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特許7523103新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴
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  • 特許-新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/08 20060101AFI20240719BHJP
   A43B 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   A43B 21/24 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A43B23/08
A43B11/00
A43B21/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023203890
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-15
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523456238
【氏名又は名称】LINK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100216286
【弁理士】
【氏名又は名称】篠崎 史典
(72)【発明者】
【氏名】池田 玲生
(72)【発明者】
【氏名】谷 優一
(72)【発明者】
【氏名】陳 知勇
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】関口 哲生
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】実開平7-7511(JP,U)
【文献】特開2011-41590(JP,A)
【文献】特開2013-48852(JP,A)
【文献】特許第7289471(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3235968(JP,U)
【文献】実開昭57-189401(JP,U)
【文献】特開平6-178703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B23/02-23/08
A43B21/24
A43B11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向しており、
当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され
前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されていることを特徴とする短靴用月型芯。
【請求項2】
内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の短靴用月型芯。
【請求項3】
前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されていることを特徴とする請求項に記載の短靴用月型芯。
【請求項4】
請求項1~のいづれか一項に記載の短靴用月型芯が短靴の踵部に装着されてなる短靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴に関し、より詳細には、履き易さとともに、着用時には着用者の足を十分にホールドすることで脱げにくさも両立することができる新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スニーカー、革靴などの短靴には、その踵部分において、月型の形状を有する月型芯(補強芯、Counter、Stiffener)が備わっている。この月型芯は、短靴の踵部分の短靴の踵部分の機械な強度を付与するとともに、着用者の着用時においては、取り囲むように着用者の踵部に接することで着用者の踵骨の安定性の向上に寄与する。
【0003】
また、近年、従来の月型芯において、踵部の上端に、上方斜め後方に硬質の突片部を設けることにより、着用者が短靴の着用の際に、足が短靴内部にスムーズに案内され易くなり、着用者の履き易さを向上させる試みも見られる。
【0004】
たとえば、特許文献1では、「かかと部をつぶさないようにして履くことができる履物及び短靴用月型芯」が開示されている(明細書段落0003など)。
【0005】
具体的には、この月型芯は、「短靴のかかと部の内側に装着される短靴用月型芯であって、月型芯本体と、この月型芯本体上端部中央に月型芯谷部が設けられ、前記月型芯谷部の一方側に第1の月型芯山部が、前記月型芯谷部の他方側に第2の月型芯山部が、それぞれ形成され、前記第1の月型芯山部は、先端部が前記月型芯本体の外側に傾斜し、前記第2の月型芯山部は、先端部が前記月型芯本体の外側に傾斜し、前記月型芯本体の前記短靴の装着時、前記第1の月型芯山部、前記月型芯谷部及び前記第2の月型芯山部は、前記短靴のかかと部のトップラインより上方に突出することを特徴とする」ものである(請求項1、要約など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許7289471号公報
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、従来の月型芯の構造と当該構造に起因した機能とを鋭意検討したところ、従来の月型芯は、履き易さの向上は認められるものの、着用者の歩行中あるいは歩行開始時において、着用した履物(短靴)が脱げ易いという課題がある。つまり、従来の、履き易さを向上させた月型芯では、履き易さと脱げに難さとを両立することは困難であり、この点について依然として改善の余地があるといえる。
また、本発明者らは、月型芯の側面部(「ウィング部」ともいう)を踵部側面部分のみならず土踏まず部側面まで延設して、着用時には、着用者の踵部側面部分最後面および側面から土踏まず部側面まで当接できることを見出した。そして、このような構成によって、着用者の足側面を両側から十分に挟持(ホールド)することができ、結果として、着用者の歩行中や歩行開始時において、着用した履物(短靴)が脱げ易いという課題を解決することができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、着用の際は良好な履き易さとともに、着用時には着用者の足を十分にホールドすることで、着用者の歩行中や歩行開始時において脱げにくいという効果を発揮できる新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る短靴用月型芯は、 短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向しており、
当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長されていることを特徴とする。
【0011】
離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の短靴用月型芯においては、内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されていることが好ましい。
【0013】
さらには、本発明の短靴用月型芯においては、前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されていることがより好ましい。
【0014】
本発明に係る短靴は、上記短靴用月型芯が短靴の踵部に装着されてなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)~(C)は、短靴および位置関係を示すための側面図および上面図である。なお、図1(B)および(C)は、それぞれ、左足用短靴および右足用短靴を示す。
図2図2は、本発明に係る月型芯の一態様を示すための図(正面図、背面図、上面図)である。
図3図3は、本発明に係る月型芯の一態様を示すための図(左右側面図)である。
図4図4は、本発明に係る月型芯を装着させた短靴を示すための側面図である。なお、図4では、当該月型芯が短靴に内蔵された状態であり、ドットパターン部分は、内蔵された月型芯を示す。
図5図5(A)~(C)は、本発明に係る月型芯と着用者の足との位置関係を示すための図である。なお、図5(B)および(C)は、本発明に係る月型芯と着用者の足の位置関係を明確にするため、短靴部分は省略している。
図6図6は、本発明に係る月型芯を使用した短靴を着用した着用者の足裏と、当該月型芯との位置関係を示すための図である。なお、図6は、本発明に係る月型芯と着用者の足の位置関係を明確にするため、短靴部分は省略している。
図7図7は、本発明に係る月型芯における別の態様(内側側面部と外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部12aと前記外側側面部12bの末端部方向に進むにしたがって、小さくなっている態様)を示すための図(上面図)である。
図8図8は、本発明に係る月型芯における別の態様(靴脱げ防止用凸部が形成されている態様)を示すための図(上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る短靴用月型芯(単に、「月型芯」ともいう)および短靴について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
なお、図1(A)に示すように、本明細書において「前方」および「後方」とは、それぞれ、短靴の爪先部2側の方向および踵部3側の方向を言い、「上方」および「下方」とは、それぞれ、短靴のアッパー5や履き口(トップライン)6側の方向および靴底(ソール)4側の方向(すなわち、それぞれ使用時における、地面側とは逆の方向および地面側の方向)を言う。図1(B)および(C)に示すように、「内側」および「外側」とは、それぞれ、着用者の足の指のうち、親指側および小指側の方向を言う。
【0018】
図2は、本発明に係る月型芯の一態様を示すための図(正面図、背面図、上面図)であり、左足用短靴に使用される月型芯10が例示されている。本発明に係る短靴用月型芯10は、図2に示されるように、着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部11と、当該踵部後方当接部11の両端部から延設された一対の側面部12(ウィング部、内側側面部12aと外側側面部12bとから構成される。ここで、図2(C)に示されるように、内側側面部12aと外側側面部12bとは、対向するように位置しており、短靴の側面部に当接しながら短靴の前側方向に向かって伸びている。ここで、「対向する」とは、内側側面部12aと外側側面部12bとがそれぞれの内側において、向かい合っている状態を言い、たとえば、上面視で内側側面部12aと外側側面部12bとが略平行あるいは前方に進むにしたがって、内側側面部12aと外側側面部12bとの離間距離が小さくなっている位置関係を言う。
【0019】
また、本発明に係る短靴用月型芯10は、短靴の踵部3に装着されて使用される。具体的には、図4に示されるように、本発明の月型芯は、当該月型芯の踵部後方当接部11が短靴の踵部の最後方の内側面に接しており、一般的には、短靴の踵部内部に存する(内蔵されている)。
【0020】
また、図3(A)~(B)および図4で例示されるように内側側面部12aと外側側面部12bの前端部Fは、着用者の中足部側面(土踏まず部分の側面)まで延長されていることを特徴としている。すなわち、図4に示されるように、短靴の靴底が地面Gに接している場合、当該地面Gに接地していない部分である中足部Mまで、内側側面部12aと外側側面部12bの前端部Fが達していることを言う。
【0021】
このような構成を有することによって、図5および6に示されるように、着用者の足の踵部後方面並びに踵部側面及び中足部側面において、短靴用月型芯が接触(当接)し、良好にホールドすることができる。そのため、着用時には着用者の足を十分にホールドすることで(ホールド特性の向上により)、着用者の歩行中や歩行開始時において脱げにくいという効果を発揮できる。
【0022】
なお、本発明に係る月型芯の材質は、特に限定されるものではないが、一般的な月型芯の材質と同様に、上記ホールド特性を良好にするためにも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、上記材質は、上記ホールド特性を良好にする観点から、アルミニウム、ステンレスなどの鉄などの金属や木であってもよいし、上記合成樹脂、金属および木からなる群から選択される少なくとも2種類の材質を含む複合材料であってもよい。なお、材質が合成樹脂の場合、一般的なモールドマシンにより成形することが可能である。
【0023】
ホールド性を更に向上させ、着用の際は良好な履き易さと着用者の歩行中や歩行開始時において脱げにくさとを良好に両立するという観点からは、図7に示されるように、本発明に係る月型芯は、内側側面部12aと外側側面部12bとの離間距離が、踵部後方当接部側から前記内側側面部12aと前記外側側面部12bの末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴の着用者の足側面(具体的には、中足部側面)を挟持できるように構成されていることが好ましい。
【0024】
図7の付番D1~D3は、内側側面部12aと外側側面部12bとの離間距離を示す。付番D1~3である離間距離は、「D1<D2<D3」で示される関係になっている。すなわち、後方から前方に進むにしたがって、内側側面部12aと前記外側側面部12bとの離間距離が次第に小さくなっている(すなわち、両側面部の末端部方向に進むにつれて側面部同士が近接するようになっている。)。
【0025】
また、ホールド性の向上によって、着用者の歩行中や歩行開始時において脱げにくさを向上させるという観点から、本発明に係る月型芯は、内面側に(すなわち、着用時に着用者の足が接する側に)、靴脱げ防止用凸部が、少なくとも1つ形成されていることが好ましく、図8(A)に示されるように、前記靴脱げ防止用凸部18が、側面部12の内面側(内側側面部12aの内面側と外側側面部12bと内面側と)に形成されていることがより好ましい。
【0026】
図8(B)および(C)は、それぞれ、図8(A)のX1-X2断面図およびY1-Y2断面図である。かかる図に示されるように、靴脱げ防止用凸部13は、内側に向かって設けられた凸形状であり、かかる靴脱げ防止用凸部13が局所的に高い挟持力で着用者の足を挟み(ホールドし)、脱げにくさを極めて向上させることができる。
【0027】
なお、靴脱げ防止用凸部は、たとえば、エラストマーなど柔軟性材料で形成されていることが望ましい。
【0028】
図8(B)および(C)に示されるように、トップラインより上方に突出した突出部14を備えていることが好ましい。このように構成することで、短靴のトップラインに、着用者の足の爪先を入れることが容易になり、かつ上記突出部14に案内されて踵部分も入れる際も容易にすることができる。
【0029】
また、本発明に係る短靴は、本発明の月型芯を内蔵していることを特徴としている。ここで、短靴の種類としては、特に限定されるものではないが、スニーカー、運動靴、革靴などが挙げられる。たとえば、本発明に係る短靴が運動靴である場合、運動者(アスリートやジョギング愛好家)などが運動中に運動靴が脱げることを防止することができる点でメリットがある。
【0030】
また、本発明に係る短靴が、医療従事者や介護従事者が使用する短靴であることも好ましい。この場合、たとえば、医療従事者や介護従事者が作業中に脱げることで、作業をいったん中断するといった不具合の発生を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、着用の際における履き易さと、着用者の歩行中や歩行開始時における脱げにくさとを両立することができる新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴を提供できるである。
【符号の説明】
【0032】
1:短靴
1L:左足用短靴
1R:右足用短靴
2:爪先部
3:踵部
4:靴底(ソール)
5:アッパー
6:履き口(トップライン)
7:タン
8:靴紐
10:本発明に係る短靴用月型芯
11:踵部後方当接部11
12:側面部(ウィング部)
12a:内側側面部
12b:外側側面部
13:靴脱げ防止用凸部
14:突出部
M:中足部(metatarsus part)
G:地面
Y:着用者の足
D1~D3:離間距離

【要約】
【課題】、本発明は、着用の際は良好な履き易さを発揮し、かつ、着用時には着用者の足を十分にホールドすることで、着用者の歩行中や歩行開始時において脱げにくい新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴を提供すること。
【解決手段】 本考案に係る新規短靴用月型芯は、短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、所定の踵部後方当接部と一対の側面部とから構成され、当該一対の側面部が、着用者の中足部側面まで延長されていることを特徴とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8