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特許7523212易接着層付位相差フィルム、位相差層付偏光板、および易接着層付位相差フィルムの製造方法
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  • 特許-易接着層付位相差フィルム、位相差層付偏光板、および易接着層付位相差フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】易接着層付位相差フィルム、位相差層付偏光板、および易接着層付位相差フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240719BHJP
   B29C 55/04 20060101ALI20240719BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240719BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240719BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240719BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C55/04
C09D5/00 D
C09D5/00 Z
C09D175/04
C09J7/29
C09J201/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019168271
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021047235
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲朗
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159666(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042878(WO,A1)
【文献】特開2012-73552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B29C55/04
C09D 5/00
C09D175/04
C09D201/00
C09J 7/29
C09J201/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内位相差を有する基材フィルムと;該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた易接着層と;を含み、
該易接着層の平均厚みT は、150nm~400nmであり、
該基材フィルムの平均厚みT は、25μm~45μmであり、
該易接着層の平均厚みTと該基材フィルムの平均厚みTとの比T/Tが0.011以下であり、
該易接着層の平均厚みTに対して、該易接着層の最大厚みが1.20以下であり、最小厚みが0.80以上である、
易接着層付位相差フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムが、延伸処理されたポリカーボネート系樹脂フィルムである、請求項1に記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項3】
長尺状であり、前記基材フィルムが、斜め延伸処理されたポリカーボネート系樹脂フィルムである、請求項2に記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルムが、長尺方向に対して30°~60°の方向に遅相軸を有する、請求項3に記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムの面内位相差Re(550)が100nm~190nmである、請求項1から4のいずれかに記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項6】
前記易接着層が水系樹脂の塗布膜の固化層である、請求項1から5のいずれかに記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項7】
前記水系樹脂がウレタン系樹脂である、請求項6に記載の易接着層付位相差フィルム。
【請求項8】
偏光板と、該偏光板に接着剤層および前記易接着層を介して貼り合わせられた請求項1から7のいずれかに記載の易接着層付位相差フィルムと、を有し、
前記基材フィルムが位相差層として機能する、
位相差層付偏光板。
【請求項9】
前記接着剤層が、活性エネルギー線硬化型接着剤で構成されている、請求項8に記載の位相差層付偏光板。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の易着層付位相差フィルムの製造方法であって、
樹脂フィルムに易接着層形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成すること;該塗布膜を乾燥させること;および、樹脂フィルムと乾燥塗布膜との積層体を延伸すること;を含み
該易接着層形成用塗布液の固形分濃度が0.5重量%~3.0重量%である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着層付位相差フィルム、位相差層付偏光板、および易接着層付位相差フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載した画像表示装置(有機EL表示装置)が提案されている。有機ELパネルは反射性の高い金属層を有しており、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、位相差層付偏光板(円偏光板)を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。また、液晶表示パネルの視認側に位相差層付偏光板を設けることで、視野角を改善することが知られている。一般的な位相差層付偏光板として、位相差フィルムと偏光子(実質的には、偏光板)とを、その遅相軸と吸収軸とが用途に応じた所定の角度(例えば、45°)をなすように積層したものが知られている。また、代表的な位相差フィルムとして、樹脂フィルムを延伸することにより延伸方向に遅相軸を発現させたものが知られている(特許文献1)。位相差層付偏光板の作製においては、偏光板と位相差フィルムとの十分な接着性を確保するために、位相差フィルムに易接着層を設けた易接着層付位相差フィルムを用いる場合がある。しかし、易接着層付位相差フィルムは位相差ムラが生じる場合が多い。さらに、易接着層付位相差フィルムの製造においては、延伸時の破断が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、製造時の破断が抑制され、かつ、位相差ムラが小さい易接着層付位相差フィルム、そのような易接着層付位相差フィルムを備える位相差層付偏光板、および、そのような易接着層付位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による易接着層付位相差フィルムは、面内位相差を有する基材フィルムと;該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた易接着層と;を含む。該易接着層の平均厚みTと該基材フィルムの平均厚みTとの比T/T0.011以下であり、該易接着層の平均厚みTに対して、該易接着層の最大厚みは1.20以下であり、最小厚みは0.80以上である。
1つの実施形態においては、上記基材フィルムは、延伸処理されたポリカーボネート系樹脂フィルムである。
1つの実施形態においては、上記易接着層付位相差フィルムは長尺状であり、上記基材フィルムは、斜め延伸処理されたポリカーボネート系樹脂フィルムである。1つの実施形態においては、上記基材フィルムは 長尺方向に対して30°~60°の方向に遅相軸を有する。
1つの実施形態においては、上記基材フィルムの面内位相差Re(550)は100nm~190nmである。
1つの実施形態においては、上記易接着層は水系樹脂の塗布膜の固化層である。1つの実施形態においては、上記水系樹脂はウレタン系樹脂である。
本発明の別の局面によれば、位相差層付偏光板が提供される。この位相差層付偏光板は、偏光板と、該偏光板に接着剤層および上記易接着層を介して貼り合わせられた上記の易接着層付位相差フィルムと、を有する。上記基材フィルムは位相差層として機能する。
1つの実施形態においては、上記接着剤層は、活性エネルギー線硬化型接着剤で構成されている。
本発明のさらに別の局面によれば、上記の易接着層付位相差フィルムの製造方法が提供される。この製造方法は、樹脂フィルムに易接着層形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成すること;該塗布膜を乾燥させること;および、樹脂フィルムと乾燥塗布膜との積層体を延伸すること;を含み、該易接着層形成用塗布液の固形分濃度は0.5重量%~3.0重量%である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、易接着層付位相差フィルムにおいて、基材フィルムの平均厚みに対する易接着層の平均厚みの比を所定値以下とし、かつ、易接着層の厚みのバラツキを所定範囲内とすることにより、製造時の破断が抑制され、かつ、位相差ムラが小さい易接着層付位相差フィルムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による易接着層付位相差フィルムを説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.易接着層付位相差フィルム
A-1.易接着層付位相差フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による易接着層付位相差フィルムを説明する概略断面図である。図示例の易接着層付位相差フィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に設けられた易接着層12と、を含む。目的に応じて、易接着層は、基材フィルムの両面に設けられてもよい。基材フィルム11は面内位相差を有する。
【0011】
本発明の実施形態においては、易接着層の平均厚みTと該基材フィルムの平均厚みTとの比T/T0.011以下であり、好ましくは0.009以下であり、より好ましくは0.008以下であり、さらに好ましくは0.006以下である。比T/Tの下限は、例えば0.003であり得る。比T/Tがこのような範囲であれば、易接着層付位相差フィルムの製造時の破断が抑制され得る。
【0012】
さらに、本発明の実施形態においては、易接着層の平均厚みTに対して、易接着層の最大厚みは1.20以下であり、好ましくは1.15以下であり、より好ましくは1.10以下であり、さらに好ましくは1.05以下である。易接着層の最小厚みは0.80以上であり、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.90以上であり、さらに好ましくは0.95以上である。易接着層の平均厚みに対する最大厚みおよび最小厚みの比率(すなわち、易接着層の厚みバラツキ)がこのような範囲であれば、位相差ムラが小さい易接着層付位相差フィルムを実現することができる。なお、本明細書において「平均厚み」は、1m×1mサイズのフィルムまたは膜の対向する一対の辺方向および当該方向に直交する方向のそれぞれに沿って50mm間隔で測定した値の平均を意味する。
【0013】
A-2.基材フィルム
基材フィルムは、上記のとおり、面内位相差を有する。すなわち、基材フィルムは位相差フィルムである。1つの実施形態においては、基材フィルム(位相差フィルム)は、λ/4板として機能し得る。この場合、基材フィルム(位相差フィルム)の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~190nmであり、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。
【0014】
基材フィルムは、代表的には、nx>ny≧nzの屈折率特性を有する。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。基材フィルムのNz係数は、好ましくは0.9~3.0であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。基材フィルムのNz係数がこのような範囲であれば、易接着層付位相差フィルム(実質的には、当該易接着層付位相差フィルムを含む位相差層付偏光板)を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0015】
基材フィルムは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、基材フィルムは、逆分散波長特性を示す。この場合、基材フィルムのRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1未満であり、より好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、易接着層付位相差フィルム(実質的には、当該易接着層付位相差フィルムを含む位相差層付偏光板)を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0016】
基材フィルムの厚み(平均厚み)は、用途および目的に応じて適切に設定され得る。平均厚みは、好ましくは15μm~60μmであり、より好ましくは25μm~45μmである。基材フィルムの平均厚みがこのような範囲であれば、基材フィルムおよび易接着層の平均厚みを実用上許容可能な範囲に設定しつつ、上記の比T/Tを所望の範囲とすることが容易である。また、本発明の実施形態によれば、例えば大型画面用途においては通常よりも小さい厚みでλ/4板を構成することができる。本発明の実施形態によれば、このような薄型の位相差フィルムにおいて効果が顕著なものとなる。
【0017】
基材フィルムは、代表的には、延伸処理された樹脂フィルムからなる。1つの実施形態においては、延伸処理は一軸延伸である。この場合、基材フィルムは延伸方向に遅相軸を有し、基材フィルム(結果として、易接着層付位相差フィルム)は、枚葉上であってもよく、長尺状であってもよい。別の実施形態においては、延伸処理は斜め延伸である。この場合、基材フィルムは長尺方向に対して斜め方向に遅相軸を有する。斜め方向は、基材フィルムの長尺方向に対して、好ましくは30°~60°、より好ましくは40°~50°、さらに好ましくは42°~48°、特に好ましくは約45°の方向である。この場合、基材フィルム(結果として、易接着層付位相差フィルム)は、代表的には長尺状である。偏光子は通常長尺方向に吸収軸を有するので、このような構成であれば、ロールトゥロールにより位相差層付偏光板を作製することができ、位相差層付偏光板の製造効率が格段に向上し得る。
【0018】
基材フィルムを構成する樹脂としては、得られる基材フィルムが上記特性を満足する限りにおいて、任意の適切な樹脂を用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂が好適に用いられ得る。本発明の実施形態によれば、ポリカーボネート系樹脂フィルムに易接着層を設けることにより、当該フィルムと偏光子または偏光板との密着性を顕著に向上させることができる。なお、本明細書においては、ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂をまとめてポリカーボネート樹脂と称する場合がある。
【0019】
上記ポリカーボネート樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、ポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0020】
1つの実施形態においては、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する単位構造を含むポリカーボネート系樹脂が用いられ得る。
【化1】
(上記一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~炭素数20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のアリール基を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2~炭素数10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6~炭素数20のアリーレン基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0~5の整数である。)
【0021】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0022】
上記ポリカーボネート系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0023】
ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特許5204200号、特開2012-67300号公報、特許第3325560号、WO2014/061677号等に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0024】
1つの実施形態においては、オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂が用いられ得る。オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂としては、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位および/または下記一般式(3)で表される構造単位を含む樹脂が挙げられる。
【化2】
(上記一般式(2)および上記一般式(3)中、RおよびRはそれぞれ独立に、直接結合、置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキレン基(好ましくは、主鎖上の炭素数が2~3であるアルキレン基)である。Rは、直接結合、置換若しくは無置換の炭素数1~4のアルキレン基(好ましくは、主鎖上の炭素数が1~2であるアルキレン基)である。R~R13はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数4~10(好ましくは4~8、より好ましくは4~7)のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4)のビニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~10(好ましくは1~4)のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基である。R~R13のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0025】
1つの実施形態においては、オリゴフルオレン構造単位に含まれるフルオレン環は、R~R13の全てが水素原子である構成を有するか、あるいは、R及び/又はR13がハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、シアノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R~R12が水素原子である構成を有する。
【0026】
オリゴフルオレン構造単位を含むポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2015-212816号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0027】
A-3.易接着層
易接着層は、代表的には、水系樹脂の塗布膜の固化層である。水系樹脂の好ましい具体例としては、ウレタン系樹脂が挙げられる。したがって、易接着層は、好ましくは、ウレタン系樹脂を含む水系分散体(易接着剤層形成用塗布液)の塗布膜の固化層であり得る。水系は、溶剤系に比べて環境面に優れ、作業性にも優れ得る。
【0028】
ウレタン系樹脂は、代表的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオールを採用し得る。具体例としては、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0030】
ウレタン系樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する。カルボキシル基を有することにより、偏光子との密着性(特に、高温・高湿下における)に優れた易接着層付位相差フィルムが得られ得る。カルボキシル基を有するウレタン系樹脂は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤としては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)等のジアルキロールアルカン酸が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0031】
ウレタン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000~600000であり、さらに好ましくは10000~400000である。ウレタン系樹脂の酸価は、好ましくは10以上であり、さらに好ましくは10~50であり、特に好ましくは20~45である。酸価がこのような範囲内であれば、偏光子との密着性がより優れ得る。
【0032】
易接着剤層形成用塗布液は、好ましくは、架橋剤を含む。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。具体的には、ウレタン系樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としては、好ましくは、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーが挙げられる。カルボキシル基と反応し得る基としては、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基が挙げられる。好ましくは、架橋剤は、オキサゾリン基を有する。オキサゾリン基を有する架橋剤は、ウレタン系樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱することによって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。
【0033】
易接着剤層形成用塗布液は、好ましくは微粒子を含まない。このような構成であれば、上記所望の厚みバラツキを有する易接着層を形成することができ、結果として、位相差ムラが小さい易接着層付位相差フィルムを実現することができる。易接着剤層形成用塗布液は、必要に応じてレベリング剤を含み得る。レベリングを含むことにより、塗布膜の平滑性をさらに高めることができ、結果として、厚みバラツキの小さい(代表的には、上記所望の厚みバラツキを有する)易接着層を形成することができる。レベリング剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。易接着剤層形成用塗布液中のレベリング剤の含有量は、例えば1.0重量%~3.5重量%であり得る。
【0034】
易接着剤層形成用塗布液は、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0035】
ウレタン系樹脂および易接着剤層形成用塗布液の詳細については、例えば特開2010-055062号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0036】
易接着層の平均厚みは、基材フィルムの平均厚みに応じて上記所望の比T/Tが得られるように設定され得る。易接着層の平均厚みは、好ましくは150nm~600nmであり、より好ましくは200nm~500nmであり、さらに好ましくは250nm~400nmである。このような構成であれば、易接着層付位相差フィルム製造時の破断が抑制され得る。
【0037】
B.易接着層付位相差フィルムの製造方法
上記A項に記載の易接着層付位相差フィルムの製造方法は、樹脂フィルムに易接着層形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成すること;該塗布膜を乾燥させること;および、樹脂フィルムと乾燥塗布膜との積層体を延伸すること;を含む。
【0038】
樹脂フィルムの構成材料については、基材フィルムに関して上記A-2項で説明したとおりである。延伸前の樹脂フィルムの厚みは、得られる位相差フィルム(基材フィルム)の厚み、面内位相差等に応じて適切に設定され得る。延伸前の樹脂フィルムの厚みは、例えば40μm~150μmであり得る。
【0039】
易接着層形成用塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0040】
易接着層形成用塗布液の固形分濃度は、代表的には0.5重量%~3.0重量%であり、好ましくは0.5重量%~1.5重量%であり、より好ましくは0.7重量%~1.2重量%であり、さらに好ましくは0.8重量%~1.1重量%である。固形分濃度がこのような範囲であれば、上記所望の厚みバラツキを有する易接着層を形成することができ、結果として、位相差ムラが小さい易接着層付位相差フィルムを実現することができる。固形分濃度が小さすぎると、易接着層が形成できない場合がある。固形分濃度が大きすぎると、厚みバラツキが大きくなりすぎる場合がある。
【0041】
塗布膜の厚みは、得られる易接着層が上記所望の平均厚み(結果として、比T/T)となるように調整され得る。
【0042】
次いで、塗布膜を乾燥する。乾燥温度は、例えば80℃~95℃であり得る。乾燥時間は、例えば1分~3分であり得る。このようにして、樹脂フィルム上に乾燥塗布膜が形成される。
【0043】
次いで、上記で得られた樹脂フィルムと乾燥塗布膜との積層体を延伸する。塗布膜を乾燥後に延伸することにより、易接着層と基材フィルムとの密着性に優れた易接着層付位相差フィルムが得られ得る。
【0044】
1つの実施形態においては、延伸処理は一軸延伸(例えば、固定端一軸延伸、自由端一軸延伸)である。固定端一軸延伸の具体例としては、積層体を長尺方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。この場合、得られる基材フィルムの遅相軸は、幅方向に発現する。自由端一軸延伸は、積層体を周速の異なるロール間で搬送して長尺方向に延伸する方法が挙げられる。この場合、得られる基材フィルムの遅相軸は、長尺方向に発現する。延伸倍率は、基材フィルムの所望の面内位相差に応じて適切に設定され得る。延伸倍率は、好ましくは1.1倍~3.5倍である。
【0045】
別の実施形態においては、延伸処理は斜め延伸である。具体的には、長尺状の積層体を長尺方向に対して角度θの方向に連続的に斜め延伸する。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長尺方向に対して角度θの配向角(角度θの方向に遅相軸)を有する長尺状の基材フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の積層体を連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0046】
延伸温度は、代表的には、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上の温度である。延伸温度は、好ましくは(Tg+1)℃~(Tg+10)℃であり、より好ましくは(Tg+1)℃~(Tg+5)℃である。
【0047】
以上のようにして、易接着層付位相差フィルムが作製され得る。
【0048】
C.位相差層付偏光板
上記A項およびB項に記載の易接着層付位相差フィルムは、位相差層付偏光板などの光学部材に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、上記易接着層付位相差フィルムを有する位相差層付偏光板を包含する。本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、偏光板と、偏光板に接着剤層および易接着層を介して貼り合わせられた易接着層付位相差フィルムと、を有する。易接着層付位相差フィルムの基材フィルムは位相差層として機能する。偏光板は、代表的には、偏光子と、偏光子の少なくとも片側に配置された保護層と、を有する。偏光子は、代表的には吸収型偏光子である。基材フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、用途および目的に応じて適切に設定され得る。当該角度は、好ましくは30°~60°であり、より好ましくは40°~50°であり、さらに好ましくは42°~48°であり、特に好ましくは約45°である。
【0049】
接着剤層は、代表的には、活性エネルギー線硬化型接着剤で構成されている。接着剤層が活性エネルギー線硬化型接着剤である場合に、易接着層の効果が顕著なものとなる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線の照射によって硬化し得る接着剤であれば、任意の適切な接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化型の具体例としては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、これらの組み合わせ(例えば、ラジカル硬化型とカチオン硬化型のハイブリッド)が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、硬化成分として(メタ)アクリレート基や(メタ)アクリルアミド基などのラジカル重合性基を有する化合物(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマー)を含有する接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤およびその硬化方法の具体例は、例えば、特開2012-144690号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0050】
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0051】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0052】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0053】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0054】
偏光子の厚みは、例えば1μm~80μmである。1つの実施形態においては、偏光子の厚みは、好ましくは1μm~25μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0055】
保護層は、偏光子を保護するフィルムとして使用できる任意の適切な保護フィルムで形成される。当該保護フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0056】
保護層の厚みは、好ましくは10μm~100μmである。保護層は、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていてもよく、偏光子に密着(接着層を介さずに)積層されていてもよい。必要に応じて、位相差層付偏光板の最表面に配置される保護層には、ハードコート層、防眩層および反射防止層などの表面処理層が形成され得る。
【実施例
【0057】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
(1)平均厚みおよび厚みバラツキ
干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。平均厚みおよび厚みバラツキは、以下のようにして求めた:実施例、比較例および参考例で得られた易接着層付位相差フィルムを1m×1mサイズに切り出し、測定サンプルとした。当該測定サンプルの対向する一対の辺方向および当該方向に直交する方向のそれぞれに沿って50mm間隔で厚みを測定し、その平均を平均厚みとした。さらに、当該測定における最大厚みおよび最小厚みを平均厚みに対する比として求め、最小厚みから最大厚みまでの範囲を厚みバラツキとした。
(2)面内位相差
Axometrics社製「Axoscan」を用いて測定した。測定波長は550nm、測定温度は23℃であった。
(3)破断
実施例、比較例および参考例の易接着層付位相差フィルムの製造において、テンター延伸機からのフィルムの送り出し状態を確認し、以下の基準で評価した。
○:フィルムがスムーズに排出され、かつ、フィルムにクラック等は発生しなかった
△:フィルムは排出されるが、フィルムにクラックが発生した
×:フィルムが破断し排出されなかった
(4)位相差ムラ
実施例、比較例および参考例で得られた易接着層付位相差フィルムを、UV硬化型接着剤および易接着層を介して市販の偏光板に貼り合わせ、位相差層付偏光板を作製した。この位相差層付偏光板を、粘着剤を介して反射板に貼り合わせ、試験サンプルとした。試験サンプルを視認したときの状態を確認し、以下の基準で評価した。
○:均一で濃淡は認められなかった
△:わずかな濃淡が認められたが、実用上問題ない程度であった
×:濃淡が顕著であった
【0058】
[実施例1]
1.ポリカーボネート系樹脂フィルムの作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン(化合物3)29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み100μmのポリカーボネート系樹脂フィルムを作製した。
【0059】
2.塗布膜の形成
ポリエステルウレタン(第一工業製薬製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)16.8g、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒製、商品名:エポクロスWS-700、固形分:25%)4.2g、および1重量%のアンモニア水2.0gを混合し、純水およびイソプロピルアルコール(IPA、レベリング剤)を加えて固形分濃度を1重量%に、IPA濃度を2.5重量%に調整し、易接着層形成用塗布液を調製した。
【0060】
3.易接着層付位相差フィルムの作製
上記2.で得られた易接着層形成用塗布液を、上記1.で得られたポリカーボネート系樹脂フィルムにバーコーター(#6)で塗布した。その後、140℃で約5分乾燥させて、ポリカーボネート系樹脂フィルムと乾燥塗布膜との積層体を得た。この積層体をテンター延伸機により固定端一軸延伸し、易接着層付位相差フィルムを得た。延伸における予熱温度は145℃、延伸温度は143℃(Tg+3℃)とした。延伸倍率は2.8倍とした。得られた易接着層付位相差フィルムは、基材フィルムの厚みが40μmであり、基材フィルムのRe(550)が140nmであり、易接着層の厚みが348nmであり、比T/T0.0087であり、厚みバラツキが0.89~1.10であった。得られた易接着層付位相差フィルムを上記(3)および(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例2]
塗布膜の厚みを変更して厚み297nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0074であり、厚みバラツキは0.81~1.20であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
塗布膜の厚みを変更して厚み281nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0070であり、厚みバラツキは0.93~1.10であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例4]
塗布膜の厚みを変更して厚み175nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0044であり、厚みバラツキは0.86~1.08であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例5]
樹脂フィルムの厚みおよび延伸倍率を変更して基材フィルムの厚みを30μm(面内位相差Re(550)=130nm)としたこと、ならびに、塗布膜の厚みを変更して厚み306nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0102であり、厚みバラツキは0.85~1.14であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例6]
樹脂フィルムの厚みおよび延伸倍率を変更して基材フィルムの厚みを25μm(面内位相差Re(550)=120nm)としたこと、延伸温度をTg+1℃としたこと、ならびに、塗布膜の厚みを変更して厚み251nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0100であり、厚みバラツキは0.80~1.03であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
塗布膜の厚みを変更して厚み608nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0152であり、厚みバラツキは0.91~1.10であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
易接着層形成用塗布液の固形分濃度を8重量%に変更したこと、および、塗布膜の厚みを変更して厚み357nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0089であり、厚みバラツキは0.80~1.24であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例3]
実施例1で用いた易接着層形成用塗布液にコロイダルシリカ(扶桑化学工業製、クォートロンPL-3、固形分:20重量%)を加えてシリカ粒子濃度0.6重量%の易接着層形成用塗布液を調製した。この易接着層形成用塗布液を用いたこと、および、塗布膜の厚みを変更して厚み387nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0097であり、厚みバラツキは0.76~1.28であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0069】
[参考例1]
ポリカーボネート系樹脂フィルムの代わりに市販のシクロオレフィン系樹脂フィルムを用いたこと、易接着層形成用塗布液の固形分濃度を10重量%に変更したこと、延伸温度をTg+5℃としたこと、および、塗布膜の厚みを変更して厚み332nmの易接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして易接着層付位相差フィルムを作製した。比T/T0.0083であり、厚みバラツキは0.90~1.43であった。得られた易接着層付位相差フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から明らかなように、本発明の実施例による易接着層付位相差フィルムは、製造時の破断が抑制され、かつ、位相差ムラが小さい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の実施形態による易接着層付位相差フィルムは、位相差層付偏光板などの光学部材に好適に用いられ、そのような光学部材は画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0073】
10 易接着層付位相差フィルム
11 基材フィルム
12 易接着層
図1