特許 7523089 生産管理装置、生産システム、および生産管理方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-07-18

(45)【発行日】2024-07-26

(54)【発明の名称】生産管理装置、生産システム、および生産管理方法

(51)【国際特許分類】

   G05B 19/418 20060101AFI20240719BHJP

   G06Q 50/04 20120101ALI20240719BHJP

【ＦＩ】

G05B19/418 Z

G06Q50/04

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2020100423

(22)【出願日】2020-06-09

(65)【公開番号】P2021196664

(43)【公開日】2021-12-27

【審査請求日】2023-05-10

(73)【特許権者】

【識別番号】314012076

【氏名又は名称】パナソニックＩＰマネジメント株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100109210

【弁理士】

【氏名又は名称】新居 広守

(74)【代理人】

【識別番号】100137235

【弁理士】

【氏名又は名称】寺谷 英作

(74)【代理人】

【識別番号】100131417

【弁理士】

【氏名又は名称】道坂 伸一

(72)【発明者】

【氏名】鳥谷 健一郎

【審査官】黒石 孝志

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１２－２４７９６４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－０５９０３２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－７７２５０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－１７４３３４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－３１３６０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００２－９９６９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平８－３１４５２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平６－２５９４３７（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０５Ｂ １９／４１８

Ｇ０６Ｑ ５０／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

製品を生産するための複数の装置を有する生産システムにおいて生産の進行状況を予め定めた生産計画を取得する計画取得部と、
前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である第一時刻までの生産実績を取得する実績取得部と、
前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測を導出するシミュレーション部と、
前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、前記第一時刻から第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを判断する乖離度判断部と、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に判断情報を報知する判断報知部と、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に、前記生産実績に基づき、複数の改善情報の少なくとも１つ選定する改善情報選定部と、を備え、
前記判断報知部は、
前記改善情報選定部が選定した改善情報を判断情報として報知し、
前記改善情報選定部は、
前記シミュレーション部に、前記生産実績と、複数の改善情報の少なくとも１つと、に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートさせて第二生産予測を導出させ、前記乖離度判断部に前記生産計画に対する前記第二生産予測の乖離状態を示す第二乖離度を算出させ、前記第一時刻から第二時間後の前記第二乖離度が前記第一閾値未満の第二閾値以下であると判断した場合に、前記第二生産予測の導出に用いた改善情報を選定する
生産管理装置。

【請求項2】

前記改善情報選定部は、
第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上第三閾値未満の場合には前記改善情報に含まれる第一改善情報群を前記シミュレーション部に出力し、第一時間後の前記第一乖離度が第三閾値以上の場合に、前記改善情報に含まれる前記第一改善情報群とは異なる第二改善情報群を前記シミュレーション部に出力する
請求項１に記載の生産管理装置。

【請求項3】

製品を生産するための複数の装置を備える生産システムであって、
前記生産システムの生産計画を作成する生産計画作成装置と、
前記生産システムの生産状況を管理する生産管理装置と、を備え、
前記生産管理装置は、
生産の進行状況を予め定めた生産計画を取得する計画取得部と、
前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である第一時刻までの生産実績を取得する実績取得部と、
前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測を導出するシミュレーション部と、
前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、前記第一時刻から第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを判断する乖離度判断部と、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に判断情報を報知する判断報知部と、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に、前記生産実績に基づき、複数の改善情報の少なくとも１つ選定する改善情報選定部と、を備え、
前記判断報知部は、
前記改善情報選定部が選定した改善情報を判断情報として報知し、
前記改善情報選定部は、
前記シミュレーション部に、前記生産実績と、複数の改善情報の少なくとも１つと、に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートさせて第二生産予測を導出させ、前記乖離度判断部に前記生産計画に対する前記第二生産予測の乖離状態を示す第二乖離度を算出させ、前記第一時刻から第二時間後の前記第二乖離度が前記第一閾値未満の第二閾値以下であると判断した場合に、前記第二生産予測の導出に用いた改善情報を選定する
生産システム。

【請求項4】

製品を生産するための複数の装置を有する生産システムにおいて生産の進行状況を予め定めた生産計画を計画取得部が取得し、
前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である第一時刻までの生産実績を実績取得部が取得し、
前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測をシミュレーション部が導出し、
前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、前記第一時刻から第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを乖離度判断部が判断し、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に、改善情報選定部が、前記シミュレーション部に、前記生産実績と、複数の改善情報の少なくとも１つと、に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートさせて第二生産予測を導出させ、前記乖離度判断部に前記生産計画に対する前記第二生産予測の乖離状態を示す第二乖離度を算出させ、前記第一時刻から第二時間後の前記第二乖離度が前記第一閾値未満の第二閾値以下であると判断した場合に、前記第二生産予測の導出に用いた改善情報を選定し、
前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に、判断報知部が前記改善情報選定部が選定した改善情報を判断情報として報知する
生産管理方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、製品を生産するための複数の装置を有する生産システムにおける生産を管理する生産管理装置、および生産管理装置を備えた生産システム、および生産管理方法に関する。

【背景技術】

【0002】

生産設備の状況に基づき生産計画を作成する方法が存在している（例えば、特許文献１参照）。従来は、作成された生産計画と生産の実績とを比較し、計画の達成率が予め定めた値に到達していない場合は、生産状況の改善を図ったり、生産計画の変更などが行われる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１９－１７９３３７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところが、作成された生産計画に対し実績の遅延状況が確認できた段階において、改善策の立案は人に依存しているのが現状である。改善策が実現されるまでの間は、実生産が続行しているため、生産計画と実績との乖離が大きくなる。

【0005】

本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、生産計画に対する遅延を予測し報知する生産管理装置、生産システム、および生産管理方法の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記目的を達成するために、本発明の１つである生産管理装置は、製品を生産するための複数の装置を有する生産システムにおいて生産の進行状況を予め定めた生産計画を取得する計画取得部と、前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である生産実績を取得する実績取得部と、前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測を導出するシミュレーション部と、前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを判断する乖離度判断部と、前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に判断情報を報知する判断報知部と、を備える。

【0007】

また、上記目的を達成するために、本発明の他の１つである生産システムは、製品を生産するための複数の装置を備える生産システムであって、前記生産システムの生産計画を作成する生産計画作成装置と、前記生産システムの生産状況を管理する生産管理装置と、を備え、前記生産管理装置は、生産の進行状況を予め定めた生産計画を取得する計画取得部と、前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である生産実績を取得する実績取得部と、前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測を導出するシミュレーション部と、前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを判断する乖離度判断部と、前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に判断情報を報知する判断報知部と、を備える。

【0008】

また、上記目的を達成するために、本発明の他の１つである生産管理方法は、製品を生産するための複数の装置を有する生産システムにおいて生産の進行状況を予め定めた生産計画を計画取得部が取得し、前記生産システムにおける実際の生産の進行状況である生産実績を実績取得部が取得し、前記生産実績に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測をシミュレーション部が導出し、前記生産計画に対する前記第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出し、第一時間後の前記第一乖離度が第一閾値以上であるか否かを乖離度判断部が判断し、前記第一乖離度が第一閾値以上であると前記乖離度判断部が判断した場合に判断報知部が判断情報を報知する。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、生産の遅延を事前に検出して報知することができる。これにより、実際に大きな遅延が発生する前に改善策を生成することができ、大きな遅延の未然防止を図ることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】図１は、生産システムを概略的に示す図である。

【図2】図２は、生産計画管理装置の構成を示すブロック図である。

【図3】図３は、生産計画と生産実績とを示すグラフである。

【図4】図４は、時刻ｔ１の段階でシミュレーション部がシミュレートした結果を示すグラフである。

【図5】図５は、生産管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下に、本発明に係る生産管理装置、生産システム、および生産管理方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。

【0012】

図１は、生産システムを概略的に示す図である。生産システム１００の規模や生産システム１００が備える装置の種類などは特に限定されるものではない。生産システム１００は、一種類、または複数種類の製品を生産するための設備群であって、生産計画作成装置１１０と、生産管理装置１２０と、を備えている。本実施の形態の場合、生産システム１００は、状況収集装置１３０と、複数の第一生産ラインと、第一生産ラインにて生産された中間製品を処理する複数の第二生産ラインを備えている。

【0013】

生産ラインは、複数の装置がライン状に配置され、上流から受け取った製造部材などの加工や検査を複数の装置で順次実行し、製品（完成品）や新たな中間品を製造する。

【0014】

生産ラインが備える装置は、特に限定されるものではなく、例えば、加工装置、実装装置、組立装置等の生産装置を例示することができる。また、装置には、検査装置、搬送装置、保管装置などが含まれる。また、装置には、生産装置などの消耗品を交換する装置、生産装置などをメンテナンスする装置などが含まれても良い。また、装置には、それぞれ保管庫から製造部材、消耗部材、メンテナンス部材を搬送する搬送装置、生産ライン間で中間品を搬送する搬送装置なども含まれる。

【0015】

生産計画作成装置１１０は、生産システム１００における生産の進行状況を予め定めた生産計画を作成するための装置である。本実施の形態の場合、生産計画作成装置１１０は、プログラムをコンピュータが実行することにより実現される装置であり、様々な情報を取得し、取得した情報に基づき生産計画を作成する。

【0016】

生産計画作成装置１１０が取得する情報の１つとして、生産計画大日程を例示することができる。生産計画大日程とは、生産システム１００で生産する製品の種類、製品の数量、前記数量の製品を完成させる期日などが含まれる情報である。また、生産計画作成装置１１０が取得する情報の他の一つとして、生産システム状況を例示することができる。生産システム状況とは、状況収集装置１３０が収集する情報であって、各装置の稼働状況、各生産ラインの稼働状況、各装置のメンテナンス情報、作業者のシフトなどが含まれる情報である。また、生産計画作成装置１１０は、各装置の各種条件、生産ラインの工程、各装置の配置に関するフロア構成などを取得しても構わない。

【0017】

生産計画作成装置１１０は、取得した情報に基づき生産計画を作成する。生産計画を作成する場合において、取得した情報に基づき生産状況をシミュレートし、生産計画の最適化を図っても構わない。

【0018】

図２は、生産計画管理装置の構成を示すブロック図である。生産管理装置１２０は、生産システム１００の生産状況を管理する装置であり、プログラムをコンピュータに実行させることにより実現させる処理部として、計画取得部１２１と、実績取得部１２２と、シミュレーション部１２３と、乖離度判断部１２５と、判断報知部１２６と、を備えている。本実施の形態の場合、生産管理装置１２０はさらに、改善情報選定部１２７を備えている。

【0019】

計画取得部１２１は、生産システム１００における製品の生産の進行状況を予め定めた生産計画を取得する処理部である。生産計画の取得先は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、生産計画作成装置１１０から生産計画を取得する。図３に示すグラフの実線が生産計画であり、生産計画は、時間の経過に伴って増加する生産数（累積数）で示される。なお、計画取得部１２１は、生産計画を取得するばかりでなく、取得した生産計画から必要な情報を抽出するなどの処理をしても構わない。

【0020】

実績取得部１２２は、生産システム１００における実際の生産の進行状況である生産実績を取得する。生産実績とは、生産計画の目標値に対応した値である。本実施の形態の場合、生産実績は、図３のグラフ中の破線で示す生産システム１００において時間の経過に伴って増加する生産数（累積数）である。生産実績の取得先は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、状況収集装置１３０から生産実績を取得している。実績取得部１２２は、所定の時間毎に生産実績を取得し、時刻と生産数とを紐付けたデータを進行状況として記憶装置（不図示）に保存する。なお、図３のグラフ中に示す生産実績（破線）は、生産管理装置１２０からの情報に基づき生産工程などが改善された結果の生産実績が含まれている。

【0021】

シミュレーション部１２３は、実績取得部１２２から得られる生産実績と、生産実績を実現した生産状況に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第一生産予測を導出する。シミュレーション部１２３が行うシミュレーションの種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、人工知能（ＡＩ）、特に教師あり学習により育成された機械学習モデルに基づきシミュレーションを行っている。

【0022】

機械学習モデルの育成に用いられる情報は、特に限定されるものではない。例えば、生産システム１００の過去の生産状況、生産実績により機械学習モデルを育成しても良く、複数の生産システムの過去の生産状況、生産実績を、ネットワークなどを介して収集し、総合的に機械学習モデルを育成しても構わない。また、複数の生産システムの情報を収集して育成する場合、生産システムの装置構成などは完全に一致していなくても構わない。

【0023】

本実施の形態の場合、シミュレーション部１２３は、生産実績と、複数の改善情報の少なくとも１つにより変更された生産状況に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートさせて第二生産予測も導出することができるものとなっている。

【0024】

図４は、時刻ｔ１の段階でシミュレーション部がシミュレートした結果を示すグラフである。同グラフに示すように、シミュレーション部１２３は、時刻ｔ１までの生産実績、および生産状況に基づきシミュレーションを行って、第一生産予測１４１を算出する。シミュレーション部１２３がシミュレーションを実行するタイミングは、所定の間隔でも良く、また、生産計画と実績との乖離度である実乖離度ｋｒが予め定めた実乖離閾値を超えた時点でも構わない。

【0025】

乖離度判断部１２５は、計画取得部１２１が取得した生産計画に対する第一生産予測の乖離状態を示す第一乖離度を算出する。本実施の形態の場合、指定された将来の時刻における第一乖離度として生産計画と第一生産予測との差分を乖離度算出部１２４において算出する。そして乖離度判断部１２５は、時刻ｔ１から第一時間Δｔ１後の第一乖離度ｋ１が第一閾値以上であるか否かを判断する。なお、乖離度判断部１２５は、第一乖離度ｋ１が第一閾値以上になる時刻ｔ２を算出しても構わない。

【0026】

判断報知部１２６は、第一乖離度が第一閾値以上であると乖離度判断部１２５が判断した場合に、報知装置１４０を用いて判断情報を報知する。判断情報は、第一時間Δｔ１後の第一乖離度ｋ１が第一閾値以上であることを作業者などに認知させる情報であれば、特に限定されるものではない。判断報知部１２６の報知方法としては、スピーカなどの報知装置１４０による音、ＬＥＤ発光装置などの報知装置１４０による光を発することで判断情報を報知してもよい。また、判断報知部１２６は、表示装置などの報知装置１４０による映像や文字の表示、電子メールなどの通信による対象端末への通信により判断情報を報知してもよい。また、判断報知部１２６は、これら報知方法のうち少なくとも二つの組み合わせにより報知する方法を採用することも可能である。なお、報知には、情報を他の装置や他の処理部に出力することも含まれる。

【0027】

本実施の形態の場合、判断報知部１２６は、改善情報選定部１２７が選定した後述の改善情報を判断情報として報知する。

【0028】

改善情報選定部１２７は、シミュレーション部１２３が時刻ｔ１の時点で導出した第一生産予測に基づき第一乖離度が第一閾値以上であると乖離度判断部１２５が判断した場合、シミュレーション部１２３がシミュレーションのために用いた生産実績、生産状況に基づき、複数の改善情報の少なくとも１つを選定する。具体的に改善情報選定部１２７は、シミュレーション部１２３に、時刻ｔ１における生産実績と、時刻ｔ１における生産状況とは別の生産状況の差分である改善情報と、に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートさせて第二生産予測１４２を導出させる。図４には第二生産予測１４２を二点鎖線で示している。改善情報選定部１２７は、乖離度算出部１２４に生産計画（実線）に対する第二生産予測１４２の乖離状態を示す第二乖離度ｋ２を算出させ、第二時間後の第二乖離度ｋ２が第一閾値未満の第二閾値以下であると判断した場合に、第二生産予測１４２の導出に用いた改善情報を選定する。本実施の形態の場合、第二時間は、第一時間Δｔ１と一致させている。

【0029】

具体的に改善情報とは、時刻ｔ１の時点における生産状況（以下「第一生産状況」と記載する場合がある。）に含まれる生産システム１００の各エリアでの作業者の配置人数に対し、作業負担が分散するように配置人数を調整する数を例示できる。

【0030】

また、第一生産状況に含まれる生産システム１００の各エリアでの装置の数のうち作業が間に合わないエリアに追加する装置の数を改善情報としてもよい。

【0031】

また、装置の稼働時間からメンテナンスが必要な装置を割り出し、当該装置をメンテナンスする工程を追加する情報を改善情報としてもよい。

【0032】

なお、改善情報選定部１２７は、第一時間後の第一乖離度ｋｒが第一閾値以上、第三閾値未満の場合には改善情報に含まれる第一改善情報群をシミュレーション部１２３に出力して第二生産予測１４２を導出させ、第一乖離度ｋｒが第三閾値以上の場合に、第一改善情報群とは異なる第二改善情報群をシミュレーション部１２３に出力して、異なる第二生産予測１４２を導出させても構わない。これによれば、将来的に発生する生産計画との乖離がかなり大きい場合、一時的な生産の遅れではなく、継続的な遅れと判断し、生産状況の抜本的な変更を考慮した改善策などでシミュレーションをすることが考えられる。

【0033】

次に生産管理装置１２０の処理の流れを説明する。図５は、生産管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、計画取得部１２１は、製品を生産するための複数の装置を有する生産システム１００の生産計画を生産計画作成装置１１０から取得する（Ｓ１０１）。生産システム１００は、生産計画に含まれる生産状況（第一生産状況）に基づき製品の生産を実行する（Ｓ１０２）。

【0034】

生産開始から所定の時間経過後の時刻ｔｎ（ｎは自然数）において、実績取得部１２２は、生産システム１００における実際の生産の進行状況である生産実績を取得する（Ｓ１０３）。シミュレーション部１２３は、実績取得部１２２が取得した時刻ｔ１の生産実績、および第一生産状況に基づき今後の生産の進行状況をシミュレートして第ｎ生産予測を導出する（Ｓ１０４）。乖離度判断部１２５は、取得した生産計画に対する第ｎ生産予測の乖離状態を示す第ｎ乖離度を算出し、第ｎ時間後の第ｎ乖離度が第一閾値以上であるか否かを判断する（Ｓ１０６）。第ｎ乖離度が第一閾値未満の場合（Ｓ１０６：Ｎｏ）、現状維持となる。一方、第ｎ乖離度が第一閾値以上の場合（Ｓ１０６：Ｙｅｓ）、さらに乖離度判断部１２５は、第ｎ乖離度が第三閾値以上であるか否かを判断する（Ｓ１０７）。改善情報選定部１２７は、第ｎ乖離度が第三閾値未満の場合（Ｓ１０７：Ｎｏ）、第一改善情報群を選定してシミュレーション部１２３にシミュレーションを実行させる（Ｓ１０８）。第ｎ乖離度が第三閾値以上の場合（Ｓ１０７：Ｙｅｓ）、第二改善情報群を選定してシミュレーション部１２３にシミュレーションを実行させる（Ｓ１０９）。

【0035】

改善情報選定部１２７は、シミュレーション部１２３が導出した第二生産予測に基づく第二乖離度が第二閾値以下となった第二生産予測のうち、例えば最も乖離度が小さい第二生産予測を導出させた改善情報を選定する（Ｓ１１０）。判断報知部１２６は、選定された改善情報を判断情報として報知する（Ｓ１１０）。生産計画が終了していない場合（Ｓ１１２：Ｎｏ）、生産状況を改善して（Ｓ１１３）、生産が続行される。生産計画が終了している場合（Ｓ１１２：Ｙｅｓ）、処理を終了する。

【0036】

上記生産管理装置、生産システム、および生産管理方法によれば、生産の遅延を事前に検出して報知することができる。これにより、実際に大きな遅延が発生する前に改善策を生成することができ、大きな遅延の未然防止を図ることが可能となる。

【0037】

なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。

【0038】

例えば、乖離度判断部１２５が将来的な時刻における生産計画、および第一生産予測の生産数の差分を乖離度として採用する場合を説明したが、例えば生産計画の傾き（微分値）と、第一生産予測の傾き（微分値）との差分を乖離度としても構わない。

【産業上の利用可能性】

【0039】

複数の装置を有する生産システムに利用可能である。

【符号の説明】

【0040】

１００ 生産システム
１１０ 生産計画作成装置
１２０ 生産管理装置
１２１ 計画取得部
１２２ 実績取得部
１２３ シミュレーション部
１２４ 乖離度算出部
１２５ 乖離度判断部
１２６ 判断報知部
１２７ 改善情報選定部
１３０ 状況収集装置
１４０ 報知装置
１４１ 第一生産予測
１４２ 第二生産予測

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】