(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】増設用ラック
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
B65G1/14 B
(21)【出願番号】P 2020020235
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519354854
【氏名又は名称】ジャロックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145425
【氏名又は名称】大平 和由
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 力丸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034964(JP,A)
【文献】実開平02-020645(JP,U)
【文献】特開2008-212414(JP,A)
【文献】特表2016-525489(JP,A)
【文献】特開2003-061759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の商品を保管するための自立式ラックの上段に設置される増設用ラックであって、上記増設用ラックは、
既存の上記自立式ラックの各支柱に沿わせて配設される架台支柱と、
該架台支柱の内、ラック幅方向に隣接する各2本の上記架台支柱間に取り付けられる複数の棚板設置用ビームと、
上記架台支柱の内、ラック奥行方向に隣接する各2本の上記架台支柱間に取り付けられる複数の架台横材と、
上記自立式ラックの上部において、ラック奥行方向に隣接する各2本の上記棚板設置用ビームの間に配設される複数の棚板と、を具備し、
上記架台支柱は長手方向に垂直な断面形状において略コの字状形状を有し、上記断面で対向面が開放されている面、及び該面に直交する2つの面には各々長手方向に、上記棚板設置用ビーム及び上記架台横材を上記架台支柱に組み付けるための複数の矩形の係止穴が配設されており、上記対向面が開放されている面においては隣接する各々の上記矩形の係止穴の間には、組み付けられた上記棚板設置用ビーム及び上記架台横材を固定する係止部材用の丸穴が配設されており、上記棚板設置用ビーム及び上記架台横材は、各々上記棚板載置用の受け台部と、上記架台支柱への組付け用の係止爪を具備している、
ことを特徴とする増設用ラック。
【請求項2】
上記棚板設置用ビームの内、最下部に配設される最下段ビームは、該最下段ビームの底面が床面に接するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の増設用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増設用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
戦後の日本のものづくりは米国を手本として自動車、家電製品などを中心として発展し、米国が生産立国から消費立国へと推移するなかで日本は世界の工場と呼ばれるほどの時代を経験した。その後、日本がさらに発展し、消費大国となるにつれてものづくりの生産拠点は海外へ移転され、国内の多くの工場は閉鎖されて跡地に倉庫が建てられ、そこに海外で生産される製品を一時保管・仕分け・配送するという状況が生じた。
【0003】
さらに、近年のネット社会の発展により多くの製品は店舗で販売されるのではなく、eコマースで消費者に届けられる形態が主流となってきており、これに伴って倉庫は今や原材料や製品の置き場ではなく、eコマースによる消費物流のための物流センターとなってきている。倉庫というよりショッピングモールに近いものも出てきている。
【0004】
従来、倉庫として利用される場合は、基本的に人がそこで作業等を行って働く場所ではなく物品を貯蔵する場所であるという前提で、窓や防火区画の設置等に関しての建築基準法上の規定も厳しいものではなかった。高い建物である倉庫内にはパレットラックの高い棚が設置され、フォークリフトによって多量少品種の部品、製品の搬出入が行われていた。
しかしながら、上述したように生産物流から消費物流への変化に伴って、倉庫は同一製品を大量に貯蔵する形態から少量多品種の製品を仮置きする物流拠点として変化してきた。棚の構造にも変化が求められ、多品種の軽量の製品を載置し、人間がピッキングするための奥行きが短く比較的低い軽量ラックが主流となっている。
【0005】
最近では更なる物流の絶対量の増加に伴い、棚の増設が求められる一方、昇降可能なピッキング台車の登場により、高さ方向の増設が可能となり、多くの倉庫において空いている上部空間の活用が求められるようになってきた。
しかしながら既存の棚を撤去して新たな高い棚を設置するのには撤去、新設に伴う工事のみならず、保管されている製品の搬出入にも費用と時間がとられるという問題がある。
特許文献1には、既設倉庫ラックの物品支承棚の増設用部材に関する技術が開示されている。
また、本願の発明者は上記の問題点を解決するべく行ったエクステンションラックの発明について特許出願(特願2019-203627)を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明は既存の支柱を利用してその上限以下の高さに新たな棚板を増設する技術に関するものであり、既存の棚の上段に新たな棚を増設する本発明とは解決しようとする課題が異なり、当然構成も異なるものである。また、上記特許出願に係るエクステンションラックの発明についても、既存の棚の上段にエクステンションラックを設置するに際して、ボルト、ナットを使用しての固定作業に時間、労力がかかる点や、耐震強度、地震時の載置物の状況に対して実績データの少ない点などが問題となっていた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決し、既存の自立式ラックを利用してその上段に簡易に設置することが可能な増設用ラックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の商品を保管するための自立式ラックの上段に設置される増設用ラックであって、既存の自立式ラックの各支柱に沿わせて配設される架台支柱と、架台支柱の内、ラック幅方向に隣接する各2本の架台支柱間に取り付けられる複数の棚板設置用ビームと、架台支柱の内、ラック奥行方向に隣接する各2本の上記架台支柱間に取り付けられる複数の架台横材と、自立式ラックの上部において、ラック奥行方向に隣接する各2本の棚板設置用ビームの間に配設される複数の棚板を具備し、さらに、架台支柱は長手方向に垂直な断面形状において略コの字状形状を有し、断面で対向面が開放されている面及び該面に直交する2つの面には各々長手方向に、棚板設置用ビーム及び架台横材を架台支柱に組み付けるための複数の矩形の係止穴が配設されており、対向面が開放されている面においては隣接する各々の上記矩形の係止穴の間には、組み付けられた棚板設置用ビーム及び上記架台横材を固定する係止部材用の丸穴が配設されており、棚板設置用ビーム及び架台横材は、各々棚板載置用の受け台部と、架台支柱への組付け用の係止爪を具備していることを特徴とする。
請求項2の発明は、さらに、棚板設置用ビームの内、最下部に配設される最下段ビームは、棚板設置用ビームの内、最下部に配設される最下段ビームは、最下段ビームの底面が床面に接するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、既存のラックを設置したままの状態でラックの高さ方向への増設工事が可能となり、設置工事の費用低減と工程の大幅な短縮が図れる。
これは、増設工事においてボルトナットによる締結作業が不要であるため、労力、時間の低減が図れ、作業効率が大幅に向上することによる。
既存のラックとの連結部を有さない組み立て方式であり、耐震強度、地震時の載置物の状況に対して実績のある構造体であるので設置に対しての信頼度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の増設用ラックの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
まず、本実施形態の構成について
図1~
図5を用いて説明する。
図1に示すように、既存の自立式ラック2(ハッチング部)の各支柱に沿わせて配設される架台支柱1aと、架台支柱1aの内、ラック幅方向に隣接する各2本の架台支柱1a間に取り付けられる複数の棚板設置用ビーム3と、架台支柱1aの内、ラック奥行方向に隣接する各2本の架台支柱1a間に取り付けられる複数の架台横材4と、自立式ラック2の上部において、ラック奥行方向に隣接する各2本の棚板設置用ビーム3の間に配設される複数の棚板5を具備している。
図2に示すように、架台支柱1aは長手方向に垂直な断面形状において略コの字状形状を有し、断面で対向面1bが開放されている面1c及びこの面に直交する2つの面1d、1eには各々長手方向に、棚板設置用ビーム3及び架台横材4を架台支柱1aに組み付けるための複数の矩形の係止穴1fが配設されており、対向面1bが開放されている面1cにおいては隣接する各々の矩形の係止穴1fの間には、組み付けられた棚板設置用ビーム3を固定するピン6用の丸穴1gが配設されており、棚板設置用ビーム3及び架台横材4は、各々棚板載置用の受け台部3a、4aと、架台支柱への組付け用の係止爪3b、4bを具備している。
さらに、棚板設置用ビーム3の内、最下部に配設される最下段ビーム3dは、底面3eが床面7に接するように形成されている。
【0013】
本増設用ラック1は、既存の自立式ラック2に直接組み付ける方式ではなく、自立式ラック2全体を囲い込む態様で設置される。本増設用ラック1の基本的構造は軽量ラックとして実績のあるものであり、これを既存の自立式ラック2の上部への増設構造として応用したものである。架台支柱1aは自立式ラック2と同レベルの床面に設置され、既存の自立式ラック2の上部空間において棚板設置用ビーム3及び架台横材4を組み付け、これに棚板5が配設される。このようなシンプルな方式で設置されるため後述のように従来に比べて大きなメリットがある。
【0014】
図3に示すように、棚板設置用ビーム3は水平に設置される長手方向の両端部に各々に、縦に2つ配置された係止爪3bを有し、その2つの係止爪3bの間に外れ止めのピン6用の穴3cを有している。さらに、棚板設置用ビーム3は、これらの係止爪3bを有する部材と直交して棚板5の受け台部3aを有している。
【0015】
図4に示すように、架台横材4は水平に設置される長手方向の両端部の各々に、1つの係止爪4bを有しており、この係止爪4bを有する部材と直交して棚板5の受け台部4aを有している。
【0016】
図5に示すように、最下段ビーム3dは、床面7から離れた他の棚板設置用ビーム3とは異なる寸法構成となっている。
図1に示すように、架台支柱1aに係止爪3bを係止穴1fに係止させて組み付けた際に、最下段ビーム3dの底面3eが床面7に接するように構成されている。これは増設用ラック1の底部に、床面7と底面3eの隙間から異物が混入するのを防止するためである。
【0017】
次に、本実施形態の機能、効果について説明する。
本実施形態の増設用ラック1は、組立にボルトナットを使用する必要がなく、架台支柱1aに棚板設置用ビーム3及び架台横材4を差し込む方式で組み付けて固定する方式であるため作業効率が高く、設置工事の際の労力、時間が大幅に低減され、また、設置実績の豊富な構造であるので耐震強度や、地震による載置物の状況等に対して信頼性の高い設置計画を立てることが容易となる。
【0018】
上述したように、本増設用ラックは、既存の自立式ラックの上部への増設に関して、従来の方式のように載置物の一時撤去、仮置き、自立式ラック自体の撤去、新規ラックの設置工事、載置物の再搬入といった工程を一切行うことなく、自立式ラックの載置物を保管した現状を維持したまま増設工事を行うことを可能とする。非常にシンプルな構成であるが、上述のように耐震強度や組立て作業性に優れており、以下に述べる様に適用範囲も広い。
【0019】
本実施形態の増設用ラック1は既存ラック2が移動式キャスター付きの場合にも対応することができる。既存ラック2が、幅方向に複数の棚が連続した固定ラックの場合のみならず、支柱の底部にキャスター備えていて、1台ごとに個別にラックを引き出して載置物を整理する方式の移動式ラックの場合についても、その機能を維持したままラック上部に本増設用ラックを設置することが可能である。
すなわち、増設用ラック1の架台支柱1aの底部を、移動式ラックの搬出、搬入の移動に干渉しない程度に余裕を持たせて配置することで、増設用ラック1の設置後、あるいは設置工事中においても既存の移動式ラックの機能は保持される。
【0020】
このように本増設用ラックは、耐震強度や組み立て作業性に優れており、様々のタイプのラックに既存機能を保持したまま、場合によっては増設工事中も通常作業を維持したまま、増設工事を行うことができる画期的なものである。
【符号の説明】
【0021】
1 増設用ラック
1a 架台支柱
1b 対向面
1c 面(係止穴配設面)
1d、1e 直交面
1f 矩形係止穴
1g 丸穴
2 自立式ラック
3 棚板設置用ビーム
3a 受け台部
3b 係止爪
3c 丸穴
3d 最下段ビーム
3e 底面
4 架台横材
4a 受け台部
4b 係止爪
5 棚板
6 ピン
7 床面