(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】服薬管理装置、服薬管理方法、服薬管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240719BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020175129
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】511104082
【氏名又は名称】株式会社グッドサイクルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 朝朗
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122253(JP,A)
【文献】特開2019-071060(JP,A)
【文献】特開2002-351983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置であって、
前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルと、
前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理部と、
共有可能な指導事項として選択された前記指導事項を前記患者端末に出力させる指導事項出力部と、
を備える、服薬管理装置。
【請求項2】
前記指導管理部は、前記指導事項ごとに前記患者端末に共有するタイミングの指定を受け付け、
前記指導事項出力部は、共有可能な指導事項として選択された前記指導事項を、前記指導管理部により受け付けたタイミングで前記患者端末に出力させる、
請求項1記載の服薬管理装置。
【請求項3】
前記処方端末に入力された処方情報を含む2次元バーコードを生成するバーコード生成部と、
前記処方端末の画面上に、前記処方情報を含む2次元バーコードを表示させ
る表示部と、
をさらに備える、請求項1又は2記載の服薬管理装置。
【請求項4】
前記患者の識別情報と、前記患者の登録情報とが関連付けられて記憶される患者テーブルと、
前記処方端末への公開可否を前記登録情報の項目ごとに示す公開可否情報
の設定を、前記患者端末を介して受け付ける公開管理部と、
前記処方端末に対して、前記公開可否情報の設定により閲覧が許可されている登録情報を送信する登録情報公開部と、
をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の服薬管理装置。
【請求項5】
前記登録情報は、前記患者への処方履歴、ならびに、前記患者の服薬状況、アレルギー情報、副作用に関する情報、体調の記録、検査結果、前記患者による自由入力情報の少なくともいずれかを含む、
請求項
4に記載の服薬管理装置。
【請求項6】
前記患者端末に問診
票を表示させる問診出力部
と、
前記患者端末から問診票への回答結果を受け付ける回答結果受付部と、
前記回答結果受付部により前記患者端末から受け付けた前記問診
票への回答結果を、前記処方端末に出力
させる回答結果出力部と、
をさらに備える、請求項1乃至
5のいずれかに記載の服薬管理装置。
【請求項7】
患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置による服薬管理方法であって、
前記服薬管理装置は、前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルを備え、
前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理ステップ
と、
共有可能な指導事項として選択された前記指導事項を前記患者端末に出力させるステップと、
を含む、服薬管理方法。
【請求項8】
患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置を制御する服薬管理プログラムであって、
前記服薬管理装置は、前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルを備え、
前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理命令
と、
共有可能な指導事項として選択された前記指導事項を前記患者端末に出力させる指導事項出力命令と、
をコンピュータに実行させる、服薬管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服薬管理装置、服薬管理方法、および服薬管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、患者への指導項目各々についての確認結果を診療科ごとに分類して記録する、投薬指導支援システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、SOAP形式の入力データを記録でき、SOAPのそれぞれについて、分類されたセルが表示される薬歴管理業務支援システムが開示されている。
【0004】
特許文献3には、記憶された情報のうち、次回投薬時の引継ぎを所望する引継ぎ情報を選択できる電子薬歴システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-120369号公報
【文献】特許3759590号公報
【文献】特開2003-150711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬剤師が患者に薬を処方する際、注意事項等を伝達する服薬指導が行われている。服薬指導においては、薬の処方内容に応じて、指導内容を適切なタイミングで確実に患者に伝達し、把握させる必要がある。また、服薬の情報を始めとする患者の情報は、患者の治療、看護、および介護に関わる医師、看護師および介護士、ならびに家族等にとっても必要な情報である。そこで、患者の治療、看護、および介護に関わる者が、患者の情報を正確かつ簡便に共有できる技術が必要とされている。
【0007】
本発明は、患者の情報を正確かつ簡便に共有できるシステムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る服薬管理装置は、患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置であって、前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルと、前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理部と、を備える。
【0009】
前記指導管理部は、前記指導事項ごとに前記患者端末に共有するタイミングの指定を受け付けるものとしてもよい。
【0010】
前記処方端末の画面上に、前記処方情報を含む2次元バーコードを表示させ、前記患者端末が当該2次元バーコードを読み取ると、前記処方情報を前記患者端末に表示させるものとしてもよい。
【0011】
前記患者の識別情報と、前記患者の登録情報とが関連付けられて記憶される患者テーブルと、前記処方端末への公開可否を前記登録情報の項目ごとに示す公開可否情報を、前記患者端末を介して受け付ける公開管理部と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0012】
前記患者端末の画面上に、少なくとも前記患者の識別情報を含む2次元バーコードを表示させ、当該2次元バーコードを読み取った第3端末に、前記患者の識別情報および前記登録情報の表示が許可されるものとしてもよい。
【0013】
前記患者の識別情報を含む2次元バーコードは、前記第3端末への公開可否を前記登録情報の項目ごとに示す情報をさらに含み、当該2次元バーコードを読み取った前記第3端末に対し、前記公開可否に基づいて、前記登録情報のうち公開が許可された項目の表示を許可し、前記公開が許可されていない項目の表示を禁止するものとしてもよい。
【0014】
前記登録情報は、前記患者への処方履歴、ならびに、前記患者の服薬状況、アレルギー情報、副作用に関する情報、体調の記録、検査結果、前記患者による自由入力情報の少なくともいずれかを含むものとしてもよい。
【0015】
前記患者端末に問診表を表示させる問診出力部をさらに備え、前記問診表への回答結果を、前記処方端末に出力するものとしてもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る服薬管理方法は、患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置による服薬管理方法であって、前記服薬管理装置は、前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルを備え、前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理ステップ、を含む。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に服薬管理プログラムは、患者端末と、患者に処方される薬の処方情報が入力される処方端末と、にネットワークを通じて接続される服薬管理装置を制御する服薬管理プログラムであって、前記服薬管理装置は、前記薬の識別情報と、前記薬に関する複数の指導事項とが関連付けられて記憶される薬テーブルを備え、前記指導事項を前記患者端末に共有するか否かの選択を、前記処方端末を介して前記指導事項ごとに受け付ける指導管理命令、をコンピュータに実行させる。
【0018】
なお、コンピュータプログラムは、各種のデータ読取可能な記録媒体に格納して提供したり、インターネット等のネットワークを介してダウンロード可能に提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、患者の情報を正確かつ簡便に共有できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る服薬管理システムの全体概要図である。
【
図2】上記服薬管理システムの機能ブロック図である。
【
図3】上記服薬管理システムが記憶する、患者と薬の服用歴とが対応付けられて記憶されている服用歴テーブルの1例である。
【
図4】上記服薬管理システムが記憶する、薬と指導事項とが対応付けられて記憶されている薬テーブルの1例である。
【
図5】上記服薬管理システムが記憶する、患者テーブルの1例である。
【
図6】上記服薬管理システムに含まれる処方端末の画面であって、1人の患者に対応付けられる複数の薬が表示されている画面の1例を示す図である。
【
図7】上記処方端末の画面であって、
図6に表示される複数の薬のうち1個の薬を選択したときに表示される画面の1例を示す図である。
【
図8】上記処方端末の画面であって、指導事項の詳細設定画面の1例を示す図である。
【
図9】上記服薬管理システムに含まれる患者端末の画面の1例である。
【
図10】上記服薬管理システムが、処方端末から入力される処方情報を患者端末に表示させる処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図11】上記服薬管理システムが、処方端末から入力される指導事項を患者端末に表示させる処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図12】上記服薬管理システムが、患者端末からの公開設定に応じて、患者の登録情報を処方端末に表示させる処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図13】患者端末から読み込まれた処方箋に応じて問診票が出力され、処方端末に送信される処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる服薬管理システム、服薬管理方法、および服薬管理プログラムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
●服薬管理システムの概要
服薬管理システムは、薬局にて患者に薬を処方する際、薬剤師が行う服薬指導を支援するとともに、服用歴を管理し、患者に関わる者に情報を共有するシステムである。
【0023】
図1に示すように、患者P20は、例えば薬局P10で処方薬を受け取ったり病院P11で治療を受けたりする。また、患者P20は、病院P11において院内処方薬を受け取る場合や、入院していた場合には退院時処方により処方薬を受け取る場合がある。患者P20の患者端末20、ならびに薬局P10および病院P11に配置される処方端末10は、クラウドC100に接続され、情報の授受を行う。例えば、患者P20が薬局P10および病院P11において、服薬管理システムにより生成される二次元バーコードを提示すると、薬局P10および病院P11は、当該二次元バーコードを読み取り、患者P20に対応付けて記憶されている登録情報をクラウドC100から受信して、患者の登録情報を参照して処方を行う。また、処方情報は、処方端末10に二次元バーコードにより表示され、患者端末20がこの二次元バーコードを読み取ることで、患者端末20から処方内容を閲覧できる。
【0024】
処方情報は、薬局P10および病院P11からクラウドC100に送信され、登録される。また、薬局P10および病院P11は、処方情報に加えて、患者P20へ指導する指導事項をクラウドC100に登録可能である。指導事項は、例えば、服薬に際し患者が注意すべき事項等を含み、患者P20に閲覧させる服薬指導文であってもよい。登録された指導事項は、クラウドC100を介して適宜のタイミングで患者端末20から閲覧できる。
【0025】
●服薬管理システムの構成
図2に示すように、服薬管理システム1は、処方端末10、患者端末20、服薬管理装置50、および第3端末30がネットワークNWを介して互いに接続されている。処方端末10、患者端末20、服薬管理装置50、および第3端末30は、それぞれ有線又は無線で接続されていてもよい。服薬管理装置50は、ハードウェア装置により構成されてもよいし、クラウドコンピュータにより実現されていてもよい。また、本説明では、服薬管理に関する機能を服薬管理装置50が実現するものとしたが、服薬管理装置50が有する機能の一部が、処方端末10又は患者端末20により実現されていてもよい。
【0026】
処方端末10は、薬を処方する担当者、例えば薬剤師が閲覧および操作する端末である。処方端末10は、薬局に配置される据え置き型のコンピュータであってもよいし、タブレット端末であってもよい。処方端末10は、複数あってもよい。処方端末10は、1個の薬局に複数配置されていてもよいし、それぞれ別の薬局に配置されていてもよい。処方端末10は、院内処方や退院時処方を行う病院に配置されていてもよい。処方端末10が複数の薬局に配置されている構成によれば、複数の薬局で処方された薬を一元管理することができ、患者が色々な薬局で処方を受けた場合であっても適切な情報共有が可能である。
【0027】
処方端末10は、入力部11、表示部12および撮像部13を備える。入力部11は、患者へ処方される薬の情報、すなわち処方情報を受け付けるとともに、患者に閲覧させる指導事項の選択を受け付ける機能部であり、タッチパネル、キーボード又はマウス等により実現される。表示部12は、主として服薬管理装置50からの情報を表示する機能部である。撮像部13は、患者端末20の画面上に表示される2次元バーコードを読取可能な機能部であり、例えばカメラ又はバーコードリーダにより実現される。
【0028】
患者端末20は、薬を処方され、医療、看護又は介護等を施される患者が閲覧および操作する端末であり、例えばタブレット端末、スマートホン又はパーソナルコンピュータである。患者は、患者端末20を介して、処方端末10又は服薬管理装置50から送信される情報を閲覧したり、自身の体調等に関する記録を入力して管理したりする。
【0029】
患者端末20は、入力部21、表示部22および撮像部23を備える。入力部21は体調に関する記録の入力を受け付ける他、患者に関して登録される情報のうち、他の端末から閲覧させる情報の選択を受け付ける。表示部22は、各種の情報を表示させる他、少なくとも患者の識別情報を含む2次元バーコードを表示させる画面により実現される。撮像部23は、他の端末又は処方箋の紙面上に表示される2次元バーコード又は処方箋の画像データを取得可能であり、例えばカメラ又はバーコードリーダにより実現される。
【0030】
第3端末30は、訪問介護の担当者や家族等、患者の看護又は介護等に係る者が使用する端末である。第3端末30は、患者端末20の許可に応じて、患者に関する登録情報の一部を閲覧可能である。また、第3端末30は、患者に関する情報を服薬管理装置50に送信し、記憶させる。第3端末30から登録された情報も、患者端末20から呼び出して閲覧することができる。
【0031】
第3端末30は、入力部31、表示部32、および撮像部33を備える。各構成は、処方端末10と同様である。撮像部33は、患者端末20に表示される2次元バーコードを読み取ることで、服薬管理装置50から当該患者の情報を呼び出したり、当該患者の情報を服薬管理装置50に格納したりすることが許可される。
【0032】
なお、
図2の例では、処方端末10、患者端末20および第3端末30は1個ずつであるが、それぞれ複数あってよい。また、各端末は、使用者がログイン処理をすることで各端末の機能を実現すればよく、ハードウェア構成にその機能が固定されるものではない。例えば、任意のタブレット端末において、薬剤師のIDでログイン処理することで処方端末10となり、患者のIDでログイン処理することで患者端末20として機能する。
【0033】
●服薬管理システムの機能ブロック
服薬管理装置50は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、記憶部51、薬歴登録部52、指導管理部53、公開管理部54、出力部55、および受信部56を備える。
【0034】
記憶部51は、患者の、主に服薬および体調等に関する情報を記憶する機能部である。記憶部51は、服用歴テーブル511、薬テーブル512および患者テーブル513を備える。
【0035】
図3に示すように、服用歴テーブル511は、患者の識別情報、当該患者が服用する薬の識別情報、および服薬期間が互いに対応付けられて記憶されているテーブルである。服用歴テーブル511に記憶される服用歴は、服薬管理システム1を使用する薬局で処方された薬に関する履歴に限られず、他の薬局で処方された薬が記録されていてもよいし、市販薬を記録することもできる。また、服用歴テーブル511には、各薬の用量が合わせて登録されていてもよい。
【0036】
図4に示すように、薬テーブル512は、薬の識別情報と、薬ごとに定められている指導事項とが互いに対応付けられて記憶されているテーブルである。指導事項は、薬効の説明、禁忌、および副作用に関する注意事項等を含む。また、薬テーブル512には、薬に関する情報であって、患者が薬への理解を深めたり、適切な服薬を案内するためのガイダンス情報が指導事項として、薬の識別情報と対応付けられて記憶されていてもよい。また、指導事項は、患者に回答を促す質問事項を含む。薬テーブル512は、薬効の説明、禁忌、および副作用といった指導事項の種別が、指導事項ごとにラベルされている。また、薬には、SOAP形式における指導事項の種別が指導事項ごとに記憶されていてもよい。
【0037】
患者テーブル513は、患者の識別情報と、患者の登録情報とが関連付けられて記憶されているテーブルである。登録情報は、例えば当該患者への処方履歴、ならびに、患者の服薬状況、アレルギー情報、副作用に関する情報、体調の記録、検査結果、および患者による自由入力情報などを含む。患者は、患者端末20を介して自身への医療、看護および介護に関する様々な情報を登録可能であり、登録された情報は、この患者テーブル513に格納される。また、患者テーブル513は、処方端末10および第3端末30からの入力情報を格納できる。例えば、病院で検査を行った場合、検査結果は、当該病院に配置される処方端末10から入力され、患者テーブル513に格納される。また、検査結果は、検査装置が有するBluetooth(登録商標)等の無線通信手段により、検査装置から直接服薬管理装置50に送られ、患者テーブル513の対応する項目に記憶されてもよい。
【0038】
患者テーブル513の登録情報は、患者端末20から閲覧可能であり、自身で入力した体調の変化を振り返ったり、他の端末10、30から入力された情報を閲覧したりすることができる。また、患者テーブル513の登録情報は、表示が許可された処方端末10および第3端末30から閲覧可能である。なお、処方端末10および第3端末30から閲覧可能な登録情報は、患者端末20から公開が許可されている情報のみである。例えば、
図5の例のように、薬局に配置される処方端末10には体調の記録の閲覧を不許可とし、訪問介護の担当者が使用する第3端末30には、体調の記録を閲覧させる一方、検査結果の閲覧を不許可する、といった設定が可能である。患者端末20から登録情報の閲覧可否の情報を受け付ける公開管理部54の構成は、後述する。
【0039】
薬歴登録部52は、患者ごとに薬の服用歴を記録する機能部である。薬歴登録部52は、入力部11から入力される情報を服用歴テーブル511に記録する。薬歴登録部52は、処方端末10が設置されている薬局又は病院で処方された薬の処方歴を記録する。また、薬歴登録部52は、患者端末20からの入力に応じて、薬の服用歴や市販薬の服用歴を記録してもよい。
【0040】
指導管理部53は、薬テーブル512に記憶される指導事項ごとに、患者端末20から閲覧させるか否かの選択を受け付ける機能部である。この機能によれば、薬テーブル512には複数の指導事項があらかじめ対応付けられて記憶されているところ、当該患者の状況に合致した指導事項のみを閲覧させることで、指導事項を患者に適切に把握させることができる。指導管理部53は、薬テーブル512に記憶される指導事項ごとに、患者端末20から閲覧可能とするタイミングを指定する。このタイミングは、薬の処方時点又は処方内容が本システムに登録された時点に加えて、例えば、処方から所定期間後であってもよい。処方から所定期間後に行う指導事項とは、適切に服用できているかの確認や、副作用の有無の確認等が含まれる。このような構成によれば、患者端末20を介して、患者に適切なタイミングで指導事項を閲覧させることができ、来局時以外においても薬の服用をフォローすることができる。また、指導事項の選択は、薬の処方時点および処方内容の登録時点以外の任意の時点で、処方情報と対応付けて記録可能であるので、薬剤師は患者に閲覧させたい時点までに指導事項の選択作業を行えばよく、利便性がよい。
【0041】
公開管理部54は、患者テーブル513に格納される登録情報を、処方端末10および第3端末30に公開するか否かを管理する機能部である。公開管理部54は、患者端末20を介して、端末ごとに、かつ、患者テーブル513に格納される登録情報の項目ごとに、公開可否を示す公開可否情報を受け付ける。患者テーブル513には、患者が個人的に登録して管理している記録も含まれる。また、患者テーブル513には、複数の端末10、30から登録される情報が含まれており、処方端末10から登録される情報の一部は、第3端末30から閲覧させる必要がない場合がある。そこで、公開管理部54により、各端末について、登録情報の項目ごとの公開可否を受け付ける構成によれば、患者は多面的な情報を一元的に管理しつつ、プライバシーを保つことができる。公開可否情報は、患者テーブル513(
図5参照)において、端末ごと、かつ登録情報の項目ごとに格納される。
【0042】
出力部55は、ネットワークNWで接続された各端末に情報を出力する機能部である。出力部55は、主として、指導事項出力部551、バーコード生成部552、問診出力部553を備える。
【0043】
指導事項出力部551は、指導管理部53で患者端末20において閲覧可能と選択された指導事項を、患者端末20に出力する。指導事項出力部551は、患者端末20からの要求に基づいて指導事項を表示部22に表示させてもよいし、指導事項出力部551から患者端末20に情報を送信し、患者端末20に通知を行ってもよい。
【0044】
バーコード生成部552は、2次元バーコードを生成し、処方端末10、患者端末20および第3端末30の画面上に表示させる機能部である。
【0045】
バーコード生成部552は、少なくとも患者の識別情報を含む2次元バーコードを生成し、患者端末20に表示させる。この2次元バーコードは、当該患者に紐づいて患者テーブル513に登録される情報の、少なくとも一部の公開許可を含んでいる。バーコード生成部552は、患者端末20から受信する登録情報の項目ごとの公開可否情報に基づいて、2次元バーコードを生成する。また、バーコード生成部552は、患者テーブル513に格納されている公開可否情報に基づいて2次元バーコードを生成してもよい。処方端末10又は第3端末30がこの2次元バーコードを読み取ると、患者の識別情報および閲覧が許可されている登録情報の表示が許可される。この構成によれば、2次元バーコードを見せるだけで登録情報の共有ができ簡便である。また、患者が閲覧を許可した相手に確実に登録情報を共有することができる。
【0046】
また、バーコード生成部552は、少なくとも薬の処方情報を含む2次元バーコードを生成し、処方端末10に表示させる。患者端末20の撮像部23が当該2次元バーコードを読み取ると、患者端末20の表示部22に処方情報が表示される。この構成によれば、患者端末20から処方の時点ですぐに処方の内容を確認できる。また、患者が患者の識別情報を処方端末10に共有していない場合にも、当該2次元バーコードの読取を契機に、服薬管理装置50上の患者の識別情報のデータと処方情報とが紐づけられ、格納される。
【0047】
問診出力部553は、薬を処方する際に患者に回答してもらう問診表を、患者端末20に表示させる。例えば、患者端末20が処方箋を撮像すると、問診表が表示されてもよい。処方箋の内容に応じて、異なる質問を問診表に表示させてもよい。
【0048】
受信部56は、各端末からの情報を受信する機能部である。受信部56は、例えば処方端末10から入力される処方情報、および、処方端末10、患者端末20および第3端末30から入力される登録情報を受信し、記憶部51に格納する。また、処方端末10、患者端末20および第3端末30から、2次元バーコードを生成する旨の指令を受信する。さらに、受信部56は、患者端末20に入力される問診表への回答結果を受信する。受信部56は、患者端末20から処方箋のデータを受信してもよい。処方箋のデータは、患者端末20の撮像部23により撮影される処方箋の写真であってもよいし、患者端末20が処方箋の写真からOCR読取を行って得る文字データであってもよい。また、処方箋のデータは、処方箋の紙面又は処方箋の発行医療機関の端末に表示される2次元バーコードを、患者端末20が読み取ることにより取得するものであってもよい。
【0049】
なお、処方端末10、患者端末20、第3端末30を介した薬局、医療機関および患者等のデータや通知のやり取りは、所定のウェブサイト上に設けた患者のマイページ等を介して行ったりするなど、各種の態様によることができる。また、このウェブサイトの画面上に、マイページの閲覧を許可する2次元バーコードが表示されてもよい。また、閲覧が許可されている端末同士でメッセージがやり取りできるウェブ上の掲示板がマイページから表示可能であってもよい。この構成によれば、患者を支える医療従事者や介護従事者、家族等が患者に関する情報をやり取りしたり、相談したりすることができる。
【0050】
●画面例
図6は、表示部12に表示される服薬指導画面G1の一例を示す図である。服薬指導画面G1は、記憶部51に記憶されている服用歴テーブル511および薬テーブル512の情報に基づいて表示される。服薬指導画面G1には、処方を決定した医療機関の情報および患者の識別情報を示す情報欄G11が表示されている。また、服薬指導画面G1には、当該患者に処方されている処方薬の識別情報を示す処方薬欄G12a、G12b、G12cおよびG12dが並んで表示されている。服薬指導画面G1には、処方内容の確認および指導をした担当者の識別情報、例えば氏名が表示されていてもよい。
【0051】
図7は、表示部12に表示される服薬指導画面G2の別の例を示す図である。服薬指導画面G2は、服薬指導画面G1において処方薬欄G12a乃至G12dを選択することで遷移される。服薬指導画面G2は、服薬管理装置50が患者の識別情報および処方薬の識別情報を受け付けると、記憶部51に記憶されている服用歴テーブル511および薬テーブル512の情報に基づいて表示される。服薬指導画面G2には、患者の識別情報欄G11、および処方薬欄G12aが画面上部に表示されている。また、画面中央部には、選択された処方薬に対応付けられる詳細情報が表示される。詳細情報として、指導事項が表示される指導事項欄G23、指導頻度および指導回数を指導事項ごとに表示する確認欄G24、および処方時点以外に必要な指導の指導時期を指導事項ごとに表示するフォロー欄G25、患者への共有要否を選択する共有欄G27が表示されている。選択されていない処方薬については詳細情報が表示されず、処方薬欄G12bは、詳細情報の下方に表示されている。
【0052】
確認欄G24は、次回処方時に、当該処方を行う薬剤師に指導事項を申し送りするための欄である。確認欄G24は、処方端末10を操作することで内容を変更可能である。例えば、確認欄G24上をタップすることで、表示が切り替わるようになっている。表示は、タップするごとに、無表示、「説明次回」、「次回」、「説明毎回」および「毎回」がこの順に切り替わってもよい。確認欄G24をタップするだけで表示を変更できる構成によれば、機械操作に不慣れな薬剤師であっても直感的な操作が可能である。また、確認欄G24の表示は、「説明次回」および「説明毎回」は「AEPOP」に対応し、「次回」および「毎回」は「AOP」に対応しており、SOAP形式における指導計画の記載態様に合致している。すなわち、服薬管理システム1は、指導計画をSOAP形式に整理することができ、SOAP形式に慣れている薬剤師にとっても、使用しやすい。なお、確認欄G24には「AEPOP」「AOP」といったSOAP形式の用語が表示されてもよい。
【0053】
図8においては、一部の指導事項は背景が網掛けで表示され、他の指導事項の背景は無色で表示されている。背景が網掛けで表示されている指導事項は、指導計画において、指導することが決定されている指導事項である。本例では、前回の処方時に確認欄G24において「毎回」および「次回」確認すべきことが計画された指導事項が、今回指導すべき指導事項として網掛けで表示されている。なお、指導する指導事項の表示態様はこれに限られず、文字色、文字サイズ、文字の太さ、書体、背景色等が指導しない指導事項とは異なっていてもよい。指導する指導事項は、指導しない指導事項よりも強調表示されているとよい。指導する指導事項のみが表示され、指導しない指導事項は非表示となっていてもよい。
【0054】
フォロー欄G25は、処方端末10を操作することで内容を変更可能であり、例えばフォロー欄G25上をタップすることで、表示が切り替わる。表示は、フォロー欄G25をタップすることで、無表示、「3日後」、「10日後」がこの順に切り替わるようになっていてもよいし、プルダウンボックスが表示されてもよい。フォロー欄G25には、フォローを行う時期を複数回設定可能になっていてもよい。
【0055】
共有欄G27は、当該指導事項を患者端末20に表示させるか否かを表示する欄である。例えば共有欄G27上をタップすることで、共有と非共有とが切り替わる。また、共有欄G27を選択すると、さらに別のポップアップ画面が表示され、共有するタイミングを指定できてもよい。共有するタイミングは、例えば共有欄G27の表示を「共有」に切り替えた時点であってもよいし、指定する所定日時であってもよい。この構成によれば、処方端末10から処方薬および指導事項ごとに、患者端末20での共有の設定を簡便に行うことができる。
【0056】
図8は、処方端末10において患者端末20に表示させる内容を指定する指定画面G3の例である。指定画面G3では、表示させる内容ごとに、表示させるまでの経過日数、薬品名、表示データのタイプ、薬品の機序および副作用等が設定可能に表示されている。また、表示データのタイプには、患者端末20からの回答の入力を受け付けるものを含み、同図の例においては「確認」がこれに該当する。回答の入力を受け付けるタイプの表示データにおいて、選択入力を促すものは、「回答候補」の項目が合わせて格納されている。
図7では、処方日から29日経過後に、「アクトネル」という薬に関する指導事項として、画像、テキスト、および確認を内容の通り患者端末20に表示させることを示している。また、患者端末20に「服用した」又は「服用し忘れた」の選択肢を表示させることを示している。
【0057】
指定画面G3で指定される指導事項は、患者端末20のSNSなどのチャット画面上に表示されるとともに、患者端末20にプッシュ通知がなされてもよい。
【0058】
図9は、患者端末20に表示される画面G20の例である。画面G20には、お薬手帳の表示ボタン、処方箋送信ボタン、服用履歴表示ボタン、処方箋登録用2次元バーコード、残薬記録ボタン、OTC記録/管理ボタンなどが表示されている。また、画面左端部には、患者が医療機関受信時や医薬品等の購入時に伝えるべき注意事項がアイコンで表示されている注意事項欄G210が表示されている。注意事項欄G210によれば、注意事項がアイコンで明確に視認できるので、医療機関等に注意事項を伝達するのが容易である。注意事項欄G210に表示されるアイコンの種類は、患者端末20又は処方端末10から選択できる。また、服用歴テーブル511、薬テーブル512および患者テーブル513のいずれかに記憶されている情報に基づいて、該当するアイコンが表示されるようになっていてもよい。
【0059】
●処理フロー
[処方情報を患者端末に表示させる処理の流れ]
図10に示すように、まず、処方端末10に処方情報が入力され(S101)、服薬管理装置50に送信される。服薬管理装置50はこれを記憶部51に格納するとともに(S102)、処方情報を含む2次元バーコードを生成する(S103)。ついで、処方端末10がこの2次元バーコードを画面上に表示する(S104)。患者端末20で処方端末10の2次元バーコードを読み取り(S105)、処方情報の表示要求がなされると(S106)、服薬管理装置50は処方情報を患者の識別情報と紐づけて格納する(S107)。次いで、服薬管理装置50から患者端末20に処方情報が送信され、患者端末20に表示される(S108)。なお、ステップS107およびS108は順不同である。
【0060】
[処方端末から入力される指導事項を患者端末に表示させる処理の流れ]
図11に示すように、処方端末10に指導事項が入力される(S201)。この入力は、患者端末20に閲覧させる指導事項の選択、および閲覧させるタイミングの情報入力を含む。入力された指導事項は、服薬管理装置50に送信され、記憶部51に格納される(S202)。患者端末20から処方情報又は指導事項の表示要求がなされると(S203)、服薬管理装置50は処方情報と、当該処方情報に紐づけられた指導事項を合わせて送信し(S204)、患者端末20に表示する。また、指導事項ごとに設定された時点になると、指導事項を患者端末20から閲覧可能な状態にするとともに、患者端末20に通知を送信する(S205)。
【0061】
[患者の登録情報を処方端末に表示させる処理の流れ]
図12に示すように、まず、患者端末20において、登録情報の項目ごとに、処方端末10への公開可否情報が設定される(S301)。次いで、この公開可否設定を含む2次元バーコードが生成され(S302)、患者端末20がこれを表示する(S303)。処方端末10が2次元バーコードを読み取ると(S304)、処方端末10から、登録情報の表示要求が送信され(S305)、服薬管理装置50は、閲覧が許可された登録情報を処方端末10に送信する(S306)。
【0062】
[処方箋に応じて問診票が出力され、処方端末に送信される処理の流れ]
図13に示すように、患者端末20が処方箋を読み込み、服薬管理装置50に送信すると(S401)、服薬管理装置50は、問診表を患者端末20に表示する(S402)。なお、問診表の表示は、処方箋データの送信とは独立して行われてもよい。例えば、問診表は、患者端末20が処方薬を受け取る薬局を登録した時点で行われてもよい。患者端末20は、患者から問診表の入力を受け付ける(S403)。患者端末20から服薬管理装置50に問診表の回答結果が送信されると(S404)、処方箋の内容とともに問診の回答結果を処方端末10に送信する。
【0063】
本発明にかかる服薬管理システムによれば、患者の情報を正確かつ簡便に共有できる。
【符号の説明】
【0064】
1 服薬管理システム
10 処方端末
20 患者端末
30 第3端末
50 服薬管理装置
51 記憶部
511 服用歴テーブル
512 薬テーブル
513 患者テーブル
52 薬歴登録部
53 指導管理部
54 公開管理部
55 出力部
56 受信部