(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】暗視アイピース
(51)【国際特許分類】
G02B 23/14 20060101AFI20240719BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240719BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20240719BHJP
G02B 23/16 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G02B23/14
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G02B25/00
G02B23/16
(21)【出願番号】P 2021549898
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020020129
(87)【国際公開番号】W WO2020180610
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-24
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521375287
【氏名又は名称】マラノン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ニルス
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-139819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112137(US,A1)
【文献】特開昭60-163009(JP,A)
【文献】特開平06-160685(JP,A)
【文献】特開2004-233483(JP,A)
【文献】特開2012-254538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/00 - 23/22
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/00 - 21/36
G02B 25/00 - 25/04
G02B 7/02 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの溝を備える一体型焦準機構
と、レンズセルの外周の周り
に延伸する少なくとも1つのシーリング機構
と、を有するレンズセルと、
高分子で作製された少なくとも1つのレンズ素子と、を具備
し、
前記レンズセルの前記少なくとも1つのシーリング機構は、前記レンズセルの外周の周りに延伸する少なくとも1つのシールグランドを具備し、
前記少なくとも1つのシールグランドは、前記一体型焦点機構の前記少なくとも1つの溝に沿って移動する焦点フォロワがシーリング機構の内壁に達したときに、前記焦点フォロワの移動を阻止して焦点を停止させるものであり、
前記レンズセルは、
前記高分子と類似の熱膨張係数を有する材料から作製される、レンズセル組立体。
【請求項2】
前記一体型焦準機構は、ねじ溝である、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項3】
前記ねじ溝は、三条ねじである、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項4】
前記材料は、前記高分子である、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項5】
前記少なくとも1つのシーリング機構は、少なくとも1つのシールグランドを具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項6】
前記レンズセルは、前記少なくとも1つのシールグランド内に位置する、少なくとも1つの円形ばねをさらに具備する、請求項5に記載のレンズセル組立体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの円形ばねは、少なくとも1つの弾性Oリングを具備する、請求項6に記載のレンズセル組立体。
【請求項8】
前記レンズセルは、内部レンズセル壁に位置する、少なくとも1つの面取り部をさらに具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項9】
前記レンズセル組立体は、電磁干渉(EMI)の保護を容易にするための、前記レンズセルの表面に被覆された導電性コーティングをさらに含む、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項10】
前記レンズセル組立体は、EMIの保護を容易にするための、前記少なくとも1つのレンズ素子の表面に被覆された透明な導電性コーティングをさらに含む、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項11】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、少なくとも1つの回折面をさらに含む、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項12】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、少なくとも1つの非球面をさらに含む、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項13】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、前記少なくとも1つのレンズ素子の外周に位置する、少なくとも1つのシーラント溝をさらに具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項14】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、前記少なくとも1つのレンズ素子の外周に位置する、少なくとも1つのエッジチャネルをさらに具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項15】
前記レンズセル又は前記少なくとも1つのレンズ素子の少なくとも1つは、少なくとも1つの一体型スペーサをさらに具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項16】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、前記少なくとも1つのレンズ素子の外周に沿って延伸する、少なくとも1つのエッジねじをさらに具備する、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項17】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、締まりばめにより前記レンズセルに接続される、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項18】
前記少なくとも1つのレンズ素子は、前記レンズセルに一体的に接続される、請求項1に記載のレンズセル組立体。
【請求項19】
少なくとも1つのレンズ素子は、前記レンズセルと同時成型される、請求項18に記載のレンズセル組立体。
【請求項20】
前記レンズセルは、前記少なくとも1つのレンズ素子の形成後に、前記少なくとも1つのレンズ素子にオーバーモールドされる、請求項18に記載のレンズセル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年2月27日出願の、先願で同時係属の米国仮特許出願第62/811,019の利点を主張し、その記載内容を、完全な形で本明細書に引用することで組み込む。
【0002】
本出願は、画像化の分野を対象とする。本出願は、より詳しくは、軍事・民生用の暗視装置、及びそのための改良型アイピースの分野を対象とする。
【背景技術】
【0003】
暗視ゴーグルは、一般的に、構造に固定されるもので、結果として、製品の重量が大きくなる。暗視ゴーグルをヒトの頭部に取り付ける場合、その結果、首に生理的な負荷、痛み、注意力の喪失、さらに損傷の可能性が生じる。ゴーグル重量の主な構成要素は、レンズであって、特に、アイピースである。
【0004】
先行技術のアイピースは、レンズセル、焦点機構、視準調整機構、電磁干渉(EMI)フィルタリング、及び環境シール機構からなることが多く、通常、2~3つの構成要素で組み立てられる。アイピースは、通常、ガラスレンズ素子と、アルミニウム製のセル及びスペーサ等の金属製補助部品とで作製されるため、重量が大きくなり得る。さらに、レンズがゴーグルに組み込まれる場合、焦点リング、絞り、シール等の他の機械的機構を伴い、重量が大きくなる。
【0005】
さらに、アイピースは、両眼視方式では、光学部品が焦点機構にミスアラインメントするため重量が増す。2つのアイピースが双眼鏡の2つのチャネルに組み込まれる場合、各アイピースでこのミスアラインメントが起こるため、結果生じる目に提示される画像は、ミスアラインされる。この欠陥を、ゴーグルレベルでの「視準」誤差と称する。各チャネルが、空間の同一点を視る対象として、それを正確にヒトの目に投影するようにコリメートされるのが理想であろうが、即ち、その画像は、観測者にとって、あたかも観測者がゴーグルに頼らず見るのと同じような物であろう。ゴーグルは、このような誤差を補正するために、光学部品を調整又はシフトするための追加の機械部品を必要とし、両チャネルを光学的に適切にコリメートする。これらの機構では、重量及びコストが製品に追加される。
【0006】
さらに、従来のアイピース組立体は、比較的大きな公差を持つ多くの構成要素を有する。これらの公差により、光学設計者は、レンズ素子の追加、ガラスタイプから重量タイプへの変更、又はこれらの公差に対して調整する作製ステップの追加のいずれかを余儀なくされることが多い。通常、レンズセルは、スリップばめと頻繁に称される、レンズに対するすきまばめを有するように作製される。従って、レンズの内径は、レンズ素子の外径よりも大きく、その結果、レンズ素子は側方に移動可能である。この側方移動は、レンズ設計において考慮が必要な公差誤差であり、レンズ設計者が、設計上の公差を厳格にするか、又は追加要素を増加させることを必要となる場合が多い。レンズはまた、すきまばめを有するが、それは、ガラスが応力下では削れやすく、レンズセルが金属である先行技術の組立体において、圧入により高応力とチッピングが生じるためである。プラスチック要素を備えたレンズ設計では、ほとんどが、プラスチックに熱的に整合されない材料に設置されているため、すきまばめが作成されている。このため、レンズ温度が変化するとレンズに応力が作用して、光学性能が劣化する。最終的に、正確な嵌め合いがレンズ設計により必要な場合、通常の解決策として、すきまばめを作成し、レンズ素子を互いに対して移動させ、その後、レンズが適切にアラインされる位置にレンズ素子を接合する。このような変更すべてにより、重量が大きくなり、性能への影響が見られ、コストが増える傾向にある。
【0007】
さらに、先行技術のスペーサは、レンズ素子間、及びセルの内径とレンズ上のセンタリング機構との間に挿入される別個の部品である。別個のスペーサは、すきまばめであり、センタリング、傾斜、及びスペーシングの誤差を導入する。スペーサは、部品間の隙間が、レンズセル及びレンズ素子の作製誤差よりも大きいことが必要なため、センタリング誤差を導入する。スペーシング誤差の発生は、分離されたレンズ素子及びスペーサそれ自体の累積誤差による。傾斜誤差が発生するのは、スペーサが、組立体上で追従する傾向がある曲面に配置され、部品が、ボールやソケット継手に対するのと同様に、互いの周りを回転するためである。別の結果として、レンズがスペーサに載るように、レンズ径をわずかに大きく製造するので、追加の重量が加重される。
【0008】
軽量で、視準誤差がほとんどなく、光学設計者が、より緩い公差をレンズの処方に適用可能なアイピース組立体に対し、満たされないニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態は、レンズセルと、高分子で作製された少なくとも1つのレンズ素子と、を具備するレンズセル組立体である。レンズセルは、一体型焦準機構と、レンズセルの外周の周りを延伸する少なくとも1つのシーリング機構と、を具備する。レンズセルは、高分子に熱的に整合された材料から作製される。
【0010】
本発明の目的及び利点は、以下の本発明の実施形態と実施例の詳細な説明からより十分に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】
図1a及び
図1bはそれぞれ、レンズセル組立体の典型的な実施形態の斜視断面図及び側面断面図を示す。
【
図1b】
図1a及び
図1bはそれぞれ、レンズセル組立体の典型的な実施形態の斜視断面図及び側面断面図を示す。
【
図2】
図2a及び
図2bはそれぞれ、レンズセル組立体の典型的な実施形態で使用する、レンズ素子の典型的な実施形態の正面図及び側面図を示す。
図2c及び
図2dはそれぞれ、レンズセル組立体の別の典型的な実施形態で使用する、レンズ素子の別の典型的な実施形態の正面図及び側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、特定の用語を、簡潔さ、明瞭さ、及び理解の目的で使用している。これらの用語から、先行技術の要件を越えて適用される不必要な限定は存在しないが、それは、該用語が記述目的のみで使用され、広範囲に解釈されることを意図するためである。本明細書記載の異なるシステムや方法は、単独又は他のシステムや方法と組み合わせて使用してよい。様々な均等物や変形例が、添付の特許請求の範囲内で可能である。添付の特許請求の範囲記載の各限定事項は、用語「手段」又は「ステップ」がそれぞれの限定において明瞭に記載されていれば、米国特許法第112条の第6段落規定の解釈を引用するように意図される。
【0013】
図1a及び
図1bで示すレンズセル組立体100は、他の構成要素からの機能的特徴を組み合わせて、作製の結果生じる、特定のセンタリング及び傾斜の公差を除去するレンズセル110を具備する。レンズセル組立体100はまた、重量低減用のすべてプラスチック製のレンズ設計と、間隔公差を除去しないまでも低減するレンズスペーシング機構と、を具備する。
【0014】
レンズセル110は、少なくとも1つのシーリング機構111、焦点絞り、及び焦点ねじ溝113を、軽量プラスチックから作製される単一の機能要素に組み合わせる。少なくとも1つのシーリング機構111は、レンズセル110の外周に配置される。典型的な実施形態において、少なくとも1つのシーリング機構111は、2つのシールグランドを具備する。典型的な実施形態において、シーリング機構111は、レンズセル110上の遠位(111a)点及び中間(111b)点に配置されるものの、他の実施形態は、1つ又は3つのシーリング機構111等であるがこれらに限定されない、異なる位置又は個数のシーリング機構111を含み得る。
【0015】
シーリング機構111は、レンズセル110上で少なくとも1つの円形ばね112を適切な位置に保持する溝である。典型的な実施形態において、円形ばね112は、弾性Oリングであるが、本発明の範囲が、いかなる円形ばね機構も包含するように理解されることに留意されたい。円形ばね112が、シーリング機構111に挿入される場合、円形ばね112は、均一な円形ばね機構として作用し、単眼鏡(図示せず)内の嵌合体内部でレンズセル組立体100をセンタリングする。これにより、単眼鏡とレンズセル組立体100との間のセンタリング公差を除去し、このため、視準の改善が容易になる。典型的な実施形態のレンズセル110に沿って間隔を開けられた2つの円形ばね112はまた、傾斜ミスアラインメントを防止する。
【0016】
シーリング機構111はまた、焦点絞りとして作用する。レンズセル組立体100の焦点を合わせる場合、レンズセル110は、一体型焦準機構を有する。レンズセル110は、シーリング機構111に隣接する、特定のピッチで延伸するねじ溝113を備えた円筒カムとして本質的に機能する。単眼鏡組立体は、ねじ溝113内で延伸する少なくとも1つの焦点フォロアを具備する。結果として、レンズセル組立体100を単眼鏡組立体に対して回転すると、レンズセル組立体100は、レンズセル組立体100の焦点調整のための単眼鏡組立体に対して直線状に前後移動する。焦点フォロアが、シーリング機構111の内壁に達する場合、それ以上の移動はできず、レンズセル組立体100の、回転やシーリング機構111方向の直線移動が停止する。典型的な実施形態が、単眼鏡組立体と焦点フォロアの構造によっては、三条ねじを具備するものの、ねじ溝113は、一条ねじから四条ねじまでのねじで選択され得、レンズセル組立体100の配置や調整速度が変更可能である。
【0017】
シーリング機構111はまた、レンズセル組立体100に機械的剛性を提供する。
図1bに示す通り、レンズセル壁114は、レンズセル組立体100を応力緩和する薄肉部である。シーリング機構111及びねじ溝113の両方は、レンズセル110の薄肉レンズセル壁114に追加の機械的剛性を提供する。このため、レンズセル組立体100全体が、重量を低減する薄肉レンズセル壁114を有し得る一方、この剛性により、レンズセル組立体100が焦点調整するために回転するトルクを起因とするせん断応力に対する耐性が与えられる。
【0018】
レンズセル組立体100はまた、第1のレンズ素子120と、オプションとしての第2のレンズ素子121と、を具備する。追加のレンズ素子は、必要に応じて、レンズセル組立体100に追加され得る。用語「レンズ素子」が、単一のレンズ素子又は複数のレンズ素子の組み合わせを包含し得、第1のレンズ素子120の部分として本明細書記載の任意の構造要素が、第2のレンズ素子121及び/又は任意の追加のレンズ素子に組み込み可能であることを理解すべきである。レンズセル110の寸法は、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121の少なくとも1つが、レンズセル110への締まりばめ(圧入とも称される)を有するように設定される。これにより、レンズが、レンズセル110に直接圧入可能であるため、上述のように、従来は必要とされたセンタリング公差が除去される。特定の実施形態において、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121はまた、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121のエッジとレンズセル壁114との間にシーラントを受け入れるための少なくとも1つのシーラント溝124を具備する。
【0019】
レンズセル110内のセル面取り部115は、圧入操作中に、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121を挿入する一助となる。さらに、レンズセル110、第1のレンズ素子120、及び第2のレンズ素子121がプラスチック製であるため、ガラスを削るリスクは排除される。レンズセル110、第1のレンズ素子120、及び第2のレンズ素子121のプラスチックを熱的に整合することで、構成要素が、類似の熱膨張係数を有するため、温度変化による応力が除去される。レンズセル110と第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121との間の隙間を除去することで、自動的に、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121を軸方向にアラインする。
【0020】
締まりばめそれ自体は、本質的に、レンズ素子間の傾斜誤差を除去する傾向を有するが、これは即ち、2つのシリンダが、同一のインターフェース面を有さざるを得ないためである。このため、シリンダの軸は、必然的に平行になる。この自然な傾向が生じる一方、第1のレンズ素子120が、レンズセル110に対する角度で緩むと、残留傾斜が生じる。即ち、初期ミスアラインメントは、すべてではないが除去される。システムを自己修正するため、第1のレンズ素子120のエッジは、レンズエッジをピストン形状にするためのエッジチャネル122を有し得る。第1のレンズ素子120とレンズセル110との間の接触面積が小さいため、第1のレンズ素子120は、それ自体を修正するために要する押圧が小さい。レンズセル110に接する両端を、距離を開けて離すことで、任意の残留傾斜は大幅に減少されるが、これは、レンズセル110と長い間隔で接触するためである。エッジチャネル122は、任意の追加のレンズ素子と同様、第2のレンズ素子121に組み込まれ得る。
【0021】
特定の実施形態において、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121の少なくとも1つは、レンズセル110と同時成型され、少なくとも部分的に一体型のレンズセル組立体100を形成する。他の実施形態において、レンズセル110は、第1のレンズ素子120又は第2のレンズ素子121の少なくとも1つの形成後に、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121の少なくとも1つにオーバーモールドされ、少なくとも部分的に一体型のレンズセル組立体100を形成する。
【0022】
レンズセル組立体100は、2つ以上のレンズを使用するならば、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121を互いに適切な距離で間隔をあけるための一体型スペーサ123を具備する。スペーサ123が、レンズセル110並びに/又は第1のレンズ素子120及び/若しくは第2のレンズ素子121と一体型であるため、傾斜及びセンタリングの誤差は、スペーサ123が、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121の表面の周りを回転できないことで、除去までには至らないが低減され、構成要素間に隙間がなくなる。さらに、スペーサ123を直接、レンズセル110並びに/又は第1のレンズ素子120及び/若しくは第2のレンズ素子121に機械加工することで、スペーシング誤差の変分が除去される。スペーシング誤差は、スペーサ誤差、及び各レンズ素子の厚さ誤差の集積である。レンズセル110並びに/又は第1のレンズ素子120及び/若しくは第2のレンズ素子121と同時に機械加工される一体型スペーサ123を使用することで、スペーサ誤差が除去される。これらの誤差を低減することで、レンズ設計者が、性能や作製可能性を求めてレンズ素子を設計するための、追加の許容範囲が与えられる。
【0023】
導電性材料は、電磁干渉(EMI)遮蔽用に、レンズセル110、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121に被覆され得る。電気接点は、焦点フォロアにより、単眼鏡組立体に作製され得る。導電性材料は、2つの方法で被覆され得る。導電性材料は、レンズセル110の内部が黒色で可視ではなく、又はレンズセル110の内部が完全に被覆され得、黒のコーティングが、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121のエッジ上に配置されるように、選択的に被覆可能である。被覆方法は、蒸着若しくはスパッタリング、又は設計者若しくは製造会社が要し得る他の任意の方法であり得る。追加のEMI遮蔽が必要であれば、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121は、透明な導電性材料で被覆され得る。その後、レンズセル110への電気接続は、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121を一体型スペーサ123に物理的接触させることで行われる。導電性材料は、インジウムスズ酸化物又は同等の透明な導電性材料を含むが、これらに限定されない場合がある。第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121は、それ以外では、軽量化目的ですべてプラスチック製であり得る。特定の実施形態において、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121は、2つの回折面を含み得る。
【0024】
オプションとして、特定の実施形態において、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121の設計はまた、レンズセル組立体100内でさらなる軽量化を目的とする機構を利用し得る。第1のレンズ素子120は、単眼鏡の結像面に可能な限り近くに配置され得る。第1のレンズ素子120を結像面近くに配置することで、光は、第1のレンズ素子120の径の削減を可能にするほどの大きな径には伝播しない。第1のレンズ素子120は、高屈折率を有し得る。高屈折率を使用することで、光線は、光軸径に向かってより堅く湾曲し、第1のレンズ素子120の径の削減が可能である。第2のレンズ素子121等の追加のレンズ素子は、色補正やひずみ補正用に使用される。第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121はまた、非球面曲線を有し得る。
【0025】
新規技術の1つのリスクは、レンズ素子の光学特性を変更する応力である。締まりばめは元来、被押圧部品、被圧入部品、又はその両方のいずれかに応力を加える。焦点調整中にレンズセル組立体100を回転するだけでも、応力が生じ得る。このような場合、レンズ素子、レンズセル、又はその両方には、応力増加が起こり得る。プラスチック製レンズ素子内の応力により、レンズ形状を変更することで、レンズの光学特性が劣化し得る。
【0026】
本アイピースは、3つの方法で、応力緩和する。第1に、レンズセル壁114を薄肉とする。薄肉レンズセル壁114には、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121よりも大きな応力が作用する。専門的に言えば、レンズセル110は伸長するが、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121は伸長しない。第2に、シーラント溝124は、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121のエッジのプラスチック部が動くためのスペースを与え、その結果、応力は、エッジに向けられるが、エッジの変形により、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121の光学領域には向けられない。第3に、レンズセル110の材料は、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121の材料に熱的に整合されるように選択される。1つの実施形態において、レンズセル110は、第1のレンズ素子120及び第2のレンズ素子121と同一材料である。
【0027】
図2a及び
図2bに示す通り、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121のエッジは、応力緩和ポケットとして機能することで、さらなる応力緩和を提供するためのエッジチャネル122を具備可能である。特定の実施形態において、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121は、
図2c及び
図2dに示す通り、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121の外周に沿って延伸する少なくとも1つのエッジねじ125を具備し得る。少なくとも1つのエッジねじ125は、第1のレンズ素子120及び/又は第2のレンズ素子121を適正な位置に保持するために、レンズセル110内の相補的構造と相互作用する。
【0028】
他のレンズ素子設計が、上記のレンズ素子設計に代えて、開示されたレンズセル110と併せて使用され得ることを理解すべきである。さらに、任意の上記特徴が、他の任意の単一若しくは複数の開示された特徴、又は異なるレンズ素子設計と組み合わせて、使用され得ることも理解されたい。
【0029】
上述の説明において、特定の用語を、簡潔さ、明瞭さ、及び理解の目的で使用している。これらの用語から、先行技術の要件を越えて推測される不必要な限定は存在しないが、それは、用語が記述目的で使用され、広範囲に解釈されることを意図するためである。本明細書記載の異なる構成、システム、及び方法は、単独又は他の構成、システム及び方法ステップと組み合わせて使用してよい。様々な均等物や変形例が、添付の特許請求の範囲内で可能であることを想定するものとする。