(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240719BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240719BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240719BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 623R
G09G3/20 624B
G09G3/20 670J
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2020021805
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520333321
【氏名又は名称】深▲セン▼通鋭微電子技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 明
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0156718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347332(US,A1)
【文献】国際公開第2016/181261(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/208459(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0243539(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0132598(KR,A)
【文献】国際公開第2015/093097(WO,A1)
【文献】特開2003-140613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G3/00-5/42
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源線と、走査信号線と、データ電圧が供給されるデータ信号線と、画素回路と、前記画素回路に接続するモニタ回路と、前記データ電圧に対応するデータ信号を生成する制御部とを備える表示装置であって、
前記画素回路に、発光素子と、容量素子と、前記データ信号線に接続する第1トランジスタと、前記容量素子および前記第1トランジスタに接続する第2トランジスタと、前記モニタ回路および前記第2トランジスタに接続する第3トランジスタと、第4トランジスタとが含まれ、
前記第2トランジスタの1つの導通端子が、第4トランジスタを介して前記発光素子のアノードに接続され、
前記第4トランジスタがオンとされるとともに前記導通端子が第1基準電圧に設定される第1モニタ期間に、前記モニタ回路から第3トランジスタおよび第4トランジスタを経由して前記発光素子のカソードに到る第1電流経路が形成され、
前記第4トランジスタがオフとされるとともに前記導通端子が前記第1基準電圧と同電圧に設定される第2モニタ期間に、前記電源線から前記第2トランジスタおよび第3トランジスタを経由して前記モニタ回路に到る第2電流経路が形成され、
前記モニタ回路は、前記第1モニタ期間に前記第1電流経路の電流値を検出し、
前記第1電流経路の電流値と同じ大きさの電流を前記第2トランジスタの導通端子間に流すための設定が前記第2トランジスタに対して行われた後に前記第2モニタ期間に前記第2電流経路の電流値を検出することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
電源線と、走査信号線と、データ電圧が供給されるデータ信号線と、画素回路と、前記画素回路に接続するモニタ回路と、前記データ電圧に対応するデータ信号を生成する制御部とを備える表示装置であって、
前記画素回路に、発光素子と、容量素子と、前記データ信号線に接続する第1トランジスタと、前記容量素子および前記第1トランジスタに接続する第2トランジスタと、前記モニタ回路および前記第2トランジスタに接続する第3トランジスタと、第4トランジスタとが含まれ、
前記第2トランジスタの1つの導通端子が、第4トランジスタを介して前記発光素子のアノードに接続され、
前記第4トランジスタがオンとされるとともに前記導通端子が第1基準電圧に設定される第1モニタ期間に、前記モニタ回路から第3トランジスタおよび第4トランジスタを経由して前記発光素子のカソードに到る第1電流経路が形成され、
前記第4トランジスタがオフとされるとともに前記導通端子が前記第1基準電圧と同電圧に設定される第2モニタ期間に、前記電源線から前記第2トランジスタおよび第3トランジスタを経由して前記モニタ回路に到る第2電流経路が形成され、
前記モニタ回路は、前記第1モニタ期間に前記第1電流経路の電流値を検出し、前記第2モニタ期間に前記第2電流経路の電流値を
検出し、
前記第4トランジスタがオンとされるとともに前記導通端子が第2基準電圧に設定される第3モニタ期間に、前記モニタ回路から第3トランジスタを経由して前記発光素子のカソードに到る第1電流経路が形成され、
前記第4トランジスタがオフとされるとともに前記導通端子が前記第2基準電圧と同電圧に設定される第4モニタ期間に、前記電源線から前記第2トランジスタおよび第3トランジスタを経由して前記モニタ回路に到る第2電流経路が形成され、
前記モニタ回路は、前記第3モニタ期間に前記第1電流経路の電流値を検出し、前記第4モニタ期間に前記第2電流経路の電流値を検出することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
電源線と、走査信号線と、データ電圧が供給されるデータ信号線と、画素回路と、前記画素回路に接続するモニタ回路と、前記データ電圧に対応するデータ信号を生成する制御部とを備える表示装置であって、
前記画素回路に、発光素子と、容量素子と、前記データ信号線に接続する第1トランジスタと、前記容量素子および前記第1トランジスタに接続する第2トランジスタと、前記モニタ回路および前記第2トランジスタに接続する第3トランジスタと、第4トランジスタとが含まれ、
前記第2トランジスタの1つの導通端子が、第4トランジスタを介して前記発光素子のアノードに接続され、
前記第4トランジスタがオンとされるとともに前記導通端子が第1基準電圧に設定される第1モニタ期間に、前記モニタ回路から第3トランジスタおよび第4トランジスタを経由して前記発光素子のカソードに到る第1電流経路が形成され、
前記第4トランジスタがオフとされるとともに前記導通端子が前記第1基準電圧と同電圧に設定される第2モニタ期間に、前記電源線から前記第2トランジスタおよび第3トランジスタを経由して前記モニタ回路に到る第2電流経路が形成され、
前記モニタ回路は、前記第1モニタ期間に前記第1電流経路の電流値を検出し、前記第2モニタ期間に前記第2電流経路の電流値を
検出し、
前記第4トランジスタがオンとされるとともに前記導通端子が第1基準電圧と異なる所定電圧に設定される期間に、前記モニタ回路から第3トランジスタを経由して前記発光素子のカソードに到る第1電流経路の電流値を検出する工程と、前記第4トランジスタがオフとされるとともに前記導通端子が前記所定電圧と同一の値に設定される期間に、前記電源線から前記第2トランジスタおよび第3トランジスタを経由して前記モニタ回路に到る第2電流経路の電流値を検出する工程からなる特性検出が、複数回行われることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記第1基準電圧は、発光素子のカソード電圧と発光素子の発光閾値電圧との和よりも大きいことを特徴とする
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記導通端子が前記第1基準電圧に設定されたときに、前記第1電流経路の電流値と同じ大きさの電流を前記第2トランジスタの導通端子間に流すためのモニタ用のデータ電圧を算出し、
前記第2モニタ期間の前に、前記モニタ用のデータ電圧を前記第2トランジスタのゲート端子に設定する準備期間が設けられていることを特徴とする
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1モニタ期間に得られた電流値および前記第2モニタ期間に得られた電流値に基づいて、入力信号を補正してデータ信号とするための補正データを生成し、前記補正データをメモリに記録することを特徴とする
請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1モニタ期間よりも前に記録された補正データを用いて、前記モニタ用のデータ電圧を算出することを特徴とする
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1電流経路の電流値に対する前記第2電流経路の電流値の比が規定値以上である場合に、前記第1モニタ期間に得られた電流値および前記第2モニタ期間に得られた電流値から算出される補正データを用いて前記モニタ用のデータ電圧を修正し、修正されたモニタ用のデータ電圧を前記ゲート端子に設定した状態で前記第2電流経路の電流値を再検出することを特徴とする
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記準備期間終了時に、前記第1トランジスタがOnからOff、前記第3トランジスタがOffからOnとなり、
通常動作における、前記ゲート端子へのデータ電圧の書き込み終了時に、前記第1トランジスタがOnからOff、前記第4トランジスタがOffからOnとなることを特徴とする
請求項5に記載の表示装置。
【請求項10】
前記データ信号線が前記モニタ回路に接続され、
前記第2トランジスタの1つの導通端子が、前記第3トランジスタを介して前記データ信号線に接続されていることを特徴とする
請求項1~9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光素子は、有機発光ダイオードあるいは量子ドット発光ダイオードである
請求項1~9のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス方式の有機発光表示装置は、応答速度が速く、発光効率、輝度、および視野角が大きいという利点がある。そのため、有機発光表示装置の開発が積極的に進められている。
【0003】
有機発光表示装置は、一般的に有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;以下、OLEDと略記)に流れる駆動電流を制御する駆動トランジスタと、OLEDで構成される画素回路と、をマトリックス状に配列し、映像信号に応じて画素の輝度を調整し、任意の画像を表示させる。画素の輝度は、駆動トランジスタのゲート電圧で駆動電流を制御することによって、調整することができる。
【0004】
OLEDは経時劣化や局所での長時間の高輝度表示等で劣化し(焼き付きが起こり)、局所的に輝度が低下して周囲画素との顕著な輝度差発生の原因となり、表示画像に輝度ムラが生じる。OLEDを画素とした画像表示装置では、このような劣化による輝度ムラを補正する必要がある。
【0005】
特許文献1には、外部回路で駆動トランジスタおよびOLEDの特性検出を行い、その検出結果に基づいて表示データを補正し、駆動トランジスタの製造ばらつきおよび経時劣化、並びにOLEDの製造ばらつきおよび経時劣化を補償する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は特許文献1の補償工程を示す模式図である。
図13は特許文献1の補償工程を示すグラフである。
図12に示す、駆動トランジスタT12(以下、T12と略記)の特性検出動作では、T12を通る電流がOLEDに流れ込むことなく、モニタ回路に流れ込み、モニタ回路に充電される電荷量から電流量を検出する。そのため、
図13に示すように、特性検出動作中にデータ信号線S(j)に印加する電圧Vstは、OLEDに電流が流れないように、Vst<ELVSS+Vthoに設定される(VthoはOLEDの発光閾値電圧)。
【0008】
一方、
図12に示す通常動作では、T12からOLEDに電流が流れ込み、その電流に応じた輝度でOLEDが発光する。T12のソース電圧(OLEDのアノード電圧)は、特定の輝度でOLEDが発光する電圧Vopになる。T12のソース電圧は、特性検出動作中がVst、通常動作中がVopであり、Vop>Vstとなる(
図13参照)。なお、T12のゲート・ソース間電圧をVgsとする。
【0009】
通常動作中にOLEDに流れる電流Iopは、Vgsを印加した時のT12のI-V特性(電流-ドレイン・ソース間電圧特性)と、OLEDのI-V特性(電流-アノード・カソード間電圧特性)の交点である。また、T12のソース電圧(OLEDのアノード電圧)はVopであり、T12のドレイン・ソース間電圧は、ELVDD-Vop、OLEDのアノード・カソード間電圧はVop-ELVSSである。
【0010】
特性検出動作中のT12のソース電圧(OLEDのアノード電圧)はVstであり、T12の電流Itは、T12のI-V特性におけるVstに対応する値である。T12のドレイン・ソース間電圧は、ELVDD-Vstである。
【0011】
ここで、ELVDD-Vop<ELVDD-Vstであるため、It>Iopとなり、通常動作と特性検出動作とでT12に同じVgsを設定しても、T12の電流に電流誤差ΔI=It-Iopが生じる。これは、
図13に記載のように、飽和領域でも、T12のドレイン・ソース間電圧の増加に伴ってT12の電流(ドレイン・ソース間電流)が増加するためである。特性検出動作で測定したT12の電流Itに基づいて補正データを演算し、この補正データを用いて通常動作時のデータ電圧(T12のゲート電圧)を設定すると、電流誤差ΔIに起因する表示品質の低下が見受けられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様にかかる表示装置は、
【発明の効果】
【0013】
前記構成によれば、通常動作と特性検出動作の電流誤差が低減され、外部補償の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の表示装置の構成を示す回路図である。
【
図2】実施形態1の補償工程の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1の補償工程を示すタイミングチャートである。
【
図4】実施形態1の通常動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】実施形態1の補償工程期間の動作および通常動作を示す模式図である。
【
図7】実施形態1の補償工程の別例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態1の通常動作の別例を示すタイミングチャートである。
【
図10】実施形態1の表示装置の別構成を示す回路図である。
【
図11】実施形態2の表示装置の構成を示す回路図である。
【
図12】特許文献1の補償工程を示す模式図である。
【
図13】特許文献1の補償工程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の表示装置の構成を示す回路図である。表示装置10は、画素回路20と、モニタ回路の機能をもつ出力回路30と、制御部50とを含む。
【0016】
画素回路20(i行、j列目の画素回路)は、発光素子(例えば、有機発光ダイオードOLED)、ストレージコンデンサCst(容量素子)と、第1トランジスタT1と、第2トランジスタ(駆動トランジスタ)T2と、第3トランジスタT3(モニタ制御トランジスタ)と、第4トランジスタ(発光制御トランジスタ)とを含む。第1トランジスタ~第4トランジスタはN型である。画素回路20では、第1トランジスタT1のゲート端子は走査信号線Giに接続され、第3トランジスタT3のゲート端子はモニタ制御線Miに接続され、第4トランジスタT4のゲート端子は発光制御線Eiに接続される。第2トランジスタT2のゲート端子は、第1トランジスタT1を介してデータ信号線Sjに接続されるとともに、容量素子Cstを介して第2トランジスタT2のソース端子に接続される。データ信号線Sjは、モニタラインを兼ねており、第2トランジスタT2のソース端子は、第3トランジスタT3を介してデータ信号線Sjに接続されるとともに、第4トランジスタT4を介してOLEDのアノードに接続され、データ信号線Sjは出力回路30に接続される。
【0017】
第1トランジスタT1は画素20を選択する入力トランジスタとして機能しており、走査信号線Giで制御される。容量素子Cstは、通常動作時にはデータ電圧をストレージし、電流測定時(後述)には、第2トランジスタT2のゲート・ソース間電圧を一定に保ち、ドレイン・ソース間電流を一定に保つ。第2トランジスタT2はOLEDへの電流の供給を制御する駆動トランジスタとして機能しており、データ信号線Sjから第1トランジスタT1を介して第2トランジスタT2のゲート端子にデータ電圧が供給される。第3トランジスタT3は、データ信号線Sjと、第2トランジスタT2のソース端子との接続・非接続を制御するモニタ制御トランジスタとしており、モニタ制御線Miで制御される。第4トランジスタT4は、第2トランジスタT2または第3トランジスタT3と、OLEDのアノードとの接続・非接続を制御する発光制御トランジスタとして機能しており、発光制御線Eiで制御される。ELVDDは、画素回路20を駆動するための高電位側の電源線であり、ELVSSは、画素回路20を駆動するための低電位側の電源線である。
【0018】
なお、画素回路20では発光素子にOLEDを用いているがこれに限定されず、発光層に量子ドットを含む量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いてもよい。
【0019】
出力回路30は、DAコンバータ321と、セレクタ322と、オペアンプ331と、モニタコンデンサ332と、ADコンバータ324と、スイッチ333・334・335とを含む。オペアンプ331の反転入力端子が、スイッチ334を介してデータ信号線Sjに接続され、オペアンプ331の非反転入力端子がDAコンバータ321に接続され、オペアンプ331の出力端子がセレクタ322の入力端子に接続される。オペアンプ331の反転入力端子および出力端子間には、スイッチ333およびモニタコンデンサ332が並列に配され、セレクタ322の出力端子はADコンバータ324に接続される。
【0020】
オペアンプ331、モニタコンデンサ332、およびスイッチ333によって、データ信号線Sjに流れる電流を時間積分する積分回路が構成される。DAコンバータ321は、オペアンプ331の出力電圧を決めるデジタル信号DAT_MDをアナログ信号ASに変換する。アナログ信号ASは、オペアンプ331の非反転入力端子に入力され、データ信号線Sjにデジタル信号DAT_MDで定まる出力電圧が印加される。セレクタ322は、供給される複数のアンプ出力(アナログ電圧)を時分割で出力する。ADコンバータ324は、セレクタ322の出力(アナログ電圧)をデジタル信号MO_Dに変換する。
【0021】
制御部50は、補正データ演算部201と、メモリ202と、映像データ補正部203と、基準信号生成部204と、電圧演算部205と、セレクタ206とを含む。補正データ演算部201は、第2トランジスタT2およびOLEDの特性を示すデジタル信号MO_Dから入力信号DATの補正データを演算する。メモリ202は補正データを保持する。映像データ補正部203は、通常動作中の入力信号DATと、メモリ202から読み出した補正データとを用いてデータ信号DAT1(映像信号)を生成する。基準信号生成部204は、OLEDおよび第2トランジスタT2の特性検出動作中の基準電圧を示す基準信号DAT2を生成する。電圧演算部205は、OLEDの特性検出結果(電流値)に対応するデータ電圧を示すデータ信号DAT3を生成する。セレクタ206は、動作状態に応じて、データ信号DAT1、基準信号DAT2、データ信号DAT3を切り替え、出力回路30への出力(デジタル信号DAT_MD)とする。
【0022】
図2は、実施形態1の補償工程の一例を示すフローチャートである。
図3は、実施形態1の補償工程を示すタイミングチャートである。
図4は、実施形態1の通常動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5は、実施形態1の補償工程期間の動作および通常動作を示す模式図である。
【0023】
図2のステップS1では、基準信号生成部204から送られる基準信号DAT2に対応する基準電圧Vs1(第1基準電圧:Vs1>ELVSS+Vtho)を第2トランジスタT2のソース端子に印加し、1回目のOLED特性(基準電圧Vs1に対するOLEDの電流値Io1)の検出を行う。VthoはOLEDの発光閾値電圧である。ステップS1は、
図3の期間To1~To4で行われる。
【0024】
期間To1は、OLED特性検出のための、ストレージコンデンサCstへの書き込み期間である。走査信号線Giの電位、モニタ制御線Miの電位、発光制御線Eiの電位はそれぞれ、High、Low、Highとなり、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4はそれぞれ、On、Off、Onとなる。また、制御信号CLK1、CLK2、CLK2Bはそれぞれ、High、High、Lowとなり、スイッチ333、334、335はそれぞれ、On、On、Offとなる。期間To1では、オペアンプ331からデータ信号線Sjに黒表示のデータ電圧が供給され、第2トランジスタT2のゲート端子に書き込まれる。これはOLED特性検出中の第2トランジスタT2のリーク電流を防ぐためであり、リーク電流を防ぐことができる電圧であれば黒表示のデータ電圧に限定されるものではない。
【0025】
期間To2は、OLED特性検出のための、データ信号線Sjの充電期間である。走査信号線Giの電位、モニタ制御線Miの電位はそれぞれ、Low、Highとなり、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、第4トランジスタはそれぞれ、Off、On、Onである。オペアンプ331の非反転入力端子の電圧が基準信号生成部204によって基準電圧Vs1に変更され、オペアンプ331はデータ信号線Sjを基準電圧Vs1に充電する。
【0026】
期間To3(第1モニタ期間)は、OLED特性検出のための、OLEDに流れる電流の積分期間である。
図5に示すように、第3トランジスタT3がオンとされるとともにOLEDのアノード端子(第2トランジスタT2のソース端子)が第1基準電圧Vs1に設定される期間To3には、出力回路30から第3トランジスタT3を経由してOLEDのカソードに到る第1電流経路Z1が形成され、OLEDのアノード・カソード間電圧をVs1-ELVSSとした時にOLEDに流れる電流(Io1)がデータ信号線Sjに流れる。
【0027】
制御信号CLK1はLowになり、スイッチ333はOffになる。データ信号線Sjの電流の時間積分値Int_OLEDに応じてコンデンサ332に電荷が蓄積され、オペアンプ331の出力電圧MO_Aが変化する。
【0028】
期間To4は、OLED特性検出のためのAD(アナログ・デジタル)変換期間である。制御信号CLK2、CLK2BはそれぞれLow、Highとなり、スイッチ334、335はそれぞれOff、Onとなる。スイッチ334がOffすることで、データ信号線Sjからコンデンサ332には電流が流れなくなり、期間To3終了時点における時間積分値Int_OLEDに応じて決まる出力電圧MO_Aで維持され、セレクタ322に入力される。セレクタ322は複数列のMO_Aを時分割でADコンバータ324に出力し、ADコンバータ324が複数列の出力電圧MO_Aをデジタル信号MO_Dに順番に変換する。期間To4では、スイッチ335がOnとなり、電圧制御線CLからデータ信号線Sjに基準電圧Vs1が供給される。
【0029】
図2のステップS2では、ステップS1で検出されたIo1と同じ値の電流を第2トランジスタT2に流すために必要なモニタ用のデータ電圧Vx1(第2トランジスタT2のゲート端子に印加する電圧)を、電圧演算部205で算出する。下記の式は、データ電圧Vxと、第2トランジスタT2のゲート・ソース間電圧Vgsと、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電圧Vdsと、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電流Idsとの関係を示す。なお、これらの関係は下記の式に限定されるものではない。
【0030】
Ids=β(Vgs-Vtht)2(1+λVds)
Vgs=Vx-Vs
Vds=ELVDD-Vs
ここで、Vsは第2トランジスタT2のソース電圧、VthtはTFTの閾値電圧、βはキャリア移動度に比例したパラメータ、λは、飽和領域におけるIds-Vds特性の傾きであり、Vtht、β、λは入力信号DATの補正を行うための補正データである。上式に、Vs=Vs1、Vx=Vx1、Ids=Io1を代入すれば、データ電圧Vx1を、基準電圧Vs1およびステップS1で検知された電流Io1を用いて表すことができる。
【0031】
モニタ用のデータ電圧Vx1を演算する時、補正データメモリ202に保持された補正データ(すなわち、前回の特性検出で更新された補正データ)を用いる。また、初めての特性検出の際は、前回更新された補正データがないため、初期設定の補正データを用いる。初期設定の補正データは、出荷検査で駆動トランジスタの特性を測定して算出することが望ましい。
【0032】
図2のステップS3では、第2トランジスタT2のゲート端子をデータ電圧Vx1に設定し、1回目の第2トランジスタ特性(基準電圧Vs1に対する、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電流It1)の検出を行う。ステップS3は、
図3の期間Tt1~Tt4で行われる。
【0033】
期間Tt1(準備期間)は、第2トランジスタT2特性検出のための、ストレージコンデンサCstへの書き込み期間である。走査信号線Giの電位、モニタ制御線Miの電位、発光制御線Eiの電位はそれぞれ、High、Low、Lowになり、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4はOn、Off、Offとなる。また、制御信号CLK1、CLK2、CLK2Bはそれぞれ、High、High、Lowとなり、スイッチ333、334、335はそれぞれ、On、On、Offになる。データ信号線Sjには、電圧演算部205で生成されたDAT3に対応するデータ電圧Vx1がオペアンプ331から供給され、データ電圧Vx1が第2トランジスタT2のゲート端子に書き込まれる。
【0034】
期間Tt2は、第2トランジスタT2特性検出のための、データ信号線Sjの充電期間である。走査信号線Giの電位、モニタ制御線Miの電位はそれぞれ、Low、Highとなり、第1トランジスタT1、第3トランジスタT3はそれぞれ、Off、Onになる。オペアンプ331はデータ信号線Sjを基準電圧Vs1に充電する。これにより、
図5に示すように、第2トランジスタT2のゲート・ソース間電圧VgsをVx1-Vs1、ドレイン・ソース間電圧をELVDD-Vs1とした時に第2トランジスタT2のドレイン・ソース間に流れる電流It1がデータ信号線Sjに流れる。
【0035】
期間Tt3(第2モニタ期間)は、第2トランジスタT2特性検出のための、第2トランジスタT2に流れる電流の積分期間である。
図5に示すように、第4トランジスタT4がオフであり、第2トランジスタT2のソース端子が基準電圧Vs1と同電圧に設定される期間Tt3には、電源線ELVDDから第2トランジスタT2および第3トランジスタT3を経由して出力回路30に到る第2電流経路Z2が形成される。
【0036】
制御信号CLK1はLowになり、スイッチ333はOffになる。データ信号線Sjに流れる電流It1の時間積分値Int_TFTに応じて、モニタコンデンサ332に電荷が蓄積され、オペアンプ331の出力電圧MO_Aが変化する。
【0037】
期間Tt4は、第2トランジスタT2特性検出のためのAD(アナログ・デジタル)変換期間である。制御信号CLK2、CLK2BはそれぞれLow、Highとなり、スイッチ334、335はそれぞれOff、Onとなる。スイッチ334がOffすることで、データ信号線Sjからコンデンサ332には電流が流れなくなり、期間Tt3終了時点における時間積分値Int_TFTに応じて決まる出力電圧MO_Aで維持され、セレクタ322に入力される。セレクタ322は複数列のMO_Aを時分割でADコンバータ324に出力し、ADコンバータ324が複数列の出力電圧MO_Aをデジタル信号MO_Dに順番に変換する。期間Tt4では、スイッチ335がOnとなり、電圧制御線CLからデータ信号線Sjに基準電圧Vs1が供給される。
【0038】
図2のステップS4では、基準信号生成部204から送られる基準信号DAT2に対応する基準電圧Vs2(第2基準電圧)をOLEDのアノード端子(第2トランジスタT2のソース端子)に印加し、第3モニタ期間に、2回目のOLED特性(基準電圧Vs2に対するOLEDの電流値Io2)の検出を行う。
【0039】
図2のステップS5では、ステップS4で検出されたIo2と同じ値の電流を第2トランジスタT2に流すために必要な、モニタ用のデータ電圧Vx2(第2トランジスタT2のゲート端子に印加する電圧)を電圧演算部205で算出する。ここでは、初期設定の補正データあるいは前回の特性検出で更新された補正データを用いる。
【0040】
図2のステップS6では、第2トランジスタT2のゲート端子をデータ電圧Vx2に設定し、第4モニタ期間に、2回目の第2トランジスタ特性(基準電圧Vs2に対する、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電流It2)の検出を行う。
【0041】
図2のステップS7では、補正データ演算部201が、OLED特性(Io1・Io2)および第2トランジスタ特性(It1・It2)を示すデジタル信号MO_Dに基づいて今回の補正データを算出し、メモリ202の補正データを更新する。実施形態1では、特性検出(OLEDおよび第2トランジスタ)を2回行っているがこれに限定されず、処理の簡略化のために1回だけ特性検出を行ってもよいし、補正データの精度向上のために3回以上特性検出を行ってもよい。
【0042】
図4に示す通常動作では、走査信号線Giの電位、走査信号線G(i+1)の電位が順にLowからHighに立ち上がり、各行の第1トランジスタT1は順次OffからOnになる。モニタ制御線Miの電位、発光制御線Eiの電位はそれぞれ、Low、Highに固定されており、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4はそれぞれOff、Onに固定されている。
【0043】
オペアンプ331は、映像信号補正部203からのデータ信号DAT1(補正データによって補正済)に対応するデータ電圧をデータ信号線Sjに供給し、このデータ電圧が各行の第2トランジスタT2のゲート端子(ストレージコンデンサCstの一方電極)に順次書き込まれる。書き込みが終わると、対応する走査信号線の電位はHighからLowになり、第1トランジスタT1がOnからOffになる。
図5に示すように、書き込みが終了した画素20では、第2トランジスタT2のソース電圧をVopとして、ストレージコンデンサCstに書き込まれたデータ電圧に応じて第2トランジスタT2に電流(ドレイン・ソース間電流)Iopが生じ、この電流に応じた輝度でOLEDが発光する。
【0044】
図6は、
図2の補償工程の効果を示すグラフである。
図5および
図6に示すように、実施形態1では基準電圧Vs1>ELVSS+Vthoであるため、従来と比較して、基準電圧Vs1と通常動作時の第2トランジスタT2のソース電圧との差が小さくなり、ステップS3で検出されるIt1と通常動作時の第2トランジスタT2のドレイン・ソース電流との誤差が小さくなる。
【0045】
例えばVop=Vs1の場合は、理想的には、It1=Io1=Iopとなり、通常動作と同じ条件で特性検出(OLEDおよび第2トランジスタ)を行うことができるため、外部補償の精度を高めることができる。実際には、測定誤差、前回の特性検出からの第2トランジスタT2の経時変化によってIt1およびIo1間には若干の誤差が生じるが、前記従来の手法と比較すれば補償精度は高まる。
【0046】
図7は、実施形態1の補償工程の別例を示すフローチャートである。例えば、補償工程の間隔が長く、第2トランジスタの経時変化が大きい場合は、
図7の補償工程を用いることが望ましい。
【0047】
図7では、ステップS1~S7は
図2と同じであり、ステップS8では、(It1/Io1-1)の絶対値<規定値Yc、かつ、(It2/Io2-1)の絶対値<規定値Ycを満たすかを判定し、NOであれば、ステップS9に進み、ステップS2で検出されたIo1と同じ値の電流を第2トランジスタT2に流すために必要な、モニタ用のデータ電圧Vy1(第2トランジスタT2のゲート端子に印加する電圧)を電圧演算部205で再算出する。ここでは、ステップS7で更新された補正データを用いる。
【0048】
ステップS10では、第2トランジスタT2のゲート端子をデータ電圧Vy1に設定して、第2トランジスタ特性(基準電圧Vs1に対する、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電流It1)の再検出を行う。
【0049】
ステップS11では、ステップS4で検出されたIo2と同じ値の電流を第2トランジスタT2に流すために必要な、モニタ用のデータ電圧Vy2(第2トランジスタT2のゲート端子に印加する電圧)を電圧演算部205で再算出する。ここでは、ステップS7で更新された補正データを用いる。
【0050】
ステップS12では、第2トランジスタT2のゲート端子をデータ電圧Vy2に設定して、第2トランジスタ特性(基準電圧Vs2に対する、第2トランジスタT2のドレイン・ソース間電流It2)の再検出を行う。
【0051】
ステップS12の後はステップS7に進み、補正データ演算部201が、OLED特性(Io1・Io2)およびステップS10・S12で再検出された第2トランジスタ特性(It1・It2)を示すデジタル信号MO_Dに基づいて今回の補正データを算出し、メモリ202の補正データを更新する。
【0052】
図8は、
図7の補償工程の効果を示すグラフである。S9・S11においてS7で得られた補正データを用いることで、It1がIo1に近づき、Vop=基準電圧Vs1の場合に、It1≒Io1=Iopとなる。すなわち、通常動作と同程度の条件で、OLEDおよび第2トランジスタT2の特性検出を行うことができ、補償精度を高めることができる。また、規定値Ycを小さくすることで、補償精度をさらに高めることができる。
【0053】
図9は、実施形態1の通常動作の別例を示すタイミングチャートである。
図4の通常動作では、第1トランジスタT1のスイッチング動作でデータ書き込みを行う。一方、
図3の特性検出動作(
図3の期間Tt1)では、第1トランジスタT1および第3トランジスタT3のスイッチング動作でデータ書き込みを行う。よって、通常動作と特性検出動作でスイッチング動作するトランジスタ数が異なる。第1トランジスタT1、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4のスイッチング動作は、各トランジスタ(T1・T3・T4)の寄生容量を介して第2トランジスタT2のゲート端子電圧に影響を与えるため、通常動作および特性検出動作間の第2トランジスタT2の電流誤差の原因となりうる。
【0054】
図9では、走査信号線Giの電位がHighの期間(データ電圧の書き込み期間)は、発光制御線Eiの電位をLow(第4トランジスタT4をオフ)とし、OLEDを非発光とする。走査信号線Giの電位がHighからLowに落ちる(データ電圧の書き込みが終わる)と、発光制御線Eiの電位はLowからHighに立ち上がり、各行の第1トランジスタT1がOnからOff、第4トランジスタT4がOffからOnになり、OLEDが発光する。こうすれば、通常動作の書き込み終了時にスイッチング動作するトランジスタ数(T1・T4の2個)と、特性検出動作の書き込み終了時にスイッチング動作するトランジスタ数(T1・T3の2個)とが同一となり、第3トランジスタT3と第4トランジスタT4の寄生容量を同程度にすれば、第2トランジスタT2の電流誤差を小さくし、補償精度をさらに高めることができる。
【0055】
図10は、実施形態1の表示装置の別構成を示す回路図である。
図1の表示装置では、画素回路20の各トランジスタ(T1~T4)にN型のトランジスタを用いているがこれに限定されない。
図10のように、各トランジスタ(T1~T4)をP型とし、第2トランジスタ(駆動トランジスタ)とELVDD(高電位側電源)との間に、ストレージコンデンサCstを設ける構成でもよい。
【0056】
〔実施形態2〕
図11は、実施形態2の表示装置の構成を示す回路図である。
図1の表示装置では、データ信号線Sjがモニタラインを兼ねているがこれに限定されない。
図11のように、モニタラインMLとデータ信号線Sjとを別構成とした上でオペアンプ337を設け、モニタラインMLをオペアンプ331およびスイッチ333に接続し、データ信号線Sjをオペアンプ337の出力端子に接続する構成でもよい。オペアンプ337の出力端子は、その反転入力端子に接続され、セレクタ206の出力端子がDAコンバータ327に接続され、DAコンバータ327がオペアンプ337の非反転入力端子に接続される。
【0057】
上述の各実施形態は、例示および説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。これら例示および説明に基づけば、多くの変形形態が可能になることが、当業者には明らかである。
【0058】
〔まとめ〕
【符号の説明】
【0059】
10 表示装置
20 画素回路
30 (モニタ回路機能を有する)出力回路
50 制御部
Gi 走査信号線
Mi モニタ制御線
Ei 発光制御線
Cst ストレージコンデンサ(容量素子)
T1 第1トランジスタ
T2 第2トランジスタ
T3 第3トランジスタ
T4 第4トランジスタ