(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】発電装置、及び入力装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/18 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H02N2/18
(21)【出願番号】P 2021552298
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036796
(87)【国際公開番号】W WO2021075252
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019188996
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 雅明
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0013737(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103036478(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107565948(CN,A)
【文献】中国実用新案第207588735(CN,U)
【文献】特開2015-097453(JP,A)
【文献】特開2018-203204(JP,A)
【文献】特開2014-030326(JP,A)
【文献】特開平11-136931(JP,A)
【文献】中国実用新案第202524324(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107317516(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動することで発電する第1の発電素子と、
前記第1の発電素子の下方に位置し、振動することで発電する第2の発電素子と、
下方へ向かって移動するときに前記第1の発電素子を下方へ吸引し、上方へ向かって移動するときに前記第2の発電素子を上方へ吸引する可動子と、
磁性材料で形成される支持体と、
を備え、
前記可動子が下方へ向かって移動することにより、前記第1の発電素子は振動し、
前記可動子が上方へ向かって移動することにより、前記第2の発電素子は振動
し、
前記支持体は、本体部と、前記本体部から延伸する共通磁路部と、を有し、
前記第1の発電素子の一方の端部、前記共通磁路部の一方の端部、および前記第2の発電素子の一方の端部のそれぞれは、前記本体部と繋がっており、
前記第1の発電素子、前記共通磁路部、および前記第2の発電素子は、上方から下方に向かって、前記第1の発電素子、前記共通磁路部、前記第2の発電素子の順に間隔を空けて並ぶように設けられており、
前記可動子は、第1位置と前記第1位置よりも下方に位置する第2位置との間を移動し、
前記可動子が前記第1位置に位置するとき、前記第1の発電素子、前記共通磁路部、前記本体部、前記可動子と、によって第1閉磁路が構成され、
前記可動子が前記第2位置に位置するとき、前記第2の発電素子、前記共通磁路部、前記本体部、前記可動子と、によって第2閉磁路が構成される、
発電装置。
【請求項2】
押圧されると、前記可動子を下方に向かって移動させる押し釦と、
上方へ向かう力を前記可動子に与える復帰部と、
を更に備えた、
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記可動子が前記第1位置に位置するとき、前記可動子は、前記第1の発電素子と接触し、かつ、前記第2の発電素子から離れており、
前記可動子が前記第2位置に位置するとき、前記可動子は、前記第1の発電素子から離れており、かつ、前記第2
の発電素子と接触する、
請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
第1ストッパと前記第1ストッパの下方に配置される第2ストッパとのうちの少なくとも一方を更に備え、
前記第1ストッパは、前記可動子が前記第1位置から下方へ向かって移動すると、前記可動子が前記第2の発電素子に接触する前に前記第1の発電素子を前記可動子から離間させ、
前記第2ストッパは、前記可動子が前記第2位置から上方へ向かって移動すると、前記可動子が前記第1の発電素子に接触する前に前記第2の発電素子を前記可動子から離間させる、
請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記支持体、前記第1の発電素子、前記第2の発電素子と、で構成される磁路上に設けられたコイルを更に備えた、
請求項1~4のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記コイルは、前記支持体の前記共通磁路部に巻回されている、
請求項5に記載の発電装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発電装置と、
前記発電装置で発生した電力により動作する制御回路と、
前記発電装置で前記電力が発生すると、前記電力が前記第1の発電素子または前記第2の発電素子のいずれで発生したかを判定する判定回路と、
を備えた、
入力装置。
【請求項8】
前記第1の発電素子から供給される電流の向きを一方向に整える第1の整流回路と、
前記第2の発電素子から供給される電流の向きを一方向に整える第2の整流回路と、
を更に備え、
前記判定回路は、前記第1の整流回路に接続される第1入力端子と、前記第2の整流回路に接続される第2入力端子と、
を有する、
請求項7に記載の入力装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の入力装置であって、
誤動作防止部を更に備え、
前記誤動作防止部は、特定の状況で前記入力装置が所定の動作を実行することを規制し、
前記特定の状況は、前記可動子が外部からの押圧力を受けていない状態で、かつ、前記発電装置で電力が発生している状態である、
入力装置。
【請求項10】
請求項5又は6に記載の発電装置と、
前記発電装置で発生した電力により動作する制御回路と、
前記発電装置で前記電力が発生すると、前記電力が前記第1の発電素子または前記第2の発電素子のいずれで発生したかを判定する判定回路と、
を備え、
前記判定回路は、前記コイルで発生する電流の向きに基づいて、前記電力が前記第1の発電素子または前記第2の発電素子のいずれで発生したか判定する、
入力装置。
【請求項11】
前記制御回路は、前記コイルに接続される誤動作防止回路を含み、
前記誤動作防止回路は、特定の状況で前記制御回路が所定の動作を実行することを規制し、
前記特定の状況は、前記可動子が外部からの押圧力を受けていない状態で、かつ、前記発電装置で電力が発生している状態であり、
前記誤動作防止回路は、前記コイルから電流が供給されると、前記制御回路が前記所定の動作を実行することを許容する、
請求項10に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発電装置、及び入力装置に関し、より詳細には、振動を利用して発電する発電装置、及びそれを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発電装置を開示する。この発電装置は、起動部と、発電部と、を有する。起動部は、吸着体を有する。吸着体は、始点から終点に向かって移動する。発電部は、片持ち梁状である。発電部は、振動することによって発電する。
【0003】
吸着体が始点から終点に向かって移動する時、吸着体が発電部を吸着する。吸着体が発電部を吸着しながら終点に向かって移動すると、発電部は、撓む。吸着体が終点に向かって更に移動すると、途中で、吸着体は発電部から離脱する。この吸着体の離脱によって、発電部は振動し始める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る発電装置は、振動することで発電する第1の発電素子と、前記第1の発電素子の下方に位置し、振動することで発電する第2の発電素子と、下方へ向かって移動するときに前記第1の発電素子を下方へ吸引し、上方へ向かって移動するときに前記第2の発電素子を上方へ吸引する可動子と、磁性材料で形成される支持体と、を備える。前記可動子が下方へ向かって移動することにより、前記第1の発電素子は振動し、前記可動子が上方へ向かって移動することにより、前記第2の発電素子は振動する。前記支持体は、本体部と、前記本体部から延伸する共通磁路部と、を有する。前記第1の発電素子の一方の端部、前記共通磁路部の一方の端部、および前記第2の発電素子の一方の端部のそれぞれは、前記本体部と繋がっている。前記第1の発電素子、前記共通磁路部、および前記第2の発電素子は、上方から下方に向かって、前記第1の発電素子、前記共通磁路部、前記第2の発電素子の順に間隔を空けて並ぶように設けられている。前記可動子は、第1位置と前記第1位置よりも下方に位置する第2位置との間を移動する。前記可動子が前記第1位置に位置するとき、前記第1の発電素子、前記共通磁路部、前記本体部、前記可動子と、によって第1閉磁路が構成される。前記可動子が前記第2位置に位置するとき、前記第2の発電素子、前記共通磁路部、前記本体部、前記可動子と、によって第2閉磁路が構成される。
【0006】
本開示の一態様に係る入力装置は、上述した発電装置と、前記発電装置で発生した電力により動作する制御回路と、前記発電装置で前記電力が発生すると、前記電力が前記第1の発電素子または前記第2の発電素子のいずれで発生したかを判定する判定回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1の発電装置の断面図であり、可動子が第1の位置にある状態を示す。
【
図2】
図2は、同上の発電装置の断面図であり、可動子が第2の位置にある状態を示す。
【
図3】
図3は、同上の発電装置の動作を説明する図である。
【
図4】
図4は、同上の発電装置の動作を説明する図である。
【
図5】
図5は、同上の発電装置の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、同上の発電装置の動作を説明する図である。
【
図7】
図7は、同上の発電装置を備える入力装置のブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態2の発電装置の断面図であり、可動子が第1の位置にある状態を示す図である。
【
図9】
図9は、同上の発電装置内において、可動子が第1の位置にある状態での磁路を説明する図である。
【
図10】
図10は、同上の発電装置の断面図であり、可動子が第2の位置にある状態を示す図である。
【
図11】
図11は、同上の発電装置内において、可動子が第2の位置にある状態での磁路を説明する図である。
【
図13】
図13は、同上の発電装置内において、可動子が第1の位置にある状態での磁路を説明する図である。
【
図14】
図14は、同上の発電装置内において、可動子が第2の位置にある状態での磁路を説明する図である。
【
図15】
図15は、実施形態4の発電装置の断面図であり、可動子が第1の位置にある状態を示す図である。
【
図16】
図16は、同上の発電装置の断面図であり、可動子が第2の位置にある状態を示す図である。
【
図17】
図17は、同上の発電装置を備える入力装置の第一例のブロック図である。
【
図18】
図18は、同上の発電装置を備える入力装置の第二例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態に係る発電装置及び入力装置について、添付の図面を参照して説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0009】
(1)実施形態1
(1.1)発電装置
(1.1.1)概要
図1に示すように、本実施形態に係る発電装置10は、第1の圧電型振動発電素子1(以下、単に「第1の素子1」と呼ぶこともある)と、第2の圧電型振動発電素子2(以下、単に「第2の素子2」と呼ぶこともある)と、可動子3と、を備える。
【0010】
第1の素子1は、振動により第1電力を発生させ、第2の素子2は、振動により第2電力を発生させる。つまり、第1の素子1と第2の素子2とは、振動により個別に電力を発生させる。第1の素子1及び第2の素子2の各々は、固定端及び自由端を有するカンチレバー(片持ち梁)状である。
【0011】
可動子3は、磁性材料から形成される。可動子3は、ここでは永久磁石31を備えている。可動子3は、第1の素子1及び第2の素子2の各々を磁力により吸引する。
【0012】
可動子3は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。
【0013】
ここでは、可動子3の第1の位置は、第1の素子1に接触する可動子3の位置である(
図1参照)。第1の位置において、可動子3は、第1の素子1の第1端(自由端)に接触している。また、可動子3の第2の位置は、第2の素子2に接触する可動子3の位置である(
図2参照)。第2の位置において、可動子3は、第2の素子2の第1端(自由端)に接触している。
【0014】
可動子3が第1の位置にある状態(
図1参照)から、可動子3が第2の位置へ向かって移動すると、第1の素子1は、その第1端(自由端)が磁力により可動子3に引かれることで湾曲する(
図3参照)。そして、可動子3が第2の位置へ向かって更に移動して、可動子3が第1の素子1から離れると、第1の素子1が振動を開始する(
図4参照)。要するに、可動子3は、第1の位置から第2の位置へ移動する場合に、第1の素子1及び第2の素子2のうちの一方(ここでは、第1の素子1)の振動を開始させる。第1の素子1は、振動することで電力を発生する。
【0015】
また、可動子3が第2の位置にある状態(
図2参照)から、可動子3が第1の位置へ向かって移動すると、第2の素子2は、その第1端(自由端)が磁力により可動子3に引かれることで湾曲する(
図5参照)。そして、可動子3が第1の位置へ向かって更に移動して、可動子3が第2の素子2から離れると、第2の素子2が振動を開始する(
図6参照)。要するに、可動子3は、第2の位置から第1の位置へ移動する場合に、第1の素子1及び第2の素子2のうちの一方(ここでは、第2の素子2)の振動を開始させる。第2の素子2は、振動することで電力を発生する。
【0016】
本実施形態の発電装置10では、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合と第2の位置から第1の位置へ移動する場合との両方で、電力を発生させることができる。これにより、本実施形態の発電装置10では、発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0017】
(1.1.2)構成
本実施形態の発電装置10について、
図1~
図6を参照して、より詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、発電装置10は、第1の素子1、第2の素子2、及び可動子3に加えて、支持体4と、押し釦5と、復帰部6と、ストッパ7と、筐体9と、を備えている。
【0019】
既に述べたように、可動子3は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。可動子3は、ここでは、一方向に沿って第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。以下では、可動子3が移動可能な方向(
図1の上下方向)を「上下方向」ともいう。また、第1の位置から第2の位置へ可動子3が向かう向き(
図1の下方)を「下」ともいい、第2の位置から第1の位置へ可動子3が向かう向き(
図1の上方)を「上」ともいう。なお、本開示では、「上」、「下」、「右」、「左」、「上方」、「下方」等の方向を示す用語を用いて説明するが、これらは相対的な位置関係を示しているだけであり、それにより本開示が限定されるものではない。
【0020】
第1の素子1及び第2の素子2の各々は長尺状であって、上下方向と直交する方向に沿って延びている。以下では、第1の素子1及び第2の素子2の各々の延長方向(
図1の左右方向)を、「左右方向」ともいう。また、第1の素子1及び第2の素子2の各々は、その延長方向の一端で、支持体4に支持されている。以下では、第1の素子1及び第2の素子2において支持体4に支持されている一端(
図1の左端)が位置する側を「左」ともいい、その反対側を「右」ともいう。
【0021】
また、以下では、上下方向及び左右方向の両方に直交する方向(
図1の紙面に垂直な方向)に沿った方向を「前後方向」ともいい、
図1の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」ともいう。
【0022】
なお、本開示における「上下前後左右」等の方向は、説明のための便宜上のものであり、発電装置10を使用する際の方向等を限定するものではない。
【0023】
図1に示すように、筐体9は、左壁91、右壁92、上壁93、下壁94、前壁及び後壁を有する矩形の箱状である。筐体9は、非磁性材料、例えば樹脂から形成されている。筐体9は、内部空間90を有している。内部空間90は、ここでは、上壁93に形成された孔931以外が閉じた閉空間である。ただし、これに限らず、筐体9の内部空間90は、筐体9を構成する適宜の壁に形成された孔等により筐体9の外部空間とつながっていてもよい。
【0024】
筐体9の内部空間90に、第1の素子1、第2の素子2、可動子3、押し釦5の一部(下部)、復帰部6、及びストッパ7が収容されている。支持体4は、筐体9の左壁91に埋め込まれて、筐体9に保持されている。
【0025】
図1に示すように、第1の素子1は、支持部(第1支持部)11と、振動部(第1振動部)12と、を備えている。
【0026】
支持部11は、第1の素子1において、支持体4に支持される部分である。支持部11は、第1の素子1における左側の部分である。支持部11は、軟磁性体から形成されている。支持部11は、ここでは、磁性を有するSUS(ステンレス鋼)製である。
【0027】
振動部12は、左右方向に長い長尺状である。振動部12は、支持部11の右端から、右方に延びている。振動部12は、振動(揺動)可能に支持部11に支持されている。振動部12は、長手方向の一端(左端)が、支持部11に固定された固定端であり、長手方向の他端(右端)が、自由端である。すなわち、第1の素子1は、カンチレバー構造を有している。
【0028】
振動部12は、梁(第1梁)13と、発電部(第1発電部)14と、錘(第1錘)15と、を備えている。
【0029】
梁13は、軟磁性体から形成されている。梁13は、ここでは、磁性を有するSUS(ステンレス鋼)製である。梁13は、支持部11と一体に形成されている。
【0030】
梁13は、左右方向に長い矩形の板状である。梁13の厚さ軸は、上下方向に沿っている。梁13は、厚さ方向の一方側(上側)に第1面131を有し、他方側(下側)に第2面132を有している。
【0031】
梁13は、可撓性を有している。梁13は、支持部11に支持されている部分(固定端)を支点として、上下方向に振動可能である。
【0032】
発電部(第1発電部)14は、梁13の振動に応じて電力を発生する。発電部14は、第1圧電変換部141と、第2圧電変換部142と、を含む。第1圧電変換部141は、梁13の第1面(上面)131に設けられている。第2圧電変換部142は、梁13の第2面(下面)132に設けられている。
【0033】
第1圧電変換部141は、梁13の第1面131上に積層された第1電極(下部電極)1411と、第1電極1411上に積層された圧電体1412と、圧電体1412上に積層された第2電極(上部電極)1413と、を備えている。すなわち、第1圧電変換部141は、梁13の第1面131上に配置された、第1電極1411と圧電体1412と第2電極1413との積層構造体を含む。
【0034】
第1電極1411の材料及び第2電極1413の材料は、例えばPtである。ただし、これに限らず、第1電極1411の材料及び第2電極1413の材料は、例えば、Au、Al、又はIr等でもよい。第1電極1411の材料と第2電極1413の材料とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
圧電体1412は、ここでは圧電セラミックスである。圧電体1412の材料は、例えばPZT(Pb(Zr,Ti)O3)である。ただし、これに限らず、圧電体1412の材料は、例えば、PZT-PMN(Pb(Mn,Nb)O3)、又は不純物を添加したPZT等でもよい。また、圧電体1412の材料は、AlN、ZnO、KNN(K0.5Na0.5NbO3)、KN(KNbO3)、NN(NaNbO3)、又はKNNに不純物を添加した材料等でもよい。不純物としては、例えば、Li、Nb、Ta、Sb、又はCu等が挙げられる。
【0036】
第2圧電変換部142は、梁13の第2面132上に積層された第1電極(上部電極)1421と、第1電極1421上に積層された圧電体1422と、圧電体1422上に積層された第2電極(下部電極)1423と、を備えている。すなわち、第2圧電変換部142は、梁13の第2面132上に配置された、第1電極1421と圧電体1422と第2電極1423との積層構造体を含む。
【0037】
第1電極1421、第2電極1423の材料としては、例えば、第1電極1411の材料及び第2電極1413の材料として例示した材料が用いられ得る。また、圧電体1422の材料としては、圧電体1412の材料として例示した材料が用いられ得る。
【0038】
第1の素子1では、振動部12が振動すると、第1圧電変換部141の圧電体1412が応力を受ける。これにより、第1の素子1では、第1圧電変換部141における第1電極1411と第2電極1413とに電荷の偏りが発生し、第1圧電変換部141において交流電圧が発生する。また、第1の素子1では、振動部12が振動すると、第2圧電変換部142の圧電体1422が応力を受ける。これにより、第1の素子1では、第2圧電変換部142における第1電極1421と第2電極1423とに電荷の偏りが発生し、第2圧電変換部142において交流電圧が発生する。
【0039】
要するに、第1の素子1は、圧電材料の圧電効果を利用して発電する振動型の発電素子である。
【0040】
錘15は、梁13の第1面131上に設けられている。錘15は、振動部12の共振周波数を調整するために設けられている。錘15の材料は特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。錘15は省略可能である。
【0041】
第1圧電変換部141で発生する交流電圧、及び第2圧電変換部142で発生する交流電圧は、圧電体1412,1422の振動に応じた正弦波状の交流電圧となる。振動部12の共振周波数は、梁13、発電部14、及び錘15それぞれの構造パラメータと材料とにより決まる。
【0042】
図1に示すように、第2の素子2は、支持部(第2支持部)21と、振動部(第2振動部)22と、を備えている。ここでは、第2の素子2は、第1の素子1と対称な形状を有している。
【0043】
支持部21は、第2の素子2において、支持体4に支持される部分である。支持部21は、第2の素子2における左側の部分である。支持部21は、支持体4を挟んで支持部11の反対側に位置している。支持部21は、軟磁性体から形成されている。支持部21は、ここでは、磁性を有するSUS(ステンレス鋼)製である。
【0044】
振動部22は、左右方向に長い長尺状である。振動部22は、支持部21の右端から、右方に延びている。振動部22は、振動(揺動)可能に支持部21に支持されている。振動部22は、長手方向の一端(左端)が、支持部21に固定された固定端であり、長手方向の他端(右端)が、自由端である。すなわち、第2の素子2は、カンチレバー構造を有している。
【0045】
振動部22は、上下方向において、振動部12と対向するように配置されている。ここでは、振動部12の長さ軸と振動部22の長さ軸とは、略平行である。
【0046】
振動部22は、梁(第2梁)23と、発電部(第2発電部)24と、錘(第2錘)25と、を備えている。
【0047】
梁23は、軟磁性体から形成されている。梁23は、ここでは、磁性を有するSUS(ステンレス鋼)製である。梁23は、支持部21と一体に形成されている。
【0048】
梁23は、左右方向に長い矩形の板状である。梁23の厚さ軸は、上下方向に沿っている。梁23は、厚さ方向の一方側(上側)に第1面(上面)231を有し、他方側(下側)に第2面(下面)232を有している。
【0049】
梁23は、可撓性を有している。梁23は、支持部21に支持されている部分(固定端)を支点として、上下方向に振動可能である。すなわち、本実施形態の発電装置10では、第1の素子1の振動方向と第2の素子2の振動方向とが、同じ方向に沿っている。
【0050】
発電部(第2発電部)24は、梁23の振動に応じて電力を発生する。発電部24は、第3圧電変換部241と、第4圧電変換部242と、を含む。第3圧電変換部241は、梁23の第1面(上面)231に設けられている。第4圧電変換部242は、梁23の第2面(下面)232に設けられている。
【0051】
第3圧電変換部241は、梁23の第1面231上に積層された第1電極(下部電極)2411と、第1電極2411上に積層された圧電体2412と、圧電体2412上に積層された第2電極(上部電極)2413と、を備えている。すなわち、第3圧電変換部241は、梁23の第1面231上に配置された、第1電極2411と圧電体2412と第2電極2413との積層構造体を含む。
【0052】
第4圧電変換部242は、梁23の第2面232上に積層された第1電極(上部電極)2421と、第1電極2421上に積層された圧電体2422と、圧電体2422上に積層された第2電極(下部電極)2423と、を備えている。すなわち、第4圧電変換部242は、梁23の第2面232上に配置された、第1電極2421と圧電体2422と第2電極2423との積層構造体を含む。
【0053】
第1電極2411、2421の材料、及び第2電極2413、2423の材料としては、例えば、第1電極1411の材料及び第2電極1413の材料として例示した材料が用いられ得る。また、圧電体2412、2422の材料としては、圧電体1412の材料として例示した材料が用いられ得る。
【0054】
第2の素子2では、振動部22が振動すると、第3圧電変換部241の圧電体2412が応力を受ける。これにより、第2の素子2では、第3圧電変換部241における第1電極2411と第2電極2413とに電荷の偏りが発生し、第3圧電変換部241において交流電圧が発生する。また、第2の素子2では、振動部22が振動すると、第4圧電変換部242の圧電体2422が応力を受ける。これにより、第2の素子2では、第4圧電変換部242における第1電極2421と第2電極2423とに電荷の偏りが発生し、第4圧電変換部242において交流電圧が発生する。
【0055】
要するに、第2の素子2は、第1の素子1と同様、圧電材料の圧電効果を利用して発電する振動型の発電素子である。
【0056】
錘25は、梁23の第2面232上に設けられている。錘25は、振動部22の共振周波数を調整するために設けられている。錘25の材料は特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。錘25は省略可能である。
【0057】
第3圧電変換部241で発生する交流電圧、及び第4圧電変換部242で発生する交流電圧は、圧電体2412,2422の振動に応じた正弦波状の交流電圧となる。振動部22の共振周波数は、梁23、発電部24、及び錘25それぞれの構造パラメータと材料とにより決まる。
【0058】
図1に示すように、支持体4は、上下方向に長い直方体状である。支持体4は、軟磁性体、例えば軟鉄から形成されている。支持体4の長さ軸の一端(上端)は、第1の素子1の支持部11につながっている。支持体4の長さ軸の他端(下端)は、第2の素子2の支持部21につながっている。つまり、支持体4は、第1の素子1の一端(左端)と第2の素子2の一端(左端)とをつないでいる。第1の素子1と、第2の素子2と、支持体4とで、前面視C字状を呈している。ここでは、第1の素子1の支持部11と、第2の素子2の支持部21と、支持体4とは、一体に形成されている。ただし、第1の素子1の支持部11と支持体4と、第2の素子2の支持部21と支持体4は、それぞれ別体でもよい。第1の素子1の支持部11と支持体4との間、第2の素子2の支持部21と支持体4との間は、例えば、ねじ止め、溶接等の適宜の接合手段で接合されてもよい。
【0059】
支持体4は、筐体9の左壁91に保持されている。第1の素子1及び第2の素子2は、筐体9の左壁91から突出している。
【0060】
図1に示すように、可動子3は、永久磁石31と、第1磁性体32と、第2磁性体33と、を有している。
【0061】
永久磁石31は、上下方向の両側の面に、磁極面(N極面及びS極面)を有している。ここでは、永久磁石31は、上側の面(第1面)がN極面、下側の面(第2面)がS極面である。
【0062】
第1磁性体32は、軟磁性体から形成されている。第1磁性体32は、永久磁石31の第1面上に設けられている。第1磁性体32は、永久磁石31の第1面の上側から、左右方向(左向き)に突出している。
【0063】
第2磁性体33は、軟磁性体から形成されている。第2磁性体33は、永久磁石31の第2面上に設けられている。第2磁性体33は、永久磁石31の第2面の下側から、左右方向(左向き)に突出している。
【0064】
可動子3は、永久磁石31、第1磁性体32、及び第2磁性体33により、前面視逆C字状(第1の素子1、第2の素子2、及び支持体4とは逆向きに開放されたC字状)を呈している。
【0065】
可動子3は、筐体9の内部空間90内に配置されている。可動子3は、上下方向において、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。可動子3は、内部空間90内において、筐体9の右壁92に沿って移動する。
【0066】
図1に示すように、第1の位置は、可動子3が第1の素子1の振動部12に接触する可動子3の位置である。第1の位置において、可動子3は、磁力により第1の素子1(より詳細には、梁13)を吸引して、第1の素子1に接触する。第1の位置において、可動子3と第1の素子1とは、磁力により結合されている。また、第1の位置において、可動子3は、第2の素子2から離れている。
【0067】
なお、可動子3の第1の位置は、例えば
図1に示すように、第1磁性体32が梁13の第2面132に直接接触する可動子3の位置であるが、これに限られない。例えば、振動部12が、梁13の第2面132上に磁性体を備えている場合、可動子3の第1の位置は、第1磁性体32がこの磁性体に直接接触する可動子3の位置であってもよい。また、例えば、可動子3が第1磁性体32を備えていない場合、可動子3の第1の位置は、永久磁石31の上面が梁13の第2面132に直接接触する可動子3の位置であってもよい。
【0068】
図2に示すように、第2の位置は、可動子3が第2の素子2の振動部22に接触する可動子3の位置である。第2の位置において、可動子3は、磁力により第2の素子2(より詳細には、梁23)を吸引して、第2の素子2に接触する。第2の位置において、可動子3と第2の素子2とは、磁力により結合されている。また、第2の位置において、可動子3は、第1の素子1から離れている。
【0069】
なお、可動子3の第2の位置は、例えば
図2に示すように、第2磁性体33が梁23の第1面231に直接接触する可動子3の位置であるが、これに限られない。例えば、振動部22が、梁23の第1面231に磁性体を備えている場合、可動子3の第2の位置は、第2磁性体33がこの磁性体に直接接触する可動子3の位置であってもよい。また、例えば、可動子3が第2磁性体33を備えていない場合、可動子3の第2の位置は、永久磁石31の下面が梁23の第1面231に直接接触する可動子3の位置であってもよい。
【0070】
なお、例えば、筐体9の前壁及び後壁の内面には、可動子3の移動方向を上下方向に規制するガイドリブが形成されていてもよい。
【0071】
図1に示すように、押し釦5は、上下方向において可動子3の延長線上に配置されている。押し釦5は、筐体9の上壁93を上下に貫通する孔931内に、配置されている。押し釦5は、操作者からの押し操作を受け付ける。押し釦5は、押し操作に応じて、可動子3を第1の位置から第2の位置へ向かう向きへ移動させる。
【0072】
図1に示すように、押し釦5は、操作体51と、鍔部52と、を有している。
【0073】
操作体51は、上下に長い円柱状である。操作体51は、孔931を貫通するように配置されており、操作体51の上端は筐体9の上壁93から上方に突出し、操作体51の下端は筐体9の内部空間90内で可動子3の上面と対向している。押し釦5が操作されていない場合、操作体51の下端は可動子3の上面と接触しているが、これに限らず、離れていてもよい。
【0074】
押し釦5は、操作体51の上端が操作者によって押されることで、下方へ移動する。このとき、操作体51の下端が可動子3の上面を押すことで、可動子3が下方へ移動する。すなわち、押し釦5が操作者によって押されることで、可動子3は、第1の位置から第2の位置へ向かって移動する。
【0075】
鍔部52は、操作体51の長さ方向の中央において、操作体51の径方向の外方に突出する円板状に形成されている。鍔部52は、内部空間90内に位置するように、操作体51の外面に設けられている。鍔部52は、その上面が筐体9の上壁93の下面に接触することで、押し釦5のそれ以上の上方への移動を阻止する。
【0076】
復帰部6は、第2の位置から第1の位置へ向かう向きの力を可動子3に与える。復帰部6は、ここではコイルバネである。コイルバネは、その軸の向きが上下方向に沿うように、筐体9の下壁94と可動子3の下面との間に配置されている。
【0077】
復帰部6を構成するコイルバネは、押し釦5が操作者からの押し操作を受けると、可動子3を介してその押し込み力を受けて圧縮される(
図2参照)。そして、操作者が押し釦5から手を離して押し操作を終了すると、その弾性力により可動子3及び押し釦5を上方へ押して、可動子3を第1の位置へ向けて移動させる。
【0078】
ストッパ7は、第1ストッパ71と第2ストッパ72とを含む。
【0079】
第1ストッパ71は、前後方向に沿って延びる棒状である。第1ストッパ71は、筐体9の内部空間90内において、第1の素子1の振動部12の自由端の近くに配置されている。第1ストッパ71は、第1の素子1から見て可動子3と同じ側、すなわち、第1の素子1の下側に配置されている。第1ストッパ71は、第1の素子1と第2の素子2との間に配置されている。第1ストッパ71は、第1の素子1の梁13が下方へ湾曲した場合に梁13の第2面132に接触し、梁13のそれ以上の湾曲を阻止する(
図3参照)。
【0080】
図1に示すように、可動子3が第1の位置にある場合、第1ストッパ71と第1の素子1との間の距離L1は、可動子3と第2の素子2との間の距離L12よりも小さい。そのため、可動子3が第1の位置から第2の位置へと移動する場合、可動子3が第2の素子2と接触する前に、可動子3の移動に応じて湾曲した第1の素子1が第1ストッパ71に接触する(
図3参照)。すなわち、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合、可動子3は、第1の素子1から離れてから第2の素子2に接触する。
【0081】
要するに、発電装置10は、第1ストッパ71を備えている。第1ストッパ71は、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合に、可動子3が第2の素子2に接触する前に第1の素子1を可動子3から離間させる。ここでは、第1ストッパ71は、第1の素子1に接触することで、第1の素子1を可動子3から離間させる。
【0082】
なお、可動子3が第1の位置から第2の位置へ向かって移動すると、可動子3と第2の素子2との間の磁力が増加し、第2の素子2が上方に湾曲する場合がある。第1ストッパ71は、第2の素子2が磁力により湾曲したとしても、可動子3が第2の素子2に接触する前に第1の素子1を可動子3から離間させる位置に配置されていることが、好ましい。
【0083】
第2ストッパ72は、前後方向に沿って延びる棒状である。第2ストッパ72は、筐体9の内部空間90内において、第2の素子2の振動部22の自由端の近くに配置されている。第2ストッパ72は、第2の素子2から見て可動子3と同じ側、すなわち、第2の素子2の上側に配置されている。第2ストッパ72は、第1の素子1と第2の素子2との間に配置されている。第2ストッパ72は、第2の素子2の梁23が上方へ湾曲した場合に梁23の第1面231に接触し、梁23のそれ以上の湾曲を阻止する。
【0084】
図2に示すように、可動子3が第2の位置にある場合、第2ストッパ72と第2の素子2との間の距離L2は、可動子3と第1の素子1との間の距離L11よりも小さい。そのため、可動子3が第2の位置から第1の位置へと移動する場合、可動子3が第1の素子1と接触する前に、可動子3の移動に応じて湾曲した第2の素子2が第2ストッパ72に接触する(
図5参照)。すなわち、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合、可動子3は、第2の素子2から離れてから第1の素子1に接触する。
【0085】
要するに、発電装置10は、第2ストッパ72を備えている。第2ストッパ72は、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合に、可動子3が第1の素子1に接触する前に第2の素子2を可動子3から離間させる。ここでは、第2ストッパ72は、第2の素子2に接触することで、第2の素子2を可動子3から離間させる。
【0086】
なお、可動子3が第2の位置から第1の位置へ向かって移動すると、可動子3と第1の素子1との間の磁力が増加し、第1の素子1が下方に湾曲する場合がある。第2ストッパ72は、第1の素子1が磁力により湾曲したとしても、可動子3が第1の素子1に接触する前に第2の素子2を可動子3から離間させる位置に配置されていることが、好ましい。
【0087】
(1.1.3)動作
次に、発電装置10の動作について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0088】
押し釦5が操作者からの押し操作を受けていない場合、可動子3は、復帰部6から上向きの力を受けて、第1の位置に位置している(
図1参照)。このとき、第1の素子1の振動部12の自由端は、可動子3との間の磁力(吸引力)によって、可動子3の上面(第1磁性体32の上面)に吸着されている。また、第2の素子2は、可動子3との間の磁力(吸引力)を受けるものの、梁23の応力等とのバランスにより、可動子3の下面から離れた位置で静止している。
【0089】
押し釦5が操作者に押し操作されると、押し釦5の操作体51が下方へ移動する。可動子3は、操作体51に押されることで、復帰部6を構成するコイルバネを圧縮しながら下方へ移動する。このとき、可動子3に吸着されている第1の素子1の振動部12の自由端は、可動子3とともに下方へ移動し、梁13が湾曲する。
【0090】
梁13の下面132が第1ストッパ71に接触する位置まで可動子3が下方へ移動する(
図3参照)と、第1ストッパ71によって、振動部12の自由端のそれ以上の下方への移動が阻止される。押し釦5を押す力(下向きの力)が、可動子3と第1の素子1との間の磁気吸着を引き剥がすのに必要な力を超えると、可動子3は第1の素子1から離れて、更に下方へ移動する。第1の素子1の振動部12は、可動子3から離れると、梁13の湾曲の度合いに応じた振幅で振動を開始する(
図4参照)。振動部12が振動することで、発電部14が発電する。
【0091】
押し釦5が更に押されることで可動子3が更に下方へ移動し、可動子3が第2の位置に到ると、第2の素子2の振動部22と可動子3との間の磁力によって、振動部22の自由端が可動子3の下面(第2磁性体33の下面)に吸着される(
図2参照)。
【0092】
操作者が押し釦5から手を離して押し操作を終了すると、可動子3は、復帰部6を構成するコイルバネのばね力を受けて、上方へ移動する。このとき、可動子3に吸着されている第2の素子2の振動部22の自由端は、可動子3とともに上方へ移動し、梁23が湾曲する。
【0093】
梁23の上面231が第2ストッパ72に接触する位置まで可動子3が上方へ移動する(
図5参照)と、第2ストッパ72によって、振動部22の自由端のそれ以上の上方への移動が阻止される。可動子3は、復帰部6からのばね力によって第2の素子2から離れて、更に上方へ移動する。第2の素子2の振動部22は、可動子3から離れると、梁23の湾曲の度合いに応じた振幅で振動を開始する(
図6参照)。振動部22が振動することで、発電部24が発電する。
【0094】
第2の素子2から離れた後、可動子3及び押し釦5は、復帰部6からのばね力により更に上方へ移動する。そして、押し釦5の鍔部52が筐体9の上壁93の下面に接触する位置(可動子3の第1の位置)で停止する。このとき、可動子3の上面は、第1の素子1に吸着する。
【0095】
このように、発電装置10によれば、操作者が押し釦5を押し操作した場合に、第1の素子1が電力を発生する。また、発電装置10では、操作者が押し釦5への押し操作を終了した場合(押し釦5を離した場合)に、第2の素子2が電力を発生する。すなわち、本実施形態の発電装置10では、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合と第2の位置から第1の位置へ移動する場合との両方で、電力を発生させることができる。これにより、本実施形態の発電装置10では、発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0096】
(1.2)入力装置
次に、発電装置10を備えた入力装置20について、
図7を参照して説明する。
【0097】
図7に示すように、入力装置20は、制御回路204を備えている。制御回路204は、発電装置10で発生した電力により動作して、所定の機能を実行する。制御回路204は、例えば無線通信回路を備えている。制御回路204は、押し釦5が押されたときに発電装置10で発生した電力を用いて動作して、押し釦5が押されたことを示す通信信号を外部へ送信する機能を実行する。もちろん、制御回路204の機能はこれに限られない。制御回路204は、例えば、入力装置20に設けられている光源を点灯させる機能を実行したり、入力装置20に設けられている発音装置から音を発生させる機能を実行したり、入力装置20に設けられているセンサを動作させる機能を実行したりしてもよい。
【0098】
入力装置20は、発電装置10及び制御回路204に加えて、第1の整流回路201と、第2の整流回路202と、電圧変換回路203と、判定回路205と、蓄電素子206と、第1整流部2071と、第2整流部2072と、を備えている。
【0099】
第1の整流回路201は、第1の素子1の第1発電部14から供給される電流の向きを一方向に整える。第1の整流回路201は、4つのダイオードを直並列に接続した、いわゆるダイオードブリッジである。
【0100】
第1の整流回路201の2つの入力端子のうちの一方の入力端子は、第1圧電変換部141の第2電極(上部電極)1413及び第2圧電変換部142の第1電極(上部電極)1421に接続されている。第1の整流回路201の2つの入力端子のうちの他方の入力端子は、第1圧電変換部141の第1電極(下部電極)1411及び第2圧電変換部142の第2電極(下部電極)1423に接続されている。
【0101】
第1の整流回路201は、発電部14で生成された正弦波状の電流を、脈流電流へ変換する。
【0102】
なお、第1の整流回路201の2つの入力端子のうちの同一の入力端子に接続されている電極同士が、同極性となるように、第1圧電変換部141の圧電体1412の分極方向及び第2圧電変換部142の圧電体1422の分極方向が設定されている。
【0103】
第1の整流回路201の2つの出力端子の間に、蓄電素子(コンデンサ)206が接続されている。第1の整流回路201の2つの出力端子のうちの一方の出力端子(高電位側の出力端子)と蓄電素子206との間には、第1整流部2071としてのダイオードが介在している。また、第1の整流回路201の2つの出力端子のうちの一方の出力端子(高電位側の出力端子)は、判定回路205の第1入力端子2051に接続されている。
【0104】
第2の整流回路202は、第2の素子2の第2発電部24から供給される電流の向きを一方向に整える。第2の整流回路202は、4つのダイオードを直並列に接続した、いわゆるダイオードブリッジである。
【0105】
第2の整流回路202の2つの入力端子のうちの一方の入力端子は、第3圧電変換部241の第2電極(上部電極)2413及び第4圧電変換部242の第1電極(上部電極)2421に接続されている。第2の整流回路202の2つの入力端子のうちの他方の入力端子は、第3圧電変換部241の第1電極(下部電極)2411及び第4圧電変換部242の第2電極(下部電極)2423に接続されている。
【0106】
第2の整流回路202は、発電部24で生成された正弦波状の電流を、脈流電流へ変換する。
【0107】
なお、第2の整流回路202の2つの入力端子のうちの同一の入力端子に接続されている電極同士が、同極性となるように、第3圧電変換部241の圧電体2412の分極方向及び第4圧電変換部242の圧電体2422の分極方向が設定されている。
【0108】
第2の整流回路202の2つの出力端子の間には、蓄電素子206が接続されている。第2の整流回路202の2つの出力端子のうちの一方の出力端子(高電位側の出力端子)と蓄電素子206との間には、第2整流部2072としてのダイオードが介在している。また、第2の整流回路202の2つの出力端子のうちの一方の出力端子(高電位側の出力端子)は、判定回路205の第2入力端子2052に接続されている。
【0109】
上述のように、第1整流部2071は、第1の整流回路201の一方の出力端子(高電位側の出力端子)と蓄電素子206との間に介在している。第2整流部2072は、第2の整流回路202の一方の出力端子(高電位側の出力端子)と蓄電素子206との間に介在している。第1整流部2071は、第2の整流回路202からの電流が第1の整流回路201に流れ込むのを阻止する。第2整流部2072は、第1の整流回路201からの電流が第2の整流回路202に流れ込むのを阻止する。
【0110】
蓄電素子206の両端は、電圧変換回路203に接続されており、電圧変換回路203は制御回路204に接続されている。
【0111】
電圧変換回路203は、蓄電素子206に蓄積された電荷から、制御回路204の動作電圧を生成する。電圧変換回路203は、例えばDC/DCコンバータである。ただし、これに限らず、電圧変換回路203は、例えば三端子レギュレータであってもよい。要するに、電圧変換回路203は、第1の素子1で生成された電力及び第2の素子2で生成された電力を用いて動作電圧を生成し、生成した動作電圧を制御回路204へ供給する。
【0112】
制御回路204は、電圧変換回路203から供給される動作電圧により動作して、所望の機能を実行する。制御回路204は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムを備えている。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、制御回路204の機能を実行する。プログラムは、ここでは制御回路204のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0113】
判定回路205は、発電装置10が電力を発生した場合に、電力の発生元が第1の素子1であるか第2の素子2であるかを判定する。判定回路205は、例えば、コンパレータを備えている。判定回路205は、例えば、第1入力端子2051と第2入力端子2052とを備えている。第1入力端子2051は、第1の整流回路201の出力端子(高電位型の出力端子)に接続される。第2入力端子2052は、第2の整流回路202の出力端子(高電位型の出力端子)に接続される。判定回路205は、例えば、第1入力端子2051の電圧と第2入力端子2052の電圧との大小を比較することで、上記の判定を行う。判定回路205は、第1入力端子2051の電圧の方が第2入力端子2052の電圧より高ければ、電力の発生元が第1の素子1であると判定する。判定回路205は、第2入力端子2052の電圧の方が第1入力端子2051の電圧より高ければ、電力の発生元が第2の素子2であると判定する。判定回路205は、判定結果を制御回路204へ通知する。
【0114】
既に説明したように、第1の素子1が電力を発生するのは、押し釦5が押された場合である。また、第2の素子2が電力を発生するのは、押し釦5が離された場合である。すなわち、電力の発生元が第1の素子1であるのか第2の素子2であるのかがわかることで、制御回路204(或いは判定回路205)は、押し釦5が押されたのか或いは押し釦5が離されたのかを判定することが可能となる。
【0115】
(2)実施形態2
実施形態2の発電装置10Aについて、
図8~
図11を参照して説明する。本実施形態の発電装置10Aにおいて、実施形態1の発電装置10と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0116】
発電装置10Aは、支持体4の代わりに、支持体4Aを備えている。支持体4Aは、実施形態1の発電装置10における支持体4に相当する本体部41に加えて、共通磁路部42を備えている。
【0117】
共通磁路部42は、本体部41における上下方向の中央から、右方へ突出している。共通磁路部42は、振動部12,22と略平行である。すなわち、第1の素子1と第2の素子2とは、磁性材料から形成される共通磁路部42を挟んで対向するように配置されている。
【0118】
共通磁路部42は、本体部41と一体に形成されている。共通磁路部42の本体部41からの突出長は、振動部12,22と略同じである。共通磁路部42は、振動部12,22とは異なり、通常使用時において湾曲(振動)し難い程度の剛性を有している。
【0119】
本実施形態の発電装置10Aでは、第1の素子1と第2の素子2とは、共通磁路部42を挟んで並んで配置されている。第1の素子1と、第2の素子2と、支持体4A(本体部41及び共通磁路部42)とで、前面視E字状を呈している。言い換えれば、本実施形態の発電装置10Aでは、第1の素子1と第2の素子2とが並ぶ方向と交差する方向から見て、第1の圧電型振動発電素子1、共通磁路部42、及び第2の素子2を含むE字状の磁路が形成されている。E字状の磁路は、第1の素子1と共通磁路部42とを含む第1磁路と、第2の素子2と共通磁路部42とを含む第2磁路と、を含む。
【0120】
そして、可動子3が第1の位置にある場合、
図8に示すように、可動子3の第1磁性体32が第1の素子1と接触し、かつ、可動子3の第2磁性体33が共通磁路部42と接触する。すなわち、可動子3が第1の位置にある場合、第1磁路と可動子3とを含む磁路で、閉磁路(以下、「第1閉磁路」ともいう)が形成される。
図9に示すように、第1閉磁路には、永久磁石31からの磁束が、反時計回りに通っている。なお、
図9の矢印は、磁束の向きを示している。また、
図9では、可動子3、錘15,25等の形状を模式的に示している。
【0121】
また、可動子3が第2の位置にある場合、
図10に示すように、可動子3の第1磁性体32が共通磁路部42と接触し、かつ、可動子3の第2磁性体33が第2の素子2と接触する。すなわち、可動子3が第2の位置にある場合、第2磁路と可動子3とを含む磁路で、閉磁路(以下、「第2閉磁路」ともいう)が形成される。
図11に示すように、第2閉磁路には、永久磁石31からの磁束が、反時計回りに通っている。なお、
図11の矢印は、磁束の向きを示している。また、
図11では、可動子3、錘15,25等の形状を模式的に示している。
【0122】
本実施形態の発電装置10Aでは、支持体4Aが共通磁路部42を備えていることで、永久磁石31の磁束が第1の素子1及び第2の素子2の発電に与える影響を低減することが可能となる。以下、この点について、
図8~
図11を参照して、実施形態1の発電装置10との比較を交えながら説明する。
【0123】
実施形態1の発電装置10では、可動子3が第1の位置(
図1参照)から第2の位置(
図2参照)まで移動すると、その途中で可動子3が第1の素子1から離れ、振動部12が振動して(
図4参照)発電部14が電力を発生する。このとき、振動部12の梁13は、永久磁石31からの磁力によって、可動子3に近付く向きの力を受ける。そのため、永久磁石31の磁力の影響で振動部12の振幅が小さくなり、発電部14での発電量が小さくなる可能性がある。
【0124】
これに対し、本実施形態の発電装置10Aでは、支持体4Aが、共通磁路部42を備えている。そのため、可動子3が第1の位置から第2の位置まで移動した状態では、永久磁石31のN極面(上面)から出た磁力線は、共通磁路部42、支持体4Aの本体部41の下半分、及び第2の素子2の梁23を通り、永久磁石31のS極面(下面)に戻る(
図11参照)。すなわち、可動子3が第1の位置から第2の位置まで移動した状態では、永久磁石31からの磁力線の大部分は、閉磁路(第2閉磁路)を通る。そのため、可動子3が第2の位置まで移動した状態では、第1の素子1は永久磁石31の磁力の影響を受けにくくなる。そのため、本実施形態の発電装置10Aでは、可動子3が第1の位置(
図8参照)から第2の位置(
図10参照)へと移動し、振動部12が振動して発電部14が電力を発生する際に、永久磁石31の磁力の影響で振動部12の振幅が小さくなりにくい。そのため、発電装置10Aでは、発電装置10に比べて、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合における発電部14での発電量の増加を図ることが可能となる。なお、実際には、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動している途中において、永久磁石31からの磁力線のうちで第2の素子2を含む経路を通る磁力線が、徐々に支配的になる。すなわち、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動中においても、永久磁石31から第1の素子1にかかる磁力の影響は、徐々に低減され得る。
【0125】
同様に、実施形態1の発電装置10では、可動子3が第2の位置(
図2参照)から第1の位置(
図1参照)へと移動し、振動部22が振動して発電部24が電力を発生する際に、永久磁石31の磁力の影響で振動部22の振幅が小さくなり、発電部24での発電量が小さくなる可能性がある。
【0126】
これに対し、本実施形態の発電装置10Aでは、可動子3が第2の位置から第1の位置まで移動した状態では、永久磁石31のN極面(上面)から出た磁力線は、第1の素子1、支持体4Aの本体部41の上半分、及び共通磁路部42を通り、永久磁石31のS極面(下面)に戻る(
図10参照)。すなわち、可動子3が第2の位置から第1の位置まで移動した状態では、永久磁石31からの磁力線の大部分は、閉磁路(第1閉磁路)を通る。そのため、可動子3が第1の位置まで移動した状態では、第2の素子2は永久磁石31の磁力の影響を受けにくくなる。そのため、本実施形態の発電装置10Aでは、可動子3が第2の位置(
図10参照)から第1の位置(
図8参照)へと移動し、振動部22が振動して発電部24が発電する際に、永久磁石31の磁力の影響で振動部22の振幅が小さくなりにくい。そのため、発電装置10Aでは、発電装置10に比べて、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合における発電部24での発電量の増加を図ることが可能となる。なお、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動している途中において、永久磁石31からの磁力線のうちで第1の素子1を含む経路を通る磁力線が、徐々に支配的になる。すなわち、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動中においても、永久磁石31から第2の素子2にかかる磁力の影響は、徐々に低減され得る。
【0127】
また、本実施形態の発電装置10Aでは、支持体4が共通磁路部42を備えていることで、操作者による押し操作をアシストすることが可能となる。すなわち、可動子3が第1の位置にある場合(
図8参照)、永久磁石31の磁束は、第1閉磁路を反時計回りに通る。可動子3が第1の位置から下方へ移動すると、第2磁性体33が下方へ移動することで、共通磁路部42と第2磁性体33との間にギャップが生じ、第1の素子1及び共通磁路部42を通る磁気回路(「第1磁気回路」という)の磁気抵抗が増加する。その一方、第1磁性体32が下方へ移動することで、第1磁性体32と共通磁路部42との間のギャップが減少し、また、第2磁性体33が下方へ移動することで、第2磁性体33と第2の素子2との間のギャップが減少する。そのため、第2の素子2及び共通磁路部42を通る磁気回路(「第2磁気回路」という)の磁気抵抗が減少する。そして、可動子3が更に下方へ移動して、第2磁気回路の磁気抵抗が第1磁気回路の磁気抵抗よりも小さくなると、永久磁石31からの磁束は、第2磁気回路を優先して通るようになる。これにより、可動子3の第1磁性体32と共通磁路部42との間に吸引力が生じ、可動子3の第2磁性体33と第2の素子2との間に吸引力が生じて、可動子3が下方へ吸引される。これにより、操作者による押し操作がアシストされることとなる。
【0128】
(3)実施形態3
実施形態3の発電装置10Bについて、
図12~
図14を参照して説明する。本実施形態の発電装置10Bにおいて、実施形態2の発電装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0129】
発電装置10Bでは、可動子3が、永久磁石31の代わりに、第1永久磁石311と第2永久磁石312とを備えている。
【0130】
可動子3では、第1永久磁石311が右側に位置し、第2永久磁石312が左側に位置している。すなわち、第2永久磁石312の方が、第1永久磁石311よりも、共通磁路部42に近接している。
【0131】
第1永久磁石311は、上面がN極面(第1磁極面)、下面がS極面(第2磁極面)である。第2永久磁石312は、左面の上半分がN極面(第1磁極面)、左面の下半分がS極面(第2磁極面)、右面の上半分がS極面(第2磁極面)、右面の下半分がN極面(第1磁極面)となるよう、片面2極に着磁されている。
【0132】
以下、本実施形態の発電装置10Bの特徴について、
図12~
図14を参照して、実施形態2の発電装置10Aとの比較を交えながら説明する。なお、
図13、
図14の矢印は、磁束の向きを示している。また、
図13、
図14では、可動子3、錘15,25等の形状を模式的に示している。
【0133】
実施形態2の発電装置10Aでは、永久磁石31は、上面がN極、下面がS極となるよう着磁されている。可動子3が第1の位置にある場合、
図9に示すように、共通磁路部42から可動子3に入る磁力線は、共通磁路部42の先端(右端)から第2磁性体33の上面を通って第2磁性体33に入り、第2磁性体33の上面から永久磁石31の下面(S極面)へと入る。そのため、共通磁路部42と第2磁性体33との境界で、磁力線の向きが(右向きから下向きへと)急激に変わることとなり、磁束の飽和が起こりやすくなる。磁束が飽和すると、可動子3と共通磁路部42との間の吸着力が低下する可能性がある。
【0134】
これに対し、本実施形態の発電装置10Bでは、可動子3が第1の位置にある場合、
図13に示すように、共通磁路部42から可動子3に入る磁力線は、その一部が共通磁路部42の先端(右端)から第2磁性体33に入り、残りは第2永久磁石312の左面から第2永久磁石312に入る。すなわち、第2永久磁石312によって、磁力線が通るバイパス経路が形成されている。そのため、本実施形態の発電装置10Bでは、実施形態2の発電装置10Aに比べて、磁束の飽和が起こりにくい。これにより、可動子3と共通磁路部42との間の吸着力の向上を図ることが可能となる。
【0135】
同様に、本実施形態の発電装置10Bでは、可動子3が第2の位置にある場合、
図14に示すように、可動子3から共通磁路部42に入る磁力線は、その一部が第1磁性体32の先端(左端)から共通磁路部42に入り、残りは、第2永久磁石312を通って共通磁路部42に入る。すなわち、第2永久磁石312によって、磁力線が通るバイパス経路が形成されている。そのため、本実施形態の発電装置10Bでは、実施形態2の発電装置10Aに比べて、磁束の飽和が起こりにくい。これにより、可動子3と共通磁路部42との間の吸着力の向上を図ることが可能となる。
【0136】
(4)実施形態4
(4.1)発電装置
実施形態4の発電装置10Cについて、
図15、
図16を参照して説明する。本実施形態の発電装置10Cにおいて、実施形態1の発電装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0137】
図15に示すように、発電装置10Cは、コイル8を更に備えている。コイル8は、その両端に、第1端81及び第2端82を有している。コイル8は、E字状の磁路上に配置されている。ここでは、コイル8は、支持体4の共通磁路部42に巻回されている。コイル8は、可動子3の移動に応じて電力を発生する発電部(第3発電部)を構成する。
【0138】
以下、コイル8による発電について、簡単に説明する。
【0139】
可動子3が第1の位置にある場合(
図15参照)、永久磁石31からの磁束は、第1閉磁路(第1磁気回路)を反時計回りに通る(
図13参照)。すなわち、永久磁石31からの磁束は、永久磁石31のN極面(上面)から第1の素子1の梁13を左向きに通り、支持体4の本体部41を下向きに通り、共通磁路部42を右向きに通って、永久磁石31のS極面(下面)に戻る。そのため、コイル8の内側には、右向きの磁束が通っている。
【0140】
この状態から、操作者による押し釦5への押し操作に応じて、可動子3が下向きに移動すると、可動子3(第2磁性体33)と共通磁路部42との間にギャップが生じる。これにより、上記の磁気回路(第1磁気回路)の磁気抵抗が増加し、共通磁路部42を通る右向きの磁束が変化(減少)する。コイル8を通る磁束が変化すると、電磁誘導によって、コイル8が電流を発生させる。
【0141】
一方、操作者が押し釦5を押し込んだことで、可動子3が第2の位置にある場合(
図16参照)、永久磁石31からの磁束は、第2閉磁路(第2磁気回路)を反時計回りに通る(
図14参照)。すなわち、永久磁石31からの磁束は、永久磁石31のN極面(上面)から共通磁路部42を左向きに通り、支持体4の本体部41を下向きに通り、第2の素子2の梁23を右向きに通って、永久磁石31のS極面(下面)に戻る。そのため、コイル8の内側には、左向きの磁束、すなわち、可動子3が第1の位置にある場合とは反対向きの磁束が、通っている。
【0142】
この状態で、操作者が押し釦5の押し操作を終了すると、可動子3が上向きに移動し、可動子3(第1磁性体32)と共通磁路部42との間にギャップが生じる。これにより、上記の磁気回路(第2磁気回路)の磁気抵抗が増加し、共通磁路部42を通る左向きの磁束が変化(減少)する。コイル8を通る磁束が変化すると、電磁誘導によって、コイル8が電流を発生させる。このときにコイル8が発生させる電流の向きは、押し釦5が押し操作されたとき(可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動するとき)とは、逆向きである。
【0143】
このように、本実施形態の発電装置10Cでは、可動子3が移動すると、第1発電部14及び第2発電部24に加えて、第3発電部(コイル8)も電力を発生させる。そのため、本実施形態の発電装置10Cでは、発電効率の更なる向上を図ることが可能となる。
【0144】
(4.2)入力装置の第一例
次に、発電装置10Cを備えた一例(第一例)の入力装置20Cについて、
図17を参照して説明する。入力装置20Cにおいて、実施形態1の入力装置20と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0145】
入力装置20Cは、発電装置10C及び制御回路204に加えて、コイル電流整流回路211と、圧電電流整流回路212と、電圧変換回路203と、判定回路205と、蓄電素子206と、第1整流部2081と、第2整流部2082と、を備える。
【0146】
コイル電流整流回路211は、コイル8から供給される電流の向きを一方向に整える。コイル電流整流回路211は、4つのダイオードを直並列に接続した、いわゆるダイオードブリッジである。
【0147】
コイル電流整流回路211の2つの入力端子のうちの一方の入力端子は、コイル8の第1端81に接続されている。コイル電流整流回路211の2つの入力端子のうちの他方の入力端子は、コイル8の第2端82に接続されている。
【0148】
また、コイル8の第1端81は、第1整流部2081としてのダイオードを介して、判定回路205の第1入力端子2051に接続されている。コイル8の第2端82は、第2整流部2082としてのダイオードを介して、判定回路205の第2入力端子2052に接続されている。
【0149】
コイル電流整流回路211の2つの出力端子の間には、蓄電素子206が接続されている。
【0150】
圧電電流整流回路212は、第1の素子1の第1発電部14及び第2の素子2の第2発電部24から供給される電流の向きを一方向に整える。圧電電流整流回路212は、4つのダイオードを直並列に接続した、いわゆるダイオードブリッジである。
【0151】
圧電電流整流回路212の2つの入力端子のうちの一方の入力端子は、第1圧電変換部141の第2電極(上部電極)1413及び第2圧電変換部142の第1電極(上部電極)1421、並びに第3圧電変換部241の第2電極(上部電極)2413及び第4圧電変換部242の第1電極(上部電極)2421に接続されている。圧電電流整流回路212の2つの入力端子のうちの他方の入力端子は、第1圧電変換部141の第1電極(下部電極)1411及び第2圧電変換部142の第2電極(下部電極)1423、並びに第3圧電変換部241の第1電極(下部電極)2411及び第4圧電変換部242の第2電極(下部電極)2423に接続されている。
【0152】
すなわち、第1発電部14で発生した電流及び第2発電部24で発生した電流の両方が、圧電電流整流回路212に入力される。
【0153】
圧電電流整流回路212の2つの出力端子の間には、蓄電素子206が接続されている。入力装置20Cでは、入力装置20とは異なり、整流回路と蓄電素子206との間に圧電整流部(ダイオード)が接続されていない。
【0154】
蓄電素子206の両端は、電圧変換回路203に接続されており、電圧変換回路203は制御回路204に接続されている。
【0155】
電圧変換回路203は、蓄電素子206に蓄積された電荷から、制御回路204の動作電圧を生成する。制御回路204は、電圧変換回路203から供給される動作電圧により動作して、所望の機能(例えば、無線通信を用いた通知機能等)を実行する。
【0156】
判定回路205は、発電装置10Cが電力を発生した場合に、電力の発生元が第1の素子1であるか第2の素子2であるかを判定する。判定回路205は、例えば、第1入力端子2051の電圧と第2入力端子2052の電圧との大小を比較することで、上記の判定を行う。すなわち、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合と第2の位置から第1の位置へ移動する場合とでは、コイル8で発生する電流の向きが互いに逆向きとなり、第1端81と第2端82とのうちのいずれが高電位となるかが逆になる。そのため、判定回路205は、第1入力端子2051の電圧と第2入力端子2052の電圧との大小を比較することで、可動子3が移動する向きを判定することが可能となる。可動子3が移動する向きがわかれば、第1の素子1が振動しているのか第2の素子2が振動しているのかがわかる。これにより、判定回路205は、電力の発生元が第1の素子1であるか第2の素子2であるかを判定することが可能となる。
【0157】
このように、入力装置20Cは、コイル8で発生する電流の向きに基づいて、電力の発生元が第1の素子1であるか第2の素子2であるかを判定する判定回路205を備えている。入力装置20Cでは、電力の発生元を検知することで、例えば、押し釦5が押されているのか或いは押し釦5が離されたのかを判定することが可能となる。
【0158】
また、入力装置20Cでは、判定回路205は、コイル8で発生する電流の向きから、電力の発生元を検知している。そのため、入力装置20Cでは、実施形態1の入力装置20とは異なり、整流部(2071,2072)としてのダイオードが不要である。そのため、ダイオードによる電流のロスを低減することが可能となる。
【0159】
なお、圧電電流整流回路212の出力端子に接続される蓄電素子と、コイル電流整流回路211の出力端子に接続される蓄電素子とは、別であってもよい。すなわち、第1発電部14及び第2発電部24で発生した電力を制御回路204へ供給する経路と、第3発電部(コイル8)で発生した電力を制御回路204へ供給する経路とは、異なっていてもよい。制御回路204の動作の冗長性を向上させることが可能となる。
【0160】
(4.3)入力装置の第二例
次に、発電装置10Cを備えた別例(第二例)の入力装置20Dについて、
図18を参照して説明する。入力装置20Dにおいて、第一例の入力装置20Cと同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0161】
入力装置20Dは、発電装置10Cと、コイル電流整流回路211と、圧電電流整流回路212と、第1電圧変換回路2031と、第2電圧変換回路2032と、第1蓄電素子2061と、第2蓄電素子2062と、制御回路209と、を備えている。なお、図示は省略するが、入力装置20Dは、判定回路205と、第1整流部2081と、第2整流部2082と、を更に備えている(
図17参照)。
【0162】
コイル電流整流回路211及び圧電電流整流回路212の各々は、例えばダイオードブリッジである。
【0163】
コイル電流整流回路211の2つの出力端子の間には、第1蓄電素子2061が接続されている。第1蓄電素子2061の両端は、第1電圧変換回路2031に接続されており、第1電圧変換回路2031は制御回路209に接続されている。
【0164】
圧電電流整流回路212の2つの出力端子の間には、第2蓄電素子2062(第1蓄電素子2061とは別の蓄電素子)が接続されている。第2蓄電素子2062の両端は、第2電圧変換回路2032に接続されており、第2電圧変換回路2032は制御回路209に接続されている。
【0165】
第1電圧変換回路2031及び第2電圧変換回路2032の各々は、例えばDC/DCコンバータ又は三端子レギュレータである。
【0166】
制御回路209は、起動回路2091と、処理回路2092とを含む。
【0167】
起動回路2091は、第1電圧変換回路2031に接続されている。起動回路2091は、第1電圧変換回路2031から供給される電圧が所定の閾値電圧を超えると動作して、処理回路2092に起動信号を送信する。
【0168】
処理回路2092は、第2電圧変換回路2032に接続されている。処理回路2092は、第2電圧変換回路2032から供給される動作電圧により動作して、所定の機能(通知機能等)を実行する。処理回路2092は、起動回路2091から起動信号を受け取ったことに応じて、第2電圧変換回路2032から供給される動作電圧により上記の機能を実行する。すなわち、処理回路2092は、第2電圧変換回路2032から動作電圧が供給されたとしても、起動回路2091から起動信号を受け取るまでは、上記の機能を実行しない。
【0169】
既に述べたように、本実施形態の入力装置20Dが備える発電装置10Cは、圧電型振動発電素子を2つ(第1の素子1及び第2の素子2)を備えている。この2つの圧電型振動発電素子のうちの一方は、可動子3に吸着されることで、その振動が規制されている。例えば、可動子3が第1の位置にある場合、第1の素子1は、可動子3の第1磁性体32の上面に吸着されてその振動が規制される。また、可動子3が第2の位置にある場合、第2の素子2は、可動子3の第2磁性体33の上面に吸着されてその振動が規制される。その一方、他方の圧電型振動発電素子(可動子3が第1の位置にある場合の第2の素子2、可動子3が第2の位置にある場合の第1の素子1)は、その位置が固定されていない。そのため、他方の圧電型振動発電素子は、押し釦5への押し操作又は離し操作による可動子3の移動以外の要因、例えば筐体9の振動、に起因して振動し、電力を発生する可能性がある。例えば、実施形態1の入力装置20では、可動子3が押し釦5から押圧力を受けていない状態で、他方の圧電型振動発電素子が発生した電力に応じて、制御回路204(
図7参照)が特定の機能(無線通信による通知機能等)を実行してしまう可能性がある。なお、
図7には図示していないが、制御回路204は
図18に示すように、特定の機能を実行する処理回路2092を含む。
【0170】
つまり、本実施形態の入力装置20Dでは、上述した誤動作を抑制するために、制御回路209が起動回路2091を含む。処理回路2092は、起動回路2091から起動信号を受け取るまでは、特定の機能を実行しない。そのため、本実施の形態の入力装置20D(
図18参照)では、押し釦5が押し操作されていない状況では、制御回路204が特定の機能(例えば無線通信による通知機能等)を実行する可能性が低減される。
【0171】
本実施形態の入力装置20Dは、起動回路2091(誤動作防止回路)を備える。起動回路2091は、特定の状況で処理回路2092が特定の機能を実行するのを規制する。特定の状況は、可動子3が外部(押し釦5)からの押圧力を受けていない状態で、発電装置10(10A~10C)で電力が発生している状態である。起動回路2091は、コイル8から電流が供給されると、処理回路2092が特定の機能を実行することを許容する。
【0172】
なお、起動回路2091は、第2電圧変換回路2032の出力電圧を監視してもよい。起動回路2091は、第2電圧変換回路2032の出力電圧が処理回路2092の動作に必要な電圧以上となった場合にのみ、起動信号を処理回路2092に送信して処理回路2092を動作させてもよい。
【0173】
(5)変形例
上述の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0174】
一変形例において、実施形態1の入力装置20(
図7参照)は、誤動作防止部を更に備えてもよい。誤動作防止部は、特定の状況で所定の動作を規制する回路または構造である。つまり、誤動作防止部の一例として、上述した起動回路2091(誤動作防止回路)が挙げられる。また、誤動作防止部は、制御回路204に含まれる必要はなく、構造で実現してもよい。特定の状況は、可動子3が外部(押し釦5)からの押圧力を受けていない状態で発電装置10(10A~10C)が電力を発生させた状態である。一例において、誤動作防止部は、2つの圧電型振動発電素子1,2のうちで可動子3に吸着されていない圧電型振動発電素子の振動を規制する構造であってもよい。一例において、誤動作防止部は、押し釦5が押されていない場合には2つの圧電型振動発電素子の振動を規制し、押し釦5が押されると2つの圧電型振動発電素子の振動を許容する構造であってもよい。
【0175】
一変形例において、第1発電部14は、第1圧電変換部141と第2圧電変換部142とのうちの一方のみを備えていてもよいし、第1圧電変換部141及び第2圧電変換部142以外の圧電変換部を備えていてもよい。
【0176】
一変形において、第2発電部24は、第3圧電変換部241と第4圧電変換部242とのうちの一方のみを備えていてもよいし、第3圧電変換部241及び第4圧電変換部242以外の圧電変換部を備えていてもよい。
【0177】
一変形例において、コイル8は、E字状の磁路上において、共通磁路部42以外の位置に配置されてもよい。例えば、コイル8は、第1コイルと第2コイルとを備えていてもよい。第1コイルは、例えば、本体部41の上半分の部分の周りに巻回されて、この部分を通過する磁束の変化に応じて電流を発生させる。第2コイルは、例えば、本体部41の下半分の部分の周りに巻回されて、この部分を通過する磁束の変化に応じて電流を発生させる。
【0178】
一変形例において、発電装置10Bの第2永久磁石312の磁極面は、実施形態2の例に限られない。例えば、第2永久磁石312は、左面の上半分がN極面(第1磁極面)、左面の下半分がS極面(第2磁極面)、上面がS極面(第2磁極面)、下面がN極面(第1磁極面)となるように着磁されていてもよい。また、一変形例において、可動子3は、第2永久磁石312の代わりに磁性体を備えていてもよい。
【0179】
一変形例において、発電装置10,10A~10Cは、押し釦5の代わりに別の操作部、例えばスライドボタン等を備えていてもよい。また、発電装置10,10A~10Cは、復帰部6の代わりに、筐体9の下壁94から突出するよう配置され、操作者からの押し操作に応じて可動子3を第2位置から第1位置へ移動させる押し釦を備えていてもよい。
【0180】
一変形例において、例えば筐体9は、可動子3が第2の位置からさらに下方へ移動するのを規制する規制構造を備えていてもよい。
【0181】
一変形例において、発電装置10,10A~10Cは、第1ストッパ71及び第2ストッパ72を備えていなくてもよい。
【0182】
一変形例において、入力装置20は、発電装置10の代わりに発電装置10A~10Cのいずれかを備えていてもよい。
【0183】
(6)まとめ
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0184】
一態様の発電装置10(10A~10C)は、振動することで発電する第1の圧電型振動発電素子1と、第1の圧電型振動発電素子1の下方に位置し振動することで発電する第2の圧電型振動発電素子2と、下方へ向かって移動するときに第1の圧電型振動発電素子1を下方へ吸引し、上方へ向かって移動するときに第2の圧電型振動発電素子2を上方へ吸引する可動子3と、を備え、可動子3が下方へ向かって移動することにより、第1の圧電型振動発電素子1は振動し、可動子3が上方へ向かって移動することにより、第2の圧電型振動発電素子2は振動する。
【0185】
この態様によれば、可動子3が下方へ向かって移動するときと、可動子3が上方へ向かって移動するときの両方で、発電装置10(10A~10C)は発電する。これにより、発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0186】
別の態様の発電装置10(10A~10C)は、押圧されると、可動子3を下方に向かって移動させる押し釦5と、上方へ向かう力を可動子3に与える復帰部6と、を備える。
【0187】
この態様によれば、復帰部6により、下方に移動した可動子3を元の位置へ戻すことができる。そのため発電効率の更なる向上を図ることが可能となる。
【0188】
別の態様の発電装置10(10A~10C)では、可動子3は、第1位置と第1位置よりも下方に位置する第2位置との間を移動する。可動子3が第1位置に位置するとき、可動子3は、第1の圧電型振動発電素子1と接触し、かつ、第2の圧電型振動発電素子2から離れている。可動子3が第2位置に位置するとき、可動子3は、第1の圧電型振動発電素子1から離れており、かつ、第2の圧電型振動発電素子2と接触する。
【0189】
この態様によれば、可動子が第1の位置において第1の圧電型振動発電素子に接触していない発電装置に比べて、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する際に第1の圧電型振動発電素子1を大きく湾曲させることができる。可動子が第2の位置において第2の圧電型振動発電素子に接触していない発電装置に比べて、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する際に第2の圧電型振動発電素子2を大きく湾曲させることができる。そのため、第1の圧電型振動発電素子1及び第2の圧電型振動発電素子2の振幅が大きくなり、発電効率の更なる向上を図ることが可能となる。
【0190】
別の態様の発電装置10(10A~10C)では、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動すると、可動子3は、第1の圧電型振動発電素子1から離れて、その後、第2の圧電型振動発電素子2に接触する。可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動すると、可動子3は、第2の圧電型振動発電素子2から離れて、その後、第1の圧電型振動発電素子1に接触する。
【0191】
この態様によれば、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合、可動子3が第2の圧電型振動発電素子2に接触する前に、可動子3が第1の圧電型振動発電素子1から離れる。そのため、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合に、第1の圧電型振動発電素子1、第2の圧電型振動発電素子2、及び可動子3を含む閉磁路が形成される可能性が低減される。そのため、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動する場合に、第1の圧電型振動発電素子1を可動子3から確実に離すことが可能となり、発電の信頼性の向上を図ることが可能となる。また、この態様によれば、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合、可動子3が第1の圧電型振動発電素子1に接触する前に、可動子3が第2の圧電型振動発電素子2から離れる。そのため、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合に、第1の圧電型振動発電素子1、第2の圧電型振動発電素子2)及び可動子3を含む閉磁路が形成される可能性が低減される。そのため、可動子3が第2の位置から第1の位置へ移動する場合に、第2の圧電型振動発電素子2を可動子3から確実に離すことが可能となり、発電の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0192】
別の態様の発電装置10(10A~10C)は、第1ストッパ71と第1ストッパ71の下方に配置される第2ストッパ72とのうちの少なくとも一方を更に備える。第1ストッパ71は、可動子3が第1位置から下方へ向かって移動すると、可動子3が第2の発電素子2に接触する前に第1の発電素子1を可動子3から離間させ、第2ストッパ72は、可動子3が第2位置から上方へ向かって移動すると、可動子3が第1の発電素子1に接触する前に第2の発電素子2を可動子3から離間させる。
【0193】
この態様によれば、可動子3が第1の位置から下方へ移動するとき、第1の圧電型振動発電素子1を可動子3から確実に離すことが可能となり、発電の信頼性の向上を図ることが可能となる。また、可動子3が第2の位置から上方へ移動するとき、第2の圧電型振動発電素子2を可動子3から確実に離すことが可能となり、発電の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0194】
別の態様の発電装置10A(10B~10C)は、磁性材料で形成される支持体4(4A)を更に備え、支持体4(4A)は、本体部41と、本体部41から延伸する共通磁路部42と、を有する。第1の発電素子1の一方の端部、共通磁路部42の一方の端部、および第2の発電素子2の一方の端部のそれぞれは、本体部41と繋がっており、第1の発電素子1、共通磁路部42、および第2の発電素子2は、上方から下方に向かって、第1の発電素子1、共通磁路部42、第2の発電素子2の順に間隔を空けて並ぶように設けられており、可動子3が第1の位置に位置するとき、第1の発電素子1、共通磁路部42、本体部41、可動子3と、によって第1閉磁路が構成され、可動子3が第2の位置に位置するとき、第2の発電素子2、共通磁路部42、本体部41、可動子3と、によって第2閉磁路が構成される。
【0195】
この態様によれば、可動子3の磁束が第1の圧電型振動発電素子1及び第2の圧電型振動発電素子2の発電に与える影響を低減することが可能となる。
【0196】
別の態様の発電装置10Cは、支持体4、第1の発電素子1、第2の発電素子2と、で構成される磁路上に設けられたコイル8を更に備える。
【0197】
この態様によれば、電磁誘導によりコイル8で電流を発生させることが可能となる。
【0198】
別の態様の発電装置10Cでは、コイル8は、支持体4の共通磁路部42に巻回されている。
【0199】
この態様によれば、可動子3が第1の位置から第2の位置へ移動するときと、第2の位置から第1の位置へ移動するときとで、コイル8に互いに反対向きの電流を発生させることが可能となる。
【0200】
別の態様の入力装置20(20C,20D)は、発電装置10(10A~10C)で発生した電力により動作する制御回路204(209)と、発電装置10(10A~10C)で電力が発生すると、電力が第1の発電素子1または第2の発電素子2のいずれで発生したかを判定する判定回路205と、を備える。
【0201】
この態様によれば、発電装置10(10A~10C)が電力を発生したとき、電力の発生元を判定することが可能となる。
【0202】
別の態様の入力装置20(20C,20D)は、第1の発電素子1から供給される電流の向きを一方向に整える第1の整流回路201と、第2の発電素子2から供給される電流の向きを一方向に整える第2の整流回路202と、を更に備える。判定回路205は、第1の整流回路201に接続される第1入力端子2051と、第2の整流回路202に接続される第2入力端子2052と、を有する。
【0203】
この態様によれば、電力の発生元が第1の圧電型振動発電素子1であるか第2の圧電型振動発電素子2であるかを容易に判定することが可能となる。
【0204】
別の態様の入力装置20(20C,20D)は、誤動作防止部を更に備え、誤動作防止部は、特定の状況で入力装置20(20C,20D)が所定の動作を実行することを規制する。特定の状況は、可動子3が外部からの押圧力を受けていない状態で、かつ、発電装置1で電力が発生している状態である。
【0205】
この態様によれば、可動子3が押圧力を受けていないとき、制御回路204(209)または入力装置20(20C,20D)が機能を実行するのを抑制することが可能となる。
【0206】
別の態様の入力装置20C(20D)は、発電装置10Cで発生した電力により動作する制御回路204(209)と、発電装置10Cで電力が発生すると、電力が第1の発電素子1または第2の発電素子2のいずれで発生したかを判定する判定回路205と、を備え、判定回路205は、コイル8で発生する電流の向きに基づいて、電力が第1の発電素子1または第2の発電素子2のいずれで発生したか判定する。
【0207】
この態様によれば、コイル8で発生する電流の向きに基づいて、電力の発生元が第1の圧電型振動発電素子1であるか第2の圧電型振動発電素子2であるかを判定することが可能となる。
【0208】
別の態様の入力装置20Dは、制御回路209は、コイル8に接続される誤動作防止回路(例えば起動回路2091)を含み、誤動作防止回路は、特定の状況で制御回路209が所定の動作を実行することを規制する。特定の状況は、可動子3が外部からの押圧力を受けていない状態で、かつ、発電装置1で電力が発生している状態であり、誤動作防止回路は、コイル8から電流が供給されると、制御回路209が所定の動作を実行することを許容する。
【0209】
この態様によれば、可動子3が押圧力を受けていない場合に制御回路209が機能を実行するのを抑制することが可能となる。また、可動子3が押圧力を受けた場合に、確実に制御回路209に機能を実行させることが可能となる。
【符号の説明】
【0210】
1 第1の圧電型振動発電素子
10,10A~10C 発電装置
11,21 支持部
12,22 振動部
14,24 発電部
141 第1圧電変換部
1412,1422 圧電体
1411 第1電極(下部電極)
1413 第2電極(上部電極)
142 第2圧電変換部
1421 第1電極(上部電極)
1423 第2電極(下部電極)
2 第2の圧電型振動発電素子
2412,2422 圧電体
2411 第1電極(下部電極)
2413 第2電極(上部電極)
2421 第1電極(上部電極)
2423 第2電極(下部電極)
3 可動子
4,4A 支持体
41 本体部
42 共通磁路部
5 押し釦
51 操作体
6 復帰部
42 共通磁路部
71 第1ストッパ
72 第2ストッパ
8 コイル
20,20C,20D 入力装置
201 第1の整流回路
202 第2の整流回路
204,209 制御回路
205 判定回路
2051 第1入力端子
2052 第2入力端子