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特許7523127紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法及び製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法及び製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020192682
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081248
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】599113822
【氏名又は名称】株式会社アクロエッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】中宗 憲一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特許第4185939(JP,B2)
【文献】特開2014-149168(JP,A)
【文献】特開2009-085718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0127631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123880(US,A1)
【文献】米国特許第10598856(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
G01N 33/00 - G01N 33/46
B29C 35/00 - B29C 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第1紫外線不透過層と、紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第2紫外線不透過層と、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層の間に設けられ、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層との積層体における、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法であって、
前記紫外線硬化層に硬化用の紫外線が照射された前記積層体に蛍光検出用の紫外線を照射して前記光重合開始剤から放射された蛍光を検出する蛍光検出工程と、
前記蛍光検出工程で検出された蛍光に基づき、紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程とを含み、
前記蛍光検出工程において、前記積層体へ照射される蛍光検出用の紫外線は、前記紫外線硬化層への光路上に、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層が存在しない、方法。
【請求項2】
前記蛍光検出工程では、前記積層体の側面に蛍光検出用の紫外線を照射する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蛍光検出工程において、前記蛍光検出用の紫外線が照射される領域は、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層の少なくとも一方と、前記紫外線硬化層とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を、検出可能強度の上限値未満になるよう調整にする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記積層体における前記蛍光検出用の紫外線が照射される領域において、前記第1紫外線不透過層の面積と前記第2紫外線不透過層の面積との合計に対する前記紫外線硬化層の面積の割合を調整することにより、前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を調整する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
検出する蛍光の波長を調整することにより、前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を調整する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記紫外線硬化層の厚さが0.36mm未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1紫外線不透過層がスマートフォンのバックパネルであり、
前記第2紫外線不透過層がスマートフォンのフロントガラスであり、
前記紫外線硬化層が、前記フロントガラスと前記バックパネルとを接着する接着剤層である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により前記紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程を有する、製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法及び製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、コーティング剤や、隔壁形成材等として、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物が使用されている。紫外線硬化性組成物に紫外線を照射すると、光重合開始剤から発生したラジカルやカチオンにより光重合性化合物が重合して、硬化物が形成される。
【0003】
このような硬化物について硬化度等の状態を評価する技術として、特許文献1には、モノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と、光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の状態を推定する方法であって、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する照射ステップと、照射ステップにおいて照射される紫外線を受けて、光重合開始剤によって放射される蛍光を検出する検出ステップと、検出ステップにおいて検出される蛍光に基づいて、紫外線硬化樹脂の状態を推定する推定ステップとからなる、紫外線硬化樹脂の状態推定方法が開示されている。この方法は、紫外線照射に応じて紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤自体が当該紫外線硬化樹脂の状態(たとえば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を放射する現象に基づく方法であり、光重合開始剤によって放射される蛍光に基づいて、紫外線硬化樹脂(紫外線硬化性組成物)の状態を推定する。このため、蛍光成分を含むプローブのように特別な材料を添加することなく、紫外線硬化樹脂の状態を推定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4185939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スマートフォンの製造において、フロントガラスとバックパネルとを接合する際に、上記のような紫外線硬化性組成物が使用される場合がある。この場合、特許文献1の方法により紫外線硬化性組成物の硬化物の硬化状態を評価しようとすると、フロントガラスやバックパネルは紫外線を反射する特性を有するため、評価し難いという問題が生じる。
【0006】
なお、このような問題は、スマートフォンのフロントガラスとバックパネルとの間の硬化物に限らず、紫外線を反射や吸収する部材間に設けられた硬化物(紫外線硬化層)の硬化状態を評価する場合においても、同様に生じる。
【0007】
本発明は、紫外線を反射や吸収する部材間に設けられた紫外線硬化層の硬化状態を良好に評価することができる、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法、及び当該方法を用いた製品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第1紫外線不透過層及び第2紫外線不透過層と、第1紫外線不透過層及び第2紫外線不透過層の間に設けられた紫外線硬化層との積層体における紫外線硬化層の硬化状態を評価する場合、積層体へ照射する蛍光検出用の紫外線を、紫外線硬化層への光路上に第1紫外線不透過層及び第2紫外線不透過層が存在しないものとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第1紫外線不透過層と、紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第2紫外線不透過層と、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層の間に設けられ、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層との積層体における、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法であって、
前記紫外線硬化層に硬化用の紫外線が照射された前記積層体に蛍光検出用の紫外線を照射して前記光重合開始剤から放射された蛍光を検出する蛍光検出工程と、
前記蛍光検出工程で検出された蛍光に基づき、紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程とを含み、
前記蛍光検出工程において、前記積層体へ照射される蛍光検出用の紫外線は、前記紫外線硬化層への光路上に、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層が存在しない、方法。
【0010】
(2) 前記蛍光検出工程では、前記積層体の側面に蛍光検出用の紫外線を照射する、(1)に記載の方法。
【0011】
(3) 前記蛍光検出工程において、前記蛍光検出用の紫外線が照射される領域は、前記第1紫外線不透過層及び前記第2紫外線不透過層の少なくとも一方と、前記紫外線硬化層とを含む、(1)又は(2)に記載の方法。
【0012】
(4) 前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を、検出可能強度の上限値未満になるように調整する、(3)に記載の方法。
【0013】
(5) 前記積層体における前記蛍光検出用の紫外線が照射される領域において、前記第1紫外線不透過層の面積と前記第2紫外線不透過層の面積との合計に対する前記紫外線硬化層の面積の割合を調整することにより、前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を調整する、(4)に記載の方法。
【0014】
(6) 検出する蛍光の波長を調整することにより、前記蛍光検出工程で検出される蛍光の強度を調整する、(4)又は(5)に記載の方法。
【0015】
(7) 前記紫外線硬化層の厚さが0.36mm未満である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
(8) 前記第1紫外線不透過層がスマートフォンのバックパネルであり、
前記第2紫外線不透過層がスマートフォンのフロントガラスであり、
前記紫外線硬化層が、前記フロントガラスと前記バックパネルとを接着する接着剤層である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
(9) (1)~(8)のいずれか1つに記載の方法により前記紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程を有する、製品の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紫外線を反射や吸収する部材間に設けられた紫外線硬化層の硬化状態を良好に評価することができる、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法、及び当該方法を用いた製品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】積層体を示す模式図である。
図2】積層体を示す模式的側面図である。
図3】硬化状態を評価する方法を説明する図である。
図4】蛍光検出用の紫外線の照射領域を説明する図である。
図5】各層の蛍光強度の一例を示す模式図である。
図6】蛍光強度の一例を示す模式図である。
図7】蛍光強度の一例を示す模式図である。
図8】蛍光強度の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
<<紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法>>
本発明の紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法は、紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第1紫外線不透過層と、紫外線の少なくとも一部を吸収又は反射する第2紫外線不透過層と、第1紫外線不透過層及び第2紫外線不透過層の間に設けられ、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層との積層体における、紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法である。
本発明の紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法は、紫外線硬化層に硬化用の紫外線が照射された積層体に蛍光検出用の紫外線を照射して光重合開始剤から放射された蛍光を検出する蛍光検出工程と、蛍光検出工程で検出された蛍光に基づき、紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程とを含み、蛍光検出工程において、積層体へ照射される蛍光検出用の紫外線は、紫外線硬化層への光路上に、第1紫外線不透過層及び第2紫外線不透過層が存在しない。
【0022】
紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法について、図1図4を用いて説明する。図1は、積層体を示す模式図である。図2は、積層体を示す模式的側面図である。図3は、硬化状態を評価する方法を説明する図である。図4は、蛍光検出用の紫外線の照射領域を説明する図である。
【0023】
本発明の紫外線硬化層の硬化状態を評価する方法(以下「本発明の評価方法」とも記載する)は、図1及び図2に示す積層体1、すなわち、第1紫外線不透過層11と、第2紫外線不透過層12と、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の間に設けられた紫外線硬化層20との積層体1における、紫外線硬化層20の硬化状態を評価する。
【0024】
第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12は、紫外線の少なくとも一部を吸収、又は反射する部材である。第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12は、紫外線の少なくとも一部を吸収し且つ紫外線の少なくとも一部を反射する部材であってもよい。
【0025】
第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12は、例えば、スマートフォン、タブレットや、ノートパソコン等の電子機器の部材であり、具体例としては、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、有機発光ダイオード(OLED)パネル、カバーガラス、カバープラスチック等が挙げられる。
第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12は、組成、厚みの少なくとも一点において、同じでも異なっていてもよい。
【0026】
紫外線硬化層20は、紫外線硬化性組成物で形成された層である。なお、本明細書において、用語「紫外線硬化層」は、硬化用の紫外線が照射される前の紫外線硬化性組成物で形成された層、及び、硬化用の紫外線が照射されることにより硬化した紫外線硬化性組成物で形成された層のいずれも含む総称として使用する。
紫外線硬化性組成物は、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む。
【0027】
光重合開始剤は、紫外線を受けてラジカルを発生するラジカル重合開始剤でも、紫外線を受けてカチオンを発生するカチオン重合開始剤でもよい。なお、ラジカル重合開始剤は、アクリル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用され、カチオン重合開始剤は、エポキシ系やビニールエーテル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用される。
【0028】
ラジカル重合開始剤は、ラジカルの発生過程に応じて、水素引抜型および分子内開裂型に大別される。水素引抜型のラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びオルソベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。分子内開裂型のラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン、オキソベンゾイル安息香酸メチル(OBM)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド(BMS)、イソプロピルチオキサントン(IPTX)、ジエチルチオキサントン(DETX)、エチル4-(ジエチルアミノ)ベンゾエート(DAB)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-オン、ベンジルジメチルケタール(BDK)及び1,2αヒドロキシアルキルフェノン等が挙げられる。
カチオン重合開始剤としては、ジフェニルヨードニウム塩等が挙げられる。
【0029】
なお、本明細書において、「光重合開始剤」とは、光重合反応を開始させる能力が残存しているものに限らず、当初の光重合開始剤が光重合反応に寄与することによって変化したり光重合反応の対象となるモノマーやオリゴマーが周囲に存在しなかったりすることにより、もはや光重合反応の開始に寄与しない物質となったものをも含む意味で使用する。光重合開始反応に寄与した後の光重合開始剤は、多くの場合、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは2つまたはそれ以上の数の分子に分裂した状態で、ポリマーの末端に結合している。当初の光重合開始剤の分子が分裂した場合には、分裂後の分子のうちの少なくとも一部のものが蛍光放射に寄与すると考えられる。また、重合が進むにつれ粘性が向上することにより重合物(樹脂)の分子運動の運動性能が落ちてくる。そのため、蛍光発光が増大する。
【0030】
本発明においては、特許文献1と同様に、このような光重合開始剤が放射する、紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層20の硬化状態と相関のある観測可能な蛍光を、測定する。
【0031】
光重合性化合物は、モノマーやオリゴマーである。モノマーやオリゴマーは、紫外線の照射によって光重合開始剤が発生するラジカルやカチオンにより重合反応が生じる。モノマーやオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。
【0032】
紫外線硬化性組成物は、光重合開始剤及び光重合性化合物の他、従来の紫外線硬化性組成物に含まれる公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
このような紫外線硬化性組成物に紫外線を照射すると、光重合開始剤からラジカルやカチオンが発生する。そして、光重合開始剤から発生したラジカルやカチオンにより光重合性化合物が重合して、硬化物(紫外線硬化層)が形成される。
【0034】
なお、紫外線硬化性組成物は、紫外線硬化性の他、加熱により硬化する熱硬化性や、空気中の水分により硬化する湿気硬化性も有していてもよく、この場合、加熱や湿気によっても重合が進む。
【0035】
紫外線硬化層20の厚さは、例えば、0.50mm未満であり、0.40mm未満、0.36mm未満、0.20mm未満でもよい。
ここで、一般的な紫外線の照射領域について、その最小幅は、スポットビームの場合0.50mm以上、ラインビームの場合0.36mm以上である。本発明は、このような紫外線の最小幅よりも薄い紫外線硬化層20を有する積層体1における紫外線硬化層20の硬化状態も、良好に評価することができる。
【0036】
<硬化工程>
蛍光検出工程で用いる、紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30が照射された積層体1を、硬化工程で形成する。硬化工程では、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層20に、硬化用の紫外線30を照射する。
具体的には、例えば、図3(a)に示すように、第1紫外線不透過層11上に紫外線硬化性組成物を塗布等して紫外線硬化層20を設け、硬化用の紫外線30を、紫外線硬化層20の全面に照射する。その後、図3(b)に示すように、第2紫外線不透過層12を積層して、積層体1を形成する。
【0037】
なお、紫外線以外の要因、例えば周囲の湿気等により、硬化反応が進むように設計された紫外線硬化性組成物(遅延硬化樹脂)を用いる場合、紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30を照射すると紫外線硬化性組成物の重合反応が開始し、紫外線30の照射終了後も、重合反応が続く。このため、紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30を照射しつづけなくても、硬化物が形成される。
【0038】
また、図3においては、塗布等する段階で第1紫外線不透過層11上の全面に紫外線硬化層20を設けたが、これに限られず、紫外線硬化層20は第1紫外線不透過層11上の一部に例えば等間隔で塗布等して設け、第2紫外線不透過層12を積層する際に、第2紫外線不透過層12を押圧することで、紫外線硬化層20を第1紫外線不透過層11上の全面に設けるようにしてもよい。
【0039】
また、図3においては、第2紫外線不透過層12を積層する前に、第2紫外線不透過層12を積層する側の紫外線硬化層20の表面に硬化用の紫外線30を照射したが、第1紫外線不透過層11又は第2紫外線不透過層12が硬化用の紫外線30を一部透過し紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30を照射できる場合は、第1紫外線不透過層11と紫外線硬化層20と第2紫外線不透過層12との積層体1を形成した後に、第1紫外線不透過層11又は第2紫外線不透過層12側から紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30を照射してもよい。
【0040】
また、紫外線硬化性組成物が熱硬化性や湿気硬化性を有する場合は、積層体1を所定温度で加熱したり、積層体1を所定湿度の環境下に置くことにより、硬化を進めるようにしてもよい。
【0041】
なお、硬化工程は、主には上述のような意図的に行う硬化であるが、保存期間中の意図しない硬化でもよい。
【0042】
<蛍光検出工程>
蛍光検出工程では、紫外線硬化層20に硬化用の紫外線30が照射された積層体1に、蛍光検出用の紫外線40を照射して、光重合開始剤から放射された蛍光を検出する。蛍光検出用の紫外線40の照射量は、一般的に、硬化用の紫外線30の硬化量と比べて、微量である。
【0043】
そして、本発明においては、積層体1へ照射される蛍光検出用の紫外線40は、紫外線硬化層20への光路上に、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12が存在しないように照射する。
例えば、図3(c)に示すように、蛍光検出用の紫外線40を、積層体1の側面に照射する。本実施形態では、蛍光検出用の紫外線40を、積層体1の積層方向に例えば略垂直な方向から、積層体1の側面に照射する。照射方向は積層方向に略垂直でなくてもよいが、照射面積を最小化することで、後述の第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12が放出する蛍光による問題を抑制する観点では、積層方向に略垂直(典型的には80°~100°、好ましくは85°~95°)であることが好ましい。
【0044】
従来、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12と、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の間に設けられた紫外線硬化層20との積層体1における紫外線硬化層20の硬化状態は評価されていなかったが、このように、積層体1へ照射される蛍光検出用の紫外線40を、紫外線硬化層20への光路上に、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12が存在しないように照射することにより、紫外線硬化層20の光重合開始剤に蛍光検出用の紫外線40が良好に照射され、紫外線硬化層20の硬化状態を良好に評価することができる。
【0045】
なお、図3(c)においては、積層方向が水平方向になるようにした積層体1に、蛍光検出用の紫外線40を照射する態様を示したが、蛍光検出用の紫外線40を照射する際の積層体1の方向はこれに限られない。例えば、積層体1を水平に(積層方向が鉛直方向になるように)置いた状態で、蛍光検出用の紫外線40を、積層体1の側面に照射してもよい。
【0046】
一方、積層体1の第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12が設けられた側(すなわち、広い平面側)から蛍光検出用の紫外線40を照射すると、蛍光検出用の紫外線40は、少なくとも一部が第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12に反射又は吸収される。このため、紫外線硬化層20の光重合開始剤は蛍光検出用の紫外線40が照射され難くなり、紫外線硬化層20の硬化状態が評価し難くなる。
【0047】
蛍光検出工程で照射する蛍光検出用の紫外線40の照射箇所は、1箇所でもよく、複数箇所であってもよい。複数箇所に蛍光検出用の紫外線40を照射することにより、評価精度を高めることができる。
複数箇所に蛍光検出用の紫外線40を照射する態様としては、例えば、積層体1の異なる側面への照射、及び、積層体1の同じ側面の複数箇所への照射、並びにこれらの組み合わせの照射が挙げられる。
【0048】
<評価工程>
評価工程では、蛍光検出工程で検出された蛍光に基づき、紫外線硬化層20の硬化状態を評価する。
特許文献1に記載されるように、蛍光検出用の紫外線40を照射することにより光重合開始剤から放出される蛍光は、光重合開始剤及び光重合性化合物を含む紫外線硬化性組成物で形成された紫外線硬化層20の硬化状態と相関がある。このため、蛍光検出工程で検出された蛍光に基づき、紫外線硬化層20の硬化状態を評価することができることは、公知である。
【0049】
例えば、検出された蛍光強度(蛍光量)に基づき、紫外線硬化層20の硬化状態を評価する。例えば、予め、第1紫外線不透過層11と第2紫外線不透過層12との接合強度等の、紫外線硬化層20の硬化状態と、蛍光強度との相関性を求めておき、蛍光検出工程で検出された蛍光強度を当該相関性に照会することで、紫外線硬化層20の硬化状態が評価できる。
【0050】
ここで、第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12としての、スマートフォンやタブレットのフロントガラスやバックパネルを接合する場合等、積層体1が有する紫外線硬化層20(接着剤層)が0.50mm未満や0.36mm未満の薄い場合がある。
【0051】
このような薄膜の紫外線硬化層20を有する積層体1における紫外線硬化層20の硬化状態を評価する場合、検出用の紫外線40が照射される領域(以下、「照射領域」とも記載する)は、最小となるようにした場合であっても、紫外線硬化層20の厚さ方向において、紫外線硬化層20よりも大きくなる。一般的な紫外線の照射領域においてその最小幅はスポットビームの場合0.50mm以上、ラインビームの場合0.36mm以上であるためである。
照射領域50が紫外線硬化層20よりも大きい場合、蛍光検出用の紫外線40が照射される領域(照射領域50)は、図4に示すように、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の少なくとも一方と、紫外線硬化層20とを含む。
【0052】
また、検出用の紫外線40の照射領域50の大きさが、紫外線硬化層20の厚さよりも小さい場合であっても、照射領域50を第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12側へずらすと、照射領域50には、紫外線硬化層20の他に、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の少なくとも一方が含まれる場合がある。
【0053】
蛍光検出用の紫外線40が照射される領域(照射領域50)が、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の少なくとも一方と、紫外線硬化層20とを含む場合、蛍光検出工程で検出される蛍光は、第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12の影響を受ける場合がある。
このような影響を受ける場合において硬化状態を評価する方法について、図5図8を用いて以下に詳述する。図5は、各層の蛍光強度の一例を示す模式図である。図6図8は、蛍光強度の一例を示す模式図である。
【0054】
図5において、左から順に、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12としての基板A及び基板B、硬化無し(すなわち、硬化用の紫外線30の照射無し)の紫外線硬化層20、硬化後(すなわち、硬化用の紫外線30の照射後)の紫外線硬化層20について、それぞれ蛍光強度が示されている。
【0055】
図5の基板A及び基板Bに示すように、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12は、材質等の種類によって大きく蛍光強度が異なる場合がある。
また、紫外線硬化層20は、硬化の前後(すなわち、紫外線の照射無しの状態と、紫外線の照射後)で、蛍光強度が変化する。なお、第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12が蛍光検出用の紫外線40の照射により放出する蛍光は、図6(a)及び(b)、図7(a)及び(b)や、図8(a)及び(b)に示すように、紫外線硬化層20の硬化の前後で変化しない。
【0056】
図6は、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12としてそれぞれ基板Aを用いた例であり、2枚の基板Aの間に紫外線硬化層20が設けられている積層体1について、側面(積層方向に垂直な方向)から蛍光検出用の紫外線40を照射することにより検出される蛍光の強度を示す。
図7は、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12としてそれぞれ基板Bを用いた例であり、2枚の基板Bの間に紫外線硬化層20が設けられている積層体1について、側面(積層方向に垂直な方向)から蛍光検出用の紫外線40を照射することにより検出される蛍光の強度を示す。
図8は、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12としてそれぞれ基板Cを用いた例であり、2枚の基板Cの間に紫外線硬化層20が設けられている積層体1について、側面(積層方向に垂直な方向)から蛍光検出用の紫外線40を照射することにより検出される蛍光の強度を示す。基板Cは、基板Bよりもさらに蛍光強度が高い基板である。
【0057】
図6(a)、図7(a)及び図8(a)は、硬化無し(紫外線の照射無し)の紫外線硬化層20およびの蛍光強度を示し、図6(b)、図7(b)及び図8(b)は、紫外線硬化層20の硬化後(硬化用の紫外線30の照射後)の蛍光強度を示す。
また、図6図8のグラフは、円形の照射領域50において、横軸を積層体の積層方向に垂直な方向の位置(Position[nm])とし、縦軸を蛍光強度(Fluorescence Intensity[a.u.])としたグラフである。
【0058】
積層体1の照射領域50に蛍光検出用の紫外線40を照射すると、蛍光が検出される。例えば、予め、基板A同士や基板B同士の接合強度等の、紫外線硬化層20の硬化状態と、蛍光強度との相関性を求めておき、図6(b)及び図7(b)に示す紫外線硬化層20の硬化後に検出された蛍光強度を当該相関性に照会することで、紫外線硬化層20の硬化状態が評価できる。
【0059】
硬化状態を正確に評価するためには、検出される蛍光の強度が、検出可能強度の上限値未満になるように調整する。
一方、図8(b)のように、検出される蛍光の強度が、検出可能強度の上限値以上の場合は、硬化状態を正確に評価できない。
【0060】
蛍光検出用の紫外線40が照射される領域(照射領域50)が、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12の少なくとも一方と、紫外線硬化層20とを含む場合、検出される蛍光の強度は、第1紫外線不透過層11、第2紫外線不透過層12及び紫外線硬化層20それぞれから放出された蛍光強度の合算値である。
このため、硬化状態をより正確に評価するためには、基板Aや基板B等の第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が低くなるように調整することが好ましい。例えば、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が、紫外線硬化層20から放出される蛍光の強度よりも低くなるように調整することが好ましい。
【0061】
例えば、照射領域50において、第1紫外線不透過層11の面積と第2紫外線不透過層12の面積との合計に対する紫外線硬化層20の面積の割合を調整することにより、検出される蛍光の強度を調整することができる。
面積の割合の調整は、例えば、照射領域50の形状を変更したり、照射領域50の位置を変更する。例えば、ラインビームを用いて照射領域50の形状を矩形にする。
なお、第1紫外線不透過層11の蛍光強度が高く第2紫外線不透過層12の蛍光強度が低い場合は、第1紫外線不透過層11の面積と第2紫外線不透過層12の面積との合計は変えずに、第1紫外線不透過層11の面積の割合を減らすことで、検出される蛍光の強度を減らすことができる。
【0062】
また、照射領域50において、検出する蛍光の波長を調整することにより、検出される蛍光の強度を調整することができる。
検出する蛍光の波長の調整は、例えば、第1紫外線不透過層11や第2紫外線不透過層12から放出される蛍光強度が小さくなる波長(紫外線硬化層20から放出される蛍光強度が最大となる波長とは異なり得る)を選択することにより行う。このことは、紫外線硬化層20にのみ蛍光検出用の紫外線を照射可能な場合に、紫外線硬化層20から放出される蛍光強度が最大になる波長を選択するのが一般的であることと対照的である。
【0063】
なお、図6(b)や図7(b)のように、紫外線硬化層20の硬化後(すなわち、硬化用の紫外線30の照射後)だけでなく、図6(a)や図7(a)のように、硬化無し(紫外線の照射無し)の紫外線硬化層20についても積層体1に蛍光検出用の紫外線40を照射して検出される蛍光の強度を測定することで、紫外線硬化層20の硬化前後での変化量が求められる。この蛍光強度の変化量を用いて、紫外線硬化層20の硬化状態を評価することもできる。例えば、予め、接合強度等の紫外線硬化層20の硬化状態と、蛍光強度の変化量との相関性を求めておき、求められた変化量を当該相関性に照会することで、紫外線硬化層20の硬化状態を評価することができる。
この場合も、硬化状態をより正確に評価するためには、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が低くなるように調整することが好ましく、例えば、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が、紫外線硬化層20から放出される蛍光の強度よりも低くなるように調整することが好ましい。
具体的には、例えば、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が低く、紫外線硬化層20の変化量が31%である図6のほうが、第1紫外線不透過層11及び第2紫外線不透過層12から放出される蛍光の強度が高く、紫外線硬化層20の変化量が9%である図7よりも、より細かく硬化状態を評価することができる。
【0064】
<<製品の製造方法>>
本発明の製品の製造方法は、上述した硬化状態を評価する方法により紫外線硬化層の硬化状態を評価する評価工程を有する。
例えば、評価工程において、蛍光強度が所定値以上の場合を合格とし、所定値未満の場合を不合格とし、不合格の場合に製造ラインから除去することにより、不合格品を評価工程以降の製造工程に供する無駄を省くことができる。
【0065】
製造される製品としては、例えば、スマートフォン、タブレットや、ノートパソコン等の電子機器が挙げられる。
【符号の説明】
【0066】
1 積層体
11 第1紫外線不透過層
12 第2紫外線不透過層
20 紫外線硬化層
30 硬化用の紫外線
40 蛍光検出用の紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8