(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】生物反応装置で使用される送液ポンプ、この送液ポンプを備えた生物反応装置、およびこの生物反応装置を用いた生物反応方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240719BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240719BHJP
F16J 15/34 20060101ALI20240719BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20240719BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20240719BHJP
C12M 1/04 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12N1/00 B
F16J15/34 Z
F04D29/12 B
C12M1/12
C12M1/04
(21)【出願番号】P 2019029641
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2022-02-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176763
【氏名又は名称】三菱ケミカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国友 信秀
(72)【発明者】
【氏名】新谷 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 正守
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-041382(JP,A)
【文献】特開昭53-135002(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117599(WO,A1)
【文献】特開2004-106920(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0932102(KR,B1)
【文献】特開昭49-075775(JP,A)
【文献】特開2011-038579(JP,A)
【文献】特開2012-077771(JP,A)
【文献】Algal Research,2016年,Vol.17,pp.217-226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
F16J 15/34
F04D 29/12
C12N 1/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物または細胞を培養する生物反応装置において用いられる、培養槽中の生物培養液を外部循環させるための送液ポンプであって、
該送液ポンプは、
回転駆動する回転軸と、
該回転軸に取り付けられた送液手段と、
該回転軸をシールするメカニカルシール部と、
該メカニカルシール部に接続された、オゾンガスのファインバブル・ウルトラファインバブル発生装置を備え、
該メカニカルシール部のシール水として、オゾンガス
のウルトラファインバブルを含有する水を用いることを特徴とする送液ポンプ。
【請求項2】
前記シール水のオゾン含有量が0.1mg/L以上であることを特徴とする、請求項1に記載の送液ポンプ。
【請求項3】
前記シール水が、
前記ファインバブル・ウルトラファインバブル発生装置を用いて連続して生成され、前記メカニカルシール部に供給されることを特徴とする、請求項1または2に記載の送液ポンプ。
【請求項4】
前記送液ポンプが、羽根車の回転による遠心力を用いて送液を行うポンプまたはケーシングに内接する可動部分の密閉空間を回転させて送液を行うポンプであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の送液ポンプ。
【請求項5】
前記回転軸に前記メカニカルシール部を1箇備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の送液ポンプ。
【請求項6】
前記回転軸に前記メカニカルシール部を2箇備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の送液ポンプ。
【請求項7】
前記請求項1~6のいずれかに記載された送液ポンプを備えることを特徴とする、微生物または細胞を培養する生物反応装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載された生物反応装置を用いて、微生物または細胞の培養を行うことを特徴とする、微生物または細胞を培養する生物反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、微生物または細胞(以下、「微生物等」ともいう。)を培養する生物反応装置で使用される送液ポンプ、この送液ポンプを備えた生物反応装置、およびこの生物反応装置を用いた生物反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物等を培養する生物反応は、化学反応と異なり、反応自体は遅いが、多大なエネルギーや多くの化学物質を使用しないことから、環境にとって温和で有意義な反応である。しかし、一般的に、生物反応には反応が温和で遅いという問題がある。すなわち、化学反応は1時間以内の反応で十分な場合が多いのに対して、生物反応は、数時間から長い場合は数日または特に長い場合数週間以上の反応時間を要する場合もある。生物反応を効率的に行うため、本発明者等は、培養槽中の培養液、微生物等を含有する生物培養液の溶存酸素濃度を高める生物反応装置に係る発明について特許出願を行い、すでに特許を取得しているところである。(特許文献1および2)
【0003】
このような生物反応装置においては、生物反応によって得られた生成物を回収したり、生物培養液の溶存酸素濃度を高めるため、送液ポンプを用いて生物培養液を培養槽外部に循環させるが、生物培養液に空気中の雑菌等が混入すること(以下、「コンタミネーション」ともいう。)を防止する必要がある。
【0004】
コンタミネーションを防止するために、従来は、駆動手段が生物培養液と直接接触しない、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等が送液ポンプとして用いられているが、このようなポンプには、送液量を大きくできないという問題がある。
【0005】
一方、回転軸に取り付けられた羽根車、スクリュー、ローター等を用いる送液ポンプでは、圧力を持った内部液がポンプケーシング貫通部から漏れ出さないようにシールする必要があり、気密性の高いシール手段として特許文献3~5に記載されているようなメカニカルシールが知られているところであるが、このようなメカニカルシールでは、生物反応装置におけるコンタミネーションを十分に防止することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6087476号公報
【文献】特許第6138390号公報
【文献】特開2005-171939号公報
【文献】特開2011-038579号公報
【文献】特開2013-127320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の生物反応装置で使用される送液ポンプ、この送液ポンプを備えた生物反応装置、およびこの生物反応装置を用いた生物反応方法の課題は、送液量の大きいポンプにおけるメカニカルシールを改善することにより、コンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の生物反応装置で使用される送液ポンプ、この送液ポンプを備えた生物反応装置、およびこの生物反応装置を用いた生物反応方法は、送液ポンプのメカニカルシール部のシール水として、オゾンガスのウルトラファインバブルを含有する水(以下、「ウルトラファインバブル」を「極微小気泡」ともいい、「オゾンガスのウルトラファインバブルを含有する水」を「オゾンガス極微小気泡含有水」ともいう。)を用いることを特徴とするものである。
【0009】
また、このシール水を、ファインバブル・ウルトラファインバブル発生装置(以下、「微細気泡発生装置」ともいう。)を用いて連続して、メカニカルシール部に供給することにより、前記課題の解決を一層図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生物反応装置で使用される送液ポンプ、この送液ポンプを備えた生物反応装置、およびこの生物反応装置を用いた生物反応方法では、送液ポンプのメカニカルシール部のシール水として、オゾンガス極微小気泡含有水を用いることにより、送液量の大きいポンプを用いつつ、コンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の送液ポンプが使用される生物反応装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の送液ポンプが使用される生物反応装置の他の例を示す模式図である。
【
図3】本発明
のオゾンガス
極微小気泡含有水がシール水として用いられる、送液ポンプの一例のメカニカルシール部の部分断面図である。
【
図4】本発明の送液ポンプのシール水として用いられる、オゾンガス
極微小気泡含有水を生成する微細気泡発生装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面も参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
<本発明の送液ポンプが使用される生物反応装置>
本発明の送液ポンプが使用される生物反応装置(以下、単に「生物反応装置」ともいう。)は、微生物による食品・薬品・化学品等の製造、微生物によるバイオマスからのバイオエタノールの製造、微生物等の増殖等のために用いられる。
【0014】
生物反応装置の培養槽には、培養液、微生物等を含有する生物培養液(以下、単に「生物培養液」ともいう。)が収容される。
【0015】
培養液としては、糖類、窒素源が含有されたものが用いられる。糖類としては、通常、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、これらの混合物等の糖類が用いられ、培養液における糖類の濃度は、特に限定されないものの、0.1~10w/v%に設定するのが好ましい。また、窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムまたはコーンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等が用いられ、0.1~10w/v%に設定するのが好ましい。さらに、培養液には糖類、窒素源以外にも、必要に応じて、ビタミン、無機塩類等を添加することが好ましい。
【0016】
また、微生物等としては、醸造、発酵等の技術分野で従来用いられている、アスペルギルス菌等の麹菌、納豆菌、酢酸菌、酵母菌、乳酸菌等の好気性および通性嫌気性の微生物、ビフィズス菌等の偏性嫌気性の微生物のほか、遺伝子組み換え技術で創り出される各種好気性、通性嫌気性および偏性嫌気性の微生物を用いることができる。また、細胞としては、例えば、抗体医薬として使用される生理活性ペプチドまたは蛋白質を製造するための動物細胞、とりわけ遺伝子組換え動物細胞等が挙げられる。
【0017】
微生物等の培養液への添加濃度は、特に限定されないものの、0.5~10g/Lとするのが好ましく、2.0~6.0g/Lにするのがより好ましい。
【0018】
図1および
図2は生物反応装置を簡略化して示すものであって、
図1は、培養槽1から生物培養液2を抜き出してろ過する工程をわかりやすく簡略化して示しており、
図2は、培養槽1から生物培養液2を抜き出して酸素富化する工程をわかりやすく簡略化して示している。
【0019】
生物反応装置におけるろ過工程は、生物反応によって得られた生成物を回収する工程であって、
図1に示すように、
a)培養槽1において培養槽撹拌機3で撹拌しながら生物反応を進行させた生物培養液2を、送液ポンプ4を用いて培養槽1から抜き出してろ過器5に供給し、
b)ろ過器5で分離されたろ過液Aを、ろ過液貯槽6に回収すると共に、
c)ろ過器5で分離された、ろ過液を除いた生物培養液B(すなわち、微生物等が濃縮された生物培養液)を培養槽1に戻す
ことにより行われる。
【0020】
生物反応装置における酸素富化工程は、生物培養液2の溶存酸素濃度を高める工程であって、
図2に示すように、
a)培養槽1において培養槽撹拌機3で撹拌しながら生物反応を進行させている生物培養液2を、送液ポンプ4を用いて培養槽1から抜き出して微細気泡発生装置7に供給し、
b)生物培養液2に空気Cの
極微小気泡を含有させ、
c)この溶存酸素濃度を高めた生物培養液Dを培養槽1に戻す
ことにより行われる。
【0021】
このように、生物反応装置では、培養槽撹拌機3、送液ポンプ4等の複数の送液ポンプが用いられているが、特に、生物培養液2と直接接触する送液ポンプ4の回転軸のシール部から、空気中の雑菌等が混入するおそれがある。
【0022】
<送液ポンプとして用いられるポンプのメカニカルシール>
回転駆動する回転軸に取り付けられた羽根車、スクリュー、ローター等の送液手段により送液するポンプでは、回転軸の気密性を高めてシールする手段として、一般に、内部流体の漏れや外部からの異物侵入を防ぐと共に、回転軸の回転を妨げないメカニカルシールが用いられている。
【0023】
一般的なメカニカルシールは
図3に示すように、回転軸10と共に回転する回転環11と、固定された固定環12とが、摺動面13において接触しながら回転する構造を備えている。回転環11は、軸方向に不動である部材11aに設けられたスプリング11dにより、軸方向に可動である部材11bおよび11cを固定環12に押し付ける構造となっている。
【0024】
また、メカニカルシールには、回転環11と固定環12との摺動による発熱や摩耗を防止すると共に、回転軸10と固定環12等との間の間隙を密閉するために、シール水Eが連続的に供給される。例えば、
図1および
図2に示す送液ポンプ4においてメカニカルシールを用いる場合には、シール水供給管路8を通じて、シール水が送液ポンプ4に供給される。
【0025】
<本発明の送液ポンプの特徴>
本発明の送液ポンプは、
図1および
図2に示すような微生物等を培養する生物反応装置のろ過工程、酸素富化工程等に使用される、培養槽中の生物培養液を外部循環させるために用いられる送液ポンプであって、回転駆動する回転軸シールするメカニカルシール部において、メカニカルシール部のシール水として
、オゾンガス
極微小気泡含有水を用いることを特徴とするものであり、これにより、送液量の大きいポンプを用いつつ、コンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止することができる。
【0026】
本発明の送液ポンプのメカニカルシール部では、
図3に示すような一般的なメカニカルシールにおいて、回転環11と固定環12との摺動による発熱や摩耗を防止すると共に、回転軸10と固定環12等との間の間隙を密閉するために、連続的に供給されるシール水Eとして
、オゾンガス
極微小気泡含有水を用いる。
【0027】
<生物反応装置の滅菌処理>
図1および
図2に示すような微生物等を培養する生物反応装置においては、前のバッチで使用した微生物等が残存して次のバッチに混入するのを防止するために、1バッチが終了する毎に、生物反応装置全体が滅菌処理される。一般的には蒸気滅菌が行われ、例えば、
図1の生物反応装置における送液ポンプ4、ろ過器5を含む循環ラインには、蒸気滅菌した後、温度を下げるときに空気中から雑菌等が侵入するのを防止するため、無菌エアーを供給して圧力を高め、温度が低下した後に無菌水を供給してシールすることが行われる。
【0028】
このように、1バッチ終了毎に生物反応装置全体が滅菌処理されるが、次のバッチにおける生物反応装置の運転時に、空気中から雑菌等が侵入するのを防止する必要がある。本発明の送液ポンプは、生物反応装置運転中に生じるコンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止できるものである。
【0029】
<シール水>
医療現場、食品製造工場等では、水道水をフィルターろ過、加熱加圧、冷却して製造される滅菌水が用いられている。シール水としてこのような無菌水を使用した場合には、無菌水中に存在していたり、生物反応装置運転中に混入する雑菌等によるコンタミネーションを十分に防止することはできない。
【0030】
また、シール水として、無菌水に代えて、殺菌性を有する塩素水を使用した場合には、上記生物反応装置運転中のコンタミネーションは防止できるものの、塩素水が送液である生物培養液に混入し培養槽に運び込まれると、微生物等の培養に悪影響を及ぼすこととなる。
【0031】
シール水として、殺菌性を有するオゾンガス極微小気泡含有水を使用した場合には、上記生物反応装置運転中のコンタミネーションを防止できると共に、生物培養液に混入し培養槽に運び込まれたとしても、オゾンはタンパク質により短時間で分解して酸素となり、更に反応して、炭酸ガスとなることから、微生物等の培養に悪影響を及ぼすことはなく、また、生物反応の生成物の使用における安全性にも問題は生じない。
【0032】
<シール水に用いられるオゾンガス>
オゾン水は、近年、野菜の殺菌、食器等の殺菌等に一般によく使用されるようになってきており、本発明のオゾンガス極微小気泡含有水に用いるオゾンガスは、市販されている各種のオゾンガス発生装置を用いて発生させることができる。
【0033】
シール水として用いるオゾンガス極微小気泡含有水のオゾン含有量は、高いほど殺菌力を大きくできるが製造にコストを要することとなるため、生物反応装置運転中に混入する雑菌等を十分に殺菌できる0.1mg/L以上、好ましくは0.2mg/L以上、より好ましくは0.5mg/L以上、一層好ましくは1.0mg/L以上、より一層好ましくは2.0mg/L以上とする。
【0034】
<オゾン水>
オゾン水の製法としては、現在、産業用に普及している次のような製法等を用いることができる。
1)酸素ガスを放電することによりオゾンガスを生成し、生成したオゾンガスを水に溶解させるガス溶解法
2)酸素ガスを電解によりオゾンガスを生成し、生成したオゾンガスを水に溶解させる電解ガス溶解法
3)陽イオン交換膜の両面に陽極電極及び陰極電極が設けられてなる触媒電極に原料水を直接接触させるとともに、陽極電極と陰極電極との間に直流電圧を印加して、オゾン水を生成させる直接電解法
4)多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜に水を流し、その外側にオゾンガスを流して、水中にオゾンを吸収させてオゾン水を製造する隔膜溶解法
【0035】
なお、オゾン水を5L/min以上使用する場合には、上記1)または2)のガス溶解式においても、オゾンガスを水に溶解させるのではなく、極微小気泡の形態で含有させることにより、オゾンガスを水中に長期に、安定して分散させることができる。
【0036】
<オゾンガス極微小気泡含有水>
シール水として用いるオゾンガス極微小気泡含有水は、オゾンガスのウルトラファインバブルを含有するものである。
【0037】
「ファインバブル・ウルトラファインバブル(微細気泡)」とは、「ファインバブル」および/または「ウルトラファインバブル」を意味する。「通常の気泡」は水中を急速に上昇して表面で破裂して消えるのに対し、「ファインバブル」といわれる直径100μm未満の微小気泡は、水中で縮小していって消滅し、この際に、フリーラジカルと共に、直径1μm未満の極微小気泡である「ウルトラファインバブル」を発生し、この「ウルトラファインバブル」はある程度の長時間水中に残存する。本発明においては、ISO(国際標準化機構)により規格化されているように、個数平均直径が100μm未満の気泡を「ファインバブル」といい、個数平均直径が1μm未満の気泡を「ウルトラファインバブル」という。
【0038】
ファインバブルの気泡径を測定する方法としては、画像解析法、レーザー回折散乱法、電気的検知帯法、共振式質量測定法、光ファイバープローブ法等が一般に用いられ、ウルトラファインバブルの気泡径を測定する方法としては、動的光散乱法、ブラウン運動トラッキング法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等が一般に用いられている。
【0039】
微細気泡発生装置としては、公知あるいは市販されている装置を用いることができ、例えば、ある程度の高圧で十分な量の気体を水中に溶解させた後、その圧力を解放してやることで溶解した気体の過飽和条件を作り出す「加圧溶解型ファインバブル発生装置」や、水流を起こして液体と気体からなる混合流体をループ状の流れとして撹拌混合し、水流によって発生した乱流により気泡が細分化する現象を利用した「ループ流式バブル発生装置」等を用いることができる。また、ウルトラファインバブル発生装置としては、例えば、特開2007-312690号公報、特開2006-289183号公報、特開2005-245817号公報、特開2007-136255号公報、特開2009-39600号公報に記載されるような公知のものを用いることもできる。
【0040】
微細気泡発生装置として、水流方式のものを用いると、多量の微細気泡
および極微小気泡を経済的に発生させることができるので好ましい。
図4を用いて本発明に好適に用いることのできる水流方式の微細気泡発生装置について説明する。この微細気泡発生装置20では、圧をかけた状態でノズルの入口部21から水Fを供給し、管路の径を絞って流速を上げながら、のど部22で乱流を発生させる。この状態で、オゾンガス発生器(図示せず)で生成したオゾンガスGを気体入口24から供給し、吸引部23において水Fと混合され、水流により微細気泡
および極微小気泡となり、出口部25から、オゾンガス
極微小気泡含有水Hが排出され、シール水Eとして、メカニカルシール部に供給する。
【0041】
なお、市販の電解式オゾン水製造装置からオゾン水を直接にメカニカルシール部に供給することもできる。
【0042】
<オゾンガス極微小気泡含有水の利用>
メカニカルシール部のシール水の圧力は、送液のメカニカルシール部への浸入を防止するため、送液ポンプの吐出圧力より高く保ちながら供給する必要性があり、一般的には、時間当たり600L程度の大量のシール水を一過性で供給し、これを排水する必要がある。
【0043】
しかしながら、オゾンはタンパク質が存在すると容易に分解し、タンパク質が存在しなければ分解しにくいという性質を有していることから、特にシール水として、オゾンガス極微小気泡含有水を用いた場合には、
1)オゾンガスが生物培養液側に流出しても、タンパク質の存在により、オゾンガスは短時間で分解して酸素となり、更に反応して、炭酸ガスとなることから、微生物等の培養に悪影響を及ぼさないこと、および
2)オゾン水は、極微小気泡の形態でオゾンガスを安定して含有しており、タンパク質が存在しない状態ではオゾンガスの分解が起こらず循環使用も可能であることから、シール水の排水量を減じることができる。
【0044】
本発明においてメカニカルシール部のシール水として用いられるオゾンガス極微小気泡含有水は、1)培養槽撹拌機のシール水、2)培養植菌ラインの冷却水、3)サンプリング部の洗浄水およびシール水等の生物反応装置における他の用途にも、有効に利用することができる。
【0045】
<送液ポンプの種類>
本発明の送液ポンプとしては、回転軸に取り付けられた羽根車、スクリュー、ローター等の送液手段を回転させて送液するタイプの送液ポンプを用いることができるが、送液量を大きくできる等の観点から、羽根車の回転による遠心力を用いて送液を行う渦巻きポンプを用いるのが好ましい。
【0046】
<メカニカルシール部の数>
本発明の送液ポンプとしては、メカニカルシール部を1つ備えたシングル形、メカニカルシール部を2つ備えたダブル形(背面合わせ)、タンデム形(正面合わせ)を適宜用いることができる。生物培養液がスラリー状である場合には、シールを安定して行うためにダブル形(背面合わせ)を採用するのが好ましい。
【0047】
<送液ポンプを備えた生物反応装置>
本発明の微生物等を培養する生物反応装置は、メカニカルシール部のシール水としてオゾンガス極微小気泡含有水を用いた送液ポンプを備えることにより、送液量の大きい、渦巻きポンプ等の非容積ポンプを用いて送液量を確保しつつ、コンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止することができる。
【0048】
さらに、本発明の微生物等を培養する生物反応装置は、培養槽撹拌機におけるメカニカルシール部のシール水として、オゾンガスの極微小気泡を含有する水を用いることにより、コンタミネーションの一層の防止を図ることができる。
【0049】
<送液ポンプを備えた生物反応方法>
本発明の微生物等を培養する生物反応方法は、メカニカルシール部のシール水としてオゾンガス極微小気泡含有水を用いた送液ポンプを用いることにより、送液量の大きい、渦巻きポンプ等の非容積ポンプを用いて送液量を確保しつつ、コンタミネーションを、十分にかつ経済的・効率的に防止することができる。
【0050】
さらに、本発明の微生物等を培養する生物反応方法は、培養槽撹拌機のメカニカルシール部のシール水として、オゾンガス極微小気泡含有水を用いた培養槽撹拌機を用いることにより、コンタミネーションの一層の防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 培養槽
2 (培養液、微生物等を含有する)生物培養液
3 培養槽撹拌機
4 送液ポンプ
5 ろ過器
6 ろ過液貯槽
7 微細気泡(ファインバブル・ウルトラファインバブル)発生装置
8 シール水供給管路
A ろ過液
B ろ過液を除いた生物培養液
C 空気
D 溶存酸素濃度を高めた生物培養液
10 回転軸
11 回転環
11a~11c (回転環を構成する)部材
11d スプリング
12 固定環
13 摺動面
E シール水(オゾンガス極微小気泡含有水)
20 微細気泡(ファインバブル・ウルトラファインバブル)発生装置
21 入口部
22 のど部
23 吸引部
24 気体入口
25 出口部
F 水
G オゾンガス
H オゾンガス極微小気泡含有水(オゾンガスのウルトラファインバブルを含有する水)