(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ゆがみ防止付きスネア装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240719BHJP
A61B 17/221 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B17/221
(21)【出願番号】P 2022506055
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 US2020044469
(87)【国際公開番号】W WO2021022143
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-12
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522037942
【氏名又は名称】カーネリアン メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー,エリック,ディ.
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06500185(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0229638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61B 17/221
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具であって、
(a)軸を画定する長手方向に延びる支持体であって、前記支持体は比較的長さの長い非圧縮状態と比較的長さの短い圧縮状態とを有し、前記支持体は可撓性遠位セクションを含み、前記可撓性遠位セクションは、丸い断面形状のコイル状フィラメントを含み、前記圧縮状態にあるときに前記軸に対して第1の経路を画定し、前記可撓性遠位セクションは、引張強度、フィラメント断面積、および破断荷重を有し、前記可撓性遠位セクションの破断荷重は、前記可撓性遠位セクションの引張強度に前記可撓性遠位セクションのフィラメント断面積を乗じた値に等しい、支持体と、
(b)前記軸に沿って延び、前記支持体の前記可撓性遠位セクションに固定されたコアワイヤであって、前記コアワイヤは、比較的長さの短い弛緩状態と比較的長さの長い引張状態とを有し、前記コアワイヤは、前記コアワイヤの近位端で終端する近位部分と前記コアワイヤの遠位端で終端する遠位部分とを含み、前記コアワイヤの遠位部分は、前記弛緩状態にあるときに前記軸に対して第2の経路を画定し、前記第2の経路は、前記第1の経路とは異なり、かつループ状の形状を含み、前記コアワイヤの遠位部分は、フィラメント直径およびフィラメント断面積を有し、前記コアワイヤの遠位部分は、前記遠位部分に掛かる引張力に応答する上限プラトー応力も有し、前記コアワイヤの遠位部分のプラトー力は、前記上限プラトー応力に前記コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積を乗じた値に等しく、前記コアワイヤの遠位部分は長さを有し、前記コアワイヤの遠位部分のフィラメント直径が、前記弛緩状態にある前記コアワイヤの遠位部分の長さにわたって略均一である、コアワイヤと、
(c)前記コアワイヤの近位端および前記支持体の近位端に固定され、前記コアワイヤに引張力および前記支持体に圧縮力の両方を選択的に掛けるアクチュエータであって、前記引張力により前記コアワイヤがその弛緩状態からその引張状態に移行し、前記圧縮力により前記支持体がその非圧縮状態からその圧縮状態に移行するアクチュエータと、
を備え、
(d)前記支持体の前記可撓性遠位セクションの破断荷重が、前記コアワイヤの遠位部分のプラトー力よりも大きい、
器具。
【請求項2】
前記支持体が遠位端で遠位に終端し、前記コアワイヤの前記遠位端が前記支持体の前記遠位端に固定されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記支持体は遠位端で遠位に終端し、前記コアワイヤの前記遠位端が、前記支持体の前記遠位端に近位の距離で前記支持体に固定されている、
請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記ループ状の形状が略円形である、
請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記ループ状の形状が円錐状螺旋を含む、
請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記ループ状の形状が円筒状螺旋を含む、
請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記ループ状の形状が、近位円筒状螺旋および遠位円錐状螺旋を含む、
請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記コアワイヤの近位部分が引張力に応答する第1の歪みを有し、前記コアワイヤの遠位部分が前記引張力に応答する第2の歪みを有し、前記第1の歪みが前記第2の歪みよりも小さい、
請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記コアワイヤが超弾性材料を含み、前記第1の歪みが初期弾性領域にあり、前記第2の歪みが超弾性領域にある、
請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記コアワイヤは、ニッケル-チタン合金を含む一体構造であり、前記コアワイヤの近位部分は、比較的大きい寸法のフィラメント直径を有し、前記コアワイヤの遠位部分は、比較的小さい寸法のフィラメント直径を有する、
請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記コアワイヤの少なくとも一部が潤滑性コーティングでコーティングされている、
請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記第1の経路が直線である、
請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記支持体が近位部分をさらに備え、前記支持体の近位部分および前記支持体の遠位部分が一体構造を形成する、
請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記支持体が、スリーブをさらに備え、前記スリーブは、前記支持体の近位部分および前記支持体の遠位部分のうちの少なくとも一方の周りに配置されている、
請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記アクチュエータが、ハンドルおよびスライドを備え、前記スライドは、近位および遠位に選択的に移動するように前記ハンドルに摺動可能に取り付けられ、前記コアワイヤの前記近位端は、前記ハンドルに結合され、前記支持体の近位端は、前記スライドに結合される、
請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記アクチュエータがアンカーをさらに備え、前記コアワイヤの前記近位端が前記アンカーに固定され、前記アンカーが前記ハンドルに回転可能に取り付けられ、それにより、前記アンカーを回転させることによって前記コアワイヤに掛けられる引張力が調整される、
請求項
15に記載の器具。
【請求項17】
前記器具は、前記コアワイヤの前記遠位部分の周りに、かつ前記支持体に対して内側に取り付けられたスペーサコイルをさらに備える、
請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記アクチュエータの作動は、前記支持体を前記非圧縮状態から前記圧縮状態に移行させ、前記コアワイヤを前記弛緩状態から前記引張状態に移行させ、前記アクチュエータの作動の停止は、前記支持体を前記圧縮状態から前記非圧縮状態に移行させ、前記コアワイヤを前記引張状態から前記弛緩状態に移行させる、
請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記支持体は巻き方向を有し、前記コアワイヤは巻き方向を有し、前記支持体の前記巻き方向は左巻と右巻の一方であり、前記コアワイヤの前記巻き方向は左巻と右巻の他方である、
請求項18に記載の器具。
【請求項20】
前記支持体が前記非圧縮状態にあるとき、前記支持体は、前記コアワイヤと前記支持体との遠位結合部のすぐ近位の領域において、互いに間隔を空けて配置されるターンを含む、
請求項19に記載の器具。
【請求項21】
前記支持体が前記非圧縮状態にあるとき、前記支持体は、前記コアワイヤと前記支持体との遠位結合部のすぐ近位の領域において、互いに間隔を空けて配置されるターンを含む、
請求項18に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月1日に出願された発明者Eric D.Mathewsの米国特許出願第16/528,814号の一部継続出願であり、本開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、スネア装置に関し、より詳細には、新規なスネア装置に関する。
【背景技術】
【0003】
限定された空間から物体を捕捉または回収することが望ましい場合がある多くの状況が存在する。例えば、医学の分野では、場合によっては、血管から血栓を捕捉し除去することが望ましいことがある。この目的のために、いくつかのスネア装置が考案されている。
【0004】
スネア装置の一例は、2002年12月31日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Mathewsらの特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、スネア装置は、軸を画定する長手方向に延びる支持体を有する。支持体は、可撓性の遠位セクションと剛性の近位セクションとを有する。コイル状ワイヤの形態である可撓性の遠位セクションは、軸に対して第1の経路を画定する圧縮状態を有する。軸に沿って延びるコアワイヤは、軸に対して第2の経路を画定する弛緩状態を有する。可撓性遠位セクションに配置されコアワイヤに取り付けられたアンカーにより、可撓性遠位セクションは同じ経路をたどる。コアワイヤの近位端に係合されたアクチュエータにより、外科医がそれに引張力を選択的に掛けることが可能になる。この引張力により、コアワイヤおよび可撓性遠位セクションが第1の経路と第2の経路との間を一緒に移行する。
【0005】
特許文献1によれば、スネア装置の支持体に適した全体の外径は約0.014インチであり、これにより装置は一般的な血管内使用に適したものになる。さらに、特許文献1によれば、コイル状ワイヤ支持体を形成するための適切な材料は、放射線不透過性の白金合金であり、それによって外科医は体内のスネア装置の位置を追跡することが可能になる。
【0006】
スネア装置の別の例は、2006年10月12日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Abramsらの特許文献2に開示されている。特許文献2によれば、身体の管腔から異物を除去するための装置および方法が開示されている。例示的な実施形態による回収装置は、可撓性コレクタ要素と、医師によって係合されてコレクタ要素を身体の第1の位置と第2の位置との間で作動させることができるコアワイヤと、を含む細長い部材を含む。コレクタ要素は、第1の位置において実質的に直線形状を、そして第2の位置において1つまたは複数の螺旋状に配向されたループを形成する伸張形状をとるように適合された矩形断面のコイル状の平坦リボンを含むコイル状セクションを備えてもよい。特許文献2によれば、ステンレス鋼は、コレクタ要素を含む細長い部材に適した材料である。
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載されているタイプのスネア装置で注目されている問題の1つは、「ゆがみ(傾斜、スキュー;skewing)」と呼ばれることもある現象である。より具体的には、支持体の可撓性の遠位セクションがコイル状ワイヤの形態である場合、コイル状ワイヤが第1の経路から第2の経路に移行するとき、コイル状ワイヤのターンの一部は、内向きの半径方向の力を受ける場合がある。この力が十分に大きい場合、この力により、1つまたは複数のターンが半径方向内側に変位したり、隣接するターンに対して「ゆがむ」ことがある。このようなゆがみは、少なくともいくつかの理由で望ましくない。1つには、コイル状ワイヤのゆがんだターンは、コアワイヤがその第1の経路からその第2の経路に適切に移行する能力が阻害されるように、コアワイヤと接触する可能性がある。さらに、コイル状ワイヤのターンがゆがむと、コイル状ワイヤのターンの位置が永久にずれ、それによってコイル状ワイヤが第1の経路と第2の経路との間を適切に移行する能力が損なわれる可能性がある。
【0008】
2003年11月25日に発行され、参照により本明細書に組み込まれる、発明者Mathewsらの特許文献3には、スネア装置における上述のゆがみの問題に対するいくつかの異なるアプローチが開示されている。特許文献3によれば、1つのアプローチは、ゆがみが発生し得る程度までコイル状ワイヤの1つまたは複数のターンが半径方向内側に移動する可能性を低減するように、コイル状ワイヤの管腔の直径をコアワイヤの外径に対して十分に小さく寸法決めすることである。同時に、スネア装置の使用時にコイル状ワイヤとコアワイヤとが互いに結合する可能性を低減するために、コイル状ワイヤの管腔の直径は、コアワイヤの外径に対して十分に大きくなるように寸法決めされる。
【0009】
特許文献3に開示されている別のアプローチは、コアワイヤの周りにスペーサコイルを配置することであり、スペーサコイルは、白金などの放射線不透過性材料で作られているか、または放射線不透過性材料で作られた部分を有している。スペーサコイルは、コアワイヤと接触しているか、または、スペーサコイルのターン自体がコアワイヤに対して半径方向に変位する可能性を減少させるのに十分に小さい隙間によってそことは隔てられているか、のいずれかである。コイル状ワイヤとスペーサコイルとの間の間隔は、コイル状ワイヤのターンが半径方向に変位してコイル状ワイヤの隣接するターンが互いに接触し、それによって介在するターンが永久的にゆがんで整列しなくなる可能性を低減するのに十分小さくなるように選択される。しかしながら、スペーサコイルとコイル状ワイヤとの間の間隔も、装置の使用時にスペーサコイルとコイル状ワイヤとが互いに結合する可能性を低減するのに十分な大きさになるように選択される。
【0010】
特許文献3に開示されているアプローチは、ゆがみの問題をある程度改善する可能性があるが、本発明者はまた、このアプローチが、多くの場合、非実用的または不十分であったりする可能性があると考えている。例えば、スペーサコイルの使用により、特に、圧縮されたとき/引張力が掛かったときに装置の遠位の剛性が増し、それによって、曲がりくねった管腔を通り捕捉が必要な閉塞物まで装置を送り込むことがより困難になる。さらに、スペーサコイルと支持コイルとの間の摩擦が増加することで、装置がその直線的な構成からその弛緩したコイル状の構成に移行することが抑制される。さらに、スペーサコイルを使用すると、装置の製造コストおよび複雑さが増加し、スペーサコイル自体のゆがみなどのいくつかの潜在的な問題も発生する。したがって、本発明者は、ゆがみの発生および影響を最小限に抑えるための代替的なアプローチが必要であると考えている。
【0011】
他の関心のある文書として、2006年6月6日に発行された発明者Pierceによる特許文献4、2003年9月16日に発行された発明者Dretlerらによる特許文献5、2009年8月20日に公開された発明者Mathewsらによる特許文献6などがあり、これらのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第6,500,185号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0229638号明細書
【文献】米国特許第6,652,536号明細書
【文献】米国特許第7,058,456号明細書
【文献】米国特許第6,620,172号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0209987号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、新規なスネア装置または同様の器具を提供することである。
【0014】
本発明の一態様によれば、スネア装置などの器具が提供され、器具は、(a)軸を画定する長手方向に延びる支持体であって、支持体は比較的長さの長い非圧縮状態と比較的長さの短い圧縮状態とを有し、支持体は可撓性遠位セクションを含み、可撓性遠位セクションは、丸い断面形状のコイル状フィラメントを含み、圧縮状態にあるときに軸に対して第1の経路を画定し、可撓性遠位セクションは、引張強度、フィラメント断面積、および破断荷重を有し、可撓性遠位セクションの破断荷重は、可撓性遠位セクションの引張強度に可撓性遠位セクションのフィラメント断面積を乗じた値に等しい、支持体と、(b)軸に沿って延び、支持体の可撓性遠位セクションに固定されたコアワイヤであって、コアワイヤは、比較的長さの短い弛緩状態と比較的長さの長い引張状態(緊張状態)とを有し、コアワイヤは、コアワイヤの近位端で終端する近位部分とコアワイヤの遠位端で終端する遠位部分とを含み、コアワイヤの遠位部分は、弛緩状態にあるときに軸に対して第2の経路を画定し、第2の経路は、第1の経路とは異なり、かつループ状の形状を含み、コアワイヤの遠位部分はフィラメント直径およびフィラメント断面積を有し、コアワイヤの遠位部分は、コアワイヤの遠位部分に掛かる引張力に応答する上限プラトー応力も有し、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は、上限プラトー応力にコアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積を乗じた値に等しく、コアワイヤの遠位部分は長さを有し、コアワイヤの遠位部分のフィラメント直径が、弛緩状態にあるコアワイヤの遠位部分の長さにわたって略均一である、コアワイヤと、(c)コアワイヤの近位端および支持体の近位端に固定され、コアワイヤに引張力および支持体に圧縮力の両方を選択的に掛けるアクチュエータであって、引張力によりコアワイヤがその弛緩状態からその引張状態に移行し、圧縮力により支持体がその非圧縮状態からその圧縮状態に移行するアクチュエータと、を備え、(d)支持体の可撓性遠位セクションの破断荷重が、コアワイヤの遠位部分のプラトー力よりも大きい。
【0015】
本発明のより詳細な特徴において、支持体は遠位端で遠位に終端してもよく、コアワイヤの遠位端は支持体の遠位端に固定されてもよい。
【0016】
本発明のより詳細な特徴において、支持体は遠位端で遠位に終端してもよく、コアワイヤの遠位端は、支持体の遠位端に近位の距離で支持体に固定されてもよい。
【0017】
本発明のより詳細な特徴において、ループ状の形状は略円形であってもよい。
【0018】
本発明のより詳細な特徴において、ループ状の形状は円錐状螺旋を含んでもよい。
【0019】
本発明のより詳細な特徴において、ループ状の形状は円筒状螺旋を含んでもよい。
【0020】
本発明のより詳細な特徴において、ループ状の形状は近位円筒状螺旋と遠位円錐状螺旋とを含んでもよい。
【0021】
本発明のより詳細な特徴において、コアワイヤの近位部分は引張力に応答する第1の歪みを有してもよく、コアワイヤの遠位部分は引張力に応答する第2の歪みを有してもよく、第1の歪みは第2の歪みよりも小さくてもよい。
【0022】
本発明のより詳細な特徴において、コアワイヤは超弾性材料を含んでもよく、第1の歪みは初期弾性領域にあってもよく、第2の歪みは超弾性領域にあってもよい。
【0023】
本発明のより詳細な特徴において、コアワイヤはニッケル-チタン合金を含む一体構造であってもよく、コアワイヤの近位部分は比較的大きな寸法のフィラメント直径を有してもよく、コアワイヤの遠位部分は比較的小さな寸法のフィラメント直径を有してもよい。
【0024】
本発明のより詳細な特徴において、コアワイヤの少なくとも一部は潤滑性コーティングでコーティングされていてもよい。
【0025】
本発明のより詳細な特徴において、第1の経路は直線であってもよい。
【0026】
本発明のより詳細な特徴において、支持体は近位部分をさらに備えてもよく、支持体の近位部分および支持体の遠位部分は一体構造を形成してもよい。
【0027】
本発明のより詳細な特徴において、支持体はスリーブをさらに備えてもよく、スリーブは支持体の近位部分および支持体の遠位部分の少なくとも一方の周りに配置されてもよい。
【0028】
本発明のより詳細な特徴において、アクチュエータはハンドルおよびスライドを備えていてもよく、スライドは近位および遠位に選択的に移動するようにハンドルにスライド可能に取り付けられていてもよく、コアワイヤの近位端はハンドルに結合されていてもよく、支持体の近位端はスライドに結合されていてもよい。
【0029】
本発明のより詳細な特徴において、アクチュエータはアンカーをさらに備えていてもよく、コアワイヤの近位端はアンカーに固定されていてもよく、アンカーはハンドルに回転可能に取り付けられていてもよく、それにより、アンカーを回転させることによってコアワイヤに掛かる引張力を調整することができる。
【0030】
本発明のより詳細な特徴において、器具は、コアワイヤの遠位部分の周りに、かつ支持体に対して内側に取り付けられたスペーサコイルをさらに備えてもよい。
【0031】
本発明のより詳細な特徴において、アクチュエータの作動は、支持体を、非圧縮状態から圧縮状態に移行させ、コアワイヤを、弛緩状態から引張状態に移行させることができ、アクチュエータの作動の停止は、支持体を、圧縮状態から非圧縮状態に移行させ、コアワイヤを、引張状態から弛緩状態に移行させることができる。
【0032】
本発明のより詳細な特徴において、支持体は巻き方向を有し、コアワイヤは巻き方向を有し、支持体の巻き方向は左巻と右巻の一方であり、コアワイヤの巻き方向は左巻と右巻の他方であってもよい。
【0033】
本発明のより詳細な特徴において、支持体が非圧縮状態にある場合、支持体は、コアワイヤと支持体との遠位結合部のすぐ近位の領域において、互いに間隔を空けて配置され得るターンを含んでいてもよい。
【0034】
本発明のより詳細な特徴において、支持体は巻き方向を有し、コアワイヤは巻き方向を有し、支持体の巻き方向は左巻と右巻の一方であり、コアワイヤの巻き方向は左巻と右巻の他方であってもよく、支持体が非圧縮状態にある場合、支持体は、コアワイヤと支持体との遠位結合部のすぐ近位の領域において、互いに間隔を空けて配置され得るターンを含んでいてもよい。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、上記発明が所定の方向に配置されるか、または所定の方向から見られる場合、本発明を説明するために「上部」、「底部」、「近位」、「遠位」、「上方」、「下方」、「前部」、および「後部」のような様々な関係用語が使用されることがある。本発明の方向を変更することによって、特定の関係用語をそれに応じて調整する必要があり得ることを理解すべきである。
【0036】
本発明のさらなる目的、ならびに特徴および利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。本明細書では、その一部を形成し、本発明を実施するための様々な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明され、他の実施形態が利用され、本発明の範囲から逸脱することなく構造的変更がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって最もよく定義される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、特定の構成要素は、説明の都合上、寸法が過小および/または過大になっている場合がある。図面において、同様の符号は同様の部分を表す。
【0038】
【
図1】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第1の実施形態の部分斜視図であり、スネア装置はそのコイル状状態で示されている。
【0039】
【
図2】
図1のスネア装置の部分斜視図であり、スネア装置は直線状の状態で示されている。
【0040】
【
図3】
図1のスネア装置の近位部分の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0041】
【
図4】
図1のスネア装置の近位部分の拡大部分断面図であり、スネア装置は直線状の状態で示されている。
【0042】
【
図5】
図1のスネア装置の遠位部分の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0043】
【
図6】
図1のスネア装置の遠位部分の拡大部分断面図であり、スネア装置は直線状の状態で示されている。
【0044】
【
図7】
図6に示すコアワイヤの部分側面図であり、内側コアワイヤが直線状の状態で示されている。
【0045】
【
図8】
図6に示すコアワイヤの遠位端図であり、内側コアワイヤが直線状の状態で示されている。
【0046】
【
図9】
図6に示す支持体の近位端図であり、支持体はその圧縮状態で示されている。
【0047】
【
図10】
図6に示す支持体の遠位端図であり、支持体はその圧縮状態で示されている。
【0048】
【
図11】
図1に示すエンドキャップの拡大斜視図である。
【0049】
【
図12】
図1に示すアクチュエータの部分分解斜視図である。
【0050】
【
図13】コイル状ワイヤ支持体の永久的にゆがんだターンを有する従来のスネア装置の断面図である。
【0051】
【
図14】
図5に示すようなコアワイヤの応力-歪み曲線のグラフである。
【0052】
【
図15】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第2の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置は直線状の状態で示されている。
【0053】
【
図16】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第3の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0054】
【
図17】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第4の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0055】
【
図18】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第5の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0056】
【
図19】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第6の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置はコイル状の状態で示されている。
【0057】
【
図20】(a)および(b)は、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第7の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置が、そのコイル状の状態とその直線状の状態でそれぞれ示されている。
【0058】
【
図21】本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第8の実施形態の拡大部分断面図であり、スネア装置はそのコイル状の状態で示されている。
【0059】
【
図22】比較例Aのスネア装置のゆがんだ支持体の一部を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金は、オーステナイト終了温度(Af)が室温または体温よりも低い超弾性状態で医療機器に多く使用されている。NITINOL(商標)ワイヤに引張力が掛かると、材料は8%程伸び、その後、ほぼ元の長さに戻ることができる。実際、引張力が掛かってワイヤが荷重プラトー(伸び率~2%)に達すると、力が除荷されたときにワイヤに発生するヒステリシスがわずかに存在する。ワイヤの長さにヒステリシスが生じないようにするために、引張力は、荷重プラトーに達するのに必要な量よりもいくらか小さくなければならない。一方のセグメントの直径が他方のセグメントよりも小さくなるようにワイヤを加工する場合、特定の引張力を掛けると、両方の状態(すなわち、ヒステリシスが発生、およびヒステリシスが発生しない)が達成される場合がある。
【0061】
さらに、超弾性NITINOL(商標)は、熱を使って複雑な形状に成形することもできる。本出願では、NITINOL(商標)ワイヤの遠位セクションを、医療処置に有利な形状に成形することができる。このような形状には、円筒状螺旋、円錐状螺旋、および滑らかな移行部を有する他の丸みを帯びた形状が含まれる場合がある。形状の鋭い曲げは、一般に、本明細書に記載の実施形態には役立たない。
【0062】
超弾性NITINOL(商標)は、人体内の場所にアクセスするために使用されることが多い。NITINOL(商標)コアワイヤをコイル内に配置して遠位位置に取り付けると、コイルに圧縮力を掛けながらコアワイヤに引張力を掛けることができる。本出願では、NITINOL(商標)コアワイヤは、遠位セクションと近位セクションとを有し、遠位セクションの直径を近位セクションの直径より小さくし得る。遠位セクションを上述のように複雑な形状に設定してもよく、コイルの遠位セクションはその複雑な形状に従ってもよく、それによってコイル間にギャップ間隔が生じることになる。コアワイヤに引張力を掛けコイルに圧縮力を掛けるために、アクチュエータを近位に配置して、コアワイヤとコイルの両方に取り付けてもよい。
【0063】
アクチュエータがコアワイヤおよびコイルにそれぞれ引張力および圧縮力を掛けると、コアワイヤがコイル内で並進し始め、遠位コイルのギャップが閉じ始め、コイルが完全に圧縮された状態で積み重なるので、遠位の複雑な形状は複雑から直線に移行することができる。遠位のコアワイヤは、圧縮コイル内に拘束され、完全ではないがほとんど直線状となることができる。掛けられた力は、遠位の小さいコアワイヤ部分にその荷重プラトーへと引張力を掛けることができ、一方、近位部分には、その荷重プラトーに到達しないが、ヒステリシスのない完全な弾性を維持することができる量の引張力を掛けることができる。
【0064】
作動中、遠位部分が圧縮されたコイルに衝撃を与える外力を受けると、コイルは半径方向に並進するか、またはゆがむ可能性がある。これが起こると、コイルの個々のターンが本来の外径の内側と外側に位置するようになり、コアワイヤを押さえてしまう(掴んでしまう)可能性がある。その場合、装置は動かなくなり、並進できなくなる可能性がある。本発明者は、コイルの極限引張強度に関する破断荷重が、遠位のコアワイヤが荷重プラトーに達するのに必要な引張力を上回る場合、ゆがみが発生しないか、または発生頻度が劇的に減少することを発見した。本発明の装置では、コイルの破断荷重が遠位のコアワイヤの荷重プラトー力よりも大きくなるように、コイルを選択し得る。このことにより、コアワイヤの形状が複雑なために荷重プラトーを超える引張力を掛ける必要がある場合(伸び率が6~8%である場合)にも、十分な余裕が与えられる。
【0065】
このような力の必要性と制限から、装置を真っ直ぐにするコイルを圧縮するのに必要な引張力/圧縮力だけが掛かるようにアクチュエータを調整し得る。直線化に必要な力よりも大きな力をアクチュエータが掛けた場合、装置の有用性を妨げる不要なコアワイヤのヒステリシスやコイルゆがみのリスクがある。
【0066】
したがって、本発明は、上述したタイプのスネア装置および同様の機器で一般的に発生するゆがみの問題に対処することを目的とする。上述したように、このような装置がコイル状の状態から真っ直ぐな状態に移行する場合、支持体がコイルを備え、コイルが十分な大きさの内向きの半径方向の力を受けると、コイルの複数のターンのうちの1つまたは複数は、その隣接するターンに対して半径方向内向きに変位するか、または「ゆがむ」可能性がある。このようなコイルのゆがみは、コイルワイヤがコアワイヤと結合し、コアワイヤがコイル状の状態から真っ直ぐな状態に適切に移行する能力を損なう可能性があるため、好ましくない。さらに、コイルワイヤのこのようなゆがみにより、コイルのターンの永久的な位置ずれがもたらされ、それによってコイルがそのコイル状の状態とその真っ直ぐな状態との間で適切に移行する能力が損なわれる可能性がある。
【0067】
上述したように、また以下でさらに論じるように、本発明によれば、予想外にも、コイルとコアワイヤの遠位部分(すなわち、コイル状の状態と真っ直ぐな状態との間で移行するコイルとコアワイヤのそれぞれの部分)を以下の関係が存在するように選択すると、上述のゆがみの問題を改善し得ることが分かった。
破断荷重(コイルの遠位部分)>プラトー力(コアワイヤの遠位部分)
ここで、コイルの遠位部分の破断荷重は、コイルの遠位部分の引張強度に、コイルの遠位部分のフィラメント断面積を乗じた値に等しく、コアワイヤの遠位部分は、フィラメント断面積を有し、また、コアワイヤの遠位部分に掛かる引張力に応答する上限プラトー応力も有し、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は、上限プラトー応力に、コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積を乗じた値に等しい。
【0068】
ここで
図1~
図6を参照すると、スネア装置の第1の実施形態の様々な図が示されており、スネア装置は、本発明の教示に従って構成され、全体として符号11で表されている。本出願の他の箇所で議論されている、または本発明の理解にとって重要でないスネア装置11の詳細は、
図1~
図6のうちの1つまたは複数から、および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図1~
図6のうちの1つまたは複数に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0069】
スネア装置11は、コアワイヤ13、支持体15、エンドキャップ17、およびアクチュエータ19を備え得る。
【0070】
同様に
図7および
図8に別々に示されているコアワイヤ13は、閾値となる引張力または牽引力を受けたときに弛緩状態から引張状態に移行することができる細長い可撓性の不均質なフィラメント構造であり得る。本実施形態では、コアワイヤ13は、近位部分21および遠位部分23を備え得る。近位部分21は、コアワイヤ13の近位端25で近位に終端し得、遠位部分23は、コアワイヤ13の遠位端27で遠位に終端し得る。近位部分21および遠位部分23は、互いに連続していてもよく、または短い中間部分29によって相互接続されていてもよい。本実施形態では、近位部分21は、所定の引張力に応答する第1の歪み(この第1の歪みは、近位部分21の全長に沿って均一であり得る)を有することを特徴とすることができ、遠位部分23は、同じ引張力に応答する第2の歪み(この第2の歪みは、遠位部分23の全長に沿って均一であり得る)を有することを特徴とすることができ、近位部分21の第1の歪みは、遠位部分23の第2の歪みよりも小さい。第1の歪みと第2の歪みに差がある結果、コアワイヤ13に引張力が作用すると、遠位部分23は近位部分21よりも伸びる傾向がある。本実施形態では、近位部分21の第1の歪みは初期弾性領域(すなわち、完全に可逆的な長さ、永久的な伸びがない)にあってもよく、これに対して遠位部分23の第2の歪みは超弾性領域(すなわち、いくらかの永久的な伸びがある)にあってもよい。
【0071】
コアワイヤ13の近位部分21は、全体形状が実質的に直線である弛緩状態を有し得、コアワイヤ13の遠位部分23は、ループ状またはコイル状の形状を含む弛緩状態を有し得る。本実施形態では、弛緩状態における遠位部分23のループ状またはコイル状の形状は、ほぼ円形状であってもよい。以下でさらに説明する他の実施形態では、遠位部分23のループ状またはコイル状の形状は、円錐状螺旋、円筒状螺旋、他の丸みを帯びた形状、またはこれらの組合せを含んでもよい。コアワイヤ13がその引張状態に引っ張られると、遠位部分23は長くなり、そのループ状またはコイル状の形状は実質的に直線化される(近位部分21も長くなり得る範囲で、このような伸びは、遠位部分23が経験することと比較してわずかであるか、または無視し得る)。
【0072】
本実施形態では、コアワイヤ13は、超弾性形状記憶材料で作られた単一構造、即ち、一体構造であってもよい。このような材料は、変形されて臨界温度を超えて加熱されると、その変形状態を「記憶する」という特性を有する。冷却され、さらなる変形を受けると、このような材料は、この記憶された形状に戻る。コアワイヤ13を製造することができる適切な超弾性材料は、NITINOL(商標)の商品名で一般的に販売されているニッケル-チタン合金である。上述のニッケル-チタン合金の場合、臨界温度は華氏700~1020度付近である。
【0073】
上述したように、コアワイヤ13が超弾性形状記憶材料で作られた単一構造である場合、近位部分21と遠位部分23との間の降伏力の差は、近位部分21の全長に沿って実質的に均一であり得る第1のフィラメント断面直径d1を近位部分21に与えることによって、および遠位部分23の全長に沿って実質的に均一であり得る第2のフィラメント断面直径d2を遠位部分23に与えることによって実現され、ここで第2のフィラメント断面直径d2は第1のフィラメント断面直径d1よりも小さい(中間部分29は、近位部分21から遠位部分23までフィラメント断面直径が均一に先細りになっていてもよい)。本実施形態のように、コアワイヤ13の近位部分21がコアワイヤ13の遠位部分23よりも大きいフィラメント断面直径を有する場合、コアワイヤ13に所定の引張力が掛かると、コアワイヤ13の近位部分21に掛かる応力よりもコアワイヤ13の遠位部分23に掛かる応力の方が大きくなる。結果として、遠位部分23は、近位部分21よりも歪みが大きくなり、したがってより大きく伸びる。
【0074】
本実施形態では、コアワイヤ13の近位部分21およびコアワイヤ13の遠位部分23の両方は、フィラメント断面形状がほぼ円形であってもよいが、コアワイヤ13の近位部分21およびコアワイヤ13の遠位部分23は、フィラメント断面形状が円形である必要はなく、他のフィラメント断面形状を有してもよいことを理解すべきである。
【0075】
上述したように、コアワイヤ13が1つの材料で作られた単一ワイヤである実施形態では、コアワイヤ13の異なる長さの部分は、異なるフィラメント断面直径を有することができる。例えば、近位部分21および遠位部分23は、互いに異なるフィラメント断面直径を有してもよい。コアワイヤ13の近位部分21と遠位部分23のフィラメント断面直径の比は、コアワイヤ13の材料特性に依存し得る。この比は、オペレータがわずかな力を掛けるだけで適切な歪み差が得られるように選択することができる。コアワイヤ13の近位部分21および遠位部分23のそれぞれのフィラメント断面直径は、オペレータが掛ける引張力がコアワイヤ13に記憶された形状の記憶を失わせるには不十分であるようなものであり得る。一般に、これは、遠位部分23がその弛緩した長さの8%未満、好ましくは2%~7%以内で伸長するような引張力でなければならないことを意味する。
【0076】
降伏力が異なる2つ以上の部分を有するコアワイヤ13を製造するための様々な方法が存在する。一方法では、形状記憶金属で作られた連続ワイヤを研磨してより小さいフィラメント直径にして遠位部分23を形成する。次いで、遠位部分23は、所望の形状にヒートセットされる。コアワイヤ13の作動を達成するために、近位部分21の降伏力と遠位部分23の降伏力とに十分な差がなければならない。これは、遠位部分23のフィラメント直径に対する近位部分21のフィラメント直径の比を約1.35以上となるようにすることで実現することができる。非円形断面を有するコアワイヤ13の場合、これは、遠位部分23の面積に対する近位部分21の面積の比を約1.8以上となるようにすることで実現することができる。
【0077】
ある状態から別の状態への実際の移行は、コアワイヤ13に沿って進行する波として見ることができる。近位部分21と遠位部分23との間の移行部のテーパを制御することによって、この波が進む方向を制御することができる。
図5および
図6に示すようなテーパの場合、オペレータがコアワイヤ13に引張力を掛けると、波は近位部分21から遠位部分23に進む。逆に、オペレータがコアワイヤ13を除荷すると、波は再び近位部分21から遠位部分23に進む。
【0078】
代替的または追加的に、熱処理領域の降伏応力を変化させるために局所的な熱処理によって、材料の単位長さからコアワイヤ13を形成してもよい。これは、例えば、熱を近位部分から遮断しながら、遠位部分を局所的に加熱することで行うことができる。場合によっては、遠位セクションを形成するために局所的に加熱することにより、コアワイヤ13を研磨する必要がなくなる可能性がある。他の場合には、局所的に加熱することにより、遠位部分のフィラメント直径に対する近位部分のフィラメント直径の比が小さくなる可能性がある。本実施形態では、コアワイヤ13は単一構造であり得るが、コアワイヤ13に降伏強度の異なる複数の部分を設ける方法は他にも存在する。例えば、降伏強度の異なる2つの異種材料を互いに接合することによってコアワイヤ13を作製してもよい。より具体的には、例えば、ステンレス鋼やMP35N(登録商標)ニッケル-クロム-コバルト合金(SPS Technologies LLC、ペンシルバニア州ジェンキンタウン)などから作製された近位部分21と、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金などから作製された遠位部分23とを接合することにより、コアワイヤ13を形成してもよい。上述の近位部分および遠位部分を、溶接(例えば、突合せ、シーム、ラップ、抵抗、摩擦)、はんだ付け、ろう付け、または1つもしくは複数の接着剤などのうちの1つまたは複数によって互いに接合してもよい。
【0079】
また、コアワイヤ13が、超弾性材料からなる、または超弾性材料を含むとして説明したが、コアワイヤ13は超弾性材料を含む必要がないことを理解すべきである。例えば、コアワイヤ13は、高張力ステンレス鋼などの非超弾性材料からなるか、またはそれを含んでいてもよく、ここで、コアワイヤ13の遠位部分23のフィラメント断面直径は、コアワイヤ13の近位部分21のフィラメント断面直径よりも著しく小さく(例えば、近位部分21のフィラメント断面直径と遠位部分23のフィラメント断面直径との比は3:1より大きい)および遠位部分23の歪み/伸びは降伏点を超えない。
【0080】
さらに、図示されていないが、コアワイヤ13と支持体15との間の摩擦を低減するために、コアワイヤ13を潤滑性コーティングでコーティングしてもよい。潤滑性コーティングを形成するために使用され得る組成物または材料の一例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり得る。潤滑性コーティングは、コアワイヤ13の全長に沿って設けられてもよく、またはその一部のみ、例えば、近位部分21だけに設けられてもよい。代替的および/または追加的に、コアワイヤ13を親水性で生体適合性の複合材料などの他の種類の材料でコーティングしてもよく、その例には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、およびヒアルロン酸がある。
【0081】
同様に
図9および
図10に別々に示されている支持体15は、近位部分31および遠位部分33を含むほぼ円形の全体断面を有する細長い管状構造であり得る。本実施形態では、支持体15は、可撓性コイル状ワイヤまたはフィラメントの形態であり得る。支持体15のコイル状ワイヤまたはフィラメントは、円形フィラメント断面形状などの丸いフィラメント断面形状を有することが好ましい。丸いフィラメント断面形状は、圧縮された場合に丸いワイヤコイルの縁部が一貫して揃いやすくなり、圧縮下に置かれた場合にコラム強度がより大きくなるため、望ましいとされる。
【0082】
以下でさらに説明するように、支持体15は、近位部分31がコアワイヤ13の近位部分21の大部分を概ね覆って配置され得るように、かつ遠位部分33がコアワイヤ13の遠位部分23の大部分を概ね覆って配置され得るように、コアワイヤ13の上に挿入され得る。
【0083】
近位部分31は支持体15の近位端35で近位に終端してもよく、遠位部分33は支持体15の遠位端37で遠位に終端してもよい。本実施形態では、近位部分31および遠位部分33は互いに連続していてもよく、支持体15は単一構造、即ち、一体構造であってもよい(あるいは、例えば、米国特許第6,500,185号および第6,652,536号に開示されているように、支持体15は、近位部分31がカニューレで、遠位部分33がコイル状のワイヤである複数体構造であってもよい)。本実施形態では、支持体15は、その全長に沿って均一なフィラメント断面直径d3を有し得、その全長に沿って均一な全体断面直径d4を有し得、その全長に沿って均一な引張強度を有し得る。
【0084】
上述したように、支持体15は、コイル状のワイヤであってもよく、その複数の構成セグメントまたは複数のターン39の間で関節運動が可能なセグメント化構造を備えてもよい。好ましくは、支持体15は、
図2に示すものに対応する直線経路を画定する平衡圧縮状態と、近位部分31が
図1に示すものに対応するほぼ直線経路を辿り、遠位部分33が
図1に示すものに対応するコイル状経路をたどる非平衡非圧縮状態とを有する。本実施形態では、支持体15がその平衡圧縮状態にある場合、ターン39のすべてまたは実質的にすべては、隣接するターン39と接触し得る。対照的に、支持体15がその非平衡非圧縮状態にある場合、(例えば、
図5に見られるように、)遠位部分33のターン39は、内側半径36に沿ってそれらの隣接するターン39と接触し得るが、外側半径38に沿って互いに離れ得る。したがって、支持体15が圧縮されている場合、外側半径38は、長さが比較的短くなり得(長さが内側半径36に等しくてもよく)、支持体15が圧縮されていない場合、外側半径38は、長さが比較的長くなり得る(長さが内側半径36より長くてもよい)。
【0085】
支持体15は、ステンレス鋼、チタン合金、クロム-コバルト合金(例えば、MP35N(登録商標)コバルト合金、L-605コバルト-クロム-タングステン-ニッケル合金など)などの強力なコイル可能な材料、または任意の他の適切な強力なコイルに巻くことが可能な金属もしくは他の材料などからなっていてもよいし、または含んでいてもよい。支持体15は、磁気共鳴処置中に使用するのに安全な1つまたは複数の材料で作られてもよい。支持体15をポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミドまたはヒアルロン酸などの親水性で生体適合性の複合材料でコーティングしてもよい。一般的な血管内使用のための支持体15の適切な全体外径は、約0.014インチであり得る。
【0086】
外科医が体内のスネア装置11の位置を追跡できるように、支持体15は、白金、タングステン、イリジウム、スズ、金、銀、またはこれらの合金などの放射線不透過性材料で作製されてもよく、または放射線不透過性材料で作製された部分を含んでもよい。代替的に、支持体15は、放射線不透過性コーティングでコーティングされたコイル状に巻くことが可能な材料で作製されてもよい。支持体15は、予圧の有無にかかわらず、密巻コイルを含んでもよいし、または開巻コイルを含んでもよい。
【0087】
さらに、図示されていないが、支持体15は、近位部分31の外側の周りに配置されたスリーブ(または他のタイプのカバー)および/または遠位部分33の外側の周りに配置されたスリーブ(または他のタイプのカバー)をさらに備えてもよい。このようなスリーブは、例えば、近位部分31と遠位部分33の両方を覆う単一構造であってもよい。場合によっては、近位部分31を覆うスリーブは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの良好な潤滑性を有する1つまたは複数の材料で作製されてもよいし、または潤滑性コーティングが設けられたポリエチレンテレフタレート(PET)またはウレタンなどの1つまたは複数の材料で作製されてもよい。代替的および/または追加的に、スリーブをコアワイヤ13および支持体15に関連して上述したタイプの親水性で生体適合性の複合材料でコーティングしてもよい。場合によっては、スリーブは、支持体15のコイル状のワイヤをレーザ放射(例えば、YAGレーザからのレーザ放射)から保護するのに役立つ特性を有することができ、これは、スネア装置11がそのようなレーザ(例えば、結石破砕)の使用を含む治療で使用され得る場合に望ましい場合がある。場合によっては、遠位部分33を覆うスリーブは、シリコーンまたはウレタンなどの高弾性特性および低デュロメータ硬度の両方を有する材料を含んでもよく、および/またはPTFEなどの良好な潤滑性を有する材料を含んでもよい。このようなスリーブは、スネア装置11がコイル状の状態にある場合、支持体15の遠位部分33の隣接するターン39の間の空間を充填するのに役立ち得る。このような空間を充填することにより、スネア装置11は、コイル状の状態にある場合、所望の物質(例えば、砕石症からの石片、血栓、異物)をより良好に捕捉することができる。スリーブは、支持体15の遠位部分33に取り付けられてもよく、支持体15の全体外径よりも大きい内径を有してもよく、それにより、コイル状態にあるスネア装置11は、スリーブ内で拡張して、血流を回復するのに適したチャネルを形成することができる。スリーブは、一定の大きさであってもよく、または非常に弾性があって拡張可能性が高くまたは血液透過性が高くてもよい。この構成は、一時的なステントまたは塞栓保護デバイスとして機能することができる。
【0088】
図11にも別個に示されているエンドキャップ17は、ステンレス鋼などの剛性材料で作られたほぼ半球の形状の部材であり得る。場合によっては、本実施形態のように、エンドキャップ17は中空であってもよく、開放した下端部40-1および開放した上端部40-2を含んでもよい。他の場合には、以下の他の実施形態に示すように、エンドキャップ17は中実であってもよい。エンドキャップ17を使用して、コアワイヤ13と支持体15とをそれぞれの遠位端で機械的に結合してもよい。例えば、本実施形態では、コアワイヤ13の遠位端27は、溶接、はんだ付け、ろう付け、または1つもしくは複数のエポキシもしくは接着剤によってエンドキャップ17の上端部40-2内に固定されてもよく、支持体15の遠位端37は、溶接、はんだ付け、ろう付け、または1つもしくは複数のエポキシもしくは接着剤によってエンドキャップ17の開放下端部40-1に固定されてもよい。
【0089】
同じく
図12に別々に示されているアクチュエータ19は、ハンドル41、アンカー43、およびスライド45を備え得る。
【0090】
ハンドル41は、適切なポリマーまたは金属などの剛性および耐久性のある材料で作られてもよく、細長い構造であってもよい。本実施形態では、ハンドル41は、一対の長手方向に延びる空洞、すなわち、近位空洞47および遠位空洞49を含むように成形され得る。近位空洞47は、ハンドル41の近位端51から遠位に延び、遠位空洞49は、ハンドル41の遠位端53から近位に延び得る。近位空洞47および遠位空洞49は、互いに軸方向に整列し、連続し、それによって、近位空洞47の遠位端は、遠位空洞49の近位端に開口し得る。本実施形態では、近位空洞47および遠位空洞49は、断面形状がほぼ円筒形であってもよく、近位空洞47は比較的小さい直径を有し、遠位空洞49は比較的大きい直径を有する。近位空洞47および遠位空洞49は、コアワイヤ13の近位部分21がそれらの中に自由に配置され得るように適切な寸法にされ得る。
【0091】
ハンドル41は、空洞55を含むようにさらに成形され得る。空洞55は、ハンドル41の長手方向軸に対して横断するように配置され得、ハンドル41の側面57から内側に延び、近位空洞47と交差して近位空洞47を貫通し得る。
【0092】
アンカー43は、適切なポリマーまたは金属などの剛性および耐久性のある材料で作られてもよく、細長い樽形状の構造であってもよい。アンカー43は、ハンドル41の空洞55内に、ぴったりと取り付けられるように、更に回転可能に調整可能であるように、適切な寸法にしてもよい。コアワイヤ13の近位端25をアンカー43に固定することができるように(例えば、チャネル59に挿入され、アンカー43の周りに結び付けられることによって)、横断チャネル59をアンカー43に設けることができる。スロット61が、アンカー43の外側端部に設けられてもよく、空洞55内のアンカー43を回転させるために使用され得るマイナスドライバーまたは類似形状の工具(図示せず)を受け入れるように形状化されてもよい。理解できるように、アンカー43を空洞55内で回転させることによって、コアワイヤ13に掛かる引張力の大きさを調整することができる。
【0093】
適切なポリマーまたは金属などの剛性および耐久性のある材料で作ることができるスライド45は、細長い中空構造であってもよい。スライド45は、ハンドル41の遠位空洞49内にスライド可能に取り付けられ、遠位空洞49の中で近位および遠位に移動するように、適切な寸法にされてもよい。スライド45は、近位端65、遠位端67、および近位端65から遠位端67まで延びることができる長手方向の空洞69を含むように成形されてもよい。空洞69は、コアワイヤ13が空洞69を通って自由に延びることができるように適切な寸法にされてもよい。支持体15の近位端35は、溶接、はんだ付け、ろう付け、接着剤または他の適切な手段によって、スライド45の遠位端67に強固に固定されてもよい。グリップ70が、ハンドル41内でスライド45を前後に移動させる際に使用するために、スライド45に固定的に取り付けられてもよい。ストッパ71は、スライド45上の開口部72内に取り付けられてもよく、ハンドル41に形成されたトラック73内で移動可能であってもよい。ストッパ71は、ハンドル41に対してスライド45が前後に移動する範囲を画定するために、ハンドル41上の開口部75内に取り付けられた止めねじ74と接触するように配置されてもよい。
【0094】
要約すると、本実施形態では、コアワイヤ13の近位端25をアンカー43に固定し、次に、アンカー43をハンドル41に結合し、コアワイヤ13の遠位端27をエンドキャップ17に固定することができる。支持体15の近位端35をスライド45に固定し、次に、スライド45をハンドル41にスライド可能に取り付け、支持体15の遠位端37をエンドキャップ17に固定することができる。代替的に述べると、支持体15の近位端35は、コアワイヤ13の近位端25に対して近位および遠位に移動可能であってもよく、一方、コアワイヤ13の遠位端27は、支持体15の遠位端37に対して固定されてもよい。
【0095】
上記を考慮して、スライド45がその最も近位の位置にある場合、支持体15の近位端35もその最も近位の位置にある。その結果、支持体15に掛かる圧縮力は相対的に最小となり、その結果、支持体15の遠位端37に掛かる遠位方向の力も相対的に最小となる。さらに、エンドキャップ17におけるコアワイヤ13と支持体15との結合により、コアワイヤ13の遠位端27に掛かる遠位方向の引張力もまた、相対的に最小となる。したがって、コアワイヤ13の引張力が相対的に最小になると、コアワイヤ13は弛緩状態をとり、コアワイヤ13の遠位部分23はループ状またはコイル状の形状を形成する。コアワイヤ13がループ状またはコイル状の形状をとると、コアワイヤ13の遠位部分23の形状に追従するように拘束された支持体15の遠位部分33は、それに対応するループ状またはコイル状の形状をとる。このループ状またはコイル状の形状では、支持体15の遠位部分33は圧縮されていない。
【0096】
対照的に、スライド45がその最も遠位の位置にある場合、支持体15の近位端35もその最も遠位の位置にある。結果として、支持体15に掛かる圧縮力は相対的に最大になり、したがって、支持体15の遠位端37に掛かる遠位方向の力も相対的に最大になる。さらに、エンドキャップ17でのコアワイヤ13と支持体15との結合により、コアワイヤ13の遠位端27に掛かる遠位方向の引張力もまた、相対的に最大になる。したがって、コアワイヤ13の引張力が相対的に最大になると、コアワイヤ13、特に、コアワイヤ13の遠位部分23が伸びる。コアワイヤ13の遠位部分23が伸びるにつれて、それは直線状になる。この真っ直ぐになった状態では、コアワイヤ13は、もはや支持体15を強制的にループ状またはコイル状の形状にさせることはない。結果として、支持体15の遠位部分33は、直線経路をたどるその平衡圧縮状態に戻ることができる。したがって、スライド45がその近位位置からその遠位位置へ移動することは、コアワイヤ13に引張力を掛けることと、支持体15に圧縮力を掛けることとの両方に役立ち、引張力によりコアワイヤ13が弛緩状態から引張状態に移行し、圧縮力により支持体15が非圧縮状態から圧縮状態に移行する。支持体15が圧縮状態にあり直線経路をたどる場合、コアワイヤ13は、支持体15内で多少のわずかな程度の湾曲またはうねりを示すにもかかわらず、支持体15によってほぼ直線経路をたどるように大きく拘束される(
図6を参照)。
【0097】
使用中、スネア装置11は、スライド45をその最も近位の位置からその最も遠位の位置に動かすことによって、コイル状の状態から真っ直ぐの状態に変形することができる。このようにしてスネア装置11がその真っ直ぐの状態に変形された状態で、スネア装置11のエンドキャップ17が、捕捉対象の対象物をちょうど超える点に配置され得る場所など所望の場所まで、スネア装置11を患者の中に挿入することができる。次に、スライド45をその最も遠位の位置からその最も近位の位置に戻すことによって、スネア装置11をその真っ直ぐの状態からコイル状の状態に戻すことができ、それによってスネア装置11のコイル状またはループ状の部分によって対象物を捕捉することができる。そのコイル状またはループ状の形状のために、スネア装置11は、医療器具を把持して所望の場所に誘導するのに特によく適している。例えば、埋め込み型腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフト内挿術(EVAR)ステントを介して第2腸骨動脈内に、そして大腿動脈に配置されたガイドワイヤに隣接して、スネア装置11を挿入することができる。前述のガイドワイヤの周りに円形またはループ状の形状を展開してそれを固定し、次いで、スネア装置11を引き出してガイドワイヤをEVARステント内に誘導することができる。スネア装置11の他の可能な用途は、米国特許第6,500,185号明細書および米国特許第6,652,536号明細書に見出すことができる。
【0098】
上述したように、支持体15がその非圧縮状態からその圧縮状態に移行すると、支持体15のターン39は、様々な半径方向の力を受ける可能性がある。これらの力によって、1つまたは複数のターン39が、コアワイヤ13に対して半径方向に変位したり、「ゆがむ」ことがある。半径方向の変位が大きすぎなければ、支持体15はコアワイヤ13に接触しないし、半径方向の力が除荷された時、支持体15内の引張力は、半径方向に変位したターン39を、その平衡整列位置に復元する。しかしながら、
図13に示すように、米国特許第6,500,185号明細書のスネア装置10のようなスネア装置の場合のように、半径方向の変位が大きすぎると、通常は隣接しないターン85aと85cは互いに隣接するようになり、介在するターン85bの位置が永久にずれることがある。永久的に位置ずれしたターン85bがコアワイヤ87に接触するほど内側に延びている場合、コアワイヤ87の直線性が損なわれる可能性がある。
【0099】
本発明によれば、予想外にも、支持体15の遠位部分33とコアワイヤ13の遠位部分23が以下の関係によって特徴付けられる場合、上述のゆがみの問題を改善し得ることが分かった。
破断荷重(支持体15の遠位部分33)>プラトー力(コアワイヤ13の遠位部分23)
ここで、支持体15の遠位部分33の破断荷重は、支持体15の遠位部分33の引張強度に、支持体15の遠位部分33のフィラメント断面積を乗じた値に等しく、コアワイヤ13の遠位部分23は、フィラメント断面積を有し、遠位部分23に掛かる引張力に応答する上限プラトー応力も有し、コアワイヤ13の遠位部分23のプラトー力は、上限プラトー応力にコアワイヤ13の遠位部分23の断面積を乗じた値に等しい。ゆがみが支持体15の遠位部分33の長さに沿ってどこでも生じる可能性を最小限に抑えるために、前述の関係(すなわち、支持体15の遠位部分33の破断荷重は、コアワイヤ13の遠位部分23のプラトー力よりも大きい)は、支持体15の遠位部分33の全長に適用されるべきである。
【0100】
前述の関係の一例として、支持体15の遠位部分33は、322,000psiの引張強度および9.62×10-6in2のフィラメント断面積を有し得、コアワイヤ13の遠位部分23は、3.28×10-5in2のフィラメント断面積および81,000psiの上限プラトー応力を有し得る。その結果、支持体15の遠位部分33の破断荷重は3.10(すなわち、322,000psi×9.62×10-6in2)であり、これはコアワイヤ13の遠位部分23のプラトー力2.66(すなわち、81,000psi×3.28×10-5in2)よりも大きい。
【0101】
上記の値は単なる例示であり、支持体15の遠位部分33の破断荷重がコアワイヤ13の遠位部分23のプラトー力よりも大きい限り、支持体15の遠位部分33の引張強度、支持体15の遠位部分33のフィラメント断面積、コアワイヤ13の遠位部分23のフィラメント断面積、およびコアワイヤ13の遠位部分23のプラトー応力は、広い数値範囲内のどこに入ってもよいと理解すべきである。例えば、限定ではないが、支持体15の遠位部分33の引張強度は、300,000~420,000psiであってもよく、支持体15の遠位部分33のフィラメント断面積は、4.91×10-6~1.06×10-4in2であってもよく、コアワイヤ13の遠位部分23のフィラメント断面積は、1.80×10-5~4.13×10-4in2であってもよく、コアワイヤ13の遠位部分23の上限プラトー応力は、70,000~90,000psiであってもよい。これらの範囲内に入るさらなる例を以下に示す。
【0102】
比較すると、コアワイヤの遠位部分に対するプラトー力が支持コイルの遠位部分の破断荷重よりも大きい場合、支持コイルはゆがむと予想され得る。例えば、コアワイヤの遠位部分が84,000psiの上限プラトー応力と2.04×10-5in2のフィラメント断面積を有するとし、支持コイルが約180,000psiの最大引張強度と4.91×10-6in2のフィラメント断面積を有する白金合金フィラメントからなるとすると、コアワイヤを引っ張り、かつ支持コイルを圧縮することによって、スネア装置が直線化される場合、支持コイルはゆがむと予想され得る。これは、コアワイヤの遠位部分のプラトー力が1.72 lbsになり、支持コイルの破断力0.88 lbsよりも大きいからである。同様に、コアワイヤの遠位部分が84,000psiの上限プラトー応力と2.04×10-5in2のフィラメント断面積を有するとし、支持コイルが約340,000psiの最大引張強度と4.91×10-6in2のフィラメント断面積を有するステンレス鋼ワイヤフィラメントからなるとすると、コアワイヤを引っ張り、かつ支持コイルを圧縮することによって、スネア装置が直線化される場合、支持コイルがゆがむと予想され得る。これは、コアワイヤの遠位部分のプラトー力が1.72 lbsになり、支持コイルの破断力1.67 lbsよりも大きいからである。
【0103】
また、´638公開に関連して示唆されるように、支持コイルが矩形のフィラメント断面を有する場合、支持コイルはゆがむことが予想され得る。これは、本発明者が、支持コイルの断面形状が矩形であると、支持コイル縁部での位置合わせが定まらなくなる、と考えるためである。
【0104】
本発明のスネア装置の設計の別の重要な態様は、コアワイヤの遠位部分は、弛緩状態では、その全長に亘って合理的に均一なフィラメント直径を有するということである。例えば、形状記憶金属で作られた連続ワイヤをより小さいフィラメント直径に研磨してコアワイヤの遠位部分を形成する場合、コアワイヤの遠位部分のフィラメント直径は、その全長に亘って合理的に均一でなければならない。0.003インチを超える直径の場合、一般的なバレル研磨公差は±0.0002インチが妥当である。もし、コアワイヤの遠位部分に沿って遠位側に移動するにつれて遠位の研磨直径が大きく減少すると、より大きくより近位の直径に打ち勝つのに必要な荷重プラトーに関連する引張力は、その荷重プラトーを超え、かつ8%の回復可能な歪みを超えて伸長するより小さい直径をもたらす。その結果、より小さい直径は塑性変形して細長くなり、装置は弛緩位置でその形状を失うであろう。
【0105】
他方、コアワイヤの遠位部分に沿って遠位に移動するにつれて遠位の研磨直径が大きく増加すると、本メカニズムは弛緩状態から引張/圧縮状態に完全に移行することができないであろう。より大きな直径に打ち勝つのに必要な引張力はまた、研磨されていないコアワイヤを伸長させ、その結果、全長に沿ってヒステリシスを生じさせるであろう。さらに、コアワイヤの長さが長くなることで、支持体が完全に圧縮されることが防止され、ハンドルのストロークは、この動きに対応するには不十分であろう。
【0106】
本発明のスネア装置の設計の別の態様は、コアワイヤ13の湾曲である。一般に、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金は、6~8%のほぼ回復可能なエンジニアリング歪みeを有することが知られている。実験的には、NITINOL(商標)コアワイヤは、式e=1/(2R/t+1)に従って9%歪みまでヒートセットされる。ここで、式中のRは曲げ半径、tはワイヤ厚さである。装置の直線構成は圧縮コイルによって画定されるため、引張下に置かれた場合にコアワイヤが完全に直線である必要はなく、装置が直線であっても曲げが残留している場合がある(
図6を参照)。しかしながら、NITINOL(商標)コアワイヤに何らかの鋭い曲げが有ると、引張状態のワイヤ形状に打ち勝つための圧縮力がこれらの場所に集中するため、装置はこれらの場所でゆがむ傾向がある。鋭い曲げからのゆがみは、コイルワイヤの破断荷重対コアワイヤのプラトー力の比を大きくすることによって緩和することができる。
【0107】
ここで
図14を参照すると、コアワイヤ13がNITINOL(商標)ニッケル-チタン合金で作られ、近位部分21の断面形状が円形であり、0.012 inの均一なフィラメント断面直径を有し、遠位部分23の断面形状が円形であり、0.0079 inの均一なフィラメント断面直径を有するコアワイヤ13の実施形態の応力-歪み曲線がグラフで示されている。前述の応力-歪み曲線から分かるように、遠位部分23は、約82,000~84,000psiの上限プラトー応力(すなわち、応力-歪み曲線におけるほぼ一定の応力の上限領域)を示す。
【0108】
ここで
図15を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第2の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号111で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置111の詳細は、
図15および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図15に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0109】
スネア装置111は、ほとんどの点でスネア装置11と同様であり得る。スネア装置111とスネア装置11との違いの1つは、スネア装置11が、遠位端27がエンドキャップ17に固定されているコアワイヤ13を備え得るのに対して、スネア装置111が、遠位端127がエンドキャップ17に固定されていないコアワイヤ113を備え得ることである。代わりに、コアワイヤ113の遠位端127は、コアワイヤ113のコイル状またはループ状の形状の遠位にあり、かつ支持体15の遠位端37の近位にある中間点で、支持体15の遠位部分33に配置されたアンカー要素131に固定され得る。安全ワイヤ133が、支持体15がほどけるのを防止するために、アンカー要素131からエンドキャップ17まで遠位方向に延びてもよい。この構成は、コアワイヤ113に掛けられた引張力を前述の中間点の近位の点に隔離し、柔らかく非外傷性(傷つけない)の遠位先端部を有するコイル状またはループ状の形状をもたらす。このような非外傷性先端部は、周囲の構造に孔を開けるまたは損傷を与える重大な危険を冒すことなく、狭窄領域で器具を操作することができるため、有利になり得る。
【0110】
ここで
図16を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第3の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号211で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置211の詳細は、
図16および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図16に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0111】
スネア装置211は、ほとんどの点でスネア装置11と同様であり得る。スネア装置211とスネア装置11との違いの1つは、スネア装置211がスペーサコイル221をさらに備え得ることである。スペーサコイル221は、コアワイヤ13の中間部分29に取り付けられた近位スペーサ223に取り付けられた近位端を有し得、遠位端27に近接するコアワイヤ13に取り付けられた遠位スペーサ225に取り付けられた遠位端を有し得る。スペーサコイル221は、白金などの放射線不透過性材料を含むか、またはそれからなってもよい。しかしながら、器具211の特定の用途に応じて、他の材料を使用してもよい。コアワイヤ13を包囲するために、スペーサコイル221の代わりに他の管状構造を用いてもよい。例えば、バッフル、ベローズ、または以下に説明するような寸法を有する任意の可撓性および圧縮性チューブも使用することができる。スペーサコイル221は、コイル内に形成された単一のワイヤからなっていてもよく、またはコイル内に形成された2つ以上のワイヤを含んでもよい。
【0112】
スペーサコイル221は、コアワイヤ13と接触していてもよいし、スペーサコイル221の関節型スペーサコイルセグメントまたはターン229が、それ自体、コアワイヤ13に対して半径方向に変位する可能性を最小限に抑えるのに十分小さい隙間でコアワイヤから離されていてもよい。この隙間は、スペーサコイル221の寸法によって決定されるのが好ましい。一実施形態では、隙間は、スペーサコイル221を構成する巻線またはターンの半径よりも小さくなるように選択される。
【0113】
さらに、スペーサコイル221と支持体15は、支持体15のゆがみを最小限に抑え、さらに、使用中にスペーサコイル221と支持体15とが互いに結合する可能性を最小限に抑えるように、互いに対して寸法決めされ得る。支持体15のターンがスペーサコイル221のターンの間に形成された開口部内に突出する可能性を最小限に抑えるために、スペーサコイル221のターン229のピッチ角を支持体15のターン39のピッチ角とは異なるように選択するのが好ましい。このような差は、スペーサコイル221と支持体15とを反対方向に巻くことによって実現することができる。一実施形態では、これらの2つのピッチ角は互いに直角である。しかしながら、ピッチ角に差があると貫通の可能性が低くなる。
【0114】
ここで
図17を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第4の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号311で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置311の詳細は、
図17および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図17に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0115】
スネア装置311は、ほとんどの点でスネア装置11と同様であり得る。スネア装置311とスネア装置11との違いの1つは、スネア装置311がコアワイヤ13の代わりにコアワイヤ313を備え得ることである。コアワイヤ313は、コアワイヤ313がその弛緩状態にあるときに円錐状螺旋(すなわち、近位に大きなターンを有し、遠位に先細りの小さなターンを有する)を含み得る遠位部分323を含み得るという点で、コアワイヤ13とは異なり得る。このような円錐状螺旋は、バスケットのように使用することができ、結石破砕(後方突進現象)中に腎臓結石断片を捕捉するなどの目的に有用であり得る。図示されていないが、装置311を塞栓保護装置として使用できるように、支持体15の遠位領域35に(米国特許出願公開第2009/0209987A1号のような)血液透過性のサックまたはソックを取り付けてもよい。
【0116】
ここで
図18を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第5の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号411で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置411の詳細は、
図18および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図18に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0117】
スネア装置411は、ほとんどの点でスネア装置11と同様であり得る。スネア装置411とスネア装置11との違いの1つは、スネア装置411がコアワイヤ13の代わりにコアワイヤ413を備え得ることである。コアワイヤ413は、コアワイヤ413が弛緩状態にあるときに円筒状螺旋を含み得る遠位部分423を含み得るという点で、コアワイヤ13とは異なり得る。このような円筒状螺旋は、人の体内で閉塞または収縮した管腔を開くための一時的なステントを形成するなどの目的に有用であり得る。例えば、スネア装置411を使用して、血管を開いて血流を回復させる、胃腸管を開いて食物、胆汁などの流れを可能にする、および尿管を開いて尿の流れを回復させることができる。
【0118】
ここで
図19を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第6の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号511で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置511の詳細は、
図19および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図19に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0119】
スネア装置511は、ほとんどの点でスネア装置11と同様であり得る。スネア装置511とスネア装置11との違いの1つは、スネア装置511がコアワイヤ13の代わりにコアワイヤ513を備え得ることである。コアワイヤ513は、コアワイヤ513が弛緩状態にあるときに、近位円筒状螺旋525と遠位円錐527との組合せを含み得る遠位部分523を含み得るという点で、コアワイヤ13と異なり得る。このような形状は、血栓、胆石、および他の異物などの物体を捕捉するスネアとして有用であり得る。
【0120】
上述のアプローチは、本明細書に記載のタイプの装置におけるゆがみの問題を大幅に改善するが、このような装置は、支持体が圧縮されコアワイヤが引っ張られる直線状の構成から、支持体が圧縮されておらずコアワイヤが弛緩してループ状またはコイル状の形状となるループ状またはコイル状の構成に移行する際に、時々何らかの困難に遭遇することがある。詳細に上述したように、装置が直線状の構成にある場合、装置は、治療を必要とする部位にアクセスするために使用され得る。対照的に、装置がループ状またはコイル状の構成にある場合、装置は、何らかの種類の塊を固定または回収することなどによって、部位に治療を行うために使用され得る。装置が部位にアクセスした後、直線状の構成からループ状またはコイル状の構成に適切に移行することができない場合、当該部位の治療(例えば、塊の除去)を所望する通りに完全に行うことができない。
【0121】
直線状の構成からループ状またはコイル状の構成に移行する際に、なぜ時々困難が生じるかについて、特定の理論または説明に限定されることを望むものではないが、本発明者は以下のことを提案する。装置が直線状の構成にある場合、支持体のコイルは通常圧縮され、それによって経路が画定される。しかしながら、装置を弛緩させると、支持体のコイルはもはや能動的に圧縮されなくなり、コアワイヤにもはや引張力が掛からなくなる。結果として、コアワイヤの非直線状の構成が、装置の形状を画定することになる。この移行中、戻りの動きは、通常、装置の近位端で始まり、遠位端に向かって伝播する。多くの場合、ループ状または非直線状の構成の遠位部分は、元の弛緩状態に完全には戻らず、直線状の構成とループ状の構成との間のどこかに留まっており、圧縮されたコイルは依然として形状に何らか限定を加えている。一般的には、これは主に、支持体のコイルとコアワイヤとの間の摩擦力に起因する。
【0122】
この問題をさらに理解するために、
図20(a)および
図20(b)は、本発明に従って構成されたスネア装置の別の実施形態を示し、スネア装置は符号611で表されている。
図20(a)および
図20(b)のスネア装置611を
図5および
図6のスネア装置11と比較すれば分かるように、スネア装置611および11は多くの点で類似し得る。ある程度、スネア装置11は、本発明のスネア装置の理想的な実施形態と見なされてもよく(場合によっては、理想的な実施形態は実現または近似されてもよい)、一方、スネア装置611は、実際に見出され得るそのようなスネア装置の代替または変形された実施形態と見なされてもよい(場合によっては、代替実施形態は実現または近似されてもよい)。したがって、スネア装置11の部品に対応するスネア装置611の部品は、スネア装置11の部品に600を足した符号で識別される。
【0123】
スネア装置11と611との間の主な違いは、スネア装置11では、コアワイヤ13の遠位部分23が支持体15の遠位部分33のいかなる部分にも接触しないものとして示されていることである。対照的に、スネア装置611では、コアワイヤ613の遠位部分623は、支持体615の少なくともいくつかのターン639に接触するものとして示されている。スネア装置611が(
図20(b)のように)直線状の構成にある間、遠位部分623と支持体615との間のこのような接触は、遠位部分623を支持体615に摩擦係合または結合させる可能性があり、そのようなことが起こると、前記接触が、スネア装置611が直線状の構成からループ状の構成へと完全に移行するのを妨げるまたは防止する可能性がある。上述したように、直線状の構成からループ状の構成に完全に移行できないことは望ましくない(コアワイヤ613の遠位端627は、エンドキャップ617内の中心にあるように
図20(a)および
図20(b)には示されていないが、遠位端627はエンドキャップ617内の中心にあってもよいことに留意すべきである)。
【0124】
上記の問題を改善するために、本発明者は、スネア装置に加えられ得る特定の変更点を特定した。このような変更の1つは、コアワイヤと支持体との間の接合部のすぐ近位の支持体にわずかな伸縮性を持たせることである。この変形例が達成し得ることは、コアワイヤの引張力が除荷されたときにバネ力も解放されるように、支持体の圧縮されたコイルにバネ力を与えることである。その結果、支持体のコイルが再び開くと、当該コイルはコアワイヤに沿って摺動し易くなり、スネア装置を半直線配向に保持する摩擦力に打ち勝ち易くなる。好ましくは、ギャップ長は、約1コイル幅以下であり、前述の摩擦力に打ち勝つために1/2コイル幅で十分であることが多い。ほとんどの場合、伸びの長さは、摩擦力に打ち勝つためにコイル直径の最大4倍であればよい。この遠位コイルの伸びは、装置が完全に弛緩した構成に戻るのを助けることができる。
【0125】
別の変形例は、コアワイヤループと支持体のコイルの巻き方向を反対にすることを選択することである。NITINOL(商標)コアワイヤを螺旋状またはループ状にヒートセットする場合、一般には、コアワイヤを加熱ゾーン内に配置する前にコアワイヤを定位置に保持するために成形ツールが使用される。この螺旋には、支持体のコイルと同様に、巻き方向がある。コアワイヤがコイル状支持体の内側に配置されている場合、コイル状支持体とコアワイヤの巻き方向が同じであれば、角度がある程度似ており、装置は静止時にループ状の構成に戻り難くなり得る。しかしながら、コアワイヤとコイル状支持体の巻き方向が反対の(例えば左対右)場合、角度がより異なり、2つの部材が互いに対してより滑り易くなるため、ループ状の構成がより完全に戻り得る。
【0126】
ここで
図21を参照すると、本発明の教示に従って構成されたスネア装置の第8の実施形態の拡大部分断面図が示されており、スネア装置は全体として符号711で表されている。本出願の他の箇所で論じられている、または本発明の理解にとって重要ではないスネア装置711の詳細は、
図21および/または本明細書の添付の説明から省略されてもよいし、または
図21に示されてもよいし、および/または本明細書で簡略化されて説明されてもよい。
【0127】
図から分かるように、スネア装置711は、直線状の構成からループ状の構成へのより完全な移行を促進するために、上述した変更の両方を含み得る。より具体的には、スネア装置711は、コアワイヤ713および支持体715を備え得る。コアワイヤ713は、コアワイヤ13と同一であってもよい。支持体715は、多くの点で支持体15と同様であり得るが、以下の2つの点で支持体15と異なり得る。第一に、支持体15は、巻き方向が右巻き(ターン39が右から左に曲がり下方に移動する、
図5を参照)のコイル状ワイヤを含み得るのに対して、支持体715は、巻き方向が左巻き(すなわち、ターン739が左から右に曲がり下方に移動する)のコイル状ワイヤを含み得る。このような左巻きの巻き方向は、コアワイヤ713の右巻きの巻き方向とは反対である。第二に、支持体15のターン39は、コアワイヤ13と支持体15との遠位結合部に近接する領域で密集または圧縮されているが(スネア装置11がそのループ状の構成にある場合でも)、支持体715のターン739は、コアワイヤ713と支持体715との遠位結合部に近接する領域740で離隔されている(コアワイヤ713の遠位端は、エンドキャップ内の中心にあるものとして
図21には示されていないが、コアワイヤ713の遠位端はエンドキャップ内の中心にあってもよいことに注意すべきである)。
【0128】
スネア装置711は、上記の両方の点でスネア装置11とは異なるものとして示されているが、スネア装置711は、これらの2つの点の一方または他方のみがスネア装置11と異なっていてもよいことに注意すべきである。さらに、上述した問題およびその修正は、本発明のスネア装置のいずれにも適用することができる。
【0129】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0130】
実施例1
本願の
図1~
図6のようなスネア装置を構築した。スネア装置のコアワイヤは、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金で作製され、コアワイヤの近位部分は断面形状が円形であり、0.0075 inの均一なフィラメント断面直径を有し、コアワイヤの遠位部分は断面形状が円形であり、0.0051 inの均一なフィラメント断面直径を有していた。その結果、コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積は2.04×10
-5in
2であった。コアワイヤの遠位部分の上側プラトー応力は84,000psiであった。その結果、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は1.72 lbsであった。
【0131】
本スネア装置の支持体は、市販されている(Fort Wayne Metals、インディアナ州フォートウェイン)最大引張強度、すなわち420,000psiを有する丸い断面のステンレス鋼ワイヤで作られたコイルの形態であった。支持体は、均一な全体外径0.0135 in、および均一な全体内径0.0085 inを有していた。その結果、支持体のフィラメント断面直径は0.0025 inであり、支持体のフィラメント断面積は4.91×10-6in2であった。上記のように、支持体の極限引張強度は420,000psiであった。その結果、支持体の破断力は2.06 lbsであり、これは1.72 lbsのプラトー力よりも大きい。以下の表1は、上記の値のいくつかをまとめたものである。
【0132】
【0133】
上述の実施形態について、支持コイル柱強度は、コアワイヤによって掛けられる引張力によって圧縮されても、ゆがみに耐えるのに十分であることが確認された。
【0134】
実施例2
実施例1と同様であるが、直径がより大きいスネア装置を構築した。スネア装置のコアワイヤは、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金で作製され、コアワイヤの近位部分は0.0121 inの均一なフィラメント断面直径を有し、コアワイヤの遠位部分は0.0082 inの均一なフィラメント断面直径を有していた。その結果、コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積は5.28×10-5in2であった。コアワイヤの遠位部分の上限プラトー応力は85,000psiであった。その結果、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は4.5 lbsであった。
【0135】
本スネア装置の支持体は、340,000psiの極限引張強度を有する円形断面のステンレス鋼ワイヤで作られたコイルの形態であった。支持体は、均一な全体外径0.0226 inおよび均一な全体内径0.0136 inを有していた。その結果、支持体のフィラメント断面直径は0.0045 inであり、支持体のフィラメント断面積は1.59×10-5in2であった。上記のように、支持体の極限引張強度は340,000psiであった。その結果、支持体の破断力は5.4 lbsであり、これは4.5 lbsのプラトー力よりも大きい。以下の表2は、上記の値のいくつかをまとめたものである。
【0136】
【0137】
上述の実施形態について、支持コイル柱強度は、コアワイヤによって掛けられる引張力によって圧縮されても、ゆがみに耐えるのに十分であることが確認された。
【0138】
実施例3
実施例2と同様であるが、直径がより大きいスネア装置を構築した。スネア装置のコアワイヤは、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金で作製され、コアワイヤの近位部分は0.0148 inの均一なフィラメント断面直径を有し、コアワイヤの遠位部分は0.0098 inの均一なフィラメント断面直径を有していた。その結果、コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積は7.54×10-5in2であった。コアワイヤの遠位部分の上限プラトー応力は77,700psiであった。その結果、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は5.9 lbsであった。
【0139】
本スネア装置の支持体は、344,000psiの極限引張強度を有する円形断面のステンレス鋼ワイヤで作られたコイルの形態であった。支持体は、均一な全体外径0.0263 inおよび均一な全体内径0.0163 inを有していた。その結果、支持体のフィラメント断面直径は0.0050 inであり、支持体のフィラメント断面積は1.96×10-5in2であった。上記のように、支持体の極限引張強度は344,000psiであった。その結果、支持体の破断力は6.8 lbsであり、これは5.9 lbsのプラトー力よりも大きい。以下の表3は、上記の値のいくつかをまとめたものである。
【0140】
【0141】
上述の実施形態について、支持コイル柱強度は、コアワイヤによって掛けられる引張力によって圧縮されても、ゆがみに耐えるのに十分であることが確認された。
【0142】
比較例A
実施例2と同様であるが、コアワイヤの遠位部分の直径がより大きいスネア装置を構築した。スネア装置のコアワイヤは、NITINOL(商標)ニッケル-チタン合金で作製され、コアワイヤの近位部分は0.0121 inの均一なフィラメント断面直径を有し、コアワイヤの遠位部分は0.0090 inの均一なフィラメント断面直径を有していた。その結果、コアワイヤの遠位部分のフィラメント断面積は6.36×10-5in2であった。コアワイヤの遠位部分の上限プラトー応力は85,000psiであった。その結果、コアワイヤの遠位部分のプラトー力は5.4 lbsであった。
【0143】
本スネア装置の支持体は、340,000psiの極限引張強度を有する円形断面のステンレス鋼ワイヤで作られたコイルの形態であった。支持体は、均一な全体外径0.0226 inおよび均一な全体内径0.0136 inを有していた。その結果、支持体のフィラメント断面直径は0.0045 inであり、支持体のフィラメント断面積は1.59×10-5in2であった。上記のように、支持体の極限引張強度は340,000psiであった。その結果、支持体の破断力は5.4 lbsであり、プラトー力の5.4 lbsと同等であった。以下の表4は、上記の値のいくつかをまとめたものである。
【0144】
【0145】
上述の装置では、何度も作動させているうちに、装置はやがてゆがんだ。
図22は、この装置のゆがんだ支持体を示す写真である。
【0146】
上述した本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図しており、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、多数の変形および修正を行うことができるものとする。例えば、上述の実施形態のうちの1つまたは複数からの特徴は、様々な変形で組み合わされてもよい。このような変形および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあることを意図している。