(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】背負いベルト取付具
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A45F3/04 400C
(21)【出願番号】P 2020169056
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000142746
【氏名又は名称】株式会社ケントク
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】樅山 哲也
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206455(JP,U)
【文献】特開2004-358019(JP,A)
【文献】実開昭60-039626(JP,U)
【文献】実開昭62-200933(JP,U)
【文献】特開平08-112130(JP,A)
【文献】実開昭59-139120(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
A45C 3/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負い鞄本体の背当て部への取付板と上蓋板との間に左右一対の連結体が設けられ、
前記連結体は、上部に背負いベルトの連結環を背負い鞄本体から上方に向いた状態で取り付けられ、この連結環に合成樹脂部材を背負い鞄本体から上方に向いた状態で取り付けられるものとし、
前記連結環は、上辺部の下面を上下に起伏させた当接面とし、
前記合成樹脂部材は、弾性を有するものとしており、一側面部、他側面部および底面部からなり、一側面部と他側面部との間を挿入空間とし、
前記他側面部は、内面に係合突起を設け、前記底面部は、前記連結環の上辺部の当接面に合致するように上面を上下に起伏させた当接面とし、
前記連結環の上辺部を前記合成樹脂部材の挿入空間に挿入したときに、連結環の上辺部の当接面が合成樹脂部材の底面部の当接面に当接すると共に、連結環の上辺部の上面に合成樹脂部材の他側面部の係合突起が係合するようにしている
背負いベルト取付具であって、
前記連結環の当接面の縦断面を略M形状とし、前記合成樹脂部材の底面部の当接面の縦断面を略M形状とし、前記当接面と当接面とが合致するようにしていることを特徴とする背負いベルト取付具。
【請求項2】
前記連結環は、上辺部の表裏を平坦形状にしていることを特徴とする請求項1に記載の背負いベルト取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランドセルなどの背負い鞄に取り付ける背負いベルトの取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランドセルなどの背負い鞄に取り付ける背負いベルトの取付構造は、例えば
図7、8に示したように、レバー状の取付具21と、この取付具21の上端に連結される略三角形状の連結環22と、この連結環22に一端が取り付けられた背負いベルト23と、さらに連結環22に固定される弾性片24とからなるものが存在する(特許文献1)。
【0003】
前記弾性片24は、一枚の金属薄板を中央で折り曲げて上部を重ねた形態としている。これにより下部で連結環22の上辺25を包むことができる。この弾性片24の上部は、二本の平行な突出片26を備え、その間をU字状の切欠き27としている。この切欠き27は、背負いベルト23に固定するためのリベット28を通すスペースとなっている。
【0004】
そして、前記弾性片24は、下部で連結環22の上辺25を包むように重ね、連結環22の上辺25の上部に形成した突出部29にスポット溶接することにより連結環22に固着される。これにより、背負いベルト23の端部と係合して、背負いベルト23を連結環22に対して自由に回動しないようにすると共に、いくらかの揺動を許すように弾力的に連結することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の背負いベルトの取付構造に用いられる弾性片24は、金属薄板を折り曲げて形成されているため、加工に手間が掛かって量産化し難かったり、軽量化に適さないという課題を有していた。
【0007】
さらに、前記弾性片24は、連結環22の上辺25の上部に形成した突出部29にスポット溶接することにより連結環22に固着されているため、スポット溶接するにはそれなりの技術を必要とし、誰でも簡単に確実に固定することができるものではないという課題を有していた。
【0008】
また、前記弾性片24は、背負いベルト23の端部と係合して弾力的に連結することができるとしているが、金属製であるため、長年の使用によって、背負いベルト23の生地を突き破るなどして、背負いベルトを傷めてしまうことがあるという課題を有していた。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の弾性片に代わる合成樹脂部材を用いることにより、量産化し易く、軽量化に適しており、この合成樹脂部材を連結環に簡単に確実に固定しておけ、長年の使用によっても、その合成樹脂部材が背負いベルトの生地を突き破るなどして、背負いベルトを傷めてしまうことのない背負いベルト取付具を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の背負いベルト取付具は、背負い鞄本体Rの背当て部Tへの取付板1と上蓋板2との間に左右一対の連結体3が設けられている。前記連結体3は、上部に背負いベルトBの連結環4を背負い鞄本体Rから上方に向いた状態で取り付けられ、この連結環4に合成樹脂部材5を背負い鞄本体Rから上方に向いた状態で取り付けられるものとしている。前記連結環4は、上辺部4aの下面を上下に起伏させた当接面9としている。前記合成樹脂部材5は、弾性を有するものとしており、一側面部5a、他側面部5bおよび底面部5cからなり、一側面部5aと他側面部5bとの間を挿入空間Sとしている。前記他側面部5bは、内面に係合突起15を設けている。前記底面部5cは、前記連結環4の上辺部4aの当接面9に合致するように上面を上下に起伏させた当接面16としている。そして、前記連結環4の上辺部4aを前記合成樹脂部材5の挿入空間Sに挿入したときに、連結環4の上辺部4aの当接面9が合成樹脂部材5の底面部5cの当接面16に当接すると共に、連結環4の上辺部4aの上面に合成樹脂部材5の他側面部5cの係合突起15が係合するようにしている。さらに、前記連結環4の当接面9の縦断面を略M形状とし、前記合成樹脂部材5の底面部5cの当接面16の縦断面を略M形状とし、前記当接面9と当接面16とが合致するようにしている。
【0011】
本発明の背負いベルト取付具において、前記連結環4は、上辺部4aの表裏を平坦形状にしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の背負いベルト取付具は、以上のように構成されているので、従来の弾性片に代わる合成樹脂部材が量産化し易く、軽量化に適したものとなる。
【0014】
さらに、本発明の背負いベルト取付具は、従来の弾性片に代わる合成樹脂部材を連結環に簡単に、しかも確実に固定しておける。
【0015】
また、本発明の背負いベルト取付具は、長年の使用によっても、合成樹脂部材が背負いベルトの生地を突き破るなどして、背負いベルトを傷めてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の背負いベルト取付具に背負いベルトを取り付けた状態のランドセルを背当て部側からみた説明図である。
【
図2】本発明の背負いベルト取付具の一部分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す背負いベルト取付具の連結体、連結環、合成樹脂部材の斜視図である。
【
図4】
図3に示す背負いベルト取付具の連結体と連結環、連結環と合成樹脂部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)は本発明の背負いベルト取付具に用いる合成樹脂部材の背面図であり、(b)はその合成樹脂部材の側面図である。
【
図6】(a)は
図5(a)中のA-A線による断面図であり、(b)は
図5(b)中のB-B線による断面図である。
【
図7】従来の背負いベルトの取付構造の組み立て前の要部斜視図である。
【
図8】従来の背負いベルトの取付構造の組み立て後の一部断面要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の背負いベルト取付具を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明の背負いベルト取付具は、
図1、2に示したように、ランドセルなどの背負い鞄本体Rの背当て部Tの上部の中央部に固着されており、この背当て部Tへの取付板1と、この取付板1の空間部Saを塞いでおくための上蓋板2との間に左右一対の連結体3が左右方向に揺動自在として設けられている。
【0019】
前記連結体3は、合成樹脂成形体としており、上部には背負いベルトBの連結環4を背負い鞄本体Rから上方に向いた状態で取り付けられるものとしている。この連結環4の上辺部4aには、
図2、4に示したように、この上辺部4aを合成樹脂部材5の挿入空間Sに挿入して、この合成樹脂部材5を背負い鞄本体Rから上方に向いた状態で取り付けられるものとしている。そして、この合成樹脂部材5に前記背負いベルトBを保持させることにより、背負いベルトBが連結環4の上辺部4aで動かないようにしている。
【0020】
また、前記連結体3は、
図2に示したように、下部を取付板1の空間部Saに収納し、それぞれの下端に設けた軸孔6を取付板1に設けた支軸7に軸支している。さらに、それぞれの連結体3の外側面を内方向に押し付ける略V字状のバネ8を取付板1の空間部Saに設け、連結体3をそれぞれ内方向に付勢している。このようにすることにより連結体3は、左右に独立して揺動することができるので、前記連結環4も同様に揺動することができ、使用者が背負うときに背負いベルトBと肩との位置を調整することができる。なお、本実施形態において、連結体3は、左右に揺動自在である構成を有しているが、取付板1に固定され揺動不可能である構成とすることもできる。
【0021】
前記連結環4は、金属線材からなり、
図3、4に示したように、連結体3の上端部に形成した楕円形の挿入孔3aに回動不能に嵌入した楕円パイプCに、両端軸部4bを平坦形状にして回動不能に嵌入し、連結体3の上端部に固定したものとして、背負い鞄本体Rから上方に向いた状態で取り付けられている。
【0022】
また、前記連結環4は、金属線材を折り曲げて略不等辺四角形状としており、
図3に示したように、この略不等辺四角形状とした上辺部4aの表裏を平坦形状とすると共に、上辺部4aの下面を上下に起伏させた当接面9としている。この当接面9は、図示したものでは縦断面を略M形状としている。
【0023】
なお、前記背負いベルトBは、厚手の皮革地や合成樹脂地からなり、上端部には必要に応じて、合成樹脂板や弾性金属板などの弾性部材を挟み込んだものとして、連結環4に取り付けられた場合に、この上端部が上方に向いた状態を維持し易いようにしておくのが好ましい。
【0024】
前記合成樹脂部材5は、弾性を有する合成樹脂の成形体としており、
図5、6に示したように、一側面部5a、他側面部5bおよび底面部5cからなり、一側面部5aと他側面部5bとの間を前記連結環4の上辺部4aの挿入空間Sとしている。この挿入空間Sは、前記連結環4の上辺部4aを挿入するときに、その上辺部4aが擦り抜ける程度の幅に形成しており、挿入された連結環4が挿入空間Sでガタつかないようにしている。なお、前記連結環4の上辺部4aの表裏を平坦形状としたものでは、挿入空間Sに安定した状態で挿入され、連結環4が挿入空間Sでよりガタつかないものとなる。
【0025】
前記一側面部5aは、略四角板11の上方に一対の平行な突出片12を有し、その間を略U字状の切欠き13としている。また、この切欠き13に代えて、縦長円形または円形の通孔(図示せず)としてもよい。前記切欠き13や通孔は、背負いベルトBに固定するためのリベットRvを通すスペースとなる。なお、前記略四角板11の下部中央には、開孔11aが設けられている。この開孔11aは、後に述べる他側面部5bに設ける係合突起15を合成樹脂成形するときの型抜き孔である。
【0026】
前記他側面部5bは、略四角板14の内面に、前記連結環4の上辺部4aの上面との係合突起15を設けている。この係合突起15は、前記挿入空間Sに突出したものとしており、略円柱体とした突起をその上面から底面にかけて斜めに切断したような上向き傾斜面15aが形成されている。前記連結環4の上辺部4aを前記挿入空間Sに挿入したとき、この上辺部4aが前記上向き傾斜面15aに案内され、挿入空間Sを押し開いて前記係合突起15を乗り越えるようにしている。
【0027】
前記底面部5cは、前記連結環4の上辺部4aの当接面9に合致するように上面を上下に起伏させた当接面16としており、前記連結環4を合成樹脂部材5に挿入したとき、連結環4の当接面9と合成樹脂部材5の当接面16とが合致して動かないものとなる。この当接面16は、図示したものでは縦断面を略M形状とし、前記連結環4の上辺部4aの当接面9に合致するようにしている。
【0028】
以上のように構成された本発明の背負いベルト取付具は、以下のようにしてランドセルなどの背負い鞄本体Rの背当て部Tの上部の中央部に取り付けられる。
【0029】
先ず、背負いベルト取付具に設けられた連結体3に取り付けられた連結環4の上辺部4aを、合成樹脂部材5の挿入空間Sに挿入して、この上辺部4aに合成樹脂部材5を取り付ける。この場合、合成樹脂部材5の底面部5c側から一側面部5aと他側面部5bを指で摘まみ、連結環4の上辺部4aを合成樹脂部材5の挿入空間Sに挿入して、この合成樹脂部材5を上方に持ち上げればよい。
【0030】
すると、前記連結環4の上辺部4aが、合成樹脂部材5の他側面部5bに設けた係合突起15の傾斜面15aに案内され、挿入空間Sを押し開いてこの係合突起15を乗り越え、合成樹脂部材5の底面部5cの当接面16に当接する。この場合、前記当接面16は前記連結環4の上辺部4aの当接面9に合致すると共に、この連結環4の上辺部4aの上面が前記係合突起15に係合するので、連結環4に合成樹脂部材5が動くことなく確実に取り付けられることになる。なお、前記当接面9と当接面16との縦断面を互いに合致する略M形状とした場合には、当接面9の略M形状に当接面16の略M形状が滑り込むようにして合致するので、合致させ易いものとなる。
【0031】
そして、前記背負いベルト取付具は、上蓋板2に設けられたリベット孔2aから取付板1に設けられたリベット孔1aにリベットRvを貫通させ、背負い鞄本体Rの背当て部Tの裏側に取り付けられる止板(図示せず)にリベット止めしたものとしている。
【0032】
さらに、前記背負いベルト取付具に背負いベルトBを取り付けるには、ベルト端部を連結環4に通してから折り返して、合成樹脂板5に重ね合わせるようにして保持させ、背負いベルトBに設けられたリベット孔(図示せず)から、この合成樹脂板5の一側面部5aに形成した切欠き13にリベットRvを貫通させて、リベット止めしたものとすればよい。このようにすることにより、リベットRvの取り付け場所が充分に確保され、背負いベルトBをリベット止めし易く、しかも取り付け強度も優れたものとなる。
【0033】
したがって、本発明の背負いベルト取付具は、従来の弾性片に代わる合成樹脂部材5を連結環4に簡単に、しかも確実に固定しておけるものとなる。
【0034】
さらに、本発明の背負いベルト取付具は、合成樹脂部材5を弾性を有する合成樹脂の成形体としているので、量産化し易く、軽量化に適したものとなる。
【0035】
また、本発明の背負いベルト取付具は、長年の使用によっても、合成樹脂部材5が背負いベルトBの生地を突き破るなどして、この背負いベルトBを傷めてしまうことがないものとなる。
【符号の説明】
【0036】
1 取付板
2 上蓋板
3 連結体
4 連結環
4a 上辺部
5 合成樹脂部材
5a 一側面部
5b 他側面部
5c 底面部
9 当接面
15 係合突起
16 当接面
R 背負い鞄本体
S 挿入空間
T 背当て部