(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
F16F9/14 A
(21)【出願番号】P 2023532857
(86)(22)【出願日】2021-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2021025228
(87)【国際公開番号】W WO2023281554
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭吾
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082208(JP,A)
【文献】国際公開第03/046405(WO,A1)
【文献】特開2021-021453(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/14
A47K 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成され、組立時に開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、前記弾性体を圧縮することなく挿入することができる空間を作る第2凹部を備えるロータリーダンパ。
【請求項2】
前記軸部から突出するベーンと、前記隔壁又は前記ベーンに形成される第1油路と、第1油路を一方向に通過するオイルの流量を負荷に応じて変化させるバルブを備える請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
第1油路が形成されていない前記隔壁又は前記ベーンに形成される第2油路と、第2油路に設けられる逆止弁を備える請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成される第2凹部を備えるロータリーダンパの製造方法であって、第2凹部の開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、第1凹部と第2凹部の組み合わせからなる空間を作り、前記空間に前記弾性体を圧縮することなく挿入する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターを備えるロータリーダンパが知られている。しかしながら、従来のロータリーダンパでは、前記隔壁と前記軸部の間隙からオイルが流出するという問題があった。前記隔壁と前記軸部の間隙からのオイルの流出は、ロータリーダンパの特性を低下させる一因となっていた。
【0003】
国際公開2003/046405号は、隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記軸部から突出するベーンと、前記ベーンに形成される油路と、前記油路を一方向に通過するオイルの流量を負荷に応じて変化させるバルブを備えるロータリーダンパを開示している。このロータリーダンパは、動作時間、すなわち、前記ローター又はシリンダーが一定の回転角を回転するのに要する時間が負荷の変化によって殆ど変化しないという特性を有する。しかしながら、前記隔壁と前記軸部の間隙からオイルが流出し、それにより、前記バルブに対して前記バルブが機能するのに十分な量のオイルが供給されないため、前記特性が低下するという問題があった。
【0004】
国際公開2012/141242号は、隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記軸部から突出するベーンと、前記ベーンに形成される油路と、前記油路に設けられる逆止弁を備えるロータリーダンパを開示している。このロータリーダンパは、前記ローターを一方向に回転させる場合にのみ制動力が発生するという特性を有する。しかしながら、前記隔壁と前記軸部の間隙からオイルが流出するため、前記制動力が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2003/046405号
【文献】国際公開2012/141242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、隔壁と軸部の間隙からのオイルの流出を防止し、かつ隔壁と軸部の間隙をシールする弾性体の取り付けを容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のロータリーダンパ及びその製造方法を提供する。
1.隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成され、組立時に開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、前記弾性体を圧縮することなく挿入することができる空間を作る第2凹部を備えるロータリーダンパ。
2.隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成され、組立時に開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、前記弾性体を圧縮することなく挿入することができる空間を作る第2凹部と、前記軸部から突出するベーンと、前記隔壁又は前記ベーンに形成される第1油路と、第1油路を一方向に通過するオイルの流量を負荷に応じて変化させるバルブを備えるロータリーダンパ。
3.隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成され、組立時に開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、前記弾性体を圧縮することなく挿入することができる空間を作る第2凹部と、前記軸部から突出するベーンと、前記隔壁又は前記ベーンに形成される第1油路と、第1油路を一方向に通過するオイルの流量を負荷に応じて変化させるバルブと、第1油路が形成されていない前記隔壁又は前記ベーンに形成される第2油路と、第2油路に設けられる逆止弁を備えるロータリーダンパ。
4.隔壁を有するシリンダーと、前記隔壁に対向する軸部を有するローターと、前記隔壁の先端面に形成される第1凹部と、第1凹部の中に設置され、前記軸部に密着することによって、前記隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成される第2凹部を備えるロータリーダンパの製造方法であって、第2凹部の開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、第1凹部と第2凹部の組み合わせからなる空間を作り、前記空間に前記弾性体を圧縮することなく挿入する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
前記1~3に記載の本発明は、第1凹部の中に設置され、軸部に密着することによって、隔壁と前記軸部の間隙をシールする弾性体と、作動時に前記隔壁の先端面に対面しない前記軸部の外周面の一部分に形成され、組立時に開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、前記弾性体を圧縮することなく挿入することができる空間を作る第2凹部を備えるため、前記隔壁と前記軸部の間隙からのオイルの流出を防止し、かつ前記弾性体の取り付けを容易にすることが可能である。
前記2に記載の本発明は、上述したように隔壁と軸部の間隙からのオイルの流出を防止し得るため、バルブに対して前記バルブが機能するのに十分な量のオイルを供給することが可能である。したがって、負荷の変化によって生じる動作時間の変化の幅を小さくすることが可能である。
前記3に記載の本発明は、上述したように隔壁と軸部の間隙からのオイルの流出を防止し得るため、ローターを一方向に回転させるときに発生する制動力の低下を防ぐことが可能である。一方、前記ローターが逆方向に回転するときは、オイルが2つの油路、すなわち、第1油路及び第2油路を通過できるため、前記ローターに作用するオイルの抵抗を低減することが可能である。
前記4に記載の本発明は、第2凹部の開口部を第1凹部の開口部に対面させることによって、第1凹部と第2凹部の組み合わせからなる空間を作り、前記空間に弾性体を圧縮することなく挿入する工程を含むため、前記弾性体の取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施例に係るロータリーダンパの平面図である。
【
図5】
図5は実施例で採用したシリンダーの平面図である。
【
図6】
図6は実施例で採用したローターの斜視図である。
【
図7】
図7は実施例で採用したローターの底面図である。
【
図8】
図8は実施例で採用した弾性体の斜視図である。
【
図9】
図9はベーンが作動範囲の始点に位置する状態を示す断面図である。
【
図10】
図10はベーンが作動範囲の終点に位置する状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は第1凹部と第2凹部の組み合わせからなる空間を示す断面図である。
【
図12】
図12は実施例で採用したバルブの弁体の斜視図である。
【
図13】
図13は実施例で採用したバルブの初期状態を示す断面図である。
【
図14】
図14は実施例で採用したバルブの動作を説明するための断面図である。
【
図15】
図15は実施例で採用したバルブの動作を説明するための断面図である。
【
図16】
図16は実施例で採用したバルブの動作を説明するための断面図である。
【
図18】
図18は実施例で採用した逆止弁の弁体の斜視図である。
【
図19】
図19は実施例で採用した逆止弁の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0011】
図1に示したように、実施例に係るロータリーダンパは、シリンダー10と、ローター20を備えている。シリンダー10は、オイルを内部に収容する筒状の部品である。ローター20は、回転する部品である。但し、ローター20は、回転しない場合もあり得る。シリンダー10を回転しないように固定し、ローター20を一方向、すなわち、
図9において時計回り方向に回転させる場合の制動作用と、ローター20を回転しないように固定し、シリンダー10を逆方向、すなわち、
図9において反時計回り方向に回転させる場合の制動作用は、同一である。
【0012】
図2、
図3、
図4及び
図5に示したように、シリンダー10は、周壁11と、周壁11の一端を塞ぐ端壁12と、周壁11から中心に向かって突出する隔壁13を有している。
図1、
図3、
図4及び
図5に示したように、シリンダー10は、周壁11から張り出すフランジ14を有している。フランジ14は、シリンダー10を回転しないように固定する物又はシリンダー10を回転させる物に連結される。
図1、
図2及び
図3に示したように、周壁11の他端は、蓋30で塞がれている。蓋30は、周壁11の端部をかしめることによってシリンダー10に取り付けられている。
図2、
図3及び
図5に示したように、シリンダー10は、端壁12から突出する突起15を有する。
図2、
図4及び
図5に示したように、隔壁13の先端面には、第1凹部16が形成されている。第1凹部16は、シール溝であり、
図9及び
図10に示したように、第1凹部16の中には、シールとして機能する弾性体40が設置される。
【0013】
図8に示したように、実施例で採用した弾性体40は、円柱形のゴムである。
【0014】
図2、
図3、
図4、
図6及び
図7に示したように、ローター20は、隔壁13に対向する軸部21を有している。
図1、
図2、
図3及び
図4に示したように、ローター20は、軸部21がシリンダー10の中で回転し得るように設置される。
図2、
図3及び
図7に示したように、ローター20の一端には、シリンダー10に形成された突起15に嵌合する第1の穴22が形成されている。
図1、
図2、
図3、
図4及び
図6に示したように、ローター20の他端には、ローター20を回転させる物又はローター20を回転しないように固定する物が挿入される第2の穴23が形成されている。
図4に示したように、ローター20は、軸部21から突出するベーン24を有している。ベーン24は、弁体81と、弁体81を保持する保持部25を有して構成されている。
図6及び
図7に示したように、軸部21と一体に成形された保持部25の先端には、溝26が形成されている。
図2、
図4、
図6及び
図7に示したように、軸部21の外周面には、第2凹部27が形成されている。
【0015】
実施例に係るロータリーダンパは、ベーン24の作動範囲、すなわち、ロータリーダンパの使用時にベーン24が移動できる範囲が設定されている。
図9はベーン24が作動範囲の始点に位置する状態を示し、
図10はベーン24が作動範囲の終点に位置する状態を示す。ベーン24の作動範囲は、ベーン24の可動範囲、すなわち、ロータリーダンパの未使用時にベーン24が移動できる範囲より小さいため、軸部21の外周面の一部分は、ロータリーダンパの作動時に隔壁13の先端面に対面しない。
図9及び
図10に示したように、第2凹部27は、作動時に隔壁13の先端面に対面しない軸部21の外周面の一部分に形成される。
【0016】
図9及び
図10に示したように、弾性体40は、軸部21に密着することによって、隔壁13と軸部21の間隙をシールする。弾性体40は、円柱形のゴムであるため、軸部21との密着性が良好である。しかしながら、弾性体40を軸部21に密着させるために、軸部21の外周面から第1凹部16の底までの径方向長さを弾性体40の直径より短くする必要がある。したがって、ベーン24の作動範囲内にベーン24を位置させた状態で弾性体40を第1凹部16に挿入する場合には、弾性体40を圧縮しなければならいので、弾性体40の取り付けが困難である。
【0017】
図11に示したように、第2凹部27は、組立時に第2凹部27の開口部を第1凹部16の開口部に対面させることによって、弾性体40を圧縮することなく挿入することができる空間50を作ることができる。この空間50の断面は、弾性体40の断面の直径以上の幅と径方向長さ(第1凹部16の底から第2凹部27の底までの長さ)を有する。
図4に示したように、実施例に係るロータリーダンパは、ベーン24の作動範囲外にベーン24を位置させた状態で弾性体40を第1凹部16と第2凹部27の組み合わせからなる空間50に挿入できるので、弾性体40の取り付けが容易である。
【0018】
図10に示したように、シリンダー10の中には、隔壁13及びベーン24で仕切られた4つの油室、すなわち、第1油室61、第2油室62、第3油室63及び第4油室64が形成されている。各油室61~64には、オイルが注入されている。
【0019】
図2、
図4及び
図5に示したように、隔壁13には、第1油路17が形成されている。第1油路は、ベーンに形成されてもよい。
図4に示したように、第1油路17には、バルブ70が設けられている。
図13に示したように、バルブ70は、弁体71と、弁座72を有して構成されている。
図12及び
図13に示したように、弁体71は、板ばねである。
図13に示したように、弁座72は、隔壁13に形成される2つの斜面72a,72bからなる。このバルブ70は、一方の斜面72aの傾斜角を他方の斜面72bの傾斜角と異ならせることによって、弁体71の歪みを大きくしている。
【0020】
このバルブ70は、第1油路17を一方向に通過するオイルの流量を負荷に応じて変化させる機能を有する。「第1油路17を一方向に通過するオイル」とは、第1油路17を経由して第1油室61から第4油室64に移動するオイルと、第1油路17を経由して第3油室63から第2油室62に移動するオイルを意味する。「オイルの流量」とは、単位時間内に第1油路17を通過するオイルの量を意味する。「負荷」とは、ローター20を一方向、すなわち、
図1及び
図9において時計回り方向に回転させる力、又はシリンダー10を逆方向、すなわち、
図1及び
図9において反時計回り方向に回転させる力を意味する。「変化」とは、オイルの流量を負荷の増加にしたがって減少させることを意味する。
【0021】
弁体71に作用するオイルの圧力は、負荷の増加にしたがって増大する。しかしながら、弁体71の復元力は、オイルの圧力に対する抵抗になる。したがって、このバルブ70によれば、負荷が大きいときは、
図14に示したように、弁体71が第1油路17を閉鎖することなく、弁体71が大きく変形し、バルブ70の開度を小さくする。一方、負荷が小さいときは、
図15に示したように、弁体71の変形量が減少するため、バルブ70の開度が大きくなる。その結果、このバルブ70は、たとえ負荷が変化しても、動作時間、すなわち、ローター20が一定の回転角を一方向に回転する、又はシリンダー10が一定の回転角を逆方向に回転するのに要する時間を略一定することが可能である。
【0022】
オイルが第1油路17を経由して第4油室64から第1油室61へ移動し、また、オイルが第1油路17を経由して第2油室62から第3油室63へ移動するときは、
図16に示したように、弁体71がオイルの圧力で大きく変形し、バルブ70の開度は、
図13に示した初期状態よりも大きくなる。したがって、このバルブ70は、逆方向に回転するローター20又は一方向に回転するシリンダー10に作用するオイルの抵抗を小さくすることが可能である。
【0023】
図17及び
図19に示したように、ベーン24には、第2油路28が形成されている。第2油路は、第1油路が形成されていない隔壁又はベーンに形成される。第2油路28は、弁体81に形成された溝81c~81fと保持部25に形成された溝26の組み合わせからなる。
図17及び
図19に示したように、第2油路28には、逆止弁80が設けられている。逆止弁80は、弁体81を有して構成されている。
図18に示したように、弁体81は、弧状の本体部81aと、本体部81aから突出する突出部81bを有する。本体部81aは、内面に形成される2つの溝81c,81dを有し、突出部81bは、先端に形成される溝81eと、一方の側面に形成される溝81fを有する。
図17及び
図19に示したように、本体部81aは、周壁11と保持部25の間に配置される。突出部81bは、保持部25に形成された溝26の中に配置される。弁体81は、溝26と突出部81bの間に遊びがあるため、周方向に移動できる。弁体81の本体部81aは、弾性を有することが好ましい。本体部81aの弾性によって周壁11と弁体81との間に形成される隙間をシールすることができるからである。
【0024】
この逆止弁80は、ローター20が一方向、すなわち、
図1及び
図9において時計回り方向に回転するとき、又はシリンダー10が逆方向、すなわち、
図1及び
図9において反時計回り方向に回転するときに、
図17に示したように、弁体81の突出部81bが保持部25の溝26の一方の側面に接して第2油路28を閉鎖し、ローター20が逆方向、すなわち、
図1及び
図10において反時計回り方向に回転するとき、又はシリンダー10が一方向、すなわち、
図1及び
図10において時計回り方向に回転するときに、
図19に示したように、弁体81の突出部81bが保持部25の溝26の他方の側面に接して第2油路28を開放する。実施例に係るロータリーダンパでは、隔壁13と軸部21の間隙が弾性体40によってシールされるため、オイルが隔壁13と軸部21の間隙から流出しなくなる。しかしながら、オイルは、2つの油路、すなわち、第1油路17及び第2油路28を通過できるため、ローター20が逆方向に回転するとき、又はシリンダー10が一方向に回転するときにローター20又はシリンダー10に作用するオイルの抵抗を低減することが可能である。
【0025】
実施例に係るロータリーダンパの製造方法は、
図11に示したように、第2凹部27の開口部を第1凹部16の開口部に対面させることによって、第1凹部16と第2凹部27の組み合わせからなる空間50を作り、この空間50に弾性体40を圧縮することなく挿入する工程を含む。
図4に示したように、この工程では、弾性体40の大部分が第1凹部16に収容されると共に、第1凹部16からはみ出る弾性体40の一部分が第2凹部27に収容されるので、弾性体40の取り付けが容易である。
【0026】
図20は、動作時間と負荷の関係を示すグラフである。比較例は、軸部と隔壁の間隙をシールする弾性体を備えていない点で実施例と相違する。
【0027】
このグラフに示されるように、実施例は、負荷の変化によって生じる動作時間の変化の幅が比較例よりも小さい。この実験では、比較例の動作時間の最大値と最小値の差が約0.75秒であるのに対し、実施例のそれは比較例の約1/3の約0.25秒であった。この結果は、実施例の方が比較例よりもバルブに対してオイルを供給できたことを示すものであり、また、実施例は、隔壁と軸部の間隙からのオイルの流出を防止できることを実証するものである。
【符号の説明】
【0028】
10 シリンダー
11 周壁
12 端壁
13 隔壁
14 フランジ
15 突起
16 第1凹部
17 第1油路
20 ローター
21 軸部
22 第1の穴
23 第2の穴
24 ベーン
25 保持部
26 溝
27 第2凹部
28 第2油路
30 蓋
40 弾性体
50 空間
61 第1油室
62 第2油室
63 第3油室
64 第4油室
70 バルブ
71 弁体
72 弁座
80 逆止弁
81 弁体