(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】介護ベッド
(51)【国際特許分類】
A61G 7/008 20060101AFI20240719BHJP
A47C 20/04 20060101ALI20240719BHJP
A61G 7/018 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61G7/008
A47C20/04 A
A61G7/018
(21)【出願番号】P 2024534117
(86)(22)【出願日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2023047101
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2023010831
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599121746
【氏名又は名称】株式会社 富士ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友一
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-8979(JP,A)
【文献】特開昭63-168158(JP,A)
【文献】登録実用新案第3032665(JP,U)
【文献】特開2006-55589(JP,A)
【文献】国際公開第2020/208950(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A
A61G 7/008
A47C 20/04
A61G 7/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下半身支持用の第1支持部と、
上半身支持用の第2支持部と、を有する床体を含み、
該床体が、少なくとも、前記第1支持部と、前記第2支持部とに、前記床体の幅方向に分割されていること
、
前記第1支持部が、前記床体の長手方向に沿って延びる回動軸線廻りに回動できる可動体であること、
前記第2支持部が、前記回動軸線廻りに回動できる可動体であること、
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記回動軸線廻りに互いに独立して回動できること、および、
前記回動軸線は、第1支持部および第2支持部の上方に位置すること、を備える介護ベッド。
【請求項2】
前記第1支持部を前記回動軸線廻りに回動させる第1駆動部と、
前記第2支持部を前記回動軸線廻りに回動させる第2駆動部と、を備える請求項
1に記載の介護ベッド。
【請求項3】
前記第1駆動部および前記第2駆動部の動作を指令する制御信号を発生し、前記第1駆動部および前記第2駆動部に前記制御信号を出力する制御部を備える請求項
2に記載の介護ベッド。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1支持部の回動を指令する第1信号を第1駆動部に出力し、該指令が終了した後に、前記第1支持部および前記第2支持部の回動を指令し、前記第1支持部の傾斜角度をさらに増加させる第2信号を前記第1駆動部、前記第2駆動部に出力すること、を備える請求項
3に記載の介護ベッド。
【請求項5】
前記第2信号に応答する前記第1支持部、および前記第2支持部の回動角度は同じであること、を備える請求項
4に記載の介護ベッド。
【請求項6】
前記第1信号に応答して前記第1支持部が回動する回動角度は、2~5度であること、を備える請求項
4に記載の介護ベッド。
【請求項7】
前記第2信号に応答して前記第1支持部および前記第2支持部が回動する回動角度は2~5度であること、を備える請求項
6に記載の介護ベッド。
【請求項8】
下半身支持用の第1支持部と、
上半身支持用の第2支持部と、を有する床体を含み、
該床体が、少なくとも、前記第1支持部と、前記第2支持部とに、前記床体の幅方向に分割されていること、
前記第1支持部が、前記床体の長手方向に沿って延びる回動軸線廻りに回動できる可動体であること、および、
前記回動軸線は、前記第1支持部の上方に位置する
こと、を備える介護ベッド。
【請求項9】
前記第1支持部を前記回動軸線廻りに回動させる駆動部を備える請求項
8に記載の介護ベッド。
【請求項10】
前記駆動部の動作を指令する制御信号を発生し、前記駆動部に前記制御信号を出力する制御部を備える請求項
9に記載の介護ベッド。
【請求項11】
前記制御信号に応答して前記第1支持部が回動する回動角度は、2~5度であること、を備える請求項
10に記載の介護ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者を介護するために使用する介護ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、傾斜可能な床面を有するヘッドフレームと、このヘッドフレームを可動させるための可動ステージと、この可動ステージに取着されたローラを介して可動ステージを支持する固定ステージとを備える寝返り支援ベッドが提案されている。固定ステージは、可動ステージを昇降させる昇降部を左右に備える。可動ステージは、その側部が昇降部により昇降され、これに伴ってローラが内側に転動し、傾斜するようになっている。また、昇降部には、可動ステージの傾斜が小さくなる方向に負荷を与える引張りばねが取り付けられている。
【0003】
特許文献2では、伸縮自在な足部を有する2つのスタンドフレームと、2つのスタンドフレームの足部同士を連結する足部連結フレームと、2つのスタンドフレーム同士を連結するスタンド連結フレームと、スタンド連結フレームを上下動させる上下動駆動手段を備える上下可動フレーム部材とを有するヘッドフレーム本体と、ヘッドフレーム本体と同様なフットフレーム本体と、両フレーム本体を対向させるヘッドフット連結部材と、対向するヘッドフレーム本体とフットフレーム本体の上下 可動フレーム部材に連なる吊下げ軸部に、両吊下げ軸部を結ぶ仮想軸を回動中心とし回動可能に吊り下げられた2つの吊下げ部材と、2つの吊下げ部材により吊設されたベッド本体と、吊下げ部材の回動を制御する傾斜制御部材と、ベッド本体下方に配置した浴槽とを備える介護ベッドが提案されている。
【0004】
特許文献3では、メインベッドと、右サブベッドと、左サブベッドと、ベース4とを備える。第1前回転機構および第1後回転機構と第2前回転機構および第2後回転機構とが駆動され、第1、第2中央ワイヤが引張られ、第1、第2右および第1、第2左ワイヤが緩むと、メインベッドが、左側のヒンジのシャフトを回転中心として回転し、右板バネの付勢により右サブベッドが右傾斜位置まで上方に回転して、左板バネの付勢により左サブベッドが左傾斜位置まで上方に回転する介護用ベッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-97240号公報
【文献】特開2009-89860号公報
【文献】特開2020-10822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3で提案されているベッドは、ベッド全体が傾斜することで介護者の介護を容易に行うことができるものとなっている。具体的には、被介護者が寝返りを打つ、あるいは体位を変換するときに利用できると考えられる。しかし、介護の現場では、被介護者が、ベッドに横臥した状態から、介護者の助けを借りて、あるいは自らの力で立ち上がることもしばしば行われる。特許文献1~3で提案されているベッドは、このような使用態様を考慮されたものではなく、ベッドに横臥した状態から、立ち上がりを補助するためにベッドを傾斜させると、被介護者がベッドから転落する可能性は否定できない。
【0007】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、被介護者が、ベッドに横臥した状態から、容易に上半身を起こして床などに立ち上がることができる介護ベッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、下半身支持用の第1支持部と、上半身支持用の第2支持部と、を有する床体を含み、該床体が、少なくとも、前記第1支持部と、前記第2支持部とに、前記床体の幅方向に分割されていること、前記第1支持部が、前記床体の長手方向に沿って延びる回動軸線廻りに回動できる可動体であること、前記第2支持部が、前記回動軸線廻りに回動できる可動体であること、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記回動軸線廻りに互いに独立して回動できること、および、前記回動軸線は、第1支持部および第2支持部の上方に位置すること、を備える介護ベッドである。
【0009】
この構成によれば、第1支持部の傾斜角度を自由に設定できるので、第1支持部を傾斜させることで、下半身を傾けることができる。これにより、被介護者は、容易に下半身を床につけて立ち上がることができる。またこの構成によれば、第1支持部、第2支持部の傾斜角度を自由に設定できるので、例えば、第1支持部の傾斜角度を、第2支持部の傾斜角度よりも大きくすることで、下半身を上半身よりも大きく傾けることができる。これにより、被介護者は、ベッドからの転落を感じることなく、容易に上半身を起こして立ち上がることができる。さらにこの構成によれば、回動軸線は、第1支持部および第2支持部の上方に位置するので、ベッドはハンモックのように揺れる機構となっている。そのため、ベッドが回動するとき、ベッド上の被介護者は、両支持部に押し付けられる状態で支持される。これによって、被介護者は、ベッドから落ちるかもしれないという不安を回避できる。
【0010】
なお、「下半身」とは、大腿から下の部位であり、必ずしも臀部を含めた部位を示すものではない。また、大腿については、全てを含む必要はなく、大腿の一部を含めばよい。
【0011】
なお。「上半身」は、背中から上の部位であり、必ずしも腰および臀部を含むものではない。また、背中については、全てを含む必要はなく、背中の一部を含めばよい。
【0012】
なお、回動軸線廻りの回動に関する文言は時計廻り、反時計廻り回動を含む。
【0016】
好ましくは、第1支持部を回動軸線廻りに回動させる第1駆動部と、第2支持部を回動軸線廻りに回動させる第2駆動部と、を備える。
【0017】
この構成によれば、第1支持部を回動軸線廻りに回動させる第1駆動部と、第2支持部を回動軸線廻りに回動させる第2駆動部を備えるので、回動機能性が高まり介護者、あるいは被介護者は容易にベッドを回動できる。
【0018】
好ましくは、第1駆動部および第2駆動部の動作を指令する制御信号を発生し、前記第1駆動部および第2駆動部に前記制御信号を出力する制御部を備える。
【0019】
この構成によれば、制御信号により第1駆動部、および第2駆動部の動作を指令する制御部を備えるので、第1支持部、第2支持部を、被介護者の状態に合わせて適切な傾動状態にすることができる。
【0020】
好ましくは、制御部は、第1支持部の回動を指令する第1信号を第1駆動部に出力し、この指令が終了した後に、第1支持部および第2支持部の回動を指令し、第1支持部の傾斜角度をさらに増加させる第2信号を第1駆動部および第2駆動部に出力すること、を備える。
【0021】
この構成によれば、制御部は、第1支持部の回動を指令する第1信号を第1駆動部に出力し、この指令が終了した後に、第1支持部および第2支持部の回動を指令して、第1支持部の傾斜角度をさらに増加させる第2信号を第1駆動部および第2駆動部に指令するので、被介護者が転落を感じることなく安心してベッドから立ち上がることができる。第2動作において第1支持部および第2支持部を同時に回動させることが好ましい。
【0022】
好ましくは、第2動作における第1支持部、および第2支持部の回動角度は同じであること、を備える。
【0023】
この構成によれば、第2動作における第1支持部、および第2支持部の回動角度は同じであるので、第2動作における第1支持部、および第2支持部の回動速度を同じに設定することが可能となる。その結果、被介護者は、違和感を覚えることなく、快適な状態で回動できる。
【0024】
好ましくは、第1信号に応答して前記第1支持部が回動する回動角度は、2~5度であること、を備える。
【0025】
この構成によれば、第1信号に応答して第1支持部が回動する回動角度を2~5度の範囲に設定することで、被介護者は、横臥した状態から楽に身を起こしてスムーズにベッドから立ち上がることができる。第1支持部が回動する回動角度が、2度より小さい場合、および5度より大きい場合には、横臥した状態の被介護者がベッドからスムーズに立ち上がることが難しい。
【0026】
好ましくは、第2信号に応答して前記第1支持部および前記第2支持部が回動する回動角度は2~5度であること、を備える。
【0027】
この構成によれば、第2信号に応答して第1支持部および第2支持部が回動する回動角度を2~5度の範囲に設定することで、被介護者は、横臥した状態から楽に身を起こしてスムーズにベッドから立ち上がることができる。第2信号に応答して第1支持部および第2支持部を同時に回動させることが好ましい。第1支持部および第2支持部が回動する回動角度が2より小さい場合、および5度より大きい場合にも、横臥した状態の被介護者がベッドからスムーズに立ち上がることが難しい。
【0028】
本発明は、第2支持部が固定されている固定体であってもよい。
【0029】
この構成によれば、上半身支持用の第2支持部が固定される構成であるため、介護ベッドを構成する部品点数の増加を抑制でき、低コスト化を実現できる。
【0030】
本発明は、下半身支持用の第1支持部と、上半身支持用の第2支持部と、を有する床体を含み、該床体が、少なくとも、第1支持部と、第2支持部とに、床体の幅方向に分割されていること、第1支持部が、床体の長手方向に沿って延びる回動軸線廻りに回動できる可動体であること、および、回動軸線は、第1支持部の上方に位置すること、を備える介護ベッドである。
【0031】
この構成によれば、第1支持部の傾斜角度を自由に設定できるので、第1支持部を傾斜させることで、下半身を傾けることができる。これにより、被介護者は、容易に下半身を床につけて立ち上がることができる。またこの構成によれば、第1支持部が回動するとき、ベッド上の被介護者は、第1支持部に押し付けられる状態で支持される。これによって、被介護者は、ベッドから落ちるかもしれないという不安を回避できる。
【0032】
好ましくは、第1支持部を回動軸線廻りに回動させる駆動部を備える。
【0033】
この構成によれば、第1支持部を回動軸線廻りに回動させる駆動部を備えるので、ベッドの回動機能性が高まり介護者、あるいは被介護者は容易にベッドを回動できる。
【0034】
好ましくは、駆動部の動作を指令する制御信号を発生し、前記駆動部に前記制御信号を出力する制御部を備える。
【0035】
この構成によれば、制御信号により駆動部の動作を指令する制御部を備えるので、第1支持部を被介護者の状態に合わせて適切な傾動状態にすることができる。
【0036】
好ましくは、制御信号に応答して前記第1支持部が回動する回動角度は、2~5度であることを備える。
【0037】
この構成によれば、第1支持部が回動する回動角度を2~5度の範囲に設定することで、被介護者は、横臥した状態から楽に身を起こしてスムーズにベッドから立ち上がることができる。第1支持部が回動する回動角度が、2度より小さい場合、および5度より大きい場合には、横臥した状態の被介護者がベッドからスムーズに立ち上がることが難しい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施形態における介護ベッドの正面図である。
【
図10】(a)~(g)は第1支持部、第2支持部の移動変位モードを表す図である。
【
図11】本実施形態の変形例であり、第2支持部が固定された介護ベッドの正面図である。
【
図12】本実施形態の変形例であり、回動軸線が第1支持部および第2支持部を通過する位置ある介護ベッドの概念図である。(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、
図1~10を参照して本発明の介護ベッドの実施形態を詳述する。
【0040】
図1は、介護ベッド1の正面図である。介護ベッド1は、下半身支持用の第1支持部と下半身支持用の第1支持部11と、上半身支持用の第2支持部22と、を有する床体10を含む。床体10は、少なくとも、第1支持部11と、第2支持部22とに、床体10の幅方向W(
図1における紙面に対して垂直方向、
図7、8参照)に沿って分割されており、第1支持部11および第2支持部22が、それぞれ床体10の長手方向Lに沿って延びる回動軸線RS廻りに回動できる可動体11a、22aである。介護ベッド1は、制御部2からの指令によって、第1駆動部30を動作させることで第1支持部11が回動軸線RS廻りに回動できるとともに、第2駆動部40を動作させることで第2支持部22が回動軸線RS廻りに回動できる(
図7、8に矢印Sで示す)。第1支持部11の回動と、第2支持部22の回動はそれぞれが独立して実現できる。第1支持部11は下半身を支持する役割を負担し、第2支持部22は上半身を支持する役割を負担する。さらに、昇降駆動部50が動作することで第1支持部11、および第2支持部22が同時に同じ距離を昇降し、リクライニング駆動部60を動作させることで第2支持部22の先端部22eが伏した位置から起立する方向に回動する。第1駆動部30、第2駆動部40、昇降駆動部50、およびリクライニング駆動部60は、制御部2から指令を受けて動作する。
【0041】
本実施形態では、介護ベッド1は、2分割されて、第1支持部11と第2支持部22を有する構成となっているが、これに限るものではない。例えば、臀部を支持する部分を追加して、3分割される構成としてもよい。
【0042】
本実施形態において、「下半身を支持する」は、大腿から下の部位を支持することであり、必ずしも臀部を含めて支持することを示すものではない。また、大腿については、全てを支持する必要はなく、大腿の一部を支持すればよい。
【0043】
また、「上半身を支持する」は、背中から上の部位を支持することであり、必ずしも腰および臀部を含めて支持することを示すものではない。また、背中については、全てを支持する必要はなく、背中の一部を支持すればよい。
【0044】
回動軸線RSは、第1支持部11、第2支持部22の上方に位置し、第1支持部11、第2支持部22に平行に、床体10の長手方向Lに延びている。ここで、長手方向Lとは、第1支持部11、第2支持部22が列状に並ぶ方向である。また、側面視で介護ベッド1の長手方向Lに沿って延びる両側端から等距離に位置している。
【0045】
図2に示す通り、昇降駆動部50は昇降アクチュエーター52のピストン52aを前進・後退させることで、昇降リンク機構51が回動を伴って昇降する。昇降アクチュエーター52は一端が基台53に、他端が昇降リンク機構51に回動可能に接続している。ピストン52aを進退させることで昇降アクチュエーター52、および昇降リンク機構51は回動を伴って上昇・下降する。昇降リンク機構51に支持されている第1支持部11、第2支持部22も、昇降リンク機構51の上昇・下降に伴って昇降する。
【0046】
昇降リンク機構51は、支持フレーム14を昇降させるための部材である。また、支持フレーム14は第1支持部11、第2支持部22を支持している。
図3に示す通り、昇降リンク機構51は、昇降リンク部材56、57が連結バー58を介して接続する構造であって、一端が基台53、他端が支持フレーム14に回動可能に接続している。連結バー58によって接続されることで、昇降リンク部材56,57は同期して移動変位する。昇降リンク部材56の中間部に、昇降アクチュエーター52を回動可能に接続するための接続部材59が着装されている。
【0047】
図4、5に示す通り、リクライニング駆動部60は、リクライニングアクチュエーター62と、リクライニングリンク機構61を有している。リクライニングアクチュエーター62は一端が第2支持フレーム72に、他端がリクライニングリンク機構61に回動可能に接続している。リクライニングリンク機構61は、一端が第2支持フレーム72に他端が第2支持部22に回動可能に接続している。第2支持部22は、第1支持部11近傍の端部が第2支持フレーム72に回動可能に接続している。リクライニング駆動部60は、リクライニングアクチュエーター62のピストン62aが前進・後退することで、リクライニングリンク機構61が回動を伴って昇降する。ピストン62aの前進により、第2支持部22は先端部22eが伏した位置から起立する方向に回動する。また、ピストン62aが後退することで第2支持部22は、その先端部22eを図示下方に回動させながら第2支持フレーム72の方向に向かって伏するように元の位置に移動する。
【0048】
リクライニングリンク機構61は、一対のリクライニングリンク部材66、66と、連結バー67を有している。リクライニングリンク部材66は、一端が第2支持フレーム72に、他端が第2支持部22に回動可能に接続している。また、中間部は各部材が回動するためのヒンジ部を有している。連結バー67は、一対のリクライニングリンク部材66、66を接続する部材であって、端部は、リクライニングリンク部材66の中間部と、回動可能に接続している。連結バー67の中間部に、リクライニングアクチュエーター62と回動可能に接続するための接続部材68が装着されている。
【0049】
第1支持部11は、第1支持フレーム71に固定されている。また、第1駆動部30を介して支持フレーム14に支持されている(
図1参照)。
図6、7、8に示す通り、第1駆動部30は、第1アクチュエーター31、および一対の第1ガイド部32を有している。第1アクチュエーター31は、一対の第1ガイド部32、32の間に位置している。第1アクチュエーター31の一端は支持フレーム14に回動可能に接続され、他端は接続部材39を介して接続フレーム38に回動可能に接続されている。接続フレーム38は、第1支持フレーム71の両側端部に架け渡される部材である。
【0050】
第1ガイド部32は、第1支持フレーム71の両側端部に架け渡される部材であり、円弧形状の第1ガイドフレーム33を有している。第1ガイドフレーム33は、ガイドフレーム固定部34に回動可能に固定されるローラ35に挟持されている。また、ガイドフレーム固定部34は、支持フレーム14に固定されている。
【0051】
第1アクチュエーター31のピストンが前進・後退することで第1ガイド部32は回動中心軸廻りに回動する。具体的には、ピストン31aが前進することで、第1ガイドフレーム33は、
図8において、時計回りに回動し、ピストン31aが後退することで、第1ガイドフレーム33は反時計回りに回動する。
【0052】
第2支持部22は、第1支持部11近傍の端部が第2フレームに回動可能に固定されている。また、第2駆動部40を介して支持フレーム14に支持されている(
図1参照)。
図6に示す通り、第2駆動部40は、第2アクチュエーター41、一対の第2ガイド部42、42、ガイドフレーム固定部44、およびローラ45を有している。第2アクチュエーター41、第2ガイド部42、ガイドフレーム固定部44、およびローラ45の構成は、それぞれ第1アクチュエーター31、第1ガイド部32、ガイドフレーム固定部34、およびローラ35の構成とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0053】
図9は、制御部2の構成を表している。電子制御ユニット(以下、ECUという。)は、CPU、RAM、ROM、およびI/Oインターフェイス(いずれも図示略)などからなるマイクロコンピューターで構成されている。ECU3には、操作盤5が接続されており、操作盤5から発せられる信号が逐次、入力される。ECU3の出力側には、第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41、昇降アクチュエーター52、リクライニングアクチュエーター62が接続されている。
【0054】
操作盤5を操作したときの、第1支持部11、第2支持部22の初期状態からの動作について
図9、10を参照して説明する。ここで、初期状態とは、介護ベッド1が水平な設置面に置かれている状態で、第1支持部11、第2支持部22が設置面と水平であるとともに、接地面から第1支持部11、第2支持部22までの距離が最小となる状態である。
【0055】
押しボタンPB0を押すことで、操作盤5は通電されてECU3に信号を発せられる状態となる。
【0056】
押しボタンPB1を押すと、第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41が動作して押しボタンPB1を押した時間に比例してピストン31a、41aが前進する。これにより第1支持部11、第2支持部22は同時に同じ距離、上昇する(
図10(a)参照)。上昇が可能な高さは、ピストン31a、41aが前進できる距離によって定まる。
【0057】
押しボタンPB2を押すと、押し時間に対応して第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41が動作して押しボタンPB2を押した時間に比例して前進状態のピストン31a、41aが後退する。これにより、上昇している状態の第1支持部11、第2支持部22は同時に同じ距離、下降する(
図10(a)参照)。下降距離は、ピストンが後退できる距離によって定まる。
【0058】
押しボタンPB3を押すと、押し時間に対応してリクライニングアクチュエーター62が動作して、ピストン62aが前進する。これにより、第2支持部22は、第1支持部11の方向に向かって回動する(
図10(b)参照)。回動が可能な角度は、ピストン62aが前進できる距離によって定まる。
【0059】
押しボタンPB4を押すと、押し時間に対応してリクライニングアクチュエーター62が動作して、前進状態のピストン62aが後退する。これにより、回動している状態の第2支持部22は、第1支持部11から遠ざかる方向に回動する(
図10(b)参照)。第1支持部11と同じ平面上に位置する状態で回動は停止する。このとき、ピストン62aがこれ以上、後退できない距離となっていることが好ましい。
【0060】
押しボタンPB5を押すと、第1アクチュエーター31が動作して、ピストン31aが前進する。これにより、第1支持部11は、水平状態から回動軸線RS廻りに3~5°の範囲内で回動する(
図10(c)参照。以下、記号「~」は範囲を示す。)。より好ましい回動角度は、3~4°である。第1支持部11の回動が終了した後、第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41が同時に動作して、ピストン31a、41aが前進する。これにより、第1支持部11はさらに3~5°回動するとともに、第2支持部22は3~5°回動する(
図10(d)参照)。より好ましい回動角度は、3~4°である。これらの一連の回動動作は押しボタンPB5を押すことで継続して実行される。結果として、第1支持部11は6~10°、第2支持部22は3~5°で同方向に回動した状態となる。下半身を支持する第1支持部11の回動角度が上半身を支持する第2支持部22の回動角度よりも大きくなることで、介護ベッド1に横臥した被介護者が介護ベッド1から容易に身を起こして床などに降りることができる。再度、押しボタンPB5を押すことで、第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41は動作して、第1支持部11、第2支持部22は、回動する前の位置に戻る。
【0061】
押しボタンPB6を押すと、第2アクチュエーター41が動作して、ピストン41aが前進・後退を繰り返す。これにより第2支持部22は、水平状態から回動軸線RS廻りに約5秒の周期で±3°の回動を繰り返す(
図10(e)参照)。再度、押しボタンPB5を押すことで、回動は停止し、第2支持部22は、当初の水平状態に戻る。なお、回動角度の変更は、第2支持部22か回動しているときに押しボタンPB9を押すことで達成できる。1回押すと回動角度は±5°、2回押すと回動角度は±8°、3回押すと当初の回動角度±3°に戻る。
【0062】
押しボタンPB7を押すと、第1アクチュエーター31が動作して、ピストン31aが前進・後退を繰り返す。これにより第1支持部11は、水平状態から回動軸線RS廻りに約5秒の周期で±3°の回動を繰り返す(
図10(f)参照)。再度、押しボタンPB5を押すことで、回動は停止し、第2支持部22は、当初の水平状態に戻る。なお、回動角度の変更は、第1支持部11か回動しているときに押しボタンPB9を押すことで達成できる。1回押すと回動角度は±5°、2回押すと回動角度は±8°、3回押すと当初の回動角度±3°に戻る。
【0063】
押しボタンPB8を押すと、第1アクチュエーター31、第2アクチュエーター41の双方が動作して、ピストン31a、41aが前進・後退を繰り返す。これにより第1支持部11、第2支持部22は、同期して、水平状態から回動軸線RS廻りに約5秒の周期で±3°の回動を繰り返す(
図10(g)参照)。再度、押しボタンPB5を押すことで、回動は停止し、第1支持部11、第2支持部22は、当初の水平状態に戻る。なお、回動角度の変更は、第1支持部11、第2支持部22か回動しているときに押しボタンPB9を押すことで達成できる。1回押すと回動角度は±5°、2回押すと回動角度は±8°、3回押すと当初の回動角度±3°となる。第1支持部11,第2支持部22が同時に周期的に回動することで、安眠効果を得ることができる。
【0064】
なお、被介護者の安全を確保する観点から、第1支持部11、第2支持部22の移動変位にはいくつかの制限が設けられている。
【0065】
<制限1>
押しボタンPB3を押して、第2支持部22を回動した状態で、押しボタンPB6、7、8のいずれかを押しても、第1支持部11、第2支持部22のいずれも回動軸線RS廻りに回動しない。
【0066】
<制限2>
押しボタンPB5、6、7、8のいずれかを押した状態で、他の押しボタンPB5、6、7、8のいずれかを押したとき、他の押しボタンを押した時に発せられる信号はECU3に送信されない。すなわち、他の押しボタンを押したときの第1アクチュエーター31等の動作は反映されない。
【0067】
<制限3>
第1支持部11、第2支持部22が傾動した状態で、押しボタンPB5、6、7、8のいずれかを押しても、押しボタンを押した時に発せられる信号はECU3に送信されない。すなわち、この状態では、押しボタンPB5、6、7、8のいずれかを押しても、第1支持部11、第2支持部22は回動軸線RS廻りに回動しない。
【0068】
<変形例>
本実施形態において、第1支持部11と第2支持部22はそれぞれが独立して回動するとしているが、これに限るものではない。
図11に示すように、第2支持部22が、固定された固定体22bであってもよい。この場合、第2駆動部40が不要となり、介護ベッド1に必要な部品数を削減することができる。また、
図12(a)、(b)に示すように、回動軸線RSの位置は、第1支持部11および第2支持部22の上方に限られず、第1支持部11および第2支持部22を通過する位置であってもよい。
【0069】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る介護ベッドは、安眠効果、リラックス効果についても期待できるため、被介護者のみならず、健常者にも利用できるものであることから、産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0071】
1 :介護ベッド
2 :制御部
10 :床体
11 :第1支持部
11a :可動体
22 :第2支持部
22a :可動体
22b :固定体
30 :第1駆動部
40 :第2駆動部
L :長手方向
RS :回動軸線
W :幅方向
【要約】
被介護者が、ベッドに横臥した状態から、容易に身を起こして床などに立ち上がることができる介護ベッドを提供する。本発明の介護ベッド1は、下半身支持用の第1支持部11と、上半身支持用の第2支持部22と、を有する床体10を含み、床体10が、少なくとも、第1支持部11と、第2支持部22とに、床体10の幅方向に分割されていること、および、第1支持部11が、床体10の長手方向Lに沿って延びる回動軸線RS廻りに回動できる可動体であることを備える。