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特許7523221医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20240719BHJP
【FI】
A61B34/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020004709
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109050
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 史樹
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534984(JP,A)
【文献】特表2014-511111(JP,A)
【文献】特開2014-147455(JP,A)
【文献】特開2011-147455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
A61B 34/20
A61B 90/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の治療対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像と、前記治療対象領域の治療に用いる少なくとも一つの穿刺針の種類、長さを含む第1の情報と、前記少なくとも一つの穿刺針の治療可能領域を示す第2の情報と、を少なくとも用いて、前記治療対象領域の治療に関するプランニング情報を生成する第1の生成部と、
前記プランニング情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記第1の生成部は、前記治療可能領域を前記治療対象領域に重なるように設定し、前記少なくとも一つの穿刺針の配置パターンを複数取得する第1の処理と、取得された複数の前記配置パターンを対象として所定の条件に基づいて選別を行う第2の処理と、前記第2の処理によって選別された配置パターンに推奨順位をつける処理であって、焼灼対象領域の外側の焼灼領域が小さくなること、使用する穿刺針が少なくなること、治療コストが少なくなることのうちの少なくとも1つの条件に基づいて、前記配置パターンの推奨順位を決定する第3の処理と、を実行し、前記プランニング情報を生成する、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の生成部は、前記治療対象領域の治療前に撮像された前記三次元画像を用いて、前記プランニング情報を生成する請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の生成部は、前記治療対象領域の治療中に撮像された前記三次元画像と、前記治療対象領域の治療中において前記治療対象領域に既に刺入された前記少なくとも一つの穿刺針についての前記第1の情報及び前記第2の情報と、をさらに用いて、前記プランニング情報を生成する請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記第1の生成部は、取得された複数の前記配置パターンに対して、前記穿刺針の少なくとも一つの治療対象領域への刺入の実現性、前記治療対象領域の外側への影響、前記少なくとも一つの穿刺針の本数、前記治療におけるコストのうちの少なくとも一つを条件とする前記第2の処理を実行する請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
過去の治療における治療前画像及び治療後画像に基づいて、前記過去の治療において使用された前記少なくとも一つの穿刺針に関する前記第2の情報を生成する第2の生成部をさらに備えた請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記少なくとも一つの穿刺針の在庫があるか否か、及び、前記少なくとも一つの穿刺針が使用可能であるか否か、の少なくとも何れか一方を含む、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
被検体の治療対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像と、前記治療対象領域の治療に用いる少なくとも一つの穿刺針の種類、刺入経路、刺入する深さを含む第1の情報と、前記穿刺針の治療可能領域を示す第2の情報と、を少なくとも用いて、前記治療対象領域の治療に関するプランニング情報を生成する生成部と、
前記プランニング情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記生成部は、前記治療可能領域を前記治療対象領域に重なるように設定し、前記少なくとも一つの穿刺針の配置パターンを複数取得する第1の処理と、取得された複数の前記配置パターンを対象として所定の条件に基づいて選別を行う第2の処理と、前記第2の処理によって選別された配置パターンに推奨順位をつける処理であって、焼灼対象領域の外側の焼灼領域が小さくなること、使用する穿刺針が少なくなること、治療コストが少なくなることのうちの少なくとも1つの条件に基づいて、前記配置パターンの推奨順位を決定する第3の処理と、
を実行し、前記プランニング情報を生成する、
医用画像診断装置。
【請求項8】
被検体の治療対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像と、前記治療対象領域の治療に用いる少なくとも一つの穿刺針の種類、刺入経路、刺入する深さを含む第1の情報と、前記穿刺針の治療可能領域を示す第2の情報と、を少なくとも用いて、前記治療対象領域の治療に関するプランニング情報を生成する生成処理を実行し、
前記生成処理は、前記治療可能領域を前記治療対象領域に重なるように設定し、前記少なくとも一つの穿刺針の配置パターンを複数取得する第1の処理と、取得された複数の前記配置パターンを対象として所定の条件に基づいて選別を行う第2の処理と、前記第2の処理によって選別された配置パターンに推奨順位をつける処理であって、焼灼対象領域の外側の焼灼領域が小さくなること、使用する穿刺針が少なくなること、治療コストが少なくなることのうちの少なくとも1つの条件に基づいて、前記配置パターンの推奨順位を決定する第3の処理と、を実行し、前記プランニング情報を生成すること、
を備えた医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療の一つとして、医用画像診断装置によるガイド下でのラジオ焼灼(アブレーション)による治療法が普及してきている。このアブレーションは、例えばがん細胞に焼灼針(電極針、穿刺針)を刺入し、高周波を印加することでがん細胞をラジオ波により焼灼して壊死させる治療法である。また、アブレーション以外にも、マイクロウェーブによる焼灼、ニードルアイスボウルによる凍結等など、被検体に穿刺針を刺入して熱、エネルギー、波動等を供給することにより、がん細胞を壊死させるがん治療法が存在する。
【0003】
これらの穿刺針を用いた治療法では、実際の治療前のプランニングにおいて、X線コンピュータ断層撮像装置や磁気共鳴イメージング装置によって取得された三次元画像を用いて治療対象領域を特定し、治療に用いる穿刺針の種類、本数、刺入角度、刺入経路等を決定する必要がある。
【0004】
しかしながら、従来においてこれらの事項は、術者の経験や勘に委ねられている。従って、穿刺術の正確性を向上させるには限界があると言える。また、結果的にプランニングと異なる治療を行った場合、治療中において迅速に再プランニング(リカバリー)を客観的に行うための手段は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-534984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、アブレーション等の穿刺針を用いた治療において、従来に比して正確性、客観性の高いプランニング、再プランニングを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用情報処理装置は、第1の生成部と、表示制御部とを備える。前記第1の生成部は、被検体の治療対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像と、前記治療対象領域の治療に用いる穿刺針の種類、本数、刺入経路、刺入する深さを含む第1の情報と、前記穿刺針の治療可能領域を示す第2の情報と、を少なくとも用いて、前記治療対象領域の治療に関するプランニング情報を生成する。前記表示制御部は、前記プランニング情報を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る医用情報処理装置2が利用される治療システムSの構成を示した図である。
図2図2は、実施形態に係る医用情報処理装置2の構成を示した図である。
図3図3は、治療前プランニング処理における処理の流れを示したフローチャートである。
図4図4(a)、図4(b)は、ステップS2において設定された焼灼対象領域の一例を示した図である。
図5図5は、焼灼対象領域R1に対して焼灼針毎の焼灼可能領域R2、R3、R4、刺入経路L2、L3、L4が配置された三次元画像の一例を示している。
図6図6は、表示回路24に表示されるプランニング情報の一例を示した図であり、焼灼対象領域R1に対して焼灼針毎の焼灼可能領域R5、R6、刺入経路L5、L6が配置された三次元画像の一例を示している。
図7図7は、治療中プランニング処理における処理の流れを示したフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置2の構成を説明するためのブロック図である。
図9図9は、医用情報処理装置2が実行するアブレーション情報生成処理の流れを示したフローチャートである。
図10図10は、アブレーション治療前画像又はアブレーション治療後画像において設定された腫瘍領域R7の一例を示した図である。
図11図11は、ステップS23における差分領域の取得を説明するための図である。
図12図12は、ステップS23における差分領域の取得を説明するための図である。
図13図13は、ステップS23における差分領域の取得を説明するための図である。
図14図14は、ステップS24におけるアブレーション情報の生成処理を説明するための図であり、差分領域からの焼灼可能領域のサイズ算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る医用情報処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラムについて詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置2が利用される治療システムSの構成を示した図である。図1に示す様に、治療システムSは、医用画像診断装置1、医用情報処理装置2、臨床情報データベース3、治療装置4によって構成される。医用画像診断装置1、医用情報処理装置2、臨床情報データベース3は、ネットワークを介して互いに通信可能である。なお、治療装置4については、医用画像診断装置1、医用情報処理装置2、臨床情報データベース3と通信できなくても構わない。さらに、臨床情報データベース3は、必ずしも病院内に設置されている必要はなく、ネットワークを介して医用情報処理装置2と通信可能な環境であれば、どこに設置されていてもよい。
【0011】
医用画像診断装置1は、治療装置4を用いた治療において、治療に用いられる穿刺針の被検体内での位置、治療対象領域のモニタリングに用いられる画像をリアルタイムで取得するための医用画像診断装置である。医用画像診断装置1は、典型的には、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮像装置(X線CT(Computed Tomography)装置)、アンギオ-CTシステム、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置である。本実施形態においては、説明を具体的にするため、医用画像診断装置1はX線診断装置であるとする(以下、医用画像診断装置1を「X線診断装置1」と呼ぶ。)。
【0012】
医用情報処理装置2は、臨床情報データベース3から取得した画像データを用いて、治療装置4を用いた治療における治療前プランニング処理を実行する。また、医用情報処理装置2は、X線診断装置1から取得した画像データを用いて、治療装置4を用いた治療における治療中プランニング処理を実行する。なお、医用情報処理装置2が実行する治療前プランニング処理、治療中プランニング処理については、後で詳しく説明する。
【0013】
臨床情報データベース3は、電子カルテデータベース3a、画像データベース3bを含む。ここで、臨床情報とは、電子カルテに記載された情報、電子カルテに関連付された情報(例えば患者情報、過去の治療情報等)、画像データ等を意味し、患者毎に管理される。
【0014】
電子カルテデータベース3aは、電子カルテ、電子カルテに関連付された情報を患者毎に保管して管理するデータベースである。本実施形態に係る電子カルテデータベース3aは、HISとしてのデータベースを含むものである。
【0015】
画像データベース3bは、各種モダリティによって取得された画像データ、画像データに関連付された情報を患者毎に保管して管理するデータベースである。本実施形態に係る画像データベース3bは、PACS、RISとしてのデータベースを含むものである。
【0016】
治療装置4は、被検体の組織内に針を穿刺し、当該針から例えばラジオ波による焼灼(アブレーション)、マイクロウェーブによる焼灼、CRYOによる凍結治療(ニードルアイスボウル治療)、光免疫療法(近赤外線治療)等など、熱、エネルギー、波動等を供給することにより、がん細胞を壊死させる治療装置である。
【0017】
なお、本実施形態においては説明を具体的にするため、治療装置4はラジオ波による焼灼を実施するアブレーション装置であるとする(以下、治療装置4を「アブレーション装置4」とも呼ぶ)。また、本実施形態においては、被検体内において、アブレーション装置4によって焼灼対象とされる腫瘍領域、腫瘍領域の周辺にマージンとして付加され焼灼対象とされる領域(以下、「焼灼付加領域」と呼ぶ。)の双方を含む領域を、「焼灼対象領域」と呼び、焼灼対象領域の周辺に位置し焼灼を回避しなければならない領域(例えば血管等)を「焼灼回避領域」と呼ぶ。焼灼対象領域、焼灼回避領域は、複数設定される場合もある。また、焼灼対象領域、焼灼回避領域、体表から焼灼対象領域までの経路の様に、アブレーション治療前、治療中において術者が観察しなければならない領域を「観察領域」と呼ぶ。また、一つの穿刺針を用いた一回のアブレーションにより焼灼可能な領域を「焼灼可能領域」と呼ぶ。さらに、焼灼針の刺入(通過)を避けるべき領域(被検体内の骨、血管等)又は焼灼針の刺入が不可能な領域(寝台天板、既に刺入された焼灼針が存在する領域等)を「刺入回避領域」と呼ぶ。
【0018】
図2は、実施形態に係る医用情報処理装置2の構成を示した図である。
【0019】
医用情報処理装置2は、記憶回路20、処理回路21、入力回路22、通信I/F回路23、表示回路24を備える。
【0020】
記憶回路20は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。記憶回路10は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。
【0021】
記憶回路20は、処理回路21において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれるや、プログラムの実行に必要なデータや、ボリュームデータ及び医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対する表示回路24への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路22によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
【0022】
また、記憶回路20は、焼灼針情報、アブレーション情報を記憶する。ここで、「焼灼針情報」とは、各焼灼針の種別(焼灼、凍結等の用途、型番等)、長さ、価格、当該病院における在庫状況、使用可能であるか否かの状況等に関する情報であり、第1の情報の一例である。また、「アブレーション情報」とは、焼灼針毎の焼灼可能領域を含む情報であり、第2の情報の一例である。
【0023】
処理回路21は、プログラムを記憶回路20から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。処理回路21は、例えば、プランニング情報生成機能210、表示制御機能211を有する。処理回路21は、記憶回路20に格納されている各種制御プログラムを読み出してプランニング情報生成機能210、表示制御機能211を実現すると共に、記憶回路20、入力回路22、通信I/F回路23、表示回路24における処理動作を統括的に制御する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路11は、図2の処理回路21内に示された各機能を有することとなる。
【0024】
プランニング情報生成機能210は、被検体の治療対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像と、治療対象領域の治療に用いる少なくとも一つの穿刺針の種類、長さを含む第1の情報と、少なくとも一つの穿刺針の治療可能領域を示す第2の情報と、を少なくとも用いて、治療対象領域の治療に関するプランニング情報を生成する。すなわち、プランニング情報生成機能210は、臨床情報データベース3から取得した画像データと、焼灼針情報と、アブレーション情報とを用いて、アブレーション装置4を用いたアブレーション処理における治療前プランニング処理を実行する。また、プランニング情報生成機能210は、X線診断装置1から取得した画像データと、焼灼針情報と、アブレーション情報とを用いて、アブレーション装置4を用いたアブレーション処理における治療中プランニング処理を実行する。
【0025】
ここで、「治療前プランニング処理」とは、アブレーションによる治療前段階において、被検体の治療対象を含む範囲を撮像して得られた三次元画像データ(例えばCT画像データやMR画像データ)と、焼灼針情報と、アブレーション情報とを用いて、腫瘍領域、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を考慮して、アブレーションに使用する焼灼針の種類と本数、各焼灼針の刺入経路(刺入する体表位置と角度)と刺入する深さ等を計画する処理である。
【0026】
なお、この治療前プランニング処理は、例えば次のようにして実行される。すなわち、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、被検体の治療対象を含む範囲を撮像して得られたボリュームデータから抽出された腫瘍領域、及び当該腫瘍領域の周辺の各種部位に基づいて、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を設定する。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、設定された焼灼対象領域等、焼灼針情報、アブレーション情報に基づいて、プランニング情報を生成する。
【0027】
より具体的には、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、使用可能な焼灼針の全ての組合せ(単独使用も含む)を想定し、組合せ毎に、焼灼対象領域における各焼灼針の焼灼可能領域の複数の配置パターンを取得するマッチング処理を実行する。このマッチング処理においては、各焼灼可能領域が重なり合わないこと、焼灼可能領域で挟まれた領域が間接的に焼灼されること(焼灼の相乗効果)等が考慮される。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、マッチング処理によって得られた焼灼針の組合せ毎の複数の配置パターンの中から、条件を用いたフィルタリング処理(条件フィルタリング処理)を実行し配置パターンを選別する。条件フィルタリングに用いる条件としては、各焼灼針の長さに基づいて各焼灼針が焼灼対象領域に到達可能であること、刺入経路に刺入回避領域が存在しないこと、焼灼回避領域にもアブレーションの影響がないこと、焼灼対象領域の外側の焼灼領域がなるべく小さくなること等を設定することができる。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、条件フィルタリング処理により選別された配置パターン毎に、焼灼対象領域、焼灼可能領域、刺入経路等が三次元画像上にマッピングされたプランニング情報を生成する。なお、マッチング処理は第1の処理の一例であり、条件フィルタリングは第2の処理の一例である。
【0028】
また、「治療中プランニング処理」とは、アブレーションによる治療中において、被検体の治療対象を含む範囲を撮像して得られたボリュームデータと、焼灼針情報と、アブレーション情報とを用いて、既に刺入された少なくとも一本の焼灼針の焼灼可能領域、腫瘍領域、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を考慮して、これから刺入する焼灼針の種類と本数、各焼灼針の刺入経路と刺入する深さ等をリアルタイムで再計画する処理である。
【0029】
なお、この治療中プランニング処理は、例えば次のようにして実行される。すなわち、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、被検体の治療対象を含む範囲を撮像して得られたボリュームデータに設定された焼灼対象領域から焼灼可能領域を除いた領域(残余領域)と、刺入経路、焼灼回避領域、焼灼針に関する情報、アブレーション情報(焼灼可能領域)を用いて、プランニング情報を生成する。
【0030】
より具体的には、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、使用可能な焼灼針の全ての組合せ(単独使用も含む)を想定し、組合せ毎に、残余領域における各焼灼針の焼灼可能領域の複数の配置パターンを取得するマッチング処理を実行する。この配置パターンのマッチング処理においては、治療前プランニング処理と同じく、各焼灼可能領域が重なり合わないこと、焼灼可能領域で挟まれた領域が間接的に焼灼されること(焼灼の相乗効果)等が考慮される。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、マッチング処理によって得られた焼灼針の組合せ毎の複数の配置パターンの中から、条件フィルタリング処理を実行し配置パターンを選別する。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、条件フィルタリング処理により選別された配置パターン毎に、焼灼対象領域、焼灼可能領域、刺入経路等が三次元画像上にマッピングされたプランニング情報を生成する。
【0031】
なお、治療前及び治療中プランニング処理においては、必要に応じて、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、条件フィルタリングの条件として、使用する焼灼針がより少なくなること、治療コストがなるべく少なくなること(例えば、使用する焼灼針の費用が最も低くなること)等をさらに設定することも可能である。
【0032】
表示制御機能211は、治療前プランニング処理、治療中プランニング処理において生成されたプランニング情報を表示回路24に表示させる。
【0033】
なお、図2においては単一のプロセッサである処理回路21にてプランニング情報生成機能210、表示制御機能211にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、図2においては単一の記憶回路20が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路20を分散して配置して、処理回路11は個別の記憶回路20から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0034】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路10に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路10にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0035】
入力回路22は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイス(マウス等)やキーボード等の入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路22に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路22はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路21に出力する。なお、医用情報処理装置2は、入力デバイスが表示回路24と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0036】
入力回路22は、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。
【0037】
なお、入力回路22は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力回路22の例に含まれる。
【0038】
通信I/F(interface)回路23は、所定の通信規格にしたがって、外部装置との通信動作を行う。医用情報処理装置2がネットワーク上に設けられる場合、通信I/F回路23は、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を行なう。
【0039】
表示回路24は、画像を表示するディスプレイであり、LCD(Liquid Crystal Display等によって構成される。表示回路24は、処理回路21からの指示に応じてLCD上に、各種操作画面や、画像データ、プランニング情報等の各種表示情報を表示させる。
【0040】
(プランニング処理)
次に、本実施形態に係る医用情報処理装置2によって実行される、治療前プランニング処理について説明する。
【0041】
図3は、治療前プランニング処理における処理の流れを示したフローチャートである。図3に示した様に、まず、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、画像データベース3bから、当該患者の治療対象部位に関する治療前の三次元画像データ(例えばCT画像データ)を取得する(ステップS1)。
【0042】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、記憶回路20からアブレーション情報、焼灼針情報を取得する(ステップS2)。
【0043】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、腫瘍領域、焼灼付加領域、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を設定する(ステップS3)。
【0044】
すなわち、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、取得した三次元画像データから腫瘍領域を抽出し設定する。この腫瘍領域の抽出は、例えばセグメンテーション処理(領域分割処理)、解剖学的情報を利用した既存の領域抽出処理を用いることができる。また、ユーザによる入力回路22からの入力に従って、マニュアル的又は半マニュアル的に腫瘍領域を抽出するようにしてもよい。
【0045】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、抽出された腫瘍領域に基づいて焼灼付加領域を設定し、腫瘍領域と焼灼付加領域を含む領域を焼灼対象領域として設定する。なお、焼灼付加領域は、抽出された腫瘍領域の輪郭に沿って自動的に設定するようにしても良いし、ユーザによる入力回路22からの入力に従って、マニュアル的又は半マニュアル的に腫瘍領域を抽出するようにしてもよい。
【0046】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼回避領域、刺入回避領域を抽出し設定する。この焼灼回避領域、刺入回避領域の抽出についても、例えばセグメンテーション処理(領域分割処理)、解剖学的情報を利用した既存の領域抽出処理を用いることができる。また、ユーザによる入力回路22からの入力に従って、マニュアル的又は半マニュアル的に焼灼回避領域、刺入回避領域を抽出するようにしてもよい。
【0047】
図4(a)は、焼灼対象領域R1が設定されたMPR画像(アキシャル画像)を示している。図4(b)は、焼灼対象領域R1が設定された三次元画像(ボリュームレンダリング画像)を示している。図4(a)、図4(b)に示した様に、画像データ上において、焼灼対象領域R1、骨等の刺入回避領域等が設定される。
【0048】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼針の組合せ毎に、焼灼対象領域内に各焼灼針の焼灼可能領域を配置するマッチング処理を実行する(ステップS4)。
【0049】
図5(a)は、焼灼対象領域R1に対して焼灼針毎の焼灼可能領域R2、R3、R4、刺入経路L2、L3、L4が設定されたMPR画像(アキシャル画像)の一例を示している。図5(b)は、焼灼対象領域R1に対して焼灼針毎の焼灼可能領域R2、R3、R4、刺入経路L2、L3、L4が設定された三次元画像を示している。図5(a)、図5(b)に示した様に、ステップS4のマッチング処理により、焼灼対象領域に対して焼灼針毎の焼灼可能領域が設定されることで、焼灼針の組合せ毎の配置パターンが決定される。
【0050】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、マッチング処理によって取得された複数の配置パターンに対して、条件フィルタリングによる選別を実行する(ステップS5)。
【0051】
すなわち、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼針情報に基づいて種別が焼灼でない穿刺針を用いる配置パターンを判定し、これを排除する。
【0052】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼針情報に基づいて在庫のない焼灼針、使用可能でない焼灼針を用いる配置パターンを判定し、これを排除する。
【0053】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、予め入力された被検体の治療中の体位に基づいて、焼灼針の視点の延長線上に寝台天板がある配置パターンについては、焼灼針の刺入が困難であるためこれを排除する。
【0054】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼針の長さと刺入経路の関係から、例えば焼灼針の長さが足りない配置パターンについては、実現不可能であるためこれを排除する。
【0055】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、刺入経路上に刺入回避領域が存在する配置パターンについては、実現不可能であるためこれを排除する。
【0056】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼回避領域に焼灼の影響を及ぼす可能性がある配置パターンについては、被検体へ影響を及ぼすためこれを排除する。
【0057】
また、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、焼灼対象領域の外側の焼灼領域がなるべく小さくなることを条件として、配置パターンを順序付ける。
【0058】
さらに、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、必要に応じて、使用する焼灼針がなるべく少なくなる、治療コストがなるべく少なくなるといった条件により、選別された配置パターンの推奨順位を決定することも可能である。選別された配置パターンの推奨順位の決定は、第3の処理の一例である。
【0059】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、ステップS5の条件フィルタリング処理によって選別された配置パターン毎に、焼灼対象領域、焼灼可能領域、刺入経路等が三次元画像上にマッピングされたプランニング情報を生成する(ステップS6)。
【0060】
次に、処理回路21は、表示制御機能211により、生成されたプランニング情報を表示回路24に表示する(ステップS7)。
【0061】
図6は、表示回路24に表示されるプランニング情報の一例を示した図であり、焼灼対象領域R1に対して焼灼針毎の焼灼可能領域R5、R6、刺入経路L5、L6が配置された三次元画像の一例を示している。ユーザは、図6に示したプランニング情報を観察することにより、治療前において、焼灼対象領域、使用する焼灼針の種類、本数、それぞれの刺入経路、刺入する深さを、周囲の臓器等との位置関係を含めて視覚的に確認し、治療についての具体的な計画を客観的に行うことができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る医用情報処理装置2によって実行される、治療中プランニング処理について説明する。
【0063】
図7は、治療中プランニング処理における処理の流れを示したフローチャートである。図7図3と比較した場合、ステップS11、ステップS13の処理が異なる。また、以下の説明においては、既に少なくとも一本の焼灼針が刺入されている場合を想定する。
図7に示した様に、まず、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、X線診断装置1から、当該患者の治療対象部位に関する治療中の三次元画像データをリアルタイムで取得する(ステップS11)。
【0064】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、記憶回路20からアブレーション情報、焼灼針情報を取得する(ステップS12)。
【0065】
次に、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、腫瘍領域、焼灼付加領域、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域、既に刺入された少なくとも一本の焼灼針の焼灼可能領域を設定する(ステップS12)。
【0066】
すなわち、処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、ステップS2において説明した腫瘍領域等の設定に加えて、既に刺入された少なくとも一本の焼灼針の焼灼可能領域を設定する(ステップS13)。この焼灼可能領域の設定は、三次元画像データ中の実際の焼灼針の位置とアブレーション情報に基づいて実行される。
【0067】
以降、ステップS14~ステップS17の各処理が実行されるが、それぞれステップS4~ステップS7の各処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0068】
ユーザは、表示回路24に表示されたプランニング情報を観察することにより、既に刺入された少なくとも一本の焼灼針の焼灼可能領域を前提として、これから刺入する焼灼針の配置パターンを、周囲の臓器等との位置関係を含めて視覚的に確認することができる。実際の治療においては、例えば焼灼針の撓みや被検体の個体差により、焼灼針を治療前のプランニングの通りに刺入できない状況が多い。この様な状況においても、治療中プランニング処理を実行することで、治療についての具体的な計画を、臨機応変且つ客観的に行うことができる。
【0069】
以上説明した様に、本実施形態に係る医用情報処理装置2は、第1の生成部としてのプランニング情報生成機能210と、表示制御部としての表示制御機能211とを備える。処理回路21は、プランニング情報生成機能210により、被検体の焼灼対象領域を含む領域を撮像して取得された三次元画像データと、焼灼対象領域の焼灼に用いる少なくとも一つの焼灼針の種類、刺入経路、刺入する深さを含む第1の情報としての焼灼針情報と、少なくとも一つの焼灼針の焼灼可能範囲を示す第2の情報としてのアブレーション情報と、を少なくとも用いて、焼灼対象領域の焼灼に関するプランニング情報を生成する。処理回路21は、表示制御機能211により、プランニング情報を表示回路24に表示させる。
【0070】
例えば、治療前プランニングにおいては、事前に焼灼対象領域を含む範囲を撮像して得られた三次元画像データを用いて、腫瘍領域、焼灼対象領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を考慮して、アブレーションに使用する焼灼針の種類と本数、各焼灼針の刺入経路と刺入する深さ等を含むプランニング情報を生成し表示することができる。従って、ユーザは、表示されたプランニング情報を観察することにより、具体的且つ客観的な治療前プランニングを行うことができる。
【0071】
また、治療中プランニング処理においては、アブレーションによる治療中において、焼灼対象領域を含む範囲を撮像して得られた三次元画像データを用いて、既に刺入された少なくとも一本の焼灼針の焼灼可能領域、腫瘍領域、焼灼対象領域、残余領域、焼灼回避領域、刺入回避領域を考慮して、これから刺入する焼灼針の種類と本数、各焼灼針の刺入経路と刺入する深さ等を含むプランニング情報をリアルタイムで生成し表示することができる。従って、ユーザは、リアルタイムで表示されたプランニング情報を観察することにより、具体的且つ客観的な治療中プランニングを行うことができる。
【0072】
その結果、アブレーション治療において、術者の経験や勘に依存せずに、正確性、客観性の高い治療前のプランニング、及び治療中の再プランニングを実現することができる。
【0073】
また、プランニング情報を生成する際、例えば患者負担を考慮して、焼灼針の数が最も少なくなるプランニング、コストが最も低くなるプランニング等、プランニングのフィルタリング条件を設定することができる。従って、ユーザは、複数のプランニング候補の中から所望の条件に沿ったプランニングを選択することができる。
【0074】
(変形例1)
上記実施形態においては、焼灼針情報に基づいて使用可能な焼灼針、在庫のある焼灼針を判定する場合を例示した。これに対し、焼灼、凍結等の種別や使用を希望する焼灼針を例えばGUIによってユーザに入力させ、入力された内容に沿う焼灼針に関する焼灼針情報を用いて、プランニング情報の生成処理を行うようにしてもよい。
【0075】
(変形例2)
上記実施形態においては、医用画像診断装置としてのX線診断装置1と医用情報処理装置2とが別体である場合を例として説明した。これに対し、X線診断装置1と医用情報処理装置2とを一体とする構成であっても良い。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置2について説明する。第2の実施形態に係る医用情報処理装置2は、臨床情報データベース3から取得した画像データ、電子カルテデータを用いて、実際の臨床例に基づくアブレーション情報を生成するものである。
【0077】
図8は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置2の構成を説明するためのブロック図である。図8に示した様に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置2の処理回路21は、アブレーション情報生成機能212をさらに備えている。なお、処理回路21は、記憶回路20に格納されている各種制御プログラムを読み出してアブレーション情報生成機能212を実現する。
【0078】
処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、電子カルテデータベース3aにアクセスし、過去のアブレーション治療に関するデータ(例えば、患者情報、焼灼部位、焼灼針情報等)を取得する。処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、画像データベース3bにアクセスし、過去のアブレーション治療前に取得された画像(アブレーション治療前画像)と治療後に取得された画像(アブレーション治療後画像)を取得する。なお、本実施形態において、アブレーション治療後画像とは、アブレーション治療中において部分的にアブレーション処理が完了した状態で取得された画像も含むものとする。
【0079】
また、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、取得したアブレーション治療前画像とアブレーション治療後画像とを用いて差分画像を生成し、当該差分画像に基づいてアブレーション処理に使用した焼灼針の焼灼可能領域を計算する。処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、焼灼可能領域及び焼灼部位の組合せを含むアブレーション情報を生成し記憶回路20内のデータベースに登録する。
【0080】
図9は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置2が実行するアブレーション情報生成処理の流れを示したフローチャートである。図9に示す様に、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、電子カルテデータベース3a、画像データベース3bにアクセスし、過去のアブレーション治療に関する情報(例えば、患者情報、焼灼部位、焼灼針情報、アブレーション治療前画像、アブレーション治療後画像等)を取得する(ステップS21)。
【0081】
次に、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、アブレーション治療前画像から腫瘍領域を、アブレーション治療後画像から腫瘍領域及び焼灼済領域を、それぞれ抽出する(ステップS22)。その結果、アブレーション治療前画像、アブレーション治療後画像のそれぞれにおいて、例えば図10に示す様な腫瘍領域R7が抽出され設定される。
【0082】
次に、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、アブレーション治療前画像とアブレーション治療後画像とを用いて差分領域を取得する(ステップS23)。
【0083】
図11図12図13は、ステップS23における差分領域の取得を説明するための図である。図11に示す様に、アブレーション治療前画像において腫瘍領域R7が抽出される。また、図12に示す様に、アブレーション治療後画像において腫瘍領域R8、焼灼済領域R9が抽出される。処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、図11に示したアブレーション治療前画像と図12に示したアブレーション治療後画像とから、図13に示す差分画像を生成し、当該差分画像を用いて差分領域を取得する。
【0084】
次に、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、取得された差分領域からアブレーション情報を生成する(ステップS24)。すなわち、処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、差分領域に基づいてアブレーション処理に使用した焼灼針の焼灼可能領域を計算する。処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、計算された焼灼可能領域と用いて当該焼灼針についてのアブレーション情報を生成する。なお、アブレーション情報には、組織の温度感受性に関する情報として、焼灼された部位(臓器)に関する情報を含めることもできる。
【0085】
図14は、ステップS24におけるアブレーション情報の生成処理を説明するための図であり、差分領域からの焼灼可能領域のサイズ算出を説明するための図である。図14に示す様に、差分領域を内包する最小の体積の楕円球を焼灼可能領域として、長軸径X、短軸径Y、高さZの組み合わせ(X,Y,Z)を算出することができる。
【0086】
処理回路21は、アブレーション情報生成機能212により、過去のアブレーション治療に関する情報から焼灼針情報を取得し(ステップS25)、生成されたアブレーション情報を焼灼針情報と関連付けて記憶回路20内のデータベースに登録する。
【0087】
以上説明した様に、本実施形態に係る医用情報処理装置2は、過去のアブレーション治療前に取得された画像と治療後に取得された画像とから、当該治療に使用した焼灼針、治療部位に関するアブレーション情報を生成し焼灼針情報と関連付けてデータベースに登録する。
【0088】
この様に生成されたアブレーション情報は、実測に基づく精度の高い情報と言える。登録されたアブレーション情報は、プランニングにおいて利用することができる。従って、実測に基づくより正確な焼灼可能領域を用いてプランニング情報を生成することができる。その結果、アブレーション等の穿刺針を用いた治療において、従来に比して正確性、客観性の高いプランニング、再プランニングを実現することができる。
【0089】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、アブレーション等の穿刺針を用いた治療において、従来に比して正確性、客観性の高いプランニング、再プランニングを実現することができる。
【0090】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 医用画像診断装置(X線診断装置)
2 医用情報処理装置
3 臨床情報データベース
3a 電子カルテデータベース
3b 画像データベース
4 治療装置
20 記憶回路
21 処理回路
22 入力回路
23 通信I/F回路
24 表示回路
210 プランニング情報生成機能
211 表示制御機能
212 アブレーション情報生成機能
S 治療システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14