の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、4-メトキシテトラヒドロピラニル基及び4-メトキシテトラヒドロチオピラニル基等を挙げることができる。
【0153】
アルコキシカルボニル基としては、通常、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基とすることができ、炭素数4~18のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数6~16のアルコキシカルボニル基が更に好ましい。アルコキシカルボニル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基又は下記式(13-3)のn=0で表される解離性反応基群等を挙げることができる。
【0154】
アルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基とすることができ、炭素数4~18のアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、炭素数6~16のアルコキシカルボニルアルキル基が更に好ましい。アルコキシカルボニルアルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n-プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、n-ブトキシカルボニルメチル基又は下記式(13-3)のn=1~4で表される解離性反応基群等を挙げることができる。
【0155】
【化23】
【0156】
前記式(13-3)中、R3Aは水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、nは0~4の整数である。
【0157】
これらの解離性反応基のうち、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、より高い感度を発現する観点から、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基がより好ましく、更に炭素数3~12のシクロアルカン、ラクトン及び6~12の芳香族環から選ばれる構造を有する解離性反応基が更に好ましい。炭素数3~12のシクロアルカンとしては、単環でも多環でもよいが、多環であることが好ましい。炭素数3~12のシクロアルカンの具体例としては、以下に限定されないが、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられ、より具体的には、以下に限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロデカン等のポリシクロアルカンが挙げられる。これらの中でも、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロデカンが好ましく、アダマンタン、トリシクロデカンがより好ましい。炭素数3~12のシクロアルカンは置換基を有してもよい。ラクトンとしては、以下に限定されないが、例えば、ブチロラクトン又はラクトン基を有する炭素数3~12のシクロアルカンが挙げられる。6~12の芳香族環としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ナフタレン環がより好ましい。特に下記式(13-4)で表される解離性反応基群が、解像性が高く好ましい。
【0158】
【化24】
【0159】
前記式(13-4)中、R5Aは、水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R6Aは、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子又はカルボキシル基であり、n1Aは0~4の整数であり、n2Aは1~5の整数であり、n0Aは0~4の整数である。
【0160】
上述の構造的特徴により、前記式(1A)で示される基を有する化合物は、低分子量ながらも、その剛直さにより高い耐熱性を有し、高温ベーク条件でも使用可能である。また、該化合物を含む本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、このような低分子量であり、高温ベークが可能でありながら更にテルルを含有する化合物を含むことから高感度であり、更に、良好なレジストパターン形状を付与できる。
【0161】
前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、安全溶媒への溶解性の点から、Rは、各々独立して、アルキル基、アリール基又はアルケニル基である炭化水素基、或いはハロゲン原子であることが好ましい。
【0162】
前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、安全溶媒への溶解性やレジストパターンの特性、耐熱性の点から、pは0であることが好ましい。特に、前記式(1A)においてpは0であることが好ましい。
【0163】
前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、製造容易性の点からn及びnは1であることが好ましい。特に、前記式(1A)においてpは0であり、かつn及びnは1であることが好ましい。
【0164】
本実施形態において、アルカリ現像によりポジ型パターンを形成する場合又は有機現像によりネガ型パターンを形成する場合、良好なパターン形状を得る観点から、前記式(1A)及び前記式(1A-1)の各々において、少なくとも一つのRは解離性反応基であることが好ましい。
【0165】
本実施形態において、アルカリ現像によりネガ型パターンを形成する場合、良好なパターン形状を得る観点から、前記式(1A)及び前記式(1A-1)において、前記Rは全て水素原子であることができる。
【0166】
前記式(X)中、Yは、単結合、ヘテロ原子又は2価の基である。前記ヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられる。前記ヘテロ原子は窒素原子を含まないことができる。前記2価の基としては、例えばメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0167】
前記式(X)中、Pは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基又はハロゲン原子である。Pは、前記式(A-1)のRと同様であることができる。qは、各々独立して0~3の整数であり、前記式(A-1)のpと同様に縮合環構造を決定する値である。前記式(A-1)と同様に、q=0の場合にはベンゼン構造を示し、q=1の場合にはナフタレン構造を示し、q=2の場合にはアントラセン又はフェナントレン等の三環構造を示し、q=3の場合にはピレン等の四環構造を示す。溶解性の観点からqは0又は1であることが好ましい。式(X)において、pは環構造上の任意の結合可能部位に結合される。vは、各々独立して0~(4+2×q)の整数である。
【0168】
前記式(X)中、Xが前記式(A-1)で示される基である化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0169】
【化25】
【0170】
【化26】
【0171】
【化27】
【0172】
前記式(X)中、2つのX同士が結合して前記式(A-1-1)で示される基を形成している化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0173】
【化28】
【0174】
前記式(X)中、Xがハロゲン原子である化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0175】
【化29】
【0176】
【化30】
【0177】
[化合物の製造方法]
本実施形態において、前記式(X)で示される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、前記式(X)中Xがハロゲン原子である化合物の製造方法は、ハロゲン化テルルと、下記式(Y-1)で示される化合物とを反応させる工程を含むことができる。
【0178】
【化31】
【0179】
(式(Y-1)中、Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。)
【0180】
前記ハロゲン化テルルとしては、特に限定されず、例えば、テルル(IV)テトラフルオライド、テルル(IV)テトラクロライド、テルル(IV)テトラブロマイド、テルル(IV)テトラヨーダイド等が挙げられる。前記式(Y-1)で示される化合物は、市販で入手することができる。
【0181】
前記ハロゲン化テルルと前記式(Y-1)で示される化合物との縮合反応は、触媒存在下で行うことができる。触媒としては、酸性触媒または塩基性触媒が好ましく、ルイス酸またはルイス塩基がより好ましい。ルイス酸としては、特に制限されないが、中でも二座以上の配位能力のあるルイス酸が好ましい。具体的には、三弗化ホウ素、塩化アルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリメチルアルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、ジクロロチタンビストリフレート、ビスシクロペンタジエニルチタニウムビストリフレート、ジクロロチタニウムビスフルオロスルホネート、四塩化スズ、スズ(II)ビストリフレート等を例示することができる。また、四塩化チタンを触媒量のメタンスルホン酸トリメチルシリルエーテルと組み合わせることでも使用することもできる。ルイス塩基としては、特に制限されないが、具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、テトラメチレンジアミン、N-エチルピペリジン、ジアザビシクロ[2,2,0]ウンデセン、ジアザビシクロ[3,3,0]オクタン等を例示することができる。用いるルイス酸、ルイス塩基の組み合わせは、反応させる化合物の組み合わせによって適宜選択することができるが、中でも四塩化チタンとトリエチルアミンの組み合わせが好ましい。
【0182】
前記ハロゲン化テルルと前記式(Y-1)で示される化合物との縮合反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、用いるルイス酸に影響を及ぼさない溶媒であれば、特に制限されず、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒等を例示することができ、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。特に、塩化メチレン、クロロベンゼンが好ましい。
【0183】
前記ハロゲン化テルルと前記式(Y-1)で示される化合物との縮合反応条件は、特に限定されず、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、例えば、-70℃~40℃で0.5~120時間行うことができる。
【0184】
また、前記式(X)中、Xが前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基である化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、前記式(X)中Xがハロゲン原子である前記化合物と、下記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物とを反応させる工程を含むことができる。
【0185】
【化32】
【0186】
(式(B-1)中、R、n及びpは前記式(A-1)と同義である。)
【0187】
【化33】
【0188】
(式(B-1-1)中、Z、R、n及びpは前記式(A-1-1)と同義である。)
【0189】
式(X)中Xがハロゲン原子である化合物は、前記方法により製造することができる。式(X)中Xがハロゲン原子である化合物と、前記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物との反応は、例えば以下のように行うことができる。
【0190】
例えば、式(X)中Xがハロゲン原子である化合物と、前記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物との反応は、触媒存在下で行うことができる。触媒としては、酸性触媒または塩基性触媒が好ましく、ルイス酸またはルイス塩基がより好ましい。ルイス酸としては、特に制限されないが、中でも二座以上の配位能力のあるルイス酸が好ましい。具体的には、三弗化ホウ素、塩化アルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリメチルアルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、ジクロロチタンビストリフレート、ビスシクロペンタジエニルチタニウムビストリフレート、ジクロロチタニウムビスフルオロスルホネート、四塩化スズ、スズ(II)ビストリフレート等を例示することができる。また、四塩化チタンを触媒量のメタンスルホン酸トリメチルシリルエーテルと組み合わせることでも使用することもできる。ルイス塩基としては、特に制限されないが、具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、テトラメチレンジアミン、N-エチルピペリジン、ジアザビシクロ[2,2,0]ウンデセン、ジアザビシクロ[3,3,0]オクタン等を例示することができる。用いるルイス酸、ルイス塩基の組み合わせは、反応させる化合物の組み合わせによって適宜選択することができるが、中でも四塩化チタンとトリエチルアミンの組み合わせが好ましい。
【0191】
前記式(X)中Xがハロゲン原子である化合物と、前記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、用いるルイス酸に影響を及ぼさない溶媒であれば、特に制限されず、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒等を例示することができ、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。特に、塩化メチレン、クロロベンゼンが好ましい。
【0192】
前記式(X)中Xがハロゲン原子である化合物と、前記式(B-1)又は下記式(B-1-1)で示される化合物との反応は、特に限定されず、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、例えば、-70℃~40℃で0.5~120時間行うことができる。
【0193】
また、前記式(X)中、Xが前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基である化合物は、以下の方法により合成することもできる。例えば、アルコキシベンゼン類と対応するハロゲン化テルルを、反応させることによってポリアルコキシベンゼン化合物を得て、続いて三臭化ホウ素等の還元剤で還元反応を行い、ポリフェノール化合物を得て、得られたポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に公知の方法により解離性反応基を導入することにより、前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を得ることができる。
【0194】
また、フェノール類或いはチオフェノール類と対応するハロゲン化テルルを、反応させることによってポリフェノールオリゴマーを得て、得られたポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に公知の方法により解離性反応基を導入することにより、前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を得ることができる。
【0195】
更には、フェノール類或いはチオフェノール類と対応するテルルを含むアルデヒド類或いはテルルを含むケトン類を、酸又は塩基触媒下にて反応させることによってポリフェノール化合物を得て、得られたポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に公知の方法により解離性反応基を導入することにより、前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を得ることができる。
【0196】
特に限定されるものではないが、例えば、後述のように、四塩化テルル(テルル(IV)テトラクロライド)と、置換又は無置換のフェノール誘導体とを、塩基触媒存在下にて反応させて前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を合成することができる。即ち、前記式(X)中、Xが前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基である化合物は、四塩化テルルと、置換又は無置換のフェノール誘導体とを、塩基触媒存在下にて反応させて前記化合物を合成する工程を含む製造方法によっても製造することができる。
【0197】
前記ハロゲン化テルルとしては、特に限定されず、例えば、テルル(IV)テトラフルオライド、テルル(IV)テトラクロライド、テルル(IV)テトラブロマイド、テルル(IV)テトラヨーダイド等が挙げられる。
【0198】
前記アルコキシベンゼン類としては、特に限定されず、例えば、メトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、メチルメトキシベンゼン、メチルジメトキシベンゼン、フェニルメトキシベンゼン、フェニルジメトキシベンゼン、メトキシナフタレン、ジメトキシナフタレン、エトキシベンゼン、ジエトキシベンゼン、メチルエトキシベンゼン、メチルジエトキシベンゼン、フェニルエトキシベンゼン、フェニルジエトキシベンゼン、エトキシナフタレン、ジエトキシナフタレン等が挙げられる。
【0199】
前記ポリアルコキシベンゼン化合物を製造する際、反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、用いるアルコキシベンゼン類と対応するハロゲン化テルルとの反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、水、塩化メチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶媒を用いることができる。前記溶媒の量は、特に限定されず、例えば、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲とすることができる。
【0200】
前記テルルを含むポリフェノール化合物を製造する際、反応温度は、特に限定されず、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、10~200℃の範囲であることが好ましい。
【0201】
前記ポリアルコキシベンゼンの製造方法は、特に限定されないが、例えば、アルコキシベンゼン類と対応するハロゲン化テルルを一括で仕込む方法や、アルコキシベンゼン類と対応するハロゲン化テルルを滴下していく方法が挙げられる。反応終了後、系内に存在する未反応原料等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去することもできる。
【0202】
前記ポリアルコキシベンゼン化合物を製造する際の原料の量は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化テルル1モルに対し、アルコキシベンゼン類を1モル~過剰量使用し、常圧で、20~150℃で20分間~100時間程度反応させることにより進行させることができる。
【0203】
前記ポリアルコキシベンゼン化合物を製造する際、前記反応終了後、公知の方法により目的物を単離することができる。目的物の単離方法は、特に限定されず、例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的化合物を得る方法が挙げられる。
【0204】
前記ポリフェノール化合物は、ポリアルコキシベンゼン化合物を還元して得ることができる。還元反応は、三臭化ホウ素等の還元剤を用いて行うことができる。前記ポリフェノール化合物を製造する際、反応溶媒を用いてもよい。また反応時間、反応温度、原料の量及び単離の方法は、前記ポリフェノール化合物が得られる限りにおいて特に限定されない。
【0205】
前記ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に解離性反応基を導入する方法は公知の方法を用いることができる。例えば以下のようにして、前記ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に解離性反応基を導入することができる。解離性反応基を導入するための化合物は、公知の方法で合成若しくは容易に入手でき、例えば、酸クロライド、酸無水物、ジカーボネートなどの活性カルボン酸誘導体化合物、アルキルハライド、ビニルアルキルエーテル、ジヒドロピラン、ハロカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられるが特に限定はされない。
【0206】
例えば、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒に前記ポリフェノール化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル又はジヒドロピランを加え、ピリジニウム p-トルエンスルホナート等の酸触媒の存在下、常圧で、20~60℃、6~72時間反応させる。反応液をアルカリ化合物で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を得ることができる。
【0207】
前記酸触媒は、特に限定されず、周知の酸触媒としては、無機酸や有機酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることが好ましい。なお、酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0208】
また、例えば、アセトン、THF、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒にポリフェノール化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルクロロメチルエーテル等のアルキルハライド又はブロモ酢酸メチルアダマンチル等のハロカルボン酸アルキルエステルを加え、炭酸カリウム等の塩基触媒の存在下、常圧で、20~110℃、6時間~72時間反応させる。反応液を塩酸等の酸で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより前記式(A-1)又は前記式(A-1-1)で示される基を有する化合物を得ることができる。
【0209】
前記塩基触媒は、特に限定されず、周知の塩基触媒より適宜選択することができ、例えば、金属水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物等)、金属アルコール塩(ナトリウムメトキシドやカリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコール塩)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物等)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等の無機塩基、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1-メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)等の有機塩基が挙げられる。入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。また、塩基触媒として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0210】
前記解離性反応基は、更に高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、酸の存在下で連鎖的に開裂反応を起こす性質を有することが好ましい。
【0211】
[樹脂]
本実施形態に係る樹脂は、前述した本実施形態に係る前記式(X)で示される化合物に由来する構成単位を含む。換言すると、本実施形態に係る樹脂は、前記式(X)で示される化合物をモノマーとして得られる樹脂であることができる。該樹脂は、前記式(X)で示される化合物に由来する構成単位を含めば特に限定されないが、例えば前記式(X)で示される化合物と、反応性を有する化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0212】
反応性を有する化合物としては、前記式(X)で示される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0213】
また、本実施形態に係る樹脂は、下記式(B1-M)で示される構成単位を含むことが、高耐熱性、高屈折率および高溶解性を兼備する観点から好ましい。
【0214】
【化34】
【0215】
(式(B1-M)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。Rは、単結合又は下記式(5)で示される基である。)
【0216】
【化35】
【0217】
(式(5)中、Rは、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキレン基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、R5’は各々独立して、下記式(5’)のいずれかの基である。)
【0218】
【化36】
【0219】
(式(5’)中、*はRに接続していることを表す。)
【0220】
前記式(5)のRにおいて、炭素数1~20の直鎖状のアルキレン基としては、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられる。炭素数3~20の分岐状のアルキレン基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、ネオペンチレン基、2-ヘキシレン基等が挙げられる。炭素数3~20の環状のアルキレン基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。炭素数6~20のアリーレン基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。
【0221】
前記式(B1-M)中、前記Rは、高耐熱性および高溶解性を付与する観点から前記式(5)で示される基であることが好ましい。
【0222】
また、本実施形態に係る樹脂は、下記式(B2-M’)で示される構成単位を含むことが、更に耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0223】
【化37】
【0224】
(式(B2-M’)中、Rは、各々独立して、酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、sは0~3の整数であり、nは0~(4+2×s)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。Rは、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状の3価の脂肪族基、或いは、置換又は無置換の炭素数6~20の3価の芳香族基であり、R6’は各々独立して、下記式(6’)のいずれかの基である。)
【0225】
【化38】
【0226】
(式(6’)中、*はRに接続していることを表す。)
【0227】
前記式(B2-M’)のRにおいて、炭素数1~20の直鎖状の3価の脂肪族基としては、以下に限定されないが、例えば、メタントリイル基、エタントリイル基、n-プロパントリイル基、n-ブタントリイル基、n-ペンタントリイル基、n-ヘキサントリイル基等が挙げられる。炭素数3~20の分岐状の3価の脂肪族基としては、以下に限定されないが、例えば、イソプロパントリイル基、イソブタントリイル基、tert-ブタントリイル基、ネオペンタントリイル基、2-ヘキサントリイル基等が挙げられる。炭素数3~20の環状の3価の脂肪族基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロデカントリイル基、アダマンタントリイル基等が挙げられる。炭素数6~20の3価の芳香族基としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、ビフェニルトリイル基、フルオレントリイル基、アントラセントリイル基、ピレントリイル基等が挙げられる。
【0228】
また、本実施形態に係る樹脂は、下記式(C1)で示される構成単位を含むことが、高耐熱性および高屈折率を兼備する観点から好ましい。
【0229】
【化39】
【0230】
(式(C1)中、Rは、各々独立して酸素原子を含む1価の基、硫黄原子を含む1価の基、窒素原子を含む1価の基、炭化水素基、又はハロゲン原子であり、rは0~3の整数であり、nは2~(4+2×r)である。Y、P、q、vは前記式(X)と同義である。)
【0231】
尚、上述の各構成単位を含む樹脂は、構成単位間で各置換基が異なっていてもよい。例えば、前記式(B1-M)におけるRが前記式(5)で示される基である場合におけるRや、前記式(B2-M’)におけるRは、それぞれの構成単位間において同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0232】
前記式(B1-M)で示される構成単位の具体例としては、例えば、以下の構成単位を挙げることができる。
【0233】
【化40】
【0234】
前記式(B2-M’)で示される構成単位の具体例としては、例えば、以下の構成単位を挙げることができる。
【0235】
【化41】
【0236】
前記式(C1)で示される構成単位の具体例としては、例えば、以下の構成単位を挙げることができる。
【0237】
【化42】
【0238】
[化合物又は樹脂の精製方法]
本実施形態の化合物又は樹脂は、以下の工程を含む精製方法によって精製することができる。即ち、前記精製方法は、本実施形態に係る式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を、水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶媒に溶解させて溶液(A)を得る工程と、得られた溶液(A)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する第一抽出工程と、を含む。本実施形態の精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物又は樹脂に不純物として含まれうる種々の金属の含有量を効果的に低減することができる。
【0239】
式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を含む溶液(A)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相とを分離して、金属含有量の低減された式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を得ることができる。
【0240】
本実施形態の精製方法で使用する式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。また、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤と共に本実施形態の精製方法に適用されてもよい。
【0241】
本実施形態の精製方法で使用される「水と任意に混和しない有機溶媒」とは、水に対し任意の割合で均一に混ざり合わない有機溶媒を意味する。このような有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは20%未満であり、特に好ましくは10%未満である有機溶媒が好ましい。当該有機溶媒の使用量は、使用する式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。
【0242】
水と任意に混和しない有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、2-ペンタノン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルが更に好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0243】
本実施形態の精製方法で使用される“酸性の水溶液”としては、一般に知られる有機系化合物若しくは無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。酸性の水溶液は、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を水に溶解させた鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液が更に好ましく、蓚酸の水溶液がより更に好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施形態の精製方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0244】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、酸性の水溶液のpH範囲は0~5程度であり、好ましくはpH0~3程度である。
【0245】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。前記観点から、酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(A)100質量部に対して、好ましくは10~200質量部であり、より好ましくは20~100質量部である。
【0246】
本実施形態の精製方法においては、前記のような酸性の水溶液と、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上並びに水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液(A)とを接触させることにより、溶液(A)中の前記化合物又は前記樹脂から金属分を抽出することができる。
【0247】
水と任意に混和する有機溶媒を含むと、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の仕込み量を増加させることができ、また分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と任意に混和する有機溶媒を加える方法は特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0248】
本実施形態の精製方法で使用される水と任意に混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と任意に混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.1~50質量部であることがより好ましく、0.1~20質量部であることが更に好ましい。
【0249】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和する有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、N-メチルピロリドン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。これらの中でも、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0250】
本実施形態の精製方法において、溶液(A)と酸性の水溶液との接触の際、すなわち、抽出処理を行う際の温度は、好ましくは20~90℃であり、より好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、特に限定されないが、例えば、溶液(A)と酸性の水溶液とを、撹拌等により、よく混合させたあと、得られた混合溶液を静置することにより行われる。これにより、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と、有機溶媒とを含む溶液(A)に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液(A)の酸性度が低下し、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の変質を抑制することができる。
【0251】
前記混合溶液の静置により、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等により式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相を回収することができる。混合溶液を静置する時間は特に限定されないが、有機溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分間以上であり、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは30分間以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0252】
本実施形態の精製方法において、前記第一抽出工程後、前記化合物又は前記樹脂を含む溶液相を、更に水に接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。
【0253】
具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて前記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液相を、更に水による抽出処理に供することが好ましい。前記の水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、前記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させたあと、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等により式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒とを含む溶液相を回収することができる。
【0254】
また、ここで用いられる水は、本実施形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0255】
こうして得られた式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により前記溶液に有機溶媒を加え、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0256】
得られた式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上と有機溶媒を含む溶液から、前記式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂から選ばれる1種以上を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【0257】
[組成物]
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂を含有する。本実施形態に係る組成物は、例えばリソグラフィー用材料、リソグラフィー用材料組成物、レジスト下層膜形成用組成物、光学物品形成組成物等であることができる。
[リソグラフィー用材料]
本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、本実施形態に係る化合物又は樹脂を含有する。本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、リソグラフィー技術に用いることのできる材料であり、本実施形態に係る化合物又は樹脂を含有すれば特に限定されるものではないが、例えば、溶媒等と共にリソグラフィー用材料組成物として用いることができ、更には、レジスト用途(即ち、レジスト組成物)、中間層形成用途(即ち、中間層形成用組成物)、下層膜形成用途(即ち、下層膜形成用組成物)等に用いることができる。なお、本実施形態に係るリソグラフィー用材料は本実施形態に係る化合物及び樹脂を含んでもよい。
【0258】
本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、かつ良好なレジストパターン形状を付与できるレジスト組成物等に用いることができる。本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、本実施形態に係るテルルを含有する化合物又は樹脂を含有することにより、特にEUVによるリソグラフィーにおいて増感効果が期待できる。テルルは全元素中、キセノンに続いて増感効果が高い。本実施形態に係るリソグラフィー用材料は、溶媒を含まないことができる。
【0259】
[リソグラフィー用材料組成物]
本実施形態に係るリソグラフィー用材料組成物は、本実施形態に係るリソグラフィー用材料と、溶媒と、を含む。該リソグラフィー用材料組成物は、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、かつ良好なレジストパターン形状を付与できる。
【0260】
(リソグラフィー用材料組成物の物性等)
本実施形態のリソグラフィー用材料は上述のようにレジスト用途に用いることができ、スピンコート等公知の方法によってアモルファス膜を形成することができる。また、用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。以下、本実施形態のリソグラフィー用材料を含むリソグラフィー用材料組成物をレジスト用途に(レジスト組成物として)用いた場合について説明する。
【0261】
本実施形態におけるリソグラフィー用材料組成物がポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secが更に好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶なレジストとすることができる。また0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またラインエッジラフネスの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0262】
本実施形態におけるリソグラフィー用材料組成物がネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、ラインエッジラフネスを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。前記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0263】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物がポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、ラインエッジラフネスを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
【0264】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物がネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secが更に好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶なレジストとすることができる。また0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またラインエッジラフネスの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0265】
(リソグラフィー用材料組成物の他の成分)
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を固形成分として含有する。本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂以外に、更に溶媒を含有する。
【0266】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物で使用される溶媒は、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルプロピオン酸ブチル、3-メトキシ-3-メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;γ-ラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0267】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも一種であり、更に好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0268】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において、固形成分の量と溶媒の量との関係は、特に限定されないが、固形成分及び溶媒の合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、更に好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0269】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0270】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様)の50~99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55~90質量%、更に好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%である。前記含有量の場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる。
【0271】
(酸発生剤(C))
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含有することが好ましい。
【0272】
この場合、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において、酸発生剤(C)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%が更に好ましく、10~25質量%が特に好ましい。前記含有量の範囲内で酸発生剤(C)を使用することにより、一層高感度でかつ一層低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる。
【0273】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物では、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すれば更に微細加工が可能である。
【0274】
前記酸発生剤(C)は、特に限定されず、例えば国際公開第2017/033943号に開示された化合物が挙げられる。酸発生剤(C)としては、芳香環を有する酸発生剤が好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がより好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム ノナフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。該酸発生剤を用いることで、ラインエッジラフネスを低減することができる。
【0275】
また、本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、酸発生剤としてジアゾナフトキノン光活性化合物を更に含有することが好ましい。ジアゾナフトキノン光活性化合物は、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含む、ジアゾナフトキノン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分として用いられているものであれば特に限定されず、1種又は2種以上任意に選択して用いることができる。これらの中でも低ラフネスおよび溶解性の観点から、非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物であることが好ましく、より好ましくは分子量1500以下の低分子化合物であり、さらに好ましくは分子量1200以下、特に好ましくは分子量1000以下である。このような非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物の好ましい具体例としては、国際公開第2016/158881号に開示された非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物が挙げられる。前記酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0276】
(酸架橋剤(G))
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、ネガ型レジスト材料として使用する場合やポジ型レジスト材料でもパターンの強度を増す為の添加剤として使用する場合に、酸架橋剤(G)を一種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、前記式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)は、特に限定されないが、例えば前記式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0277】
このような架橋性基の具体例としては、特に限定されないが、例えば(i)ヒドロキシ(炭素数1~6のアルキル基)、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数1~6のアルキル基)、アセトキシ(炭素数1~6のアルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(炭素数1~6のアルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、炭素数1~6のアリルオキシ(炭素数1~6のアルキル基)、炭素数1~6のアラルキルオキシ(炭素数1~6のアルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0278】
前記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、特に限定されないが、例えば(i)メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有ウレア化合物、メチロール基含有グリコールウリル化合物、メチロール基含有フェノール化合物等のメチロール基含有化合物;(ii)アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有ウレア化合物、アルコキシアルキル基含有グリコールウリル化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物等のアルコキシアルキル基含有化合物;(iii)カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有ウレア化合物、カルボキシメチル基含有グリコールウリル化合物、カルボキシメチル基含有フェノール化合物等のカルボキシメチル基含有化合物;(iv)ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物等のエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0279】
酸架橋剤(G)としては、更に、フェノール性水酸基を有する化合物、並びにアルカリ可溶性樹脂中の酸性官能基に前記架橋性基を導入し、架橋性を付与した化合物及び樹脂を使用することができる。その場合の架橋性基の導入率は、特に限定されず、フェノール性水酸基を有する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂中の全酸性官能基に対して、例えば、5~100モル%、好ましくは10~60モル%、更に好ましくは15~40モル%に調節される。前記範囲であると、架橋反応が十分起こり、残膜率の低下、パターンの膨潤現象や蛇行等が避けられるので好ましい。
【0280】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において酸架橋剤(G)は、アルコキシアルキル化ウレア化合物若しくはその樹脂、又はアルコキシアルキル化グリコールウリル化合物若しくはその樹脂(酸架橋剤(G1))、分子内にベンゼン環を1~6有し、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基を分子内全体に2以上有し、該ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基が前記いずれかのベンゼン環に結合しているフェノール誘導体(酸架橋剤(G2))、少なくとも一つのα-ヒドロキシイソプロピル基を有する化合物(酸架橋剤(G3))が好ましい。例えば、国際公開第2017/033943号に開示された化合物が挙げられる。
【0281】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において、酸架橋剤(G)の含有量は、固形成分の全質量の0.5~49質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%が更に好ましく、2~20質量%が特に好ましい。前記酸架橋剤(G)の含有割合を0.5質量%以上とすると、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率が低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのを抑制することができるので好ましく、一方、49質量%以下とすると、レジストとしての耐熱性の低下を抑制できることから好ましい。
【0282】
また、前記酸架橋剤(G)中の前記酸架橋剤(G1)、前記酸架橋剤(G2)、前記酸架橋剤(G3)から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量も特に限定はなく、レジストパターンを形成する際に使用される基板の種類等によって種々の範囲とすることができる。
【0283】
(酸拡散制御剤(E))
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)を含有してもよい。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、リソグラフィー用材料組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が一層向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0284】
このような酸拡散制御剤(E)は、特に限定されず、例えば、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤(E)としては、例えば、国際公開第2017/033943号に開示された化合物が挙げられる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0285】
酸拡散制御剤(E)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が更に好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。酸拡散制御剤(E)の含有量が前記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を一層抑制できる。更に、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することがない。また、酸拡散制御剤(E)の含有量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、リソグラフィー用材料組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0286】
(その他の成分(F))
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物には、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、その他の成分(F)として、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。その他の成分(F)としては、例えば、国際公開第2017/033943号に開示された化合物が挙げられる。
【0287】
その他の成分(F)の合計含有量は、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が更に好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0288】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物において、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)、その他の成分(F)の含有量(式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂/酸発生剤(C)/酸拡散制御剤(E)/その他の成分(F))は、固形物基準の質量%で、好ましくは50~99.4/0.001~49/0.001~49/0~49、より好ましくは55~90/1~40/0.01~10/0~5、更に好ましくは60~80/3~30/0.01~5/0~1、特に好ましくは60~70/10~25/0.01~3/0である。
各成分の含有割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。前記含有割合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に一層優れる。
【0289】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過する方法等が挙げられる。
【0290】
本実施形態のリソグラフィー用材料組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で樹脂を含むことができる。樹脂は、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体或いはこれらの誘導体などが挙げられる。当該樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の種類に応じて適宜調節されるが、該化合物100質量部当たり、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0291】
[パターン形成方法]
リソグラフィー用材料を用いて基板上にパターンを形成する場合、例えば、本実施形態に係るリソグラフィー用材料やこれを含む組成物(以下、これらを総じて「リソグラフィー用材料等」と称することがある)を用いて基板上に膜を形成する膜形成工程と、前記膜を露光する露光工程と、前記露光工程において露光された膜を現像してパターンを形成する現像工程と、を含むパターン形成方法を用いることができる。
【0292】
例えば、本実施形態のリソグラフィー用材料等を用いてレジストパターンを形成する場合、パターン(レジストパターン)の形成方法は、特に限定されず、好適な方法として、上述したリソグラフィー用材料等を含むレジスト組成物を基板上に塗布して膜(レジスト膜)を形成する膜形成工程と、形成された膜(レジスト膜)を露光する露光工程と、前記露光工程において露光された膜(レジスト膜)を現像してパターン(レジストパターン)を形成する現像工程とを含む方法が挙げられる。本実施形態のレジストパターンは多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0293】
具体的なレジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に前記レジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前述基板上に無機系の膜又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0294】
次に、必要に応じて、塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の含有組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があり好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。
本実施形態のレジストパターンの形成方法においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。
【0295】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。前記現像液としては、使用する式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン又はネガ型レジストパターンを作り分けることができるが、一般的に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤の場合はネガ型レジストパターン、アルカリ水溶液の場合はポジ型レジストパターンが得られる。ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、アルカリ性水溶液としては、例えば、国際公開第2017/033943号に開示されたものが挙げられる。
【0296】
前記溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、前記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満、更には50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、特に限定されず、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下、更には50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0297】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善するため好ましい。
【0298】
現像液の蒸気圧は、特に限定されず、例えば、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上或いは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。このような蒸気圧を有する現像液としては、例えば、国際公開第2017/033943号に開示された現像液が挙げられる。
【0299】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
【0300】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0301】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒間~90秒間である。
【0302】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0303】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0304】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更に好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒間~90秒間である。
【0305】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノールなどを用いることができる。
【0306】
前記各成分は、複数混合してもよいし、前記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0307】
リンス液中の含水率は、特に限定されず、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる。
【0308】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がより好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が更に好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する。
【0309】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0310】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0311】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことができる。
【0312】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。前記めっき法としては、特に限定されないが、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどがある。
【0313】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することができる。前記有機溶剤として、特に限定されないが、例えば、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、EL(乳酸エチル)等が挙げられる。前記剥離方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0314】
本実施形態において、配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【0315】
[レジスト下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜、及びパターン形成方法]
(第一の実施形態)
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明の第一の実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂と、ケイ素含有化合物(例えば、加水分解性オルガノシラン、その加水分解物又はその加水分解縮合物)と、を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、炭素濃度が比較的に高く、酸素濃度が比較的に低く、耐熱性が高く、溶媒溶解性も高い。このため、パターンの矩形性に優れる。また、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、かつ良好なレジストパターン形状を付与できる。
【0316】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、例えば、上層レジスト(フォトレジスト等)とハードマスクや有機下層膜などとの間に更にレジスト下層膜を備えた多層レジスト法に好適に用いることができる。このような多層レジスト法では、例えば、基板上の有機下層膜又はハードマスクを介してその上にレジスト下層膜を塗布法などによって形成し、そのレジスト下層膜上に上層レジスト(例えば、フォトレジスト、電子線レジスト、EUVレジスト)を形成する。そして、露光と現像とによってレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを用いてレジスト下層膜をドライエッチングしてパターンの転写を行い、有機下層膜をエッチングすることによりパターンを転写しその有機下層膜により基板の加工を行う。
【0317】
即ち、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜(リソグラフィー用下層膜)は、上層レジストとインターミキシングを起こしにくく、また、耐熱性を有し、例えば、ハロゲン系(フッ素系)のエッチングガスに対するエッチング速度がマスクとして用いられるパターニングされた上層レジストよりも大きいため、矩形で良好なパターンを得ることができる。更に、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は酸素系エッチングガスに対する耐性が高いため、ハードマスクなど基材上に設けられた層のパターニング時には良好なマスクとして機能することができる。尚、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜を複数積層された態様にも用いることができる。この場合、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜の位置(何層目に積層されているか)は特に限定はなく、上層レジストの直下であってもよく、一番基板側に位置する層であってもよいし、レジスト下層膜で挟まれた態様であってもよい。
【0318】
微細なパターンを形成する上で、パターン倒れを防ぐためにレジスト膜厚が薄くなる傾向がある。レジストの薄膜化によりその下層に存在する膜にパターンを転写するためのドライエッチングは、上層の膜よりもエッチング速度が高くなければパターン転写ができない。本実施形態では、基板上に有機下層膜を介して、その上を本実施形態のレジスト下層膜(シリコン系化合物含有)で被覆し、さらにその上をレジスト膜(有機レジスト膜)で被覆することができる。有機系成分の膜と無機系成分の膜とはエッチングガスの選択によりドライエッチング速度が大きく異なり、有機系成分の膜は酸素系ガスでドライエッチング速度が高くなり、無機系成分の膜はハロゲン含有ガスでドライエッチング速度が高くなる。
例えば、パターン転写されたレジスト下層膜を用いて、その下層の有機下層膜を酸素系ガスでドライエッチングして有機下層膜にパターン転写を行い、そのパターン転写された有機下層膜で、ハロゲン含有ガスを用いて基板加工を行うことができる。
【0319】
また、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物によるレジスト下層膜は、活性光線への吸収能に優れるテルルを含有する化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と、ケイ素含有化合物(例えば、加水分解性オルガノシラン、その加水分解物又はその加水分解縮合物)と、を含むことにより、上層レジストの感度が向上し、上層レジストとインターミキシングを起こさず、露光及び現像後のレジスト下膜形成膜のパターンの形状が矩形になる。これにより微細なパターンによる基板加工が可能になる。
【0320】
また、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物によるレジスト下層膜は、高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用可能である。さらに、比較的に低分子量で低粘度であることから、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、隅々まで均一に充填させることが容易であり、その結果、平坦化性や埋め込み特性が比較的に有利に高められる傾向にある。
【0321】
前記レジスト下層膜形成用組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂と、ケイ素含有化合物の他に、溶媒、酸、酸架橋剤などを更に含むことができる。更に、任意成分として、有機ポリマー化合物、酸発生剤及び界面活性剤、その他、水、アルコール、及び硬化触媒等を含むことができる。塗布性及び品質安定性の点から、レジスト下層膜形成用組成物中の本実施形態に係る化合物及び樹脂の含有量は、0.1~70質量%であることが好ましく、0.5~50質量%であることがより好ましく、3.0~40質量%であることが特に好ましい。
【0322】
-溶媒-
本実施形態において用いる溶媒としては、上述した式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。例えば、国際公開第2017/188450号に開示された、レジスト下層膜形成用組成物に含まれ得る溶媒が挙げられる。
【0323】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~8,000質量部であることがより好ましく、200~5,000質量部であることがさらに好ましい。
【0324】
-酸-
前記レジスト下層膜形成用組成物は硬化性促進の観点から、酸を含むことができる。前記酸としては、例えば、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン等が挙げられる。
【0325】
酸の含有量は、特に限定されないが、溶解性や塗膜の形状安定性の観点から、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、0.001~20質量部であることが好ましく、0.005~10質量部であることがより好ましく、0.01~5質量部であることがさらに好ましい。
【0326】
-酸架橋剤-
前記レジスト下層膜形成用組成物は、ネガ型レジスト材料として使用する場合やポジ型レジスト材料でもパターンの強度を増す為の添加剤として使用する場合に、酸架橋剤を一種以上含むことができる。酸架橋剤とは、上述の酸の存在下で、前記式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤は、特に限定されないが、例えば前記式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。例えば、国際公開第2017/188450号に開示された、レジスト下層膜形成用組成物に含まれ得る酸架橋剤が挙げられる。また、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものも前記酸架橋剤の具体例として挙げることができる。
【0327】
酸架橋剤の含有量は、特に限定されないが、溶解性や塗膜の形状安定性の観点から、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることがさらに好ましい。
【0328】
-ケイ素含有化合物-
前記レジスト下層膜形成用組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂とともにケイ素含有化合物を含む。前記ケイ素含有化合物としては、有機ケイ素含有化合物又は無機ケイ素含有化合物のいずれであってもよいが、有機ケイ素含有化合物であることが好ましい。前記無機ケイ素含有化合物としては、例えば、低温での塗布方式での成膜が可能な珪素酸化物、珪素窒化物、珪素酸化窒化物からなるポリシラザン化合物等が挙げられる。また、前記有機ケイ素含有化合物としては、例えば、ポリシルセスキオキサンベースの化合物や、加水分解性オルガノシラン、その加水分解物又はその加水分解縮合物が挙げられる。前記ポリシルセスキオキサンベースの具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号公報、特開2007-226204号公報に記載されたものを用いることができる。また、前記加水分解性オルガノシラン、その加水分解物、又はその加水分解縮合物としては、下記式(D1)の加水分解性オルガノシラン及び下記式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の加水分解性オルガノシラン、それらの加水分解物、又はそれらの加水分解縮合物(以下、これらを単に「式(D1)及び式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機ケイ素化合物」と称することがある)を含むことができる。前記レジスト下層膜形成用組成物が式(D1)及び式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含んでいると、硬化条件の調整によりSi-O結合の制御が容易であり、コスト的にも有利であり、有機系成分の導入に適している。このため、レジスト下層膜形成用組成物が式(D1)及び式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含む前記レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成された層は、レジスト層の中間層(上層レジスト層と、基材上に設けられた有機下層膜との間の層)として有用である。
【0329】
式(D1): (RSi(R4-a
(式(D1)中、Rは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルケニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アルコキシアリール基、アシルオキシアリール基、イソシアヌレート基、ヒドロキシ基、環状アミノ基、又はシアノ基を有する“有機基”;或いは、それらの組み合わせを表し、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン基を表し、aは0~3の整数を表す。)
【0330】
式(D2): [(RSi(R4-c
(式(D2)中、Rはアルキル基を表し、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン基を表し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、bは0又は1の整数を表し、cは0又は1の整数を表す。)
【0331】
前記レジスト下層膜形成用組成物中、式(X)で示されるテルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と、ケイ素含有化合物(例えば、式(D1)及び式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機ケイ素化合物)と、の割合はモル比で1:2~1:200の範囲で使用することができる。良好なレジスト形状を得るためには、例えば、前記モル比で1:2~1:100の範囲で用いることができる。式(D1)及び式(D2)からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機ケイ素化合物は、加水分解縮合物(ポリオルガノシロキサンのポリマー)として使用することが好ましい。
【0332】
式(D1)で表される加水分解性オルガノシラン中のRは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルケニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アルコキシアリール基、アシルオキシアリール基、イソシアヌレート基、ヒドロキシ基、環状アミノ基、又はシアノ基を有する“有機基”、或いは、それらの組み合わせであり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、aは0~3の整数を表す。
【0333】
式(D2)の加水分解性オルガノシランのRはアルキル基を表し、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を表し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表し、bは0又は1の整数を表し、cは0又は1の整数を表す。
【0334】
式(D1)及び式(D2)で示される加水分解性オルガノシランとしては、例えば、国際公開第2017/188450号に開示された、レジスト下層膜形成用組成物に含まれ得る加水分解性オルガノシランが挙げられる。
【0335】
本実施形態においては、テルル化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と、加水分解性オルガノシラン等と、を反応させずに混合体として膜を形成してもよいが、レジスト下層膜形成用組成物中のテルルを含有する化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と、上述の加水分解性オルガノシラン等とを、無機酸、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、加水分解縮合を行うことでテルル含有ケイ素化合物又は樹脂を合成してもよい。
【0336】
このとき使用される酸触媒は、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー(テルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と加水分解性オルガノシラン等との総量)1モルに対して10-6~10モルが好ましく、より好ましくは10-5~5モル、さらに好ましくは10-4~1モルである。
【0337】
これらのモノマーから加水分解縮合によりテルル含有ケイ素化合物又は樹脂を得るときの水の量は、モノマー(テルルを含有する化合物、該化合物に由来する構成単位を含む樹脂及び加水分解性オルガノシラン等)に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01~100モルが好ましく、より好ましくは0.05~50モル、さらに好ましくは0.1~30モルを添加することが好ましい。100モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的である。
【0338】
テルル含有ケイ素化合物又は樹脂を合成する際の操作方法としては、例えば、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、モノマーを有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は好ましくは0~100℃、より好ましくは40~100℃である。モノマーの滴下時に5~80℃に温度を保ち、その後40~100℃で熟成させる方法が好ましい。
【0339】
触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶剤としては、例えば、国際公開第2017/188450号に開示された有機溶剤が挙げられる。
【0340】
尚、有機溶剤の使用量は、モノマー(テルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂と加水分解性オルガノシラン等との総量)1モルに対して0~1,000mlが好ましく、特に0~500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が1,000ml以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0341】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1~2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0342】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で発生したアルコールなどの種類によるが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、さらに好ましくは15~80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールなどの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールなどのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0343】
次に、反応混合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水とテルル含有ケイ素化合物又は樹脂とを混合し、テルル含有ケイ素化合物又は樹脂を有機溶剤で抽出する方法を例示できる。このとき使用する有機溶剤としては、テルル含有ケイ素化合物又は樹脂を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えば、国際公開第2017/188450号に開示された有機溶剤が挙げられる。
【0344】
さらに、反応混合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去する際に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合物を使用することも可能である。例えば国際公開第2017/188450号に開示された混合物が挙げられる。
【0345】
尚、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1~1,000質量部が好ましく、より好ましくは1~500質量部、さらに好ましくは2~100質量部である。
【0346】
酸触媒が残留しているテルル含有ケイ素化合物又は樹脂、及び酸触媒が除去されたテルル含有ケイ素化合物又は樹脂、いずれの場合においても、最終的な溶剤を加え、減圧で溶剤交換することでテルル含有ケイ素化合物又は樹脂の溶液を得ることができる。このときの溶剤交換の温度は、除去すべき反応溶剤や抽出溶剤の種類によるが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、さらに好ましくは15~80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0347】
-その他の任意成分-
前記レジスト下層膜形成用組成物は、前記の成分の他、必要に応じて有機ポリマー化合物、架橋剤、光酸発生剤及び界面活性剤等を含むことができる。
【0348】
有機ポリマー化合物を使用することにより、前記レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜のドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)、減衰係数及び屈折率等を調整することができる。有機ポリマー化合物としては特に制限はなく、種々の有機ポリマーを使用することができる。縮重合ポリマー及び付加重合ポリマー等を使用することができる。例えば国際公開第2017/188450号に開示された有機ポリマー化合物が使用できる。
【0349】
架橋剤を使用することにより、前記レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜のドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)等を調整することができる。架橋剤としては特に制限はなく、種々の架橋剤を使用することができる。本実施形態で使用可能な架橋剤の具体例としては、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物であって、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基を置換基(架橋性基)として有するものなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。例えば国際公開第2017/188450号に開示された架橋剤が挙げられる。
【0350】
前記レジスト下層膜形成用組成物において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、テルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは1~5質量部である。上述の好ましい範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0351】
前記レジスト下層膜形成用組成物では酸発生剤を含有することができる。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれのものも使用することができる。前記酸発生剤としては、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。
【0352】
酸発生剤が使用される場合、その割合としては、テルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂100質量部に対して、0.01質量部~5質量部、又は0.1質量部~3質量部、又は0.5質量部~1質量部である。
【0353】
界面活性剤は、前記レジスト下層膜形成用組成物を基板に塗布した際に、表面欠陥等の発生を抑制するのに有効である。前記レジスト下層膜形成用組成物に含まれる界面活性剤としては、例えば、国際公開第2017/188450号に開示された界面活性剤が挙げられる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、テルルを含有する化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂100質量部に対して、例えば、0.0001質量部~5質量部、又は0.001質量部~1質量部、又は0.01質量部~0.5質量部である。
【0354】
<リソグラフィー用下層膜及びパターン形成方法>
本発明の第一の実施形態に係るリソグラフィー用下層膜は、前記本発明の第一の実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成することができる。本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、多層レジスト法に用いられる、フォトレジスト(上層)の下層(レジスト下層膜)として好適に用いることができる。
【0355】
本実施形態においては、例えば、レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行うことでパターンを形成することができる。
【0356】
また、上述のようにして作製した前記本発明の第一の実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物を用いた本発明の第一の実施形態に係るパターン形成方法の一態様としては、基板上に、塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、前記有機下層膜上に本発明の第一の実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、前記上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、前記上層レジストパターンをマスクにして前記レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜にエッチングでパターンを転写し、さらにパターンが転写された前記有機下層膜をマスクにして前記基板(被加工体)にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0357】
本発明の第一の実施形態に係るパターン形成方法の別の態様として、基板上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、前記有機ハードマスク上に本発明の第一の実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、前記上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、さらにパターンが転写された前記有機ハードマスクをマスクにして前記基材(被加工体)にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0358】
前記基材としては、例えば、半導体基板を用いることができる。前記半導体基板としては、シリコン基板が一般的に用いることができるが、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α-Si)、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものを用いることができる。
【0359】
また、前記基材(被加工体;前記半導体基板を含む)を構成する金属としては、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、又はモリブデンのいずれか、或いはこれらの合金を用いることができる。
【0360】
また、半導体基板上に被加工層(被加工部分)として、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、又は金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの等を用いることができる。このような金属を含む被加工層としては、例えば、Si、SiO、SiN、SiON、SiOC、p-Si、α-Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等並びに種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が用いられ、通常、50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。
【0361】
本実施形態のパターン形成方法では、基板上に、有機下層膜、又は有機ハードマスクを形成することができる。このうち、有機下層膜は塗布型有機下層膜材料から回転塗布法等を用いて形成することができ、有機ハードマスクは炭素を主成分とする有機ハードマスクの材料からCVD法を用いて形成することができる。このような有機下層膜及び有機ハードマスクの種類等は、特に限定されないが、上層レジスト膜が露光によりパターン形成を行う場合は、十分な反射防止膜機能を発現するものが好ましい。このような有機下層膜又は有機ハードマスクを形成することで、サイズ変換差を生じさせることなく上層レジスト膜で形成されたパターンを基材(被加工体)上に転写することができる。尚、「炭素を主成分とする」ハードマスクとは、固形分の50質量%以上がアモルファスカーボンとも呼ばれa-C:Hと表示されるアモルファス水素化炭素等の炭素系材料で構成されているハードマスクを意味する。a-C:H膜は、様々な技術によって堆積させることができるが、プラズマ化学気相堆積(PECVD)が、費用効率及び膜質調整可能性のために広く使用されている。前記ハードマスクの例としては、例えば、特表2013-526783号公報に記載のものを参照することができる。
【0362】
本実施形態のパターンの形成方法に使用される本実施形態のレジスト下膜形成用組成物を用いたレジスト下層膜は、レジスト下層膜形成用組成物からスピンコート法等で有機下層膜等が設けられた被加工体上に作製することが可能である。レジスト下膜をスピンコート法で形成する場合、スピンコート後、溶剤を蒸発させ、上層レジスト膜とのミキシング防止を目的として、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は50~500℃の範囲内が好ましい。このとき、製造されるデバイスの構造にもよるが、デバイスへの熱ダメージを少なくするため、ベーク温度は400℃以下が特に好ましい。ベーク時間は10秒~300秒の範囲内が好ましく用いられる。
【0363】
また、本実施形態のパターン形成方法では、上層レジスト膜にパターンを形成する方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法;電子線直接描画法、及び誘導自己組織化法のいずれかの方法を好適に用いることができる。このような方法を用いることで、レジスト上層膜上に微細なパターンを形成することができる。
【0364】
前記上層レジスト膜組成物としては、上述の上層レジスト膜にパターンを形成する方法に応じて適宜選択することができる。例えば、300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィーを行う場合、上層レジスト膜組成物としては、化学増幅型のフォトレジスト膜材料を用いることができる。このようなフォトレジスト膜材料としては、フォトレジスト膜を形成して露光を行った後に、アルカリ現像液を用いて露光部を溶解することによりポジ型パターンを形成するものや、有機溶媒からなる現像液を用いて未露光部を溶解することによりネガ型パターンを形成するものを例示できる。
【0365】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物より形成されるレジスト下層膜は、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光を吸収することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。
【0366】
また、EUVレジストの下層膜としてはハードマスクとしての機能以外に以下の目的にも使用できる。EUVレジストとインターミキシングすることなく、EUV露光(波長13.5nm)に際して好ましくない露光光、例えば上述のUVやDUV(ArF光、KrF光)の基板又は界面からの反射を防止することができるEUVレジストの下層反射防止膜として、前記テルル含有レジスト下層膜形成用組成物を用いることができる。EUVレジストの下層で効率的に反射を防止することができる。また、前記下層膜形成用組成物はEUVの吸収能に優れることから、上層レジスト組成物の増感作用を発現することが可能であり、感度向上に寄与する。EUVレジスト下層膜として用いた場合は、プロセスはフォトレジスト用下層膜と同様に行うことができる。
【0367】
(第二の実施形態)
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明の第二の実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度で特定の波長領域での高屈折率および透明性を有し、かつ良好なレジストパターン形状を付与できる。本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、ケイ素含有化合物を含まないことができる。
【0368】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、段差埋め込み特性及び平坦性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用なレジスト下層膜形成用組成物を実現することができる。そして、このレジスト下層膜形成用組成物は、炭素濃度が比較的高く、酸素濃度が比較的低く、溶媒溶解性も高い、特定構造を有する化合物を用いているため、ベーク時の膜の劣化が抑制され、フッ素ガス系プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらには、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成することができる。本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、特に耐熱性、段差埋め込み特性及び平坦性に優れるため、例えば、複数のレジスト層のうち最下層に設けられるレジスト下層膜形成用の組成物として用いることができる。ただし、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、更に基板との間に他のレジスト下層を含むものであってもよい。
【0369】
本実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物は、本実施形態に係る化合物の他に、溶媒、酸発生剤、酸架橋剤などを更に含むことができる。更に、任意成分として、塩基性化合物、その他、水、アルコール、及び硬化触媒等を含むことができる。塗布性及び品質安定性の点から、レジスト下層膜形成用組成物中の本実施形態に係る化合物の含有量は、0.1~70質量%であることが好ましく、0.5~50質量%であることがより好ましく、3.0~40質量%であることが特に好ましい。
【0370】
-溶媒-
本実施形態において用いる溶媒としては、上述した式(X)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。例えば国際公開第2017/188451号に開示された溶媒が挙げられる。
【0371】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~5,000質量部であることがより好ましく、200~1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0372】
-酸架橋剤-
上述のように本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて酸架橋剤を含有していてもよい。本実施形態で使用可能な酸架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物であって、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基を置換基(架橋性基)として有するものなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらの酸架橋剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらは添加剤として用いてもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。前記酸架橋剤の具体例としては、例えば、国際公開2013/024779号に記載のものが挙げられる。
【0373】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物において、酸架橋剤の含有量は、特に限定されないが、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量に対して、5~50質量部であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部である。上述の好ましい範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0374】
-酸発生剤-
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させるなどの観点から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれのものも使用することができる。前記酸発生剤としては、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。
【0375】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物において、酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~40質量部である。上述の好ましい範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0376】
-塩基性化合物-
さらに、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0377】
塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、例えば、第一級、第二級又は第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。塩基性化合物の具体例としては、例えば、国際公開2013/024779号に記載のものが挙げられる。
【0378】
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物において、塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、前記レジスト下層膜形成用組成物の全固形分100質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部である。上述の好ましい範囲にすることで、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0379】
また、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、熱硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレンなどのナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレンなどのビフェニル環、チオフェン、インデンなどのヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。前記公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0380】
<リソグラフィー用レジスト下層膜及びパターン形成方法>
本発明の第二の実施形態に係るリソグラフィー用レジスト下層膜は、前記本発明の第二の実施形態に係るレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成される。本実施形態において形成されたパターンは、例えば、レジストパターンや回路パターンとして用いることができる。
【0381】
また、本発明の第二の実施形態に係るパターン形成方法は、基板上に、本発明の第二の実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程(A-1工程)と、前記レジスト下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2工程)と、前記A-2工程において少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程(A-3工程)と、を有する。尚、“フォトレジスト層”とは、レジスト層の最外層、即ちレジスト層中最も表側(基板とは逆側)に設けられる層を意味する。
【0382】
さらに、本発明の第二の実施形態の他のパターン形成方法は、基板上に、本発明の第二の実施形態のレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程(B-1工程)と、前記下層膜上に、レジスト中間層膜材料(例えば、珪素含有レジスト層)を用いてレジスト中間層膜を形成する工程(B-2工程)と、前記レジスト中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B-3工程)と、前記B-3工程において少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4工程)と、前記B-4工程においてレジストパターンが形成された後、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B-5工程)と、を有する。
【0383】
本実施形態のリソグラフィー用レジスト下層膜は、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法などで基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させるなどして除去することで、レジスト下層膜を形成することができる。
【0384】
レジスト下層膜の形成時には、上層レジスト(例えば、フォトレジスト層やレジスト中間層膜)とのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベーク処理を施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10秒間~300秒間の範囲内であることが好ましい。なお、レジスト下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30~20,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmとすることが好ましい。
【0385】
基板上にレジスト下層膜を作製した後、フォトレジスト層とレジスト下層膜との間にレジスト中間層膜を設けることができる。例えば、2層プロセスの場合はレジスト下層膜の上に珪素含有レジスト層又は通常の炭化水素からなる単層レジスト等をレジスト中間層膜として設けることができる。また、例えば、3層プロセスの場合は、レジスト中間層膜とフォトレジスト層と間に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。これらフォトレジスト層、レジスト中間層膜、及びこれら層の間に設けられるレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0386】
例えば、2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0387】
また、例えば、3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果がある中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基を導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0388】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成したレジスト中間層膜を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによるレジスト中間層膜の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0389】
さらに、本実施形態のレジスト下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態のレジスト下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0390】
上述の公知のフォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、前記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、ベーク温度80~180℃、及び、ベーク時間10秒間~300秒間の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、各レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30nm~500nmが好ましく、より好ましくは50nm~400nmである。
【0391】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0392】
上述の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態のレジスト下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態のレジスト下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させることができる。
【0393】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおけるレジスト下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO、NH、SO、N、NO、Hガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO、NH、N、NO、Hガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0394】
一方、3層プロセスにおける中間層(フォトレジスト層とレジスト下層膜との間に位置する層)のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上述の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、レジスト下層膜の加工を行うことができる。
【0395】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報、WO2004/066377に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0396】
中間層として、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号公報、特開2007-226204号公報に記載されたものを用いることができる。
【0397】
また、基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0398】
本実施形態のレジスト下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れる。なお、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50nm~10,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75nm~5,000nmである。
【0399】
本実施形態のレジスト下層膜は段差を有する基板への埋め込み平坦性に優れる。埋め込み平坦性の評価方法としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定はされないが、例えば、段差を有するシリコン製基板上に所定の濃度に調整した各化合物の溶液をスピンコートにより塗布し、110℃にて90秒間の溶媒除去乾燥を行い、所定の厚みとなるようにテルル含有下層膜を形成した後、240~300℃程度の温度で所定時間ベーク後のライン&スペース領域とパターンのない開放領域との下層膜厚みの差(ΔT)をエリプソメーターにより測定することにより、段差基板に対する埋め込み平坦性を評価することができる。
【0400】
[光学物品形成組成物及びその硬化物]
本実施形態に係る光学部品形成組成物は、本実施形態に係る化合物又は樹脂を含有する光学部品形成組成物である。該光学部品形成組成物は、光学材料に有用に用いられる。本実施形態の光学部品形成組成物は、テルルを含有する化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂を含有することにより、高屈折率及び高透明性が期待でき、さらに、保存安定性、構造体形成能(膜形成能)、耐熱性が期待される。
光学物品の屈折率は光学部品の小型化や集光率の向上の観点から、1.65以上が好ましく、1.70以上がより好ましく、1.75以上が更に好ましい。光学物品の透明性は集光率の向上の観点から、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
屈折率の測定方法は特に制限されず公知の方法が用いられる。例えば、分光エリプソメトリー法、最小偏角法、臨界角法(アッベ式、プルフリッヒ式)、Vブロック法、プリズムカプラ法や液浸法(ベッケ線法)が挙げられる。透明性の測定方法は特に制限されず公知の方法が用いられる。例えば、分光光度計や分光エリプソメトリー法が挙げられる。
【0401】
また該光学部品形成組成物を硬化して得られる本実施形態に係る硬化物は、三次元架橋物であることができ、低温から高温までの広範囲の熱処理によって着色が抑制され、高屈折率及び高透明性が期待できる。
【0402】
本実施形態の光学部品形成組成物は、式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂以外に、更に溶媒を含有することができる。該溶媒としては、前述した本実施形態のリソグラフィー用材料組成物に用いられる溶媒と同様であることができる。
【0403】
本実施形態の光学部品形成組成物において、固形成分の量と溶媒の量との関係は、特に限定されないが、固形成分及び溶媒の合計100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、更に好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。なお、本実施形態の光学部品形成組成物は溶媒を含まないこともできる。
【0404】
本実施形態の光学部品形成組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0405】
本実施形態の光学部品形成組成物において、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様)の50~99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55~90質量%、更に好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%である。
【0406】
(酸発生剤(C))
本実施形態の光学部品形成組成物は、熱により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含有することが好ましい。前記酸発生剤(C)は、特に限定されず、例えば前述した本実施形態のリソグラフィー用材料組成物に含まれ得る酸発生剤(C)と同様であることができる。
【0407】
本実施形態の光学部品形成組成物において、酸発生剤(C)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%が更に好ましく、10~25質量%が特に好ましい。前記含有量の範囲内で酸発生剤(C)を使用することにより、一層高屈折率が得られる。
【0408】
(酸架橋剤(G))
本実施形態の光学部品形成組成物は、構造体の強度を増す為の添加剤として使用する場合に、酸架橋剤(G)を一種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)は、特に限定されず、例えば前述した本実施形態のリソグラフィー用材料組成物に含まれ得る酸架橋剤(G)と同様であることができる。
【0409】
本実施形態の光学部品形成組成物において、酸架橋剤(G)の含有量は、固形成分の全質量の0.5~49質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%が更に好ましく、2~20質量%が特に好ましい。前記酸架橋剤(G)の含有割合を0.5質量%以上とすると、光学部品形成組成物の有機溶媒に対する溶解性の抑制効果を向上させることができるので好ましく、一方、49質量%以下とすると、光学部品形成組成物としての耐熱性の低下を抑制できることから好ましい。
【0410】
また、前記酸架橋剤(G)中の前記酸架橋剤(G1)、前記酸架橋剤(G2)、前記酸架橋剤(G3)から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量も特に限定はなく、光学部品形成組成物を形成する際に使用される基板の種類等によって種々の範囲とすることができる。
【0411】
(酸拡散制御剤(E))
本実施形態の光学部品形成組成物は、酸発生剤から生じた酸の光学部品形成組成物中における拡散を制御して、好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)を含有してもよい。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、光学部品形成組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が一層向上するとともに、加熱後の引き置き時間の変動による構造体の線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。酸拡散制御剤(E)は、特に限定されず、例えば前述した本実施形態のリソグラフィー用材料組成物に含まれ得る酸拡散制御剤(E)と同様であることができる。
【0412】
酸拡散制御剤(E)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が更に好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。酸拡散制御剤(E)の含有量が前記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を一層抑制できる。更に、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することがない。また、酸拡散制御剤(E)の含有量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、光学部品形成組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動による光学部品形成組成物の線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0413】
(その他の成分(F))
本実施形態の光学部品形成組成物には、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、その他の成分(F)として、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。その他の成分(F)としては、例えば前述した本実施形態のリソグラフィー用材料組成物に含まれ得るその他の成分(F)と同様であることができる。
【0414】
その他の成分(F)の合計含有量は、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が更に好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0415】
本実施形態の光学部品形成組成物において、式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)、その他の成分(F)の含有量(式(X)で示される化合物及び該化合物に由来する構成単位を含む樹脂/酸発生剤(C)/酸拡散制御剤(E)/その他の成分(F))は、固形物基準の質量%で、好ましくは50~99.4/0.001~49/0.001~49/0~49、より好ましくは55~90/1~40/0.01~10/0~5、更に好ましくは60~80/3~30/0.01~5/0~1、特に好ましくは60~70/10~25/0.01~3/0である。各成分の含有割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。前記含有割合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に一層優れる。
【0416】
本実施形態の光学部品形成組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過する方法等が挙げられる。
【0417】
本実施形態の光学部品形成組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で樹脂を含むことができる。樹脂は、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体或いはこれらの誘導体などが挙げられる。当該樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する式(X)で示される化合物又は該化合物に由来する構成単位を含む樹脂の種類に応じて適宜調節されるが、該化合物及び該樹脂100質量部当たり、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0418】
また本実施形態の硬化物は、前記光学部品形成組成物を硬化して得られ、各種樹脂として使用することができる。これらの硬化物は、高融点、高屈折率及び高透明性といった様々な特性を付与する高汎用性の材料として様々な用途に用いることができる。なお、当該硬化物は、前記組成物を光照射、加熱等の各組成に対応した公知の方法を用いることによって得ることができる。
【0419】
これらの硬化物は、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の各種合成樹脂として、更には、機能性を活かしてレンズ、光学シート等の光学部品として用いることができる。
【0420】
なお、本明細書での「置換」とは、別途の定義がない限り、官能基中の一つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数0~20のアミノ基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアシル基、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素数1~20のアルキロイルオキシ基、炭素数7~30のアリーロイルオキシ基又は炭素数1~20のアルキルシリル基で置換されていることを意味する。
【0421】
無置換の炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。置換の炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基とは、例えば、フルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-シアノプロピル基及び20-ニトロオクタデシル基等が挙げられる。
【0422】
無置換の炭素数3~20の分岐脂肪族炭化水素基とは、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ネオペンチル基、2-ヘキシル基、2-オクチル基、2-デシル基、2-ドデシル基、2-ヘキサデシル基、2-オクタデシル基等が挙げられる。置換の炭素数3~20の分岐脂肪族炭化水素基とは、例えば、1-フルオロイソプロピル基及び1-ヒドロキシ-2-オクタデシル基等が挙げられる。
【0423】
無置換の炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。置換の炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基とは、例えば、2-フルオロシクロプロピル基及び4-シアノシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0424】
無置換の炭素数6~20のアリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換の炭素数6~20のアリール基とは、例えば、4-イソプロピルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-メチルフェニル基、6-フルオロナフチル基等が挙げられる。
【0425】
無置換の炭素数2~20のアルケニル基とは、例えば、ビニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基、ヘキサデシニル基、オクタデシニル基等が挙げられる。置換の炭素数2~20のアルケニル基とは、例えば、クロロプロピニル基等が挙げられる。
【0426】
ハロゲン原子とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【実施例
【0427】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされない。
【0428】
なお、化合物の構造は、Bruker社製「Advance600II spectrometer」を用いて、以下の条件でH-NMR測定を行い、確認した。
H-NMR測定の測定条件)
周波数:400MHz
溶媒:d-DMSO
内部標準物質:テトラメチルシラン
【0429】
[合成実施例1-1]
2.7g(10mmol)のTeClと、1.5g(10mol)のビフェニルとを、3.1gのAlCl触媒の存在下、20gのCHCl中にて、60℃で48時間縮合反応を行い、以下に示される化合物Aを61%の収率で得た。得られた化合物Aについて、下記測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、356であった。
(GPC-MSの測定方法)
装置:Waters製「ACQUITY UPLC H-Class」
カラム:Waters製「ACQUITY APC カラム」
溶離液:テトラヒドロフラン
【0430】
【化43】
【0431】
[合成実施例1-2]
50mL容器に前記化合物A(7.12g、20mmol)を仕込み、アニソール10.8g(100mmol)を加え還流条件下で160℃、6時間反応を行った。得られた生成物を減圧乾燥し、アセトニトリルを用いて再結晶を二回行い、濾過後橙色結晶を得た。得られた結晶を24時間減圧乾燥した後、続いて、攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に前記乾燥した結晶全量、メチレンジクロライドを18ml加え、三臭化ホウ素3.9g(15.75mmol)を滴下し、-20℃で48時間反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で0.5N塩酸溶液に滴下し、濾過後、黄色固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルで溶解させ、硫酸マグネシウムを加え、脱水処理後、濃縮を行い、カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行うことで、化合物A2を0.2g得た。
得られた化合物A2について、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、466であった。また、得られた化合物A2について、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)10.2(2H,-OH)、6.8~7.8(16H,Ph-H)
【0432】
【化44】
【0433】
[合成実施例1-3]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2を4.7g(10mmol)、炭酸カリウム0.30g(22mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.64g(2mmol)を、N-メチルピロリドン50mlに溶解させ、2時間撹拌した。撹拌後、更にブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イル6.3g(22mmol)を加え、100℃にて24時間反応させた。反応終了後、1N塩酸水溶液に滴下し、生じた黒色固体をろ別し、カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行うことで、化合物A2-ADBACを1.9g得た。
得られた化合物A2-ADBACについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、882であった。また、得られた化合物A2-ADBACについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.8~8.1(16H,Ph-H)、4.7~5.0(4H,O-CH-C(=O)-)、1.2~2.7(34H,C-H/Adamantane of methylene and methine)
【0434】
【化45】
【0435】
[合成実施例1-4]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2を4.7g(10mmol)、ジ-t-ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)を、N-メチルピロリドン50mlに溶解させ、炭酸カリウム0.30g(22mmol)を加えて、100℃にて24時間反応させた。反応終了後、1N塩酸水溶液に滴下し、生じた黒色固体をろ別し、カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行うことで、化合物A2-BOCを1.0g得た。
得られた化合物A2-BOCについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、698であった。また、得られた化合物A2-BOCについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)7.1~7.3(16H,Ph-H)、1.4(18H,C-C
【0436】
【化46】
【0437】
[合成実施例1-5]
200mL容器に前記化合物A(7.12g、20mmol)を仕込み、2,7-ジメトキシナフタレン75.32g(40mmol)とN,N-ジメチルアセトアミド50mLを加え、還流条件下で160℃、6時間反応を行った。その後、100mlのヘキサンを加え、再沈殿により得られた固体を濾別後、24時間減圧乾燥し、橙色固体10.30gを得た。続いて、攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に前記乾燥した固体全量、メチレンジクロライドを18ml加え、三臭化ホウ素3.90g(15.75mmol)を滴下し、-20℃で48時間反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で0.5N塩酸溶液に滴下し、濾過後、黄色固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルで溶解させ、硫酸マグネシウムを加え、脱水処理後、ヘキサン中に滴下を行うことで、下記式に示される樹脂P-A-DHNを9.43g得た。得られた樹脂P-A-DHNについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、2135であった。
【0438】
【化47】
【0439】
[合成実施例2-1]
2.7g(10mmol)のTeClと、1.7g(10mmol)のジフェニルエーテルとを、3.1gのAlCl触媒の存在下、20gのCHCl中にて、60℃で48時間縮合反応を行い、以下に示される化合物Bを91%の収率で得た。得られた化合物Bについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、368であった。
【0440】
【化48】
【0441】
[合成実施例2-2]
50mL容器に、前記化合物Aの代わりに前記化合物Bを7.36g(20mmol)仕込んだ以外は、合成実施例1-2と同様の操作を行うことで、化合物B2を0.3g得た。得られた化合物B2について、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、486であった。また、得られた化合物B2について、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)10.3(2H,-OH)、6.8~7.8(16H,Ph-H)
【0442】
【化49】
【0443】
[合成実施例2-3]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2の代わりに前記化合物B2を4.9g(10mmol)使用した以外は、合成実施例1-3と同様の操作を行うことで、化合物B2-ADBACを2.1g得た。得られた化合物B2-ADBACについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、898であった。また、得られた化合物B2-ADBACについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.8~8.0(16H,Ph-H)、4.7~5.0(4H,O-CH-C(=O)-)、1.2~2.7(34H,C-H/Adamantane of methylene and methine)
【0444】
【化50】
【0445】
[合成実施例2-4]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2の代わりに前記化合物B2を4.9g(10mmol)使用した以外は、合成実施例1-4と同様の操作を行うことで、化合物B2-BOCを2.0g得た。得られた化合物B2-BOCについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、714であった。また、得られた化合物B2-BOCについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)7.1~7.3(16H,Ph-H)、1.4(18H,C-C
【0446】
【化51】
【0447】
[合成実施例2-5]
200mL容器に、前記化合物Aの代わりに前記化合物Bを7.36g(20mmol)仕込んだ以外は、合成実施例1-5と同様の操作を行うことで、下記式に示される樹脂P-B-DHNを8.56g得た。得られた樹脂P-B-DHNについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、2223であった。
【0448】
【化52】
【0449】
[合成実施例3-1]
2.7g(10mmol)のTeClと、1.9g(10mol)のジフェニルスルフィドとを、3.1gのAlCl触媒の存在下、20gのCHCl中にて、60℃で48時間縮合反応を行い、以下に示される化合物Cを64%の収率で得た。得られた化合物Cについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、384であった。
【0450】
【化53】
【0451】
[合成実施例3-2]
50mL容器に、前記化合物Aの代わりに前記化合物Cを7.68g(20mmol)仕込んだ以外は、合成実施例1-2と同様の操作を行うことで、化合物C2を0.4g得た。得られた化合物C2について、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、502であった。また、得られた化合物C2について、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)10.3(2H,-OH)、6.8~7.8(16H,Ph-H)
【0452】
【化54】
【0453】
[合成実施例3-3]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2の代わりに前記化合物C2を5.0g(10mmol)使用した以外は、合成実施例1-3と同様の操作を行うことで、下記化合物C2-ADBACを2.3g得た。得られた化合物C2-ADBACについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、914であった。また、得られた化合物C2-ADBACについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.8~8.1(16H,Ph-H)、4.7~5.0(4H,O-CH-C(=O)-)、1.2~2.6(34H,C-H/Adamantane of methylene and methine)
【0454】
【化55】
【0455】
[合成実施例3-4]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物A2の代わりに前記化合物C2を5.0g(10mmol)使用した以外は、合成実施例1-4と同様の操作を行うことで、下記化合物C2-BOCを2.5g得た。得られた化合物C2-BOCについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、730であった。また、得られた化合物C2-BOCについて、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記で示される化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)7.1~7.3(16H,Ph-H)、1.5(18H,C-C
【0456】
【化56】
【0457】
[合成実施例3-5]
200mL容器に、前記化合物Aの代わりに前記化合物Cを10.4g(20mmol)仕込んだ以外は、合成実施例1-5と同様の操作を行うことで、下記式に示される樹脂P-C-DHNを8.96g得た。得られた樹脂P-C-DHNについて、上述の測定方法(GPC-MS)によって分子量を測定した結果、1223であった。
【0458】
【化57】
【0459】
[合成実施例4]
4.5g(10mmol)のTeBrと、1.5g(10mol)のビフェニルとを、3.1gのAlCl触媒の存在下、20gのCHCl中にて、60℃で48時間縮合反応を行い、以下に示される化合物Dを50%の収率で得た。
【0460】
【化58】
【0461】
[合成実施例5]
6.4g(10mmol)のTeIと、1.5g(10mol)のビフェニルとを、3.1gのAlCl触媒の存在下、20gのCHCl中にて、60℃で48時間縮合反応を行い、以下に示される化合物Eを45%の収率で得た。
【0462】
【化59】
【0463】
[合成比較例1]
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
【0464】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂である化合物CR-1を126.1g得た。
【0465】
[合成比較例2]
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記化合物CR-1を10gと、ジ-t-ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)3.45g(25mmol)を加えて、内容物を20℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。得られた固形物を水洗し、減圧乾燥して黒色固体の変性樹脂である化合物CR-1-BOCを4g得た。
【0466】
[実施例1~12、比較例1及び2]
(レジスト組成物の調製)
前記合成実施例及び合成比較例で合成した各化合物及び樹脂を用いて、下記表1にされる配合でレジスト組成物を調製した。なお、表1中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤:トリフェニルベンゼンスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株)製)
酸架橋剤:商品名「ニカラックMX270(ニカラック)」、三和ケミカル社製
酸拡散制御剤:トリオクチルアミン(東京化成工業(株)製)
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業(株)製)
【0467】
(レジスト特性評価)
(1)化合物及び樹脂の安全溶媒への溶解性評価
化合物及び樹脂の安全溶媒への溶解性について、化合物及び樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解性を測定した。当該溶解性は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへの溶解量を用いて以下の基準に従って評価した。なお、溶解量の測定は23℃にて行った。化合物又は樹脂を試験管に精秤し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを所定の濃度となるように加え、超音波洗浄機にて30分間超音波をかけ、その後の液の状態を目視にて観察し、完全に溶解した溶解量を用いて以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:5.0質量%≦溶解量
B:3.0質量%≦溶解量<5.0質量%
C: 溶解量<3.0質量%
【0468】
(2)レジスト組成物の保存安定性及び薄膜形成評価
レジスト組成物の保存安定性は、レジスト組成物を調製後、23℃にて3日間静置し、析出の有無を目視にて観察することにより評価した。3日間静置後のレジスト組成物において、均一溶液であり析出がない場合には「A」、析出が認められた場合には「C」と評価した。
レジスト組成物の薄膜形成は以下の方法で評価した。均一状態のレジスト組成物を清浄なシリコンウェハ上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(prebake:PB)して、厚さ40nmのレジスト膜を形成した。薄膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0469】
(3)レジスト組成物の感度及びパターン形状評価
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(商品名:ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜をそれぞれ所定の温度で90秒間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)2.38質量%のアルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製「S-4800」)を用いて観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性(感度)を評価した。感度は、該パターンを得る為に必要な単位面積当たりの最小のエネルギー量で示し、50μC/cm未満でパターンが得られた場合を「A」、50μC/cm以上でパターンが得られた場合を「C」とした。また得られたパターン形状をSEM((走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope))にて観察し、矩形なパターンが得られた場合を「A」、ほぼ矩形なパターンが得られた場合を「B」、矩形でないパターンが得られた場合を「C」とした。結果を表1に示す。なお、実施例2、3、5、6、8及び9、並びに比較例2ではポジ型、実施例1、4及び7、並びに比較例1ではネガ型のレジストパターンを形成した。
【0470】
【表1】
【0471】
表1から分かるように、実施例1~12で用いた化合物又は樹脂は、比較例1、2で用いた化合物と同等の優れた安全溶媒への溶解性を有することが確認された。また、実施例1~12のレジスト組成物は、比較例1、2のレジスト組成物と同等の優れた保存安定性及び薄膜形成性を有することが確認された。さらに、実施例1~12のレジスト組成物は、比較例1、2のレジスト組成物よりも感度及びパターン形状が優れていることが確認された。
【0472】
前記結果から、本発明の要件を満たす化合物及び樹脂は、安全溶媒に対する溶解性が高く、該化合物及び樹脂を含むレジスト組成物は、比較化合物(CR-1及びCR-1-BOC)を含むレジスト組成物に比べて、保存安定性が良好で、薄膜形成が可能であり、高感度であると共に優れたレジストパターン形状を付与できることがわかった。上述した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物及び樹脂以外の化合物及び樹脂も同様の効果を示す。
【0473】
[実施例13~48、比較例3]
(レジスト下層膜形成用組成物の調製)
前記合成実施例及び合成比較例で合成した各化合物及び樹脂を用いて、下記表2にされる配合でレジスト下層膜形成用組成物を調製した。なお、表2中のレジスト下層膜形成用組成物の各成分のうち、酸発生剤、酸架橋剤及び有機溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤:ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI)(みどり化学社製)
酸架橋剤:商品名「ニカラックMX270(ニカラック)」、三和ケミカル社製
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートアセテート(PGMEA)
【0474】
(エッチング耐性の評価)
実施例13~48及び比較例3におけるレジスト下層膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、その後240℃で60秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。そして、下記に示す条件でエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。
【0475】
<エッチング試験条件>
エッチング装置:商品名「RIE-10NR」、サムコインターナショナル社製
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
【0476】
エッチング耐性の評価は、以下のように行った。実施例13で用いた化合物A2に代えてノボラック(商品名「PSM4357」、群栄化学社製)を用いたこと以外は、実施例13と同様の条件で、ノボラックの下層膜を作製した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、上述のエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。該エッチングレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。
<評価基準>
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%未満である。
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%~+5%である。
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超である。
【0477】
【表2】
【0478】
表2に示されるように、実施例13~48の下層膜は、比較例3の下層膜と比較して高いエッチング耐性を有することが確認された。
【0479】
[実施例49]
(レジストパターンの形成)
実施例13のレジスト下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚85nmのレジスト下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArF用レジスト溶液としては、以下に示される化合物CR-1A:1質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:30質量部を配合して調製したものを用いた。
【0480】
【化60】
【0481】
化合物CR-A1は下記のように合成した。温度を制御できる内容積500mLの電磁撹拌装置付オートクレーブ(SUS316L製)に、無水HF 74.3g(3.71モル)、BF 50.5g(0.744モル)を仕込み、内容物を撹拌し、液温を-30℃に保ったまま一酸化炭素により2MPaまで昇圧した。その後、圧力を2MPa、液温を-30℃に保ったまま、4-シクロヘキシルベンゼン57.0g(0.248モル)とn-ヘプタン50.0gとを混合した原料を供給し、1時間保った。その後、内容物を採取し氷の中に入れ、ベンゼンで希釈後、中和処理をして得られた油層をガスクロマトグラフィーで分析した。4-シクロヘキシルベンゼンの転化率は100%、4-シクロヘキシルベンズアルデヒドの選択率は97.3%であった。
【0482】
単蒸留により目的成分を単離し、GC-MSで分析した結果、目的物の4-シクロヘキシルベンズアルデヒド(以下、「CHBAL」とも示す)の分子量188を示した。上記分子量は、島津製鉄所製社製GC-MS(商品名「QP2010 Ultra」)を用いて測定した。また重クロロホルム溶媒中での1H-NMRのケミカルシフト値(δppm,TMS基準)は、1.0~1.6(m,10H)、2.6(m,1H)、7.4(d,2H)、7.8(d,2H)、10.0(s,1H)であった。
【0483】
十分乾燥し、窒素置換した、滴下漏斗、ジム・ロート氏冷却管、温度計、攪拌翼を設置した四つ口フラスコ(1000mL)に、窒素気流下で、関東化学社製レゾルシノール(22g、0.2mol)と、前記4-シクロヘキシルベンズアルデヒド(46.0g,0.2mol)と、脱水エタノール(200mL)を投入し、エタノール溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらマントルヒーターで85℃まで加熱した。次いで濃塩酸(35%)75mLを、滴下漏斗により30分間かけて滴下した後、引き続き85℃で3時間攪拌した。反応終了後、放冷し、室温に到達させた後、氷浴で冷却した。1時間静置後、淡黄色の目的粗結晶が生成し、これを濾別した。粗結晶をメタノール500mLで2回洗浄し、濾別、真空乾燥させることにより、50gの生成物を得た。この生成物の構造は、GPC-MSで分析した結果、分子量1121を示した。また重クロロホルム溶媒中での1H-NMRのケミカルシフト値(δppm,TMS基準)は0.8~1.9(m,44H)、5.5,5.6(d,4H)、6.0~6.8(m,24H)、8.4,8.5(m,8H)であった。これらの結果から、得られた生成物を目的化合物(化合物CR-1A)と同定した(収率91%)。
【0484】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製、商品名「ELS-7500」、50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、45nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。
【0485】
(評価)
得られたレジストパターンの形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(商品名「S-4800」)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを「良好」とし、そうでないものを「不良」として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を「解像性」として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を「感度」として評価の指標とした。結果を表3に示す。
【0486】
[比較例4]
レジスト下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例49と同様にしてフォトレジスト層をSiO基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。該レジストパターンについて実施例49と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0487】
【表3】
【0488】
表3から明らかなように、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いた実施例49におけるレジスト下層膜は、比較例4に比して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、実施例49におけるレジスト下層膜は、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることから、パターンが加熱時にだれず耐熱性に優れていることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例49におけるレジスト下層膜形成用組成物は、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れておりレジスト材料との密着性がよいことが示された。
【0489】
[実施例50~85、比較例5]
(光学部品形成組成物の調製)
表4に記載の組成となるように光学部品形成組成物を調製した。表4中の光学部品形成組成物の各成分のうち、有機溶媒としてはPGMEA、酸発生剤としてはDTDPI、酸架橋剤としてはニカラックをそれぞれ用いた。
【0490】
(膜形成評価)
調製した均一状態の光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でプレベーク(prebake:PB)して、厚さ1μmの光学部品形成膜を形成した。膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。結果を表4に示す。
【0491】
(屈折率及び透明性評価)
調製した均一な光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でPBして、厚さ1μmの膜を形成した。その膜につき、ジェー・エー・ウーラム製多入射角分光エリプソメーターVASEにて、25℃における屈折率(λ=589.3nm)を測定した。調製した膜について、屈折率が1.8以上の場合には「A」、1.6以上1.8未満の場合には「B」、1.6未満の場合には「C」と評価した。また透明性(λ=632.8nm)が90%以上の場合には「A」、90%未満の場合には「C」と評価した。結果を表4に示す。
【0492】
【表4】
【0493】
表4から分かるように、実施例50~85の光学部品形成組成物は、優れた膜を形成することができ、該膜は比較例5に比べて高い屈折率及び透明性を有していることが確認された。
【0494】
前記結果から、本発明の要件を満たす化合物及び樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が高く、該化合物及び樹脂を含む光学部品形成組成物は、膜形成が可能であり、高屈折率及び高透過率を付与できることがわかった。上述した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物及び樹脂以外の化合物及び樹脂も同様の効果を示す。
【0495】
[実施例86]
(金属含有量の低減された溶液の調製)
1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、前記化合物A2をPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込み、攪拌しながら80℃まで加熱した。次いで、蓚酸水溶液(pH1.3)37.5gを加え、5分間攪拌後、30分間静置した。これにより油相と水相とに分離したので、水相を除去した。この操作を1回繰り返した後、得られた油相に、超純水37.5gを仕込み、5分間攪拌後、30分静置し、水相を除去した。この操作を3回繰り返すことにより、金属含有量の低減された化合物A2のPGMEA溶液を得た。
【0496】
(金属含有量の測定)
前記溶液について、各種金属含有量をICP-MS(商品名「ELAN DRCII」、パーキンエルマー製)によって測定した。測定結果を表5に示す。なお、表5には、精製前の化合物A2の10質量%PGMEA溶液(以下、精製前A2溶液ともいう。)、精製前の化合物A2-ADBACの10質量%PGMEA溶液(以下、精製前A2-ADBAC溶液ともいう。)、精製前の化合物A2-BOCの10質量%PGMEA溶液(以下、精製前A2-BOC溶液ともいう。)の測定結果も合わせて示す。
【0497】
[実施例87]
化合物A2をPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込む代わりに、化合物A2をPGMEA(120g)/PGME(15g)に10質量%溶解させた溶液を150g仕込んだこと以外は、実施例86と同様に処理して金属含有量の低減された化合物A2のPGMEA溶液を得た。該溶液について、実施例86と同様に各種金属含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0498】
[実施例88]
蓚酸水溶液(pH1.3)37.5gを仕込む代わりに、クエン酸水溶液(pH1.8)130gを仕込んだこと以外は、実施例86と同様に処理して金属含有量の低減された化合物A2のPGMEA溶液を得た。該溶液について、実施例86と同様に各種金属含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0499】
[実施例89]
化合物A2をPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込む代わりに、前記化合物A2-ADBACをPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込んだこと以外は、実施例86と同様に処理して金属含有量の低減された化合物A2-ADBACのPGMEA溶液を得た。該溶液について、実施例86と同様に各種金属含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0500】
[実施例90]
化合物A2をPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込む代わりに、前記化合物A2-BOCをPGMEAに2.5質量%溶解させた溶液を150g仕込んだこと以外は、実施例86と同様に処理して金属含有量の低減された化合物A2-BOCのPGMEA溶液を得た。該溶液について、実施例86と同様に各種金属含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0501】
【表5】
【0502】
表5から分かるように、精製前の各溶液に対して、本発明の精製方法によって精製した実施例86~90の溶液は、溶液中の金属含有量が効果的に低減されていた。