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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自立系統向け電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20240719BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240719BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024500801
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006335
(87)【国際公開番号】W WO2023157162
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 康晃
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-065008(JP,A)
【文献】特開2017-184607(JP,A)
【文献】特開2016-226279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0123662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/493
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立系統への交流電力の供給を行う自立系統向け電源システムであって、
複数の電源装置と、
前記自立系統に対して並列に接続され、前記複数の電源装置から供給された電力を前記自立系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記自立系統に供給する電圧源電圧制御型の複数の電力変換装置と、
前記複数の電力変換装置の電力の変換動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記自立系統で必要とされる有効電力に応じた前記複数の電力変換装置の複数の有効電力指令値を演算するとともに、前記自立系統で必要とされる無効電力に応じた前記複数の電力変換装置の複数の無効電力指令値を演算し、
前記複数の電力変換装置は、前記有効電力指令値に応じた有効電力を出力するとともに、前記無効電力指令値に応じた無効電力を出力するように電圧制御運転を行う自立系統向け電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数の電力変換装置のそれぞれの状態に応じた有効電力の大きさとなるように、前記複数の有効電力指令値の按分処理を行うとともに、前記複数の電力変換装置のそれぞれの無効電力出力上限を考慮した無効電力の大きさとなるように、前記複数の無効電力指令値の按分処理を行う請求項1記載の自立系統向け電源システム。
【請求項3】
前記複数の電源装置は、前記複数の電力変換装置に直流電力を供給する蓄電装置であり、
前記複数の電力変換装置は、前記複数の電源装置から供給された直流電力を前記自立系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記自立系統に供給するとともに、前記自立系統の前記交流電力を直流電力に変換することにより、前記複数の電源装置を充電し、
前記制御装置は、蓄電量の残量の高い前記電源装置に対応する前記電力変換装置の方が、蓄電量の残量の低い前記電源装置に対応する前記電力変換装置よりも放電時における有効電力の大きさが大きくなり、蓄電量の残量の高い前記電源装置に対応する前記電力変換装置の方が、蓄電量の残量の低い前記電源装置に対応する前記電力変換装置よりも充電時における有効電力の大きさが小さくなるように、前記複数の有効電力指令値の按分処理を行う請求項2記載の自立系統向け電源システム。
【請求項4】
前記複数の電力変換装置は、前記自立系統に対し、変圧器及びリアクトルの少なくとも一方を介して並列に接続される請求項1記載の自立系統向け電源システム。
【請求項5】
前記複数の電力変換装置は、電力の変換を行う主回路部と、前記主回路部による電力の変換を制御する制御部と、を有し、
前記主回路部は、電力の変換を行う電力変換部と、前記電力変換部と前記自立系統との間に設けられたフィルタ回路と、を有し、
前記制御部は、
前記有効電力指令値、前記無効電力指令値、前記主回路部の現在の有効電力出力値、及び前記主回路部の現在の無効電力出力値を基に、前記主回路部から出力する交流電力の出力電圧位相、出力電圧周波数、及び出力電圧振幅を演算し、
前記出力電圧位相、前記出力電圧周波数、及び前記出力電圧振幅を基に、前記電力変換部の交流電力の瞬時値電圧出力指令値を演算し、
前記瞬時値電圧出力指令値に応じた電圧を前記電力変換部から出力させるように、前記電力変換部の動作を制御する請求項1記載の自立系統向け電源システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記出力電圧位相、前記出力電圧周波数、及び前記出力電圧振幅を用いるとともに、前記電力変換部から出力される交流電力の相電圧、前記電力変換部から出力される交流電力の線電流、前記主回路部から出力される交流電力の相電圧、及び前記主回路部から出力される交流電力の線電流の少なくともいずれかを用いることにより、前記主回路部の出力端での過電流を抑制するように、前記瞬時値電圧出力指令値を演算する請求項5記載の自立系統向け電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自立系統向け電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社などが提供する大規模な電力系統と連系していない自立系統に電力を供給する自立系統向けの電源システムがある。自立系統向けの電源システムは、例えば、工場や所定の地域などで用いられており、マイクログリッドなどと呼ばれる場合もある。
【0003】
電源システムは、電源装置と、電源装置から供給された電力を自立系統に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を自立系統に供給する電力変換装置と、を備える。電源装置には、例えば、蓄電装置、太陽光発電装置、風力発電装置などの分散型電源が用いられる。
【0004】
こうした自立系統向けの電源システムにおいて、電圧を制御対象とする電圧源電圧制御型の電力変換装置(Grid forming inverter)を用いることが検討されている。電流を制御対象とする電圧源電流制御型の電力変換装置(Grid following inverter)では、ディーゼル発電機などの別の電圧源が自立系統に存在しない場合に、安定した運転が難しくなってしまう。これに対し、電圧源電圧制御型の電力変換装置では、別の電圧源が自立系統に存在しない場合においても、安定した運転を行うことができ、電源システムや自立系統の構成をより簡単にすることができる。
【0005】
しかしながら、電圧源電圧制御型の電力変換装置では、複数台の電力変換装置を自立系統に対して並列に接続し、並列運転を行う際に、動作が不安定になり、自立系統への安定した電力供給を行うことができなくなってしまう可能性がある。
【0006】
例えば、比較的規模の大きな自立系統などにおいて、複数台の電力変換装置の並列運転を求められる場合がある。このため、自立系統向けの電源システムにおいては、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統への安定した電力供給を行えるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2019-527024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統への安定した電力供給を行うことができる自立系統向け電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、自立系統への交流電力の供給を行う自立系統向け電源システムであって、複数の電源装置と、前記自立系統に対して並列に接続され、前記複数の電源装置から供給された電力を前記自立系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記自立系統に供給する電圧源電圧制御型の複数の電力変換装置と、前記複数の電力変換装置の電力の変換動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記自立系統で必要とされる有効電力に応じた前記複数の電力変換装置の複数の有効電力指令値を演算するとともに、前記自立系統で必要とされる無効電力に応じた前記複数の電力変換装置の複数の無効電力指令値を演算し、前記複数の電力変換装置は、前記有効電力指令値に応じた有効電力を出力するとともに、前記無効電力指令値に応じた無効電力を出力するように電圧制御運転を行う自立系統向け電源システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統への安定した電力供給を行うことができる自立系統向け電源システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る自立系統向け電源システムを模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態に係る電力変換装置の一例を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る自立系統向け電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、自立系統向け電源システム2(以下、電源システム2と称す)は、複数の電源装置4と、複数の電力変換装置6と、制御装置10と、を備える。
【0014】
電源システム2は、自立系統ISと接続されている。自立系統ISは、電力会社などが提供する大規模な電力系統と連系していない系統である。自立系統ISは、交流の系統である。自立系統ISの交流電力は、例えば、三相交流電力である。但し、自立系統ISの交流電力は、単相交流電力などでもよい。電源システム2は、自立系統ISへの交流電力の供給を行う。
【0015】
複数の電源装置4は、複数の電力変換装置6に対応して設けられる。複数の電源装置4の数は、例えば、複数の電力変換装置6の数と同じである。複数の電源装置4は、複数の電力変換装置6のそれぞれに接続される。但し、1台の電力変換装置6に対して複数台の電源装置4を接続してもよい。反対に、複数台の電力変換装置6に対して1台の電源装置4を接続してもよい。複数の電源装置4の数は、必ずしも複数の電力変換装置6の数と同じでなくてもよい。
【0016】
複数の電源装置4は、複数の電力変換装置6のそれぞれに電力を供給する。複数の電源装置4は、例えば、蓄電池などを用いた蓄電装置である。複数の電源装置4は、複数の電力変換装置6のそれぞれに直流電力を供給する。
【0017】
複数の電力変換装置6は、複数の電源装置4に対応して設けられる。複数の電力変換装置6は、複数の電源装置4に接続されるとともに、自立系統ISと接続される。複数の電力変換装置6は、自立系統ISに対して並列に接続される。複数の電力変換装置6は、複数の電源装置4から供給された電力を自立系統ISに対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を自立系統ISに供給する。
【0018】
複数の電力変換装置6は、電圧を制御対象とする電圧源電圧制御型の電力変換装置である。これにより、自立系統ISに他の電圧源が存在しない場合においても、自立系統ISへの安定した電力供給を行うことができる。また、複数の電力変換装置6は、並列運転を行う。これにより、比較的規模の大きい自立系統ISに対しても、安定して電力を供給することができる。
【0019】
自立系統ISには、例えば、誘導電動機などの交流負荷が接続される。複数の電力変換装置6(電源システム2)は、換言すれば、自立系統ISを介して交流負荷に交流電力を供給する。なお、自立系統ISには、交流負荷の他に、例えば、同期発電機などが接続されていてもよい。自立系統ISには、例えば、蓄電池システムや太陽光発電システムなどに用いられる電圧源電流制御型の電力変換装置などがさらに接続されていてもよい。換言すれば、自立系統ISは、別の電源と連系していてもよい。
【0020】
複数の電源装置4が蓄電装置である場合、複数の電力変換装置6は、自立系統ISの交流電力を直流電力に変換することにより、複数の電源装置4を充電する機能をさらに有する。
【0021】
但し、複数の電源装置4は、蓄電装置に限ることなく、例えば、太陽電池パネルなどでもよい。この場合、複数の電力変換装置6は、自立系統ISから入力された交流電力を直流電力に変換する機能を有しなくてもよい。
【0022】
また、複数の電源装置4は、例えば、風力発電機やガスタービン発電機などの他の発電機でもよい。複数の電源装置4から複数の電力変換装置6に入力される電力は、直流電力に限ることなく、交流電力でもよい。複数の電力変換装置6は、複数の電源装置4から入力された交流電力を自立系統ISに対応した別の交流電力に変換する構成でもよい。
【0023】
このように、複数の電力変換装置6による電力の変換は、直流から交流への変換に限ることなく、複数の電源装置4の電力を自立系統ISに対応した交流電力に変換する任意の変換でよい。
【0024】
電源システム2は、例えば、複数の変圧器12と、測定装置14と、をさらに備える。複数の変圧器12は、複数の電力変換装置6のそれぞれに対応して設けられる。複数の電力変換装置6は、複数の変圧器12の一次側に接続される。複数の変圧器12の二次側は、自立系統ISに接続される。このように、複数の電力変換装置6は、複数の変圧器12を介して自立系統ISと接続される。複数の電力変換装置6は、自立系統ISに対し、複数の変圧器12を介して並列に接続される。
【0025】
このように、複数の変圧器12を介して複数の電力変換装置6を並列に接続することにより、複数の電力変換装置6の並列運転を行う際にも、複数の電力変換装置6間での横流の発生を抑制することができる。すなわち、電力変換装置6から出力された電流が、自立系統ISではなく、別の電力変換装置6に流れてしまうことを抑制することができる。
【0026】
なお、複数の電力変換装置6と自立系統ISとの間には、遮断器やさらに多くの変圧器などが設けられていてもよい。複数の電力変換装置6と自立系統ISとの間の構成は、複数の電力変換装置6を自立系統ISに接続可能な任意の構成でよい。
【0027】
測定装置14は、複数の電力変換装置6の制御点の有効電力及び電圧を測定し、有効電力測定値及び電圧測定値を制御装置10に入力する。複数の電力変換装置6の制御点は、換言すれば、複数の電力変換装置6と自立系統ISとの接続点(連系点)である。
【0028】
なお、複数の電力変換装置6の有効電力制御の制御点は、必ずしも複数の電力変換装置6の電圧制御の制御点と同じでなくてもよい。測定装置14は、例えば、有効電力制御の制御点における有効電力を測定する電力測定器と、電圧制御の制御点における電圧を測定する電圧測定器と、を有してもよい。
【0029】
制御装置10は、複数の電力変換装置6の電力の変換動作を制御する。制御装置10は、例えば、測定装置14と通信を行い、測定装置14から制御点の有効電力測定値の情報、及び制御点の電圧測定値の情報の入力を受ける。また、制御装置10は、例えば、複数の電源装置4のそれぞれと通信を行い、複数の電源装置4のそれぞれから複数の電源装置4に関する情報の入力を受ける。制御装置10は、入力された各情報を基に、複数の電力変換装置6の動作を制御する。
【0030】
複数の電源装置4が蓄電装置である場合、複数の電源装置4に関する情報は、例えば、複数の電源装置4の充放電可能量に関する情報である。より詳しくは、電源装置4の蓄電量の残量(SOC:State Of Charge)の情報である。蓄電量の残量の情報は、蓄電量の残量そのものを表す情報でもよいし、例えば電源装置4の電圧など、制御装置10において蓄電量の残量(充放電可能量に関する情報)を演算可能とする情報でもよい。充放電可能量に関する情報は、上記に限ることなく、制御装置10において電源装置4の充放電可能量を把握できるようにする任意の情報でよい。
【0031】
複数の電源装置4が太陽光パネルや風力発電機などの発電機である場合には、複数の電源装置4に関する情報は、例えば、複数の電源装置4の発電量に関する情報である。
【0032】
なお、制御装置10に入力される情報は、上記に限定されるものではない。制御装置10は、例えば、複数の電力変換装置6のそれぞれと通信を行うことにより、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力出力値の情報や複数の電力変換装置6のそれぞれの無効電力出力値の情報などの入力を受けてもよい。制御装置10に入力される情報は、複数の電力変換装置6の制御に必要な任意の情報でよい。
【0033】
また、各情報は、例えば、上位のコントローラなどから制御装置10に入力してもよい。制御装置10は、必ずしも測定装置14や複数の電源装置4などと直接的に通信を行わなくてもよい。各情報の制御装置10への入力方法は、各情報を制御装置10に対して適切に入力可能な任意の方法でよい。
【0034】
図2は、実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御装置10は、有効電力指令値演算部20と、無効電力合計値演算部22と、無効電力指令値演算部24と、を有する。制御装置10は、入力された各情報を基に、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力指令値及び無効電力指令値を演算し、演算した有効電力指令値及び無効電力指令値を複数の電力変換装置6のそれぞれに入力することにより、複数の電力変換装置6の電力の変換動作を制御する。
【0035】
有効電力指令値演算部20には、複数の電力変換装置6の全体から出力すべき有効電力の大きさを表す有効電力合計値が入力される。自立系統ISが他の電源から電力の供給を受けていない場合においては、制御点の有効電力測定値が、自立系統ISにおいて現在必要とされている有効電力の大きさとみなすことができる。従って、制御装置10は、測定装置14から入力された有効電力測定値を有効電力合計値として有効電力指令値演算部20に入力する。
【0036】
また、制御点における有効電力測定値は、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力出力値の合計値とほぼ同じである。従って、制御装置10は、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力出力値の情報を取得し、有効電力出力値の合計値を有効電力合計値として有効電力指令値演算部20に入力してもよい。
【0037】
有効電力指令値演算部20は、入力された有効電力合計値を基に、複数の電力変換装置6のそれぞれから個別に出力すべき有効電力の大きさを表す複数の有効電力指令値を演算する。
【0038】
この際、有効電力指令値演算部20は、例えば、複数の電力変換装置6のそれぞれの状態に応じた適切な有効電力の大きさとなるように、複数の有効電力指令値の按分処理を行う。
【0039】
有効電力指令値演算部20は、例えば、複数の電源装置4が蓄電装置である場合には、蓄電量の残量の高い電源装置4に対応する電力変換装置6の方が、蓄電量の残量の低い電源装置4に対応する電力変換装置6よりも放電時における有効電力の大きさが大きくなり、蓄電量の残量の高い電源装置4に対応する電力変換装置6の方が、蓄電量の残量の低い電源装置4に対応する電力変換装置6よりも充電時における有効電力の大きさが小さくなるように、複数の有効電力指令値の按分処理を行う。
【0040】
このように、有効電力指令値演算部20は、例えば、複数の電源装置4に関する情報を基に、按分処理を行う。例えば、有効電力合計値(単位:W)をPTotalとし、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力指令値(単位:W)をPref(i)とし、複数の電源装置4のそれぞれの蓄電量の残量(単位:%)をSOC(i)とし、複数の電源装置4の蓄電量の残量の合計値(単位:%)をSOCTotalとする時、有効電力指令値演算部20は、放電時(PTotal>0)においては、次の(1)式によって、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力指令値Pref(i)を演算する。
ref(i)=PTotal×(SOC(i)/SOCTotal)・・・(1)
なお、(i)は、複数の電力変換装置6及び対応する電源装置4を個別に表す変数である。SOCTotalは、換言すれば、複数のSOC(i)の合計値である。
【0041】
すなわち、蓄電量の残量の合計値に対する個別の蓄電量の残量の割合を演算し、その割合を有効電力合計値に乗算する。これにより、上記のように、蓄電量の残量の高い電源装置4に対応する電力変換装置6の方が、蓄電量の残量の低い電源装置4に対応する電力変換装置6よりも放電時における有効電力の大きさが大きくなるように、按分処理を行うことができる。
【0042】
また、複数の電源装置4のそれぞれの電池使用量(単位:%)をBAU(i)とし、複数の電源装置4の電池使用量の合計値(単位:%)をBAUTotalとする時、有効電力指令値演算部20は、充電時(PTotal<0)においては、次の(2)式によって、複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力指令値Pref(i)を演算する。
ref(i)=PTotal×(BAU(i)/BAUTotal)・・・(2)
なお、BAU(i)は、BAU(i)=100-SOC(i)である。BAUTotalは、換言すれば、複数のBAU(i)の合計値である。
【0043】
これにより、上記のように、蓄電量の残量の高い電源装置4に対応する電力変換装置6の方が、蓄電量の残量の低い電源装置4に対応する電力変換装置6よりも充電時における有効電力の大きさが小さくなるように、按分処理を行うことができる。
【0044】
有効電力指令値演算部20は、例えば、複数の電源装置4が発電機である場合には、発電量の高い電源装置4に対応する電力変換装置6の方が、発電量の低い電源装置4に対応する電力変換装置6よりも有効電力の大きさが大きくなるように、複数の有効電力指令値の按分処理を行う。この按分処理は、例えば、上記(1)式における蓄電量の残量SOC(i)を発電量に置き換えることで演算することができる。
【0045】
なお、有効電力指令値演算部20は、必ずしも上記のような按分処理を行わなくてもよい。有効電力指令値演算部20は、例えば、有効電力合計値を複数の電力変換装置6の台数で除算した平均値を複数の有効電力指令値として演算してもよい。
【0046】
無効電力合計値演算部22には、例えば、制御点の電圧目標値と、測定装置14から入力された制御点の電圧測定値と、が入力される。電圧目標値は、予め設定された一定の値でもよいし、上位のコントローラなどから入力される変数でもよい。
【0047】
無効電力合計値演算部22は、入力された電圧目標値と電圧測定値とを基に、複数の電力変換装置6の全体から出力すべき無効電力の大きさを表す無効電力合計値を演算する。無効電力合計値演算部22は、例えば、電圧目標値と電圧測定値との差分を演算し、演算した差分に対してPI制御を行うことにより、無効電力合計値を演算する。
【0048】
無効電力合計値演算部22は、例えば、電圧測定値が電圧目標値よりも低い場合に、無効電力合計値を大きくし、電圧測定値が電圧目標値よりも高い場合に、無効電力合計値を小さくするように、無効電力合計値を演算する。これにより、電圧測定値を電圧目標値に近付け、制御点の電圧を一定に保つように制御を行うことができる。
【0049】
なお、無効電力合計値演算部22による無効電力合計値の演算は、PI制御に限ることなく、比例制御やPID制御などでもよい。無効電力合計値演算部22による無効電力合計値の演算は、電圧目標値と電圧測定値とを基に、無効電力合計値を適切に演算可能な任意の演算でよい。
【0050】
無効電力合計値演算部22は、演算した無効電力合計値を無効電力指令値演算部24に入力する。なお、例えば、無効電力合計値の演算は、上位のコントローラなどで演算し、制御装置10に入力するようにしてもよい。制御装置10は、必ずしも無効電力合計値演算部22を有していなくてもよい。
【0051】
無効電力指令値演算部24は、入力された無効電力合計値を基に、複数の電力変換装置6のそれぞれから個別に出力すべき無効電力の大きさを表す複数の無効電力指令値を演算する。
【0052】
無効電力指令値演算部24は、例えば、複数の電力変換装置6のそれぞれの無効電力出力上限を考慮した適切な無効電力の大きさとなるように、複数の無効電力指令値の按分処理を行う。
【0053】
無効電力指令値演算部24は、例えば、無効電力合計値を複数の電力変換装置6の台数で除算した平均値を演算する。この後、無効電力指令値演算部24は、平均値が無効電力出力上限を超えているか否かを複数の電力変換装置6のそれぞれについて確認する。
【0054】
平均値が無効電力出力上限を超えている場合には、超過分を余裕のある電力変換装置6に割り当てる。すなわち、無効電力出力上限を超えていない別の電力変換装置6の無効電力指令値に超過分を追加し、無効電力出力上限を超えた電力変換装置6の無効電力指令値は、無効電力出力上限に制限する。
【0055】
また、例えば、無効電力合計値が、複数の電力変換装置6の無効電力出力上限の合計値を超えている場合には、無効電力指令値演算部24は、無効電力合計値を無効電力出力上限の合計値に制限する。
【0056】
これにより、上記のように複数の無効電力指令値を按分することができる。なお、複数の電力変換装置6のそれぞれの無効電力出力上限は、予め設定された一定の値でもよいし、上位のコントローラなどから入力される変数でもよい。
【0057】
なお、無効電力指令値演算部24は、必ずしも上記のような按分処理を行わなくてもよい。無効電力指令値演算部24は、例えば、無効電力合計値を複数の電力変換装置6の台数で除算した平均値を複数の無効電力指令値として演算してもよい。
【0058】
制御装置10は、有効電力指令値演算部20で演算された複数の電力変換装置6のそれぞれの有効電力指令値、及び無効電力指令値演算部24で演算された複数の電力変換装置6のそれぞれの無効電力指令値を、複数の電力変換装置6のそれぞれに入力する。これにより、制御装置10は、複数の電力変換装置6の電力の変換動作を制御する。
【0059】
但し、制御装置10の構成は、上記に限定されるものではない。制御装置10は、例えば、制御点の有効電力目標値と制御点の有効電力測定値との差分から有効電力合計値を演算する構成としてもよい。制御装置10の構成は、入力される複数の情報を基に、複数の有効電力指令値及び複数の無効電力指令値を適切に演算可能な任意の構成でよい。
【0060】
図3は、実施形態に係る電力変換装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、電力変換装置6は、主回路部30と、制御部32と、測定器34、36と、を備える。主回路部30は、電力の変換を行う。制御部32は、主回路部30による電力の変換を制御する。なお、複数の電力変換装置6の構成は、実質的に同じであるから、ここでは、1つの電力変換装置6の構成についてのみ説明を行う。
【0061】
主回路部30は、電源装置4及び自立系統ISと接続される。主回路部30は、例えば、電源装置4から入力された直流電力を自立系統ISに対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を自立系統ISに出力するとともに、自立系統ISから入力された交流電力を直流電力に変換することにより、電源装置4を充電する。これにより、主回路部30は、電源装置4を自立系統ISと連系させる。但し、主回路部30による電力の変換は、直流から交流への変換に限ることなく、電源装置4の電力を自立系統ISに対応した交流電力に変換する任意の変換でよい。
【0062】
主回路部30は、電力変換部40と、フィルタ回路42と、を有する。電力変換部40は、電力の変換を行う。電力変換部40は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う。電力変換部40は、例えば、三相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を有する。電力変換部40の構成は、複数のスイッチング素子のスイッチングなどにより、入力された電力を自立系統ISに対応した交流電力に変換可能な任意の構成でよい。
【0063】
フィルタ回路42は、電力変換部40の交流側に設けられる。換言すれば、フィルタ回路42は、電力変換部40と自立系統ISとの間に設けられる。この例において、フィルタ回路42は、電力変換部40と変圧器12との間に設けられる。フィルタ回路42は、電力変換部40から出力された交流電力を正弦波に近付ける。フィルタ回路42は、例えば、電力変換部40から出力された交流電力に含まれる高周波成分を抑制することにより、電力変換部40から出力された交流電力を正弦波に近付ける。
【0064】
フィルタ回路42は、例えば、電力変換部40の交流出力点に対して直列に接続されるリアクトル44、45と、電力変換部40の交流出力点に対して並列に接続されるコンデンサ46と、を有する。なお、リアクトル44、45、及びコンデンサ46は、電力変換部40から出力される交流電力の各相毎に設けられる。
【0065】
リアクトル45は、リアクトル44と直列に接続される。換言すれば、リアクトル45は、リアクトル44と変圧器12との間に設けられる。コンデンサ46は、リアクトル44、45の接続点に接続されることにより、電力変換部40の交流出力点に対して並列に接続される。
【0066】
この例において、複数の電力変換装置6は、自立系統ISに対し、変圧器12及びリアクトル45を介して並列に接続される。これにより、変圧器12及びリアクトル45のそれぞれのリアクタンス成分によって、複数の電力変換装置6間での横流の発生をより適切に抑制することができる。
【0067】
但し、フィルタ回路42の構成は、上記に限ることなく、電力変換部40から出力された交流電力を正弦波に近付けることが可能な任意の構成でよい。例えば、変圧器12のみで横流の発生を適切に抑制できる場合には、フィルタ回路42のリアクトル45を省略してもよい。
【0068】
また、リアクトル45のみで横流の発生を適切に抑制できる場合には、変圧器12を省略してもよい。すなわち、複数の電力変換装置6は、自立系統ISに対し、変圧器12及びリアクトル45の少なくとも一方を介して並列に接続される。これにより、変圧器12及びリアクトル45の少なくとも一方のリアクタンス成分によって、複数の電力変換装置6間での横流の発生を抑制することができる。
【0069】
測定器34は、電力変換部40から出力される交流電力の各相の相電圧Va(INV)、Vb(INV)、Vc(INV)、及び各相の線電流Ia(INV)、Ib(INV)、Ic(INV)を測定し、測定結果を制御部32に入力する。
【0070】
測定器36は、主回路部30(フィルタ回路42)から出力される交流電力の各相の相電圧Va(PCS)、Vb(PCS)、Vc(PCS)、各相の線電流Ia(PCS)、Ib(PCS)、Ic(PCS)、主回路部30の出力端における有効電力P(PCS)、及び主回路部30の出力端における無効電力Q(PCS)を測定し、測定結果を制御部32に入力する。
【0071】
制御部32は、電力変換部40の動作を制御することにより、主回路部30による電力の変換を制御する。換言すれば、制御部32は、電力変換部40の複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する。
【0072】
制御部32には、測定器34、36の測定結果が入力されるとともに、主回路部30から出力する交流電力の有効電力指令値及び無効電力指令値が、制御装置10から入力される。
【0073】
制御部32は、測定器34、36から入力された各測定結果と、制御装置10から入力された有効電力指令値及び無効電力指令値と、を基に、電力変換部40の動作を制御する。
【0074】
より具体的には、制御部32は、入力された各測定結果、有効電力指令値、及び無効電力指令値を基に、電力変換部40から出力する交流電力の各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を演算し、演算した瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧が電力変換部40から出力されるように、電力変換部40の動作を制御する。
【0075】
このように、制御部32は、主回路部30の出力電圧を制御する。制御部32は、主回路部30の電圧制御運転を行う。なお、各測定結果は、測定器34、36から直接的に制御部32に入力することに限ることなく、例えば、上位のコントローラなどを介して制御部32に入力してもよい。
【0076】
また、主回路部30の出力端における有効電力P(PCS)の測定値、及び主回路部30の出力端における無効電力Q(PCS)の測定値は、測定器36から制御部32に入力する構成に限ることなく、例えば、各相の相電圧Va(PCS)、Vb(PCS)、Vc(PCS)、及び各相の線電流Ia(PCS)、Ib(PCS)、Ic(PCS)の各測定値を基に、制御部32内で演算して求めてもよい。測定器36は、必ずしも有効電力P(PCS)及び無効電力Q(PCS)を測定しなくてもよい。
【0077】
制御部32は、指令値演算部50と、制御信号生成部52と、を有する。指令値演算部50には、制御装置10から入力された有効電力指令値及び無効電力指令値が入力されるとともに、測定器36によって測定された有効電力P(PCS)及び無効電力Q(PCS)の各測定値が入力される。有効電力P(PCS)の測定値は、換言すれば、主回路部30の現在の有効電力出力値Poutputである。無効電力Q(PCS)の測定値は、換言すれば、主回路部30の現在の無効電力出力値Qoutputである。
【0078】
指令値演算部50は、有効電力指令値Prefに応じた有効電力、及び無効電力指令値Qrefに応じた無効電力を主回路部30から出力するため、入力された有効電力指令値Pref、無効電力指令値Qref、有効電力出力値Poutput、及び無効電力出力値Qoutputを基に、主回路部30から出力する交流電力の出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefを演算する。指令値演算部50は、例えば、発電機動揺方程式やドループ制御などの電圧源電圧制御型の制御ロジックにより、上記の演算を行う。
【0079】
図3に表したように、指令値演算部50は、例えば、有効電力指令値Prefと有効電力出力値Poutputとを基に、出力電圧位相δrefと出力電圧周波数frefとを演算する。そして、指令値演算部50は、例えば、無効電力指令値Qrefと無効電力出力値Qoutputとを基に、出力電圧振幅Vrefを演算する。
【0080】
指令値演算部50は、演算した出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefを制御信号生成部52に入力する。なお、出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefの演算には、周知の演算方法を用いればよい。
【0081】
指令値演算部50の演算に用いられる情報は、有効電力指令値Pref、無効電力指令値Qref、有効電力出力値Poutput、及び無効電力出力値Qoutputのみに限ることなく、その他の情報を含んでもよい。指令値演算部50の構成は、少なくとも有効電力指令値Pref、無効電力指令値Qref、有効電力出力値Poutput、及び無効電力出力値Qoutputを基に、出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefを演算可能な任意の構成でよい。
【0082】
制御信号生成部52は、入力された出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefを基に、電力変換部40の交流電力の各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を演算する。
【0083】
そして、制御信号生成部52は、例えば、各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧を電力変換部40から出力するための制御信号を生成し、生成した制御信号を電力変換部40に入力する。これにより、制御信号生成部52は、各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧を電力変換部40に出力させる。換言すれば、制御信号生成部52は、瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧を電力変換部40に出力させるように、電力変換部40の動作を制御する。制御信号生成部52は、瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧を電力変換部40に出力させることにより、有効電力指令値Prefに応じた有効電力、及び無効電力指令値Qrefに応じた無効電力を主回路部30から出力させる。
【0084】
制御信号生成部52は、例えば、各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を基に、正弦波パルス幅変調制御を行うことにより、電力変換部40の各スイッチング素子のスイッチングを制御するための制御信号を生成する。但し、制御信号生成部52の構成は、これに限ることなく、各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)に応じた電圧を電力変換部40から出力するための制御信号を生成可能な任意の構成でよい。
【0085】
例えば、正弦波パルス幅変調制御を行う機能は、電力変換部40側に設けてもよい。制御信号生成部52は、例えば、各相の瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)自体を制御信号として電力変換部40に入力してもよい。
【0086】
また、制御信号生成部52には、例えば、出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefが入力されるとともに、測定器34によって測定された相電圧Va(INV)、Vb(INV)、Vc(INV)、線電流Ia(INV)、Ib(INV)、Ic(INV)、及び測定器36によって測定された相電圧Va(PCS)、Vb(PCS)、Vc(PCS)、線電流Ia(PCS)、Ib(PCS)、Ic(PCS)の各測定値が入力される。
【0087】
制御信号生成部52は、出力電圧位相δref、出力電圧周波数fref、及び出力電圧振幅Vrefを用いるとともに、相電圧Va(INV)、Vb(INV)、Vc(INV)、線電流Ia(INV)、Ib(INV)、Ic(INV)、相電圧Va(PCS)、Vb(PCS)、Vc(PCS)、及び線電流Ia(PCS)、Ib(PCS)、Ic(PCS)の各入力情報の少なくともいずれかを用いることにより、主回路部30の出力端での過電流を抑制するように、瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を演算する。
【0088】
このように、主回路部30の出力端での過電流を抑制するように、瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を演算することにより、電圧制御運転をした場合にも、過電流の発生を抑制することができる。例えば、系統電圧の急変などで瞬時的な電位差が発生した場合などにも、主回路部30に過電流が発生し、電力変換部40のスイッチング素子などの主回路部30の内部の部品が故障してしまうことを抑制することができる。
【0089】
制御部32は、過電流の抑制によって主回路部30から出力される交流電力の有効電力の大きさが有効電力指令値から変化してしまった場合、又は過電流の抑制によって主回路部30から出力される交流電力の無効電力の大きさが無効電力指令値から変化してしまった場合には、有効電力の変化又は無効電力の変化を制御装置10に通知する。制御装置10は、所定の電力変換装置6の制御装置10から有効電力の変化又は無効電力の変化の通知を受信した場合、変化分を調整するように、他の電力変換装置6の動作を制御する。これにより、所定の電力変換装置6において過電流の抑制が行われ、所定の電力変換装置6から出力される有効電力又は無効電力の大きさが変化した場合にも、複数の電力変換装置6の全体から出力する有効電力及び無効電力の大きさの変化を抑制することができる。
【0090】
なお、上記の各入力情報の少なくともいずれかを用いて過電流を抑制するように瞬時値電圧出力指令値Va(ref)、Vb(ref)、Vc(ref)を演算する方法は、例えば、PCT/JP2021/012721やPCT/JP2021/012723などの文献に、より詳しく説明されている。
【0091】
但し、制御信号生成部52は、必ずしも過電流を抑制するように瞬時値電圧出力指令値を演算する構成でなくてもよい。制御信号生成部52は、少なくとも出力電圧位相、出力電圧周波数、及び出力電圧振幅を基に、瞬時値電圧出力指令値を演算可能に構成されていればよい。
【0092】
制御部32の構成は、有効電力指令値、無効電力指令値、有効電力出力値、及び無効電力出力値を基に、出力電圧位相、出力電圧周波数、及び出力電圧振幅を演算可能であるとともに、出力電圧位相、出力電圧周波数、及び出力電圧振幅を基に、瞬時値電圧出力指令値を演算可能であり、かつ瞬時値電圧出力指令値に応じた電圧を電力変換部40から出力させるように、電力変換部40の動作を制御可能な任意の構成でよい。
【0093】
複数台の電力変換装置を自立系統に対して並列に接続し、並列運転を行う電源システムにおいて、複数台の電力変換装置に電圧源電圧制御型の電力変換装置を用いると、電力変換装置の動作が不安定になり、自立系統への安定した電力供給を行うことができなくなってしまう可能性がある。
【0094】
本願発明者は、鋭意の検討の結果、自立系統の周波数及び電圧を監視し、周波数及び電圧を一定に保つことができる有効電力及び無効電力の必要量を把握することにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統への安定した電力供給を行うことができることを見出した。
【0095】
本実施形態に係る電源システム2では、制御装置10が、自立系統ISで必要とされる有効電力に応じた各電力変換装置6の有効電力指令値を演算し、各電力変換装置6は、有効電力指令値に応じた有効電力を出力するように電圧制御運転を行う。これにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISの周波数の変動を抑制することができる。また、本実施形態に係る電源システム2では、制御装置10が、自立系統ISで必要とされる無効電力に応じた各電力変換装置6の無効電力指令値を演算し、各電力変換装置6は、無効電力指令値に応じた無効電力を出力するように電圧制御運転を行う。これにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISの電圧の変動を抑制することができる。従って、本実施形態に係る電源システム2によれば、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISへの安定した電力供給を行うことができる。
【0096】
また、本願発明者は、鋭意の検討の結果、複数の電力変換装置6の出力可能な有効電力及び無効電力を考慮し、適切な有効電力指令値及び無効電力指令値を複数の電力変換装置6に送信することにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統へのより安定した電力供給を行うことができることを見出した。
【0097】
本実施形態に係る電源システム2では、制御装置10が、複数の電力変換装置6のそれぞれの状態に応じた適切な有効電力の大きさとなるように、複数の有効電力指令値の按分処理を行うとともに、複数の電力変換装置6のそれぞれの無効電力出力上限を考慮した適切な無効電力の大きさとなるように、複数の無効電力指令値の按分処理を行う。これにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISの周波数の変動及び電圧の変動をより抑制することができる。従って、本実施形態に係る電源システム2によれば、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISへのよりより安定した電力供給を行うことができる。
【0098】
さらに、本願発明者は、鋭意の検討の結果、複数の電力変換装置6間での横流の発生を抑制することにより、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置を並列運転させた際にも、自立系統へのより安定した電力供給を行うことができることを見出した。
【0099】
本実施形態に係る電源システム2では、複数の電力変換装置6が、自立系統ISに対し、変圧器12及びリアクトル45の少なくとも一方を介して並列に接続される。これにより、本実施形態に係る電源システム2によれば、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISへのよりより安定した電力供給を行うことができる。
【0100】
以上、説明したように、本実施形態に係る電源システム2では、複数台の電圧源電圧制御型の電力変換装置6を並列運転させた際にも、自立系統ISへの安定した電力供給を行うことができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3