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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】落下防止具
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/36 20060101AFI20240719BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240719BHJP
【FI】
B60N2/36
B60N2/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021175251
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2023064850
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591162136
【氏名又は名称】サンショウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩章
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046868(JP,A)
【文献】特開平11-276310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300161(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0061152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/36
B60N 2/90
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに取り付けられ、物品の落下を防止する落下防止具であって、
前記シートの座部を覆う第1カバー体と、
前記第1カバー体に設けられ、当該第1カバー体を覆う第2カバー体とを備え、
不使用時には、着座者が前記第2カバー体上に着座して乗車可能であり、
使用時には、前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に物品を収納可能であり、
前記第2カバー体は、前端部が前記第1カバー体に取り付けられ、かつ、左右の側端部のうち運転席側とは反対側の側端部のみが前記第1カバー体に連結部材を介して取り付けられ、
前記連結部材は、不使用時には前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に挟まれ、使用時には前記第2カバー体とともに持ち上げられる
ことを特徴とする落下防止具。
【請求項2】
車両のシートに取り付けられ、物品の落下を防止する落下防止具であって、
前記シートの座部を覆う第1カバー体と、
前記第1カバー体に設けられ、当該第1カバー体を覆う第2カバー体と、
前記第2カバー体に設けられ、前記シートの被係合部と係合可能な係合体とを備え、
不使用時には、着座者が前記第2カバー体上に着座して乗車可能であり、
使用時には、前記被係合部と前記係合体との係合によって前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に収納部が形成され、当該収納部に物品を収納可能であり、
前記第2カバー体は、前端部が前記第1カバー体に取り付けられ、かつ、左右の側端部のうち運転席側とは反対側の側端部のみが前記第1カバー体に連結部材を介して取り付けられ、
前記連結部材は、不使用時には前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に挟まれ、使用時には前記第2カバー体とともに持ち上げられる
ことを特徴とする落下防止具。
【請求項3】
使用時には、被係合部と係合体との係合によって第2カバー体が前下りに傾斜した持上状態に維持される
ことを特徴とする請求項2記載の落下防止具。
【請求項4】
使用時には、車両の外部から見えないように物品を収納可能である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の落下防止具。
【請求項5】
第1カバー体は、車両のシートの座部の上面を覆う上面カバー部を有し、
第2カバー体は、前記上面カバー部と同じ大きさに形成されている
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一記載の落下防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の落下を適切に防止できる落下防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された落下防止機構部を備えた車両用シートが知られている。
【0003】
この従来の落下防止機構部は、シートクッション(座部)の周縁部に沿ってコ字状に形成されて両端部の固定部がシートクッションに固定されると共に、固定部からシートクッションよりも上方に向かって延設される弾性変形可能なフレーム部材と、このフレーム部材とシートクッションとに固定され、フレーム部材がシートクッションよりも上方に位置する状態で、フレーム部材とシートクッションとの隙間を覆う被覆部材とを有すると共に、フレーム部材を弾性変形させた状態でフレーム部材をシートクッションの上面よりも下側に保持可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-88347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものでは、例えば比較的大き目の荷物等の物品を車両のシートの座部上に載置した場合において、ブレーキをかけたときに、その反動で物品が落下防止機構部を乗り越えて車両の床部(車両フロア)に落下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、物品の落下を適切に防止できる落下防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る落下防止具は、車両のシートに取り付けられ、物品の落下を防止する落下防止具であって、前記シートの座部を覆う第1カバー体と、前記第1カバー体に設けられ、当該第1カバー体を覆う第2カバー体とを備え、不使用時には、着座者が前記第2カバー体上に着座して乗車可能であり、使用時には、前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に物品を収納可能であるものである。
【0008】
また、本発明に係る落下防止具は、車両のシートに取り付けられ、物品の落下を防止する落下防止具であって、前記シートの座部を覆う第1カバー体と、前記第1カバー体に設けられ、当該第1カバー体を覆う第2カバー体と、前記第2カバー体に設けられ、前記シートの被係合部と係合可能な係合体とを備え、不使用時には、着座者が前記第2カバー体上に着座して乗車可能であり、使用時には、前記被係合部と前記係合体との係合によって前記第1カバー体と前記第2カバー体との間に収納部が形成され、当該収納部に物品を収納可能であるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物品の落下を適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る落下防止具及びこれを装着する車両のシート(車両用シート)を示す斜視図である。
図2】同上落下防止具の第2カバー体を持ち上げた状態の斜視図である。
図3】同上落下防止具の不使用時(未使用時)の斜視図である。
図4】同上落下防止具の使用時の斜視図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る落下防止具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は車両である自動車のシート(座席)で、2はそのシート1に後付けにより着脱可能に取り付けられるシートカバーを兼ねた落下防止具である。
【0013】
そして、その落下防止具(後付け可能なシートカバー兼落下防止具)2は、シート1上に載置された物品Aが当該シート1上から自動車の床部に落下することを防止するためのものである。なお、物品Aは、例えばカバン、スマートフォン、パソコン、或いは買い物袋等であり、1人乗車時に運転者が空いた助手席に置く荷物等である。
【0014】
シート1は、図1に示すように、自動車を運転する運転者が着座する運転席以外の座席、すなわち例えば前部左側の助手席である。
【0015】
シート1は、運転者の隣に乗る着座者(乗員)Bの臀部を支持する座部(シートクッション)5と、この座部5の後端部に設けられ、着座者Bの背中を支持する背凭れ部(シートバック)6と、この背凭れ部6の上端部に設けられ、着座者Bの頭部を支持するヘッドレスト部7とを備えている。なお、シート1は、車体の床部(車両フロア)に設けられたシート支持部によって前後位置調整可能に支持されている。
【0016】
落下防止具2は、図1及び図2に示すように、例えば可撓性を有する素材(例えば織物、編み物、不織布等の布製の素材や、天然皮革、合成皮革、人工皮革等の皮革製の素材)で構成されたものである。
【0017】
落下防止具2は、シート1の座部5に着脱可能に取り付けられ、シート1の座部5の上面、前面、後面、左側面及び右側面を覆う第1カバー体11と、この第1カバー体11に設けられ、第1カバー体11上に重なった状態(重なり状態)で当該第1カバー体11の上面を覆うシート状の第2カバー体12と、この第2カバー体12に設けられ、シート1の被係合部であるヘッドレスト部7と係合可能な紐状の係合体13とを備えている。
【0018】
そして、落下防止具2の不使用時には、着座者Bが重なり状態の第2カバー体12上に着座して乗車可能である(図3参照)。すなわち例えば、この不使用時においては、着座者Bは、上下に互いに重なり合った第1カバー体11及び第2カバー体12を介して(すなわち2重のカバーを介して)シート1の座部5で臀部が支持されるように、第2カバー体12上に着座して運転者の隣に乗車可能である。
【0019】
また、落下防止具2の使用時には、第1カバー体11と第2カバー体12との間に物品Aを当該物品Aが落下しないように収納可能である(図4参照)。すなわち例えば、この使用時においては、シート1のヘッドレスト部7と係合体13との係合(例えば引掛り係合)によって第2カバー体12が第1カバー体11から上方に持ち上げられて前下りに傾斜した持上状態(前低後高の傾斜状態)に維持されることで、これら第1カバー体11と第2カバー体12との間に所定の大きさの収納部14が形成され、当該収納部14に物品Aをその物品Aが少なくとも前方に移動して落下しないように運転席側から収納可能である。
【0020】
つまり、このとき、運転席に座った運転者は、物品Aが第1カバー体11の上面上から落下せずかつ自動車の外部から見えないように、第1カバー体11及び第2カバー体12間の収納部14内に物品Aを収納可能である。
【0021】
ここで、第1カバー体11は、自動車のシート1における座部5の上面を覆うシート状の上面カバー部21と、座部5の前面を覆うシート状の前面カバー部22と、座部5の後面を覆うシート状の後面カバー部23と、座部5の左側面を覆うシート状の左側面カバー部24と、座部5の右側面を覆うシート状の右側面カバー部25とを有している。
【0022】
第2カバー体12は、例えば第1カバー体11の上面カバー部21と同じ(略同じを含む)大きさのシート状のカバー部材で構成されたもので、上面カバー部21と重なって当該上面カバー部21の全体(略全体を含む)を覆う重なり状態と、上面カバー部21から後側が上方に持ち上げられた前下り傾斜状の持上状態とになる。つまり、第2カバー体12は、不使用時には重なり状態となり、使用時には持上状態となる。
【0023】
第2カバー体12は、前端部が第1カバー体11の上面カバー部21の前端部に取り付けられ、かつ、左右の側端部のうち運転席側とは反対側の側端部である左側端部(ドア側である外側の側端部)のみがそれに対応する第1カバー体11の上面カバー部21の左側端部にシート状の連結部材(折畳及び展開可能なマチ部材)31を介して取り付けられている。
【0024】
それゆえ、第2カバー体12の持上状態時(落下防止具2の使用時)において、収納部14の左側面は展開状態の連結部材31で閉鎖されているが、収納部14の右側面は開口している。つまり、収納部14は、右側方(運転席側)に向かって開口する側面開口32と、後方(背凭れ部側)に向かって開口する後面開口33とを有している。
【0025】
そして、運転者は、物品出し入れ用の側面開口32を介して物品Aを収納部14内に対して出し入れ可能である。また、その側面開口32から収納部14に収納されて上面カバー部21上に載置された物品Aは、持上状態の第2カバー体12との当接により前方への移動が規制され、かつ、展開状態の連結部材31との当接により左側方への移動が規制される。つまり、収納部14に収納された物品Aは、前方部及び上方部が持上状態の第2カバー体12で覆われかつ左側方部が展開状態の連結部材31で覆われている。
【0026】
このため、収納部14内の物品Aは、第1カバー体11の上面カバー部21上から床部に向かって落下しない。換言すると、収納部14内の物品Aは、ブレーキ時等においてその反動を受けてもシート1の座部5上から自動車の床部に落下するようなことがない。
【0027】
連結部材31は、例えば折畳可能な三角形状のシート状部材からなるもので、一方の端部が第1カバー体11の上面カバー部21の左側端部に取り付けられ、かつ、他方の端部が第2カバー体12の左側端部に取り付けられている。
【0028】
そして、連結部材31は、不使用時には両カバー体11,12間に挟まれて折畳状態となり、使用時には第2カバー体12とともに持ち上げられて展開状態となり、この展開状態の連結部材31で収納部14の左側面が閉鎖される。
【0029】
係合体13は、例えば1本の細長い紐状部材からなるもので、一方の端部が第2カバー体12の後端部の左側に取り付けられ、かつ、他方の端部が第2カバー体12の後端部の右側に取り付けられている。そして、係合体13は、不使用時には両カバー体11,12間に挟まれて収納され、使用時にはシート1の上側に位置するヘッドレスト部7に係脱可能に引っ掛けられる。なお、係合体13は、例えば2本の紐状部材で構成してもよく、また、第2カバー体12の後端部に対して着脱可能な構成として使用時にのみ第2カバー体12の後端部に取り付けるようにしてもよい。
【0030】
次に、落下防止具2の作用等を説明する。
【0031】
図3に示すように、落下防止具2の不使用時には、着座者Bは、互いに重なり合った2重の両カバー体11,12を介してシート1の座部5で臀部が支持されるように、第2カバー体12上に着座して運転者の隣に乗車できる。
【0032】
他方、図4に示すように、落下防止具2の使用時には、運転者(図示せず)は、まず、係合体13をシート1のヘッドレスト部7に引っ掛ける。
【0033】
すると、その引掛り係合により、第2カバー体12が連結部材31とともに上方に持ち上げられて前下り傾斜状の持上状態に維持され、その結果、第1カバー体11と第2カバー体12との間に、所定の大きさの収納部14が形成される。
【0034】
それゆえ、運転席に座った運転者は、第2カバー体12及び連結部材31で覆い隠されて自動車の外部から見えないように、カバン等の物品Aを側面開口32から収納部14内に収納できる。
【0035】
また、この状態でブレーキをかけたとしても、収納部14内の物品Aは、持上状態の第2カバー体12との当接により前方への移動が規制されるため、第1カバー体11の上面カバー部21上から床部に落下するようなことがない。
【0036】
したがって、このような落下防止具2によれば、例えば比較的大き目の荷物や比較的重い荷物等の物品Aであっても、ブレーキ時にその反動でシート1上から床部に落下することがなく、物品Aの落下を適切に防止できる。
【0037】
また、不使用時には着座者Bが第2カバー体12上に着座して乗車できるため、落下防止具2が邪魔になる不具合を回避できる。
【0038】
さらに、使用時に第2カバー体12を前下り傾斜状の持上状態に維持する係合体13を備えるため、その係合体13をヘッドレスト部7に引っ掛けるだけで、所定の大きさの収納部14を容易に形成でき、しかも物品Aの保持強度を向上させることができる。
【0039】
また、収納部14に収納した物品Aは、第2カバー体12及び連結部材31で覆われて自動車の外部からはほとんど見えないため、盗難防止を図ることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、落下防止具の第1カバー体は、シートの座部のみを覆うものであるが、これには限定されず、例えばシートの座部及び背凭れ部の両方を覆うようにしてもよい。
【0041】
また、例えば不使用時に第2カバー体が第1カバー体に対して位置ずれしないように、紐や面ファスナー等の固定手段を用いて不使用時に第2カバー体を第1カバー体に解除可能に固定するようにしてもよい。
【0042】
さらに、例えば連結部材(マチ部材)を左右両側にそれぞれ設けることで収納部の左右両側面を閉鎖して、収納部内の物品が自動車の外部から完全に見えない構成としてもよい。
【0043】
また、例えば紐や面ファスナー等の固定手段を用いて第1カバー体を車両のシートの座部に固定してもよい。
【0044】
さらに、第1カバー体は、車両のシートの座部のうち少なくとも上面を覆うものであればよく、例えば第2カバー体と同じ大きさに形成されたシート状のカバー部材のみからなるものでもよい。
【0045】
また、例えば第2カバー体が第1カバー体に着脱可能に設けられた構成や、係合体が第2カバー体に着脱可能に設けられた構成等でもよく、例えば係合体を弾性変形可能な部材で構成してもよい。
【0046】
さらに、係合体は、落下防止具の不使用時にはシートの下側の被係合部との係合により第2カバー体を第1カバー体の上面と重なる重なり状態に維持し、かつ、落下防止具の使用時にはシートの上側の被係合部との係合により第2カバー体を第1カバー体の上面から前下り傾斜状に持ち上げられた持上状態に維持するようにしてもよい。
【0047】
また、シートと係合可能な係合体は必ずしも必要なものではなく、例えば図5に示すように、落下防止具2は、係合体を有しない構成でもよく、この構成であっても物品Aの落下防止や盗難防止等を図ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 シート
2 落下防止具
5 座部
7 被係合部であるヘッドレスト部
11 第1カバー体
12 第2カバー体
13 係合体
14 収納部
21 上面カバー部
31 連結部材
A 物品
B 着座者
図1
図2
図3
図4
図5