(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】植物栽培器及び植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240719BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A01G9/02 E
A01G9/02 103T
A01G27/00 502M
A01G27/00 502V
(21)【出願番号】P 2018039175
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2020-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 哲英
(72)【発明者】
【氏名】薮内 裕久
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】有家 秀郎
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-37836(JP,U)
【文献】特開2006-129846(JP,A)
【文献】特開2019-62818(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1425187(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3172965(JP,U)
【文献】特開平7-59468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G9/00-9/08
A01G25/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
根生育体保持部と、その根生育体保持部に保持された根生育体に根が生育する栽培対象植物の地上部が生えるために開口する地上部用開口部を有する植物栽培器であって、
前記地上部用開口部は、前記根生育体保持部に通じており、根生育体保持部に保持された根生育体のうち栽培対象植物の地上部が生える部分を、上方、斜め上方又はほぼ水平方向に開口するものであり、
水性液体を受容し得るよう上方又は斜め上方に開口し、受容した水性液体を前記根生育体保持部に導入して前記根生育体及びその根生育体において生育する根に供給する受容部を前記地上部用開口部と別に有し、
前記根生育体保持部と前記受容部は、
所定の面に沿う区画部により区画されており、
前記根生育体保持部及び前記受容部は、それぞれ前記所定の面の一方の側及び他方の側に位置し、前記区画部のうち前記所定の面の前記一方の側の部分は、前記根生育体保持部の一部を構成するものであり、
前記根生育体保持部の下部に、前記受容部から前記根生育体保持部に導入された水性液体又はその他の水性液体を貯留し得る貯留凹部を有し、
前記貯留凹部の側方であって前記受容部から前記根生育体保持部に水性液体が導入される位置よりも下方に、前記貯留凹部から溢れる水性液体が外部へ流下し得る流出部を有することを特徴とする植物栽培器。
【請求項2】
上記区画部により、上記地上部用開口部と上記受容部が区画される請求項1記載の植物栽培器。
【請求項3】
上記受容部が受容した水性液体が、上記区画部を介して根生育体保持部に導入されるものである請求項1又は2記載の植物栽培器。
【請求項4】
流出部から水性液体が流下する水平方向位置が、受容部が水性液体を受容し得る水平方向範囲内である請求項1乃至3の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項5】
上記受容部が、上方又は斜め上方に開口する凹部であり、その凹部内に、根生育体保持部に通じる部分を有するものである請求項1乃至4の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項6】
上記受容部が、地上部用開口部に対し、植物栽培器に前後がある場合における後方において上方又は斜め上方に開口するものである請求項1乃至5の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項7】
上記根生育体保持部に根生育体が保持された請求項1乃至6の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項8】
上記根生育体保持部に保持された根生育体が上側傾斜面部又は上側平面部を有するものであり、
上記受容部が受容した水性液体が、上記根生育体の上側傾斜面部又は上側平面部に対し導入されるものである請求項7記載の植物栽培器。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の複数の植物栽培器を上下各位置に設け、上方位置に設けられた植物栽培器の流出部より流下する水性液体を、下方位置の植物栽培器の受容部が受容するように配置してなる植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面等に配置して用いることができる植物栽培器及び植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-129846号公報には、建物の外壁面Wに支持させて設けられ、植栽ブロック4がその上に配置される、壁面緑化設備1に使用される植栽ブロック受け皿3であって、灌水を貯留する貯留部3hと、植栽ブロックが配置される皿底部3dと、皿底部の建物外壁面側縁辺から立設された背板3aとを備え、背板には、下半部に堰部3fが、上半部に外壁面側に向かって傾斜させて受水部3gが形成されて植栽ブロック受け皿の発明が記載されている。 しかしながら、植栽ブロックは、皿底部3d上に配置される構成であるため、建物の外壁面Wでの使用においては、安定性の点で課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、根生育体を安定的に保持しつつ、地上部の生育と根の生育を効率的に行い得る植物栽培器及び植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の植物栽培器及び植物栽培装置は、次のように表すことができる。
【0006】
(1) 根生育体保持部と、その根生育体保持部に保持された根生育体に根が生育する栽培対象植物の地上部が生えるために開口する地上部用開口部を有する植物栽培器であって、
前記地上部用開口部は、前記根生育体保持部に通じており、根生育体保持部に保持された根生育体のうち栽培対象植物の地上部が生える部分を、上方、斜め上方又はほぼ水平方向に開口するものであり、
水性液体を受容し得るよう上方又は斜め上方に開口し、受容した水性液体を前記根生育体保持部に導入する受容部を前記地上部用開口部と別に有し、
前記根生育体保持部の下部に、前記受容部から前記根生育体保持部に導入された水性液体又はその他の水性液体を貯留し得る貯留凹部を有し、
前記貯留凹部の側方に、前記貯留凹部から溢れる水性液体が外部へ流下し得る流出部を有することを特徴とする植物栽培器。
【0007】
根生育体保持部に根生育体を保持した状態で、根をその根生育体において生育し、地上部が地上部用開口部を通じて生えるようにして栽培対象植物を生育させることができる。
【0008】
上方又は斜め上方に開口する受容部より受容した水性液体は根生育体保持部に導入され、対象植物の生育に利用される。地上部が生える地上部用開口部とは別に有する受容部から水性液体を根生育体保持部に導入する構成とすることにより、根生育体を安定的に保持しつつ、地上部の生育と根の生育を効率的に行い得る。
【0009】
根生育体保持部の下部に、受容部から根生育体保持部に導入された水性液体又はその他の水性液体を貯留し得る貯留凹部を有し、その貯留凹部の側方に、貯留凹部から溢れる水性液体が流下し得る流出部を有するので、余分な水性液体は排出される。
【0010】
この植物栽培器を上下にそれぞれ設け、上方の植物栽培器の流出部より流下した水性液体が、下方の植物栽培器の受容部が受容するように配置すれば、上方の植物栽培器における余分な水性液体等を下方の植物栽培器において利用して効率的に植物の育成を行うことができる。
【0011】
(2) 上記受容部が受容した水性液体が、根生育体保持部に保持された根生育体の上側傾斜面部又は上側平面部に対し導入されるものである上記(1)記載の植物栽培器。
【0012】
(3) 流出部からが流下する水平方向位置が、受容部が水性液体を受容し得る水平方向範囲内である上記(1)又は(2)記載の植物栽培器。
【0013】
(4) 上記受容部が、上方又は斜め上方に開口する凹部であり、その凹部内に、根生育体保持部に通じる部分を有するものである上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の植物栽培器。
【0014】
(5) 上記受容部が、地上部用開口部に対し、植物栽培器に前後がある場合における後方において上方又は斜め上方に開口するものである上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の植物栽培器。
【0015】
(6) 上記根生育体保持部に根生育体が保持された上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の植物栽培器。
【0016】
(7) 上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の複数の植物栽培器を上下各位置に設け、上方位置に設けられた植物栽培器の流出部より流下する水性液体を、下方位置の植物栽培器の受容部が受容するように配置してなる植物栽培装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の植物栽培器及び植物栽培装置においては、上方又は斜め上方に開口する受容部より受容した水性液体が根生育体保持部に導入され、対象植物の生育に利用される。地上部が生える地上部用開口部とは別に有する受容部から水性液体を根生育体保持部に導入する構成とすることにより、根生育体を安定的に保持しつつ、地上部の生育と根の生育を効率的に行い得る。
【0018】
本発明の植物栽培器を上下にそれぞれ設け、上方の植物栽培器の流出部より流下した水性液体が、下方の植物栽培器の受容部が受容するように配置すれば、上方の植物栽培器における余分な水性液体等を下方の植物栽培器において利用して効率的に植物の育成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1乃至
図3は、何れも本発明の実施の形態の第1の例としての植物栽培器A及び植物栽培装置Rに関するものである。
【0022】
図4は、本発明の実施の形態の第2の例としての植物栽培器Kに関するものである。
【0023】
(1) 植物栽培器Aは、平行状に相対する一対の側板部Paの間にわたり、何れも横長平板状をなす下前板部Pb、下中前板部Pc、下中後板部Pd、下後板部Pe、上後板部Pf、上中板部Pg、及び、上前板部Phが、両側板部Paに対し垂直状に設けられることにより、根生育体保持部Bと、地上部用開口部Cと、受容部Dと、貯留凹部Eと、流出凹部Haが形成されてなる。
【0024】
側板部Paは、両対角線がそれぞれ垂直状及び水平状である略正方形状をなす。
【0025】
下前板部Pbは、側板部Paの前側(
図3における左側)の下辺に沿って、その下辺の上端から、下端よりも上方位置(本例では前記下辺の長さの約2割程度上方位置)にわたる。
【0026】
下中前板部Pcは、下前板部Pbの下端から、側板部Paの後側(
図3における右側)の下辺に対し平行状に(従って下前板部Pbに対し垂直状に)、その下辺の中間位置に対応する位置まで(本例では、前記下辺の長さの約4割程度の長さにわたり)設けられている。
【0027】
下中後板部Pdは、下中前板部Pcの上端から側板部Paの後側の下辺まで、下中前板部Pcに対し直交状に設けられている。
【0028】
下後板部Peは、下中後板部Pdの下端から、側板部Paの後側の下辺に沿ってその下辺の上端にわたり設けられている。
【0029】
上後板部Pfは、下後板部Peの上端から、側板部Paの後側の上辺に沿って、その上辺の下端から中間位置(本例では前記上辺の長さの約5割程度の位置)まで設けられている。
【0030】
上中板部Pgは、上後板部Pfの上端から内側に直交状に折り返すように(従って側板部Paの後側の下辺に対し平行状に)下中後板部Pdと同程度の長さにわたり設けられている。
【0031】
上前板部Phは、上中板部Pgの下端から側板部Paの後側の上辺に対し平行状に(従って上中板部Pgに対し直交状に)、側板部Paの前側の上辺まで設けられている。
【0032】
(2) 植物栽培器Aは、主として金属製であり、後側の水平方向における3箇所に設けられた取付部材Mにおいて、建築物の壁体Gに対し固定される。
図3は、複数の同一の植物栽培器Aが水平方向位置が一致するよう上下に並列して固定されることにより植物栽培装置Rを構成する態様を示す。
【0033】
取付部材Mは、細長板状材料からなり、後部垂直部が壁体Gに固定され、後部垂直部の上端から前方に水平状に延びた先端部が下向きに傾斜して上中板部Pgに結合され、後部垂直部の下端から前方に水平状に延びた先端部が上向きに傾斜して下中後板部Pdに結合されている。
【0034】
(3) 根生育体は、不規則に集合した繊維が圧縮成形されてなるものであり、第1の例の根生育体Faは、直方体形状の板状をなすものが積層されている。第2の例における根生育体Fbは、略円柱形状をなすものである。
【0035】
(4) 根生育体保持部Bは、両側板部Pa間において、下前板部Pb、下中前板部Pc、下中後板部Pd、下後板部Pe、上後板部Pf、上中板部Pg、及び、上前板部Phにより囲まれ、斜め前上方に地上部用開口部Cを開口する。
【0036】
根生育体保持部Bは、根生育体Faを、栽培対象植物の根がその根生育体Faに生育した状態及びその栽培対象植物の地上部が生育した状態を含めて、植物栽培器Aに保持し得る。
【0037】
(5) 根生育体保持部Bの下部のうち、下中前板部Pcと下前板部Pbの下部による、垂直横断面が、頂角が下端に位置し底辺が水平状をなす直角二等辺三角形状をなす部分は、受容部Dから根生育体保持部Bに導入された水W(水以外の水性液体であってもよい)又はその他の水性液体を貯留し得る貯留凹部Eを構成する。
【0038】
(6) 地上部用開口部Cは、根生育体保持部Bに保持された根生育体Faに根が生育する栽培対象植物の地上部が生えるために開口するものであり、根生育体保持部Bに保持された根生育体Faのうち栽培対象植物の地上部が生える部分を斜め前上方に開口する。
【0039】
(7) 受容部Dは、両側板部Pa間において、上前板部Phの後上面と上中板部Pgの前上面により形成された凹部であり、地上部用開口部Cと別に上前板部Phにより区画された地上部用開口部Cに対し後方において、植物栽培器Aの上方から水Wを受容し得るよう、ほぼ上方に開口する。受容部Dの上下方向位置は、地上部用開口部C及び根生育体保持部Bの上部と同等である。
【0040】
上前板部Phと上中板部Pgにわたる部分の水平方向における間隔おき(本例においては等間隔おき)の複数個所に、受容部Dに受容した水Wを根生育体保持部Bに保持された根生育体Faの上側傾斜面部に導入する導入孔部Daが設けられている。
【0041】
(8) 植物栽培装置Rの最上部の植物栽培器Aにおける両側板部Paのうち受容部Dの上方に対応する位置に、それぞれ潅水パイプ保持部Pnが設けられ、両潅水パイプ保持部Pnにわたり潅水パイプTが保持されている。
【0042】
このように保持された潅水パイプTにより潅水される水Wは、受容部Dに受容され、導入孔部Daを通じて根生育体Faの上側傾斜面部に導入されることにより、栽培対象植物の生育に利用される。
【0043】
図3における潅水パイプ保持部Pnは、側板部Paの後側の上辺に対し切欠状に形成されているが、
図1及び
図2においては、側板部Paに貫通孔として潅水パイプ保持部Pnが形成されている。なお、
図4の植物栽培器Kは、このような潅水パイプ保持部を有しない。
【0044】
(9) 貯留凹部Eの後側には、流出凹部Haを有する。貯留凹部E及び流出凹部Haには、両者の境界部を含めて水漏れ防止処理が施されている。
【0045】
流出凹部Haは、下中後板部Pdと下後板部Peの下部により形成され、垂直横断面が、頂角が下端に位置し底辺が水平な直角二等辺三角形状をなす。根生育体Faは、流出凹部Haには位置しないように根生育体保持部Bに保持されている。
【0046】
流出凹部Haにおける下中後板部Pdの下部には、水平方向における間隔おき(本例においては等間隔おき)の複数個所に、流出孔部Hbが形成されている。
【0047】
根生育体保持部B内において貯留凹部Eから溢れる水Wは、後側に隣接する流出凹部Haに受容され、流出孔部Hbを通じて外部へ流下する。
【0048】
流出孔部Hbから水Wが流下する水平方向位置は、受容部Dが水Wを受容し得る水平方向範囲内である。
【0049】
図3に示されるように、上方位置に設けられた植物栽培器Aの流出孔部Hbより流下する余分な水Wを、下方位置の植物栽培器Aの受容部Dが受容するように上下の植物栽培器Aを配置することにより、効率的に植物の育成を行うことができる。例えば、上部(例えば最上部)の植物栽培器Aに潅水パイプTを設けて適量の潅水を行うことにより、上部の植物栽培器Aの受容部Dが受容した水Wを、その植物栽培器Aにおける根生育体Faに導入して植物育成に利用し、余分な水Wを貯留凹部E、流出凹部Ha及び流出孔部Hbを経て下方の植物栽培器Aの受容部Dが受容することにより、順次下方の植物栽培器Aにおいても植物育成に利用することができる。
【0050】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0051】
(1) 本発明の植物栽培器は、根生育体保持部と、地上部用開口部と、受容部と、貯留凹部と、流出部を有する。
【0052】
本発明の植物栽培器は、例えば、合成樹脂、金属又はセラミックスからなるものとすることができるが、これらに限るものではない。
【0053】
本発明の植物栽培器は、例えば、各種の支持体により支持して使用すること、建築物の壁面等の被取付体に直接取り付けて使用すること、又は、建築物の壁面等の被取付体に支持材を取り付け、その支持材により植物栽培器を支持して使用するものとすることができる。
【0054】
(2) 根生育体保持部に保持される根生育体は、その根生育体保持部に応じた形状及び大きさとすることができる。根生育体の形状は、例えば、直方体形状、は立方体形状又は円柱形状などとすることができ、これらを複数集成(例えば積層)させて用いることもできるが、これに限るものではない。
【0055】
根生育体は、栽培対象植物の根が生育し得るものである。根生育体の例としては、不規則に集合した繊維(繊維の種類は特に問わない。椰子殻繊維、ジュート、ケナフ、木綿等の各種天然繊維、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系等の各種合成繊維、或いはその他の繊維を用い得る。)からなるもの、特に、不規則に集合した繊維を、圧縮成形したもの、圧縮成形すると共にニードルパンチやバインダー繊維の含有及び溶融により繊維成形物の保形性を高めたもの、不織布、不織布を重積したもの、不織布製・織布製又はその他の布製の上方若しくは斜め上方開口の袋(好ましくは、土壌や人工土壌が漏出し難く水性液体が透過し得るもの)内に土壌(好ましくは人工軽量土壌)を収容したもの、その他の各種植物根生育材料を挙げることができる。
【0056】
(3) 根生育体保持部は、根生育体を、栽培対象植物の根がその根生育体に生育した状態及びその栽培対象植物の地上部が生育した状態を含めて、植物栽培器に保持するためのものである。
【0057】
根生育体保持部の下部には、受容部から根生育体保持部に導入された水性液体(水、水溶液、水分散液等)又はその他の水性液体(雨水等のその他の由来のもの)を貯留し得る貯留凹部を有する。
【0058】
根生育体保持部の下部における、根の育成のために必要な程度の水性液体を貯留し得る所定の高さまでの部分が、水性液体を貯留し得る貯留凹部を構成する。貯留凹部については、必要に応じ水漏れ防止処理を施すものとすることができる。
【0059】
(4) 地上部用開口部は、根生育体保持部に保持された根生育体に根が生育する栽培対象植物の地上部が生えるために開口するものであり、根生育体保持部に通じており、根生育体保持部に保持された根生育体のうち栽培対象植物の地上部(地上部というのは、例えば、地上茎、葉、花等である。)が生える部分を、上方、斜め上方又はほぼ水平方向に開口するものである。
【0060】
地上部用開口部は、例えば根生育体保持部の所定部分の上方、斜め上方又はほぼ水平方向に開口するものとすること、或いは、例えば、根生育体保持部の所定部分から上方、斜め上方又はほぼ水平方向に離隔した位置において上方、斜め上方又はほぼ水平方向に開口するものとすることができる。
【0061】
根生育体保持部に保持された根生育体に根が生育する栽培対象植物の地上部は、地上部用開口部から外部に向かって又は地上部用開口部内において生育し得るものとすることができる。
【0062】
(5) 受容部は、地上部用開口部と別に(例えば別に区画され、例えば、植物栽培器に前後がある場合[例えば被取付体に取り付けられる側が後側である場合や、地上部用開口部が位置する側が前側である場合等]、地上部用開口部に対し後方において、又は左方若しくは右方において)植物栽培器の外部(特に上方)から水性液体を受容し得るよう上方又は斜め上方に開口し、受容した水性液体を前記根生育体保持部に導入するものであり、受容部は根生育体保持部(又は根生育体保持部に保持された根生育体)に(例えば開口部等により直接に又は導水路等を介して)通じるよう構成されている。
【0063】
受容部に対しては、水性液体を供給する潅水手段を設けることができる。受容部に対し各種潅水手段等により水性液体を適切に供給することにより、根生育体に水分を供給して栽培対象植物を適切に栽培することが可能である。
【0064】
受容部は、受容した水性液体を根生育体保持部に保持された根生育体の上側傾斜面部又は上側平面部に対し導入されるものとすることができる。この場合、周囲に受容部のために設ける余分なスペースを必要とせず、而も、導入された水性液体を根生育体の内部に可及的に広くゆきわたらせて栽培対象植物の根の育成に効果的に利用し得る。
【0065】
受容部は、例えば、上方又は斜め上方に開口する凹部(例えば、水性液体を受容して所要量を溜めることができる凹部)とし、凹部内に、根生育体保持部に(例えば開口部等により直接に又は導水路等を介して)通じる部分を有するものとすることができる。
【0066】
受容部は、高さ位置において、地上部用開口部及び根生育体保持部の一方若しくは両方より上方であるか又は前記両者の一方若しくは両方と同等であって、貯留凹部よりも上方に位置するものとすることができる。
【0067】
(6) 流出部は、貯留凹部の側方に(例えば、植物栽培器に前記のような前後がある場合、貯留凹部に対し後側に、又は左側若しくは右側に)位置し、根生育体保持部において貯留凹部から溢れる水性液体が外部(植物栽培器の外部)へ流下し得るものである。なお、貯留凹部から溢れる水性液体に由来する以外の水性液体も流出部から外部へ流下し得るものであってもよい。
【0068】
流出部は、例えば、貯留凹部から溢れる水性液体を受容して所要量を溜めることができる流出凹部と、流出凹部内から外部へ水性液体が流下し得る流出孔部を有するものとすることができる。
【0069】
なお、根生育体は、流出部には位置しないものとすることができる。
【0070】
流出部から水性液体が流下する水平方向位置は、受容部が水性液体を受容し得る水平方向範囲内であることが好ましい。
【0071】
この場合、例えば、本発明に係る複数の同一の植物栽培器を、水平方向位置が一致するように上下各位置に設けることにより(或いは、複数の同一の植物栽培器をこのように設けて得られた植物栽培装置において)、上方位置に設けられた植物栽培器の流出部より流下する余分な水性液体を、下方位置の植物栽培器の受容部が受容するものとして効率的に植物の育成を行うことができる。
【0072】
また、前記のように流出部から水性液体が流下する水平方向位置は、受容部が水性液体を受容し得る水平方向範囲内である場合においても、そうでない場合においても、例えば、本発明に係る複数の植物栽培器を上下各位置に設け、上方位置に設けられた植物栽培器の流出部より流下する余分な水性液体を、下方位置の植物栽培器の受容部が受容するように配置することにより(或いは、このようにして得られた植物栽培装置において)、効率的に植物の育成を行うことができる。
【0073】
(7) 植物栽培器の垂直横断面形状は、例えば、両対角線が垂直状及び水平状である略正方形状、一方の対角線が垂直状若しくは水平状である略長方形状若しくは略正方形状、何れの対角線も傾斜状である略長方形状若しくは略正方形状とすることができる。
【0074】
また植物栽培器は、例えば、水平横方向が前後方向と同等又は前後方向の2乃至3倍程度とすることができる他、5乃至6倍以上の横長状とし、根生育体保持部も同様に水平横方向が前後方向と同等又は前後方向の2乃至3倍程度とすることができる他、5乃至6倍以上の横長状とすることができる。
【0075】
また、複数の植物栽培器が(例えば垂直方向の)隔壁部(例えば隣接する植物栽培器同士が共有する隔壁部)を介して隣接連結された態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0076】
A 植物栽培器
B 根生育体保持部
C 地上部用開口部
D 受容部
Da 導入孔部
E 貯留凹部
Fa 根生育体
Fb 根生育体
G 壁体
Ha 流出凹部
Hb 流出孔部
K 植物栽培器
M 取付部材
Pa 端側板部
Pb 下前板部
Pc 下中前板部
Pd 下中後板部
Pe 下後板部
Pf 上後板部
Pg 上中板部
Ph 上前板部
Pn 潅水パイプ保持部
R 植物栽培装置
T 潅水パイプ
W 水