(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】HDAC6阻害薬としての3-(2-(ヘテロアリール)-ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240719BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240719BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240719BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240719BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
C07D471/04 106Z
C07D487/04 141
A61K31/444
A61K31/4545
A61K31/496
A61K31/4985
A61K31/5377
A61P7/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/18
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021572425
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2020065658
(87)【国際公開番号】W WO2020245381
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518329480
【氏名又は名称】オリゾン・ゲノミクス・ソシエダッド・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】カルセリャール・ゴンサレス,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ・ムニョス,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】サラス・ソラナ,ホルヘ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7369458(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/222951(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/222952(WO,A1)
【文献】特表2014-533721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-メトキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン、
N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(S)-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(3-メチルモルホリノ)メタノン、
3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、および
3-(2-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
からなる群から選択される化合物またはその塩。
【請求項2】
(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(R)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドまたはその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
HDAC6と関連する疾患の処置において使用するための、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置において使用するための、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
疾患が神経系の疾患であり、該神経系の疾患が末梢神経障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
疾患が神経系の疾患であり、該神経系の疾患がシャルコー・マリー・トゥース病である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
HDAC6と関連する疾患の処置のための医薬を製造するための、請求項1から
11のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項18】
がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置のための医薬を製造するための、請求項1から
11のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項19】
疾患が神経系の疾患であり、該神経系の疾患が末梢神経障害である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
疾患が神経系の疾患であり、該神経系の疾患がシャルコー・マリー・トゥース病である、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
処置される患者がヒトである、請求項
13~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
処置される患者がヒトである、請求項17~20のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ6阻害薬として有用な3-(2-(ヘテロアリール)-ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール誘導体に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヒストンおよび非ヒストンタンパク質からのアセチル基の除去を触媒する一大酵素ファミリーの一端である。HDACは、数多くの生物学的過程において、主として、転写に対するその抑制的な影響をもって、非常に重要な役割を担う。ヒトでは、合計で18種のタンパク質を含む、4つのクラスのHDAC、すなわち、HDAC1、HDAC2、HDAC3、およびHDAC8であるクラスI HDAC、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9、およびHDAC10であるクラスII HDAC、Sir2様タンパク質SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、およびSIRT7であるクラスIII HDAC、ならびにHDAC11であるクラスIV HDACが存在する。クラスII酵素は、クラスIIa(HDAC4、HDAC5、HDAC7、およびHDAC9)とクラスIIb(HDAC6およびHDAC10)の2つのサブクラスにさらに分けられる。
【0003】
ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)は、主に、αチューブリン、熱ショックタンパク質(Hsp)90、コルタクチンなどの非ヒストン基質の脱アセチル化を触媒する。
HDAC6活性は、以下でより詳細に論述する通り、がん、神経、繊毛関連、心血管、感染、ならびに免疫および炎症性疾患を含む、いくつかの病的状態に関与することが報告されている。それと共に、HDAC6阻害薬が、広範囲の疾患を処置するための魅力的な治療手法として出現した。HDAC6阻害薬、特に、HDAC6の強力かつ/または選択的な阻害薬であり、薬品開発に適する特性を示す化合物を提供することには、依然としてかなりのニーズが存在する。本発明は、これらおよび他のニーズに対処する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、HDAC、特にHDAC6の阻害薬である化合物およびその塩、ならびにこれらの化合物を使用して、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系疾患、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質を含む、HDAC6と関連する疾患を処置する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-メトキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン、
N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(S)-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(3-メチルモルホリノ)メタノン、
(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン、
3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、および
3-(2-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
からなる群から選択される化合物またはその塩を提供する。
【0006】
本発明はさらに、本発明の化合物(すなわち、上で列挙した化合物)または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
本発明はさらに、医薬として使用するための本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0007】
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患の処置において使用するための、本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または前記化合物もしくは薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患の処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患を処置するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0009】
本発明はさらに、HDAC6阻害薬として使用するための本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、HDAC6活性を阻害する方法であって、それを必要とする患者に、HDAC6活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置において使用するための、本発明の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または前記化合物もしくは薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0013】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患を処置するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0014】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-メトキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン、
N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(S)-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(3-メチルモルホリノ)メタノン、
(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン、
3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、および
3-(2-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
からなる群から選択される化合物またはその塩を提供する。
【0016】
本発明の化合物の化学構造を、以下の表1に示す。
【0017】
【0018】
【0019】
以下の段落において、本発明の実施形態の概略を述べる。以下に記載する実施形態はそれぞれ、組み合わせる実施形態と相反しない、本明細書に記載の他のいずれかの実施形態と組み合わせることができる。
【0020】
さらに、本明細書に記載の実施形態はそれぞれ、本明細書に記載の化合物の塩(たとえば、薬学的に許容される塩)をその範囲内に構想する。したがって、「またはその塩」(「または薬学的に許容されるその塩」も含まれる)という表現は、本明細書に記載のすべての化合物の記載に必然的に含まれる。限定して述べれば、本発明はまた、非塩形態である、本明細書に記載のすべての化合物に関する。
【0021】
ある特定の実施形態では、本発明は、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-(2-メトキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン、
N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、
(S)-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(3-メチルモルホリノ)メタノン、および
(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン
からなる群から選択される化合物またはその塩を提供する。
【0022】
ある特定の実施形態では、本発明は、
3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、および
3-(2-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
からなる群から選択される化合物またはその塩を提供する。
【0023】
ある特定の実施形態では、本発明は、(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノンである化合物またはその塩を提供する。
【0024】
ある特定の実施形態では、本発明は、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0025】
ある特定の実施形態では、本発明は、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0026】
ある特定の実施形態では、本発明は、N,1-ジメチル-N-((1-メチルピペリジン-4-イル)メチル)-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明は、N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0029】
ある特定の実施形態では、本発明は、N-(2-メトキシエチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0030】
ある特定の実施形態では、本発明は、(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノンである化合物またはその塩を提供する。
【0031】
ある特定の実施形態では、本発明は、N-エチル-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0032】
ある特定の実施形態では、本発明は、N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミドである化合物またはその塩を提供する。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明は、(S)-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(3-メチルモルホリノ)メタノンである化合物またはその塩を提供する。
【0034】
ある特定の実施形態では、本発明は、(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンである化合物またはその塩を提供する。本発明はまた、この化合物のそれぞれの鏡像異性体、すなわち、次式で示される、(R)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンおよび(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンに関する。
【0035】
【0036】
すなわち、ある特定の実施形態では、本発明は、(R)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンである化合物またはその塩を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンである化合物またはその塩を提供する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本発明は、3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾールである化合物またはその塩を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態では、本発明は、3-(2-(1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾールである化合物またはその塩を提供する。
【0039】
ある特定の実施形態では、本発明は、3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾールである化合物またはその塩を提供する。
【0040】
ある特定の実施形態では、本発明は、3-(2-(1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピラジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾールである化合物またはその塩を提供する。
【0041】
本発明の特に好ましい化合物は、(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノンまたはその塩である。ある特定の実施形態では、化合物は、遊離塩基として(すなわち、非塩形態で)提供される。ある特定の実施形態では、化合物は、塩、好ましくは、薬学的に許容される塩として提供される。一部の実施形態では、塩は、塩酸塩である。一部の実施形態では、塩は、メシル酸塩である。
【0042】
本発明の別の特に好ましい化合物は、(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩である。ある特定の実施形態では、化合物は、(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩として提供される。ある特定の実施形態では、化合物は、(R)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンまたはその塩として提供される。ある特定の実施形態では、化合物は、遊離塩基として(すなわち、非塩形態で)提供される。ある特定の実施形態では、化合物は、塩、好ましくは、薬学的に許容される塩として提供される。一部の実施形態では、塩は、塩酸塩である。一部の実施形態では、塩は、(+)-カンファースルホン酸塩である。
【0043】
本発明の別の特に好ましい化合物は、3-(2-(1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾールまたはその塩である。ある特定の実施形態では、化合物は、遊離塩基として(すなわち、非塩形態で)提供される。
【0044】
本発明のある特定の化合物は、1つの不斉中心を含んでおり、したがって、立体異性体を生じさせる場合がある。別段指摘しない限り、鏡像異性体やその混合物などのすべての立体異性体が企図される。したがって、たとえば、1つの不斉中心、すなわち、ピロリジン環の3位にヒドロキシ基を有する環炭素原子を含んでいる化合物(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンの場合では、本発明は、各鏡像異性体、すなわち、(R)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノンおよび(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン、ならびにこれらの混合物に関する。不斉置換された炭素原子を含んでいる本発明の化合物は、光学活性形態またはラセミ混合物として単離することができる。光学的に不活性な出発材料から光学活性形態をどのように調製するかについての方法は、当技術分野で知られており、たとえば、ラセミ混合物の分割または立体選択的な合成によるものがこれに含まれる。
【0045】
本発明の化合物には、本発明の化合物の非標識の形態だけでなく、その同位体標識された形態も含まれる。同位体標識された形態の化合物は、1つまたは複数の原子が、対応する同位体富化された原子で置き換えられているという点においてのみ異なる化合物である。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例としては、たとえば、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Cl、125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体が挙げられる。このような同位体標識された化合物は、たとえば、生物学的アッセイにおけるプローブとして、分析ツールとして、または治療薬として有用である。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、非標識の形態で提供される。
【0046】
「多形体」または「結晶形」とは、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置で結晶しうるが、すべてが同じ元素組成を有する結晶構造を指す。異なる結晶形は、特に、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、ラマンスペクトル、融点、示差走査熱量測定(DSC)スペクトル、結晶形状、溶解性、および/または安定性を有するのが普通である。本発明の化合物が異なる固体形態で存在するとき、非晶形および結晶形を含むそのすべての形態が、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0047】
本発明は、本発明の化合物の塩も包含する。前記塩は、薬学的に許容される塩であることが好ましい。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される塩」は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたは他の点で望ましい塩を意味するものとされる。薬学的に許容される塩には、無機または有機酸に対して形成される塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られている。例示的な薬学的に許容される塩には、本発明の化合物を鉱酸または有機酸と反応させることによって調製される塩、たとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、酢酸塩、ハロ酢酸塩(たとえば、トリフルオロ酢酸塩)、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、カンファースルホン酸塩(カムシル酸塩)、マンデル酸塩、ピルビン酸塩、ステアリン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩が含まれる。したがって、本発明は、詳細には、ここで提供する各化合物の塩、好ましくは、薬学的に許容される塩(たとえば、上で言及した塩のいずれか1つなど)に関する。本発明の薬学的に許容される塩は、親化合物から、従来の化学的方法によって調製することができる。たとえば、そのような塩は、これらの化合物の遊離塩基形態を、適切な溶媒中で、適切な量の適当な酸と反応させることにより調製できる。
【0048】
加えて、本発明の化合物またはその塩は、水和したもしくは非水和(無水)の形態で、または他の溶媒分子との溶媒和物として存在する場合がある。本明細書で使用する「溶媒和物」とは、化学量論量または非化学量論量の溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。一部の化合物は、結晶質の固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉し、そうして溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は、水和物である。溶媒和物の非限定的な例としては、水和物、およびアルコールとの溶媒和物(アルコール和物とも呼ばれる)、たとえば、エタノールとの溶媒和物(エタノール和物)が挙げられる。本発明の化合物(またはその塩)が溶媒和物として存在するとき、そのすべての溶媒和物、特に、薬学的に許容される溶媒和物が、本発明の範囲に含まれるものとされる。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される溶媒和物」とは、薬学的に許容される溶媒と共に形成された溶媒和物である。薬学的に許容される溶媒は、当技術分野でよく知られており、水やエタノールなどの溶媒がこれに含まれる。
【0049】
本発明の化合物は、その塩を含めて、標準の合成方法および手順を用いることにより、市販品として入手可能な出発材料、文献で知られている化合物から出発して、または容易に入手可能な中間体から、以下で記載する一般合成経路、および実施例に記載の方法を含む、いくつかの合成経路を使用して調製することができる。有機化合物を調製するための標準の合成方法および手順ならびに官能基変換および操作は、当技術分野で知られており、Smith M.B.、「March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure」、第7版、Wiley、2013;Greene TWおよびWuts PGM、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版、Wiley、2006などの標準の教本において見ることができる。
【0050】
以下に記載する反応スキームは、本発明の化合物を得る方法の実例となるものとして示すにすぎない。当業者に知られている他の経路、ならびに他の反応物および中間体を使用しても、本発明の化合物に到達しうる。
【0051】
以下に記載する工程の一部では、反応性または不安定基を従来の保護基で保護することが必要または賢明である場合もある。これらの保護基の性質と、それを導入および除去するための手順は、当技術分野でよく知られている(たとえば、Greene TWおよびWuts PGM、前掲を参照されたい)。保護基が存在する場合は必ず、後続の脱保護ステップが必要となるが、こうしたステップは、上記参考文献に記載されているものなどの、当技術分野でよく知られている標準の条件下で実施することができる。
【0052】
一般に、本発明の化合物は、以下でスキーム1に示す手順に従って取得することができる。
【0053】
【0054】
スキーム1において、置換基「A」は、表1に示した本発明の化合物におけるピリジン環の2位において結合している特定の二環式ヘテロアリール基に相当し、式(I)の化合物は、本発明の化合物(すなわち、表1および/または特許請求の範囲に示す化合物)に相当し、MおよびXは、以下で規定する意味を有する。
【0055】
最初のステップでは、有機金属種(II)のハロゲン化物(III)とのクロスカップリング反応によって、式(IV)の化合物が得られる。通常、このカップリングは、Mが、トリアルキルスタンニル基であり、Xが、Cl、Br、またはIである、Stille反応を使用して実施される。反応は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中において、CuIやCuOなどの適切なCu塩の存在下、CsFの存在下または非存在下で、適切なPd/配位子組合せ(Pd/ligand combination)、たとえば、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)Cl2、Pd(dppb)Cl2を使用して実施することができる。反応の温度は、通常は室温~120℃、反応の時間は、通常は1h~48hでよい。用いる有機スズは、トリメチルスタンニル誘導体でよい。別法として、試薬(II)および(III)の両方が、ハロ誘導体であり(すなわち、MおよびXがハロであり)、(Bu3Sn)2、Et4NI、およびPd/配位子組合せで処理される、分子間Stille Kelly反応を使用してもよい。
【0056】
次いで、式(IV)のシアノ誘導体から、2ステップで、本発明の化合物が得られる。最初のステップでは、式(IV)のシアノ誘導体が、ヒドロキシルアミンとの反応によって、式(V)のN’-ヒドロキシイミドアミドに変換され、次いで、この後、(V)を無水トリフルオロ酢酸と縮合させて、本発明の化合物が得られる。シアノ誘導体(IV)へのヒドロキシルアミンの付加は、EtOHやMeOHなどの適切な溶媒中において、塩基の存在下で実施され、この場合では、ヒドロキシルアミンクロル水和物が使用される。反応の温度は、通常は室温~60℃、反応の時間は、通常は1h~48hでよい。N’-ヒドロキシイミドアミド(V)を、CH2Cl2やTHFなどの適切な溶媒中で、無水トリフルオロ酢酸と縮合させると、対応するN’-トリフルオロアセチルオキシイミドアミドが得られ、これによって、同じ反応媒質中で、またはトリフルオロ酢酸の付加後、本発明の1,2,4-オキサジアゾールが得られる。
【0057】
式(II)および(III)の化合物は、市販されており、または有機化学の分野の技術者によく知られている標準の手順に従って取得することができる。式(II)の有機金属誘導体は、対応するハロ化合物から、有機化学の分野の技術者によく知られている、Stilleカップリング用の試薬を調製する際の標準の手順に従う金属交換反応によって、取得することができる。たとえば、対応するブロモ誘導体を、トルエン中において、110℃で、ヘキサメチル二スズおよびPd(PPh3)4と16時間反応させることによって、式(II)のトリメチルスズ誘導体を調製することができる。
【0058】
本発明の化合物の塩は、本発明の化合物の最後の単離および精製の間に取得することができ、または本発明の化合物を、従来の方法で、対応する塩を得るのに十分な量の所望の酸で処理することによって調製してもよい。
【0059】
本発明の化合物を調製する工程によって、立体異性体の混合物が生じる場合では、たとえば、立体異性体の混合物として得られた本発明の化合物から出発し、光学活性を有する酸との塩形成によってジアステエレオマー対を生成した後、分別結晶にかけ、遊離塩基を再生させるなどの、よく知られている方法を使用する分割によって、またはキラル分取クロマトグラフィーによって、本発明の化合物の個々の立体異性体を得ることができる。別法として、上述の合成手順の種々の段階で、知られているいずれかのキラル分割方法を使用して、光学的に純粋な、または鏡像異性体富化された合成中間体を得ることが可能であり、次いでこれを、後続のステップにおいてそのまま使用することができる。別法として、キラルクロマトグラフィーを使用することにより、光学的に純粋な、または鏡像異性体富化された最終化合物(または合成中間体)を取得することも可能である。
【0060】
本発明の化合物は、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。特に、本発明の化合物は、HDAC6の強力な阻害薬であることがわかっている。本発明の化合物のHDAC6阻害薬としての活性は、たとえば、実施例の部において記載するin vitroアッセイを使用して求めることができる。詳細には、実施例7に、HDAC6阻害活性をin vitroで求める方法を記載している。本発明の化合物は、実施例7に記載するアッセイを使用して、強力なHDAC6阻害薬であることが判明した。HDAC6阻害活性は、細胞アッセイにおいて、たとえば、実施例8に記載するアッセイなどの、細胞における、HDAC6の特異的基質、たとえばαチューブリンのアセチル化のレベルを測定するアッセイを使用して求めることもできる。本発明の化合物は、たとえば、実施例8に記載する細胞アッセイを使用して、細胞においてHDAC6活性を阻害することが示された。他のHDACアイソフォームと比較される、HDAC6への選択性は、当技術分野でよく知られている方法、たとえば、実施例7に記載するものと同様のin vitroアッセイを、対応する目的のHDACアイソフォームを用いながら使用して、評価することができる。
【0061】
HDAC6は、チューブリン、熱ショックタンパク質(Hsp)90、コルタクチンなどの基質を脱アセチル化しうるクラスIIb HDACである。HDAC6は、細胞質ゾルに局在し、2つの触媒ドメインと、遊離ユビキチンに加えてモノおよびポリユビキチン化タンパク質を結合しうるC末端亜鉛フィンガードメインとを有する(Liら、FEBS J.2013 Feb、280(3):775~93)。HDAC6におけるユビキチン結合性ドメインは、ユビキチン、プロテアソーム系、アグリソーム形成、および自食作用の制御に関与するいくつかのタンパク質と連合する。加えて、HDAC6がαチューブリンを脱アセチル化しうる能力は、細胞移動、免疫シナプス形成、ウイルス感染、ミスフォールドタンパク質およびストレス顆粒の分解などの、微小管が介在する過程に影響を及ぼす。HDAC6は、Hsp90を脱アセチル化し、そのシャペロン活性を変調し、したがって、ストレス関連応答の制御などの、Hsp90と関連する種々の細胞シグナル伝達経路を変調することも示されている。
【0062】
多くの研究が、がんにおけるHDAC6の役割を報告している。たとえば、HDAC6の阻害によって、前臨床モデルにおける多発性骨髄腫の成長が低減されること、および標準治療として使用されたプロテアソーム阻害薬およびサリドマイド系免疫調節薬の効果が向上することが示された(Santoら、Blood.2012 Mar 15、119(11):2579~89;Northら、PLoS One.2017 Mar 6、12(3):e0173507)。HDAC6の阻害によって、卵巣、膵臓、および乳がん細胞における、パクリタキセルなどの他の標準治療薬の効果が増大することも示された(Huangら、Oncotarget 2017 Jan 10、8(2):2694~2707)。HDAC6阻害薬の抗増殖活性は、前立腺がんおよび黒色腫細胞においても観察されている(Liら、Eur J Med Chem.2015 Jul 15、100:270~6;Seidelら、Biochem Pharmacol.2016 Jan 1、99:31~52)。加えて、HDAC6阻害薬のin vivoでの有効性が、結腸直腸、炎症性乳がん、白血病、リンパ腫、およびARID1A突然変異卵巣異種移植片モデルにおいて報告されている(Yangら、J Med Chem.2016 Feb 25、59(4):1455~70;Putchaら、Breast Cancer Res.2015 Dec 8、17(1):149;Bitlerら、Nat Cell Biol.2017 Aug、19(8):962~973)。同様に、HDAC6ノックダウンでは、子宮平滑筋腫および胃がん細胞増殖が低減される一方、HDAC6過剰発現では、増殖が促進され、非小細胞肺がん細胞および神経膠芽腫細胞の薬剤耐性が助長される(Weiら、Reprod Sci.2011 Aug、18(8):755~62;Parkら、Cancer Lett.2014 Nov 1、354(1):97~106;Wangら、Oncol Rep.2016 Jul;36(1):589~97;Wangら、Cancer Lett.2016 Aug 28、379(1):134~42)。さらに、HDAC6阻害薬は、黒色腫および非小細胞肺がんのモデルにおいて、単独で、または免疫チェックポイント阻害薬もしくはエピジェネティックモジュレーターと組み合わせて使用したとき、腫瘍に対する免疫応答を刺激することによる抗がん活性を有することが示された(Knoxら、Abstract 4055、AACR Annual Meeting 2017、2017年4月1日~5日、ワシントンDC;Woanら、Mol Oncol.2015 Aug、9(7):1447~1457;Tavaresら、ACS Med Chem Lett.2017 Sep 5、8(10):1031~1036;Adeegbeら、Cancer Discov.2017 Aug、7(8):852~867)。
【0063】
HDAC6は、炎症および自己免疫疾患において役割を果たすことも広く報告されている。HDAC6のノックアウトマウスは、免疫恒常性維持の鍵である循環調節性T細胞(Treg)の数の増加を示す。同様に、HDAC6特異的阻害薬は、炎症性腸疾患および移植片対宿主病のモデルにおいて、Tregの抑制性活性を促進する(de Zoetenら、Mol Cell Biol.2011 May、31(10):2066~78)。炎症、関節リウマチ、および全身性エリテマトーデスのモデルでは、HDAC6阻害薬が、疾患修飾活性を有することが示された(Vishwakarmaら、Int Immunopharmacol.2013 May、16(1):72~8;Regnaら、Clin Immunol.2016 Jan、162:58~73)。HDAC6欠如マウスは、自食作用の低下を示し、これにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と関連する繊毛機能不全が改善される(Lamら、J Clin Invest.2013 Dec、123(12):5212~30)。
【0064】
HDAC6阻害薬は、繊毛病の処置に有効であることも報告されている。繊毛病は、繊毛構造または機能の欠陥と関連する遺伝性疾患であり、特に、多発性嚢胞腎疾患、多発性肝嚢胞症、バルデ・ビードル症候群、および網膜変性症がこれに含まれる。多発性嚢胞腎疾患のモデルでは、HDAC6阻害薬によって、嚢胞形成が予防され、腎機能が改善された(Cebotaruら、Kidney Int.2016 Jul、90(1):90~9)。同様に、多発性肝嚢胞症のモデルでは、HDAC6の薬理学的阻害によって、嚢胞性胆管細胞の増殖が低減され、肝臓の嚢胞発育および線維化が減少した(Gradiloneら、Am J Pathol.2014 Mar、184(3):600~8)。
【0065】
HDAC6は、神経系の疾患において重要な役割を担うことも示されている。詳細には、シャルコー・マリー・トゥース病や化学療法誘発末梢神経障害などの末梢神経障害のモデルにおいて、HDAC6阻害薬が有効性を示した(Benoyら、Neurotherapeutics.2017 Apr、14(2):417~428;Krukowskiら、Pain.2017 Jun、158(6):1126~1137)。加えて、筋萎縮性側索硬化症の患者由来のニューロン培養物においては、HDAC6阻害薬による処理により、その欠陥表現型が救済された(Guoら、Nat Commun.2017 Oct 11、8(1):861)。
【0066】
HDAC6阻害薬は、神経系の他のいくつかの疾患の処置にも有効であることが報告されている。たとえば、アルツハイマー病のマウスモデルにおいて、HDAC6を減少させる、または阻害することで、記憶が救済され、認知が改善することが示されている(Govindarajanら、EMBO Mol Med.2013 Jan、5(1):52~63)。HDAC6の減少または阻害は、神経炎性のタウ蓄積を抑制し、したがって、HDAC6阻害は、アルツハイマー病だけでなく、皮質基底核変性症や進行性核上性麻痺などの、他のヒト4リピートタウオパチーの処置にも有用となりうる(Tsengら、Cell Rep.2017 Aug 29、20(9):2169~2183)。さらに、ハンチントン病(HD)のモデルでは、HDAC6阻害によって、突然変異体ハンチントンに対するニューロンの脆弱性が軽減され、したがって、HDにおけるHDAC6阻害薬の神経保護効果が示唆される(Guedes-Diasら、Biochim Biophys Acta.2015 Nov、1852(11):2484~93)。
【0067】
HDAC6は、うつ病などの精神および行動障害において役割を果たすことも報告されている。たとえば、HDAC6阻害薬は、マウス探索行動を刺激し、抗不安および社会的相互作用試験においてプラスの効果を示した(Jochemsら、Neuropsychopharmacology.2014 Jan、39(2):389~400)。
【0068】
さらに、いくつかの公表文献は、感染性疾患におけるHDAC6の重要な役割を強調している。HDAC6阻害薬の使用が、日本脳炎ウイルス(JEV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、狂犬病ウイルスなどのウイルスの複製を減少させることが示されている(Luら、Int J Mol Sci.2017 May 1、18(5);Zanら、Front Cell Infect Microbiol.2017 Apr 26、7:146;Aiら、J Med Chem.2015 Jan 22、58(2):785~800)。HDAC6が、インフルエンザAウイルスの細胞侵入を助長し、他のウイルスのウイルス溶解-潜伏スイッチを制御することも示された(Banerjeeら、Science 2014 Oct 24、346(6208):473~7)。たとえば、HDAC6は、HIV潜伏の維持に関与することが報告されており、したがって、HDAC6が阻害されれば、ウイルスの体内クリアランスが促進されうる(Huoら、J Biol Chem.2011 Mar 18、286(11):9280~6)。さらに、敗血症のモデルでは、選択的HDAC6阻害薬によって、生存および細菌クリアランスが向上した(Zhaoら、J Trauma Acute Care Surg.2016 Jan、80(1):34~40)。
【0069】
いくつかの公表文献は、心血管疾患におけるHDAC6の役割も報告している。心不全のマウスモデルにおいて、HDAC6のノックアウトマウスは、心臓状態の改善を示す。さらに、HDAC6欠損マウスは、うっ血性心不全における命にかかわると考えられる骨格筋消耗に抵抗性である(Demos-Daviesら、Am J Physiol Heart Circ Physiol.2014 Jul 15;307(2):H252~8)。HDAC6の薬理学的阻害は、心房細動と関連のある心房リモデリングに対する防御になることが示された(Zhangら、Circulation.2014 Jan 21、129(3):346~58)。HDAC6活性は、ストレスを受けた心筋において一貫して増大しており、したがって、心筋症においてHDAC6阻害薬が果たす役割が示唆された(Lemonら、J Mol Cell Cardiol.2011 Jul;51(1):41~50)。HDAC6の選択的な阻害が、出血性ショックのげっ歯動物モデルにおいて生存を向上させることも報告されている(Changら、J Trauma Acute Care Surg.2015 Dec、79(6):905~10)。さらに、HDAC6の阻害によって、実験モデルおける定着した肺動脈高血圧が改善されており、脳虚血のモデルにおいては神経保護効果が発揮される(Boucheratら、Sci Rep.2017 Jul 3、7(1):4546;Lieszら、J Neurosci.2013 Oct 30、33(44):17350~62)。
【0070】
したがって、本発明の化合物は、HDAC、特にHDAC6と関連する疾患の処置に有用となることが見込まれる。本発明の化合物で処置される、HDAC6と関連する疾患の例には、限定はせず、先行段落において示した疾患、ならびに以下で列挙する疾患が含まれる:
がん、たとえば、肺がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、肝臓がん、脳がんおよび他のCNS新生物、腎臓がん、卵巣がん、胃がん(stomach cancer)、皮膚がん、骨がん、胃がん(gastric cancer)、膵臓がん、心臓がん(cardiac cancer)、神経膠腫、神経膠芽腫、食道がん、肝細胞癌、骨関節がん(bone and joint cancer)、乳頭状腎癌、頭頚部扁平上皮癌、肉腫、中皮腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、
自己免疫または炎症性疾患、たとえば、関節リウマチ、骨関節炎、リウマチ性脊椎炎、乾癬性関節炎、感染性関節炎、進行性慢性関節炎、変形性関節炎、外傷性関節炎、痛風性関節炎、ライター症候群、多発性軟骨炎、急性滑膜炎および脊椎炎、乾癬、虚血後再潅流傷害、炎症性腸疾患(たとえば、潰瘍性大腸炎やクローン病)、湿疹、虚血/再潅流傷害、糸球体腎炎、溶血性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少症、好中球減少症、慢性甲状腺炎、グレーブス病、I型糖尿病、強皮症、糖尿病、肝炎、原発性胆汁性肝硬変(primary binary cirrhosis)、全身性炎症反応症候群、術後または外傷後炎症、重症筋無力症、天疱瘡、アルコール性肝疾患、嚢胞性線維症、多発性硬化症(MS)、アジソン病、キャッスルマン病、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、慢性腎機能不全、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、サルコイドーシス、ギラン・バレー症候群、ブドウ膜炎、結膜炎、角結膜炎、中耳炎、歯周疾患、肺間質性線維症、急性呼吸窮迫症候群、喘息、気管支炎、鼻炎、副鼻腔炎、膵炎、炎症性骨疾患、髄膜炎、膀胱炎、咽頭喉頭炎、塵肺症、肺動脈弁閉鎖不全症候群、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、珪肺症、慢性炎症性肺疾患、腹膜線維症、
宿主対移植片病、移植片対宿主病、および同種移植片拒絶を含む、移植拒絶、
インフルエンザ、ウイルス性脳炎、HIV、ウイルス起源の肝炎、肺炎、および敗血症を含む、感染性疾患、
繊毛病、たとえば、多発性嚢胞腎疾患、多発性肝嚢胞症、アルストレーム症候群、バルデ・ビードル症候群、網膜変性症、ジュベール症候群、メッケル・グルーバー症候群、ネフロン癆、口顔面指症候群1、Senior-Loken症候群、原発性繊毛機能不全症(カルタゲナー症候群)、窒息性胸郭異形成症(orasphyxiating thoracic dysplasia)(Jeune)、Marden-Walker症候群、異性(isomerism)、
神経系の疾患、たとえば、ウィルソン病、プリオン病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、アミロイドーシス、アルツハイマー病、アレキサンダー病、ピック病、脊髄筋ジストロフィー、レビー小体型認知症、化学療法誘発認知機能障害、ミトコンドリア脳筋症、腸運動不全症候群、運動神経発生疾患(motor neurogenesis disease)(MND)、フリートライヒ運動失調症および脊髄小脳失調症(SCA)を含む運動失調症候群、脊髄損傷、オリーブ橋小脳萎縮症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、シヌクレイン症、ダウン症候群、大脳皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性ミオクローヌスてんかん、線条体黒質変性症、捻転ジストニー、家族性振戦、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、シャイ・ドレーガー症候群、ハーラーフォルデン・シュパッツ病、ならびに末梢神経障害、たとえば、シャルコー・マリー・トゥース病、化学療法薬(たとえば、白金系化学療法薬、タキサン、ビンクリスチン、ボルテゾミブなど)によって誘発された末梢神経障害など、
精神病性障害および統合失調症スペクトラム障害、たとえば、統合失調型(パーソナリティ)障害、妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調症、統合失調感情障害、物質/医薬品誘発性精神病性障害、別の医学的状態を原因とする精神病性障害;双極性障害、たとえば、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、物質/医薬品誘発性双極性および関連障害;抑うつ障害、たとえば、重篤気分調節症、大うつ病性障害、単一および反復エピソード、続性抑うつ障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑うつ障害、別の医学的状態を原因とする抑うつ障害;不安障害、たとえば、分離不安障害、選択性緘黙、限局性恐怖症、社交不安障害(社交恐怖)、パニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害などを含む、精神および行動障害、
心血管疾患、たとえば、心不全、心筋障害、心房細動、肺動脈高血圧、出血性ショック、発作、虚血性心疾患、心筋炎、弁膜疾患、
筋萎縮、ならびに
悪液質。
【0071】
本明細書に記載の使用および処置方法には、その実施形態のいずれをも含む、本発明の化合物のいずれを使用してもよい。
したがって、本発明はさらに、医薬として使用するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0072】
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患の処置において使用するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患の処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0073】
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患を処置するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
本発明はさらに、HDAC6阻害薬として使用するための本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0074】
本発明はさらに、HDAC6と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0075】
本発明はさらに、HDAC6活性を阻害する方法であって、前記処置を必要とする患者に、HDAC6活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0076】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置において使用するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0077】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置のための医薬を製造するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0078】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患を処置するための、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0079】
本発明はさらに、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0080】
本発明はさらに、サンプル(たとえば、生体サンプル)においてHDAC6活性を阻害する方法であって、前記サンプル(たとえば、前記生体サンプル)を本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0081】
本発明はさらに、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の、研究におけるHDAC6阻害薬としての、詳細には、HDAC6を阻害するための研究ツール化合物としての使用を提供する。したがって、本発明は、本発明の化合物またはその塩(たとえば、薬学的に許容されるその塩)のHDAC6阻害薬としてのin vitroでの使用、詳細には、本発明の化合物またはその塩(たとえば、薬学的に許容されるその塩)の、HDAC6阻害薬として作用する研究ツール化合物としてのin vitroでの使用に関する。同様に、本発明は、HDAC6を阻害する方法、特にin vitroでの方法であって、本発明の化合物またはその塩(たとえば、薬学的に許容されるその塩)をサンプル(たとえば、生体サンプル)に適用するステップを含む方法に関する。用語「in vitro」は、この特定の文脈では、「生きているヒトまたは動物の身体の外側」の意味で使用されると理解され、これには、たとえば、フラスコ、試験管、ペトリ皿、マイクロタイタープレートなどの中に用意されることのある水溶液または培養培地などの人工的な環境中にある細胞、細胞もしくは細胞下抽出物、および/または生体分子を用いて行われる実験が含まれる。
【0082】
別段明記しない限り、処置の方法についての記述はいずれも、本明細書に記載するような処置を提供するための化合物の使用、ならびにそのような状態を処置するための医薬を調製するための化合物の使用を包含する。
【0083】
本明細書および特許請求の範囲において使用する特定の用語の定義をここで規定する。本明細書において使用され、本明細書において定義されない他のすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の技術者に一般に理解されているのと同じ意味を有するものとする。矛盾がある場合では、定義を含む本明細書によって統括される。
【0084】
本明細書において開示される化学構造と化合物の名称に矛盾がある場合では、化学構造によって統括される。
「HDAC6と関連する疾患」などの用語は、疾患または状態においてHDAC6が役割を果たす、かつ/または疾患または状態がHDAC6の発現または活性と関連付けられる、かつ/または疾患または状態の経過がHDAC6の変調の影響を受けうる、いずれかの疾患または状態を指す。HDAC6と関連する疾患には、限定はせず、本明細書に記載する疾患および状態が含まれる。HDACと関連する疾患は、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患であることが好ましい。
【0085】
本明細書で使用するとき、用語「対象」または「患者」または「個体」とは、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、および、最も好ましくは、ヒトを含むいずれかの動物を指す。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「生体サンプル」は、限定なしで、細胞、細胞培養物またはその抽出物;動物、たとえばヒトから取得された生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、便、もしくは他のいずれかの体液、またはその抽出物を包含する。
【0087】
本明細書で使用するとき、用語「治療有効量」とは、対象(好ましくは、ヒト)において求められる生体または薬効応答を誘発する活性化合物の量を指す。したがって、化合物の治療有効量は、疾患もしくは障害に見舞われている対象に投与されたとき、前記疾患もしくは障害を処置する、前記疾患もしくは障害の発症もしくは進行を遅らせる、および/または前記疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状を緩和するのに十分である量となりうる。一対象のための正確な有効量は、対象の重量、大きさ、および健康、処置される状態の性質および程度、投与するように選択された治療薬または治療薬の組合せなどの、様々な要素に応じて決まる。所与の状況についての治療有効量は、臨床家の技量および識見の範囲内にある型通りの実験によって求めることができる。
【0088】
いずれの化合物についても、治療有効量は、最初に、in vitroアッセイ、たとえば、細胞培養アッセイ、または動物モデル、たとえば、マウス、ラット、イヌのいずれかにおいて推定することができる。動物モデルを使用して、適当な濃度範囲および投与経路を明らかにすることもできる。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定することができる。治療有効性および毒性は、細胞培養物または実験動物において、標準の手順によって明らかにすることができ、たとえば、ED50およびLD50値が求められる場合があり、治療指数としても知られる毒性作用と治療効果の比を算出し、ヒトにおける使用に適する用量の決定に使用することができる。
【0089】
本明細書で使用するとき、別段明記しない限り、疾患、障害、または状態に関しての用語「処置すること」および「処置」とは、疾患、障害、または状態の抑制に努める目的のため、たとえば、このような用語が適用される疾患、障害、もしくは状態、またはそのような疾患、障害、もしくは状態の1つまたは複数の症状を逆転させる、緩和する、その経過を阻害する、または予防するための、患者の管理および手当てを指し、症状もしくは合併症の発症を予防するため、症状もしくは合併症を緩和するため、または疾患、状態、もしくは障害を解消するための、本発明の化合物(または薬学的に許容されるその塩)の投与を包含する。処置は、治癒的または改善するものであることが好ましい。
【0090】
本発明の化合物は、治療において使用するためにそれ自体でそのまま投与される場合があることも考えられるが、通常は、医薬組成物の形で投与される。これらの組成物は、医薬品有効成分としての本発明の化合物(または薬学的に許容されるその塩)を、1種または複数の薬学的に許容される担体と共に含む。本発明の目的では、担体は、組成物の他の成分と適合し、組成物の受容固体にとって有害でなければ、本明細書に記載の医薬組成物における使用に適する。「薬学的に許容される担体」は、医薬製品を製剤する際に使用され、米国食品医薬品局および欧州医薬品庁によって公布されたものを含む確立された政府基準に従って、対象(特に、ヒト)に投与するのに安全であるとみなされた、非API(APIは、医薬品有効成分を指す)物質、たとえば、崩壊剤、結合剤、充填剤、滑沢剤などを包含する。薬学的に許容される担体は、当業者によく知られており、たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Loyd V Allen Jr編、Pharmaceutical Press、フィラデルフィア、2012に記載されている標準の製薬業務に従って、選択された製剤タイプおよび投与経路に基づいて選択される。
【0091】
したがって、本明細書では、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される1種または複数の担体とを含む医薬組成物が提供される。
医薬組成物は、製薬業界でよく知られている要領で調製することができ、様々な経路で、たとえば、経口、非経口、肺、または局所経路で投与される場合がある。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内が含まれる。非経口投与は、単一のボーラス用量の形にしてもよいし、または、たとえば、連続潅流ポンプによるものでもよい。肺投与には、たとえば、ネブライザーによるものを含めて、粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入によるものが含まれる。局所投与には、経皮、表皮、眼、ならびに鼻腔内、膣、および直腸送達を含めた粘膜に対するものが含まれる。
【0092】
組成物は、当技術分野で知られている方法を使用して、患者への投与後、活性成分の急速な(即時の)持続または遅延放出が実現されるように製剤することができる。
薬学的に許容される賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸(alginate)、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、およびメチルセルロースが挙げられる。医薬組成物は、さらに、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などの滑沢剤;湿潤剤;乳化および懸濁化剤;ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルなどの保存剤;甘味剤;着香剤;および着色剤を含む、さらなる薬学的に許容される賦形剤を含む場合もある。
【0093】
適切な経口剤形には、たとえば、錠剤、丸剤、サシェ剤、または硬もしくは軟ゼラチンもしくは適切な他のいずれかの材料のカプセル剤が含まれる。たとえば、活性化合物を、結合剤(たとえば、ゼラチン、セルロース、トラガカントゴム)、賦形剤(たとえば、デンプン、ラクトース)、滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、崩壊剤(たとえば、アルギン酸(alginate)、Primogel、コーンスターチ)、甘味または着香剤(たとえば、グルコース、スクロース、サッカリン、サリチル酸メチル、ハッカ)などの薬学的に許容される担体を含む製剤に混ぜ込むことができる。次いでそれを、従来の技術を使用して、錠剤に圧縮し、またはカプセルに封入することができる。カプセル剤および錠剤を、当技術分野で知られている種々のコーティング剤でコーティングして、カプセル剤および錠剤の香味、味、色、および形状を修正してもよい。加えて、脂肪油などの液体担体がカプセル剤に含められる場合もある。経口製剤は、懸濁液、溶液、シロップなどの形態になる場合もある。所望なら、香味、味、色などを修正するための従来の薬剤を加えてもよい。
【0094】
非経口投与に適する医薬組成物としては、水性の滅菌溶液もしくは懸濁液が挙げられ、または、別法として、使用前に水性滅菌担体を使用して溶液もしくは懸濁液を即座に調製するための、凍結乾燥された形態として医薬組成物を調製してもよい。このような製剤では、希釈剤または薬学的に許容される担体、たとえば、滅菌水や生理食塩水緩衝液を使用することができる。他の従来の溶媒、pH緩衝剤、安定剤、抗菌剤、界面活性剤、および酸化防止剤をすべて含めてもよい。たとえば、有用な成分として、塩化ナトリウム、酢酸、クエン酸、またはリン酸緩衝液、グリセリン、デキストロース、固定油、メチルパラベン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、硫酸水素ナトリウム、ベンジルアルコール、アスコルビン酸などが挙げられる。非経口製剤は、バイアルやアンプルなどの従来のいずれかの容器で貯蔵することができる。
【0095】
吸入またはガス注入による投与用の組成物としては、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはこれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体または固体組成物は、上述の薬学的に許容される適切な賦形剤を含む場合がある。このような組成物は、局所的または全身性効果を得るために、経口または経鼻呼吸経路によって投与される場合がある。適切な気体の使用により、組成物を噴霧することができる。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接吸い込まれる場合もあり、または噴霧装置が、フェースマスクもしくは呼吸チャンバーに取り付けられている場合もある。溶液、懸濁液、および粉末組成物は、製剤を適当な要領で送達する装置から、経口的または経鼻的に投与することができる。
【0096】
局所投与用の医薬組成物には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体、および粉末が含まれうる。局所製剤は、従来の1種または複数の担体を含有する場合がある。たとえば、軟膏は、水、ならびに流動パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、および白色ワセリンなどから選択される1種または複数の疎水性担体を含有する場合がある。クリームの担体組成は、グリセロール、およびセチルステアリルアルコール、グリセリンモノステアリン酸エステルなどの他の1種または複数の成分と組み合わされた水を主体とするものでよい。ゲルは、イソプロピルアルコールおよび水を、適切な場合では、グリセロール、ヒドロキシエチルセルロースなどの他の賦形剤と組み合わせて使用して、製剤することができる。
【0097】
経口および非経口組成物のような医薬組成物は、投与を容易にし、投与量を均一にするために、単位剤形として製剤することができる。本明細書で使用するとき、「単位剤形」とは、対象に投与するための単位式投与量として適する、物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な1種または複数の医薬担体と共同で所望の治療効果を生じるように算出された、予め決められた量の活性成分を含有する。
【0098】
治療に適用される際、医薬組成物は、医療分野の技術者によって決定される、処置される疾患に適した要領で投与される。適当な用量ならびに投与の適切な継続期間および頻度は、特に、患者の状態、疾患のタイプおよび重症度、活性成分の特定の形態、投与の方法などの要素によって決定される。一般に、適当な用量および投与レジメンによって、治療利益、たとえば、より頻繁な完全もしくは部分寛解、またはより長い無病および/もしくは全生存期間、または症状重症度の軽減、または、臨床家によって注目される、客観的に確認可能な他のいずれかの改善などの、臨床成績の向上をもたらすのに十分な量で医薬組成物が提供される。有効用量は、一般に、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線のような実験モデルを使用して、評価または推定される場合がある。
【0099】
本発明の医薬組成物は、投与についての説明書を添えて、容器、パック、または計量分配装置に入れられる場合がある。
本発明の化合物は、単一の活性薬剤として投与することができ、または、1種または複数の追加の治療活性薬剤、たとえば、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の処置において有用な薬物と組み合わせて使用もしくは投与してもよい。併用療法には、本発明の化合物と1種または複数の追加の治療活性薬剤とを含有する単一の医薬投与製剤の投与に加えて、本発明の化合物および各追加の治療活性薬剤の、別々の投与のためのそれ自体の個別の医薬投与製剤としての投与が含まれる。別々に投与される場合、投与は、同時、順次、または別途になる場合があり、本発明の化合物および追加の治療薬は、同じ投与経路で、または異なる投与経路を使用して投与される場合があり、たとえば、1種の化合物が経口投与され、他の化合物が静脈内投与される場合がある。さらに、上で説明した通り、本発明の化合物は、単剤療法において、詳細には、がん、自己免疫または炎症性疾患、移植拒絶、繊毛病、神経系の疾患、精神または行動障害、感染性疾患、心血管疾患、筋萎縮、および悪液質から選択される疾患の単剤療法処置において使用することもできる。
【実施例】
【0100】
実施例では、以下の略語が使用されている。
AcN:アセトニトリル
Boc:tert-ブチルオキシカルボニル
DABAL-Me3:ビス(トリメチルアルミニウム)-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン付加物
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LC-MS:液体クロマトグラフィー-質量分析
MeI:ヨードメタン
MeOH:メタノール
PPh3:トリフェニルホスフィン
Pd(PPh3)4:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Petエーテル:石油エーテル
rt(またはRT):室温
Rt:滞留時間
TBAB:臭化テトラブチルアンモニウム
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
LC-MSによる定量には、次の方法の1つを使用した。
方法1:カラム:KINETEX-1.7μ XB-C18 100A(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:水中0.05%のギ酸 B:アセトニトリル中0.05%のギ酸;勾配:時間/%A:0/97、0.3/97、3.2/2、4.8/2、5/97、5.10/97 カラム温度:35℃;流量:0.6mL/分
方法2:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相A:水中0.01Mの酢酸アンモニウム;B:AcN;勾配:時間/%A:0/5、0.1/5、2.4/100、3.8/100、4.0/5、4.8/5 カラム温度:45℃;流量:0.5mL/分
方法3:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:水中0.1%のギ酸、B:アセトニトリル中0.1%のギ酸;勾配:時間/%B:0/5、0.3/5、2.5/95、3.7/95、4/5;カラム温度:40℃;流量:0.6mL/分
方法4:カラム-AQUITY UPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相-A:水中0.1%のギ酸、B:アセトニトリル中0.1%のギ酸 T/%A:0/95、0.3/95、2.0/5、3.5/5、3.6/95、4.4/95 流量-0.6mL/分、温度:40℃
方法5:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相A:水中0.01Mの酢酸アンモニウム;B:AcN;勾配:時間/%A:0/5、0.1/5、2.4/100、3.8/100、4.0/5、4.5/5 カラム温度:50℃;流量:0.5mL/分
方法6:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:水中0.1%のギ酸、B:アセトニトリル中0.1%のギ酸;勾配:時間/%A:0/95、0.3/95、2.0/5、3.1/5、3.5/95、4.3/95;カラム温度:40℃;流量:0.6mL/分
方法7:カラム:Luna Omega 3μm PS C18 100A;移動相A:水中0.01Mのギ酸アンモニウム:AcN(95:5);B:水中0.01Mのギ酸アンモニウム:AcN(5:95);勾配:時間/%B:0/2、1/2、4/98、4.5/98、5.5/2、6.5/2;流量:1.0mL/分
方法8:カラム-AQUITY UPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相-A:水中0.1%のギ酸、B:アセトニトリル中0.1%のギ酸 T/%A:0/98、0.3/98、3.2/2、4.4/2、4.7/98 流量-0.6mL/分、温度:40℃
方法9:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相A:水中0.01Mの酢酸アンモニウム;B:AcN;勾配:時間/%A:0/98、0.3/98、3.2/0、4.5/0、4.7/98 カラム温度:45℃;流量:0.5mL/分
方法10:カラム:XBridgeBEH C18(50mm×2.1mm、2.5μm);移動相A:水中0.01Mの酢酸アンモニウム;B:AcN;勾配:時間/%B:0/5、0.2/5、7/100、8/100、8.5/5、11/5;カラム温度:50℃;流量:0.6mL/分
方法11:カラム:PhenomenexC18(50mm×2.1mm、2.6μm);移動相:A:ACN+ギ酸0.1%、B:水0.1%ギ酸;勾配:時間/%B:0/95、0.3/95、2.0/5、3.1/5、3.5/95、4.3/95 カラム温度:40℃、流量:0.6mL/分
方法12:カラム:AquityUPLC BEH C18(50mm×2.1mm、1.7μm);移動相:A:水中0.1%のギ酸、B:アセトニトリル中0.1%のギ酸;勾配:時間/%B:0/5、0.3/5、2.5/95、3.7/95、4/5、4.6/5;カラム温度:40℃;流量:0.6mL/分
参照例1
2-(トリメチルスタンニル)イソニコチノニトリル
撹拌された2-ブロモイソニコニトリル(2g、10.92mmol)のトルエン(20mL)溶液に、室温でヘキサメチル二スズ(4.6g、14.20mmol)およびPd(PPh3)4(1.2g、1.09mmol)を加えた。得られる溶液を窒素で10分間脱気し、16時間110℃に加熱した。反応混合物を減圧下で蒸発にかけ、粗化合物を、石油エーテル中50%のEtOAcを使用する中性アルミナでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(1.5g、51.7%)を得た。
LC-MS(方法1):Rt=1.93分、m/z=269.08(M+H+)
参照例2
(5-ブロモ-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン
ステップa. メチル5-ブロモ-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキシレート
撹拌された5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボン酸(2g、8.3mmol)のDMF(20mL)溶液に、0℃でCs2CO3(5.4g、16.6mmol)およびMeI(2.35g、16.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を氷冷水で失活させ、得られる固体を濾別し、水およびn-ペンタンで洗浄して、1.8g(80.6%)の表題化合物を得た。
LC-MS(方法2):Rt=2.67分、m/z=269.09(M+H+)
ステップb. (5-ブロモ-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン
ステップaで得た化合物(0.75g、2.8mmol)のトルエン溶液を撹拌したものに、0℃で、トリエチルアミン(0.84g、8.4mmol)、モルホリン(0.26g、3.08mmol)、およびDABAL-Me3(1.07g、4.2mmol)を加えた。反応混合物を100℃で3時間撹拌した。反応が終了した後、これをCelite床で濾過し、酢酸エチルで洗浄した。得られる溶液を蒸発にかけて粗化合物を得、これを、DCM中3%のMeOHを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.71g(78.5%)の表題化合物を得た。
LC-MS(方法2):Rt=2.26分、m/z=323.9(M+H+)
参照例3
5-ブロモ-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド
ステップa. 5-ブロモ-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボン酸
参照例2のセクションaにおいて取得した化合物(2.8g、10.4mmol)のEtOHおよび水(35mL、体積で1:0.1)溶液を撹拌したものに、NaOH(1.45g、3.5当量)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が終了した後、酢酸(1.5mL)を加えて、過剰のNaOHを中和した。減圧下で溶媒を蒸発させ、水を加えた。1MのHCl水溶液を加えて、pHを2~3に調整した。沈殿した固体を濾別し、H2Oで洗浄し、真空乾燥して、2.4g(90.4%)の表題化合物を灰色の固体として得た。
LC-MS(方法3):Rt=1.36分、m/z=255.11(M+H+)
ステップb. 5-ブロモ-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N,1-ジメチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド
ステップaで得た化合物(0.55g、2.2mmol)のDMF(6mL)溶液を撹拌したものに、0℃で、N1,N1,N3-トリメチルプロパン-1,3-ジアミン(0.51g、4.4mmol)、DIPEA(0.85g、6.6mmol)、およびHATU(1.25g、3.3mmol)を次々と加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が終了した後、これを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発にかけて、0.60g(78.7%)の表題化合物を濃褐色の液体として得た。
LC-MS(方法3):Rt=1.05分、m/z=353.20(M+H+)
参照例3に記載したものと同様の手順に従いつつ、各場合において、対応する出発材料を使用して、以下の化合物を取得した。
【0101】
【0102】
【0103】
参照例4
3-ブロモ-1-(3-メトキシプロピル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン
撹拌された3-ブロモ-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン(500mg、2.5mmol)のDMF(2mL)溶液に、NaH(0.12g、5mmol)を加えた。反応混合物を0℃で15分間撹拌した。次いで、0℃で1-ブロモ-3-メトキシプロパン(0.57g、3.75mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応が終了した後、これを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発にかけた。粗化合物を、petエーテル中35~40%のEtOAcを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、0.30g(43.9%)の表題化合物を得た。
LC-MS(方法4):Rt=1.71分、m/z=270.04(M+H+)。
【0104】
参照例4に記載したものと同様の手順に従いつつ、対応する出発材料を使用して、以下の化合物を取得した。
【0105】
【0106】
参照例5
3-ブロモ-7-クロロ-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン
撹拌された7-クロロ-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン(400mg、2.6mmol)のMeOH/H2O(1:1)(5mL)溶液に、0℃で、臭素(0.45g、2.86mmol)のMeOH/H2O(1:1)(5mL)溶液を加えた。得られる溶液を0℃で30分間撹拌した。反応混合物が固体として沈殿し、これを濾別し、乾燥させて、500mg(82.5%)の表題化合物を黄色の固体として得た。
LC-MS(方法4):Rt=1.56分、m/z=232.01(M+H+)。
【0107】
参照例6
3-ブロモ-7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン
参照例4に記載したものと同様の手順に従いつつ、3-ブロモ-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジンの代わりに参照例5を使用して、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法3):Rt=1.59分、m/z=290.14(M+H+)。
【0108】
参照例6に記載したものと同様の手順に従いつつ、対応する出発材料を使用して、以下の化合物を取得した。
【0109】
【0110】
実施例1
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン
【0111】
【0112】
ステップa. 2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチノニトリル
撹拌された参照例2(700mg、2.2mmol)の1,4-ジオキサン(70mL)溶液に、参照例1(640mg、2.42mmol)、CsF(660mg、4.4mmol)、およびCuI(83mg、0.44mmol)を加えた。得られる溶液を窒素で5分間脱気し、次いで、Pd(PPh3)4(250mg、0.22当量)を加えた。反応混合物を、もう5分間再び脱気し、次いで、110℃で16時間加熱した。粗反応液をCeliteパッドで濾過し、EtOAc(50mL)で洗浄し、濾過された溶液を蒸発乾燥させた。粗化合物を、炭酸水素アンモニウム緩衝液を使用する分取HPLCによって精製して、表題化合物(185mg、24%)をオフホワイト色の固体として得た。
LC-MS(方法2):Rt=2.35分、m/z=348.1(M+H+)。
【0113】
ステップb. (Z)-N’-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチンイミドアミド
ステップaで得た化合物(165mg、0.5mmol)のEtOH(16.5mL)溶液を撹拌したものに、NH2OH.HCl(200mg、3mmol)、Na2CO3(0.10g、1.0mmol)、および水(1.65mL)を加えた。得られる溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を真空蒸発させ、氷水(20mL)中に注ぎ、DCM中10%のメタノールで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濾過された溶液を濃縮して、表題化合物(0.18g、99%)をオフホワイト色の固体として得た。
LC-MS(方法6):Rt=0.83分、m/z=381.33(M+H+)。
【0114】
ステップc. 1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン
ステップbで得た化合物(180mg、0.50mmol)のTHF(1.8mL)溶液を撹拌したものに、無水トリフルオロ酢酸(310mg、1.5mmol)を加えた。得られる溶液を70℃で3時間加熱した。反応混合物を真空蒸発させ、氷水(20mL)中に注ぎ、EtOAc(2×80mL)で抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濾過された溶液を濃縮して粗残渣を得、これを分取HPLCによって精製して、表題化合物(93mg、42.8%)をオフホワイト色の固体として得た。
LC-MS(方法6):Rt=1.38、m/z=459.33(M+H+)。
【0115】
実施例1に記載したものと同様の手順に従いつつ、各場合において、対応する出発材料を使用して、以下の化合物を取得した。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
実施例2
N-(シクロプロピルメチル)-N,1-ジメチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド塩酸塩
実施例1hからの化合物(0.056g、0.1mmol)を1,4-ジオキサン(1mL)に溶解させ、次いで、0℃でジオキサン中4MのHCl(1mL)を加えることにより、実施例1hの化合物の塩酸塩を調製した。得られる混合物を室温で20分間撹拌した。この時間経過後、減圧下で溶媒を蒸発させた後、凍結乾燥して、45mg(75%)の表題化合物を得た。
LC-MS(方法3):Rt=1.72分、m/z=457.41(M+H+)。
【0123】
実施例2に記載したものと同様の手順に従いつつ、各場合において、対応する出発材料を使用して、以下の化合物を取得した。
【0124】
【0125】
【0126】
実施例3
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノンメシル酸塩
実施例1からの化合物(0.011g、0.02mmol)をアセトニトリル(2mL)に溶解させ、次いで、0℃でメタンスルホン酸(2.3mg、0.02mmol)を加えることにより、実施例1の化合物のメシル酸塩を調製した。得られる混合物を室温で30分間撹拌した。この時間経過後、減圧下で溶媒を蒸発させた後、凍結乾燥して、0.013g(定量的収率)の表題化合物を得た。
LC-MS(方法10):Rt=2.82分、m/z=459.0(M+H+)。
【0127】
実施例4
(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン
【0128】
【0129】
ステップa. tert-ブチル4-(5-(4-シアノピリジン-2-イル)-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボニル)ピペラジン-1-カルボキシレート
実施例1のセクションaに記載したものと同様の手順に従いつつ、参照例2の代わりに参照例3dを使用して、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法4):Rt=1.81分、m/z=447.99(M+H+)。
【0130】
ステップb. tert-ブチル4-(5-(4-(N-ヒドロキシカルバムイミドイル)ピリジン-2-イル)-1-メチル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボニル)ピペラジン-1-カルボキシレート
実施例1のセクションbに記載したものと同様の手順に従いつつ、2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチノニトリルの代わりに、ステップaで得た化合物を使用して、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法3):Rt=1.29分、m/z=480.37(M+H+)。
【0131】
ステップc. tert-ブチル4-(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-カルボニル)ピペラジン-1-カルボキシレート
実施例1のセクションcに記載したものと同様の手順に従いつつ、(Z)-N’-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチンイミドアミドの代わりに、ステップbで得た化合物を使用して、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法3):Rt=1.88分、m/z=558.36(M+H+)。
【0132】
ステップd. (1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)(ピペラジン-1-イル)メタノン
ステップcで得た化合物(0.1g、0.2mmol)の1,4-ジオキサン(3ml)溶液を撹拌したものに、0℃でジオキサン中4M HCl(1mL)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。この時間経過後、減圧下で溶媒を蒸発させ、ジエチルエーテルで摩砕し、凍結乾燥して、二塩酸塩として得られた28mg(29.5%)の表題化合物を取得した。
LC-MS(方法10):Rt=2.61分、m/z=458.0(M+H+)。
【0133】
実施例5
3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
【0134】
【0135】
ステップa. 2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)イソニコチノニトリル
実施例1のセクションaに記載したものと同様の手順に従いつつ、参照例2の代わりに参照例6、溶媒としてのジオキサンの代わりにトルエンを使用し、CsFおよびCuIを加えずに、表題化合物を取得した。
LC-MS(方法3):Rt=1.65分、m/z=314.25(M+H+)。
【0136】
ステップb. 2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)-N-ヒドロキシイソニコチンイミドアミド
実施例1のセクションbに記載したものと同様の手順に従いつつ、2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチノニトリルの代わりに、ステップaで得た化合物を使用し、溶媒としてのEtOHの代わりにEtOH:MeOH:H2O(1:1:0.5)を使用して、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法3):Rt=1.17分、m/z=347.30(M+H+)。
【0137】
ステップc. 3-(2-(7-クロロ-1-(2-メトキシエチル)-1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン-3-イル)ピリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール
実施例1のセクションcに記載したものと同様の手順に従いつつ、(Z)-N’-ヒドロキシ-2-(1-メチル-2-(モルホリン-4-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-5-イル)イソニコチンイミドアミドの代わりに、ステップbで得た化合物を使用し、環化(cyclation)を完了させるためにPOCl3(2当量)を加えて、所望の化合物を取得した。
LC-MS(方法4):Rt=2.35分、m/z=425.12(M+H+)。
【0138】
実施例6
(S)-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)(1-メチル-5-(4-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メタノン(+)カンファースルホン酸塩
実施例1oからの化合物(0.1g、0.21mmol)をMeOH(2mL)に溶解させ、次いで、0℃で(1S)-(+)-10-カンファースルホン酸(0.05g、0.21mmol)を加えることにより、実施例1oの化合物の(+)カンファースルホン酸塩を調製した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。この時間経過後、ジエチルエーテルを加え、即座に沈殿した固体を濾別し、真空乾燥して、0.1g(69%)の表題化合物HPLCを淡褐色の固体として得た。
LC-MS(方法12):Rt=1.72分、m/z=459.10(M+H+)。
【0139】
実施例7
HDAC6酵素阻害アッセイ
方法:
96ウェルハーフエリア黒色マイクロプレート(Corning #3686)+TopSeal-A黒色密封フィルム(Perkin Elmer #6050173)において、蛍光定量アッセイを使用して、HDAC6に対する阻害薬の生化学活性を明らかにした。試験化合物をDMSOに溶解させた。試験化合物の半対数段階希釈物をDMSO中に調製し、次いで、アッセイ緩衝液(BPS Bioscience #50031)で1:10希釈した。
【0140】
合計体積が22.5μLである、0.1mg/mLのウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich #A7030)を含有する21℃のアッセイ緩衝液中で、2.5μLの酵素(BPS Bioscience #50006)を2.5μLの試験化合物と共に3時間インキュベートした。2.5μLの蛍光発生アセチル化ペプチド基質(BPS Bioscience #50037)を加えて、酵素反応を開始した。反応における酵素および基質の最終濃度は、それぞれ、8.8nMおよび9μMであった。37℃で45分インキュベートした後、25μLの発色溶液(BPS Bioscience #50030)を加えると、脱アセチル化産物の量と比例する量のフルオロフォアが放出される。21℃で15分インキュベートした後、Tecan Infinite F200マイクロプレートリーダー(励起360nm-発光460nm)で蛍光強度を測定した。
【0141】
陰性対照(バックグラウンド)は、(0.1%のDMSOを含有する)酵素不在の反応混合物に相当し、デアセチラーゼ活性の陽性対照は、(0.1%のDMSOを加えて)試験化合物なしで、バックグラウンドを差し引いた後に取得した。阻害の百分率を、陽性対照に対する割合として算出した。
【0142】
結果:
上記アッセイにおいて本発明の化合物を用いて得られた結果を以下の表に示す。
【0143】
【0144】
上の表から明らかである通り、本発明の化合物は、強力なHDAC6阻害活性を示す。
実施例8
HDAC6 in vitro細胞基盤アッセイ
HDAC6阻害薬で処理後のHDAC6の細胞活性を明らかにするために、αチューブリン(HDAC6特異的基質)のアセチル化レベルをウエスタンブロットによって測定した。これに向けて、MOLP8細胞を、6ウェルプレートに500.000細胞/ウェルの細胞密度で播き、加湿された組織培養インキュベーターにおいて、37℃および5%CO2として、5μMおよび1μMの試験化合物で18時間処理した。続けて、細胞ペレットを収集し、1×プロテアーゼ阻害剤(cOmplete mini、Roche)で補充したRIPA緩衝液(SIGMA)を使用して、全タンパク質抽出物を調製した。Bradford試薬(Bio-Rad)を用いて製造者の指示通りにタンパク質濃度を求め、7μgの総タンパク質を、プレキャスト10%NuPAGE Novexゲル(Life Technologies)に装入した。ゲルをMOPS-SDS緩衝液(Life Technologies)中で泳動し、iBlot2Dryブロッティングシステム(Life Technologies)を使用して、タンパク質を転写した。引き続いて、ブロットを蒸留水中ですすぎ、ポンソーS溶液(SIGMA)で染色した。次いで、ブロットを蒸留水中で洗浄して、ポンソー過剰分を除去し、Epson Perfection V600 Photo professional走査装置で走査した。この後、ブロットを脱染し、5%の乳/PBS-Tween0.1%中において室温で1時間ブロッキングした後、5%の乳/PBS-T0.1%中において、抗アセチルαチューブリン(SIGMAカタログ番号T7451、1:10.000希釈)および抗βアクチン(SIGMA、カタログ番号A5316、1:2.000希釈)一次抗体と共に、4℃で終夜、震盪する台の上でインキュベートした。インキュベートした後、ブロットをPBS-Tween0.5%中で5分間ずつ3回洗浄し、5%の乳/PBS-Tween0.1%中において、1:8.000の抗マウスHRP結合二次抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号115-035-068)と共に、室温で1時間、震盪する台の上でインキュベートした。PBS-Tween0.5%で5分ずつ3回洗浄し、1×PBS中で1回洗浄した後、ECL Plus(GE Healthcare)を用いてブロットを発色させ、化学発光反応を、G:Box Chemi XRQ(Syngene)画像処理システムで画像処理した。WBおよびポンソー像をImageJソフトウェアで解析し、WBバンド強度を、総タンパク質またはβアクチン含有量のいずれかによって正規化し、ACY-1215 1μM(100%に相当)と比較した。ACY-1215は、HDAC6阻害薬であり、リコリノスタットとしても知られ、化学名は、2-(ジフェニルアミノ)-N-[7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル]-5-ピリミジンカルボキサミドである。
【0145】
本発明の化合物は、このアッセイにおいて1μMおよび5μMで試験され、HDAC6の細胞活性を阻害することがわかった。