(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】掘削用ボーリングロッド
(51)【国際特許分類】
E21B 17/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
E21B17/00
(21)【出願番号】P 2020149239
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000158910
【氏名又は名称】株式会社亀山
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】亀山 元則
(72)【発明者】
【氏名】早田 恭士
(72)【発明者】
【氏名】堤 孝秋
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-056756(JP,A)
【文献】特開平11-173061(JP,A)
【文献】特開2017-078281(JP,A)
【文献】特開2019-031893(JP,A)
【文献】意匠登録第0984915(JP,S)
【文献】特開2002-213174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にリングビットを取付けた筒状アウターロッドの内部に、先端にインナービットを取付けしかもロッド中心に通水路を有するインナーロッドを挿入し、前記アウターロッド同士及びインナーロッド同士を多段に連結して長尺の二重管構造とし、長尺にしたロッドの上端からロッド回転力と押し込み力又は打撃力を別装置によって与えることで、前記インナーロッドの先端のインナービットとアウターロッドの先端のリングビットによって地盤を掘削させるとともに、前記インナーロッドの中心にある通水路から水を送り込んでインナーロッドの先端部から吹出して掘削した土砂・砕石と.混じった排泥としてアウターロッドの筒内面とインナーロッドの外周との間の間隙空間から上方に排泥させる掘削用ボーリングロッドであって、
前記アウターロッドの筒壁に小さく開口した小孔を所定間隔もって多数設けるとともに、
砂の通過を防ぐふるい目のメッシュを所定厚み設けたメッシュ層と,所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質による遮水層とを積層状態で表及び裏面に通水口を有する小容器形状の小栓体の内部に封止し、同小栓体を前記アウターロッドの外側の筒壁面から突出しないように前記アウターロッドの前記の各小孔の孔壁内に嵌入して固着させた構造とし、
掘削に前記ボーリングロッドを使用開始して前記所定時間までは前記小栓体は前記遮水層によって前記小孔の開口を閉鎖して排泥の上方への排出の支障とならないように掘削でき、又掘削開始から所定時間経過後には小栓体の遮水層の水溶性物質が水溶化して小孔は通水可能となるがメッシュ層が残って砂のアウターロッド内への流入を防ぐ状態となり、掘削後インナーロッドをアウターロッドから引き抜いて回収した後地中に残されたアウターロッドは砂の流出を防ぐことができる集水管又は排水管として使用できることを特徴とする、掘削用ボーリングロッド。
【請求項2】
先端にリングビットを取付けた筒状アウターロッドの内部に、先端にインナービットを取付けしかもロッド中心に通水路を有するインナーロッドを挿入し、前記アウターロッド同士及びインナーロッド同士を多段に連結して長尺の二重管構造とし、長尺にしたロッドの上端からロッド回転力と押し込み力又は打撃力を別装置によって与えることで、前記インナーロッドの先端のインナービットとアウターロッドの先端のリングビットによって地盤を掘削させるとともに、前記インナーロッドの中心にある通水路から水を送り込んでインナーロッドの先端部から吹出して掘削した土砂・砕石と混った排泥としてアウターロッドの筒内面とインナーロッドの外周との間の間隙空間から上方に排泥させる掘削用ボーリングロッドであって、
前記アウターロッドの筒壁に小さく開口した小孔を所定間隔もって多数設けるとともに、
砂の通過を防ぐふるい目のメッシュを所定厚み配置したメッシュ層を表及び裏面に通水口を有する小容器形状の小栓体の内部に封止するとともに、所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質を前記メッシュ層内のメッシュの間隙空間に充填するように封止したものであり、同小栓体を前記アウターロッドの外側の筒壁面から突出しないように前記アウターロッドの前記の各小孔の孔壁内に嵌入して固着させた構造とし、
掘削に前記ボーリングロッドを使用開始して前記所定時間までは前記小栓体はそのメッシュ層内に充填した水溶性物質により遮水となり、前記小孔の開口を閉鎖して排泥の上方への排出の支障とならないように掘削でき、又掘削開始から所定時間経過後には小栓体のメッシュ層内に充填した水溶性物質が水溶化して小孔は通水可能となるがメッシュ層が残って砂のアウターロッド内への流入を防ぐ状態となり、掘削後インナーロッドをアウターロッドから引き抜いて回収した後地中に残されたアウターロッドは砂の流出を防ぐことができる集水管又は排水管として使用できることを特徴とする、掘削用ボーリングロッド。
【請求項3】
前記水溶性物質が浸水して遮水性を失う前記所定時間を浸水開始時から少なくとも4時間以上となるように設定し、その所定時間までは前記水溶性物質は遮水性であり、排泥は排出できて掘削可能とした、請求項1又は2記載の掘削用ボーリングロッド。
【請求項4】
前記水溶性物質の素材が、浸水すると前記所定時間後に水溶化する水溶紙又は水溶性プラスチックフィルムである、請求項1~3いずれか記載の掘削用ボーリングロッド。
【請求項5】
前記小孔は小径の円形状の孔であり、前記小栓体は円皿状でアウターロッドの外周面から突出することがないように小孔の孔壁に嵌合して固着されたものである、請求項1~4いずれか記載の掘削用ボーリングロッド。
【請求項6】
前記アウターロッドの筒壁に設ける前記小孔は細長い長円状の長孔であり、前記小栓体の平面形状も長円状であり、同小栓体をアウターロッドの外周面から突出することがないように前記小孔の孔壁に嵌装して固着したものである、請求項1~4いずれか記載の掘削用ボーリングロッド。
【請求項7】
前記小栓体が
メッシュを長円皿状に成型したものであり、しかも同メッシュ製の長円皿の内部に所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質を層状に配置した、請求項6記載の掘削用ボーリングロッド。
【請求項8】
前記小栓体がメッシュを長円皿状に成型したものであり、しかも同メッシュ製の長円皿のメッシュの間隙に所定時間浸水すると水溶化して流出する水溶性物質を充填した、請求項6又は7記載の掘削用ボーリングロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地すべり防止の為に比較的に浅い地下水を基盤面付近で排水するため、地山の土層含水比の低下又は間隙水圧の低下を図るための集水井工事のため、又は地山の地下水・湧水を排水のための帯水層に向って掘削して地下水を集水して排水するために、あるいはトンネル工事の先行ボーリングにおける排水作業の為に行う集水路構築のためのボーリング作業と、そのボーリング孔に設置する排水管(集水管)の設置作業を効率的に行うためのボーリングロッドに関する。特に、その構造は先端にリングビットを有するアウターロッド内に先端にインナービットを有するインナーロッドを挿入した二重管構造のボーリングロッドで、インナーロッドの先端部から吹き出した水で掘削した土砂・砕石を泥水として上方(後方)に排出する構造の掘削用ボーリングロッドの改良であって、削孔後には地中に残置したアウターロッドが砂を通過させない排水管・集水管として使用できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、先端にリングビットを有する筒状のアウターロッドの内部に、先端にインナービットを有し中心部に通水路を有するインナーロッドを挿入し、前記アウターロッドとインナーロッドのロッドを多段にねじ連結して長尺にした二重管構造のボーリングロッドは、地盤掘削工事,集水井工事,地山の地下水・湧水を排水・集水するための排水管・集水管設置工事等で広く使用されている。その技術は特許文献1,2で公知となっている。
【0003】
又、前記二重管構造のボーリングロッドのインナーロッドの中心に通水路を設け、水を上方から先端部に向けて圧送してインナーロッドの先端部で吹出して掘削した土砂・砕石等のスライムを取り込んで泥水とし、インナーロッドの外面とアウターロッドの内面との間の間隙空間を介して上方(又は後方)に排出して地上で排水処理する施工作業方法も広く採用されている。この圧送水はスライムの排出を行う排出媒体となり、又は先端のビットの掘削熱・高温化を冷却する作用をする。これら技術は特許文献1,2に開示されている。又、このボーリングロッドの打ち込み回転の方式には水平専用ボーリングマシンとロータリーパーカッションドリル方式がある。
【0004】
従来、二重管構造のボーリングロッドで削孔した後そのボーリング孔からボーリングロッドを回収して、その後口径5mm程の小孔を多数開口した保孔管を挿入して、同保孔管をもって地山の地下水・湧水の排出するための排水管・集水管とすることがなされている。
【0005】
又は、前記ボーリングロッドのインナーロッドを回収し、次にアウターロッドの内側に砂の通過ができないフィルター管又は小孔が多数ある保孔管を挿入した後、アウターロッドを回収して削孔内にフィルター管又は保孔管を残して、これを集水管として使用することもなされている。フィルター管のフィルター・保孔管の孔の孔径は、砂が水とともに地山から排出しないように細かな孔径としている。砂がフィルター管・保孔管から流出すると、その削孔した地山から砂が流出して地すべりの原因となるので、水のみ排出するようにしている。
【0006】
いずれも、二重管構造のボーリングロッドを使用してボーリング孔を削孔しても、別の保孔管又はフィルター管を挿入してこれを集水管・排水管とするようにするため、ボーリング孔の削孔の後に集水管・フィルター管の挿入作業を必要とするため工期が長くなり、且つコストも高いものとなっていた。
【0007】
更に、特許文献3には削孔外周地山の地盤改良のために径の大きい地中に挿入された筒状の注入管の外周に複数個の小孔を設け、皿状の小型の外皮にゴム製の弾性弁体を封止した逆止弁を嵌着させた構造が開示されているが、この逆止弁は注入管に注入されたセメントミルクの圧力で弁が開いてセメントミルクが注入管外側の地山の削孔内に流入させる目的のものであり、掘削している時点では逆止弁は閉鎖して上方へ排泥できるようにし、削孔後にセメントミルクを地上から注入して注入管を外周削孔地盤とを強固に固定し、又外周地山の地盤を改良する目的である。この特許文献3には削孔後に排水・集水管を設置することには開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平7-42858号公報
【文献】実開平7-34089号公報
【文献】登録意匠番号第984915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、従来の排水管・集水管設置の施工が地盤に適切な長さ・深さのボーリング孔をボーリングロッドで削孔する工程と、削孔されたボーリング孔からボーリングロッドの全部又は一部を引き抜く工程と、その後新たな排水管・集水管を挿入する作業の3工程必要とした作業を大巾に短縮し、2工程で行えて又新たな専用の排水管・集水管を必要なく、掘削後ボーリングロッドのアウターロッドを削孔に残置することでそのまま排水管・集水管に出来るという大巾に施工工程を短縮し、又工期も短くできて工事費用を大巾に低減できる集水・排水機能あるボーリングロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端にリングビットを取付けた筒状アウターロッドの内部に、先端にインナービットを取付けしかもロッド中心に通水路を有するインナーロッドを挿入し、前記アウターロッド同士及びインナーロッド同士を多段に連結して長尺の二重管構造とし、長尺にしたロッドの上端からロッド回転力と押し込み力又は打撃力を別装置によって与えることで、前記インナーロッドの先端のインナービットとアウターロッドの先端のリングビットによって地盤を掘削させるとともに、前記インナーロッドの中心にある通水路から水を送り込んでインナーロッドの先端部から吹出して掘削した土砂・砕石と.混じった排泥としてアウターロッドの筒内面とインナーロッドの外周との間の間隙空間から上方に排泥させる掘削用ボーリングロッドであって、
前記アウターロッドの筒壁に小さく開口した小孔を所定間隔もって多数設けるとともに、
砂の通過を防ぐふるい目のメッシュを所定厚み設けたメッシュ層と,所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質による遮水層とを積層状態で表及び裏面に通水口を有する小容器形状の小栓体の内部に封止し、同小栓体を前記アウターロッドの外側の筒壁面から突出しないように前記アウターロッドの前記の各小孔の孔壁内に嵌入して固着させた構造とし、
掘削に前記ボーリングロッドを使用開始して前記所定時間までは前記小栓体は前記遮水層によって前記小孔の開口を閉鎖して排泥の上方への排出の支障とならないように掘削でき、又掘削開始から所定時間経過後には小栓体の遮水層の水溶性物質が水溶化して小孔は通水可能となるがメッシュ層が残って砂のアウターロッド内への流入を防ぐ状態となり、掘削後インナーロッドをアウターロッドから引き抜いて回収した後地中に残されたアウターロッドは砂の流出を防ぐことができる集水管又は排水管として使用できることを特徴とする、掘削用ボーリングロッド
2) 先端にリングビットを取付けた筒状アウターロッドの内部に、先端にインナービットを取付けしかもロッド中心に通水路を有するインナーロッドを挿入し、前記アウターロッド同士及びインナーロッド同士を多段に連結して長尺の二重管構造とし、長尺にしたロッドの上端からロッド回転力と押し込み力又は打撃力を別装置によって与えることで、前記インナーロッドの先端のインナービットとアウターロッドの先端のリングビットによって地盤を掘削させるとともに、前記インナーロッドの中心にある通水路から水を送り込んでインナーロッドの先端部から吹出して掘削した土砂・砕石と混った排泥としてアウターロッドの筒内面とインナーロッドの外周との間の間隙空間から上方に排泥させる掘削用ボーリングロッドであって、
前記アウターロッドの筒壁に小さく開口した小孔を所定間隔もって多数設けるとともに、
砂の通過を防ぐふるい目のメッシュを所定厚み配置したメッシュ層を表及び裏面に通水口を有する小容器形状の小栓体の内部に封止するとともに、所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質を前記メッシュ層内のメッシュの間隙空間に充填するように封止したものであり、同小栓体を前記アウターロッドの外側の筒壁面から突出しないように前記アウターロッドの前記の各小孔の孔壁内に嵌入して固着させた構造とし、
掘削に前記ボーリングロッドを使用開始して前記所定時間までは前記小栓体はそのメッシュ層内に充填した水溶性物質により遮水となり、前記小孔の開口を閉鎖して排泥の上方への排出の支障とならないように掘削でき、又掘削開始から所定時間経過後には小栓体のメッシュ層内に充填した水溶性物質が水溶化して小孔は通水可能となるがメッシュ層が残って砂のアウターロッド内への流入を防ぐ状態となり、掘削後インナーロッドをアウターロッドから引き抜いて回収した後地中に残されたアウターロッドは砂の流出を防ぐことができる集水管又は排水管として使用できることを特徴とする、掘削用ボーリングロッド
3) 前記水溶性物質が浸水して遮水性を失う前記所定時間を浸水開始時から少なくとも4時間以上となるように設定し、その所定時間までは前記水溶性物質は遮水性であり、排泥は排出できて掘削可能とした、前記1)又は2)記載の掘削用ボーリングロッド
4) 前記水溶性物質の素材が、浸水すると前記所定時間後に水溶化する水溶紙又は水溶性プラスチックフィルムである、前記1)~3)いずれか記載の掘削用ボーリングロッド
5) 前記小孔は小径の円形状の孔であり、前記小栓体は円皿状でアウターロッドの外周面から突出することがないように小孔の孔壁に嵌合して固着されたものである、前記1)~4)いずれか記載の掘削用ボーリングロッド
6) 前記アウターロッドの筒壁に設ける前記小孔は細長い長円状の長孔であり、前記小栓体の平面形状も長円状であり、同小栓体をアウターロッドの外周面から突出することがないように前記小孔の孔壁に嵌装して固着したものである、前記1)~4)いずれか記載の掘削用ボーリングロッド
7) 前記小栓体がメッシュを長円皿状に成型したものであり、しかも同メッシュ製の長円皿の内部に所定時間浸水すると水溶化して遮水性を失う水溶性物質を層状に配置した、前記6)記載の掘削用ボーリングロッド
8) 前記小栓体がメッシュを長円皿状に成型したものであり、しかも同メッシュ製の長円皿のメッシュの間隙に所定時間浸水すると水溶化して流出する水溶性物質を充填した、前記6)又は7)記載の掘削用ボーリングロッド
にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二重管構造の筒状のアウターロッドの外周面に所定間隔をもって多数の小孔を設け、この小孔に外側に突出することなく嵌装される小栓体は砂の通過を防ぐメッシュ層と,浸水すると溶解始めて遮水性を所定時間後に失わせる水溶性物質の遮水層とを積層した状態又は充填した構造とした。又は、水溶性物質は前記メッシュ層のメッシュ間隙に充填、あるいはメッシュ層表面に水溶性物質を加えた構造とした。
これによって、本発明のボーリングロッドを用いて地山を水平・垂直又は斜めに掘削する小栓体はアウターロッドの周面から突出しないので、掘削で破砕することはない。掘削開始から所定時間の間は前記小栓体の遮水層は水溶せずに遮水層の機能が保持されている。これによって、インナーロッドの先端部から吹出(噴水)する水は掘削した土砂・砕石(スライム)と混って泥状となり、これがアウターロッド内周面とインナーロッドの外周面との間の間隙空間を通ってロッド上端(又はロッド後方)の方向に排出され、地上で排水処理される。
所定時間を経過しない掘削中の時間帯では小栓体の小孔は開口せず閉鎖するので、泥水はアウターロッドの上端(又は後端)方向に排泥され、排泥できるので掘削能力を低下させない。
もし、小栓体が遮水力がなければアウターロッドの小孔から地山の外周の水を吸引してアウターロッド内に流入し、又はアウターロッド内の泥水が地山の方向に流出してスライムの泥水は上端(後端)方向に排出されず、排泥力が弱くなって結果的に掘削力が弱くなる。
【0012】
このように、掘削開始から掘削完了するまでの4時間以上に設定される所定時間においては、ボーリングロッドによる削孔能力の低下はない。そして、掘削作業の一般的な掘削時間の5~6時間程経過すると、遮水層の水溶性物質は溶解して小孔は通水状態となる。掘削終了後でこの状態で地中にアウターロッドが残置されると、アウターロッド内部へ地山の砂はメッシュ層があるので流入せず、削孔外周にある地下水・湧水等を集めて小孔からアウターロッド内に流入し、地山の水の集水管(排水管)となって地山の水の排出をよくする。砂はメッシュ層によって排出されないので、土砂崩れ・表層流土することが少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は実施例1のボーリングロッドのアウターロッドとインナーロッドとの管の多段連結の二重管構造を示す一部省略の断面図である。
【
図2】
図2は実施例1のアウターロッドの構成のリングビット,先頭管,中間管,端末管,ディスチャージヘッドの構成と各管における小孔の配置を示す説明図である。
【
図3】
図3は実施例1のボーリングロッドのインナーロッドの構成のインナービット,中継ロッド,スリーブ,中継ロッド,シャンクスリーブを示す説明図である。
【
図4】
図4は実施例1の小栓体の外形状を示す拡大平面図である。
【
図5】
図5は実施例1のメッシュ層と遮水層を封止した状態の小栓体のアウターロッドの小孔に嵌合した状態を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は小孔及び小栓体が長円状の実施例2のボーリングロッドのアウターロッドを多段に連結した状態と小孔の配置を示す正面図である。
【
図7】
図7は実施例2のアウターロッドの先頭鋼管を示す拡大正面図である。
【
図8】
図8は実施例2のアウターロッドの中間鋼管を示す拡大正面図である。
【
図9】
図9は実施例2のアウターロッドの端末鋼管を示す拡大正面図である。
【
図10】
図10は実施例2の長円状の小栓体の拡大平面図である。
【
図11】
図11は実施例2のメッシュ層と遮水層とを封止した小栓体をアウターロッドの長円状小孔に嵌装した状態を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は実施例2の長円状の小栓体を示す拡大側面図である。
【
図13】
図13は実施例2の小栓体の突片を折曲して内部のメッシュ層と遮水層とを離脱しないように内側に折曲して塑性変形させて封止する構造を示す説明図である。
【
図14】
図14は実施例2の小栓体の突片を折曲げた状態を示す拡大側面図である。
【
図15】
図15は実施例2の小栓体の長い突片を折曲げてメッシュ層と遮水層を係止する構造を示す説明図である。
【
図16】
図16は実施例3のメッシュ製の皿状の小栓体を示す拡大平面図である。
【
図17】
図17は実施例3の小栓体をアウターロッドの長円状小孔に嵌装した状態を示す拡大断面図である。
【
図18】
図18は実施例3のメッシュ製の小栓体を示す拡大側面図である。
【
図19】
図19は実施例3のメッシュ製の小栓体のアウターロッドの小孔に嵌装状態を示す拡大断面図である。
【
図21】
図21のイ,ロ,ハは本発明のその他の小栓体の構造例を示す断面図である。
【
図22】
図22のニ,ホ,ヘ,トは本発明のその他の小栓体の構造例を示す断面図である。
【
図23】
図23は本発明のボーリングロッドによる削孔工事作業を示す説明図である。
【
図24】
図24はボーリングロッドのアウターロッドを削孔に残置して地下水の集水管として使用している状態を示す説明図である。
【
図25】
図25は本発明のボーリングロッド先端部における地盤掘削のスライムの排泥状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアウターロッドの材質としては鋼製,ステンレス製又は樹脂製が可能であり、その削孔力・掘削時間及び耐水性に応じて適切な材質を使用する。この材質に応じて小栓体の固着方法もアウターロッドが鋼製・ステンレス製の場合は熔接・スポット熔接又は接着剤の方法で行う。又、アウターロッドが樹脂製の場合は主に接着剤で固着することが多い。
本発明の小栓体としては、上面及び底面の中央部を開口した丸皿状又は長円状の小容器形状の内部に砂の通過を許容しないメッシュ層と、浸水して所定時間は水溶化しない水溶性物質を層状に積層するか又はメッシュ層のメッシュの表面又は内側のメッシュの空隙に水溶性物質を充填又は表面付着させる形態がある。詳細例は
図20,21に示している。
【0015】
通水性ある小栓体をメッシュ素材で皿状・箱状又はメッシュ立体状に成型して、その皿・箱の内部に浸水して所定時間で水溶化する初期的には遮水層となる水溶性物質を層状に封止する。又は、メッシュの外表面あるいは内部の間隙を充填するように前記水溶性物質を初期的に遮水層となる状態に封止し、あるいは表面を非通水性にする。そして、浸水後所定時間後に水溶化して通水性となるようにする形態もある。
【0016】
本発明の水溶性物質としては、浸水後所定時間後に水溶化する水溶紙,ポリビニルアルコール等の水溶性のプラスチック樹脂物質がある。又、浸水した水溶化するまでの前記所定時間として4時間以上とする。集水管等の設置のための地山の掘削作業には5~6時間を掘削時間が必要であるので、5~6時間を所定時間とするのが実用的であるが、短い掘削又は掘削し易い地盤での集水管・排水管の場合は、4時間に近い短い時間水溶化のものを使用する。
【0017】
又、本発明の小栓体の小孔の孔壁に固着する方法は、小栓体を小孔の孔壁内に圧入・嵌合させて固着する方法,更に上記固着を完全にするため小栓体を熔接又は接着剤で孔壁に固着する方法も併用される。
【実施例】
【0018】
本発明を
図1~5に示す円形状の小孔及び円皿・容器状の小栓体の実施例1と、
図6~15に示す小孔・小栓体が長円状・長円皿状とした実施例2と、
図16~20に示す小栓体をメッシュ製の小容器状とした実施例3と、
図21,22には本発明の他の小栓体・メッシュ・遮水形態の例又は上記の組み合せの例とを図示化している。
【0019】
(実施例1)
図1~5に示す実施例は、アウターロッドの小孔,小栓体とも平面形状か円形であり、小孔の孔径は直径10mmであり、ボーリングロッドのアウターロッドの外径が114mmで、先頭鋼管1本と中間鋼管2本と端末管1本を螺着して4本多段の長さで12.5m程の長さのボーリングロッドとしている。
小孔はアウターロッドの同じ管位置180°位相差の2個所に、300mm管位置の間隔をもって小孔2個所を配置している。
【0020】
その実施例1のボーリングロッドのアウターロッドとインナーロッドの二重管構造とロッド多段連結の状態を
図1,2,3に示している。実施例1の小栓体の拡大平面図を
図4に、小栓体を小孔への嵌装状態を
図5に示している。
【0021】
更に、実施例1の集水管設置の為のボーリングロッドの掘削状態を
図23に、更にインナーロッドの通水路からの水がボーリングロッドの先端での掘削状態と、掘削されたスライムをアウターロッド内周面とインナーロッドの外周面との間の排泥路への排泥状態を
図25に示している。アウターロッドの集水管としての使用は
図24に示している。
【0022】
(実施例の用語と符号の説明)
実施例1及び実施例2,3の共通の用語に対しては、同じ符号を使用している。
G1は実施例1のボーリングロッド、G2は実施例2のボーリングロッド、G3は実施例3のボーリングロッドである。WDはボーリングロッドの打込み台車、WD1はボーリングロッド打込み台、WD2は台車WDのクローラ車部、RHはボーリングロッド打込み台WD1の上方に装置されたボーリングロッドG1,G2,G3の上端に回転力・押付力・打撃力を与える回転打撃装置である。
1は実施例1のボーリングロッドG1のアウターロッド、10はアウターロッド1の構成のケーシングシュ付先頭管、11は同先頭管の下端に取付けたリングビット、12はアウターロッド1の2本連結される中間管、13はアウターロッド1の端末管、14は上記管同士のねじ連結部、15はアウターロッド1の上端に取付けるディスチャージヘッド、2はボーリングロッドG1のインナーロッド、20はインナーロッド2を構成する2本の中継ロッド、21はインナーロッド2の先端に取付けるインナービット、22はインナーロッド2の上端に取付けるシャンクスリーブ、23は上下の中継ロッド20同士を連結するスリーブ、24はインナーロッド2の中心の通水路である。
【0023】
3は筒状のアウターロッド1の厚み5mmの筒壁に設けた外径14mmの円形状の小孔、4は同小孔に嵌装する小栓体、40は小栓体4の円皿状の金属体、401は同金属体40の外枠、402は外枠の一部の上端から長く突出させた突片で、内側に折曲して係止片となる。403は小栓体4の金属体40の底面中央に設けた開口、41は1mm以上の粒径の砂を通過させない1mmのふるい目の網状のメッシュ層、42はポリビニルアルコールを使用した複数枚の水溶性フィルムからなる遮水層で、浸水すると浸水してから5~6時間程で水溶化する水溶性物質からなっている。
【0024】
(実施例1の動作)
図1~5及び
図23~25に示すように、地下水又は湧水が多い地山に集水管又は排水管を設け、地山の地下水・湧水を地中に残置したアウターロッドによって外部に排水・集水させることでこの地山地帯の土砂崩れを防ぐようにした。又、この集水管からは地山の砂をメッシュ層で排出させないので、砂の流出による表層崩壊又は土砂崩れの発生を抑えている。
【0025】
実施例1はアウターロッド1の小孔3・小栓体4の平面形状が円形とした例で、
図1~5に示している。
このボーリングロッドG
1を
図23に示す打込み台車WDのボーリングロッド打込み台WD1上に取付け、水平に近い軽い傾斜角で地盤に向けて回転打撃装置RHを作動させて、ボーリングロッドG
1を地山の傾斜面に向けて回転力と押付力又は打撃力を与えることで、ボーリングロッドG
1の先端のリングビット11及びインナーロッド2のインナービット21を回転して地盤を掘削させる。この時、インナーロッド2の中心の通水路24に後端地上側から水を送り込むと、水はインナーロッド2の先端部から吹出して、掘削した土砂・破砕片(スライム)と混合して泥水状態で、アウターロッド1の内周面とインナーロッド2の外周面との間の間隙に沿って上端に向けて排泥流となって送り出す。
【0026】
この際、小孔3の嵌装された小栓体4の水溶性物質による遮水層は、前記泥水に接触しても通常5~6時間経過しない時間帯では遮水体となって、泥水が小孔から地山側に逃げることなく後端(又は上端)へ排出できる。よって、掘削力の低下はない。このボーリングロッドG1による掘削時間は5~6時間以内に行われる。小栓体4は筒状のアウターロッド1の孔壁内に収まって外周から突出しないので、アウターロッド1の回転・打撃があっても小栓体4は破損しない。
【0027】
このように、ボーリングロッドG1による掘削5~6時間経過する前に斜面の地山を10m程掘削される。掘削後、インナーロッド2をアウターロッド1から引き抜いて、アウターロッド1のみ削孔の地中に残す。掘削開始から5~6時間経過すると、小栓体4内の遮水層の水溶性物質は水溶化して流出して小孔3はメッシュ層41のみが残り、通水性となる。
【0028】
このアウターロッド1が地中に残置すると、地山の地下水・湧水を小孔3を介してアウターロッド1内に入って外部に排出させる。一方、水と混っている砂は小栓体4のメッシュ層41によってアウターロッド1内に流入して外部に排出されない。よって、地盤中の砂の流出による土砂崩れを少なく抑えることができる。
【0029】
(実施例2)
実施例2の小孔57は長円状で細長く、これに圧入して嵌装するように小栓体58も長円状となっている。
この実施例2のボーリングロッドG2も実施例1と同様に、打込み台車WDのボーリングロッド打込み台WD1に取付けられて、回転打撃装置RHによって掘削する。
【0030】
実施例1同様に、小孔57の遮水層582は掘削開始から5~6時間は水溶化しないので、その時間帯では小孔57が通水性はなく、排泥に支障なく、掘削には影響を与えない。掘削された5~6時間後、遮水層582・水溶性物質は水溶化して流出してなくなる。よって、実施例1同様に削孔中のアウターロッド5は地中に残置すると地山の地下水・湧水の排水管・集水管となって水を排出する。一方、砂はメッシュ層581が残っているので砂の流出はない。実施例2の小孔57は実施例1の小孔3に比べ細長い長円状であるので、小孔57が開口すると通水面積が大きく、大量の水の排水・集水能力が高くできる。
【0031】
(実施例3)
図16~20に示す実施例3は、小栓体68が実施例1,2の如く金属枠・円皿,長円皿,箱状の金属製容器でなく、砂を通過させないメッシュ681のふるい目の網体でもって小容器形状・皿状又はメッシュブロック状に成型させた例で、メッシュ製小栓体68を使用し、浸水した後所定時間(4時間以上、5~6時間が実用的な時間)に水溶化する水溶性物質による遮水層682は皿状・箱状のメッシュ製の小栓体68の内部に水溶性物質による複数枚の遮水性プラスチックシートを封止する形態のもの、あるいは小栓体のメッシュ681の間隙に所定時間で水溶化する水溶性物質を充填することによって所定時間まで遮水性を保持できるようにするもの、又はメッシュ681の表面・裏面に層状に水溶性遮水材(水溶性物質)を形成し、所定時間まで遮水性を保持する形態又はそれらの組み合せも存在する。
【0032】
この実施例3は、メッシュ681をもって小栓体の外形を成型するので別にメッシュ層を設ける必要がなく、メッシュ層の形成が容易となっている。
【0033】
(その他の形態)
上記実施例1,2,3の他に、小栓体を金属製のもの又は樹脂製のもの又はメッシュ製のもの等の形態で遮水層が水溶性物質をフィルム状に積層する例、又はメッシュの間隙に水溶性物質を充填する例及びメッシュ又は水溶性物質のフィルムの表面・裏面に水溶性物質を付着した遮水層を形成するもの等のもの又は前記の構造の組み合せのものが種々存在しえる。それらの形態例を
図21,22に示している。これらも本発明に含まれるものである。
【0034】
図21,22における用語と符号は下記の通りである。
図中、770はアウターロッド、771は小孔、780は小栓体、781は金属枠、782はメッシュ製小容器、783は水溶性フィルム、784はパンチングメタル、7821は表面に水溶性物質を塗布したメッシュ製小容器、7831は水溶性フィルムに水溶性物質を貼り付けたフィルム、793は表面に水溶性物質を塗布したメッシュ製小容器、794はメッシュ内に水溶性物質を充填したメッシュ製小容器、800は小栓体、801は樹脂枠、802は表面に水溶性物質を塗布したメッシュ製小容器、803は水溶性フィルムに水溶性物質を貼り付けた遮水層である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、掘削した後集水管又は排出管として使用したが、逆に農業用の畑,農業園芸の土・土壌に深く給水する給水管として使用できる。
【符号の説明】
【0036】
G1 実施例1のボーリングロッド
G2 実施例2のボーリングロッド
G3 実施例3のボーリングロッド
WD 打込み台車
WD1 ボーリングロッド打込み台
WD2 クローラ車部
RH 回転打撃装置
1 実施例1のアウターロッド
10 アウターロッド1の先頭管
11 リングビット
12 アウターロッド1の中間管
13 アウターロッド1の端末管
14 ねじ連結部
15 ディスチャージヘッド
2 実施例1のインナーロッド
20 中継ロッド
21 インナービット
22 シャンクスリーブ
23 スリーブ
24 通水路
3 実施例1の小孔
4 実施例1の小栓体
40 金属体
401 外枠
402 突片
403 開口
41 メッシュ層
42 遮水層
5 実施例2のアウターロッド
50 アウターロッド2の先端管
51 アウターロッド2のリングビット
52 アウターロッド2の中間管
53 アウターロッド2の端末管
54 アウターロッド2のねじ連結部
55 アウターロッド2のディスチャージヘッド
56 実施例2のインナーロッド
560 中継ロッド
561 インナービット
562 シャンクスリーブ
563 スリーブ
564 通水路
57 実施例2の小孔
58 実施例2の小栓体
580 金属体
5801 外枠
5802 突片
5803 開口
581 メッシュ層
582 遮水層
6 実施例3のアウターロッド
60 アウターロッド3の先端管
61 アウターロッド3のリングビット
62 アウターロッド3の中間管
63 アウターロッド3の端末管
64 アウターロッド3のねじ連結部
65 アウターロッド3のディスチャージヘッド
66 実施例3のインナーロッド
660 中継ロッド
661 インナービット
662 シャンクスリーブ
663 スリーブ
664 通水路
67 実施例3の小孔
68 実施例3の小栓体
680 金属体
6801 外枠
6802 突片
6803 開口
681 メッシュ
682 遮水層