(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】放射線画像化ユニット及び放射線検出器モジュール
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240719BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B5/055 390
G01T1/161 C
(21)【出願番号】P 2021548937
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035817
(87)【国際公開番号】W WO2021060286
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-05
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エムディ シャハダト ホサイン アクラム
(72)【発明者】
【氏名】小畠 隆行
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰賀
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136152(JP,A)
【文献】特開2006-280929(JP,A)
【文献】特表2008-525161(JP,A)
【文献】特開2013-228226(JP,A)
【文献】特開2012-095819(JP,A)
【文献】特開2018-015091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、
個々の前記放射線検出器モジュールは、
放射線検出器と、
所定の位置に開孔を有し、前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージと、
前記シールドケージ内で前記放射線検出器に電気的に接続されていると共に、前記シールドケージ内から前記開孔を介して前記ボアの外側に延びる伝送ケーブルと、
前記シールドケージとは電気的に絶縁され、かつ前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするケーブル用シールドと、
を備えたことを特徴とする放射線画像化ユニット。
【請求項2】
前記複数の放射線検出器モジュールが、互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項3】
誘電体材料で構成される誘電部材を放射線画像化ユニット本体内に備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項4】
前記伝送ケーブルは、データ信号を伝送するデータ伝送ケーブルを少なくとも有し、前記シールドケージ内から、前記開孔を通って、当該データ伝送ケーブルで伝送されるデータ信号と前記MRIシステムの磁場強度との干渉を回避し得る第1の位置を越えて前記ボアの外側へ延びており、
前記ケーブル用シールドは、前記伝送ケーブルにおける前記第1の位置から前記開孔側に近付く第2の位置までの区間を少なくともシールドする、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項5】
MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線画像化ユニットを複数個で構成する放射線検出器モジュールであって、
放射線検出器と、
所定の位置に開孔を有し、前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージと、
前記シールドケージ内で前記放射線検出器に電気的に接続されていると共に、前記シールドケージ内から前記開孔を介して前記MRIシステムのボアの外側に延びる伝送ケーブルと、
前記シールドケージとは電気的に絶縁され、かつ前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするケーブル用シールドと、
を備えたことを特徴とする放射線検出器モジュール。
【請求項6】
前記シールドケージは、連続的につながる導電シート、メッシュ構造の導電シート、及びスリットの設けられた導電シートのうちの少なくとも1つの導電シートを材料に用いて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項7】
前記シールドケージにおける前記開孔の外縁部分に接続されていると共に、前記ケーブル用シールドとは非接触な状態で、前記ケーブル用シールドの内側又は外側から前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするシールドパイプ、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項8】
シールドパイプにおける前記シールドケージの端部から外側に突出した部位と前記ケーブル用シールドの少なくとも一部とをこれらの外周側からまとめて覆う拡張用シールド、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項9】
前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボアの周方向に沿って互いに周方向ギャップを空けつつ環状に配置され、
前記環状に配置された複数の放射線検出器モジュールの外側又は内側に、核磁気共鳴画像化のための送信用コイルが配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項10】
前記環状に配置された複数の放射線検出器モジュールで構成される放射線画像化ユニット本体の外周側の周方向ギャップは、前記放射線画像化ユニット本体の内周側の周方向ギャップよりも広く、
前記放射線画像化ユニット本体は、画像化領域の形状に倣った形状で構成されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項11】
前記放射線検出器モジュールどうしの間に介在された分離回路、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項12】
前記誘電部材は、前記放射線画像化ユニット本体と画像化領域との間に介在されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項13】
前記複数の放射線検出器モジュールそれぞれは、前記MRIシステムのボアの軸方向に沿って軸方向ギャップを空けつつ複数の分割モジュールに分割された分割構造を有し、
前記複数の分割モジュールは、それぞれシールドされていると共に、ケーブル通過孔が設けられており、
前記伝送ケーブルは、前記ケーブル通過孔を介して配線されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項14】
前記複数の放射線検出器モジュールの所定部位に対するシールドを一体的に行う追加のシールド構造を備え、
前記追加のシールド構造は、前記複数のシールドゲージそれぞれの前記開孔を少なくとも含む部位を、一体的に包囲するように形成された導電シート、及び/又は、前記環状に構成される放射線画像化ユニット本体の軸方向における少なくとも前記開孔と画像化領域との間の位置で、かつ前記放射線画像化ユニット本体の内周側で、その径方向に沿って広がるシールド板を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項15】
前記周方向ギャップを空けつつ前記複数の放射線検出器モジュールを環状に配置して構成される放射線画像化ユニット本体は、前記周方向ギャップを超える幅の間隙を周方向の所定の区間に設けた部分リング構造を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項16】
MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線検出器をそれぞれ備えた複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、
前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボア内で画像化領域を囲うようにそれぞれ配列されていることによって放射線画像化ユニット本体を構成し、
前記放射線画像化ユニット本体は、前記画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる開口部を有し、
前記複数の放射線検出器モジュールどうしは、各々の配列方向に沿って配列方向ギャップを空けつつ間欠的に配置されており、
前記複数の放射線検出器モジュールどうしの間には、分離回路が介在されている、
ことを特徴とす
る放射線画像化ユニット。
【請求項17】
前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージを備え、
前記放射線画像化ユニット本体は、前記配列方向ギャップを超える幅の間隙を、前記配列方向に沿った所定の区間に1箇所以上設けた部分リング構造を有し、
前記シールドケージは、個々の前記放射線検出器モジュール単位で放射線検出器をシールドする、又は、前記放射線画像化ユニット本体内の全ての放射線検出器を一体的にシールドする、又は、前記間隙が2箇所以上設けられている場合に前記2箇所以上の間隙によって前記放射線画像化ユニット本体から複数個に分割された分割ユニット群の単位で前記放射線検出器をシールドする、
ことを特徴とする請求項
16に記載の放射線画像化ユニット。
【請求項18】
MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線検出器をそれぞれ備えた複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、
前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボア内で画像化領域を囲うようにそれぞれ配列されていることによって放射線画像化ユニット本体を構成し、
前記放射線画像化ユニット本体は、前記画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる開口部を有し、
前記複数の放射線検出器モジュールは、人体の胸部に対応する一対の胸部用画像化領域を各々囲うように配列されていることによって一対の胸部包囲用モジュール群を含む放射線画像化ユニット本体を構成し、
前記一対の胸部包囲用モジュール群それぞれは、個々の前記胸部用画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる胸部用開口部を有する、
ことを特徴とす
る放射線画像化ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る技術は、例えば核磁気共鳴(MRI)システムとの組合せで使用される、陽電子放出トモグラフィ(PET)用、単一光子放出計算トモグラフィ(SPECT)用、コンプトン式、又は、その他の仕様の診断画像化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド画像化システムにおいて、電磁(EM)両立性は、システム間の相互EM干渉を避けるために効率的に対処することが要求される主な設計課題である。上述したハイブリッド画像化システムを構成するためのPETシステムのような放射線画像化システムは、構造的、機能的及び分子臨床的及び前臨床的な画像化目的で、MRIシステムのボア内で使用されるインサート型(挿入型)の放射線画像化ユニットとして実用化されている。放射線画像化ユニットが備える放射線検出器を遮蔽するための高周波(RF)シールドは、放射線検出器とMRIシステムの構成要素との間の相互EM干渉を避けるために用いられている。放射線検出器に対して、電力を供給するための電力伝送(電力供給)ケーブルやデータを伝送するためのデータ伝送ケーブルなどの伝送ケーブルは、RFシールドの全体的なシールド効果に影響を与えることなく、RFシールドの外側から内側へ導かれる。RFシールドの構造は、シールド材料中のRF損失を減らし、画像化領域(ROI)の最適な電場沈着(比吸収率)を得るための設計を含む。RFシールドでは、シールド材料の電気的絶縁に際して、電気的結合を減らしたシールドのモジュール設計及びシールド構造中の分離回路の採用が考慮される。
【0003】
MRIシステムは、超電導磁気コイル、低周波傾斜コイル、RFコイル、シムコイルのような異なるタイプのコイル及び異なる厚みの導電シールド材料を含む。他方、トモグラフィ用の放射線画像化ユニットは、画像再構成のための後段のモジュールに対するデータの読出し及び伝送のための検出器前段回路を有する。PET用のシリコンフォトマルチプライヤ(SiPM)のような非磁性の放射線検出器及び検出器前段回路は、このようなハイブリッド画像化システムに用いられている。一例を挙げると、MRIシステムと共に使用される脳サイズの筒状PET用又はSPECT用の放射線画像化ユニットがあり、MRIシステムのボアの内側に取り付けられた全ての検出器前段回路は、これらを完全に取り囲むファラディシールドケージを用いたり、複数のファラディシールドケージを用いたりしてRFシールドされる。ここで、後者の場合はモジュール状RFシールド型の放射線画像化ユニットと呼ばれる。PET用として最も一般的に用いられているものは筒状の放射線画像化ユニットである。放射線検出器のこのRFシールドのために、MR画像化目的のRFコイルは、通常、放射線画像化ユニットの内側で用いられる。MRIシステムには送信用及び受信用のRFコイルが共に必要であり、送信用RFコイルはROIを励起し、受信用RFコイルはROIから放出される核磁気共鳴(NMR)信号を検出する。
【0004】
しかしながら、MRIシステムは患者の接近可能なスペースの直径(例えば全身MRIに対して700mm)を実際上決定する組込トランシーバー(通常筒状)としての組込RFコイルを有する。診断画像化に際して、この組込RFコイルはRFトランスミッターとして多く使用され、高感度RFコイルがレシーバーとして使用される。放射線画像化ユニットの外側にある組込コイル、及び/又は、放射線画像化ユニットの外側にある独立した送信用コイルに対して、RFシールド材料中で大きな送信フィールド減衰が発生する。放射線画像化ユニットは、通常、MRIシステムのボアの軸にそろった同心筒状の完全なリング構造で設計されているため、放射線画像化ユニットにおける同心円状の単一筒状のシールドケージについては、送信用RFコイルを放射線画像化ユニットの外側で用いることは実際的ではない。
【0005】
しかしながら、モジュール状RFシールド型の放射線画像化ユニットの場合、組込RFコイルからの所定量の送信用のRFフィールドはモジュール間ギャップを通ってROIに到達することができる。モジュール間ギャップを大きくすると、RFフィールド浸透性能も同様に向上し、MRIシステム単独の場合(放射線画像化ユニットがない場合)に相当しさえする。これは、RFシールドされた放射線検出器モジュール間の分離機構(デカップリング機構)が、ROIへのRFフィールド浸透性能を向上させることを意味する。分離機構は、モジュール間ギャップをMRIシステムのボアの軸方向及び径方向(軸横断方向)の両方に導入すること、及び/又は、分離回路を使用することによって改善を図れる。広すぎるモジュール間ギャップはトモグラフィ放射線画像中にアーチファクト像を生じさせるが、公知の文献中には1mmから6mmのモジュール間ギャップの適用が記載されている。
【0006】
更に、相互EM干渉を減らすためには、放射線検出器用のRFシールドだけでなく、電力伝送ケーブル及びデータ伝送ケーブルといった伝送ケーブルもRFシールドされる必要がある。これらの伝送ケーブルをRFシールドするためのケーブル用シールドは、RFフィールドを吸収し、MR画像化性能を低下させる。放射線画像化ユニットの伝送ケーブル端部付近の脱カップリングの改善、及び/又は、ケーブル用シールドからの放射線検出器用のRFシールドの分離、及び/又は、最小限のケーブル用シールドの使用は、放射線画像化ユニット内でのRFシールドによるRFフィールドの損失を低減させる。
【0007】
MRIシステムと放射線画像化ユニットとの間の(MRIシステムからのRF干渉のような)電磁干渉を避けるために、放射線検出器及びその伝送ケーブルは導電材料を用いてRFシールドされる必要がある(非特許文献1-4)。しかしながら、上記したように、RFシールドされた筒状の放射線画像化ユニットに対しての内側又は外側といったRFコイルの位置決めは、画像化性能に影響を与える。放射線画像化ユニットの内側で用いられる送信用RFコイル(非特許文献1-3)は、FOV中の均一且つ効率的なRFフィールドのためにRFシールドとの間により広いスペースを必要とする。これには、放射線画像化ユニットのサイズをより大きく(例えば筒状の放射線画像化ユニットの直径を大きく)する必要があり、放射線検出器の数を増やしてもシステム感度が低下する。放射線画像化ユニットのサイズを大きくすると、シールド材料の量、放射線検出器の数並びにこれらに対応する検出器前段回路、電力伝送ケーブル及びデータ伝送ケーブルの数も増加し、ハイブリッド画像化システムのMR両立性を更に低下させる。送信用RFコイルは画像化領域中のトレーサから放出される光子を減衰させ、放射線画像化ユニットの内側の精密な位置決めに敏感である(非特許文献2-3)。前述したように、MRIシステムは、通常、トランスミッターとして使用される組込RFコイルを有し、独立した局所的用途の局所RFコイルが高感度MR画像化のためのレシーバーとして用いられる。上記したように、MRIシステムの組込RFコイルは、RFシールドされた放射線画像化ユニットの場合にはトランスミッターとして使用することができる。しかしながら、放射線画像化ユニット用のシールド設計では、放射線検出器用のシールドケージ間に狭いモジュール間ギャップを設けるべきである(非特許文献4-8)。そのような場合、放射線画像化ユニットの外側に存在する組込RFコイルからのRFフィールドは、モジュール間ギャップを通して画像化領域に到達することができる。しかしながら、RFシールドにより、かなりのRFフィールドの減衰が発生し、RFフィールドの均一性も低下する(非特許文献4-5)。放射線検出器用のシールドケージの電気的絶縁(電気的接地からのフローティング)は、画像化領域へのRFフィールド浸透性能(又は送信性能)を改善する一つの方法である(非特許文献4-8)。
【0008】
非特許文献4において、放射線検出器用のシールドケージの電気的絶縁は、データ伝送用の光ファイバケーブルの使用によって可能とされている。しかしながら、一般的な従来技術の放射線検出器は、ツイストペアケーブル又は同軸ケーブル(非特許文献1-3、8)のようなデータ伝送ケーブルを用いており、この種のデータ伝送ケーブルは、RFシールドされる必要がある。従来のデータ伝送ケーブルからの電気的絶縁は、非特許文献6、8で研究されており、これらは組込RFコイルを用いている。非特許文献7、8において、電気的絶縁の使用に加えて、より広いモジュール間ギャップ、放射線画像化ユニットのマルチリング設計、矩形状のシールドケージの使用などにより、低いRF電力でRFフィールド浸透性能が向上している。これらの方法のいくつかを採用することによって、放射線画像化ユニットの伝送ケーブルの端部付近でのRFフィールドの減衰が大きくなり、シールド材料の接地により大きなRF電力が必要になるが、電気的絶縁を行うことなくRFフィールド浸透性能を向上させることができる(非特許文献8)。しかしながら、放射線画像化ユニットの内側にあるRFコイルに対しても、電気的絶縁は、コイルに対するRF負荷を減らし、効率的なRF性能のためのより低いRF電力することができる。RF電力が増加すると、画像化領域への電場沈着(比吸収率:SAR)が増大し、患者の安全性を確保するためにはこれを最小限に抑える必要がある(非特許文献9-13)。更に、光センサからの出力信号はデータ伝送ケーブルを用いてMRIシステムのボアの外側に伝送される(特許文献1)。
【0009】
例えば、放射線検出器はシールドされて、互いに絶縁されることが例示されている(非特許文献15)。
【0010】
MRIシステムは、その優れた柔軟組織のコントラスト及び画像化領域の非侵襲的な構成、作用及び分光学的応答の幅広い適用があるため、非侵襲的な診断画像化モダリティとして広く用いられている。他方、PET又はSPECTは、ピコモル範囲における画像化領域(ROI)の分子的な画像化応答に優れている。これらの2つの画像化モダリティの相補的な利点は、限定されないが、癌診断及び痴呆症の研究において、多くの場合に優れた可能性を示している。その結果、全身PET/MRIシステムが2010年に商業化されている。しかしながら、高価で様々な物流上の問題があるため、既に設けられたMRIシステムの数が4万を超えているのに対して、これまでのところ、このマルチモーダルシステムはわずかな台数が(70以上)設けられているに過ぎない(非特許文献14)。
【0011】
MRIシステムと両立する、MRIシステムの局所RFコイルと同様な、放射線画像化ユニット(非特許文献1-6、15、16)は、このハイブリッド技術を広い範囲にわたって利用可能とするための解決策となり得る。このような新しいマルチモーダルシステム(例えばPET/MRI)を設置するための経済的及び物流上のコストが非常に高価であることが(非特許文献14)、マルチモーダルシステムを広く使用するための主な欠点であるため、既にあるMRIシステムに対するPET用又はSPECT用の放射線画像化ユニットの開発が近年非常に関心を持たれている。放射線画像化ユニットの開発に関する研究の多くは、既存のMRIシステムと共に使用される脳のハイブリッド画像化にある(非特許文献1-4、15、16)。これらの全ての場合において、例えば、水平ボア型MRIシステム用の筒状の放射線画像化ユニットは、MRIシステムのボアに同心であり、更に、組込RFコイル及び傾斜コイルに対しても同心であり、多くの場合、筒状の完全リング構成が用いられている。従来の通常のMRI画像化は、組込RFコイルをトランスミッターとして用い、局所RFコイルをレシーバーとして用いている。これらの放射線画像化ユニットの場合、組込RFコイルの使用は非常に困難である(非特許文献4-8)。なぜならば、放射線画像化ユニットのRFシールドが、組込RFコイルからの送信用のRFフィールドを大きく減衰するからである。研究グループの中では、カスタム化された局所用途の送信用RFコイル(例えば人体の頭部の大きさのバードケージRFコイル)を、放射線画像化ユニットの内側の局所用途の受信用RFコイル(例えばフェーズアレイ表面RFコイル)と共に用いることが一般的である(非特許文献1-8、15、16)。しかしながら、RFシールドされた放射線画像化ユニットの内側に送信用RFコイルを用いると、少ないRF電力で均一性の高いRFフィールドを得るために、送信用RFコイルと放射線画像化ユニットとのシールドの間に、(例えば送信用RFコイルの直径の25%以上の)広いギャップ(非特許文献9)を維持する必要がある。これは、放射線画像化ユニットの直径を増大させ(非特許文献2、15、16)、放射線検出器の数も増加させるため、放射線画像化ユニットのコストの上昇を招き、感度及び空間的な分解能が損なわれることを意味する。
【0012】
更に、画像化領域に非常に近く配置された送信用RFコイルは、規制委員会で設定された最大限界を有する画像化領域における電場沈着を考慮すると、安全上の懸念がある(非特許文献10-13)。他方、放射線画像化ユニットの内側の独立した2つのRFコイルは、画像化領域からの放射光子を減衰し(非特許文献2、4、17-18)、放射線トモグラフィ像中にアーチファクトを発生させる。2つの独立したRFコイルは、放射線画像化ユニットの内側の精密な位置決めに関しても困難であり(非特許文献17-18)、MR画像の空間符号化に用いられる、MRIシステムの傾斜フィールドによって発生する低周波渦電流による振動及び動きに対して弱い。トランスミッターとしての組込RFコイルの使用については、いくつかの研究(非特許文献4-8)があり、狭いモジュール間ギャップを有するモジュール状RFシールドの設計が放射線画像化ユニットの放射線検出器モジュールのために用いられ、組込RFコイルからのRFフィールドは放射線画像化ユニットのモジュール間ギャップを通過して画像化領域内に入ることができる。しかしながら、比較的広いモジュール間ギャップであっても、放射線画像化ユニットのRFシールドは画像化領域の90%以上を取り囲み、放射線画像化ユニットの外側に同心的に存在する組込RFコイルからのRFフィールドの多くを阻止する。その結果、RF電力が増え(非特許文献7)、これはMRIシステムの既存のRF電力ドライバを用いる際の問題であり、画像化領域中における電場の増大が懸念される。画像化における(均一性及び必要な場強度に関する)効率的なRFフィールド性能についても課題がある。MRの適用分野の(多くは円形の分極したフィールドである)RFフィールドは、MRIシステムのボアの軸横断面に用いられる(非特許文献3)。
【0013】
更に、MRI用のRFコイル、及びPET用の複数の放射線検出器を備えたPET/MRIハイブリッド装置が開示されている(特許文献3)。この装置においては、患者の眼の領域をカバーしないように筒状の放射線検出器の壁上に格子状ギャップが配置されている。しかしながら、患者への接近を容易とし、MRIボアに沿って発生する傾斜渦電流を減少させるべく、MRI側にHF磁場を発生させることは考えられていなかった。本発明はこれらの問題に対してなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第8401613号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0028092号明細書
【文献】米国特許第9510797号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Yamamoto S, Watabe H, Kanai Y et al (2011) Interference between PET and MRI sub-systems in a silicon-photomultiplier-based PET/MRI system. Phys Med Biol 56:4147-4159.
【文献】Kolb A, Wehrl HF, Hofmann M et al (2012) Technical performance evaluation of a human brain PET/MRI system. Eur Radiol 22:1776-1788.
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【文献】Akram MSH, Levin CS, Yamaya T (2016) An RF-penetrable oval body PET insert for MRI: initial experimental study for efficient MR imaging performance. IEEE NSS-MIC M16E-9.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
放射線検出器モジュール用のシールドケージは、放射線検出器モジュールの電力伝送(電力供給)ケーブル及びデータ伝送ケーブルを通すための穴又は開口を有する必要がある。しかしながら、シールドケージの非連続性はRFシールド効率を低下させ、シールドケージ中の放射線検出器とのRF干渉を増加させる。シールド効率を向上させるためには注意深い設計が必要である。
【0017】
高感度の放射線検出のために、放射線画像化ユニットの放射線検出器モジュールは画像化領域により近い必要がある。筒状の放射線画像化ユニットの内側の独立した送信用RFコイルの使用は、この点に関して適切な設計選択ではない。そのような送信用RFコイルが効率的に性能を発揮するためには、RFシールド(この場合は放射線画像化ユニットのRFシールド)は、送信用コイルから少なくとも20%放射方向に離れる必要がある(非特許文献9)。更に、送信用コイルと画像化領域との間に所定の離間距離を確保する必要がある。その結果、放射線画像化ユニットの直径は大きくなり、画像化領域から離れることになる。更に、放射光子(γ光子)は、放射線画像化ユニットの内側に配置された送信用RFコイルによって減衰される。
【0018】
MRIシステムの組込RFコイルを放射線画像化ユニットの外側にあるトランスミッターとして使用するか、又は、別の送信用RFコイルをRFシールドされた放射線画像化ユニットの外側で用いるには、これらに対応する設計が必要であり、その結果、RFフィールドは放射線画像化ユニットのモジュール間ギャップを通過してROIに到達することができる(非特許文献7)。放射線画像化ユニットの(ケーブル用シールドを含む)RFシールドを電気的に接地すると、RFフィールドが大きく減衰するので、モジュール間ギャップを通過してのRFフィールドの浸透が減少する。広すぎるモジュール間ギャップはRFフィールド浸透性能を向上させるが、放射線画像化ユニットによって再構成される画像中にアーチファクトを招く。他方、放射線検出器用のRFシールドをケーブル用シールドから電気的に絶縁すると、グラウンドに対するRF減衰がないので、ROIに対するRFフィールドの浸透性能は向上する(非特許文献8)。しかしながら、検出器前段回路を備えた放射線検出器並びに電力伝送(電力供給)ケーブル及びデータ伝送ケーブルは共にRFシールドされる必要があるので、MRIシステムの強いRFフィールドFOV中の放射線検出器-ケーブル併用のRFシールドの組合せにおける電気的な絶縁は、放射線検出器の安定した性能を妨害し、画質性能を妨害するEM干渉を増大する。放射線検出器用のRFシールドとケーブル用のRFシールドの分離ゾーンの近くで注意深いシールド設計が必要である。
【0019】
放射線検出器をシールドするシールドケージ及びケーブル用シールドは、多くのシールド材料を用いることになる。放射線検出器及び伝送ケーブル用の連続的なRFシールドは、放射線画像化ユニットの内側及び外側のRFコイルのいずれにおいても、大きなRF負荷が生じ、RFフィールドを大きく吸収して、RFコイルの性能を低下させる(非特許文献9、10)。それは、RFコイル中のRF電力を増大させ、画像化領域中におけるRF電力消費を補償する非吸収率(SAR)を最終的に増大させる(非特許文献11-13)。SARを減少させることは、MR画像化においてまず必要なことである。更に、目的の一つは、既存のMRIシステムの組込RFコイルを用いることであるので、大きすぎるRF電力の要求は、既存のRF電力ドライバの限界を超えてしまう可能性がある。
【0020】
更に、放射線検出器モジュールどうしのシールドケージ間の結合は、モジュール間ギャップを通過するRFフィールドの浸透を減少させる(非特許文献7)。シールドされた放射線検出器モジュールどうしの強い結合は、RF負荷効果を増大させ、コイルのRF電力要求を増大させる(非特許文献7)。狭すぎるモジュール間ギャップは結合を増大させ、RFフィールド浸透性能を低下させ、RF電力を増大させる。広すぎるモジュール間ギャップは放射線画像化ユニットによって発生される画像アーチファクトを増加させる。最適な性能のために、最適なモジュール間ギャップを有する改良された分離機構が必要である。
【0021】
通常のMR画像化プロトコルにおいて、MRIシステムの組込RFコイルはRFトランスミッターとして使用され、局所的に配置された局所RFコイルはレシーバーとして使用される。MRIシステム用の放射線画像化ユニットを開発する主な課題の一つは、MRIシステムに大きな費用のかかる改良を加えることなく、同時にMRIシステムの画像化性能を損なうことなく、MRIシステムの既存のハードウェア及びソフトフェアプラットフォームを利用することである。組込RFコイルをトランスミッターとし、局所RFコイルをレシーバーとして用いる従来技術に従い、MRIシステムのボアに対して同心状に配置される筒状の放射線画像化ユニットは、組込RFコイルからのRFフィールドを大きく減衰させる。放射線画像化ユニットの内側のRFフィールド性能の改善が可能であるが、放射線検出器間に、より広いギャップを設けることが必要であり、これは放射線画像中にアーチファクトを発生させる。それは更に、大きなRF電力を吸収し、ボディRFコイルの電力消費を増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
導電材料による電磁場シールドはフィールド吸収、反射及び伝送機構の組合せである。MRSシステムの動作RF周波数(例えば64MHz、128MHz、300MHz及び400MHz)において、RFシールド機構は、シールド材料中におけるRF渦電流の形でのフィールド吸収が優勢(90%以上)である。入射及び伝送フィールドをそれぞれE0及びE1で表すと、シールド効率(SE)は、次式によって計算される。
【0023】
SE = 20 log (E0 / E1) ・・・(1)
ここで、伝送フィールドは、次式によって計算される。
【0024】
E1 = E0 e-t/? ・・・(2)
ここで、tはシールド材料の厚み、δは導体中の交流による表皮深さであり、これは透磁率μ、導電率σ及び対象周波数ωの関数である。
【0025】
【0026】
動作磁気共鳴周波数に対応する表皮厚さのほぼ3倍のシールド厚み(第1の表皮深さの3倍中の約97%の渦電流)で、シールド材料を通るフィールド伝送は5%より小さくなる。完全に囲まれたファラディシールドケージは、理想的なシールド構造であり、外部環境からの最大RFフィールドをシールドし、(シールドケージ内側から外部環境に通過するフィールドに対するのと同様に)シールドケージ内のフィールドを最少とする。しかしながら、適用分野に基づき、シールドされたシールドケージは開口又は穴を必要とする。MRIシステムのボア内で使用される放射線検出器用のシールドケージは、放射線検出器の伝送ケーブル通路用の開孔をシールドケージ中に必要とする実際的な例である。シールドケージに開孔を導入することによって、開孔がシールドケージ全体の円滑な電流の流れを阻止し、シールドケージ内にある一定量の不要なRFフィールドを送信するアンテナのように作用するので、シールド効率(SE)は減少する。更に、伝送ケーブル用の開孔のサイズが大きくなるほどシールド効率が低くなり、シールドケージ内のRF混合が高くなる。複数のケーブルの場合、シールドケージ内の伝送ケーブル通路用として1つの大きな開孔を用いる代わりに、いくつかの小さな開孔を用いることができる。これにより、シールド材料内の電流は1つの大きな開孔に比べて円滑になる。
【0027】
上記のように、放射線検出器用のシールドケージは、放射線検出器に対する電力伝送及びデータ伝送のための伝送ケーブル用の開孔を設ける必要がある。。しかしながら、伝送ケーブル用の1つの大きな開孔は、シールドケージのシールド効率が低減する。代わりに放射線検出器のシールドケージの端部付近に複数の独立した小さな開孔を設けると、シールドケージのシールド効率が向上する。複数の小さな開孔に対して、シールドケージに接続される筒状の銅管のような2cm~3cmの長さの細いシールドパイプ(導電パイプ)を用いて、放射線検出器の検出器前段回路とMRIシステムの構成要素との間のEM混合を減少させるウェーブガイド(導波管)として用いることができる。ある一つの設計において、これらのシールドパイプはシールドケージの外側にのみ配置することができる。他の設計において、これらのシールドパイプは部分的に内側に、部分的に外側に配置することができる。シールドケージ内に引き込む伝送ケーブルは、同軸ケーブルのような自己シールドケーブルとすることができる。ツイストペアケーブルのようにシールドされていない伝送ケーブルの場合、全ての伝送ケーブルは、銅シールドチューブのようなケーブル用シールド(RFシールドチューブ)を用いてシールドされる。しかしながら、伝送ケーブルの通常の長さは、例えば5mなど、数メートルオーダの長さであり、MRIシステムのボア内からMRIシステムのボアの外側に延びている。ケーブル用シールド(RFシールドチューブ)は、伝送ケーブルと同じ長さとすることができる。これに対して、伝送ケーブルにおけるMRIシステムのボアの内側に存在する部位をシールドし、伝送ケーブルにおけるMRIシステムのボアの外側に存在する残りの部位をシールドしないままとすることができる。上記の構成は、放射線画像化ユニットの内側及び外側のRFコイルの両方の場合に用いることができる。
【0028】
高感度の放射線検出を行う場合、放射線検出器は画像化領域の近くに配置される。このような場合、送信用RFコイルは放射線画像化ユニットの外側で使用される。この場合の送信用RFコイルは、限定されないが、MRIシステムの組込RFコイルであることが望ましい。放射線画像化ユニットの内側で用いる送信用RFコイルについては、画像化領域と送信用RFコイルとの間、及び、放射線画像化ユニットのRFシールドと送信用RFコイルとの間に所定のギャップを設ける必要があり、これは、放射線画像化ユニットの直径を増大させ、検出感度を減少させ、コンプトン式の放射線検出の場合に重大な影響を及ぼす。
【0029】
放射線画像化ユニットの外側で使用される送信用RFコイルについては、放射線画像化ユニットのRFシールドは、モジュール式に設計されたRFシールドを適用する必要があり、ここで、複数の放射線検出器が各シールドケージの内側に取り付けられる。このような場合、放射線画像化ユニットの外側の送信用RFコイルからのRFフィールドはモジュール間ギャップを通過して画像化領域に入る。放射線検出器用及び伝送ケーブル用の連続したRFシールドは、送信用RFコイルに対して大きな導電負荷となり、画像化領域へのRFフィールドの浸透性能を低下させる。放射線検出器用のシールドケージと伝送ケーブル用のケーブル用シールドとの間の電気的な絶縁は、RFフィールドの浸透性能を増加させる。電気的な絶縁は、更に、コイルの強力なRFフィールドFOVの外側に存在するケーブル用のRFシールドにおいてもなされる。しかしながら、組込RFコイルの場合、放射線検出器用のシールドケージとケーブル用シールドの一部は、コイルの強力なRFフィールドFOVの中にある。その結果、放射線検出器用のシールドケージとケーブル用シールドとの間の接合は、RF干渉に対して非常に敏感である。コイルの強力なRFフィールドFOVから離れた伝送ケーブル用のRFシールドでなされる上記の電気的な絶縁は、RF干渉に対して感度を低下させ難くする。
【0030】
放射線検出器用のシールドケージとケーブル用シールドとの間の接合部(境界部)における電気的な絶縁の場合、各シールドケージの延長RFシールド、及び/又は、放射線画像化ユニットの伝送ケーブルの端部側を囲む同軸筒状の延長(拡張)シールドが、シールドケージとケーブル用シールドとの接合部のRF干渉を減らすために用いられる。このような場合、シールドケージと延長(拡張)シールドとは、ケーブル用シールドから電気的に絶縁され、ケーブル用シールドとは物理的に接触することなく、シールドケージ内に伝送ケーブルを取り込むために用いられるシールドパイプをカバーする延長シールドの少し内側に、ケーブル用シールドを取り込む。
【0031】
更に、放射線検出器モジュールどうしのシールドケージ間の結合は、RFフィールドの浸透性能を低下させる。シールドケージ間の結合を減らすため、例えば2mm~8mmの広いモジュール間ギャップが用いられる。複数の放射線検出器モジュールによって構成される放射線画像化ユニットが、筒状又は楕円状又はその他の曲がった形状を有する場合、例えば矩形端を有するシールドケージが用いられる。このような場合、シールドケージ間の外周ギャップが内周よりも広くなる。その結果、シールドケージ間の結合が更に減り、画像化領域へのRFフィールドの浸透が増加する。上記のモジュール間ギャップは、MRIシステムのボアの周方向に沿って空けられたギャップである。
【0032】
RF浸透性能は、MRIシステムのボアの軸方向に沿って空けられたモジュール間ギャップによって更に改善される。これは、シールドケージが、MRIシステムのボアの軸方向に沿って複数のシールドケージに更に分割されることを意味する。これは、ボアの周方向及び軸方向の両方に空けられたモジュール間ギャップを有するマルチリングシールド構造とも呼ばれる。ボアの軸方向に空けられたギャップはリングギャップとも呼ばれる。
【0033】
更に、シールドケージ間の分離回路(デカップリング回路)は、シールドケージ間の結合(カップリング)を大幅に減少させ、RFフィールドの浸透性能を改善する。放射線画像化ユニットの内側及び/又は画像化領域の近くに高誘電体材料を置くと、画像化領域におけるRFフィールドの浸透効率が更に向上する。上記した放射線画像化ユニットは、複数の放射線検出器モジュールで画像化領域を全360°方向から包囲する態様の完全リング構造や、画像化領域の全周360°のうちで例えば55°などの所定角度領域において放射線検出器モジュールを配置させずに解放した態様の部分リング構造、を適用できる。部分リング構造を適用する放射線画像化ユニットは、放射線画像化ユニットの外側の送信用RFコイルからのRFフィールドの浸透効率を大幅に改善する。
【0034】
本発明の第1の態様は、MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、個々の前記放射線検出器モジュールは、放射線検出器と、所定の位置に開孔を有し、前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージと、前記シールドケージ内で前記放射線検出器に電気的に接続されていると共に、前記シールドケージ内から前記開孔を介して前記ボアの外側に延びる伝送ケーブルと、前記シールドケージとは電気的に絶縁され、かつ前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするケーブル用シールドと、を備えたことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0035】
本発明の第2の態様は、第1の態様の放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールが、互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0036】
本発明の第3の態様は、第1の態様の放射線画像化ユニットであって、誘電体材料で構成される誘電部材を放射線画像化ユニット本体内に備えていることを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0037】
本発明の第4の態様は、第1の態様の放射線画像化ユニットであって、前記伝送ケーブルは、データ信号を伝送するデータ伝送ケーブルを少なくとも有し、前記シールドケージ内から、前記開孔を通って、当該データ伝送ケーブルで伝送されるデータ信号と前記MRIシステムの磁場強度との干渉を回避し得る第1の位置を越えて前記ボアの外側へ延びており、前記ケーブル用シールドは、前記伝送ケーブルにおける前記第1の位置から前記開孔側に近付く第2の位置までの区間を少なくともシールドする、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0038】
本発明の第5の態様は、MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線画像化ユニットを複数個で構成する放射線検出器モジュールであって、放射線検出器と、所定の位置に開孔を有し、前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージと、前記シールドケージ内で前記放射線検出器に電気的に接続されていると共に、前記シールドケージ内から前記開孔を介して前記MRIシステムのボアの外側に延びる伝送ケーブルと、前記シールドケージとは電気的に絶縁され、かつ前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするケーブル用シールドと、を備えたことを特徴とする放射線検出器モジュールである。
【0039】
本発明の第6の態様は、第5の態様の放射線検出器モジュールであって、前記シールドケージは、連続的につながる導電シート、メッシュ構造の導電シート、及びスリットの設けられた導電シートのうちの少なくとも1つの導電シートを材料に用いて構成されていることを特徴とする放射線検出器モジュールである。
【0040】
本発明の第7の態様は、第5の態様の放射線検出器モジュールであって、前記シールドケージにおける前記開孔の外縁部分に接続されていると共に、前記ケーブル用シールドとは非接触な状態で、前記ケーブル用シールドの内側又は外側から前記伝送ケーブルの少なくとも一部をシールドするシールドパイプ、をさらに備えることを特徴とする放射線検出器モジュールである。
【0041】
本発明の第8の態様は、第5の態様の放射線検出器モジュールであって、シールドパイプにおける前記シールドケージの端部から外側に突出した部位と前記ケーブル用シールドの少なくとも一部とをこれらの外周側からまとめて覆う拡張用シールド、をさらに備えることを特徴とする放射線検出器モジュールである。
【0042】
本発明の第9の態様は、第1の態様の放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボアの周方向に沿って互いに周方向ギャップを空けつつ環状に配置され、前記環状に配置された複数の放射線検出器モジュールの外側又は内側に、核磁気共鳴画像化のための送信用コイルが配置されている、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0043】
本発明の第10の態様は、第9の態様の放射線画像化ユニットであって、前記環状に配置された複数の放射線検出器モジュールで構成される放射線画像化ユニット本体の外周側の周方向ギャップは、前記放射線画像化ユニット本体の内周側の周方向ギャップよりも広く、前記放射線画像化ユニット本体は、画像化領域の形状に倣った形状で構成されている、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0044】
本発明の第11の態様は、第9の態様の放射線画像化ユニットであって、前記放射線検出器モジュールどうしの間に介在された分離回路、をさらに備えることを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0045】
本発明の第12の態様は、第3の態様の放射線画像化ユニットであって、前記誘電部材は、前記放射線画像化ユニット本体と画像化領域との間に介在されている、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0046】
本発明の第13の態様は、第9の態様の放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールそれぞれは、前記MRIシステムのボアの軸方向に沿って軸方向ギャップを空けつつ複数の分割モジュールに分割された分割構造を有し、前記複数の分割モジュールは、それぞれシールドされていると共に、ケーブル通過孔が設けられており、前記伝送ケーブルは、前記ケーブル通過孔を介して配線されている、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0047】
本発明の第14の態様は、第9の態様の放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールの所定部位に対するシールドを一体的に行う追加のシールド構造を備え、前記追加のシールド構造は、前記複数のシールドゲージそれぞれの前記開孔を少なくとも含む部位を、一体的に包囲するように形成された導電シート、及び/又は、前記環状に構成される放射線画像化ユニット本体の軸方向における少なくとも前記開孔と画像化領域との間の位置で、かつ前記放射線画像化ユニット本体の内周側で、その径方向に沿って広がるシールド板を有する、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0048】
本発明の第15の態様は、第9の態様の放射線画像化ユニットであって、前記周方向ギャップを空けつつ前記複数の放射線検出器モジュールを環状に配置して構成される放射線画像化ユニット本体は、前記周方向ギャップを超える幅の間隙を周方向の所定の区間に設けた部分リング構造を有する、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0052】
本発明の第16の態様は、MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線検出器をそれぞれ備えた複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボア内で画像化領域を囲うようにそれぞれ配列されていることによって放射線画像化ユニット本体を構成し、前記放射線画像化ユニット本体は、前記画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる開口部を有し、前記複数の放射線検出器モジュールどうしは、各々の配列方向に沿って配列方向ギャップを空けつつ間欠的に配置されており、前記複数の放射線検出器モジュールどうしの間には、分離回路が介在されている、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0053】
本発明の第17の態様は、第16の態様の放射線画像化ユニットであって、前記放射線検出器を内部に収容しつつシールドするシールドケージを備え、前記放射線画像化ユニット本体は、前記配列方向ギャップを超える幅の間隙を、前記配列方向に沿った所定の区間に1箇所以上設けた部分リング構造を有し、前記シールドケージは、個々の前記放射線検出器モジュール単位で放射線検出器をシールドする、又は、前記放射線画像化ユニット本体内の全ての放射線検出器を一体的にシールドする、又は、前記間隙が2箇所以上設けられている場合に前記2箇所以上の間隙によって前記放射線画像化ユニット本体から複数個に分割された分割ユニット群の単位で前記放射線検出器をシールドする、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【0054】
本発明の第18の態様は、MRIシステムのボア内に配置され、前記MRIシステムと共にハイブリッドで画像化を行うための放射線検出器をそれぞれ備えた複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニットであって、前記複数の放射線検出器モジュールは、前記ボア内で画像化領域を囲うようにそれぞれ配列されていることによって放射線画像化ユニット本体を構成し、前記放射線画像化ユニット本体は、前記画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる開口部を有し、前記複数の放射線検出器モジュールは、人体の胸部に対応する一対の胸部用画像化領域を各々囲うように配列されていることによって一対の胸部包囲用モジュール群を含む放射線画像化ユニット本体を構成し、前記一対の胸部包囲用モジュール群それぞれは、個々の前記胸部用画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる胸部用開口部を有する、ことを特徴とする放射線画像化ユニットである。
【発明の効果】
【0055】
MRIシステムの組込RFコイルのように、送信用RFコイルを放射線画像化ユニットの外側で用いることにより、放射線画像化ユニットの内側で送信用RFコイルを用いることに関連する設計上の複雑さを減らすことができる。これは、コイルの効率的な性能を引き出すためにさらに広いスペースを必要とし、別の設計的課題が生じるものの、放射線画像化ユニット全体のコストを低減することができる。既存のMRI画像化技術は、組込RFコイルがトランスミッターとして使用され、ROIに近付く位置に配置された局所RFコイルがレシーバーとして使用されるので実施が容易である。更に、患者ベッドを備えた既存のMRIシステムでは、MRIシステムのボア内のスペースが狭く、放射線画像化ユニットの内側で送信用RFコイルを使用しない(言い換えるとMRIシステムの組込RFコイルを送信用RFコイルとして使用する)放射線画像化ユニットは、当該放射線画像化ユニットの内側の使用可能なスペースを増大させる。
【0056】
(例えばα又はβ粒子動物画像化のように)高感度放射線画像化のために、放射線検出器はROIに可能な限り近づける必要がある。そのような場合、送信用RFコイルを放射線画像化ユニットの外側で用いることは適切な選択である。また、上述したシールド構造計は、MRI性能を損なうことなく、このような放射線画像化ユニットの適用を可能とする。
【0057】
RF性能を損なうことなく電気的に絶縁された放射線画像化ユニットを開発するために、従来の伝送ケーブル(例えばツイストペアケーブルや同軸ケーブルなど)を使用する放射線検出器を用いることが可能である。シールドされた放射線画像化ユニットは、RFコイルの位置が放射線画像化ユニットの外側及び内側の両方の場合について、コイルに対するRF負荷を減少させ、その結果、RFフィールドの浸透性能は少ない電力で向上する。
【0058】
放射線検出器の伝送ケーブル通過用の細いシールドパイプ(導電パイプ)を備えたシールドケージは、当該シールドケージのシールド効率を向上させ、相互のノイズ汚染を減少させる。
【0059】
MRIシステムのボアの周方向及び軸方向の両方について、放射線検出器モジュールどうしの間にギャップを設けた放射線画像化ユニットを構成することで、シールドケージ間の電気的分離性能が向上し、コイル中の減少されたRF電力によりRF性能を向上させることができる。
【0060】
電気的分離(及び絶縁)性能を改善するために分離回路(デカップリング回路)を用いると、コイル中のRF電力を減らしてRF性能を向上させることができる。
【0061】
放射線画像化ユニットとROIとの間に高誘電定数材料を介在させると、RF性能を高めることができる。
【0062】
矩形状のシールドケージの使用、及び/又は、放射線画像化ユニットについての部分リング構造の適用は、シールドケージの分離(デカップリング)性能をさらに向上させ、コイル中のRF電力を減らしてRF性能を高めることができる。
【0063】
RFコイルの強力なRFフィールドFOVから遠く離れた(放射線検出器用のシールドケージとケーブル用シールドとを組み合わせた)各放射線検出器モジュール中の電気的な絶縁を採用すると、電気的絶縁ゾーンへの強いフィールド結合を防いで、RF干渉を減少させ、同時に画質を向上させることができる。
【0064】
電気的絶縁ゾーンに対して適切に構成された追加のRFシールドを用いると、MRIシステムと放射線画像化ユニットとの間の電磁干渉を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1A】円環状に構成された放射線画像化ユニットとMRIシステムとを備えたハイブリット画像化システムを示す図。
【
図1B】従来の放射線検出器モジュールの構成例であって、シールドケージとケーブル用シールドとが共に電気的に接地されている構成を示す図。
【
図1C】絶縁ゾーンを囲む拡張用シールドを設けた放射線検出器モジュールを示す図。
【
図2A】絶縁されたケーブル用シールドがシールドケージの内側に設けられた放射線検出器モジュールを示す図。
【
図2B】組込RFコイルから比較的離れた位置で電気的絶縁が行われている構成を有する放射線検出器モジュールを示す図。
【
図2C】絶縁ゾーンの後段側のケーブル用シールド230を取り除けるように構成した参考例の放射線検出器モジュールを示す図。
【
図3A】MRIシステムに内蔵された組込RFコイルのように、放射線検出器ユニットの外側に位置する送信用RFコイルの例を示す図。
【
図3B】放射線検出器ユニットの内側に位置する送信用RFコイルの例を示す図。
【
図4A】絶縁ゾーン用の拡張RFシールドとケーブル用シールドとの間に分離回路300を介在させた構成例を示す図。
【
図4B】拡張RFシールドとケーブル用シールドとの間に分離回路を介在させ、さらに、ケーブル用シールドとシールドケージの開孔の周縁部を筒状に延出させた部位との間に分離回路を介在させた構成例を示す図。
【
図4C】シールドケージとは絶縁されている絶縁ゾーン用の拡張RFシールドとケーブル用シールドとの間に分離回路を介在させた構成例を示す図。
【
図5A】大きな開孔が設けられたシールドケージのシールド効率について説明するための図。
【
図5B】複数の小さな開孔が設けられたシールドケージのシールド効率について説明するための図。
【
図6A】伝送ケーブルを通過させるための1つの大きな開孔を設ける代わりに、複数の小さな開孔を設けた例を示す図。
【
図6B】シールドケージの内側の伝送ケーブルを通過させるための細いシールドパイプが、シールドケージの表面から外側に突出するように設けられた構成例を示す図。
【
図6C】シールドパイプの一部がシールドケージの内側にある構成例を示す図。
【
図7A】放射線検出器モジュール内の全てのシールドが接地された参考例を示す図。
【
図7B】
図7Aとは一部シールドの構造が異なる他の参考例を示す図。
【
図8A】絶縁ゾーン用の拡張RFシールドの構成例を示す図。
【
図8B】
図8Aの拡張RFシールドとは一部構造が異なる他の拡張RFシールドを示す図。
【
図8C】
図8A、
図8Bの拡張RFシールドとは一部構造が異なる他の拡張RFシールドを示す図。
【
図8D】拡張RFシールドを取り除いた他のシール構造を示す図。
【
図9A】放射線画像化ユニット(シールドケージ)の内周側に伝送ケーブル通過用の開孔を設けた構成例を示す図。
【
図9B】放射線画像化ユニット(シールドケージ)の外周側に伝送ケーブル通過用の開孔を設けた構成例を示す図。
【
図10A】追加のシールド部材を設けた放射線画像化ユニットを示す図。
【
図10B】
図10Aの追加のシールド部材とは一部構造が異なる他の追加のシールド部材を設けた放射線画像化ユニットを示す図。
【
図10C】
図10A、
図10Bの追加のシールド部材とは一部構造が異なる他の追加のシールド部材を設けた放射線画像化ユニットを示す図。
【
図11A】
図10A~
図10Cの追加のシールド部材とは一部構造が異なる他の追加のシールド部材を設けた放射線画像化ユニットを示す図。
【
図12A】放射線画像化ユニットの外周側における放射線検出器モジュールどうしの間に広いモジュール間ギャップが与える構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が台形状のシールドケージを用いた例を示す図。
【
図12B】
図12Aの構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が矩形状のシールドケージを用いた例を示す図。
【
図12C】
図12Aの構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が矩形状でかつ外形のエッジ部が曲率面で構成されているシールドケージを用いた例を示す図。
【
図12D】矩形状の複数のシールドケージを円環状に間欠的に配置し、外周側のモジュール間ギャップを広げた筒状の放射線画像化ユニットを示す図。
【
図13A】マルチリング構造の放射線画像化ユニットを示す斜視図。
【
図13B】マルチリング構造の放射線画像化ユニットをMRIシステムのボアの径方向からみた断面を示す図。
【
図13C】
図13Bの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他のマルチリング構造の放射線画像化ユニットをMRIシステムのボアの径方向からみた断面を示す図。
【
図13D】
図13B、
図13Cの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他のマルチリング構造の放射線画像化ユニットをMRIシステムのボアの径方向からみた断面を示す図。
【
図14】放射線検出器モジュールどうしの間に分離回路を介在させた完全リング構造を有する放射線画像化ユニットを示す図。
【
図15A】部分リング構造を有する放射線画像化ユニットを示す図。
【
図15B】
図15Aの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の部分リング構造を有する放射線画像化ユニットを示す図。
【
図16A】誘電体スラブを画像化領域の近くに設けた部分リング構造を有する放射線画像化ユニットを示す図。
【
図17】ROIを囲むRFシールドを備えたMRIシステムを、ボアの軸方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図18】シールドが接地されたRFシールドを備えたMRIシステムを、ボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図19】グラウンドから絶縁されたRFシールドを備えたMRIシステムを、ボアの径方向から断面(軸横断面)を示す図。
【
図20】コイルの強いRFフィールドから遠く離れた電気的絶縁の作用について説明するためのMRIシステムを、ボアの径方向(水平方向)からみた断面を示す図。
【
図21A】フローティング又は電気的絶縁の利点を説明するための放射線画像化ユニットの一例を、ボアの径方向からみた断面(軸横断面)を模式的に示す図。
【
図22】分離回路を用いた送信用RFフィールドの増強について説明するためにMRIシステムをボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図23A】高誘電率(HDC:High Dielectric Constant)材料を用いた場合の送信用RFフィールドの増強について説明するためのMRIシステムをボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図24】高誘電率材料を用いたRFフィールドの増強について、具体的に説明するための模式図。
【
図25A】高誘電率材料を用いてRFフィールドの増強を行う改善法1について説明するためのMRIシステムを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図25B】同じく改善法2について説明するためのMRIシステムを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図26】ボディ対応型PET用インサートの放射線画像化ユニットがボア内に配置されたMRIシステムを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図27A】頭部用の放射線画像化ユニットがボア内に配置されたMRIシステムを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図27B】組込RFコイル(送信用RFコイル)及び局所RFコイル(受信用RFコイル)を含むMRIシステム、並びに放射線画像化ユニットの斜視図。
【
図27C】
図27Bの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の放射線画像化ユニットを、MRIシステムと共に模式的に示す斜視図。
【
図29A】人体の頭部内の画像化に用いる放射線画像化ユニットを、MRIシステムにおけるボアの上下方向からみた断面を模式的に示す図。
【
図29B】
図29Aの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の放射線画像化ユニットを、MRIシステムにおけるボアの上下方向からみた断面を模式的に示す図。
【
図29C】人体の頭部内や首部内の画像化に用いる放射線画像化ユニットを、MRIシステムにおけるボアの上下方向(ボアの径方向のうちのY方向)からみた断面を模式的に示す図。
【
図30A】頭部を囲う複数の放射線検出器モジュールを単一のシールドケージを用いてシールドした頭部用の放射線画像化ユニットを示す図。
【
図30B】
図30Aの頭部用の放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の頭部用の放射線画像化ユニットを示す図。
【
図31A】人体の頭部における胴体部側(首部側)及び頭頂部側を解放し、かつ人体の頭部の顔面側及び後頭部側を開口させて、頭部を包囲する放射線画像化ユニットを示す図。
【
図31B】
図31Aの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の放射線画像化ユニットを示す図。
【
図32A】筒状の一対の胸部包囲用モジュール群が設けられた放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図。
【
図32B】
図32Aの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図。
【
図32C】中空の逆円錐台形状の一対の胸部包囲用モジュール群が設けられた放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図。
【
図32D】患者における画像化領域の上方及び/又は下方に追加の放射線検出器モジュール312を備えた放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図。
【
図32E】
図32Dの放射線画像化ユニットとは一部構造が異なる他の放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図。
【
図33A】放射線画像化ユニットを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図33B】送信用RFフィールドの透過性能をより良好に得るために、上方及び/又は下方に開口部を備えた放射線画像化ユニットを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図。
【
図35A】円形ループコイルを備えた例における渦電流の作用を説明するための、MRIシステムのボア内に同軸的に配置された筒状の放射線画像化ユニットの例を示す図。
【
図35B】同じく、MRIシステムのボアの径方向に開口する開口部を備えた筒状の放射線画像化ユニットの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0067】
図1Aは、円環状(筒形状)に構成されたモジュール状RFシールド型の放射線画像化ユニット200とMRIシステム100とを備えたハイブリット画像化システムを例示している。本実施形態に係る放射線画像化ユニット200は、MRIシステム100(MRI本体)のボア内に挿入されるかたちで配置されるインサート型(入れ子型)のPET用ユニットであって、具体的には、前記ボア内における患者ベッド102の上方に配置されている。MRIシステム100は、少なくとも、静磁石と、傾斜コイルアセンブリ110と、組込RFコイル(送信用RFコイル)130と、を備えている。このMRIシステム100では、高感度のMR画像化のために、画像化領域(ROI:Region of Interest)に近付けて配置された局所RFコイル(受信用RFコイル)134をRFレシーバとして用いてもよいが、組込RFコイル130を、RFレシーバとして用いることもできる。
【0068】
放射線画像化ユニット200は、前述したように、MRIシステム100と共にハイブリッドで画像化を行うための複数の放射線検出器モジュール210を有する。個々の放射線検出器モジュール210は、互いに電気的に絶縁されており、後述するように、1つ以上の放射線検出器212、シールドケージ214、伝送ケーブル222、ケーブル用シールド230、を少なくとも備えている。シールドケージ214は、所定の位置に開孔218を有し、放射線検出器212を内部に収容しつつシールドする。伝送ケーブル222は、シールドケージ214内で放射線検出器212に電気的に接続されていると共に、シールドケージ214内から開孔218を介してMRIシステム100のボアの外側に延びている。ケーブル用シールド230は、シールドケージ214とは電気的に絶縁され、かつ伝送ケーブル222の少なくとも一部をシールドする。後述する
図1Cに示すように、ケーブル用シールド230とシールドケージ214との間には、シールド間ギャップ239が設けられている。
【0069】
ここで、後記の
図1Cに示すように、伝送ケーブル222は、データ信号を伝送するデータ伝送ケーブルを少なくとも有し、かつ、シールドケージ214内から、開孔218を通って、当該データ伝送ケーブルで伝送されるデータ信号とMRIシステム100の磁場強度との干渉を回避し得る第1の位置を越えてMRIシステム100の外側へ延びている。ケーブル用シールド230は、
図1Cに示すように、伝送ケーブル222における前記第1の位置から開孔218側に近付く第2の位置までの区間を少なくともシールドする。なお、前述した第1、第2の位置は、MRIシステム100及び放射線検出器212における実機の性能や、これらの機器の仕様などに基づいて、それぞれの位置が定められるものであってもよい。
【0070】
図1Aに示すように、放射線画像化ユニット200は、等間隔に配置された複数の放射線検出器モジュール210で、画像化領域を囲む完全リング構造(又は部分リング構造)を有する。各放射線検出器モジュール210は、内蔵されている例えばPET用の放射線検出器212及び検出器前段回路220が、ボックス形状のシールドケージ(ファラディシールドケージ)214によって、電磁波などからの遮蔽のために個別にシールド(RFシールド)されている。シールドケージ214は、連続的につながる導電シート、メッシュ構造の導電シート、及びスリットの設けられた導電シートのうちの少なくとも1つの導電シートを材料に用いて構成されている。検出器前段回路220は、画像再構成のための後段の電子部品との間でのデータのやり取りなどを行う。隣り合う放射線検出器モジュール210どうしの間の開放スペース又はギャップをモジュール間ギャップ240と称する。モジュール間ギャップ240は、MRIシステム100のボアの例えば周方向に沿って空けられた周方向ギャップなどである。つまり、
図1Aに示すように、複数の放射線検出器モジュール210は、MRIシステム100のボアの周方向に沿って互いにモジュール間ギャップ(周方向ギャップ)240を空けつつ環状(円環状)に配置されている。さらに、環状に配置された複数の放射線検出器モジュール210の外側又は内側に、核磁気共鳴画像化(MR画像化)のための送信用コイルが配置されている。
【0071】
動作モードにおいて、MRIシステム100の組込RFコイル(送信用RFコイル)130からの送信用RFフィールドは、各放射線検出器モジュール210どうしの間のモジュール間ギャップ240を通って放射線画像化ユニット200の内側の画像化領域(ROI)に達する。各検出器モジュール210内の放射線検出器212に電気的に接続される電力伝送(電力供給)ケーブル及びデータ伝送ケーブルを含む伝送ケーブル222は、
図1Cに示されるように、各シールドケージ214の一端側に形成された1つ以上の開孔218を通ってシールドケージ214の内側に引き込まれている。ここで、
図1Bは、従来例を示している。
図1Bに示すように、シールドケージ214とこのシールドケージ214に接続されたケーブル用シールド230とは、電気的に接地されており、送信用RFフィールドが減衰する。しかしながら、放射線画像化ユニット200の外側にある送信用RFコイル(組込RFコイル)130からの送信用RFフィールドの一定量は、モジュール間ギャップを通って画像化領域(ROI)に達することができ、モジュール間ギャップが広くなる程、ROIへの送信用RFフィールドが増加する。
図1Cは、本実施形態の構成を例示したものであって、伝送ケーブル222をRF(高周波)シールドするケーブル用シールド230は接地され、一方、シールドケージ214は、ケーブル用シールド230から絶縁され、グラウンドからフローティングされている。このシールド構造においては、シールドケージ214がケーブル用シールド230と電気的絶縁されていることから、送信用RFフィールドは、グラウンドによって減衰されない。更に、シールドされた放射線検出器モジュール210では、比較的多くの量の送信用RFフィールドが、モジュール間ギャップ240を通ってROIに到達することができる。しかしながら、このシールド構造は、
図1Cに示されるように、シールドケージ214とケーブル用シールド230との組合せによる物理的に不連続な電気的絶縁であるため、組込RFコイル130からの送信用RFフィールドや伝送ケーブル222からの信号ノイズなどの要因で、シールドケージ214とケーブル用シールド230との間の絶縁ゾーン付近に高い相互EM干渉があり、PET用の放射線画像化ユニット200及びMRIシステム100の両装置における画質及び安定性能に影響を与える。そこで、
図1Cの構成例では、絶縁ゾーン付近の相互EM干渉を低減するために、絶縁ゾーンを囲む拡張用シールド(延長用RFシールド)216が設けられている。絶縁ゾーン用RFシールドとして機能するこの拡張用シールド216は、シールドケージ214と接続されている一方で、ケーブル用シールド230とは絶縁(隔離)されている。なお、拡張用RFシールド216を、完全に絶縁するようにしてもよい。
【0072】
図2A~
図2Cは、絶縁ゾーン付近に拡張用RFシールド216を備えた他の絶縁方法をいくつか示す。
図2Aに示す実施形態では、ケーブル用シールド230は、シールドケージ214の内側に向けて延長されているが、シールドケージ214又は放射線検出器モジュール210内の他の構成要素とは何ら物理的に接続されておらず、シールドケージ214からは電気的に絶縁されている。
図2B示す実施形態及び
図2Cに示す参考例では、絶縁ゾーンへの強いRFフィールド結合(RFフィールドカップリング)を回避するために、組込RFコイル(送信用RFコイル)130の主なFOV(Field Of View/有効視野)から比較的遠い距離で電気的絶縁が行われており、組込RFコイル130からのRF送信フィールドに対して感度が低くなるように絶縁ゾーンを構成している。特に、
図2Cに示す参考例では、絶縁ゾーンの後段側のケーブル用シールド230を取り除けるようにしている。
図1C及び
図2Aに示すように、シールドケージ214に近い電気的絶縁の場合、伝送ケーブル222を通過させるための開孔218は、組込RFコイル(送信用RFコイル)130の位置に対して、
図3A、
図3Bに示されるようにシールドケージ214の後段側に設けられる。
【0073】
図3Aは、MRIシステム100に内蔵された組込RFコイル130のように、放射線検出器ユニット200の外側に位置する送信用RFコイル136の例を示し、
図3Bは、放射線検出器ユニット200の内側に位置する送信用RFコイル138の例を示す。
【0074】
非常に小型のシールド構造の場合、絶縁ゾーン内のシールド間の容量性結合を減らすため、シールドケージとケーブル用シールドとの間に1つ以上の分離回路(例えばキャパシタ)を設けることもできる。
【0075】
図4A~
図4Cに、分離回路300が用いられた、いくつかの構成例を示す。
図4Aは、絶縁ゾーン用の拡張用RFシールド216とケーブル用シールド230との間に分離回路300を介在させた構成例を示している。
図4Bは、拡張用RFシールド216とケーブル用シールド230との間に分離回路300を介在させ、さらに、ケーブル用シールド230とシールドケージ214の開孔218の周縁部を筒状に延出させた部位との間に分離回路300を介在させた構成例を示している。
図4Cは、シールドケージ214とは絶縁されている絶縁ゾーン用の拡張用RFシールド216とケーブル用シールド230との間に分離回路300を介在させた構成例を示している。他方、
図5A、
図5Bは、開孔218A、開孔218Bが設けられたシールドケージ214のシールド効率について説明するための図である。
図5Aは、シールドケージ214中の(送信用RFフィールドの吸収によって発生する)RF渦電流の円滑な流れが、シールドケージ214の大きな開孔218Aによって阻止され、シールドケージ214のシールド効率が低下する例を示している。一方、
図5Bは、幾つかの小さな開孔218Bを設けることによってシールドケージ214中のRF渦電流の円滑な流れが増大し、1つの大きな開孔218Aを備えたシールドケージ214に比べてシールド効率が向上する例を概念的に示している。
【0076】
図6A~
図6Cは、伝送ケーブル222を通過させるための一つの大きな開孔を設ける代わりに、複数の小さな開孔を設けた例を示す。上記した開孔だけであっても十分に機能するが、シールドケージのシールド効率を改善するために、シールドケージ214に接続されている一方で、ケーブル用シールド230から絶縁された細い導電パイプで構成されているシールドパイプ250が用いられる。より具体的には、シールドパイプ250は、シールドケージにおける開孔218の外縁部分に接続されていると共に、ケーブル用シールドとは非接触な状態で、ケーブル用シールド230の内側又は外側から伝送ケーブル222の少なくとも一部をシールドする。一方、伝送ケーブル222は、絶縁されているか、及び/又はセルフシールドされている。
図6A~
図6Cでは、他のシールドから完全に絶縁された拡張用RFシールド(絶縁ゾーンを囲む延長用RFシールド)216が示されているが、シールドケージ214に接続されていてもよい。この拡張用RFシールド(拡張用シールド)216は、シールドパイプ250におけるシールドケージ214の端部から外側に突出した部位とケーブル用シールド230の少なくとも一部とをこれらの外周側からまとめて覆う。
図6Bでは、シールドケージ214の内側の伝送ケーブル222を通過させるための細いシールドパイプ(導電パイプ)250が、シールドケージ214の表面から外側に突出するように設けられている。これに対して、
図6Cに示されるように、シールドパイプ250の一部がシールドケージ214の内側にあってもよい。いずれの場合も、シールドパイプ250は、シールドケージ214に接続されていてもよい。シールドケージ214に複数の小さな開孔218と細いシールドパイプ(導電パイプ250)を設けるこの構成は、
図7A、
図7Bに参考例として示すように、全てのシールドが接地された場合にも適用してもよい。
【0077】
この一方で、
図1C、
図2A、
図3A、
図3B、
図4A~
図4C、
図6B、
図6Cに示したような電気的絶縁の場合、シールドパイプ(導電パイプ)250は、
図8A~
図8Dに示すように、ケーブル用シールド230の全体又は一部からも絶縁される。
図1C、2A、
図3A、
図3B、
図4A~
図4Cと同様に、絶縁ゾーンを囲む拡張用(延長用)RFシールド216は、
図8A~
図8Dに示す構成例で使用されるシールドケージ214に対して、
図6B、
図6Cにおいて絶縁の構成として示されているように、必ずしも必要ではないが接続されている。この絶縁ゾーンを囲む拡張用RFシールド216は、絶縁ゾーンを通しての相互干渉を減らすためにシールドパイプ250の外側長さ(シールドケージ214の外側に突出している長さ)よりも長くするべきである。同軸ケーブルのようなセルフシールドケーブルの場合、ケーブル用シールド230を、参考例として
図8Dに示すように取り除くことができる。このような場合、拡張用RFシールドは、絶縁ゾーン内の外部EM干渉を避けるために、MRIシステムの強いRFフィールドFOVから絶縁ゾーンをシールドするように長いことが好ましい。この構造は、全ての伝送ケーブルに対して大きな一つの開孔を設ける場合にも適用できる。さらにこの構造は、
図9A、
図9Bに示すように、
図3A、
図3Bと同様な構成において、複数の小さな開孔250を設ける場合にも適用できる。
【0078】
複数の放射線検出器モジュールを有する放射線画像化ユニット200においては、
図10A~
図10Cに示すように、絶縁ゾーンを介したRF干渉作用を更に低減するために、追加のシールド構造395が設けられている。追加のシールド構造395は、複数の放射線検出器モジュール210の所定部位に対するシールドを一体的に行うものであって、RFシールドレイヤー400及び/又はRFシールド板410で構成される。RFシールドレイヤー400は、前記複数のシールドゲージそれぞれの前記開孔を少なくとも含む部位(言い換えると、シールドケージ214内に引き込まれている伝送ケーブル222の端部)を、一体的に包囲するように例えば導電シートを用いて筒状に形成されている。一方、RFシールド板410は、環状に構成される放射線画像化ユニット200本体の軸方向における少なくとも前記開孔218と画像化領域(ROI)との間の位置で、かつ放射線画像化ユニット200本体の内周側で、その径方向に沿って広がるシールド板である。
【0079】
なお、上述してきた放射線画像化ユニット200では、このような追加のRFシールド構造395がなくても十分なRFシールド効果は得られる。
図10Aは、放射線画像化ユニット200が筒状で、追加のシールド構造395がシールドケージに接続又は絶縁され、さらにケーブル用シールド230から絶縁され、また放射線画像化ユニット200の外側に送信用RFコイル130がある場合のRFシールドレイヤー400を示している。放射線画像化ユニット200が楕円状の場合には、この形状に対応させてRFシールドレイヤー400の形状も変更することになる。放射線画像化ユニット200の内側には、画像化領域(ROI)に近付けて配置される局所的な高感度RFコイルを用いることが望ましい。高感度RFコイルが送信用RFコイル及び受信用RFコイルのいずれの場合も、ケーブル用シールド230へのRF干渉、又は、シールドケージとケーブル用シールド230との間の絶縁ゾーンへのRF干渉を減らすために、シールドレイヤー400にさらに加えて、
図10Bに示すように、シールドケージと接続(又は絶縁)されていると共に、放射線画像化ユニット200の径方向に沿って広がる例えば円板状のRFシールド板410を放射線画像化ユニット200の内側に用いることができる。
図10Cに示すように、送信用及び受信用のRFコイル138Aが共に画像化ユニット200の内側に位置する場合は、RFシールド板410のみを用いることができる。
【0080】
図10A~
図10Cに例示した追加のシールド構造と同様に、放射線検出器の性能に悪影響が与えられることを抑えるために、
図2B、
図2Cに示したように、RFフィールド(RF場)がかなり弱まるところまで(シールドケージから例えば20cm離れる位置まで)、電気的絶縁がなされたシールド構造を有する放射線検出器モジュールの場合、
図11Aに示すように、ケーブル用シールド通過孔422を備えた円板状のRFシールド板410と、
図11B、
図11Cに示すように、筒状のRFシールドレイヤー400とを組合せた追加のシールド構造が、絶縁ゾーン(隔離域)を介してのRF干渉を低減するために、放射線画像化ユニットに対して適用される。放射線画像化ユニットについては、放射線検出器モジュール間の分離(デカップリング)作用を改善するいくつかの構成が考えられる。後述する構成は、MRIシステムの組込RFコイルのように、送信用RFコイルが放射線画像化ユニットの外側にあり、画像化領域へのモジュール間ギャップを介してのRFフィールドの浸透が増える場合に特に有効である。広いモジュール間ギャップは、シールドケージ(放射線検出器モジュール)間の分離作用を改善する。分離作用を更に改善する一つの方法では、
図12A~
図12Dに示すように、放射線画像化ユニットの外周側における放射線検出器モジュールどうしの間にかなり広いモジュール間ギャップ240が与えられる。ここで、
図12Aは、放射線画像化ユニットの外周側における放射線検出器モジュールどうしの間に広いモジュール間ギャップ240が与える構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が台形状のシールドケージ214を用いた例を示している。また、
図12Bは、上記構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が矩形状のシールドケージ214を用いた例を示している。さらに、
図12Cは、上記構成例のうち、ボアの軸方向からみた外形が矩形状でかつ外形のエッジ部が曲率面で構成されているシールドケージ214を用いた例を示している。さらに、
図12Bは、モジュール間ギャップ240を介した画像化領域(ROI)へのRFフィールドの浸透作用を改善するために、矩形状の複数のシールドケージを円環状に間欠的に配置することで、外周側のモジュール間ギャップ240を広げた筒状の放射線画像化ユニットを示している。詳述すると、
図12Bに示すように、環状に配置された複数の放射線検出器モジュール210で構成される放射線画像化ユニット200本体の外周側のモジュール間ギャップ(周方向ギャップ)240は、放射線画像化ユニット200本体の内周側のモジュール間ギャップ(周方向ギャップ)240よりも広くなっている。上記の外周側の周方向ギャップは、例えば3mmであり、内周側の周方向ギャップは、例えば1mmである。また、このような放射線画像化ユニット200本体は、画像化領域の形状に倣った形状で構成されている。この一方で、画像化領域(ROI)を矩形状に囲むように複数の放射線検出器モジュールを配置するフラットパネル設計では、シールドケージ(放射線検出器モジュール)間の内周側及び外周側のモジュール間ギャップは同じになる。
【0081】
シールドケージ(放射線検出器モジュール)間の分離を更に増加させる他のアプローチでは、
図13A~
図13Dに示すように、マルチリング構造の放射線画像化ユニットが採用される。つまり、複数の放射線検出器モジュール210それぞれは、MRIシステム100のボアの軸方向に沿ってリングギャップ(軸方向ギャップ)234を空けつつ複数の分割モジュール(リング1、2、3…)に分割された分割構造(マルチリング構造)を有する。これら複数の分割モジュール(リング1、2、3…)は、それぞれシールドされていると共に、ケーブル通過孔(通路)232が設けられている。伝送ケーブル222は、ケーブル通過孔232を介して配線されている。
【0082】
言い換えると、このマルチリング構造では、放射線画像化ユニット中の放射線検出器モジュール(シールドケージ)が、
図13Aに示すように、更に、MRIシステムのボアの軸方向(Z軸)に沿って、伝送ケーブル通過用のシールドされた狭いケーブル通過孔232を介し、複数の分割モジュール(リング1、2、3…)に分割される。この形態の放射線画像化ユニットでは、MRIシステムのボアの周方向に沿って空けられたモジュール間ギャップ(周方向ギャップ)240に加えて、MRIシステムのボアの軸方向に沿って空けられたリングギャップ(軸方向ギャップ)234が導入される。このようなマルチリング構造の更なる具体例として、
図13Bに示すように、各放射線検出器212を個別の分割モジュールに収容すると共に、これらに対応する複数の検出器前段回路220を例えば末端の一つの分割モジュールにまとめて収容した放射線画像化ユニットを構成してもよい。また、
図13Cに示すように、複数組の放射線検出器212を複数の分割モジュールにそれぞれ収容し、かつ、例えば一組の放射線検出器212と、他の複数組の放射線検出器212に対応する複数の検出器前段回路220と、を例えば末端の一つの分割リングモジュールにまとめて収容した放射線画像化ユニットを構成することもできる。このような構成の場合、MRIシステムのボアの径方向におけるシールドケージの高さが減少し、さらにシールドケージ間の結合が低減するので、放射線画像化ユニットの外側にある送信用RFコイルからROIへのRFフィールドの浸透性能が改善される。その他のアプローチにおいては、
図13Dに示すように、放射線検出器と検出器前段回路との組を、個々の分割リングモジュール中に取付けるようにしてもよい。シールドケージ間の分離作用を更に向上させるための他の構成例としては、
図14に示すように、完全リング構造を有する放射線画像化ユニット200において、放射線検出器モジュール210(シールドケージ214)どうしの間に分離回路300を介在させる構成などを例示できる。
【0083】
図15A、
図15Bは、解放部202が1か所又は2箇所に設けられた部分リング構造を有する放射線画像化ユニット200をそれぞれ示している。部分リング構造は、モジュール間ギャップ(周方向ギャップ)240を空けつつ複数の放射線検出器モジュール210を環状(円環状)に配置して構成される放射線画像化ユニット200本体に対して、モジュール間ギャップ240を超える幅の間隙である解放部202を、周方向の所定の区間に設けている。部分リング構造を適用している場合、放射線検出器モジュール210(シールドケージ214)が所定角度分、部分的に大きく離間し、完全リング構造よりも分離作用が高まるため、部分リング構造を有する放射線画像化ユニット200では、分離回路300を必ずしも設けなくてもよい。画像化領域(ROI)のRFフィールド効率を更に改善するために、
図16A~
図16Cに示すように、高誘電率材料を用いて構成された誘電体スラブ(誘電部材)310を画像化領域の近くに設けてもよい。
図16A~
図16Cに示す構成例では、誘電体スラブ310は、放射線画像化ユニット200本体と画像化領域(ROI)との間に介在されている。
図17は、ROIを囲むRFシールドを備えたMRIシステム100を、ボアの軸方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0084】
図17では、MRIシステム100の組込RFコイル130が、トランスミッターとして用いられており、ROIを囲むRFシールド132を図示している。
【0085】
図18は、シールドが接地されたRFシールドを備えたMRIシステム100を、ボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0086】
図18に示すように、電気的に接地されたRFシールドは、グラウンドGNDに対して大きなRFフィールドの減衰を与え、ROIへの送信用RFフィールドは小さくなる。
【0087】
図19は、グラウンドから絶縁されたRFシールドを備えたMRIシステム100を、ボアの径方向から断面(軸横断面)を示す図である。
【0088】
図19に示すように、グラウンド(GND)から絶縁されたRFシールドは、グラウンドへはRFフィールドを与えず、シールド内でのRFフィールドの減衰が小さく、ROIへ大きな送信RFフィールドを与える。その結果、RF電力が少なくなる。そして、MRIシステム単体の場合と同様のRFフィールドの分配が残る。
【0089】
図20は、コイルの強いRFフィールドから遠く離れた電気的絶縁の作用について説明するためのMRIシステム100をボアの径方向(水平方向)からみた断面を示す図である。
【0090】
図20において、102Aは磁石、110Aは傾斜コイル、200はRFシールドされた放射線画像化ユニットである。
図20に示すように、強いRFフィールド中での電気的絶縁は、大きなノイズを生じさせる。強いRFフィールドの外側での絶縁は、設計の複雑さを軽減する。
【0091】
図21A、
図21Bは、フローティング又は電気的絶縁の利点を説明するための放射線画像化ユニットをボアの径方向からみた断面(軸横断面)を模式的に示す図である。
【0092】
図21A、
図21Bに示すように、フローティング又は電気的絶縁は、放射線画像化ユニット210の外側(
図21A)、内側(
図21B)のどちらの位置の送信用コイル136、138に対してもコイル負荷を減らし、送信RFフィールドの減衰を低減する。
【0093】
図22は、分離回路を用いた送信用RFフィールドの増強について説明するためにMRIシステム100をボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0094】
図22に示すように、シールドケージ内の容量結合は、ROIへのRFフィールドの浸透を減少させる。分離(デカップリング)は、シールドケージ間のギャップを広げるか、及び/又は、分離回路300を用いることによって可能である。但し、広すぎるギャップはよいわけではない。
【0095】
図23A、
図23Bは、誘電体材料として高誘電率(HDC)材料を用いた場合の送信用RFフィールドの増強について説明するためにMRIシステムをボアの径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。高誘電率材料500は、既存の1次的なRFフィールド(1次磁場)に加えられる2次的なRFフィールド(2次磁場)を発生させる。
【0096】
図24は、高誘電率材料を用いたRFフィールドの増強について、具体的に説明するための模式図である。
【0097】
【0098】
ここで、Bは磁場、Eは電場、σは導電率、εは透磁率、(4)式中の右辺第1項はコイル中の誘導電流、右辺第2項は誘電材料中の変位電流である。
【0099】
1次的なRFフィールドは、コイル中の誘導電流から発生する。
【0100】
変化するRFフィールドにより、双極子510が変位電流を発生させ、これが2次磁場を誘発する。この2次磁場が既存の1次的な磁場に加えられる。
【0101】
図25Aは、高誘電率材料を用いてRFフィールドの増強を行う改善法1について説明するためにMRIシステム100を径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
図25Bは、同じく改善法2について説明するためにMRIシステム100を径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。 高誘電率材料500は、既存の1次的なRFフィールドに加えられる2次的なRFフィールドを発生させる。
【0102】
図26は、ボディ対応型PET用の放射線画像化ユニットがボア内に配置されたMRIシステムを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0103】
水平向きボアを有するMRIシステムに対して形状を対応させた筒状の放射線画像化ユニットのように、放射線画像化ユニットが送信用RFコイルと同軸的に配置されていると、画像化領域の外側及び放射線画像化ユニットの外側に位置する送信用RFコイルのRFフィールドの浸透性能は、放射線画像化ユニット内に設けられたRFシールドの影響によって大幅に低下する。ここで、単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギ量である比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)やRF電力を増大させればRFフィールドの浸透性能を改善することができる。水平向きボアを有するMRIシステムにおいて、当該ボア内の前側、後側、右側、左側などから画像化領域を囲む複数の放射線検出器モジュールのレイアウトは、RF電力を大きく増加させることなく、MRIシステムからのRFフィールドの浸透性能を十分に与えることができる。
【0104】
他の構成例は、画像化領域(人体の頭部)の左側、右側、及び/又は頭頂部側から頭部を囲む頭部用(脳画像化用)のリング構造を有する放射線画像化ユニットであり、MRIシステムのボア内の患者ベッドに対して、当該リング構造における互いに対向する一対の開口面が上下を向くように配置される。これらの放射線画像化ユニットは、画像化領域を囲む全方向(360°方向)に放射線検出器モジュールが配置されている完全リング構造や、例えば、画像化領域の左側、右側及び/又は頭頂部側から人体の頭部を囲む頭部用の放射線画像化ユニットなどで例示した、所定の角度領域の放射線検出器モジュールを除いた部分リング構造を適用できる。
【0105】
図27A~
図27Cは、MRIシステム100及び人体の頭部用(脳画像化用)の放射線画像化ユニットを概略的に示している。
図27Aは、頭部用の放射線画像化ユニットがボア内に配置されたMRIシステム100を径方向からみた断面(軸横断面)を示している。また、この
図27Aでは、例えば組込RFコイル132と傾斜コイルアッセンブリ110とを含むMRIシステム100を例示している。
図27Aに示すように、放射線画像化ユニットは、MRIシステム100のボア内の患者ベッド102の上方に位置されている。この放射線画像化ユニットには、画像化領域(ROI)の上方及び下方に対応する位置に、開口部150が設けられている。放射線画像化ユニットの開口部150は、MRIシステム100のボアの上下方向(鉛直方向)に沿って、放射線画像化ユニット本体を貫通する貫通穴によって構成されており、
図27AのX-Z平面に沿った一対の開口面を有する。MRIシステム100では、組込RFコイル132がトランスミッター(送信用RFコイル)として使用され、画像化領域に近接している局所RFコイル134がレシーバ(受信用RFコイル)として使用される。この場合の局所RFコイル134(受信用RFコイル)は、フェイズドアレイ表面コイルであることが好ましい。
【0106】
図27Bは、組込RFコイル(送信用RFコイル)132及び局所RFコイル(受信用RFコイル)134を含むMRIシステム、並びに放射線画像化ユニットの斜視図を模式的に示している。ここで、放射線画像化ユニットは、
図27Bに示すように、画像化領域(ここでは例えば人体の頭)に対する3つの側、例えば、画像化領域の上側及び下側(顔面側及び後頭部側)並びに首側、を開放スペースに残し、画像化領域を3つの側から、例えば、左側及び右側並びに頭頂部側から、囲んでいる。この放射線画像化ユニットは、上述した画像化領域を複数の放射線検出器モジュールで間欠的に囲んでいるその周方向に沿ってモジュール間ギャップを有する。
【0107】
図27Cは、組込RFコイル(送信用RFコイル)132及び受信用RFコイル134を含むMRIシステム、並びに放射線画像化ユニットの斜視図を模式的に示している。ここで、放射線画像化ユニットは、
図27Cに示すように、画像化領域(ここでは例えば人体の頭)に対する3つの側、例えば、画像化領域の上側、下側及び頭頂側、を開放スペースとし、画像化領域をその他の2つの側から、例えば左側及び右側から、囲んでいる。
【0108】
より具体的には、
図27A~
図27Cに示す放射線画像化ユニット200は、MRIシステム100のボア内に配置され、MRIシステム100と共にハイブリッドで画像化を行うための放射線検出器212をそれぞれ備えた複数の放射線検出器モジュール210を有する。
図27A~
図27Cに示す放射線画像化ユニット200では、核磁気共鳴(MR)画像化のための送信用RFコイル130は、放射線画像化ユニット200本体の外側に配置されている。一方、核磁気共鳴画像化のための受信用RFコイル134は、放射線画像化ユニット200本体の内側に配置されている。複数の放射線検出器モジュール210は、MRIシステム100のボア内で画像化領域(ROI)を囲うようにそれぞれ配列されていることによって放射線画像化ユニット200本体を構成している。放射線画像化ユニット200本体は、画像化領域をMRIシステム100の径方向(
図27A~
図27Cの例ではY方向)に開口させる開口部150を有する。開口部150は、
図27A~
図27Cに示すように、前記径方向に沿った1つの視野(Y方向に沿った視野)において画像化領域の全体を開口させる。
【0109】
なお、MRIシステムの傾斜コイルは、筒状に構成されている。MRIシステムのボア内で傾斜コイルと同軸的に配置される放射線画像化ユニットでは、傾斜コイル中の傾斜電流が当該放射線画像化ユニットのシールド材料中に鏡像状の渦電流を生じさせる。つまり、シールドにより長い崩壊時定数を有する渦電流の大きなループが発生する。この一方で、
図27A~
図27Cに示すように、MRIシステムのボアの径方向(例えば上下方向)に大きく開口する放射線画像化ユニットに設けられた開口部は、渦電流の大きなループの発生を阻害し、ROI中の2次的な傾斜渦電流フィールドによるアーチファクト像を減少させる。
【0110】
また、上記した放射線画像化ユニットでは、
図27B、
図27Cに示すように、複数の放射線検出器モジュール210どうしは、各々の配列方向に沿って配列方向ギャップ(モジュール間ギャップ)を空けつつ間欠的に配置されている。これら複数の放射線検出器モジュールどうしの間(配列方向ギャップ)に、分離回路を介在させてもよい。
【0111】
図28A、
図28Bは、
図27A~
図27Cに例示した放射線画像化ユニットとは一部構成が異なる他の放射線画像化ユニットを示している。
図28A、
図28Bに示す放射線画像化ユニットでは、複数の放射線検出器モジュールそれぞれは、リングギャップ234Aを空けつつ複数の分割モジュール(リング#1、#2、#3など)に分割されたマルチリング構造(分割構造)を有する。
図28Aに示す放射線画像化ユニットは、放射線検出器モジュール210を複数に分割した分割モジュールのうちのいくつかが、MRIシステム100のボアの周縁に沿うように傾いた状態(
図28A中のリング#1、#3が傾いた状態)で配置されている。一方、
図28Bに示す放射線画像化ユニットも、放射線検出器モジュール210を複数に分割した分割モジュールのうちのいくつかが、MRIシステム100のボアの周縁に沿うように傾いた状態(
図28B中のリング#2が傾いた状態)で配置されている。
【0112】
図29A~
図29Cは、人体の頭部(脳)90内や首部92内の画像化に用いる放射線画像化ユニットを、MRIシステム100におけるボアの上下方向(ボアの径方向のうちのY方向)からみた断面(X-Z断面)を模式的に示す図である。
図29A~
図29C、及び、後述する
図30A、
図30B、
図31A、
図31Bに示す放射線画像化ユニット200本体は、
図29A~
図29Cに示す配列方向ギャップ241を超える幅の間隙である解放部202Aを、前記配列方向に沿った所定の区間に1箇所以上設けた部分リング構造を有する。さらに、放射線画像化ユニット200が備えるシールドケージ214は、
図29A~
図29Cに示すように、個々の放射線検出器モジュール210単位で放射線検出器214をシールドする。または、シールドケージ214は、
図30A、
図30Bに示すように、放射線画像化ユニット200本体内の全ての放射線検出器212を一体的にシールドする。または、シールドケージ214は、
図31A、
図31Bに示すように、解放部202Aが2箇所以上設けられている場合に2箇所以上の解放部202Aによって放射線画像化ユニット200本体から複数個に分割された分割ユニット群200Dの単位で放射線検出器212をシールドする。
【0113】
詳述すると、
図29Aに示す環状の放射線画像化ユニット204は、人体の頭部における胴体部側(首部92側)を解放部202Aを介して開放し、かつ顔面側及び後頭部側を開口させた状態、言い換えると、MRIシステム100におけるボアの上下方向に沿って貫通する開口部(貫通穴)150を有する状態で、頭部90を円形状に囲んでいる。これに対して、
図29Bに示す放射線画像化ユニット204は、頭部90を楕円状に囲んでいる。また、
図29Cに示す放射線画像化ユニットは、頭部90と首部92の両方の画像化に適した形状を有し、首部92の周辺も囲われている。これらの放射線画像化ユニットは、MRIシステムのボア内において、人体の胴体部側を開放し、かつ顔面側及び後頭部側を開口させるかたちで、主に頭部90を包囲するように、複数の放射線検出器モジュール210が間欠的に配列されている。
【0114】
図30A、
図30Bは、頭部90を囲う複数の放射線検出器モジュールを単一のシールドケージ214を用いてシールドした頭部用の放射線画像化ユニットを示している。なお、
図30Aは円形状、
図30Bは楕円状に頭部90を包囲する放射線画像化ユニットを例示している。ここで、
図30A、
図30Bに示す放射線画像化ユニットを、MRIシステム100におけるボアの上下方向(
図30A、
図30Bに示すY方向)に分割し、これによって、円形状又は楕円状に頭部を囲う複数の分割モジュールの群からなるマルチリング構造の放射線画像化ユニットを構成し、上下方向の位置が異なる分割モジュールの群どうしの間に(前記の上下方向に)リングギャップを設けるようにしてもよい。なお、上下方向の位置がそろっている分割モジュールの群どうしは、各々単一のシールドケージによってシールドされる。
【0115】
図31A、
図31Bは、人体の頭部における胴体部側(首部側)及び頭頂部側を2つの解放部202Aを介してそれぞれ解放し、かつ人体の頭部の顔面側及び後頭部側を開口部150を介して開口させ、それぞれ、間欠的な円形状、間欠的な楕円状に頭部を包囲する放射線画像化ユニットを例示している。
【0116】
他方、
図32A~
図32Eに示す構成例では、複数の放射線検出器モジュールは、人体の胸部に対応する一対の胸部用画像化領域(ROI 1、ROI 2)を各々囲うように配列されていることによって一対の胸部包囲用モジュール群210Eを含む放射線画像化ユニット200本体を構成し、一対の胸部包囲用モジュール群210Eそれぞれは、個々の胸部用画像化領域を前記ボアの径方向に開口させる胸部用開口部150Aを有する。
【0117】
上記した
図32A~
図32Eは、筒状又は中空の逆円錐台形状にそれぞれ構成されている一対の胸部包囲用モジュール群210Eが設けられた放射線画像化ユニットを、MRIシステムのボアの軸方向からみた断面図である。
【0118】
ここで、
図32A~
図32Cに示す放射線画像化ユニットにおける個々の胸部包囲用モジュール群210Eの胸部用開口部150Aは、水平向きボアを有するMRIシステムの当該ボアの上下方向に開口している。なお、
図32Bに示す放射線画像化ユニットは、一対の胸部包囲用モジュール群210Eどうしの隣接部分において、2セット分の複数の放射線検出器を1つのシールドゲージ内に収容した放射線検出器モジュールが、設けられている。
【0119】
また、
図32D、
図32Eに示すように、患者における胸部用画像化領域の上方(うつ伏せの患者の背中側)、及び/又は、患者における画像化領域の下方(うつ伏せの患者の腹側)に追加の放射線検出器モジュール312を設けることにより、特に、乳癌患者の胸骨近くの腫瘍に対する検出効率をさらに改善すると共に、精密な腫瘍検出のための自由度を高めることができる。
【0120】
図33A、
図33Bは、送信用RFフィールドの透過性能をより良好に得るために、上方及び/又は下方に開口部を備えた放射線画像化ユニットを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0121】
図33Aに示す従来例では、比較的大きなRF電力の増加が必要であるのに対して、
図33Bに示す実施形態では、RF電力を増加させる必要性が低減し、MRIシステム単体の場合と同様の応答性が得られる。
【0122】
図34Aは、渦電流が形成される原理を示す図であり、
図34Bは渦電流の作用を示す図である。
【0123】
図34Bに示すように、渦電流は、電流の変化によって、変化と逆向きに発生する。
【0124】
図35A、
図35Bは、円形ループコイルを備えた例における渦電流の作用を説明するための放射線画像化ユニットを径方向からみた断面(軸横断面)を示す図である。
【0125】
図35Aに、MRIシステムのボア内に同軸的に配置された筒状の放射線画像化ユニットの例を示し、
図35Bに、MRIシステムのボアの径方向に開口する開口部を備えた筒状に形成される放射線画像化ユニットの例を示す。
【0126】
なお、上記した実施形態ではPET用の放射線画像化ユニットを例にとって説明していたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、SPECT用の放射線画像化ユニットやコンプトン式の放射線画像化ユニットなどを含む種々の仕様の放射線画像化ユニットにも本発明を同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
既存のMRIシステムに組込んでPET/MRIハイブリッドシステムを容易且つ安価に実現でき、極めて高い有用性を有する。
【符号の説明】
【0128】
100…MRIシステム
130…組込RFコイル(送信用RFコイル)
134…局所RFコイル(受信用RFコイル)
200…放射線画像化ユニット
210…放射線検出器モジュール
212…放射線検出器
214…シールドケージ
222…伝送ケーブル
218…開孔
230…ケーブル用シールド
234…リングギャップ
240…モジュール間ギャップ
250…シールドパイプ(導電パイプ)
300…分離回路
395…追加のRFシール構造