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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】圧力調整装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20240719BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F04B45/04 F
F04B45/047 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020043931
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143647
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】マブチモーターオーケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】深美 正
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031956(JP,A)
【文献】特開2004-181073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状のポンプ部を有するダイヤフラムと、
前記ポンプ部が壁の一部となるように形成されたポンプ室と、
前記ポンプ部の底に接続され、回転を往復運動に変換して前記ポンプ室の容積を増減させる駆動装置と、
前記駆動装置に回転力を加えるモータと、
前記モータの動作を制御する制御装置と、
一端が前記ポンプ室に接続されかつ他端がポンプ外側の流体入口に接続された吸入通路と、
前記ポンプ室の容積が増える行程で流体が前記流体入口から前記ポンプ室に向けて流れるように前記吸入通路を開閉する吸入弁と、
一端が前記ポンプ室に接続されかつ他端がポンプ外側の流体吐出口に接続された吐出通路と、
前記ポンプ室の容積が減少する行程で流体が前記ポンプ室から前記流体吐出口に向けて流れるように前記吐出通路を開閉する吐出弁と、
前記吐出弁の流体出口と前記流体吐出口との間の前記吐出通路に一端が接続されかつ他端がポンプ外側の第1の排出口に接続された第1の排出通路と、
前記吐出通路における前記吐出弁の前記流体出口より上流側の圧力が前記第1の排出通路の圧力より高い場合に前記第1の排出通路を閉じ、かつ前記吐出通路における前記吐出弁の前記流体出口より上流側の圧力が前記第1の排出通路の圧力以下である場合に前記第1の排出通路を開く差圧弁とを備え、
さらに、
前記吐出弁の前記流体出口と前記流体吐出口との間の前記吐出通路に一端が接続されかつ他端がポンプ外側の第2の排出口に接続された第2の排出通路を備え、
前記流体吐出口には圧力が調整される加圧対象物が接続され、
前記制御装置は、前記モータが回転している状態で前記流体吐出口から吐出される流体の吐出圧力が低下して前記加圧対象物の圧力調整に適したパターンで変化するように、前記モータの回転数を制御することを特徴とする圧力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムポンプから吐出される流体の圧力を調整することが可能な圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を媒体として被加圧物を加圧したり、被加圧物の圧力を低下させる圧力調整装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、電子血圧計のカフに空気を供給するものがある。特許文献1に開示された圧力調整装置は、電子血圧計のカフに空気を供給するポンプと、カフに溜められた空気を血圧測定中に定速で徐々に排気する微速排気弁とを備えている。
【0003】
電子血圧計のカフに空気を供給できるポンプとしては、例えば特許文献2に記載されているようなダイヤフラムポンプがある。特許文献2に開示されているダイヤフラムポンプは、モータの回転を往復運動に変換してダイヤフラムのポンプ部に伝達し、ポンプ部が拡張する行程でポンプ部内に吸入された空気をポンプ部が収縮する行程で吐出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-70969号公報
【文献】特開2018-112127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている圧力調整装置では、圧力を調整するために微速排気弁を使用しているから、部品数が多くなって製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、排出系に微速排気弁を用いることなく圧力を調整可能な圧力調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る圧力調整装置は、カップ状のポンプ部を有するダイヤフラムと、前記ポンプ部が壁の一部となるように形成されたポンプ室と、前記ポンプ部の底に接続され、回転を往復運動に変換して前記ポンプ室の容積を増減させる駆動装置と、前記駆動装置に回転力を加えるモータと、前記モータの動作を制御する制御装置と、一端が前記ポンプ室に接続されかつ他端がポンプ外側の流体入口に接続された吸入通路と、前記ポンプ室の容積が増える行程で流体が前記流体入口から前記ポンプ室に向けて流れるように前記吸入通路を開閉する吸入弁と、一端が前記ポンプ室に接続されかつ他端がポンプ外側の流体吐出口に接続された吐出通路と、前記ポンプ室の容積が減少する行程で流体が前記ポンプ室から前記流体吐出口に向けて流れるように前記吐出通路を開閉する吐出弁と、前記吐出弁の流体出口と前記流体吐出口との間の前記吐出通路に一端が接続されかつ他端がポンプ外側の第1の排出口に接続された第1の排出通路と、前記吐出通路における前記吐出弁の前記流体出口より上流側の圧力が前記第1の排出通路の圧力より高い場合に前記第1の排出通路を閉じ、かつ前記吐出通路における前記吐出弁の前記流体出口より上流側の圧力が前記第1の排出通路の圧力以下である場合に前記第1の排出通路を開く差圧弁とを備え、前記制御装置は、前記モータの回転数を制御することによって前記流体吐出口から吐出される流体の圧力を調整するように構成されているものである。
【0008】
本発明は、前記圧力調整装置において、さらに、前記吐出弁の前記流体出口と前記流体吐出口との間の前記吐出通路に一端が接続されかつ他端がポンプ外側の第2の排出口に接続された第2の排出通路を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動装置の回転数を変えることによって、吐出通路に微速排気弁を用いることなく吐出通路の圧力を調整することができる。したがって、排気系に微速排気弁を用いることなく圧力を調整可能としてコストダウンが図られた圧力調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る圧力調整装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、ダイヤフラムポンプの断面図である。
図3図3は、差圧弁の動作を説明するための断面図である。
図4図4は、差圧弁の動作を説明するための断面図である。
図5図5は、モータの回転数とダイヤフラムポンプの吐出圧力との関係を示すグラフである。
図6図6は、吐出圧力の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る圧力調整装置の一実施の形態を図1図6を参照して詳細に説明する。
図1に示す圧力調整装置1は、例えば電子血圧計(図示せず)のカフAに空気を供給する装置として使用することができるものである。この圧力調整装置1は、ポンプ駆動用モータ2と、このポンプ駆動用モータ2の動作を制御する制御装置3と、制御装置3に接続された操作スイッチ4および圧力センサ5などを備えている。
【0012】
ポンプ駆動用モータ2は、制御装置3のポンプ制御部6から電力が供給されることにより回転し、後述するダイヤフラムポンプ11を駆動する。このダイヤフラムポンプ11は、詳細は後述するが、ポンプ駆動用モータ2によって駆動されることにより空気を電子血圧計のカフAに供給する。圧力センサ5は、ダイヤフラムポンプ11とカフAとの間の空気通路Bの圧力を検出し、制御装置3に信号として送る。
【0013】
制御装置3のポンプ制御部6は、圧力センサ5によって検出された圧力に基づいてポンプ駆動用モータ2の回転数を制御する。制御装置3の動作は後述する。
操作スイッチ4は、人為的に操作されるスイッチで、制御装置3のON、OFFを切り替えるためのものである。
ダイヤフラムポンプ11は、図2に示すように、図2において最も下に位置するポンプ駆動用モータ2に取付けられており、ポンプ駆動用モータ2に固定された駆動部12と、この駆動部12に取付けられた弁部13とを備えている。
【0014】
<駆動部の構成>
駆動部12は、ポンプ駆動用モータ2に固定された駆動部用ハウジング14と、このハウジング14の中に収容された駆動機構15とによって構成されている。
ハウジング14は、有底円筒状に形成されてポンプ駆動用モータ2に図示していない固定用ボルトによって固定されている。
駆動機構15は、ポンプ駆動用モータ2の回転軸16に取付けられたクランク体17と、このクランク体17に連結された駆動体18などを備えている。
【0015】
駆動体18は、クランク体17に一端部が係合した軸部18aと、この軸部18aの中間部分から径方向の外側に突出する複数の腕部18bとによって構成されている。軸部18aは、回転軸16に対して所定の方向に傾斜している。軸部18aの一端部は、クランク体17とともに回転軸16を中心にして回ることができるように、クランク体17に回転自在かつ揺動自在に係合している。軸部18aの他端部は、ハウジング14の開口部に取付けられたダイヤフラムホルダー21に揺動自在に支持されている。
腕部18bは、後述するダイヤフラム31のポンプ部32毎に設けられており、軸部18aから放射状に径方向の外側へ延びている。腕部18bは、図2においては1つのみが描かれているが、実際には複数のポンプ部32と同数だけ設けられている。
【0016】
腕部18bには貫通穴22が穿設されている。この貫通穴22には、ダイヤフラム31の連結片33が係入されている。連結片33は、腕部18bを貫通した状態で腕部18bに固定されている。
この駆動機構15によれば、ポンプ駆動用モータ2の回転軸16から回転力が加えられてクランク体17が回転することにより、駆動体18が揺動し、ダイヤフラム31のポンプ部32が収縮と拡張とを繰り返す。すなわち、駆動機構15は、クランク体17の回転を往復運動に変換し、ポンプ部32内のポンプ室34の容積を増減させる。この実施の形態においては、駆動機構15が本発明でいう「駆動装置」に相当する。
【0017】
<弁部の構成>
弁部13は、駆動体18に接続されたダイヤフラム31と、駆動部用ハウジング14の開口部分に取付けられたダイヤフラムホルダー21と、このダイヤフラムホルダー21と協働してダイヤフラム31を挟持するダイヤフラムハウジング35と、このダイヤフラムハウジング35に隔壁36を介して取付けられたカバー37などを備えている。ダイヤフラムホルダー21と、ダイヤフラムハウジング35と、隔壁36およびカバー37は、モータ2の軸線方向から見て円形に形成されている。
【0018】
<ダイヤフラムホルダーの説明>
ダイヤフラムホルダー21は、駆動部用ハウジング14に接続可能な円筒状に形成されている。ダイヤフラムホルダー21には、後述するダイヤフラム31のポンプ部32が挿入されるポンプ部32毎のシリンダ孔38と、ダイヤフラム31に向けて開口する凹部39とが設けられている。
【0019】
<ダイヤフラムの説明>
ダイヤフラム31は、ダイヤフラムハウジング35に向けて開口するカップ状のポンプ部32と、ポンプ部32の開口部分からポンプ部32の内側に突出する板状の吸入弁41と、ダイヤフラムホルダー21の凹部39に挿入された円筒状の筒状弁体42とを有している。これらのポンプ部32、吸入弁41および筒状弁体42は、円筒状を呈するダイヤフラムホルダー21の周方向において、ダイヤフラム31を複数に分割する位置にそれぞれ設けられている。ポンプ部32は、ダイヤフラムホルダー21に形成されたシリンダ孔38の中に挿入されている。
【0020】
ポンプ部32の開口部分は、ダイヤフラムハウジング35によって閉塞されている。このポンプ部32とダイヤフラムハウジング35との間にポンプ部32を壁の一部とするポンプ室34が形成されている。
カップ状を呈するポンプ部32の底にはピストン43が設けられているとともに、ポンプ室34とは反対方向に向けて突出する連結片33が設けられている。この連結片33は、上述したように駆動機構15の駆動体18に連結されている。このため、駆動体18が揺動することにより、ポンプ部32の底(ピストン43)がダイヤフラムハウジング35に対して接離し、ポンプ室34の容積が増減する。
【0021】
吸入弁41は、ダイヤフラムハウジング35に形成された吸入通路44を開閉するものである。吸入通路44は、ダイヤフラムハウジング35における、ダイヤフラム31およびダイヤフラムホルダー21との合わせ面に形成された第1の溝45によって構成されている。吸入通路44の一端は、吸入弁41を介してポンプ室34に接続され、他端は、ダイヤフラムハウジング35のポンプ外側の外面に開口する流体入口46に接続されている。
【0022】
吸入弁41は、ダイヤフラム31のポンプ部32が拡張する行程で大気が流体入口46からポンプ部32内に向けて流れるように吸入通路44を開閉する。
筒状弁体42は、ダイヤフラムハウジング35の円柱47と協働して第1の逆止弁48を構成している。円柱47は、第1の逆止弁48の弁座を構成している。筒状弁体42は、円柱47の外周面を覆う円筒状に形成されている。第1の逆止弁48は、ダイヤフラムハウジング35における、ダイヤフラム31との合わせ面に形成された第2の溝49と、ダイヤフラムホルダー21の凹部39との間に設けられており、第2の溝49から凹部39に向けて空気が流れるように構成されている。
【0023】
凹部39内は、ダイヤフラムホルダー21とダイヤフラム31との間に形成された上流側空間50と、ダイヤフラム31に形成された第1の貫通孔51と、ダイヤフラムハウジング35に形成された第2の貫通孔52とを介して後述する入力側空間53に接続されている。入力側空間53は、ダイヤフラムハウジング35と後述する隔壁36との間に形成されており、第2の溝49から第2の貫通孔52に至る一連の空間を介してポンプ室34に連通されている。また、入力側空間53は、複数あるポンプ室34のそれぞれに連通されている。
【0024】
<ダイヤフラムハウジングの説明>
ダイヤフラムハウジング35は、板状に形成され、ポンプ部32の開口部分を覆うようにダイヤフラム31に重ねられ、ポンプ部32と協働してポンプ室34を形成している。
【0025】
<隔壁の説明>
隔壁36は、合成ゴムを含むゴム材料などの弾性材によって板状に形成され、ダイヤフラムハウジング35とカバー37とに挟まれて保持されている。また、隔壁36は、ダイヤフラムハウジング35とカバー37との間を仕切っている。隔壁36とダイヤフラムハウジング35との間には上述した入力側空間53が形成され、隔壁36とカバー37との間には出力側空間54が形成されている。
【0026】
出力側空間54は、入力側空間53とは隔壁36によって仕切られている。この出力側空間54は、カバー37の中央部に突設された吐出パイプ61の中の出口通路62と、カバー37の一側部(図2においては左側部)に設けられている第1の排出通路63と、カバー37の中央部内側に形成された凹部64に開口する第2の排出通路65とに接続されている。カバー37には、出力側空間54と隣り合うように第3の排出通路66が形成されている。
【0027】
吐出パイプ61の中の出口通路62は、カバー37の凹部64の内部と、ポンプ外側となる吐出パイプ61の流体吐出口62aとを連通している。吐出パイプ61は、空気通路Bを構成する空気用ホース(図示せず)を介して例えば電子血圧計のカフAに接続される。
第1の排出通路63の一端は、出力側空間54に接続され、他端は、ポンプ外側となるカバー37の外面に開口する第1の排出口63aに接続されている。
第2の排出通路65の一端は、カバー37の凹部64内(出力側空間54)に接続され、他端は、ポンプ外側となるカバー37の外面に開口する第2の排出口65aに接続されている。第2の排出口65aの穴径は、第1の排出口63aの穴径より小さい。
第3の排出通路66の一端は、カバー37における隔壁36との合わせ面に開口し、他端は、ポンプ外側となるカバー37の外面に開口する第3の排出口66aに接続されている。
【0028】
隔壁36には、カバー37の凹部64内に向けて突出する筒状弁体71が設けられている。この筒状弁体71は、ダイヤフラムハウジング35の円柱72と協働して第2の逆止弁73を構成している。
第2の逆止弁73は、入力側空間53の空気をカバー37の凹部64の中(出力側空間54)に流すように構成されている。円柱72は、第2の逆止弁73の弁座を構成している。筒状弁体71は、円柱72の外周面を覆う円筒状に形成されている。
【0029】
筒状弁体71の突出端は、円柱72の外周面に周方向の全域にわたって密着している。筒状弁体71の基端部は、円柱72より径が大きくなるように形成されている。この筒状弁体71の基端部と円柱72との間の空間は、入力側空間53の一部であって、このダイヤフラムポンプ11の吐出通路74の一部を構成している。
吐出通路74は、ポンプ室34と吐出パイプ61の流体吐出口62aとを連通する通路である。この実施の形態による吐出通路74は、ポンプ室34に一端が開口する第2の溝49と、ダイヤフラムホルダー21の凹部39内の空間と、上流側空間50と、第1および第2の貫通孔51,52と、入力側空間53と、カバー37の凹部64内の空間と、吐出パイプ61の中の出口通路62などによって構成されている。この吐出通路74には、上述した第1の逆止弁48と第2の逆止弁73とが設けられており、ポンプ室34から出口通路62に向けて空気が流れる。上述した圧力センサ5は、吐出通路74とカフAとの間の空気通路Bの圧力を検出する。
【0030】
隔壁36には、後述する差圧弁81の弁体82と、ダイヤフラムハウジング35の柱状突起83が通される第3の貫通孔84とが設けられている。第3の貫通孔84は、第3の排出通路66に接続されている。
差圧弁81は、弁体82と、第1の排出通路63が開口する弁座85とによって構成されており、弁体82が入力側空間53と出力側空間54との圧力差で移動することにより、第1の排出通路63を開閉する。弁体82は、入力側空間53の圧力が出力側空間54の圧力以下である場合は図2に示すようにダイヤフラムハウジング35に接触するように構成されている。
【0031】
また、弁体82は、入力側空間53の圧力が出力側空間54の圧力より高くなって圧力差が所定の値を上回ることによって、ダイヤフラムハウジング35から離れてカバー37の弁座85に着座する。弁体82が弁座85に着座することにより第1の排出通路63が閉じられる。
この実施の形態においては、この差圧弁81と、上述した第1および第2の逆止弁48,73とによって、このダイヤフラムポンプ11の吐出弁91が構成されている。吐出弁91は、ポンプ室34の容積が減少する行程で空気がポンプ室34から流体吐出口62aに向けて流れるように吐出通路74を開閉する。
【0032】
吐出弁91の流体出口91aと吐出パイプ61の流体吐出口62aとの間の吐出通路74には、出力側空間54を介して第1の排出通路63の一端が接続されているとともに、第2の排出通路65の一端が接続されている。吐出弁91の流体出口91aより下流側の圧力は出力側空間54の圧力と略一致し、流体出口91aより上流側の圧力は入力側空間53の圧力と略一致する。
隔壁36の第3の貫通孔84に挿入された柱状突起83は、第3の貫通孔84の孔壁面とは微小な隙間を隔てて離間するように形成されている。このため、入力側空間53は、柱状突起83と第3の貫通孔84との間の微小な隙間と、カバー37の第3の排出通路66とを介して大気中に開放されている。
【0033】
<動作の説明>
このように構成されたダイヤフラムポンプ11において、ダイヤフラム31のポンプ部32が拡張してポンプ室34の容積が増える場合は、吸入弁41が開いて大気が吸入通路44を通ってポンプ室34に吸い込まれる。
一方、ダイヤフラム31のポンプ部32が収縮してポンプ室34の容積が減少する場合は、ポンプ室34内の空気が第2の溝49と、第1の逆止弁48と、凹部39と、上流側空間50と、第1および第2の貫通孔51,52とを通って入力側空間53に送られる。すなわち、ポンプ室34の容積が減少することによって入力側空間53が加圧され、入力側空間53と出力側空間54とに圧力差が生じる。この圧力差が所定の値を上回ることにより差圧弁81が動作する。ここで、差圧弁81の動作を図3および図4を参照して詳細に説明する。
【0034】
図3および図4は差圧弁の動作を説明するための断面図である。これらの図において、図2によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図3に示すように、入力側空間53の圧力Pinが出力側空間54の圧力Poutより所定の圧力差をもって高くなると、差圧弁81の弁体82が弁座85に着座して第1の排出通路63を閉じる。そして、図3中に矢印で示すように、第2の逆止弁73を通過した空気の大部分が流体吐出口62aから吐出されるとともに、第2の逆止弁73を通過した空気の一部が第2の排出口65aから大気中に排出される。吐出パイプ61に空気用ホースが接続されている場合は、流体吐出口62aから吐出された空気が空気用ホース(空気通路B)を通ってカフAに送られる。なお、このときには、入力側空間53内の空気の一部が第3の貫通孔84と第3の排出通路66を通って大気中に排出される。
【0035】
モータ12が停止すると、入力側空間53の空気が第3の排出通路66を通って大気中に排出されるために、入力側空間53内の圧力Pinが出力側空間54の圧力Pout以下になり、これに伴って差圧弁81が開く。このように差圧弁81が開くことにより、出力側空間54内の空気が第1の排出通路63を通って大気中に排出される。また、このときには、吐出弁91の流体出口91aと流体吐出口62aとの間の吐出通路74内の空気が第2の排出通路65を通って大気中に排出される。
【0036】
この実施の形態によるダイヤフラムポンプ11においては、このように差圧弁81が開くことにより吐出通路74内の空気を複数の通路を通してポンプ外に排出することができるから、差圧弁81が開閉するようにモータ2の回転数を制御して吐出量と排出量とのバランスを調整することによって、流体吐出口62aから吐出される空気の吐出圧力を容易に調整できるようになる。
ポンプ駆動用モータ2の回転数は、制御装置3のポンプ制御部6によって制御される。このダイヤフラムポンプ11の吐出圧力は、図5に示すように、ポンプ駆動用モータ2の回転数と対応して変化する。
【0037】
この実施の形態による圧力調整装置1を電子血圧計に装備する場合、制御装置3のポンプ制御部6は、ダイヤフラムポンプ11の吐出圧力が血圧測定に適したパターンで変化するようにポンプ駆動用モータ2の回転数を制御する。すなわち、図6に示すように、ポンプ制御部6は、カフAの圧力が予め定めた初期圧力P1となるようにポンプ駆動用モータ2の回転数を上昇させた後にポンプ駆動用モータ2の回転数を徐々に低下させる。ポンプ駆動用モータ2の回転数が低下すると、空気が出力側空間54から第2の排出通路65を通って常に排出されているために吐出圧力が徐々に低下する。
【0038】
電子血圧計においては、このように吐出圧力が徐々に低下する行程で吐出圧力が圧力P2に低下したときに血圧測定が開始される。ポンプ制御部6は、血圧測定が終了した後であって吐出圧力が圧力P2から圧力P3まで低下したときにポンプ駆動用モータ2を停止させる。ポンプ駆動用モータ2が停止すると、差圧弁81が開いて出力側空間54内の空気が第1および第2の排出通路63,65から大気中に排出されるために、カフAが初期の形状となるように収縮する。
【0039】
したがって、この実施の形態によれば、ダイヤフラムポンプ11の駆動機構15(駆動装置)の回転数を変えることによって、ダイヤフラムポンプ11とカフAとの間の空気通路B(ダイヤフラムポンプ11の排気系)に微速排気弁を用いることなく吐出通路74の圧力を調整することができる。したがって、排気系に微速排気弁を用いることなく圧力を調整可能としてコストダウンが図られた圧力調整装置を提供することができる。
【0040】
モータ2の回転数を制御して差圧弁81を開閉させると、差圧弁81が振動して空気のリップルが発生するおそれがある。しかし、この実施の形態によるダイヤフラムポンプ11においては、第2の排出通路65から常に空気が排出されており、吐出弁91の流体出口91aより下流側で圧力が平滑化されるから、リップルの発生を抑えることができる。
【0041】
上述した実施の形態においては本発明を電子血圧計に用いる例を示したが、本発明はこのような限定にとらわれることはなく、気体や液体の供給および排出を行って圧力を調整する装置であれば、どのような装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…圧力調整装置、2…モータ、3…制御装置、15…駆動機構(駆動装置)、31…ダイヤフラム、32…ポンプ部、34…ポンプ室、41…吸入弁、44…吸入通路、46…流体入口、62a…流体吐出口、63…第1の排出通路、63a…第1の排出口、65…第2の排出通路、65a…第2の排出口、74…吐出通路、81…差圧弁、91…吐出弁、91a…流体出口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6