IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ナリタテクノの特許一覧

<>
  • 特許-燃焼方法 図1
  • 特許-燃焼方法 図2
  • 特許-燃焼方法 図3
  • 特許-燃焼方法 図4
  • 特許-燃焼方法 図5
  • 特許-燃焼方法 図6
  • 特許-燃焼方法 図7
  • 特許-燃焼方法 図8
  • 特許-燃焼方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 1/00 20060101AFI20240719BHJP
   F23D 14/12 20060101ALI20240719BHJP
   F23D 14/66 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F23N1/00 104
F23D14/12 A
F23D14/66 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023118083
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592187796
【氏名又は名称】株式会社ナリタテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
(72)【発明者】
【氏名】上山 陸人
(72)【発明者】
【氏名】江口 文康
(72)【発明者】
【氏名】高田 有則
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-039682(JP,A)
【文献】特開2022-012927(JP,A)
【文献】特開昭63-217119(JP,A)
【文献】特開2023-039681(JP,A)
【文献】国際公開第2023/037643(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110873326(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00
F23D 14/12
F23D 14/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼後に排出されるガスにより燃焼に使用するガスを予熱する熱交換機能を有するラジアントチューブバーナにて、燃焼室負荷を予め定められた範囲に制限し、
前記熱交換機能により予熱された前記燃焼に使用するガスの温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替え、
前記予め定められた温度は、前記難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度であり、
前記予め定められた温度は、前記燃焼室負荷に応じて異なる値が設定される燃焼方法。
【請求項2】
前記予め定められた温度は、前記燃焼室負荷が大きくなるにつれて低い値が設定されることを特徴とする請求項に記載の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、小口径化が可能であると共に安定燃焼を得ることができる、とするシングルエンド型ラジアントチューブバーナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6594749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラジアントチューブバーナの燃料としては、例えば都市ガス等の炭化水素燃料が使用されており、その燃焼時に二酸化炭素が排出される。二酸化炭素排出量削減のため燃焼時に二酸化炭素を排出しない燃料として、例えばアンモニア等を含む難燃性燃料の直接燃料利用が考えられる。しかしながら、難燃性燃料はその燃焼性の低さから未燃の燃料が排出されることが想定される。
本発明は、ラジアントチューブバーナにおいて、未燃の燃料の排出を抑制して難燃性燃料を燃焼させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、燃焼後に排出されるガスにより燃焼に使用するガスを予熱する熱交換機能を有するラジアントチューブバーナにて、燃焼室負荷を予め定められた範囲に制限し、前記熱交換機能により予熱された前記燃焼に使用するガスの温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替え、前記予め定められた温度は、前記難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度であり、前記予め定められた温度は、前記燃焼室負荷に応じて異なる値が設定される燃焼方法である。
請求項2に記載の発明は、前記予め定められた温度は、前記燃焼室負荷が大きくなるにつれて低い値が設定されることを特徴とする請求項に記載の燃焼方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ラジアントチューブバーナにおいて、未燃の燃料の排出を抑制して難燃性燃料を燃焼させることができる。
請求項の発明によれば、燃焼室負荷が大きく設定された場合に、予熱温度が低い状態でも燃焼を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナの構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態における非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えの例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る、各燃焼室負荷において難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度について示す図である。
図4】第1の実施形態に係る燃焼の切り替え制御時に実施される処理の例について示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナの構成例を示す図である。
図6】第2の実施形態において、難燃性燃料を予熱する熱交換機能をさらに有する場合のラジアントチューブバーナの構成例を示す図である。
図7】予熱された難燃性燃料の温度と、燃焼を切り替える燃焼用空気の温度の関係を示す図である。
図8】第3の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナの構成例を示す図である。
図9】第3の実施形態に係る非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
(ラジアントチューブバーナ)
図1は、第1の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナ10の構成例を示す図である。下の図はラジアントチューブバーナ10の構成例を示す拡大図である。
ラジアントチューブバーナ10は、主燃バーナ11と、助燃バーナ12と、燃焼用ガス流路13と、排ガス流路14と、熱交換器15とを備える。燃焼用ガス流路13、排ガス流路14は、流路内を通過するガスの温度を測定する予熱ガス温度測定器16、排ガス温度測定器17をそれぞれ備える。また、ラジアントチューブバーナ10は燃焼を制御する制御部90を備える。
ラジアントチューブバーナ10は、図1に示すシングルエンド型の他、W字型、U字型のものを使用しても良い。
【0009】
主燃バーナ11は難燃性燃料を燃焼させるためのバーナである。助燃バーナ12は主燃バーナ11における燃焼を安定化させるためのバーナである。主燃バーナ11と助燃バーナ12とを合わせてメインバーナと呼ぶことがある。
主燃バーナ11は、燃焼用ガス流路13により供給される難燃性燃料と燃焼用空気との予混合気により燃焼させる。助燃バーナ12は、都市ガス等の炭化水素燃料等(非難燃性燃料)と燃焼用空気との予混合気により燃焼させる。助燃バーナ12は、例えば不図示の点火用パイロットバーナにより点火する。または、着火プラグ等の点火機構を用いて助燃バーナ12を直接点火しても良い。
【0010】
燃焼用ガス流路13は、主燃バーナ11における燃焼に用いられる燃焼用ガスを主燃バーナ11に供給する流路である。燃焼用ガス流路13により主燃バーナ11に供給される燃焼用ガスは、熱交換器15により予熱され、主燃バーナ11に供給される。
燃焼用ガス流路13により供給される燃焼用ガスは、燃焼用空気と難燃性燃料とが予め混合された予混合気である。難燃性燃料としては、例えばアンモニアやアンモニアを含む混合ガスなどが使用される。なお、難燃性燃料と、都市ガスや水素ガスとの混合燃料を使用しても良い。
燃焼用空気と難燃性燃料とはそれぞれを供給する配管により供給され、熱交換器15に入る手前で混合される。各配管はそれぞれ図1に示すように流量制御弁21、流量調整弁22、遮断弁23(23a、23b、23c)、圧力調整器24を備える。
【0011】
流量制御弁21は炉内の温度に応じて燃焼用空気および燃料ガスの流量を制御し、燃焼出力を制御するための装置である。流量調整弁22は流量制御弁21の制御範囲全域で流量を調整するための装置である。遮断弁23は異常や危険な状況が生じた場合にガスの供給を止めるための弁である。図1に示すように、遮断弁23は複数個が並列しており、遮断弁23aは設備にガスの供給を開始する際に操作する弁である。遮断弁23b、23cは制御部90からの信号を受け取り開閉する弁であり、遮断弁の故障等が生じたときのために2つ並んで設置される。難燃性燃料および非難性燃料の供給は遮断弁23b、23cの開閉により制御される。なお、配管が備える各種弁は一例であり、上記したものに限定されない。圧力調整器24は流路の圧力を調整し、適当な圧力に保つための装置である。
制御部90は、遮断弁23b、23cの開閉によりメインバーナにおける燃焼を開始、終了し、また燃焼に使用する燃料を切り替える。
【0012】
排ガス流路14は、メインバーナの燃焼により生じる燃焼ガスを排出するための流路である。
熱交換器15は、燃焼用ガス流路13により供給される燃焼用ガスと排ガス流路14により排出される燃焼ガスとの間で熱交換を行う。主燃バーナ11に供給される燃焼用ガスは熱交換器15により予熱された状態で供給される。熱交換器15は熱交換機能の一例である。
予熱ガス温度測定器16は、熱交換器15により予熱された燃焼用ガスの温度を測定する。
排ガス温度測定器17は、熱交換器15により熱交換を行った後の燃焼ガスの温度を測定する。
【0013】
ラジアントチューブバーナ10は、燃焼炉50の炉内に設置される。燃焼炉50に設置されるラジアントチューブバーナ10は、1つであっても複数であっても良い。ラジアントチューブバーナ10はチューブ内で燃焼用ガスを燃焼させることによりチューブを加熱し、チューブからの輻射熱により炉内を昇温させる。
燃焼炉50は炉内の雰囲気温度を測定する炉内温度測定器51を備える。
【0014】
燃焼用ガスの温度は予熱ガス温度測定器16により測定され、予め定められた温度(T1)に達したときに燃焼の切り替えが行われる。また、燃焼用ガスの温度は排ガス温度測定器17および炉内温度測定器51の測定値に基づいて算出されても良い。燃焼用ガスの温度が予熱ガス温度測定器16により正確に測定できない場合には、燃焼用ガスの温度は、例えば炉内温度測定器51の測定値と排ガス温度測定器17の測定値との差により算出される。周囲温度を考慮して算出されても良い。
【0015】
(燃焼室負荷)
ラジアントチューブバーナ10は、最大燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下、最小燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以上として設計される。
燃焼室負荷とは燃焼室の単位容積当たりの発生熱量(燃焼量)である。最大燃焼室負荷はラジアントチューブバーナ10の最大燃焼量を燃焼に使用される燃焼室の容積で割ることにより算出される。最小燃焼室負荷はバーナノズルの性能により決定され、最大燃焼室負荷、最小燃焼室負荷はいずれも設計値として決定される。
燃焼室負荷が大きくなると、燃焼ガス流速が速くなるためにラジアントチューブバーナ10における燃焼用ガスの滞留時間は短くなる。また、燃焼室負荷が大きくなると、ラジアントチューブバーナ10に投入される熱量に対し、ラジアントチューブバーナ10のチューブ内雰囲気等への放熱量の割合が減少し、燃焼反応に使用される熱量の割合は増加する。
【0016】
未燃の難燃性燃料が発生するか否かは、ラジアントチューブバーナ10における燃焼用ガスの滞留時間と燃焼反応に使用される熱量の割合とによって決まる。そのため、難燃性燃料を用いた燃焼においては安定した燃焼を保持するために必要な熱量を確保する必要がある。
必要な熱量を確保するためには燃焼室負荷を増加させる必要があるが、燃焼室負荷を増加させるとラジアントチューブバーナ10における難燃性燃料の滞留時間は短くなる。燃焼用ガスの滞留時間が短くなると、燃焼しきる前の未燃の難燃性燃料が排出され得る。そのため、未燃の難燃性燃料を発生させないためには、難燃性燃料を完全酸化、完全燃焼させるための滞留時間(反応時間)を確保しつつ、安定した燃焼の保持に必要な熱量を確保する必要がある。
【0017】
燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以上とした場合、反応速度との関係から難燃性燃料を完全燃焼させるためのラジアントチューブバーナ10における燃焼用ガスの滞留時間を確保することができず、未燃の難燃性燃料が発生する。
燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下とした場合、ラジアントチューブバーナ10における燃焼用ガスの滞留時間を十分に確保できるため、未燃の難燃性燃料が発生するか否かは燃焼に必要な熱量が確保できるか否かによる。燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以下とした場合、燃焼に必要な熱量が確保できず、安定した燃焼を保持できないために未燃の難燃性燃料が発生する。
ラジアントチューブバーナ10の燃焼室負荷は、難燃性燃料を完全燃焼させるためのラジアントチューブバーナ10内に滞留する時間を確保することができる範囲に制限される。この制限により、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することができる。
【0018】
(燃焼方法)
第1の実施形態に係る燃焼方法は、ラジアントチューブバーナ10にて、熱交換器15により予熱された燃焼用ガスの温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替えるものである。難燃性燃料はその燃焼性の低さから温度が低い状態においては安定した燃焼を保持するために必要な熱量を確保することができない。言い換えると、ラジアントチューブバーナ10の立ち上げ時には、十分な排熱回収が行えないため、燃焼性の低い難燃性燃料を用いた燃焼を実施するのに十分な予熱の効果を得ることができない。
そこで、第1の実施形態においては、助燃バーナ12による非難燃性燃料を用いた燃焼により主燃バーナ11による難燃性燃料を用いた燃焼を補助する。安定な主燃バーナ11による難燃性燃料専焼状態が得られるまでは、助燃バーナ12の運転を継続する。そして、安定な燃焼状態が確保できた後に助燃バーナ12を消火し、主燃バーナ11による難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替える。
【0019】
第1の実施形態における燃焼の切り替えについて、図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態における非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えの例を示す図である。図2において、横軸は時間を、縦軸は燃焼用ガスの温度、各バーナにおける燃焼量を示す。
主燃バーナ11、助燃バーナ12による燃焼の開始および終了(消火)は、制御部90により制御される。主燃バーナ11、助燃バーナ12への難燃性燃料、非難燃性燃料の供給は、制御部90による遮断弁23b、23cの開閉制御により実行される。
図2において、まず、点aにおいて点火用パイロットバーナにより助燃バーナ12が点火される。助燃バーナ12による燃焼が開始されると点bにおいてパイロットバーナは消火され、続いて主燃バーナ11による燃焼が開始される。炉内温度の上昇とともに熱交換器15の排熱回収量が増加し、点cにおいて燃焼用ガスの温度が予め定められた温度(T1)に到達すると、助燃バーナ12は消火され、主燃バーナ11のみを用いた燃焼へと切り替えられる。主燃バーナ11は難燃性燃料を用いた燃焼を行うため、点cから主燃バーナ11が消火される点dまでの間は、難燃性燃料専焼状態となる。予め定められた温度(T1)について、詳しくは後述する。
【0020】
点dにおいて主燃バーナ11が消火された後再びラジアントチューブバーナ10を稼働させる場合、同様に点火用パイロットバーナにより助燃バーナ12が点火され(点e)、主燃バーナ11による燃焼が開始される(点f)。燃焼用ガスの温度が予め定められた温度(T1)に到達すると(点g)、助燃バーナ12は消火され、主燃バーナ11のみを用いた燃焼へと切り替えられる。
図2に示すように、再稼働時においては、燃焼用ガスの温度が低下しきっておらず、再稼働後に燃焼用ガスの温度が予め定められた温度(T1)に到達する時間(e-g)が1回目の稼働時(a-c)よりも短くなっている。
【0021】
主燃バーナ11のみを用いた燃焼へと切り替える基準となる、予め定められた温度(T1)は、難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度である。第1の実施形態に係る難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度について、図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態に係る、各燃焼室負荷において難燃性燃料を安定して燃焼させることが可能な温度について示す図である。図3において横軸は燃焼室負荷を、縦軸は温度を示す。
【0022】
図3においては、ラジアントチューブバーナ10において、難燃性燃料として100%アンモニアを使用し、空気比1.1で燃焼させた際に排ガス流路14から排出される燃焼ガス中の未燃のアンモニアが1ppm未満となった温度についてプロットする。各燃焼室負荷において、プロットに基づき作成された近似曲線よりも高い温度で難燃性燃料を用いた燃焼を行った場合には未燃の難燃性燃料の発生を1ppm未満に抑えることができる。
図3に示すデータから、燃焼室負荷が180kW/m(LHV)以上1800kW/m(LHV)以下の範囲であれば、200℃以上の温度で燃焼させた場合には未燃の難燃性燃料を排出することなく難燃性燃料を安定して燃焼させることができる。つまり、第1の実施形態において、予め定められた温度(T1)を200℃以上に設定することで、非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替え後に、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することができる。
【0023】
なお、図3に示す例は燃焼用ガスとして燃焼用空気と難燃性燃料とが予め混合された予混合気を用いた場合である。例えば燃焼用空気のみが熱交換器15により予熱され、難燃性燃料と混合された後に燃焼に使用される場合には、予熱された燃焼用空気は混合時にその温度が低下してしまう。そのため、このような場合には予混合気を用いた場合よりも燃焼の切り替え温度を高く設定する必要がある。つまり、燃焼の切り替えの基準とする温度が燃焼用空気の温度であるか燃焼用空気と難燃性燃料との予混合気の温度であるかに応じて異なる値が設定される。
燃焼用空気の温度に応じて燃焼を切り替える場合には、図3の結果からエンタルピー計算により、予熱された燃焼用空気の温度が275℃以上となった時に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと燃焼を切り替えることで、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することができる。
【0024】
また、図3に示すデータから、燃焼室負荷が高い場合には、燃焼を切り替える温度を200℃以下に設定しても、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することは可能である。つまり、予め定められた温度(T1)は、燃焼室負荷に応じて異なる値を設定することができ、図3に示すデータから、燃焼室負荷が大きくなるにつれて低い値を設定することができる。
例えば、予め定められた温度(T1)は、燃焼室負荷が180kW/m(LHV)以上600kW/m(LHV)以下の範囲にある場合には200℃、燃焼室負荷が600kW/m(LHV)以上900kW/m(LHV)以下の範囲にある場合には150℃、燃焼室負荷が900kW/m(LHV)以上1300kW/m(LHV)以下の範囲にある場合には130℃、燃焼室負荷が1300kW/m(LHV)以上1800kW/m(LHV)以下の範囲にある場合には110℃、と設定することができる。図3に示すように、各燃焼室負荷において上記温度で難燃性燃料を燃焼させても未燃の難燃性燃料の発生は1ppm未満に抑えることが可能である。
【0025】
(燃焼の切り替え制御)
図4は、第1の実施形態に係る燃焼の切り替え制御時に実施される処理の例について示すフローチャートである。第1の実施形態において、制御部90は、燃焼に使用するガスの温度と燃焼室負荷との関係に応じて非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への切り替えを実施するか否かを決定する。
まず、制御部90は、燃焼室負荷を取得する(ステップS101)。燃焼室負荷は設定値であり、設定された燃焼室負荷に応じて燃焼出力が決定する。次に制御部90は、予熱された燃焼用ガスの温度を取得する(ステップS102)。予熱された燃焼用ガスの温度は、予熱ガス温度測定器16の測定値である。また、予熱された燃焼用ガスの温度は、排ガス温度測定器17および炉内温度測定器51の測定値に基づいて算出されても良い。
【0026】
次に制御部90は、予熱された燃焼用ガスの温度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。閾値とは、図2に示す予め定められた温度(T1)である。予め定められた温度(T1)は、燃焼室負荷に関わらず一定の値が設定される場合と、図3に示すように燃焼室負荷によって異なる値が設定される場合がある。制御部90は、取得した予熱された燃焼用ガスの温度と、取得した燃焼室負荷における予め定められた温度(T1)とを比較する。
予熱された燃焼用ガスの温度が閾値以上である場合(ステップS103でYES)、制御部90は非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと燃焼を切り替え(ステップS104)、処理は終了する。燃焼室負荷によって異なる値が設定される場合、使用する燃焼室負荷が大きくなるにつれて、燃焼を切り替える温度は低くなる。
一方、予熱された燃焼用ガスの温度が閾値以下である場合(ステップS103でNO)、処理はステップS101に戻る。
【0027】
第1の実施形態においては、ラジアントチューブバーナ10の燃焼室負荷を、最大燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下、最小燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以上に制限し、燃焼用空気と難燃性燃料とが予め混合された予混合気を用いた燃焼を行う。非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えは予熱された予混合気の温度が予め定められた温度(T1)に達した場合に行われる。
上記燃焼方法により、第1の実施形態においては、未燃の難燃性燃料の排出を抑制するための滞留時間を確保し、燃焼保持に必要な熱量を確保した燃焼を行うことができ、未燃の難燃性燃料の排出を抑制することができる。
【0028】
<第2の実施形態>
(ラジアントチューブバーナ)
図5は、第2の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナ60の構成例を示す図である。下の図はラジアントチューブバーナ60の構成例を示す拡大図である。第2の実施形態は、主燃バーナ11への燃焼用ガスの供給経路が第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
第2の実施形態に係るラジアントチューブバーナ60は、第1の実施形態と同様に主燃バーナ11と、助燃バーナ12と、排ガス流路14と、熱交換器15と、予熱ガス温度測定器16と、排ガス温度測定器17と、制御部90とを備える。助燃バーナ12は、第1の実施形態と同様に都市ガス等の炭化水素燃料等(非難燃性燃料)と燃焼用空気との予混合気により燃焼させる。
ラジアントチューブバーナ60は、第1の実施形態と同様に、最大燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下、最小燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以上として設計される。
【0029】
ラジアントチューブバーナ60は、主燃バーナ11への燃焼用ガスの供給経路が第1の実施形態と異なる。ラジアントチューブバーナ60は、燃焼用ガスの供給経路として、燃焼用空気流路61と難燃性燃料流路62とを備える。各経路は、図5に示すように、第1の実施形態と同様に各種弁を備える。
【0030】
燃焼用空気流路61は、主燃バーナ11における燃焼に用いられる燃焼用空気を主燃バーナ11に供給する流路である。燃焼用空気流路61により主燃バーナ11に供給される燃焼用空気は、熱交換器15により予熱され、主燃バーナ11に供給される。
難燃性燃料流路62は、主燃バーナ11における燃焼に用いられる難燃性燃料を主燃バーナ11に供給する流路である。
第2の実施形態においては、主燃バーナ11において、熱交換器15により予熱された燃焼用空気と難燃性燃料流路62により供給される難燃性燃料がバーナ内で混合しながら燃焼する。
【0031】
(燃焼方法)
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に燃焼に使用する燃焼用空気と難燃性燃料の温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替えられる。しかしながら、第1の実施形態と第2の実施形態とでは燃焼用ガスの供給経路が異なり、温度測定の対象となるガスが異なるため、燃焼を切り替える基準となる温度が異なる。
【0032】
第2の実施形態においては、熱交換器15により予熱された燃焼用空気の温度が予熱ガス温度測定器16により測定される。しかしながら、燃焼に使用される燃焼用ガスは予熱された燃焼用空気と難燃性燃料との混合ガスであり、予熱された燃焼用空気は難燃性燃料と混合されることにより温度が低下する。そのため、第1の実施形態のように予混合気を用いた場合よりも燃焼の切り替え温度を高く設定する必要がある。第2の実施形態においては、図3の結果からエンタルピー計算により、予熱された燃焼用空気の温度が275℃以上となった時に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと燃焼を切り替えることで、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することができる。
なお、第1の実施形態と同様に燃焼室負荷に応じて燃焼を切り替える温度を異なる値に設定しても良い。
【0033】
次に、第2の実施形態における燃焼の切り替えの流れについて説明する。
第2の実施形態において、まず、点火用パイロットバーナにより助燃バーナ12が点火される。助燃バーナ12による燃焼が開始されるとパイロットバーナは消火され、主燃バーナ11による燃焼が開始される。燃焼用ガスの温度が予め定められた温度に到達すると、助燃バーナ12は消火され、主燃バーナ11のみを用いた燃焼へと切り替えられる。
第2の実施形態における燃焼の切り替えの流れは第1の実施形態と同様であり、上記した通り切り替える基準となる温度が異なる。
【0034】
第2の実施形態において、ラジアントチューブバーナ60は、難燃性燃料を予熱する熱交換機能を有しても良い。
図6は、第2の実施形態において、難燃性燃料を予熱する熱交換機能をさらに有する場合のラジアントチューブバーナ60の構成例を示す図である。図6に示す例において、ラジアントチューブバーナ60は、難燃性燃料流路62により供給される難燃性燃料と排ガス流路14により排出される燃焼ガスとの間で熱交換を行う熱交換器63を備える。
【0035】
難燃性燃料流路62により供給される難燃性燃料が熱交換器63によって予熱されることにより、燃焼用空気と難燃性燃料との混合による燃焼用空気の温度低下を緩和することができる。これにより、燃焼用空気の温度が上記した予め定められた温度に達していない場合でも非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替えることが可能となる。
【0036】
図7は、予熱された難燃性燃料の温度と、燃焼を切り替える燃焼用空気の温度の関係を示す図である。図7に示すように、難燃性燃料の温度が50℃である場合、燃焼を切り替える燃焼用空気の温度は265℃となり、難燃性燃料の温度が150℃である場合、燃焼を切り替える燃焼用空気の温度は225℃となる。
図7に示す温度で燃焼を切り替えることにより、難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替え後に、未燃の難燃性燃料が排出されることを抑制することができる。
【0037】
第2の実施形態においては、ラジアントチューブバーナ60の燃焼室負荷を、最大燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下、最小燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以上に制限し、予熱された燃焼用空気と難燃性燃料がバーナ内で混合しながら燃焼を行う。第2の実施形態においても非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えが行われるが、上述の通り切り替える基準となる温度が第1の実施形態と異なる。
このように、燃焼の切り替えの基準となる温度の測定対象の燃焼用ガスに応じて、未燃の難燃性燃料の排出を抑制し安定した燃焼を行うための温度で燃焼を切り替えることができる。また、第2の実施形態においても未燃の難燃性燃料の排出を抑制するための滞留時間を確保し、燃焼保持に必要な熱量を確保した燃焼を行うことができ、未燃の難燃性燃料の排出を抑制することができる。
【0038】
<第3の実施形態>
(ラジアントチューブバーナ)
図8は、第3の実施形態に係る燃焼方法に使用するラジアントチューブバーナ70の構成例を示す図である。下の図はラジアントチューブバーナ70の構成例を示す拡大図である。第3の実施形態は、主燃バーナ11への燃焼用ガスの供給経路および供給される燃焼用ガスの種類が第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
第3の実施形態に係るラジアントチューブバーナ70は、第1の実施形態と同様に主燃バーナ11と、助燃バーナ12(不図示)と、排ガス流路14と、熱交換器15と、予熱ガス温度測定器16と、排ガス温度測定器17と、制御部90とを備える。助燃バーナ12は、第1の実施形態と同様に都市ガス等の炭化水素燃料等(非難燃性燃料)と燃焼用空気との予混合気により燃焼させる。
ラジアントチューブバーナ70は、第1の実施形態と同様に、最大燃焼室負荷を1800kW/m(LHV)以下、最小燃焼室負荷を180kW/m(LHV)以上として設計される。
【0039】
ラジアントチューブバーナ70は、主燃バーナ11への燃焼用ガスの供給経路および供給される燃焼用ガスの種類が第1の実施形態と異なる。ラジアントチューブバーナ70は、燃焼用ガスの供給経路として、燃焼用空気流路71と燃料流路72とを備える。各経路は、図8に示すように、第1の実施形態と同様に各種弁を備える。
【0040】
燃焼用空気流路71は、主燃バーナ11における燃焼に用いられる燃焼用空気を主燃バーナ11に供給する流路である。燃焼用空気流路71により主燃バーナ11に供給される燃焼用空気は、熱交換器15により予熱され、主燃バーナ11に供給される。
燃料流路72は、主燃バーナ11における燃焼に用いられる難燃性燃料および非難燃性燃料を主燃バーナ11に供給する流路である。
【0041】
第3の実施形態において、主燃バーナ11は、難燃性燃料を用いた燃焼および非難燃性燃料を用いた燃焼のいずれも行うことができる。主燃バーナ11における燃焼は、熱交換器15により予熱された燃焼用空気と燃料流路72により供給される難燃性燃料もしくは非難燃性燃料との混合ガスを用いて行われる。
【0042】
(燃焼方法)
第3の実施形態に係る燃焼の切り替えについて、図9を用いて説明する。
図9は、第3の実施形態に係る非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼への燃焼の切り替えの例を示す図である。
図9において、まず、点aにおいて点火用パイロットバーナにより助燃バーナ12が点火され、助燃バーナ12による燃焼が開始される。次に、点bにおいて主燃バーナ11に非難燃性燃料が供給され、主燃バーナ11における非難燃性燃料を用いた燃焼が開始され、助燃バーナ12は消火される。次に、点cにおいて燃焼用空気の温度が予め定められた温度(T2)に到達すると、主燃バーナ11に供給される燃料が難燃性燃料に切り替えられ、主燃バーナ11における難燃性燃料を用いた燃焼が開始される。
【0043】
点dにおいて主燃バーナ11が消火された後再びラジアントチューブバーナ70を稼働させる場合、図2に示す場合と同様に再稼働後に燃焼用ガスの温度が予め定められた温度(T2)に到達する時間(e-g)は1回目の稼働時(a-c)よりも短くなる。
ラジアントチューブバーナ70の立ち上げ時には、十分な排熱回収が行えないため、燃焼性の低い難燃性燃料を用いた燃焼をサポートする予熱の効果を得ることができない。そこで、第3の実施形態においては、安定な主燃バーナ11の難燃性燃料専焼状態が得られるまでは、助燃バーナ12の運転を継続する。
【0044】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に燃焼に使用するガスの温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替えられる。第3の実施形態においては、熱交換器15により予熱された燃焼用空気の温度が予熱ガス温度測定器16により測定されるため、第2の実施形態と同様に第1の実施形態のように予混合気を用いた場合よりも燃焼の切り替え温度を高く設定する必要がある。第3の実施形態において燃焼を切り替える基準となる温度として予め定められた温度(T2)は、第2の実施形態と同様に予熱された燃焼用空気の温度が275℃として設定される。
【0045】
第3の実施形態においては、主燃バーナ11に供給される燃料を非難燃性燃料から難燃性燃料に切り替えることで燃焼の切り替えが行われ、予熱された燃焼用空気の温度が275℃以上となった場合に燃焼を切り替えることにより燃焼保持に必要な熱量を確保した燃焼が実現される。これにより、未燃の難燃性燃料の排出を抑制することができる。
【0046】
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様に難燃性燃料もしくは非難燃性燃料と燃焼用空気とを予め混合した予混合気が熱交換器15により予熱され、主燃バーナ11に供給される構成としても良い。この場合、第2の実施形態のように予熱された燃焼用空気と難燃性燃料との混合による温度の低下は発生せず、予め定められた温度(T2)は第1の実施形態と同様に200℃として設定される。また、第1の実施形態と同様に燃焼室負荷に応じて燃焼を切り替える温度を異なる値に設定しても良い。
【符号の説明】
【0047】
10,60,70…ラジアントチューブバーナ、11…主燃バーナ、12…助燃バーナ、13…燃焼用ガス流路、14…排ガス流路、21…流量制御弁、22…流量調整弁、23…遮断弁、24…圧力調整器、15,63…熱交換器、16…予熱ガス温度測定器、17…排ガス温度測定器、50…燃焼炉、51…炉内温度測定器、61,71…燃焼用空気流路、62…難燃性燃料流路、72…燃料流路
【要約】
【課題】ラジアントチューブバーナにおいて、未燃の燃料の排出を抑制して難燃性燃料を燃焼させる。
【解決手段】燃焼後に排出されるガスにより燃焼に使用するガスを予熱する熱交換機能を有するラジアントチューブバーナにて、燃焼室負荷を予め定められた範囲に制限し、熱交換機能により予熱された燃焼に使用するガスの温度が予め定められた温度に達した場合に非難燃性燃料を用いた燃焼から難燃性燃料を用いた燃焼へと切り替える燃焼方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9